「万民賞賛の大宝物庫として輝く国際親善観覧観に抗日の女性英雄金正淑同志の蝋人形館が新たに建てられ開館」(2012年4月25日「朝鮮中央TV」)
金日成、金正日さんに加え、金正日さんのお母さんである金正淑さんの蝋人形ができたというニュースを「朝鮮中央TV」が伝えた。これも金日成生誕100周年の記念事業の一つであろうが、金正恩さんのお母さんである高英姫さんをこれからどのように朝鮮人民に紹介していくのかという関心もあり、動画を見た。
http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?categ1=12&no=9520
蝋人形自体は、北朝鮮が作ったのではなく、中国の「中国偉人蝋人形館」が贈呈した。開幕式には、同館の館長も招待され挨拶をしている。

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?categ1=12&no=9520
中国偉人蝋人形館館長

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?categ1=12&no=9520
このニュースはそれだけの話なのだが、映像を見ていたら身長の低い軍人たちが映し出された。

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?categ1=12&no=9520
右横に立っている男性の背が高いので余計に目立つのかもしれないが、この軍人の一団の身長が極端に低いことが確認できると思う。恐らく、軍帽を脱げばもっと身長は低く見えるであろう。この映像にこだわるのは、実に、私が北朝鮮の検問所で目撃した軍人がそうだったからである。冗談ではなく、小学校高学年か中学校低学年の子供が銃を抱えて立っているのかと思ったほどである。これが、まさに「苦難の行軍」の後遺症である。この軍人の年齢は、二十歳を少し超えたぐらいではないだろうか。すると、北朝鮮で飢餓が発生した後期に生まれたということになる。幼少時代の栄養不足で身長が伸びず、大人になっても140cm~150cm前後にまでしかならないのであろう。
北朝鮮の衛星発射で、米国は「栄養援助」を中断したままである。核・ミサイルと人道援助は切り離すとさんざん言ってきたのだが、結局「北朝鮮のように、ミサイルを発射しないと言っておきながら発射する、信用のできない政府では、栄養援助がきちんと必要としている人々に行き渡るか確信が持てない」という理由で中断した。北朝鮮による転用を難しくするためにわざわざ、食料ではなく栄養としたはずなのだが、それでも支給を見合わせた。
結局苦しむのは、朝鮮人民であるわけだが、彼らに「アラブの春」のような革命を期待するのであれば間違いである。北朝鮮はアラブ諸国以上に閉鎖された国である上、携帯電話が平壌を中心に100万台普及したといっても、アラブ諸国とは比較できないほど少ない。また、アラブ諸国の神様はアラーで、指導者であるムバラクさんやカダフィさんは神様ではない。ところが、北朝鮮の神様は金日成さんである。神の言葉を伝える一人目の預言者、金正日さんは神と並び(銅像を見れば分かる)、今、若い予言者である金正恩さんが登場した。生まれてからずっと「父なる神は偉大なり」と教えられてきた彼らは、そう簡単に神を否定することはできないのである。
ある学会で、北朝鮮の経済に関する発表を聞いて、フロアから「では、北朝鮮の人々というのはみんな馬鹿なんですか」という質問が出された。私もフロアにいたのだが、私が答えるのであれば、朝鮮人民は馬鹿ではないし、ごく普通の人々である。ただ、我々と唯一絶対的に違うのは、金日成という神様を固く信じているということである。
米国対アラブ諸国、あるいはキリスト教対イスラム教という対立の構図は冷戦構造の中で築かれたものではない。一方、北朝鮮対米国、言い換えれば資本主義対社会主義という構図は、明らかに冷戦構造の中で築かれたものであるし、まさに、朝鮮半島の分断などはその落とし子のようなものである。しかし、冷戦が崩壊し、表面的には社会主義対資本主義という冷戦の構図を維持しつつも、実はキリスト教的倫理観に基づく民主主義と金日成教的倫理観に基づく独裁主義の対立へと変質したのではないだろうか。
現状、金日成教的倫理観を短期間で転換させることは非常に困難であるといわざるを得ない。あるとすれば、甚大な被害を覚悟した上での戦争しかない。しかし、中長期的には金日成教を尊重しつつ資本主義の風を吹き込ませるという方法はある。その小さな例が、開城工業団地で働く北朝鮮労働者が韓国側経営者がおやつに出した「チョコパイ」を奪い合うように家に持ち帰った話である。「チョコパイ」のパッケージと共に、資本主義の風が北朝鮮に自然に吹き込んだのである。「チョコパイ」は金日成教を否定しないが、美味しいことも間違いない。では、金日成教の枠組みの中でどうやってこんなに美味しいものを作れたり食べられるようになれるのか、そんな微風である。その意味で、南北朝鮮関係が極度に悪化している中、双方に政治・経済的な理由があるにしても、開城工業団地を閉鎖しなかったのは南北双方の英断であると私は考える。
悪い子はお尻をたたくだけではいい子にならない。「いい子にならなくてもいいじゃん」といって叱っても突っぱねる。ではどうするか。悪い子がそのまま悪い大人にならないように、いろいろと策を講じる必要があるのではないだろうか。その一方で、いい大人と思っている自分は、ほんとうにいい大人なのかということも自らに問い直さなければならないであろう。
<追記:2012年5月10日 06:37>
奇しくも、李明博さんがこどもの日に子供たちを前に、北朝鮮は「悪い子」と発言したそうである。それはそれでよいが、次期大統領への引き継ぎも含めて、この機会に「自分は、ほんとうにいい大人」だったのかも十分に回顧しておいて欲しいものである。
「産経ニュース」:「北朝鮮、韓国大統領の「悪い子」発言に反発」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120506/kor12050622050003-n1.htm
http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?categ1=12&no=9520
蝋人形自体は、北朝鮮が作ったのではなく、中国の「中国偉人蝋人形館」が贈呈した。開幕式には、同館の館長も招待され挨拶をしている。

