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    「自分の価値を貶める愚かな醜態」:前原議員の総連ビル発言を攻撃、総連ビルに関する現状認識表明、日朝関係に関する認識 (2015年2月28日 「労働新聞」)

    2月28日、「今日の中央新聞概観」という、『労働新聞』、『青年前衛』、『平壌新聞』などに掲載された主要記事を紹介する番組を何となく聞いていた。そしたら、「前原」という聞き覚えのある名前が出てきた。

    『労働新聞』に「自分の価値を貶める愚かな醜態」と題する個人名の「論評」が掲載された。「論評」では、民主党の前原誠司議員が衆議院予算委員会で総連ビルに関する質問をしたことに対する反発である。前原議員の質問に関して、議事録などでは確認していないので、下記はいずれも「論評」からの引用であることを断っておく。

    「論評」では、前原議員が総連ビルの再使用は「脱法」である、「継続使用させてはならない」、「全ての権能を動員して総連が払う賃貸用を差し押さえ」すべきだなどと発言したと非難している。加えて、同議員「対米追従悪習」があり、「法学を専攻したにもかかわらず・・・法的に何の問題もない総連中央会館問題を取りざたするのは、初歩的な法概念も知らず」と同議員を罵っている。

    この記事で注目すべき点は、前原議員を罵倒したことよりも、北朝鮮が総連ビルの現況について初めて認識を示したことである。北朝鮮は、

    「総連中央会館と関連した転売と賃貸問題は、法的に認められた手続きによる普遍的な取引問題であり、資本主義社会ではよくあることである。日本の法曹界はもちろん、政界と言論界も、如何なる『法的』や『脱法』行為もなく、全てのことが合法的になされているルということを認めている」

    として、「転売と賃貸」により、総連中央会館は適法に継続使用が可能になったという認識を示している。そして、「最近、比較的順調に解決されている総連中央会館問題を再び俎上に載せ」と、総連中央会館問題が「順調に解決」しているという認識も示している。

    北朝鮮が主張するように、総連中央会館の転売、賃貸は、表面的には「資本主義社会ではよくある」ことなので、北朝鮮の現状認識は間違っていない。

    さらに興味深いのは、総連中央会館の問題と関連させ、「朝日関係」について次のように述べている点である。

    「(前原氏は)朝日関係の進展に釘を刺し」、「朝日関係問題と関連して、誰それに『隙を与えてはいけない』と騒ぎ立て、朝日政府間会談が切迫した時点で茶番を演じ」

    とし、何を持ってかは不明ながら「朝日政府間階段が切迫した」と言っている。もしかすると、拉致問題を巡る日朝政府間の調整が水面下で進んでおり、近い将来、何らかの動きがあることを予告しているのかもしれない。

    このところ、過去記事で紹介したように、「独島」問題を巡り日本を攻撃したり、比較的に反日的な報道が多く見られたので、北朝鮮は総連中央会館問題「解決」で拉致問題を巡る日朝協議に一方的に幕を引いてしまおうとしているのではないかと思っていた。しかし、上に書いたように、本当に「朝日政府間会談が切迫」しているのであれば、それは歓迎すべきことである。

    「論評」は、

    「朝日間の国交関係がない中で、外交代表部の役割をしている神聖な活動拠点である総連中央会館を抹殺するため、狂奔するエセ政治家である前原は、時代の流れに逆行し、自らの価値を貶める妄動を自制すべきである」

    と結んでいる。単に「反動」の意味で使っているだけなのかもしれないが、「時代の流れ」と「朝日間の国交関係」が何となく繋がっているような気がしないでもない。

    『労働新聞』、「스스로 제몸값을 떨구는 역스러운 추태」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2015-02-28-0026&chAction=T

    「独島は我が民族の神聖な領土(1) -日本の独島強奪野望-」:「独島」に関する座談会番組 (2015年2月21日 「朝鮮中央TV」)

    2月21日付けの『労働新聞』には、金正恩が「島火力打撃及び占領のための演習を組織指導した」という報道がなされている。その前日の20日、「朝鮮中央TV」で「独島は我が民族の神聖な領土(1) -日本の独島強奪野望-」と題する座談会形式の番組が報道された。この番組を生放送で見ていたので、「島火力打撃及び占領」と「独島」の関連が直ぐに頭をよぎったのだが、記事を読むとそれとは関係ないようで、NLL周辺の韓国の島を想定した訓練だったようだ。

