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    「中央特区開発指導総局スポークスマン、風前の灯火となった開城工業地区の運命は、全的に南朝鮮当局の態度如何によると強調」:開城工業団地閉鎖を警告、継続の言い分け (2013年3月30日 「朝鮮中央通信」)

    昨日の記事にも書いた開城工業団地についての北朝鮮「中央特区開発指導総局」スポークスマン談話を「朝鮮中央通信」が報道した。

    報道では「北南間には、何の対話経路も通信経路も存在せ」しないので、「南側人員の開城工業地区への出入りもきわめて危うい状況で行われて」おり、「現在、開城工業地区の運命は、一歩先も見通すことができない状況である」という状況認識を示した上で、それにもかかわらず「傀儡一味と御用メディア、売文家たちは、開城工業地区の出入りがかろうじて継続していることについて『北が外貨収入の源泉あるので、ここには手を付けられない』だの、『北の二つの顔』だのと嘘を並べ立てながら我々の尊厳まで激しく冒涜している」と韓国を非難している。

    したがって、「朝鮮半島情勢が一触即発の戦争前夜」の状況であるにもかかわらず「開城工業地区が維持されていること自体がきわめて非正常なことであ」り、「現実は、直ちに南側の人員の開城工業地区出入りを遮断し、工業地区を閉鎖しても傀儡逆賊一味は、それに対して何も言えない」としている。

    それでは、なぜその「非正常な」状態が維持されているのかというと、「我々は、開城工業地区事業に南半部の中小企業の経営がかかっており、工業地区を直ちに閉鎖すれば、これら企業が倒産し、失業者に転落する状況を考慮し、極力自制している」とその理由を説明し、「開城工業団地で得をしているのは我々ではなく、傀儡一味と南半部の零細中小企業である」であると主張している。

    そして、「我々の尊厳を少しでも傷つけようとするならば、工業地区を容赦なく遮断、閉鎖する」とし、「風前の灯火である開城工業地区の運命は、全的に傀儡一味の態度如何による」と警告している。

    今回の事態を受けて、北朝鮮が開城工業団地に言及したのは今回が初めてであるが、閉鎖をしない理由の半分は正しいことも事実である。開城で工場を運営している企業の大部分は中小企業であり、しかも韓国政府の旗振りで始められたプロジェクトなので、同地区が閉鎖された場合は、韓国政府の責任が追及されることになる。同団地に投資するにおいて、投資企業と韓国政府間に何らかの免責約款は存在するのかもしれないが、それでも政府が責任を完全に回避することはできない。これが、開城工業団地を安易に閉鎖できない理由の一つであることは事実である。

    北朝鮮は韓国の中小零細企業の経営者を失業させないための配慮と言っているが、現実的には開城工業団地を閉鎖すれば、同団地で働く5万人以上の北朝鮮労働者が失業をすることになる。これらの人々に即座に北朝鮮が職を与えることなど、不可能である。もちろん、社会主義経済システムの中で農場に戻すなどして名目的に職を与え、幾ばくかの賃金を支払い続けることはできるかもしれないが、大半をピンハネされていたとはいえ、北朝鮮のそれと比べて非常に良好な労働環境で比較的高い賃金を得ていた北朝鮮労働者は大いに不満を感じるはずである。そして、ピンハネをしている元締めが被る損失も大きいことは間違いない。こういうことを書くと、「中央特区開発指導総局」からは「売文家」と叱られるのかもしれないが、こればかりはどう曲げても事実である。

    こうした、双方における経済的理由もあり、開城工業団地は、南北間の衝突を回避するための安全弁としての役割も大きい。北朝鮮は、「金正日大元帥様の南半部人民に対する慈愛に満ちた措置」として開始された開城工業団地事業は、そう簡単に閉鎖すべきではない。また、韓国側も、メディアの発言はコントロールできないにせよ、政府レベルではより慎重にこの問題に対処すべきである。過去記事にも書いたが、「出入りを遮断」する措置の中には同団地から韓国人が「出」ていく、つまり韓国に戻ることを禁止することも考えられる。韓国軍は、こういう状況を想定して、人質奪還計画も準備しているという話をどこかで聞いたことはあるが、そんなことをすれば、状況はさらに悪化し、それこそ全面戦争に至る可能性も出てくる。

    この際、北朝鮮に対して「政経分離でやりましょう」と提案してみるのもよいかもしれない。核・ミサイル問題が存在する状況で、北朝鮮との経済協力を進めていくことは難しいかもしれないが、開城工業団地という既成事実の上に立ち、北朝鮮との経済協力を進めていくことについては、さすがの「米帝」も文句を言わないと思う。これ、韓国にとっては北朝鮮に「資本主義の味」や「資本主義のやり方」を教えるよい機会になるし、北朝鮮も「米帝が圧殺」しようとしているばかりか、中国との関係も今一つよくない状況の中で、十分に「得」を得られると考えるはずである。

    開城工業団地閉鎖という事態だけは何とか避けて欲しい。

    「朝鮮民主主義人民共和国政府、政党、団体、特別声明」 (2013年3月30日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が30日、標記のような記事を配信した。

    記事では、この「声明」が出される背景を「金正恩元帥様が下された重大決心は、・・・我が軍隊と人民の滅敵の意志を込めた正義の最終決断である」と金正恩さんの戦略ロケット軍会議における「決心」を受けたものであるとしている。

    そして、B2爆撃機を朝鮮半島に持ち込んだことや銅像破壊作戦を挙げながら、「米帝の強盗的な侵略野望と傀儡逆賊一味の北進企図が度を超え、威嚇恐喝段階から無謀な実戦段階へと入った」という認識を示した上で、「天下第一名将であられる敬愛する金正恩元帥様の時代には全てのことが違うということを肝に銘じなければならない」とし、「朝鮮民主主義人民許和国政府、政党、団体は、朝鮮人民軍最高司令部作戦会議で敬愛する元帥様が下された最終決断と最高司令官の最後の命令を待っている千万軍民の確固たる意志を込め、次のように厳粛に宣言する」とし、次の事項を明示した。

    ************
    1.この時刻から、北南関係は戦時状況に入り、したがって北南間で提起される全ての問題は戦時に準じて処理される。朝鮮半島の平和でも戦争でもない状態は終わった。我々の革命武力が、実際の軍事行動に入った状況で、北南関係も自動的に戦時状況となり、それにより北南間で我々の尊厳と自主権を少しでも傷つける如何なる挑発的行為に対しても予告なく即時断固たる物理的行動により事情にかかわらず無慈悲に懲罰する。

    2.米国と傀儡一味が西海の5つの島であれ軍事境界線一帯であれ、如何なる地域においても北侵戦争の火を付けるための軍事的挑発を行えば、それは局地に限定されるものではなく、全面戦争、核戦争へと発展する。

    米国がハワイとグアム島をはじめとした太平洋上の軍事基地と本土にある核戦略爆撃機まで南朝鮮地域上空に持ち込んで北侵核戦争策動を狂乱的に行っている状況で、朝鮮半島で如何なる軍事的衝突も全面戦争、核戦争に拡大することは自明である。

    我が革命武力のファースト・ストライクに米国本土とハワイ、グアム島をはじめとした太平洋作戦地域全域の米帝侵略軍基地が含まれており、南朝鮮駐屯米軍基地はもちろん、青瓦台をはじめとした傀儡統治機関と傀儡軍基地も同時に焦土と化し、侵略者、挑発者は影も形もなく焼き尽くされ灰となるであろう。

    3.我々は、千金を払っても買うことができない機会を絶対に逃さず、祖国統一大戦の最後の勝利を達成する。我々の祖国統一大戦は、3日大戦でもなく、米国と傀儡教戦況が慌てふためいて正気を取り戻す余裕も与えず、一気に(タンスメ)南朝鮮全地域と済州島まで征服する雷のような速戦速決戦、天と地、海はもちろん、前方と後方の別がない立体的なものとなる。

    この聖なる正義の大戦は、北と南、全民族が参加する汎民族的な全民抗戦であり、その前に極悪な対決狂信者と好戦狂、人間のクズどもをはじめとした民族反逆者は容赦なく懲罰の対象となる。
    *************

    上に書いたとおり、この「声明」は金正恩さんの「決心」に基づくものであるが、各団体の「特別声明」というのはどこでどのように出されており、「戦時」を宣言する根拠はどこにあるのだろうか。これも対米舌戦の延長線上にあるので、根拠について真剣に考える必要もないのかもしれないが、「戦時」というのであれば3月11日に「休戦協定が白紙化」された時点で、「戦時」になっているはずである。

    「天下第一強国」という言葉は少し前からしばしば登場するようになったが、「天下第一名将」という言葉は今回初めて使われたような気がする。

    危険だと思われる点があるとするならば、上の2である。「トクスリ」演習が今後、どのような地域で展開されるのかは分からないが、NLL付近で「挑発的」な演習を行えば、北朝鮮は反撃に出る可能性がある。このところ、米韓共に北朝鮮の「挑発」に対して「対抗措置」として逆挑発を行っている。米国の軍事関係者は「北朝鮮の行為は非常に危険だ」と非難しているが、北朝鮮の挑発に乗っている米韓の動きも「非常に危険」である。このまま事態がエスカレートすれば、本当に不測の事態、偶発的な事態が発生する可能性がある。

    北朝鮮が「全面戦争、核戦争」と威嚇しているのも、ある意味、不測の事態や偶発的な事態に対する危険性を認識しているからであろう。

    ともあれ、開城工業団地の操業は平常通り行われているようであり、南北関係が「戦時」になったとはいえない状況である。今後、開城で何か動きがあれば別だが、北朝鮮としては「千金を払っても買うことができない機会」よりも、中国との関係がギクシャクする中で、開城工業団地で得られる「千金」をそう簡単に手放すことはしないであろう。

    『労働新聞』、「조선민주주의인민공화국 정부,정당,단체 특별성명」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-30-0065

    「<録画報道>朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が朝鮮人民軍戦略ロケット軍火力打撃任務遂行に関する作戦会議を緊急招集され、火力打撃計画を最終検討、批准された」:各種地図で威嚇、日本侵略軍配置 (2013年3月29日 「朝鮮中央TV」)

    昨日書いた記事と同じ内容を、複数の写真と共に「朝鮮中央TV」が「録画報道」として29日に放送した。

    昨日書いた記事でも、「労働新聞」に掲載された写真を参照しながら2枚の地図を指摘したが、この「録画報道」にはさらに多くの地図が登場する。また、その使われ方が実に巧妙である。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-29-12-y.flv

