デビ夫人一行の訪朝と関連する番組があった。同夫人はもちろん登場しないが、彼女の夫が登場している。
10日、「朝鮮中央TV」が「永遠不滅の金日成花 金日成花命名50周年にあたり」という「特集」を放送した。この番組のスタートは、何となくYouTubeで紹介した「開城高麗人参」に似た感じで期待したのだが、残念ながら途中からいつもの北朝鮮番組に戻ってしまった。しかし、この番組は、北朝鮮が取材班をインドネシアに派遣して撮影したと思わしき場面も見られる。インドネシアの番組制作会社に依頼したのか、「朝鮮中央TV」の取材チームが行ったのかは確認できないものの、後者だとすると、北朝鮮のテレビ番組としては珍しいケースである。

Source: KCTV, 2015/04/10放送
インドネシアの街並み

Source: KCTV, 2015/04/10放送
金日成花育種家のシ・エル・ブント、ドイツ系インドネシア人だと「前中央植物園第1部園長」が解説

Source: KCTV, 2015/04/10放送
「第1部園長 高ジュソン」

Source: KCTV, 2015/04/10放送
スカルノは「独立後、本当の新しい社会を建設するための模索」をする過程で、ベトナムのホー・チミンと会い「それに対する答えを見いだした」とナレーション。ホー・チミンはスカルノに「革命をするのならば、絶対、金日成主席に合わなければならない」と語ったという。これは「ホー・チミンが1956年に平壌訪問後、スカルノに語った言葉」だという。

Source: KCTV, 2015/04/10放送
ホー・チミンは「私は、金日成同志よりも年齢的には20歳以上年上だが、革命闘争において、金日成同志は私の師匠だ」と語ったとナレーション。ベトナム人人はこれをどう考えるのか。

Source: KCTV, 2015/04/10放送
1964年11月、スカルノを平壌訪問し金日成と会見。金日成の「偉人」さに感銘を受けたとナレーション。下の写真は、その当時の様子を再現したものだと思われるが、興味深いのは撮影場所がインドネシアであり、立っているのがインドネシア人らしき人物、それにもかかわらず『労働新聞』を読む朝鮮人民のようなスタイルで立っており、加えて、「偉人」を手のひらを上にして指している。このスタイルは、インドネシアの制作会社だけではできない演出であり、北朝鮮取材チームが行っていないのであれば、ディレクターがインドネシアに出向いているはずである。北朝鮮在留の東南アジア系の人を集めての北朝鮮国内での撮影の可能性もあるが、警備員の制服からするとインドネシアでの撮影と思われる。

Source: KCTV, 2015/04/10放送

Source: KCTV, 2015/04/10放送
スカルノは植物を愛し、ジャワ島にあるボゴール植物園をしばしば訪問、植物園内にボゴール宮殿も建設したとナレーション。

Source: KCTV, 2015/04/10放送
ボゴール植物園内を歩くインドネシア人

Source: KCTV, 2015/04/10放送
1965年4月13日、金日成はボゴール植物園を訪問。「太陽節」直前に外遊とは。その際、スカルノは金日成に「一番美しいランを見せながら、その花に金日成主席閣下のお名前を付ける」と言ったところ、金日成は「花を研究した学者の名前を付けるべきだ」と提案を辞退。

Source: KCTV, 2015/04/10放送

Source: KCTV, 2015/04/10放送
しかし、スカルノは「金日成花」と命名することを強く希望、それを受け金日成は「スカルノ大統領とインドネシア人民の願いがそういうことならば、私に対してではなく、祖国と人民への称賛の表出として、その提案を受け入れよう」と語ったと「朝鮮金日成花・金正日花委員会 作家 金テクヨン」が解説。「作家」が解説しているところがポイント。

Source: KCTV, 2015/04/10放送
「意としない歴史の風波の中で、一時、金日成花が行方不明になってしまいました」と解説。スカルノの失脚と共に「金日成花」も行方不明になってしまったのであろう。「それから9年後、金日成花を探して、北朝鮮幹部がインドネシアの地に到着した」とナレーション。その時「将軍様は、人民の中に入って探せば、必ず金日成花を見つけることができるはずだ」と「高第1部園長」が解説。「幹部は、2ヶ月間掛けて様々な島を巡りながら、やっとスカルノ時代にボゴール植物園をしていた人を見つけることができた」とナレーション。下の写真がそのスザン・ナ・カッサル園長。

Source: KCTV, 2015/04/10放送
同園長は、「9年間あなた方を待っていた。インドネシア銃を探してでも、金日成花を北朝鮮に送る」と約束したという。カッサル園長は、「金日成花」の育成者であるブントを見つけ出した。ブントは、2本の「金日成花」を北朝鮮代表団に手渡し、「朝鮮でこの花をたくさん咲かせてくれ」と依頼したと解説する「中央植物園研究所研究師 功勲科学者 教授 博士 李ウァンジュン」。

Source: KCTV, 2015/04/10放送
持ち帰られた「金日成花」を見る「将軍様」。「将軍様」は、「中央植物園で繁殖させろ」と命じたという。

Source: KCTV, 2015/04/10放送
しかし、北朝鮮ではラン栽培に関する経験が乏しく、「金日成花」を繁殖させることができなかった。そのため「将軍様」は、再び代表団をインドネシアに派遣し、ランの繁殖技術を習得させたとナレーション。下の写真を見せるが、色などからして再現であろう。

Source: KCTV, 2015/04/10放送
「金日成花」の繁殖を研究する北朝鮮研究者

Source: KCTV, 2015/04/10放送
しかし、北朝鮮の気候条件の下、「金日成花」を繁殖させることは容易ではなかった。そのため、「将軍様」は再び、代表団をインドネシアに派遣したと語る「生物工学鉢園 植物組織培養研究所 研究師 博士 崔キョンフィ」。

Source: KCTV, 2015/04/10放送
1982年の「太陽節」には、2万本以上の「金日成花」が咲き、全国各地には300カ所以上の「金日成花温室」が作られたとナレーション。

Source: KCTV, 2015/04/10放送
思えば、羅先で泊まったホテルにも温室があった。中は覗いてみなかったが、「金日成花」用の温室だったのだろうか。野菜を栽培していたような気もするのだが。下がその写真。

1982年4月、「金日成花」は、国際ラン学会のリストに正式登録されたとナレーション。

Source: KCTV, 2015/04/10放送
スカルノの息子が、その際に署名をしたという。

Source: KCTV, 2015/04/10放送
「金日成花」が「偉人称賛の花」ということで、金日成の「偉人」ぶりを紹介するエピソードのナレーションがある。スターリンは、ソ連を訪問した金日成に「朝鮮を強国にし、発展途上国を援助し、米日帝国主義者が再び頭を上げられないようにしてくれ」と頼んだとナレーション。

Source: KCTV, 2015/04/10放送
続けて、チリのアジェンデ元大統領やトーゴのエヤデマ元大統領も金日成を「自主時代の太陽と高く称賛した」とナレーション。さらに、金日成と会見したカーター元大統領の言葉として「金日成主席は、ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファソン、アブラハム・リンカーンという三大大統領を合わせたよりも偉大な方だ」を紹介。カーターが本当にそう言ったのかどうかは、米側の資料で確認してみる必要がある。

Source: KCTV, 2015/04/10放送
「金正日花」については、過去記事でも紹介したように映画化されているが、「金日成花」に関する映画はあったとしてもこれまで見たことはない。その系では、この番組は北朝鮮がどのように「金日成花」を紹介しているかを知るには、面白い番組であった。