    <追記>記事を書いていたら、「朝鮮中央TV」でこの訓練に関する「録画報道」があった。「対艦船ロケット」の発射シーンを何枚も見せているところからすると、1週間ほど前に海上から実験的に発射された「対艦船ロケット」が実戦配備されたことを見せたいのだろうか。形などの比較はしていないが、少なくとも2種類の「ロケット」が発射されたようだ。
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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 섬화력타격 및 점령을 위한 연습을 조직지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    この番組が、再放送か否かは韓国統一部が旧正月休みに入ってしまっているので確認はできないが、映像から判断すると新たに制作された番組のようだ。総連本部ビルの継続使用が事実上可能になり、「拉致問題調査委員会委員長」と同名の人物を「中将」に昇格され、そして「独島」問題を放送することからは、日本に対する何らかのメッセージ性が感じられる。

    この番組はシリーズとなっており、第1回では「地理的、歴史的」側面から「独島」の領有権に関する説明がなされた。第2回では、「言語・法律的」側面から説明をするということであるが、それは本日放送される予定である。

    本記事は、「独島」の領有権に関する議論を目的とするものではない。北朝鮮が「独島」についてどのように考えており、それをどうしたいのかということを見いだすのがこの記事の目的である。そのため、当該島の名称も括弧を付けて「独島」と記すことにする。

    「独島は我が民族の神聖な領土(1) -日本の独島強奪野望-」
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    Source: KCTV, 2015/02/20放送

    司会者は冒頭で「前世紀から今世紀まで、我が国の固有の領土である独島強奪しようとする悪辣な策動が執拗に続いていますね」と述べる。司会者は右側の男性で、「朝鮮中央TV」か『労働新聞』の「解説委員」だったはずである。座談会番組や解説番組にしばしば登場する。
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    Source: KCTV, 2015/02/20放送

    「独島に関する理解をきちんとするために独島の自然地理的環境について」説明をする「金日成総合大学地球環境科学部 教員 副教授 李ホ」。「金日成総合大学」に「地球環境科学部」などという現代的な学部があるのには驚いた。
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    Source: KCTV, 2015/02/20放送

    李副教授は次のように説明をする。
    「独島は、よく知られているように我が国の最も東に位置しています。」(赤丸が「独島」)
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    Source: KCTV, 2015/02/20放送

    「独島は陸地(慶尚北道ウルチン郡チュクポン里)から約218Km、鬱陵島からは87.4Km離れています。」
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    Source: KCTV, 2015/02/20放送

    「行政区域としては、慶尚北道ウルロン郡ウルロンウプ、独島里に属しています。」
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    Source: KCTV, 2015/02/20放送

    「独島は、東島と西島をはじめとした、89個の島で構成されています。そのため、独島周辺水域は多島海を彷彿されます」(北朝鮮がこんな映像を撮影できるはずはないので、韓国が撮影した映像を使っているのであろう。)
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    Source: KCTV, 2015/02/20放送

    続けて、「独島」の形について「金日成総合大学指導教員 金日成賞を授与された 教授 博士 金ソンギュ」が説明する。
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    Source: KCTV, 2015/02/20放送

    「独島の形については、海洋地質専門家によって解明されています。独島は、白頭火山と同じ地質時代に何回もの火山噴出により鬱陵島と共にできた火山島です。独島は海底から2000mの高さの独島海山の頂上部分です。独島海山は3つあるのですが、2つは海底に沈んでおり、1つの頂上が海上に出ているのですが、それが一対の島、つまり東島と西島と呼ばれている独島です。」
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    Source: KCTV, 2015/02/20放送

    地理学的な説明をする「金日成総合大学文学大学(部)、研究者 ウォンサ(?) 教授 博士 金ヨンファン」
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    Source: KCTV, 2015/02/20放送

    「独島の地理学的な特徴について特に強調しなければならないことがあります。それは、独島の位置からしても、独島は我々の神聖な領土であるということです。独島から鬱陵島までの距離は87.4Km、つまり47.2マイル程度。一方、日本の隠岐島までは157.5Km、つまり85マイルです。ですから、独島から隠岐島までの距離が鬱陵島までの距離の2倍ほどになるということです。この点からしても我々の水域に位置した島であることは明白です。」(敢えて、「マイル」に換算している点に注目)
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    Source: KCTV, 2015/02/20放送