    まず登場するのがこの地図である。朝鮮半島の地図かと思いきや、実は日本が中心の地図で「日本侵略軍配置」というタイトルが付けられている。日本列島の複数の場所にマークされているが、「日本侵略軍」というよりも、在日米軍の基地である。昨日、「全軍宣伝幹部会議」を報じる番組の中で「米日侵略者」と言っていたことについて書いたが、どうやら日本にある「米帝」の基地を「日本侵略軍」の基地と扱っているので、日本も「侵略軍」の仲間入りをしたということのようだ。まず、戦略ロケット軍の第1のターゲットが日本(の米軍基地)であるということを示している。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-29-12-y.flv

    次に紹介されるのが上の写真である。金正恩さんが座っている席は同じだが、カメラは角度を変えて撮影している。今度は、青瓦台を中心にソウル上空から撮影した航空写真と北漢山を中心とした鳥瞰図がある(大まかに言えば、北漢山に連なる山脈の麓に青瓦台がある)。航空写真は、光明星3-2号で撮影したのであれば大変立派であるが、google mapの衛星写真をプリントしたものであろう。この写真では、青瓦台が第2のターゲットであるということを言いたいのであろう。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-29-12-y.flv

    上の地図はなかなか場所が特定しにくいが、「7艦隊」と書かれている。当然、「米第7艦隊」のことであろう。米第7艦隊は鎮海海軍基地を使っているので、その辺りの地図なのかもしれない。島が陸地と橋で繋がっているように見えるが、この島がガドク島、そしてその下の島が巨済島なのかもしれない。巨済島では大規模な海軍基地の建設が行われている。これがホノルル辺りであれば、第7艦隊の司令部ということになるが、在韓米軍の基地もターゲットになるということであろう。

    昨日紹介したカリフォルニア州の地図も含め、この他にも数枚の写真を紹介しているが、背景に色々な地図が映り込むように工夫されている。韓国国防部のスポークスマンが「本当に攻撃をする気なら、こんなに大々的に公表するはずがない」とコメントしていたが、まさに大々的に地図を見せることこそが、北朝鮮の最大の目的であろう。

    「金正恩同志が朝鮮人民軍戦略ロケット軍火力打撃任務遂行に関する作戦会議を緊急招集され、火力打撃計画を最終検討、批准された」、「我々は何で戦うか」、「全軍宣伝幹部会議」:戦争ムード高まる、普通の生活、日(本)侵略者 (2013年3月29日 「朝鮮中央通信」、「朝鮮中央TV」、「労働新聞」)

    「朝鮮中央通信」が29日、標記のような報道をした。それによると「米帝は、繰り返し警告しているにもかかわらず、『B-52』を引き続き南朝鮮地域上空に引き入れたばかりか、28日には歴史上初めて米国本土のミズーリ州ワイトマン空軍基地にあるステルス戦略爆撃機『B-2A』をはじめとした戦略打撃手段を新たに南朝鮮地域上空に侵入させ」たと、米国がB-2Aステルス爆撃機を「トクスリ」演習に投入したことを非難している。

    金正恩さんは、B-2が韓国に飛来したことについて「単に我々の強行的な立場に対するための武力示威ではなく、朝鮮半島で絶対に核戦争を引き起こすという最終通牒である」と述べたという。

    それを受けて、金正恩元帥は「最高司令部で29日0時30分、朝鮮人民軍戦略ロケット軍火力打撃任務遂行に関する作戦会議を緊急招集」し、「戦略ロケット打撃手段の技術状態に関する報告を受け、重大な決心」をしたという。「重大な決心」の内容であるが、「米帝と総決算する時が来たと判断するに至ったことを認め」、「米国本土とハワイ、グアム島をはじめとした太平洋全作戦地域の米帝侵略軍基地、南朝鮮駐屯米軍基地を事情を勘案せず打撃しなければならないとし、戦略ロケット軍の火力打撃計画を検討し最終批准」したと報じている。

    さらに、金正恩さんは「戦略ロケットが(米国本土などを)打撃できるよう射撃待機状態に入ることを指示し、戦略ロケットの技術準備工程計画に最終署名」したとのことである。

    このように、戦略ロケット軍の攻撃準備のレベルを引き上げたのは、明らかにB-2Aステルス爆撃機を韓国に持ち込んだことへの反発であるが、「戦略ロケットの技術準備工程計画」というのには燃料注入の時期や手順が記されているのであろう。米韓軍は、この「最終署名」を受けて北朝鮮軍にどのような動きが見られるのか注視するはずであるが、もし「燃料注入」を始めるようなことがあれば、相当に危険なレベルに達することになる。

    『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 조선인민군 전략로케트군 화력타격임무수행과 관련한 작전회의를 긴급소집하시고 화력타격계획을 최종검토,비준하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-29-0001

    記事を投稿したら、「労働新聞」が更新されていた。背景の白い地図には「戦略軍米本土打撃計画」、そして大きなカラーの地図にはカリフォルニアが示され、目標地点のようなフラグが描かれている。青瓦台を指さす写真もそうであるが、なかなか凝った演出である。
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    Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-29-0001

    しかし、「朝鮮中央TV」では、北朝鮮が必ずしも戦争に突進しているのではないということを宣伝する番組も放送している。「<特集>我々は何で勝つのか」という勇ましいタイトルの番組で、番組冒頭では「銀河3号」の発射シーンが紹介されているので、核・ミサイルを誇示する番組かと思いきや、戦争前夜のような状況にもかかわらず人民は通常通りの生活をし、工業生産、農業生産も普通に行われており、その証拠に金正恩さんも戦争とは無関係な全国軽工業大会参席しているではないかと述べている。番組でも紹介しているが、「20時報道」でも「全面対決戦」特集の前半部分では、工場での生産が拡大したというニュースや農村での施肥の様子などを伝えている。さらに、最近放送された連続ドラマ「初めての燃油局長」のワンシーンを見せながら、「我々は戦争に勝つのだから、その時の準備をしておかなければならない」というような説明もしている。「初めての燃油局長」は既に第10部までダウンロードしてあるが、まだ第6部までしか見ていない。北朝鮮成立初期の派閥抗争なども扱われているなかなか面白いドラマであるが、まさかそういう意図で放映されたとまでは考えてみていなかった。

    「我々は何で勝つのか」
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-28-16.flv

    朝鮮戦争中も「戦勝」を前提に戦争とは関係内緒会議が開かれたと例示している。道・市・郡人民委員会委員長および党指導イルクン連席会議1952年2月1日、科学者大会、1952年4月27日、全国農民熱誠者大会、1953年1月5日
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-28-16.flv

    スポーツジムでトレーニングをする朝鮮人民
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-28-16.flv

    「初めての燃油局長」のシーン
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-28-16.flv

    「1993年に北朝鮮がIAEAからの脱退を表明し危機が高まったときも、都市建設は続けられていた」
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-28-16.flv

    こういうことができるのは、「最前戦の視察も全国軽工業大会への参席もする金正恩元帥がいるからこそ」という説明シーン
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-28-16.flv

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-28-16.flv

    また、金正恩さんは3月28日に「全軍宣伝幹部(イルクン)会議」にも出席し演説を行っている。演説の要旨を聞く限りでは、「こういう時こそ金日成・金正日主義の宣伝活動を徹底し、人民の思想をより強固なものにしなければならない」という話をしただけのようである。

    「全軍幹部会議」で演説する金正恩
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-28-11-y.flv

    気になるのは、その様子を報道した「朝鮮中央TV」の「録画報道」の最後の部分で、李チュンヒさんが「米日侵略者と南朝鮮傀儡を銃隊で打ち倒し」と「米帝」と「南朝鮮傀儡」の間に「日」が入っている原稿を読み上げている点である。このところ、日本は「追従勢力」の扱いで「侵略者」として名指しされることはなかったのだが、どういう風の吹き回しなのだろうか。

    「我が軍隊と人民の断固たる対応意志を実際の軍事行動で誇示するであろう 朝鮮人民軍最高司令部声明」:1号戦闘勤務態勢、銅像ミサイル破壊計画、朴槿恵政権攻撃、中国の動向 (2013年3月26日 「労働新聞」)

    少し日が過ぎてしまったが、「労働新聞」に標記のような記事が掲載された。過去のコメントでも話題になったが、「停戦協定白紙化」後も、1993年3月のような「準戦時体制」突入はなかった。頂いたコメントによると、準戦時体制は当時の最高司令官、つまり金正日さんにより出されたということである。今回は「1号戦闘勤務態勢」が「最高司令部声明」の中で「最高司令部は・・・戦略ロケット軍部隊と長距離砲兵部隊を含んだ全野戦砲兵軍集団を1号戦闘勤務態勢に入らせる」という形を取って出されており、最高司令官個人の命令ではなく、最高司令部という集団の決定、しかも「造成された現事態と関連し、次のような我が軍隊と人民の最終決心」という形で提示されている。

    さらに、この「1号戦闘勤務態勢」なるものは、実に限定的で「この時刻から米国本土とハワイ、グアム島をはじめとした太平洋軍作戦全域の米帝侵略軍基地と南朝鮮とその周辺地域の全ての全対象物を打撃する戦略ロケット軍部隊と長距離砲兵部隊を」対象とするものであるとしている。つまり、全部隊を「準戦時体制」に突入させるのではなく、限定的な部隊のみに「1号戦闘勤務態勢」を適用するということである。もちろん、米国領を攻撃するようなことをすれば、かなり高い確率で即時全面戦争に突入するわけであるが、逆に言えば、できもしないことを限定的に挙げていることからして、実は彼らの言うような「実際の」ものとは全く逆のもの、つまり舌戦の続きであると考えるべきであろう。

    『労働新聞』、「우리 군대와 인민의 단호한 대응의지를 실제적인 군사적행동으로 과시할것이다 조선인민군 최고사령부 성명」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-26-0050&chAction=L

    この点については、米国務省も同様の判断で、「毎度のごとく、舌戦をエスカレートさせているだけ」というようなコメントを出している。もちろん、「そんなことをしても我々は、自身だけではなく同盟国も防衛できるんだから、無駄だよ。それに、そんなことをすれば自分が大変なことになるよ」という警告を発するのも忘れてはいない。

    U.S. Department of State, "Daily Press Briefing", http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2013/03/206703.htm#NORTHKOREA

    それにしても、北朝鮮はなぜこのような「最高司令部声明」を出してきたのであろうか。「労働新聞」の記事では冒頭で「3月25日にも米国は朝8時頃、グアム島のアンダーソン空軍基地に展開している核戦略爆撃機『B-52』編隊を南朝鮮地域上空に不意に突入させ、11時50分頃からは、共和国北半部の中心対象物を仮想した実戦核打撃演習を高いレベルで展開」するなど、「米国の核戦争騒動は危険レベルを超え、実戦レベルで展開されている」と非難している。B-52が北朝鮮に核爆弾を投下するかいなか以前の問題として、戦略爆撃機が北朝鮮にとっては平壌への絨毯爆撃を想起させる恐ろしい飛行機であることは間違いない。