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?categ1=12&no=9520
中国偉人蝋人形館館長

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?categ1=12&no=9520
このニュースはそれだけの話なのだが、映像を見ていたら身長の低い軍人たちが映し出された。

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?categ1=12&no=9520
右横に立っている男性の背が高いので余計に目立つのかもしれないが、この軍人の一団の身長が極端に低いことが確認できると思う。恐らく、軍帽を脱げばもっと身長は低く見えるであろう。この映像にこだわるのは、実に、私が北朝鮮の検問所で目撃した軍人がそうだったからである。冗談ではなく、小学校高学年か中学校低学年の子供が銃を抱えて立っているのかと思ったほどである。これが、まさに「苦難の行軍」の後遺症である。この軍人の年齢は、二十歳を少し超えたぐらいではないだろうか。すると、北朝鮮で飢餓が発生した後期に生まれたということになる。幼少時代の栄養不足で身長が伸びず、大人になっても140cm~150cm前後にまでしかならないのであろう。
北朝鮮の衛星発射で、米国は「栄養援助」を中断したままである。核・ミサイルと人道援助は切り離すとさんざん言ってきたのだが、結局「北朝鮮のように、ミサイルを発射しないと言っておきながら発射する、信用のできない政府では、栄養援助がきちんと必要としている人々に行き渡るか確信が持てない」という理由で中断した。北朝鮮による転用を難しくするためにわざわざ、食料ではなく栄養としたはずなのだが、それでも支給を見合わせた。
結局苦しむのは、朝鮮人民であるわけだが、彼らに「アラブの春」のような革命を期待するのであれば間違いである。北朝鮮はアラブ諸国以上に閉鎖された国である上、携帯電話が平壌を中心に100万台普及したといっても、アラブ諸国とは比較できないほど少ない。また、アラブ諸国の神様はアラーで、指導者であるムバラクさんやカダフィさんは神様ではない。ところが、北朝鮮の神様は金日成さんである。神の言葉を伝える一人目の預言者、金正日さんは神と並び(銅像を見れば分かる)、今、若い予言者である金正恩さんが登場した。生まれてからずっと「父なる神は偉大なり」と教えられてきた彼らは、そう簡単に神を否定することはできないのである。
ある学会で、北朝鮮の経済に関する発表を聞いて、フロアから「では、北朝鮮の人々というのはみんな馬鹿なんですか」という質問が出された。私もフロアにいたのだが、私が答えるのであれば、朝鮮人民は馬鹿ではないし、ごく普通の人々である。ただ、我々と唯一絶対的に違うのは、金日成という神様を固く信じているということである。
米国対アラブ諸国、あるいはキリスト教対イスラム教という対立の構図は冷戦構造の中で築かれたものではない。一方、北朝鮮対米国、言い換えれば資本主義対社会主義という構図は、明らかに冷戦構造の中で築かれたものであるし、まさに、朝鮮半島の分断などはその落とし子のようなものである。しかし、冷戦が崩壊し、表面的には社会主義対資本主義という冷戦の構図を維持しつつも、実はキリスト教的倫理観に基づく民主主義と金日成教的倫理観に基づく独裁主義の対立へと変質したのではないだろうか。
現状、金日成教的倫理観を短期間で転換させることは非常に困難であるといわざるを得ない。あるとすれば、甚大な被害を覚悟した上での戦争しかない。しかし、中長期的には金日成教を尊重しつつ資本主義の風を吹き込ませるという方法はある。その小さな例が、開城工業団地で働く北朝鮮労働者が韓国側経営者がおやつに出した「チョコパイ」を奪い合うように家に持ち帰った話である。「チョコパイ」のパッケージと共に、資本主義の風が北朝鮮に自然に吹き込んだのである。「チョコパイ」は金日成教を否定しないが、美味しいことも間違いない。では、金日成教の枠組みの中でどうやってこんなに美味しいものを作れたり食べられるようになれるのか、そんな微風である。その意味で、南北朝鮮関係が極度に悪化している中、双方に政治・経済的な理由があるにしても、開城工業団地を閉鎖しなかったのは南北双方の英断であると私は考える。
悪い子はお尻をたたくだけではいい子にならない。「いい子にならなくてもいいじゃん」といって叱っても突っぱねる。ではどうするか。悪い子がそのまま悪い大人にならないように、いろいろと策を講じる必要があるのではないだろうか。その一方で、いい大人と思っている自分は、ほんとうにいい大人なのかということも自らに問い直さなければならないであろう。
<追記:2012年5月10日 06:37>
奇しくも、李明博さんがこどもの日に子供たちを前に、北朝鮮は「悪い子」と発言したそうである。それはそれでよいが、次期大統領への引き継ぎも含めて、この機会に「自分は、ほんとうにいい大人」だったのかも十分に回顧しておいて欲しいものである。
「産経ニュース」:「北朝鮮、韓国大統領の「悪い子」発言に反発」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120506/kor12050622050003-n1.htm