    「日本がなぜ独島を強奪しようとしているのか」について説明をする「金日成総合大学法律学部講座長 博士 副教授 朴フィチョル」
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    Source: KCTV, 2015/02/20放送

    「(日本は)独島を海外膨張野望を実現するために橋頭堡にしようとしているからです。・・・そして日本本土から隠岐島、独島、鬱陵島、朝鮮北部地域を繋ぐ前戦を設置しました。」
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    Source: KCTV, 2015/02/20放送

    「<朝鮮芸術映画>心臓に残る人」:「党決定書」の重要性、不正・不敗、党中央委員会政治局拡大会議 (2015年2月16、17日 「朝鮮中央TV」)

    2月16日、17日、2日連続で「心臓に残る人」という「朝鮮芸術映画」が「追憶に残る映画」として放映された。韓国統一部の資料では、この映画の第2部は2007年11月1日放映されている。資料の関係で、第1部の放送日は確定できないが、恐らくその前日であろう。

    この映画であるが、なかなか面白く記事にしようと思っているところだった。何がおもしろいのかというと、「党決定書」なるものがどれほど意味を持つのかを伝えているからだ。さらに、今日(19日)に報道されたように、北朝鮮では18日に「労働党中央委員会政治局拡大会議」が開催された。そこで採択されたのが他でもない「党決定書」である。「<朝鮮芸術映画>心臓に残る人」は、この「拡大会議」を前提に放映されたということになる。

    「心臓に残る人 第2部」
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    Source: KCTV, 2015/02/17放送

    ストーリーは、『労働新聞』の女性記者が地方のタイヤ工場に立派な「党秘書」がいるとう話を聞き取材を進める中で、過去にあった出来事を回想する形で進行する。写真は、女性記者。
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    Source: KCTV, 2015/02/17放送

    主役の「党秘書」は毎度おなじみの金リョンリンである。この人が出る映画やテレビ連続劇は、どれを見ても大体おもしろい。金リョンリンの演技力もあるのだが、大物俳優を出す映画や番組には大物の監督や演出家が付いているのかもしれない。
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    Source: KCTV, 2015/02/17放送

    この「党秘書」がいる「ヨンドンタイヤ工場」は、タイヤ生産を「正常化」することを「細胞総会決定書」に何年も続けて記しているにもかかわらず、それができていない。
    「当面するタイヤ生産正常化するための党細胞総会決定書」
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    Source: KCTV, 2015/02/17放送

    その原因は、技術者を大切にしない幹部の「党事業」に問題があると老練労働者(写真右)が指摘をする。
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    Source: KCTV, 2015/02/17放送

    例によって根本的な問題はタイヤの原料となる生ゴムを調達できないことにある。そのため、「党(細胞)総会」では「合成ゴムを『利用して』タイヤ生産を正常化する」と決定したので、生ゴムと合成ゴムを混ぜて使うことは「党決定」に反するものではないと、「副支配人」(写真左)が主張する。
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    Source: KCTV, 2015/02/17放送

    「党秘書」はその内容を可確認するために、「党副秘書」に文書課から「党決定書」を持ってこさせる。そこには、「我々式合成ゴム原料に全的に依拠しタイヤ生産に関する国家の法的課題を円満に遂行する」と決定書には書かれていた。
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    Source: KCTV, 2015/02/17放送

    そこで「党秘書」は、「決定書」の内容を「合成ゴムも利用しながら」と修正することを提案する。一同、この提案に賛成する。
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    Source: KCTV, 2015/02/17放送

    「党秘書」は、「しかし、修正する前に一つ条件があります」といって、人民服のボタンを外し始める。何をするのかと思いきや、首から提げた革袋に大切にしまってある「党員証」を取り出す。
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    Source: KCTV, 2015/02/17放送