    しかし、それ以上に北朝鮮を怒らせたのは、「2010年にあったオサマ・ビン・ラディンに対する殺害作戦過程」を想起させるような「『韓米連合軍』作戦計画」の中で「殺人打撃手段と方法により、こともあろうに我々の最高尊厳を破壊するための悪辣な作戦計画」を公開したということである。

    特に、「『局地挑発』再発した場合、平壌を含む共和国北半部の至る所に建造されている大元帥様の銅像をミサイルで精密打撃することを計画している」という部分である。

    この報道は「朝鮮中央TV」の「録画報道」でも報道されている。全ての「声明」について調べているわけではないが、今回は、中央通信掲載、中央テレビ放送、労働新聞掲載、uriminzokkiriアップロードの順が少しいつもと違っているような気がする。まず、中央通信の同記事には3月26日のスタンプが付いている。何時頃に掲載されたのかまでは分からないが、同記事は同日の「労働新聞」にも掲載されている。日によって異なるが、大体、同新聞の記事は午前中、8時前後には当日のものに入れ替えられる。しかし、中央テレビの報道は韓国・北韓情報センターのHPによると3月27日の17時32分に放送されている。このような重大ニュースをなぜ「労働新聞」に掲載された翌日まで放送しなかったのであろうか。ところが、中央TVの放送を録画して掲載しているはずのuriminzokkiriには3月26日のタイムスタンプが付いたファイルがアップロードされている。私はこのファイルを27日の4時半頃ダウンロードしているが、少なくとも同日朝にはアップロードされていたはずである。可能性としては、北韓情報センターが25日か26日に臨時ニュースとして放送された同報道を掲載していない可能性はあるが、こんなに重大な臨時ニュースを見逃すというのも変な話である(北韓情報センターの資料は、前日の放送内容が最新である。つまり、その日の放送が終了してからその内容を掲載しているはずだ)。

    話がずれてしまったが、銅像ミサイル攻撃作戦の存在を伝えるアナウンサーは声の調子も顔も非常に怒っている。このアナウンサーは、李チュンヒさんの後を継いだような人で、重大声明などのアナウンスをしばしば担当し、感情表現が実に上手なのであるが、こんなに怒っている様子を出しているのは初めてだと思う。ニュースの冒頭から、何でこの人は今日はこんなに怒っているのだろうと思ったほどである。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-26-14.flv

    朝鮮人民にとって、金日成・金正日銅像というのは、ある種の宗教的崇拝の対象となっているので、それをミサイルで破壊するなどということは、イスラム教徒がコーランを焼かれるのと同じように、宗教的冒涜受けたを感じるのであろう(イスラム教では、偶像崇拝は禁止されているが)。

    銅像に対する見解は、3月27日に出された「祖国平和統一委員会スポークスマン声明」にも書かれており、「世界各国の人々や南朝鮮各階層はもちろん、敵対国の人々も平壌を訪問すると、万寿台の丘に高く頂いた白頭山絶世偉人たちの銅像から訪ねて崇高な経緯を捧げる」とその意味を強調している。また、「朝鮮中央TV」も「<インタビュー>朝鮮人民軍最高司令部声明に接した各界の反応」という番組を放送し、朝鮮人民が銅像破壊作戦を聞いてい激怒する様子を伝えている。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-27-14.flv

    とはいえ、「1号戦闘勤務態勢」は平壌では感じられないようで、インタビューを受ける人の背景では日常がそのまま続いているように見える。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-27-14.flv

    『労働新聞』、「우리의 최고존엄을 감히 건드린자들을 반드시 징벌할것이다 조국평화통일위원회 대변인성명」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-27-0008&chAction=L

    米軍がイラクなどで見せたミサイルの精密誘導技術を使えば、銅像に命中させることなど大して難しいことではないはずである。また、北朝鮮が人間の輪でも作って攻撃に対処するのでなければ、銅像など所詮無人建造物(しかも、米国にとっては何の歴史的価値もない建造物)であり、人的被害も最小限に抑えられるので躊躇なく攻撃するであろう。米韓としては、その圧倒的軍事技術で朝鮮人民を震え上がらせようと考えているのかもしれないが、下手をすると朝鮮人民の米韓に対する憎悪を燃え上がらせ、「一心団結」を一層強固なものにさせる可能性も十分にあるので、慎重になるべきである。旧ソ連のスターリン像やイラクのサダム・フセイン像とはその意味が違う。

    上の「祖国平和統一委員会スポークスマン声明」にも書かれているが、過去記事にも書いたように、北朝鮮は逮捕した「テロリスト」が中朝国境に近い村の金日成像爆破計画を自白する記者会見を放送したことがある。あのときは、金日成像爆破計画など、北朝鮮がでっち上げたストーリーだと思っていたが、「10年3月の哨戒艦事件の後に検討が始まり、同年11月の延坪島砲撃の後に確定」していたとすると、「テロリスト」の自白もでっち上げではなかったのかもしれない。

    『時事通信』、「金父子銅像にミサイル攻撃も=局地挑発に備え報復計画か―韓国軍」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130325-00000023-jij-kr

    朴槿恵さんは3月26日に天安号事件3周期に追悼の辞を読み上げた。その中で朴槿恵さんは「北朝鮮の変化を強く求める」とした上で、「核兵器で体制を守ることができるという考えから一日も早く抜け出」さなければならず、「住民を飢えさせながら核兵器開発に国力を集中することは、国際的な孤立をもたらすだけ」なので、「核とミサイル、挑発と威嚇を自らやめて、国際社会の責任ある一員として変化することだけが北朝鮮が生存できる唯一の道である」と述べた。

    青瓦台HP、「천안함 용사 3주기 추모사」、
    http://www.president.go.kr/kr/president/movie/ktv_movie_list.php?req_uno=59

    これに対して北朝鮮は「祖国平和統一委員会スポークスマン回答」という形で反発した。まず、天安号事件は「同族対決と北進戦争策動に狂奔した李明博一味によりでっち上げられた極悪無道な特大謀略劇であり、既にその真相が明らか」になっていると天安号事件の原因を韓国に押しつけている。

    そして、「青瓦台の主人が、こうした謀略事件をそのまま継承し、対決狂乱劇を展開することも問題であるが、『核を頭に乗せて生きることはできない』など云々し、前任者の真似をして騒ぎ立てているのは、『差別性』と『対北政策転換』を掲げていることからすれば、驚愕せざるを得ない」とし、朴槿恵政権も「李明博『政権』と異なるところがない対決『政権』であることを実証している」と朴槿恵政権が掲げた政策への期待を放棄したような表現をし、「発言に注意する方が良い」と警告している。

    さらに「同族対決を追い求めながら、『信頼プロセス』だの『対話』だの言うのは、偽善と自己欺瞞に過ぎ」ず、「我々は既に青瓦台の毒気を帯びたスカートの風に対して厳重に警告した」と「スカートの風」という表現を使いながら朴槿恵さんを非難している。実名こそ出していないが、これまでより朴槿恵政権に対する非難のレベルを上げたことは間違いない。これも、直接的には天安号事件の追悼の辞を受けた形を取っているが、間接的には銅像破壊作戦計画公表が強く作用しているものと思われる。

    『労働新聞』、「조국평화통일위원회 대변인대답」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-28-0030&chAction=D

    それにしても、銅像破壊計画を朝鮮日報にこのタイミングでリークしたのはどのような意図からであろうか。リークの過程については下の「朝鮮日報」の記事に書かれているが、もしかすると韓国軍部も金正恩さんが青瓦台や果川を攻撃対象としてピンポイントで指さしている写真を見て熱くなったのかもしれないと考えてしまう。

    『朝鮮日報日本語版』、「【コラム】韓国紙を熟読する金正恩氏」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130328-00001217-chosun-kr

    本記事とは直接関係ないが、中国の対応が今一つ分からない。希望的観測も含めてか、日韓のメディアでは中国が対北朝鮮制裁に乗りだしたような記事が多い。

    『中央日報日本語版』、「金正恩の相次ぐ挑発に…北朝鮮の血盟・中国が変わった(1)」、
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130326-00000013-cnippou-kr

    特に上の記事では「中国が先月、対北朝鮮原油提供パイプラインのバルブを閉めた」としているが、これが事実であるとすれば、実に大変なことである。記事にもあるように、中国が原油パイプラインを「点検」の名目で2006年10月の核実験後に閉めて以来の出来事であるからである。しかもその理由が「点検」ではなく、「懲罰」であるとすれば本当に一大事だ。

    しかし一方で、米国務省定例記者会見では記者から「吉林省が北朝鮮との間の輸送と貿易のつながりを増加させると発表したが、米国はそれについてどう考えるのか」という質問が出された。この件について、China Daily.comで検索したが出てこなかった。米国務省報道官は「特定の省の決定については関知していないが、中国の中央政府には米国の立場を繰り返し伝えている」と答弁している。記者の質問から想像するとどうやら吉林省政府が清津と北朝鮮の都市とを繋ぐ高速鉄道建設を請け負ったようである。

    U.S. Department of State, "Daily Press Briefing", http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2013/03/206713.htm#NORTHKOREA

    中国が何をしているのかよく分からないのだが、もしかすると北朝鮮が対南対決をヒートアップさせているのは、中国に対して「パイプライン閉鎖のようなことをやると、あなたが困る混乱を引き起こしますよ」という牽制なのかもしれない。

    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が呉仲洽7連隊称号を授与され朝鮮人民軍第1973部隊を視察された」:青瓦台、果川を狙う? (2013年3月23日 「労働新聞」「朝鮮中央TV」)

    数日前「労働新聞」にこのような記事が掲載された。この記事の内容は「録画報道」として「朝鮮中央TV」でも放映されたが、その中に気になる場面があった。下の写真がそれであるが、金正恩さんが「XX計画」と書かれた地図を指さしながら人民軍の指揮官たちと何かを話している。このシーンでのナレーションは金正恩さんが「部隊の前には敵の牙城を打撃しなければならない重要な任務があり」、「一旦戦闘が始まったら、敵の心臓部に雷のように突入し、対象となる軍事対象物と傀儡反動統治機関を火炎と共に打撃しなければならない」と語ったと言っている。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-23-11-y.flv

    「傀儡反動統治機関」といえば青瓦台であるが、下のソウルの地図で見ると金正恩さんが指さしているのは、大体青瓦台の場所である。

    Inwangsanの右横の赤い点(Seoulという文字の上の辺り)が青瓦台である。金正恩さんが見ている地図の左側には水色の水域(漢江)があり、折れてぶら下がっている部分のソウル市境界線のくぼみと下の地図の同くぼみが一致する。
    blue house2
    Source: Google Maps, http://maps.google.co.jp/