    一同が驚いた顔で「党秘書」を見詰める中、「党秘書」は、「皆さん、党員証を出して下さい。出せないのですか。」、バンと机を叩いて「では、党員証も出さず、党決定を修正しようと言ったのですか。」「私は、良心の呵責で、赤い党員証を胸に抱いたまま党決定を修正することはできません。手が震えてできません。」と怒鳴る。
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    Source: KCTV, 2015/02/17放送

    結局、「ヨンドンタイヤ工場」では、技術者を活用して廃ゴムから再生ゴムを製造することに成功する。「創造的な革新」を成し遂げたということである。

    この映画には、堕落した「工場幹部」も登場する。事件は、ある技術者が事務室で飲酒したということが発端となる。技術者が飲んだ「人参酒」の空瓶を「党秘書」に見せる「技術課長」
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    Source: KCTV, 2015/02/17放送

    確かに、この技術者はかつて酒で問題を引き起こしたのだが、「党秘書」がこの技術者の家を訪れ、「思い切り酒を飲もう」とせまる。
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    Source: KCTV, 2015/02/16放送(第1部)

    しかし技術者は「胃が悪くて」、「党秘書」が勧めるどんぶり酒を飲み干すことができない。「党秘書」は、「これからも酒を飲むのか」と技術者に迫り、技術者は「止めます」と答える。しかし、それだけでは収まらず、「党秘書」は、「それを党細胞総会で誓えるか」とさらに詰め寄る。技術者は、「党決定にするということですか。結構です。決定して下さい」と酒を止める決意を述べる。実は、「党秘書」は酒を飲めない人で、しばらくすると目が回り庭で吐いてしまう。

    ということで、「党秘書」はこの技術者を信じている。その後開催された幹部会議では、「技術課長」が技術者を家族共々工場から追放することを提案する(技術者の妻は同じ工場の製靴部門の労働者である)。「党秘書」は、「副党秘書」に酒瓶の中身が何であったかを確認させ、それが咳の薬であったことが判明する。

    「責任秘書」が、「技術課長」に「なぜ中身も調べないで、いい加減な文書を作成するのか」と叱責すると、「技術課長」に対する批判が始まる(立っているのが「技術課長」)。
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    Source: KCTV, 2015/02/17放送

    党秘書:「やることがないから。点数も稼がなければならないし。」
    担当指導員:「この人が技術課長になってから、集団が不安でどうにもなりません。何か言えば、『反党的だ』、『反革命的だ』と絡んでくるので、和気藹々としていた技術課で課員が警戒し合うようになり、内部告発する事態まで発生しました。この人は今回も、死んだゴムを生かし党の決定を命を賭けて貫徹しようとするイム・ソクチュンさんが、学習会に何回か参加できなかったという理由で、『意識的な行動』だとか『党政策学習不対応分子』などといって、騒ぎ立てました。」
    党秘書:「そもそも、人を責めることに必死になる人ほど、処世術に長けており、ずるいことをします。だから、仕事をする人は落伍分子となり、ノート整理をして絵空事を書いている人が模範と評価されます。続けなさい。」
    担当指導員:「私はこんな人が、我々の革命に必要なのか必要でないのかということを深く考えさせられてしまいます。」
    女性幹部1:「もちろん、李ヨンガクさん(酒を飲んだと責められた技術者)は性格的な問題はあります。しかし、気管支疾患を患いながらも党決定を執行しようと戦闘を展開しています。しかし、課長は反動分子を一匹捕まえるようにあれこれと騒ぎ立てました。幹部同志の皆さん、今、一部の幹部は、この課長のように同志に欠陥があれば胸を痛め、改めてやる方法を模索するのではなく、それを見つけ出したことがまるで大きな功績となるように考え、事件化して厳重に懲罰することで、恐怖を造成しています。そのような行為が、革命隊伍の団結にどのような利益になるというのでしょうか。」
    党秘書:「党では、百害あって一利無しの行為だと教えられました。親愛なる指導者同志は、革命的同志愛について意味深いことを語られながら、我々革命一世は同志一人を救おうと血を流し、命まで捧げたのに、今、一部の幹部たちは口先だけで同志同志と言っているだけで、人を使えるようにできないことは遺憾だと語られた。課長の家族は何人ですか。」
    技術課長:「家族ですか。母と妻、そして子供4人、弟1人、妹2人います。」
    党秘書:「その中で、自分で稼いでいる家族は何人いますか。」
    技術課長:「兄弟はまだ幼く、妻は産後で・・」
    党秘書:「つまり、あなたの家族は課長のお陰で国家から食料配給を受け、学校に通っていると言うことですね。」
    技術課長:「はい」
    党秘書:「それなのに、課長は今日1日、それに値する金や食料を稼ぎ出しましたか。国民所得に何パーセント寄与したと思いますか。」
    党秘書:「(技術課長に)座りなさい。」
    党秘書:「あの人の今日1日の日課を見ても、技術図面にサインをしたのが2件、技術評議会に参加した時間2時間、その他にした仕事はありますか。その他にしたことといえば、釣りの準備のための釣り竿の手入れ、裏の野原に行って釣りの餌にするミミズを捕まえたこと、さらに遅く退勤するように見せるために電灯を付けたまま寝たことしかないでしょう。私の言葉が誇張ですか。」

    釣り竿を勤務時間中にいじる「技術課長」
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    Source: KCTV, 2015/02/17放送

    責任秘書:「(パンと机を叩いて)技術課長、全てのことが事実ですか。そんな人が、未だに課長席に座っているんだ。私は、彼を着実な人だと思ったのに。」
    党秘書:「担いだでしょ。」
    党秘書:「革命に投身するのは嫌、高い待遇は受けたい、能力はない、だから何が出てきますか。処党術、処世術。課長は技術がないので、再生ゴムについて考えることもできないな。だから、時間は余る。そして、党決定の先頭に立つ党員の足を引っ張ろうとするのです。課長は、自分の位置でしっかりと仕事をすることを考えなければなりません。全ての工場が技術者を信じて党決定を採択したではありませんか。だから、我々は彼らを後押ししてやらなければなりません。そして、技術課党員は、再生ゴムが自分たちの手にかかっていると言うことを肝に銘じて奮発しなければなりません。」

    長くなったが、この一連のやりとりを聞いていたので、今日、報道された「党中央委員会政治局拡大会議」の「決定書」の意味は分かりやすかった。この種の「決定書」は、それだけ読んでいると実に分かりにくく、絵空事を並べているように思えてしまうが、映画の中とはいえこのような現場の現実を考えると、納得できる部分もたくさんある。そして、このような組織は決して北朝鮮独特の問題ではないということも痛切に感じるところである。

    さらにおもしろいのは、取材をする女性記者にも問題があるという点である。中央の男性は女性記者の恋人、右にいるのは女性記者の母親である。男性は貿易関係の仕事をしており、海外出張の帰路、海外で買ったお土産を女性記者とその母に届けに来た。
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    Source: KCTV, 2015/02/17放送

    しかし、この男性は貿易で失敗をした。右の女性が新聞記者にその様子を次のように話している。
    女性:「(男性の海外出張に関する)総話が深刻みたい。誰にも言わないでね。資本主義国との貿易取引は、注意しないと騙されるの。対象の把握を誤って国家に大きな損失・・・少し損失を与えたそうよ。」
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    Source: KCTV, 2015/02/17放送

    第1部と第2部があり、さらに時間が行き来するので理解に苦労したが、この女性記者は、この男性との離別を決意し、男性からもらった腕時計を男性に返している。そして、この男性は「資本主義国」に出張、取引で失敗したにもかかわらず、たくさんのお土産を女性と女性の母親に買ってきたということのようだ。この辺りも、今回の「決定書」に記されている不正・不敗との関係で興味深い部分である。

    上記のように、この映画が恐らく初めて放映されたのは2007年である。だとすると、その前年辺りに制作された映画の可能性がある。だとすうると、2002年に実施された7.1措置が2005年に後退した時期かその直後に制作された映画ということになる。この辺り、今回の「党決定書」とどのような相関があるのだろうか。

    「<朝鮮芸術映画>雪の中に咲いた花」:北朝鮮の婚姻届、結婚に関する法規定 (2015年1月5日 「朝鮮中央TV」)

    この映画の舞台は、慈江道満浦市にある羊毛紡績工場である。「班長」から「支配人」になった若い女性が古い工場を改築し、新たな工場を建設する「闘争」を描くストーリーである。

    「雪の中に咲いた花」
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    Source: KCTV, 2015/01/05放送