    背景にある地図は、攻撃対象拠点の地図なのだろうが、右上の地図などは青瓦台の地図なのかもしれない。Google satelliteから見た青瓦台。
    seigadai2.jpg
    Source: Google Maps, http://maps.google.co.jp/

    また、下の写真では背景に「重要対象XX資料」として写真が貼られている。攻撃目標の写真なのであろう。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-23-11-y.flv

    『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김 정 은동지께서 오중흡7련대칭호를 수여받은 조선인민군 제1973군부대를 시찰하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-23-0001&chAction=L

    また、24日の「労働新聞」には「第1973軍部隊管下2大隊を視察された」という記事があり、同「録画報道」が「朝鮮中央TV」で放送された。

    この中でも金正恩さんがソウルと思われるモデルを眺める場面が紹介されている。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-24-13-y.flv

    このシーンで金正恩さんが指さしているのは果川(Gwacheon)市のようだ。果川市は、ソウルから移転した韓国政府庁舎がある市である。実に芸が細かいといわざるを得ない。

    漢江のうねり具合からして果川市の場所のように見える。
    gwachon2.jpg
    Source: Google Maps, http://maps.google.co.jp/

    同部隊では、指揮官に拳銃の射撃指導も行った。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-24-13-y.flv

    『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김 정 은동지께서 오중흡7련대칭호를 수여받은 조선인민군 제1973군부대관하 2대대를 시찰하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-24-0001&chAction=L

    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が人民軍隊で新たに建造している食堂船『大同江』を視察された」、「第1501軍部隊を視察された」 (2013年3月25日 「労働新聞」)

    金正恩さんが軍部隊視察を凄い勢いでこなしているが、その間に「食堂船」も視察したと「労働新聞」が伝えた。『大同江』と名付けられたこの「食堂船」は、全長68.98m、全高26m、排水量820トン、収容人員は300人の2階建ての船だという。日本ではこの手の船に乗ったことはないが、中国では何回か乗った。記憶に残っているのは、重慶で乗った「食堂船」で、長江から見る重慶の夜景を堪能しながら、船内でビュッフェ式の食事をした。「大同江」号もそのような「食堂船」にしたいと思っているのかもしれないが、ライトアップをすると電力を消費するので昼間だけの運行にするのかもしれない。記事では、「平壌の自慢である大同江に現代的な食堂船を浮かべ、我が人民が利用するようにしようというのは、将軍様の生前の意であった」とし、同船の建造を「意義深い太陽節までに無条件終えるように」と建造を担当する人民軍に命じたとのことである。この船も太陽節を記念する記念碑的建造物となるのであろう。

    『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김 정 은동지께서 인민군대에서 새로 건조하고있는 식당배 《대동강》호를 돌아보시였다」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-25-0008

    背景にあるのが「大同江」号。「私の国が一番よい」というスローガンが掲げられている。
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    Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-25-0008

    報道が前後するが、同日の「労働新聞」には、金正恩さんが軍部隊を視察したという報道もある。記事では「第1501部隊」と書かれているが、ハイテク兵器を開発する部隊のようだ。というのは、金正恩さんが「先端装備が戦闘に便利なように作られており、今すぐにでも激戦地に突進するように見」えるとし、「軍部隊が開発した先端戦闘技術機材が戦闘環境で俊敏な機動力があるように作られており、知能化、軽量化された」ことに満足の意を示している。そして、「訓練場では、戦闘技術機材を起動させて、性能を試され」たとし、下のような写真を掲載している。

    『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김 정 은동지께서 조선인민군 제1501군부대를 시찰하시였다」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-25-0001

    機甲車両の上に設置された誘導装置のようなものが見える。
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    Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-25-0001

    「3日で終わる短期速決戦 在米統一学研究所 所長 ハン・ホソク」 (2013年3月22日 「uriminzokkiri-TV」)

    今朝、別記事に北朝鮮は米国を狙っていると書いたばかりだが、韓国を殲滅するシナリオを紹介する動画がurimonzokkiri-TVに掲載された。

    「3日で終わる短期速決戦」
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    「第1日目、人民軍前方軍団の砲兵が発射命令を受けてから30分間、連射ロケット砲、榴弾砲、地対地短距離ミサイルなどが米韓連合軍の基地に向かって夕立のように降り注ぐ。」
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    「この作戦を北朝鮮では『火の庭作り』と呼んでいる。これが米韓連合軍に対する先制攻撃となる。」(「火の庭作り」については、色々とコメントを頂いているので参照されたい。)
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    「一方、北朝鮮の特殊部隊である軽歩兵部隊5万人が米韓連合軍の後方にある空軍基地、海軍基地、レーダー施設、ミサイル基地、発電所、港湾などに対する奇襲攻撃を行う。」
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    「それだけではなく、人民軍最精鋭兵力として知られる爆風軍団がソウルをはじめとした南の都市に侵入し、主要拠点を占領し、南に在留する米国人15万人を捕虜にする。」
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    「戦線が短い朝鮮半島では、後方地域に対する人民軍特殊戦力の浸透作戦と奇襲作戦は、米韓連合軍に決定的な打撃を与えることになる。」
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    「人民軍の砲撃により、南朝鮮の榴弾砲は使えなくなり、米韓連合軍の歩兵部隊も戦線を立て直すことができなくなり、敗走状態に陥る。」
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    「米国と南朝鮮軍のヘリコプターは離陸することもできず、駐機場で破壊されるだろう。人民軍航空部隊は、米韓機甲部隊を空対地ミサイルと誘導爆弾で破壊する。」
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    「短期即決線2日目は、人民軍が南進総攻勢を開始する日である。」
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    「人民軍空挺部隊が1万5百人が南側の大都市80m上空から降下し、南朝鮮の後方部隊と市街戦を展開することになるが、南朝鮮の後方部隊は、特殊訓練を受けた人民軍空挺部隊に勝てる可能性はない。」(ソウル上空から落下する人民軍パラシュート部隊)
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    「人民軍の機械化軍団は、戦車4千6百台と装甲車3千台で南進を続ける。そして、軍用トラックに乗った人民軍部隊が、南朝鮮各都市の南朝鮮軍を掃討する。」
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    「もちろん人民軍は、短期即決戦が始まるとすぐに、米軍太平洋司令部指揮下全域を強力な大量破壊兵器で先制攻撃し、瞬時に制圧する。」
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    「短期即決戦最終日。戦争が始まっても避難する場所がないソウル市民は、大混乱に陥る。電気の供給、飲料水供給、食料供給、都市ガス供給、自動車燃料供給、交通網、通信網、放送網が断絶する。ソウルだけではなく、他の都市でも事情は同じだ。」
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    「この日、実際の戦闘はほとんど終わり、人民軍が占領地帯で治安を維持し、供給体制を復旧する『安定化作戦』が展開される。」
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    「このように人民軍の統一大戦シナリオは、3日で終わる戦争シナリオである。」
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    「米国軍部が、米国・南朝鮮連合軍の北進戦争シナリオをシミュレーションしているにもかかわらず、その結果をメディアに公開できず、戦々恐々としている理由が分かる。」
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    この動画のバックグランドミュージックはモランボン楽団「タンスメ(一気に)」であるが、実にタイミングよく「タンスメ」のかけ声と共に勝利の画面が出て終わる。
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    Source: Uriminzok-TV,http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=minsim&st=true&no=14050

    このシナリオは、タイトルにもあるように在米朝鮮人が描いたシナリオということになっている。シナリオによれば、朝鮮戦争のときよりも早く南を制圧することになっているだけではなく、最大の違いは「大量破壊兵器で後方の米太平洋軍所属基地を制圧する」と言っている点である。もちろん、朝鮮半島で戦争が発生した場合の最大の後方基地は朝鮮戦争当時と変わらず日本のはずなので、北朝鮮の大量破壊兵器は日本の米軍基地に向けて発射されるということになる。在韓米国人15万人を捕虜とするといっているが、15万人には当然民間人も含まれているので、人質といった方が正しいのかもしれない。

    このシナリオでは、北朝鮮は無傷で終わる想定になっているが、そんなことはもちろんあり得ない。一方で、韓国の都市がほぼ無傷で北朝鮮軍に制圧されることもないであろう。自滅覚悟で戦争をするとき、北朝鮮はソウルを火の海にすることを考えるであろう。

    これは、対外向けの番組ではあるが、朝鮮人民はこういう作戦について常日頃聞かされているのであろうか。

    「敬愛する金正恩同志に中国共産党総書記である中華人民共和国主席、中央軍事委員会主席が返信を送って来た」 (2013年3月22日 「労働新聞」)

    「労働新聞」に金正恩さんが習近平さんに送った祝電に対する返信が来たという記事が出た。

    返信では「中朝両国は親善的な隣国です」とした上で、「新たな情勢の中で、私はあなたと共に伝統的な中朝親善協力関係のたゆまぬ発展を進展させ、両国の繁栄と地域の平和と安定を促進することに寄与することを願います」としている。「新たな情勢」という表現が使われているが、それが「習近平新体制」を意味するのか、それとも12月の北朝鮮によるロケット発射以降出された2つの安保理決議を受けた「情勢」であるのか、あるいはその両方を意味するのかは分からない。しかし、「新たな情勢」と「中朝親善協力関係」を敢えて並記しているのは、これまでの中朝関係に何らかの変化をもたらされるであろうというメッセージを込めた可能性がある。

    過去のこのようなオケージョンに中国指導者が北朝鮮指導者に送った返信と比較してみれば「新たな情勢」の意味をもう少し特定することができようが、中国の対北朝鮮政策に変化が現れているという報道も見られるので、今後の中朝関係に注目する必要がある。

    習近平さんの外遊スケジュールは発表されており、ロシア訪問後は、アフリカ諸国を回ることになっている。ロシア訪問は対米勢力としての結束を固める目的であろうし、アフリカは中国がアフリカに持つ経済権益を確固としたものにするためであろう。しかし、彼の訪朝や金正恩さんの訪中については全く話がない。

    「キーリゾルブ」もサイバーテロの非難合戦があったものの、軍事衝突に至ることなく終了した。「トクスリ」訓練はまだ続く。「20時報道」の「全面対決戦」特集はまだ昨日もあったが、今後、「太陽節」特集になっていくと思われる。向こう数週間は、太陽節に向けた祝賀ムードを高めつつ、「全面対決戦」は一旦トーンを下げると思われる。

    また、最高人民会議第12期第7次大会が4月1日に招集されており、人事や経済関連の事項が決定されると予想される。

    しかし、4月25日には朝鮮人民軍創建記念日があるので、これを前後して何らかの軍事的挑発を行う可能性は排除できない。タイミング的にも、「トクスリ」が終わる時期であり、「キーリゾルブ」と「トクスリ」を合わせた報復ということにするかもしれない。