    時代背景は1998年代末、苦難の行軍のまっただ中である。旧正月のデコレーションをする人々。
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    Source: KCTV, 2015/01/05放送

    工場の会議で「討論」をする女性「支配人」
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    Source: KCTV, 2015/01/05放送

    この「支配人」には、技術者の恋人(下写真)がいるが、工場再建と孤児養育のために結婚を諦める。
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    Source: KCTV, 2015/01/05放送

    技術者は「誰か」との結婚届の書類を受け取るために、「文書所」に行く。
    技術者:「結婚登録申請書を下さい。」
    係員:「はい、どうぞ。結婚おめでとうございます。お幸せに。」
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    Source: KCTV, 2015/01/05放送

    この技術者は、「支配人」の仕事を手助けするために満浦市に技術者として配属される。工場建設のための資材を調達して工場に運ぶ途中、トラックが故障して坂を下って行ってしまう。それを止めようと木材を担いで突進し重傷、病院に運ばれる。
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    Source: KCTV, 2015/01/05放送

    彼は、手遅れで死んでしまうが、彼の手には「妻に渡して欲しい」という手紙があった。この手紙は、「文書所」で受け取った「結婚登録申請書」であった。「妻」とは「支配人」であった。
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    Source: KCTV, 2015/01/05放送

    ここで、「支配人」が「手紙」を読むのだが、それが北朝鮮の「結婚登録申請書」であった。上が夫の名前、下が妻の名前、夫の名前には拇印が押されている。
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    Source: KCTV, 2015/01/05放送

    手紙部分には「結婚登録申請書、私ユ・ミョンシクと妻チュ・インスンは、殉職者の子供たちが安心して呼べる本当の父親、母親となり、子供たち全てが本当の親の愛を受けられるようにします」と書かれている。
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    Source: KCTV, 2015/01/05放送

    上の写真の「結婚登録申請書」が実際に使われている様式なのか、また現在も同様な形式なのか、さらには平壌と地方都市で同じなのかは分からない。さらに、技術者は同じ紙を2枚持っているが、提出先が2カ所あるのか、自分用の写しなのかも分からない。しかし、朝鮮人民を対象とした映画の中で、実際に使用されていないような形式の「結婚登録申請書」を見せる必要もないので、名前と拇印だけのシンプルなものが使われているのかもしれない。それにしても、同姓同名、しかも漢字を使わないので同音の人が大量にいるはずなのに、こんなシンプルな「結婚登録申請書」で管理ができるのだろうか。

    ということで、北朝鮮の結婚に関する法令を調べてみた。北朝鮮の「社会主義憲法」(2012年4月13日改訂版参照)の第78条に「結婚と家庭は、国家の保護を受ける。国家は社会の基層生活単位である家庭を確固たるものとするために深い関心を傾ける」と書かれている。婚姻年齢等に関する規定は「社会主義憲法」にはない。

    次に「民法」を見ると、結婚に関する規定は一切ない。その代わりに「朝鮮民主主義人民共和国家族法」というのが1990年10月24日に制定されており、4回目の最終改定は2009年12月15日となっている。この法律の「第2章 結婚」に婚姻に関する諸規定があるので、全訳しておく。

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    第2章 結婚

    第8条(自由結婚と一夫一婦制)
    公民は自由結婚の権利を有する。
    結婚は必ず一人の男と一人の女の間でだけすることができる。(訳注:つまり、同性婚は禁じている)

    第9条(結婚年齢)
    朝鮮民主主義人民共和国で結婚は、男子18歳、女子17歳からすることができる。
    国家は、青年が祖国と人民のために、社会と集団のためにやりがいのある仕事をした後で結婚する社会的気風を奨励する。(訳注:事実上、一度社会に出てからの結婚することを認める規定のようだ。羅先で案内員に結婚年齢について質問したが、どういう答えだったか忘れてしまった。羅先特集に書いたかもしれないが)

    第10条(結婚親等数)
    8親等までの血族、4親等までの姻戚や姻戚であった者間では結婚することができない。(訳注:韓国民法をきちんとフォローしていないが、韓国にはある(あるいはあった)「同姓不婚」制度は封建的制度ということで北朝鮮には存在しないようだ)