    しかし、「全面対決戦」は、「米国」、特に最近ではピンポイントでオバマさんやホワイトハウスをターゲットとしており(沖縄やグアムの米軍基地も「照準」に入っているとは言っているが)、「傀儡一味」の「軍部好戦狂」はターゲットの下位に置かれている。その意味では、昨年この時期の反李明博キャンペーンと相当にトーンが異なっている。

    当面は、最高人民会議で何が決まるのかに注目する必要がありそうだ。

    『労働新聞』、「경애하는 김 정 은동지께 중국공산당 중앙위원회 총서기인 중화인민공화국 주석,중앙군사위원회 주석이 답전을 보내여왔다」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-22-0002

    『労働新聞』、「조선민주주의인민공화국 최고인민회의 상임위원회 결정 제121호 주체102(2013)년 3월 20일 조선민주주의인민공화국 최고인민회의를 소집함에 대하여」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-21-0004&chAction=L

    msn、「中国・習近平主席、22日からロシアなど初外遊」、http://sankei.jp.msn.com/world/news/130318/chn13031819080009-n1.htm

    uriminzoku-TV、「[화면편집물] 우리도 준비되였다」、http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?categ1=11&no=14027

    『労働新聞』、「미국의 로골적인 핵공갈을 그보다 더 위력한 우리 식의 군사적대응으로 짓부셔버릴것이다 조선인민군 최고사령부 대변인 기자의 질문에 대답」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-22-0007&chAction=D

    「敬愛する金正恩同志が全国軽工業大会でなさった演説」 (2013年3月19日 「労働新聞」)

    養魚場の現地指導以外ではこのところ軍関連の現地指導ばかりしていた金正恩さんだが、全国軽工業大会に出席して軽工業を発展させて人民経済向上させることに関する演説を行った。しかし、演説の中に、改革に繋がるような特徴を見いだすことはできなかった。

    演説では「米国と傀儡一味」により造り出された朝鮮半島の緊張状態に触れた上で、「朝鮮半島で新たな戦争を防ぎ平和的な環境で経済建設を進めて、人民生活問題を一日も早く解決しようというのは、我が党の確固不同たる立場です」と、戦争の雰囲気が高まる中でも「全国軽工業大会」を開催することの意味を強調している。しかし、休戦協定を白紙化した上、全面対決戦に突入した後、いかにして「新たな戦争を防ぎ平和的な環境」を造成するのかについては触れていない。「核抑止力」こそがそれをもたらすと考えているのかもしれないが、少なくとも現状はその逆である。

    軽工業の現状にについては「我が国に建設された軽工業の土台は確固たるものであり、既存の工場、企業所をフル稼働させれば、我が人民の生活上の要求と嗜好に合った様々な消費財を基本的に提供できる」とし、現行設備を十分に稼働させることの重要性について述べている。

    しかし、「将軍様が軽工業部門の工場や企業所、商業施設を現地指導される毎に、試作品や見本を作り展示したり、商店に陳列するだけではなく、生産を正常化して実際に人民に提供しなければならないことについて強く求められた」にもかかわらず、「将軍様の偉勲は貫徹されておらず」とし依然として現状は改善されていないという認識を示している。

    軽工業部門がまず取り組まなければならない課題として「人民生活に必要な消費財を大量生産し、特に、基礎食品と1次消費財生産を決定的に増やさなければならない」を挙げている。「基礎食品」とは日常的に使う日本で言うところの味噌や醤油といった加工食品であろうが、「1次消費財」というのが何か分からないが、想像するに衣食住の衣に当たる製品であろう。金正恩さんの認識でも、依然として衣食が十分に満たされていないものとみられる。

    しかし、量の問題だけではなく「生産計画を遂行したと言いながら、生産量にだけこだわり、消費財の室を軽視する間違った傾向を徹底して警戒しなければならない」とも述べ、質の問題も指摘している。しかし、北朝鮮ではまず量を確保することが重要であるはずだ。それにもかかわらず質について述べているのは、一部工場で生産されている消費財の中に使用に耐えられないようなものが含まれているからなのであろうか。

    「我が人民の文化的水準と生活上の要求は、日に日に高まっており、人民が使おうとしない質が低い消費財は幾ら生産しても意味がない」とも語っているので、平壌市民のように相対的に「文化的水準」が高い生活をしている人々にとっては、そういうことなのであろう。言外に北朝鮮製を好まず、中国製を好む傾向を批判しているのかもしれない。

    軽工業部門で生産がふるわない原因を「軽工業は生産循環周期が短く、生産物が早く消費される特性があるので、原料や資材を適切に供給する問題が生産を正常化するための重要な課題となっています」と、工場が稼働しないのは工場自体の責任ではなく、生産活動に必要な原料が十分に供給されないところにあると指摘している。

    それを解決するためには「当面、人民生活資金を供給することになっている部署の役割を高めなければなりません」としている。「人民生活資金を供給」といっているので、資本主義経済における金融機関と思いきやどうやらそうでないようで、そうした部署は「軽工業発展のフロントラインを守るという責任感を持ち、生産を大々的に増やし、生産と輸出の一体化を実現して外国との加工貿易を拡大発展させなければならない」といっている。これも分かりにくい表現であるが、中国からの委託加工を行っている企業や開城工業団地内の企業のことを言っているようである。やはり、北朝鮮の人民生活水準を引き上げるための基本的な問題は、これら海外と提携関係にある企業がどれだけ外貨を稼ぐのかという所にかかっているようである。

    しかし、金正恩演説では「軽工業原料、資材問題を解決するための根本的な方策は、原料や資材の国産化を実現することです」と相変わらず「自力更生」も強調している。「工場を現代化するといいながら、他人の物をじろじろ見ながら、多くの外貨を使って設備を外国から購入しようとだけする傾向はなくさなければなりません」と工作機械などを輸入に依存することに釘を刺している。北朝鮮は、工作機械などを海外に依存するのをなぜこれほどまでに嫌がるのであろうか。北朝鮮の旧式の工作機械は旧ソ連から持ち込まれたものがほとんどである。これは、「テレビ連続劇」や「映画」に登場する工作機械の文字盤がしばしばロシア語になっていることからも分かる。ソ連が崩壊し、取引がハードカレンシー化してそれらの機械の保守がほとんど不可能な状況に陥ったので、その轍を踏まないように国産化にこだわるのであろうか。発想としては、良好な国際関係を維持しながら、韓国のように外国製(韓国の場合は日本製)の工作機械を使い生産を増大させていく方法もあり得るはずだが、そういう発想はないようだ。

    金正恩演説では「軽工業工場と商業機関との間で、生産された製品が不法に取引される現象をなくし」と工場と商店の間で製品の横流しが行われている現状に対する認識も示している。彼の演説で批判されるくらいなので、相当一般的にこうしたことが行われているということがうかがわれる。

    同演説の終わりの部分では、党幹部(イルクン)についても述べているが、ここでも「今日、我々の党幹部の中で生じている輸入病は、軽工業発展の障害となっています」と安易な輸入を戒めている。ここでいっている輸入が上で書いた生産設備の輸入を指すのか、消費財自体の輸入を指すのかは分からないが、いずれにしても現場では自力更生に固執しているよりも、中国から調達した方が容易であるという風潮が蔓延しているのであろう。

    しかし、そのようなことが繰り返し指摘されても改善されないのか「今、一部の党組織では、党の方針が提示されると初期には一生懸命努力するが、一定の期間が過ぎるとその執行をやめてしまう傾向がある」とし、こうした態度は改めなければならないと戒めている。

    金正恩演説からは、色々と困っていることは伝わってくるが、それを改善するにしても精神主義以外にこれといった方策が全く示されていない。北朝鮮の経済システムが既に限界に来ているということの表れであろうが、それをどう乗り越えようとしているのか、朝鮮大学校の経済学担当者が言っていたように「金日成主義の経済」を建設するにしても、それが人民生活の向上であるとすれば、その方途についてはフレキシビリティーがあってもよいはずだ。

    『労働新聞』、「경애하는 김 정 은동지께서 전국경공업대회에서 하신 연설」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-19-0001

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    Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-19-0001

    「侵略の牙城に雷を落とせ」:ホワイトハウスが照準に (2013年3月18日 「uriminzokkiri-TV」)

    uriminzokkiri-TVに米国を挑発する動画が掲載された。リュ・ドンホという詩人の詩と軍事訓練などの動画や静止画を組み合わせた構成であるが、なかなか迫力はある。以下、その詩の一部である。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=poetry&st=true&no=14000

    「一秒一秒、核戦争の導火線が燃えてい行く」
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=poetry&st=true&no=14000

    「我々の清んだ青い空にキノコ雲が押し寄せてくる」
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=poetry&st=true&no=14000

    「侵略者を一気に粉砕し不死を。殲滅の核雷鳴よ」
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=poetry&st=true&no=14000

    「米国は誤算するな。この地は決してバルカン半島ではない。イラクやリビアではもっとない」
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=poetry&st=true&no=14000

    「今日は、核保有国、宇宙強国、天下一の名将を高く頂いた白頭山大国」
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=poetry&st=true&no=14000

    「万福の春が来るこの地を守る長距離ロケットは発射命令を待っている」
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=poetry&st=true&no=14000

    「朝鮮の戦略ロケットの射程距離には限界がない」
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=poetry&st=true&no=14000

    「ホワイトハウスが長距離ミサイルの照準鏡に捉えられた。戦争の牙城が核爆弾の打撃圏に入った」
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=poetry&st=true&no=14000

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=poetry&st=true&no=14000

    「朝鮮は世界の中にあっても、朝鮮がない世界はない」
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=poetry&st=true&no=14000

    「米帝の永遠の滅亡を宣告する」
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=poetry&st=true&no=14000

    「朝鮮カトリック教協会中央委員会委員長カトリック教会教皇の司牧活動に成果があることを祝願」 (2013年3月17日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が、北朝鮮のカトリック教関係者が新ローマ法王であるフランチェスコ1世に祝電を送ったと報じた。記事によると「朝鮮カトリック教協会中央委員会委員長のサミュエル・チャンジェオンは、主様の恩寵とカトリック協会の熱い信頼の中で第266代法王として選出されたベルゴリオ枢機卿に祝電を送」り、「キリストの地上の代理者としてカトリック教会の発展と愛と平和、正義を具現するための法王の司牧活動で肯定的な成果があることを祝願した」と報じた。

    朝鮮カトリック教協会中央委員会委員長は、「委員長」であるが神父なのか信徒なのか分からない。私にはカトリックに関する知識はほとんどないが、神学校というのがあるくらいなので、神父になるにはこれらの学校で何らかの教育を受けなければならないはずだ。朝鮮人民が神学校に通う機会はないだろうから、彼は信徒であろう。委員長が信徒であるならば、北朝鮮には神父は存在しないことになる。すると不思議なのは、彼に「サミュエル」という洗礼名が付いていることである。洗礼名というのは神父によって与えられるものであるとすれば、「サミュエル」というチャン・ジェオン委員長の洗礼名は誰によって与えられたのであろうか。