    第11条(結婚登録)
    結婚は身分登録機関に登録をすることで法的に認定され、国家の保護を受ける。
    結婚登録をせずに夫婦生活をすることはできない。(訳注:ということは、上の写真の紙を「身分登録機関」に提出することで結婚が認定されるということなのだろうか)

    第12条(在外公民の結婚登録)
    外国に住む共和国公民の結婚登録は、朝鮮民主主義人民共和国領事代表機関にし、領事代表機関がない場合は、当該国の当該機関にすることができる。(訳注:「ない場合は」というのは、主として在日朝鮮人のための規定であろう。在日朝鮮人が実際にどうしているのか分からないが、朝鮮総連が北朝鮮向けに何らかの登録を受け付けているとしても、地方自治体の行政機関に婚姻届を出さないと日本で生活する上で不便極まりないからということであろう)

    第13条(結婚の無効)
    この法、第8条から第10条に違反する結婚は無効である。
    結婚の無効認定は裁判所が行う。

    第14条(無効となった結婚における子女教育)
    無効と認定された結婚は、はじめからなかったものとする。しかし、子女養育問題は、この法第22条、第23条により解決する。

    第3章 家庭 (第22条と23条のみ抜粋)
    第22条(離婚時、子女養育当事者の決定)
    夫と妻が離婚する場合、子女を養育する当事者は子女の利益の見地から当事者が合意して定める。合意がなされない場合は、裁判所が決める。

    第23条(子女養育費)
    子女を養育しない当事者は、子女を養育する当事者にその者が労働する年齢に達するまでの養育費を支払わなければならない。しかし、子女を養育する当事者が養育費を受け取らないとする場合は、支払わないことができる。

    「金正恩同志が朝鮮人民軍指揮官の軍事称号を高めることに関する命令を下達された」:「ソ・デハ」中将に、特別調査委員長の「ソ・デハ」か (2015年2月16日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」を見ていたら、「金正恩最高司令官命令」に関する報道があった。同報道は「朝鮮中央通信」にも要約が掲載されている。

    この中で「ソ・デハ」という人物も「陸軍中将」に昇格されている。北朝鮮が設置した拉致問題「特別調査委員会」の委員長もソ・デハなので、もしかすると同一人物なのかもしれない。元の階級が分かれば、テレビに映った階級章(映像で確認できた階級は少将といわれている)などから確認できるのであるが、元の階級が不明なので何とも言えない。

    「特別委員会」委員長のソ・デハであるとすれば、日朝交渉での功績が評価されたのか、日本側からの「委員長としては階級が低すぎる」という批判を避けるためであろうが、総連本部の継続使用が可能になった状況からして、前者が主たる理由である可能性が高い。

    だとすると、北朝鮮側としては今回の交渉目的の少なくとも半分以上は達成できたわけで、今後、交渉が困難になる可能性もある。もちろん、総連ビル継続使用と日本政府の関係の実態、さらにはそれを北朝鮮側はどう見るのかにも関係するのかもしれない。

    いずれにせよ、「ソ・デハ」なる人物の昇格が「光明星節」に合わせて「最高司令官命令」として発表されたことについては、注目しておく必要がある。

    その他の昇格者と特別委員会委員との関連は調べていないが、さらに委員が含まれているのであれば、その意味はさらに大きくなる。

    「第19回金正日花祝典を祝い、日本の園芸家が祝電を送ってきた」: 加茂元照氏からの祝電を紹介、「<朝鮮芸術映画>花に込められた事情」を再放送 (2015年2月15日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が、「金正日花」の開発者である加茂元照氏より「第19回金正日花祝典」に際して祝電が送られてきたと伝えた。

    加茂氏は祝電の中で「金正日花の栽培と管理の強化、技術の発展、科学研究事業、本格的な全世界的普及で金正日花が永遠不滅の太陽の花として全地球上にさらに育ち、満開となることを期待していると強調した」と伝えている。

    15日の「朝鮮中央TV」では、加茂氏の「金正日花」開発ストーリーを映画化した「花に込められた事情」を放映していた。「祝典」開催中なので、特段の意味は見いださなかったが、このような「事情」とも関連するのかも知れない。この映画は、2013年も2月7日に放映された。

    「金正日花」を温室で眺める映画の中の加茂(役の俳優)
    2015-02-15-14flv_005514511.jpg
    Source: KCTV, 2016/02/15放送