    ちなみにこの記事は本日の「労働新聞」には掲載されていない。「主様の恩寵」などという言葉は、北朝鮮国内で存在してはならない言葉なのであろう。恩情は大元帥様や元帥様から与えられるものなのだから。

    「朝鮮民主主義人民共和国外務省スポークスマン談話」:我々は核を放棄しない (2013年3月17日 「労働新聞」)

    同様の表題の記事は昨日「朝鮮中央通信」で配信されていたが、17日付けの「労働新聞」にも掲載された。

    記事は「米国の高位当局者」、つまりドニロン国家安全保障問題担当大統領補佐官の発言に反発するもので、「まるで我々の核保有のために情勢が激化しているように事態を歪曲」していると主張している。そして、「米国が黒白を逆転させた詭弁で我々の核保有を非難しながら、敵対視政策に固執する条件の下で、我々は自衛的な核抑止力に関する億千不変の原則的立場を再び明言する」と米国の「敵対視政策」がある限りは「自衛的な核抑止力」放棄しないと主張している。

    また、「我々は、誰それに認められようと核兵器を保有したのでもなく、今後も我々を核保有国として認めてくれとも誰それに懇願することは絶対にない」とし、ドニロンさんが「北朝鮮を核保有国と認めない」と発言したことに反発している。

    そして、北朝鮮の核保有の目的を「侵略の本拠地が地球上のどこであれ無慈悲に懲罰する」ためであると米国を威嚇、「経済的恵沢と交換するための代価として核を保有したと考えるのは誤算である」とし、瀬戸際戦略を展開するための核兵器ではないということを強調し、「核放棄をすれば経済的な支援を受けられる」としてドニロン発言に反発している。

    「談話」は「米国が対朝鮮敵対視政策を放棄しない限り、我々は米国と対話する考えはなく、誰がなんと言っても我々が定めた先軍の航路に従い最後までまっすぐに前進するであろう」と締めくくられている。

    ここで問題なのは、北朝鮮は「対朝鮮敵対視政策」をどのように規定しているのかということである。彼らが究極的には体制を米国に認めさせるための「平和協定」を求めていることは、「休戦協定白紙化」の際にも「平和協定」について話し合いをすべきただという主張をしてきたことからも分かる。しかし、「敵対視政策」放棄が「平和協定」締結であるとするならば、「対話」自体が成り立たなくなってしまう。もちろん、この種の北朝鮮のレトリックではロジックが混乱していることはしばしばあるので珍しいことではないが、この「談話」だけを取り上げれば、対話の糸口を見いだすことはさらに難しくなったといえる。

    『労働新聞』、「조선민주주의인민공화국 외무성 대변인담화」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-17-0019

    その系で、米国abc NEWSによる単独インタビューでオバマさんは、北朝鮮の核・ミサイル能力についての認識を次のように示している。放映されたインタビューの中で北朝鮮問題に触れるのは本の短い時間であるが、北朝鮮のミサイルの米本土攻撃能力について質問され「多分攻撃できないであろうが、楽観視するのはよくない」とし、「(米本土を北朝鮮が攻撃できる段階に至るのは)そんなに近い将来の話ではないが、我々は米本土に対する如何なる攻撃にも対処できる防衛体制を整えており、北朝鮮は米本土を攻撃することはできないだろう」と述べている。

    abc NEWS, "President Obama on 'Common Sense Caucus' in GOP",
    http://abcnews.go.com/GMA/video/president-obama-interview-2013-george-stephanopoulos-gma-common-18716865

    オバマ発言には、北朝鮮のミサイル能力が12月12日のロケット発射成功を受けてかなり高まったという認識が表れている。もちろん、それが直近の脅威ではなく、また攻撃されても十分に対処できるという自信は示しているが、一方で放置をしておけばその能力をどんどん高めて行くであろうという危機感も持っているはずである。事実、北朝鮮は1994年の核危機以来、紆余曲折はあったものの、着々と核・ミサイル開発を進めてきた。

    この状況にどのように対処したらよいのか。言い尽くされた「対話と制裁」は原則的に正しいとしても、その方策については八方塞がりの感がある。

    「稚拙で卑劣な行為」:北朝鮮サイトに対するサイバー攻撃非難 (2013年3月14日 「朝鮮中央通信」)

    コメントで教えて頂いたので調べてみたら、「朝鮮中央通信」が表題のような「論評」で米国による北朝鮮が運営するインターネットサイトに対するサイバー攻撃を非難している。

    記事では「共和国で運営しているインターネットサイトに対する集中的で執拗なウィルス攻撃が連日敢行されている」とし、「こうしたサイバー攻撃が米国をはじめとした敵対勢力が発狂的に敢行している『キーリゾルブ』合同軍事練習と時を同じくしていることだ」と、北朝鮮サイトに対する攻撃がキーリゾルブ演習の一環であると主張している。

    確かに、昨日の記事にも書いたように、特に昨日はほぼ終日「朝鮮中央通信」と「労働新聞」つまり、北朝鮮国内に設置されているとされるkpドメインのサイトは軒並みアクセスが不可能な状態であった。もちろんこれが、北朝鮮の自作自演によるものかどうかは分からないが、米韓が軍事演習の一環として北朝鮮の「口をふさぐ」訓練をしたとしても不思議ではない。さらに言えば、米韓とは関係なく、中国の民間ハッカーによる攻撃であった可能性も十分にある。

    関連記事がChina Daily.comにも出ており、「北朝鮮でインターネット・サービスを提供するスター合弁会社によると、平壌におけるPCと携帯からのインターネットのアクセスが水曜日の朝からサイバー攻撃により不可能になり、金曜日の朝になりやっと回復した」とのことである。この記事のとおりだとすると、サイバー攻撃は北朝鮮官営メディアの口をふさいだだけではなく、北朝鮮国内のインターネットを完全に麻痺させたということになる。

    China Daily.com,"DPRK blames US, ROK for cyber attacks",
    http://europe.chinadaily.com.cn/world/2013-03/15/content_16312540.htm

    これが、米国や韓国の話であれば軍事だけではなく経済、さらには国民のライフラインに深刻な影響を及ぼすことになるが、北朝鮮では「労働新聞が見られなくなったの」という程度の話なのであろう。誰の仕業かは別として、インターネット攻撃は北朝鮮を困らせたり激怒させたりするほどのインパクトは持たないということであろう。

    この論評は14日に配信されているので15日(本日)の「労働新聞」に掲載されてもよさそうなものだが、タイトルで見た限りでは掲載されていないようだ。朝鮮人民に大した影響がなかったのか、攻撃された事実自体を伝えたくないのかは分からないが、いずれにせよ騒ぎ立てるほどの問題ではなかったのであろう。

    もしかすると、一番困ったのは私のような北朝鮮ワッチャーなのかもしれない。

    「20時報道」:労農赤衛隊、中国全人代 (2013年3月14日 「朝鮮中央TV」)

    14日の「20時報道」でも「米帝」に激怒しながら戦闘訓練をする内務軍などが紹介している。

    咸鏡北道人民保安局(警察)でも戦闘訓練を行っている。警察犬だろうか、火の輪を飛び抜けたり壁を飛び越したりしているが、人間の方は低い壁を飛び越すこともなく、横を通り抜けている。インタビューに答える人は「無尽強大な力を誇示する」と言っているが、壁を飛び越せないのは人民保安局とはいえ今一つである。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-17.flv

    また、昨日書いた記事のコメントで話題になった「労農赤衛軍」も登場している。コメントには労農赤衛「軍」になったのではないかと書いた。軍事パレードのナレーションなどではそう言っているのだが、朝鮮人民の口には「労農赤衛隊」という言葉がなじんでいるようでインタビューを受ける人はみなそう言っている。あるいは、予備役としての労の赤衛隊とは別に正規軍組織としての労農赤衛軍が組織されたのであろうか。

    銃を受け取る労農赤衛軍の隊員。銃には番号が付けられている。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-17.flv

    三人の子供の母という労農赤衛軍の隊員。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-17.flv
     
    「20時報道」の国際ニュースの中では、中国全人代で習近平さんが主席に選出されたことなどを伝えている。映像なしのニュースであるが、中国関連のニュースは久しぶりのような気がしてならない(事実関係は未確認)。過去の同報道について映像を使っていたとすれば、今回は格下げということになろうが、さすがに全人代で中国の最高指導者が決まったことについて伝えないわけにもいかなかったということか。

    金正恩さんも14日に祝電を送っている。彼は祝電の中で中国が「初歩的に富裕な社会主義社会を全面的に建設していく」成果を出すことを願っているとしているが、「初歩的に富裕な」というのは一体どういう意味なのであろうか。中朝間の社会主義建設で使う通常の表現なのかもしれないが、そうでないとすれば北朝鮮から見れば随分と「富裕」な中国を随分低く表現していることになる。

    金正恩祝電はまた、「朝中親善を重んじ強固に発展させていくのは、我が党と共和国政府の一貫した立場」であり、「伝統的な朝中親善協力関係が双方の共同の努力によって継続して立派に発展していくことを信じ」ているているとしている。年賀状の返信を出したとは報じられていない金正恩さんであるが、定型文程度の祝電ではあるが中国新指導部に送った。

    『労働新聞』、「중국공산당 중앙위원회 총서기인 중화인민공화국 주석,중화인민공화국 중앙군사위원회 주석에게 축전을 보내시였다」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-15-0002

    「<特集>世界を震撼させた自主の核雷鳴」 (2013年3月14日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」が2月12日の核実験を巡る番組を放送した。約20分の番組であるが、北朝鮮が核開発をした理由やそれを指導した金正日・金正恩さんの偉大さ、強大な国力の誇示などをコンパクトにまとめている。これまで拙ブログでも紹介してきた番組の総集編的な要素もあるが、初めて見るシーンもありなかなか興味深い。

    番組は、北朝鮮が核実験を実施した2月12日の平壌の様子から始まる。ナレーションは「旧正月の雰囲気の明るい雰囲気の中にありました」と平壌の町の平和な風景を紹介している。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv

    しかし「我が国を取り巻く国際社会の雰囲気は変わりありませんでした」とし、「党中央委員会軍事委員会拡大会議に関する報道がなされた2月3日から、地球上の全ての通信や観測機関は触覚を動かしていた」としている。このナレーションは、同会議での金正恩さんの「重要な結論」が核実験を示すものであったことを北朝鮮が公式的に認めたものである。

    続いて、2月12日の核実験を報じたロシア・イタルタス通信の報道を紹介する。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv

    そして、「15時近くに朝鮮中央テレビには1件の朝鮮中央通信社の報道が届いた」とFAXで報道が電送される場面を見せる。演出なのだろうが、今時FAXとは。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv

    あまり見ることはできない朝鮮中央TVの調整室。日本の放送関係者がこの装備をどう見るのか知りたいところだ。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv

    SONY製のHDカメラ。これも制裁対象品目に含まれるのであろうか。LED板には「報道」と書かれている。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv

    そして、「2012年12月12日、実用衛星発射の成功から2ヶ月後のこの日に観測された震度4.9の振動と1分40秒に過ぎない朝鮮中央通信社の報道は正常な自転運動をしている地球をさらに強く揺らしました」というナレーションに続き、モランボン楽団の「勝利者」の演奏が流れ番組が始まる。「朝鮮中央TV」の番組というのは、冒頭で番組タイトルが赤い背景の中に映し出されるというパターンが多いので、このような導入は珍しい。また、モランボン楽団の演奏も効果的に使われている。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv

    その後、この核実験成功を報道するニュースの画面が出るが、アナウンサーの声にはエコーが掛けられている。このエコー効果の使用も私は初めて聞いた。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv

    そして、核実験で「核の小型化、多種化に成功した」ことなどを紹介し、それを喜ぶ朝鮮人民の様子を見せている。

    核実験成功をのニュースを聞き、喜ぶ製鉄所の労働者。背景にあるボードには「2月鋼鉄増産・・・」と書かれている。予告なく実施された核実験当日に撮影しているはずはないので、事後の演出であろうが2月というのは結果なのか経過なのか。結果であれば、3月の撮影ということになる。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv

    そして、「人民生活向上のための経済建設を推進しようとしている我々が、国の自主権を最後まで守るために核実験という正々堂々とした自衛的措置を取らなければならなかった」と核実験の正当性を主張する。そして、その理由を説明するために米国の原爆開発の映像を紹介する。

    1945年7月16日ニューメキシコ州で行われた核実験に使用された核爆弾
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv

    ナレーションは「原子爆弾を研究した科学者も米国がこの殺人兵器を独占する野望を持っており、この核実験を契機に思い通りに世界を恐喝するだろうとは予測もできなかった」と述べている。そして、キノコ雲をみた科学者がキュリー夫人の言葉を思い出したと続ける。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv

    キュリー夫人は「もしこの放射線を悪い奴らが使うなら、とても危険なことです。それを思うと、人類は自然の秘密を知る資格があるのかと疑ってしまいます。しかし私は、人類の新しい発見から悪いものではなくより優秀なものにつなげ勝手行くと固く信じています」とキュリー夫人の言葉として紹介している(同夫人がそう言ったかどうかについては未確認)。

    そして、キュリー夫人の信頼は裏切られ、核惨事が発生したとし、米国による広島と長崎への原爆投下を紹介する。

    広島への投下
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv

    長崎への投下
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv

    そして、広島と長崎の惨状を見せる
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv

    ナレーションは米国の原爆投下が第二次大戦の終結に結びついたということは一切言わない。彼らの立場からすればそういうことなのだろうが、ここは「日帝」よりも「米帝」を悪に仕立てるべき場面なのであろう。

    そして、米国の原爆投下は核の連鎖反応を引き起こし、ソ連、イギリス、フランス、中国が引き続いて核実験に成功したとナレーションは紹介する。そして、米国は核爆弾を「小型か軽量化することで、国際社会を恐喝し続けた」とし、南朝鮮に数多くの核兵器を持ち込み「共和国を脅迫してきた」と米国が核で北朝鮮を威嚇したと主張している。

    その上で、核実験は戦争で使われる武器だけではなく、「民族の自主権を侵害する政治的武器となった」と核兵器の性格について説明し、「したがって、国の自主権を守ろうとする国は、核抑止力を持たなければならなくなった」と北朝鮮が核開発を進める正当性を主張する。

    そして、「米国の圧力に屈服し核計画を放棄した国々には、悲惨な結果をもたらされた」と中東のいずれかの国の画像を国を特定されないように加工した上で紹介する。米国の圧力に屈服した国というのは、当然、リビアのことである。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv

    話は北朝鮮の今に戻り、米国の圧力に屈せず核実験を断行した北朝鮮の平壌市民が核実験に関連した科学者・技術者を迎える画面になる。

    2005年2月10日、北朝鮮は核保有国宣言したと当時を振り返る。そしてある歴史学者の言葉を引用しながら「乙巳亡国条約(第2次日韓条約)で国権を強奪された1905年から100年後の今日、我が民族はとうとう核兵器を持った。これは、我が朝鮮民族の5000年の歴史の特大事変である」と。そして、画面は1905年に戻り、「日帝」に祖国を奪われた朝鮮民族の悲劇を映し出す。

    そして、「現在も我が国の地政学的位置は変化していない。しかし、正義の核兵器・原子爆弾を持った朝鮮の地位と国力は歴史上最も高まった」と核兵器こそが地政学的に複雑な場所に位置する朝鮮の独立を保障するという論を展開し、それを達成した金正日さんを称賛する。

    一方、「被害妄想に陥った不純勢力とそのメディアは、憶測と仮説を騒ぎ立てた。北朝鮮は、今回の3次核実験を契機に長距離ミサイルに搭載するための核兵器の小型化に近づいた。2ヶ月前に打ち上げた実用衛星の運搬ロケット小型化された核爆弾を搭載した北朝鮮のミサイルがいつ我々の頭上に落ちてくるか分からない」、「強盗の目には、他人のキッチンの包丁や箸も凶器に見えるものだ」と言いながら、ロケット打ち上げの場面を見せる。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv

    打ち上げたのは「実用衛星の運搬ロケット」と言っておきながら、ナレーションは続けて「話が出たついでに言っておけば、既に米国本土は我々の戦略ロケットと核兵器の射程圏内に置かれているということを明確に知っておく必要がある」という。そして、ロシアの声放送を引用しながら「世界は既に北朝鮮の核と共存しなければならないときが来た」とし、北朝鮮が核保有国になったことを世界が認めていると主張している。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv


    そして最後は、金正恩さんがNLL付近の島の軍部隊を指導する写真を紹介しながら彼を称賛し、一心団結を強調しつつ移動式長距離弾道ミサイルといわれる車両が登場する軍事パレードで番組を締めくくっている。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-14-15.flv

    導入部分はなかなかカッコイイ入り方であったが、最後はいつものパターンであった。

    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が大延坪島、ベクリョン島打撃に投入される熱戦地域の砲兵軍部隊の実戦能力判定のための実弾射撃訓練を指導された」 (2013年3月14日 「労働新聞」)

    「朝鮮中央TV」もこう題する「録画報道」を放送したが、昨日、サイトへの接続がなかなかできなかった「労働新聞」にも多くの写真付きでこの記事が掲載されている。

    『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김 정 은동지께서 대연평도,백령도타격에 인입되는 열점지역 포병구분대들의 실전능력판정을 위한 실탄사격훈련을 지도하시였다」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-14-0001&chAction=D

    訓練は、記事のタイトルにあるように実弾を使った訓練で、ターゲットは大延坪島にある韓国軍の基地を想定した北朝鮮領の島である。北朝鮮軍がどちらの方向に向けて砲弾を発射しているのかは明らかにされていないが、韓国領に向かって発射したとすればとても危険な挑発である。地域に詳しい人であれば、公開された写真の背景に写っている島から発射方向は特定できるはずであるが、私には分からない。

    沖に見えるのが大延坪島に想定したターゲットの島
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    Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-14-0001&chAction=D

    金正恩さんは「いつも強調することであるが、現代戦は砲兵戦であり、砲兵の戦闘こそが人民軍隊の戦闘準備であ」ると述べている。砲兵隊へのリップサービスなのかもしれないが、「現代戦は砲兵戦」というのはどうも疑わしい。私は軍事の専門家ではないが、「現代戦は空戦」というのが正しいのではないだろうか。アフガニスタンもイラクも米国の圧倒的な空軍戦力で初戦は圧倒されたはずである。もちろん、その後の泥沼のゲリラ掃討戦ではその空戦力もあまり役立っていないようではあるが。金正恩さんは「砲兵戦の天才」という触れ込みなので、砲兵戦を強調したいということもあるのだろうが、「米帝」と本気で戦うためには空軍力を何とかした方が良い(制裁の嵐の中では不可能であろうが)。

    そして、例によって金正恩さんは「玉柳館(平壌の一流レストラン)で兵士に食事をさせてやれ」と兵士たちを平壌に連れてくるよう指揮官に命じたという。韓米を威嚇するついでに、恩情を施して忠誠心を鼓舞する所などなかなか上手だと思う。

    記念写真の撮影もしているが、両サイドの幹部との間の距離が広いような気がする。親愛さを演出するには、もう少し近づけた方が良いと思うのだが、何か意図があるのだろうか。
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    Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-14-0001&chAction=D

    「朝鮮民主主義人民共和国外務省スポークスマンの回答」:朝鮮総連の見解も (2013年3月14日 「朝鮮中央通信」)

    過去記事にも書いた「停戦協定白紙化」の有効性と理由について北朝鮮外務省スポークスマンが中央通信の記者の質問に答える形の記事を「朝鮮中央通信」が配信した。米国は、「協定白紙化は無効」という立場を表明しており、それに対する反発でもある。

    『労働新聞』に掲載された同記事、「조선민주주의인민공화국 외무성 대변인대답」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-15-0036&chAction=D

    北朝鮮外務省の解釈では「他の協定と異なり、停戦協定は特性上、双方が合意し破棄する性格の協定ではなく、いずれか一方が協定を遵守しなければ、自動的に白紙化されるものである」としている。そして「いずれか一方が協定を遵守しな」ていないことを米国の責任とし「事実上、朝鮮停戦協定は過去60年間、持続されてきた米国の体系的な破壊行為とそれを庇護した国連安保理の不当な決定により既に白紙化されても余りあるような状態であった」としている。

    一見無謀な論理展開にも見えるが、過去記事にも書いた「敵対行為」の解釈によっては、米国側が「協定を遵守していない」と解釈することもできる。しかし、北朝鮮とてミサイル発射訓練も含めた軍事演習はやってきたわけなので、軍事演習が「敵対行為」であるとすれば、それはお互い様である。この際、どちらが先に始めたのかということは議論する意味はほとんどない。

    「他の協定と異なり」と述べている点も興味深い。依然として、国際法理一般についての解釈をお願いしてある職場の専門家からは回答をいただけていないが、過去の事例も含めて関心がある。

    昨日、某朝鮮半島の南北問題を扱うシンポジウムを見に行ったのだが、なかなかおもしろかった。何がおもしろかったのかというと、総連系の人々もフロアにおり、シンポジウムが韓米系の論調で進んできたのに対して、最後で手を挙げて北朝鮮の主張をそのまま展開していた。一方、南北関係を担当する部署の韓国政府元高官もフロアにおり、熱くなっていた。南北関係というのは、もう少し冷静になったのかと思っていたが、昨日目撃したシーンだけからすれば、基本的には80年代と同じ構図だなと思った。発言者たちが、80年代に活躍した人々だったからかもしれないが、沸騰しかかっていた。