    「敬愛する金正恩同志が未来科学者通り建設場を現地指導された」:専用機から視察 (2015年2月15日 「朝鮮中央通信」)

    「敬愛する金正恩同志が専用機に乗られ未来科学者通り建設場を俯瞰され」と「朝鮮中央通信」が報道した。今、「朝鮮中央TV」で静止画像無しの報道をしている。昼前後には、静止画像付きの報道がなされ、「専用機」を見ることができるだろう。いつも使っている旅客機なのか、それとも小型のジェットなのか。

    <追記>
    『労働新聞』がやっと更新され、写真が掲載された。いつも使っている「専用機」のようだ。それにしても、工事現場上空を旋回するだけなのに大げさだ。「直昇機」(ヘリコプター)にでも乗った方がゆっくりとよく見ることができると思うのだが、SPEの映画を連想させるので嫌なのだろうか。「元帥様」の「ペッチャン」ならこれ見よがしに「直昇機」から身を乗り出して「視察」して欲しいものだ。

    20150215kjuonjet.jpg
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 미래과학자거리건설장을 현지지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    <追記2>
    今、静止画付きの「録画報道」を「朝鮮中央TV」でやっている。立派なタラップも作られたようで、コメントにも書かれているように、5月の訪ロに向けた予行演習の性格が強いのかもしれない。

    20150215kctv2asf_052087380.jpg
    Source: KCTV, 2015/02/15放送

    「<朝鮮記録映画>敬愛する最高司令官金正恩が人民軍隊事業を現地指導 2015.1」:久々のパワフル「朝鮮記録映画」、受信状態悪いも迫力あり (2015年2月12日 「朝鮮中央TV」)

    今日、スローガンシリーズが発表され、こちらもなかなか読み応えがあった。こちらについては、新しいスローガンと古いスローガンを区別しなければならないので、別記事にしたいと思う。ともあれ、スローガンがこのように一気に発表されるというのは初めて知った。スローガンというのは、その時、その時、単位毎に適当に(とはいえ、適切に)作っているものとばかり思っていたのだが、どうやら今回発表されたような「一覧表」が存在しているようだ。

    パワフルな「朝鮮記録映画」であるが、ストリーミングの状態が周波数変更(再変更があったもよう)以降悪く、通常状態では音声が途切れ、少し前に放送された「朝鮮記録映画」などでは映像まで途切れてしまう。uriminzokkiriがアップロードしてくれれば、きちんとみることができるが、そうでなければ今夜の録画を見直すしかない。

    20150212_kctvasf_019903258.jpg
    Source: KCTV, 2015/02/12放送

    写真などを紹介する記事は追って書こうと思うが、今回の軍事部門指導関連の「朝鮮記録映画」はパワフルだった。「航空及び反航空軍」の指導に関する映像が多かったが、これまではあまり見せなかったMig-29の離着陸画像をたくさん見せていた。記憶が正しければ、これまで動画に大きく登場したのは、古いMig戦闘機だったはずだ。

    着陸するMig-29
    kju kpa guidance movie 104(2015)1 YouTubemp4_001304112
    Source: KCTV, 2015/02/12放送

    また「渡河訓練」でも、色々な兵器が出てきた。この辺りは、兵器に詳しい方のコメントを待つところであるが、全体的には、「記録映画」の構成が最近のドキュメンタリーに近づいたような気がする。ただし、ストリーミングの状態が悪いので、そのように見えただけかもしれない。

    装甲車に乗る黄炳瑞
    kju kpa guidance movie 104(2015)1 - YouTubemp4_002275538
    Source: KCTV, 2015/02/12放送

    1月の「軍事部門指導」だったので、対戦艦ミサイルの紹介はなかったが、なかなか見応えがある「朝鮮記録映画」であった。

    そしてなによりも、「最高司令官同志」の足が完治している点である。「12月には死ぬ」などという噂は完全に打ち消されたように、笑顔で元気に指導をする「最高司令官同志」、やはり若いだけあってそう簡単には(あるいは、希望的観測のように)「逝去」することはないようだ。

    <追記>
    数日前から画面サイズが正方形になっているので、長方形の設定なるとよいのですが。
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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