    私としては、総連の人に上に書いた国際法理について尋ねてみたかったのだが、彼らも14日の「朝鮮中央通信報道」については「学習」していなかったであろうし、また北朝鮮外務省のマウスピース以上の役割はできないであろう。ただ思ったのは、総連としての公式見解はさておき、北朝鮮で暮らす朝鮮人民とは異なり、現実を見ているわけなので、それをどう考えているのか、どうしたら良いと思っているのかについて聞いてみたいとも思った。

    また、別の話として朝鮮大学校で経済学を担当しているという人が北朝鮮の経済体制というのは基本的に「金日成時代に打ち立てられた経済建設の目標を実現しようとしているのだから、金正日であれ金正恩であれ、その路線から外れることはない」というような発言もしていた。確かに「社会主義経済建設」という大きな枠組みからいえばそのとおりであるが、我々の関心は「社会主義経済建設」の枠組みの中でどれだけフレキシビリティーを発揮することができるのかということである。中国の「改革・開放」までいかないにしても、旧ソ連でもその経済体制のフレキシビリティーにおいてはある程度の幅で揺れていた。北朝鮮とて、特に金正日時代にはその揺れを経験した。では、金正恩さんはどれだけフレキシブルに経済を運営できるのか、その最大値としての中国式の「改革・開放」にどれだけ近づけることができるのかというのが我々の関心である。朝鮮大学校では資本主義社会の中でどう北朝鮮経済を教えているのか分からないが、上の総連関係者の見解同様、現実、つまり資本主義日本で暮らす現実と社会主義北朝鮮の現実をどう捉えているのかに関心がある。しかし、社会主義北朝鮮の経済社会の現実、特に平壌以外での現実は彼らとてなかなか知ることができないはずなので、平壌経済の話になってしまうのであろう。資本主義日本においても、さらには資本主義韓国においても、経済建設において首都圏が優先されたことは明白である。その系では、北朝鮮の平壌建設優先は別に特異なことではない。しかし問題は、平壌以外の地域がほとんど見えない(見せない)ということである。

    「労働新聞」・「朝鮮中央通信」HPアクセス困難に、北朝鮮財務省の様子、ヌーランド発言、チマ・パラム (2013年3月14日)

    昨日辺りから、「労働新聞」と「朝鮮中央通信」のサイトへのアクセスが長時間できなくなっている。アクセスできる時間帯が全くなかったわけではないが、この記事を書いている今も、両サイト共にアクセスできない。過去、どちらか一方のアクセスが長時間できなかったことはあるが、両方とも、しかも断続的にというのは今回が初めてのような気がする。

    uriminzokkiriは正常に稼働しているが、そこからリンクが張られているサイトはuriminzok-TVとuriminzok-講堂以外、接続不可の状態である。

    北朝鮮でも大規模な軍事演習が行われているというが、それとの関連であろうか。uriminzok系のサイトは中国にあるので稼働しているが、それ以外のkpドメインのサイト、つまり北朝鮮内にあるサイトはは動いていないということであろう。

    それとの関連で3月12日に「朝鮮中央TV」が「民族の自主権を決死で守護し、最後の勝利を達成しよう」という番組を放送した。人民軍や内務軍の軍人が激怒しながら銃を撃ったり、テクォンドらしき訓練をしている様子は繰り返し紹介されているが、財務省の役人が「戦闘態勢」に入ったという報道はおもしろかった。

    「財務省の役人は万端の体制を整え、命令だけを待っています」と語る財務省副相の李チョルヨンさん
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-12-15.flv

    李さんは赤い星が付いたカーキ色の服を着ているが、これは平服ではなく軍服である。非常事態の時に着用する服装なのであろう。

    省内の廊下であろうか。敬礼をしている。これも役人が普通にすることではない。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-12-15.flv

    背景では公用車に擬装用の網を掛けている。以下にも開戦前夜を思わせる映像であるが、よく見れば後ろをトロリーバスが普通に走っている。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-12-15.flv

    局長のユン・ヨンオクさんも勇ましい出で立ちだ。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-12-15.flv

    財務省舎の前では銃を持った役人たちが整列をしている。しかし、背景を平壌市民が平然と歩いている。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-12-15.flv

    日本の報道でも役所の車に擬装用のネットを装着している場面が紹介された。あれだけ見ると、北朝鮮は全面戦争に向けて突進しているかのような印象を与えるが、それを真に受けるのは北朝鮮の思うつぼだ。

    それとの関係で、米国務省報道官のヌーランドさんは、12日の定例記者会見でおもしろい発言をしている。彼女はドニロン国家安全保障問題担当大統領補佐官が北朝鮮が正しい方向に向かうのであれば、対話もドアはいつでも空いていると述べた上で、「しかし、この(北朝鮮が続けているような)trash-talkingでは、その(北朝鮮人民によりよい未来をもたらすような)方向に向かわない」と話している。「trash-talking」という言葉は初めて聞いた。それぞれの単語の意味は分かるのだが、ハイフォンでつなげると「スポーツの試合前などに、相手を罵倒するような威嚇的発言」ということのようだ。イメージとしては、WWF(米国のプロレス)の試合前にレスラーが勇ましいことを言っているあれであろう。

    私の英語のセンスでは分からないのだが、「trash-talking」という言葉が報道官が使う言葉としては不適切であったのか、記者はそれにかみついて「あなたは、北朝鮮の外務大臣をtrash-talkers(プロレス選手並みの威嚇発言をする人々)と呼んで、辛らつな言葉の応酬のドアーを開こうとしているのか」と突っ込んでいる。ヌーランドさんは、「私は、見ていることをそのまま言っただけで・・・・」と少し気まずそうであった。彼女は、英文のレポートを読んでいるだけだろうが、北朝鮮が発表する朝鮮語原文を読めたらひっくり返るであろう。

    U.S. Department of State, "Daily Press Briefing",
    http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2013/03/205993.htm#NORTHKOREA

    記事を書きながらチェックしているが、未だに北朝鮮の両サイトには繋がらない。文字を読んで記事を書こうと思ったのだが、「朝鮮中央TV」が昨日「朝鮮民主主義人民共和国国防委員会人民武力部スポークスマン談話 - 傀儡軍部好戦狂共の狂気的な醜態は厳しい懲罰を免れないであろう -」という「録画報道」を放送した。この中で、主要な攻撃対象は韓国・国防部や軍関係者などであるが、国防部や軍関係者の北朝鮮に関する発言は「青瓦台の部屋にいるチマ・パラム(スカートの風、女性が慌ただしく動いている様子)と関係がないわけではない」と初めて朴槿恵さんに触れている。しかし名指しすることはなく、そこで出てくる名前はやはり李明博さんで、「李明博のやり方を踏襲した」という言葉で非難している。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-13-13.flv

    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が白翎島が至近で見える西部前戦最大の熱戦地域である前哨基地であるウォルネ島防御隊を視察された」 :他視察記事 (2013年3月12日 「労働新聞」)

    「労働新聞」が金正恩さんの視察関係記事を3つ同時に掲載している。2拠点ぐらいの記事を動じ掲載することはあるが、3つ同時というのはあまり多くない。

    その一つ目が表題の記事である。記事には4枚の写真が付けられている(下の2枚と兵士やその家族たちとの集合写真)。

    白翎島(韓国領)を望遠鏡で見る金正恩
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    Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-12-0001

    白翎島の様子
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    Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-12-0001

    上の写真からも分かるように、ウォルネ島防御隊の視察は、韓国を威嚇することと金正恩さんの勇敢さを宣伝することである。記事には金正恩さんが「敵艦船が軍事分解線海上水域に接近したら、威圧的な警告射撃を、侵犯したときは強力な照準撃破射撃を加えるよう新たな海上作戦規定に批准された」、「戦闘準備時の実態を正確に確認し、打撃対象物に対する精密打撃手順を最終的に確定」、「我々の火力密度がとても高い、白翎島の敵対象物を3重4重に打撃することができる、白翎島を火の海にすることができる確信があると話された」などとしている。また、
    「非常に危険千万な場所に敬愛する最高司令官をお迎えした」とし彼の勇気を称えている。

    『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김 정 은동지께서 백령도가 지척에 바라보이는 서부전선 최대열점지역의 전초기지인 월내도방어대를 시찰하시였다」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-12-0001

    また、「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が朝鮮人民軍第641軍部隊管下長距離歩兵9分隊を視察された」という記事では、「侵略挑発策動に熱を上げている白翎島の敵共を打撃消滅する火力任務を担っている」部隊を視察したとし、金正恩さんがこの砲兵部隊を重視しているとした上で「敵が無分別に挑発をすれば、想像することができない強力な打撃で正義の火柱を浴びせ、侵略者共が再び復活できないように完全に叩きつぶせと言われた」としている。金正恩さんの言葉としてこれほど直接的に引用しながら敵を威嚇する例は多くない。

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    Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-12-0006

    『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김 정 은동지께서 조선인민군 제641군부대관하 장거리포병구분대를 시찰하시였다」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-12-0006

    金正恩さんが軍視察に奔走しているのかと思えば、「敬愛する金正恩元帥様がリョンジョン養魚場を現地指導された」というニュースも伝えている。軍と経済部門の指導を敢えて同時に報じることで、全ての分野での彼の指導力を宣伝するつもりなのであろう。それと同時に厭戦ムードを高めながら、経済建設に拍車をかけるといういつものパターンを繰り返しているともいえる。「20時報道」でもどこそこの企業所の労働者が「米帝」に対する憤怒を露わにしながら、「右手にハンマーを、左手に銃を」と言いながら生産活動に力を入れると言っている場面を紹介する報道が増えている。

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    Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-12-0009

    『労働新聞』、「경애하는 김 정 은원수님께서 룡정양어장을 현지지도하시였다」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-12-0009

    ともあれ、NLL付近の島の部隊を連続で視察し、金正恩さん自身の強い言葉を紹介しているので、同地域における軍事行動の可能性も排除できない。米韓合同軍事演習が同水域で行われているのかは分からないが、米韓側としてもこの水域での訓練は控えているのかもしれない。

    「朝日平壌宣言の基本精神を間違うな」 (2013年3月12日 「労働新聞」)

    「労働新聞」にこう題する個人名の記事が掲載された。日本の外務大臣が「『日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルなど諸般の懸案を包括的解決を目指す』」とし「拉致問題の解決なくしては、国交正常化もあり得ない」という従来からの立場を表明したことへの反発である。

    記事の中では、特に新しいことを述べているわけではないが、拉致問題については次のような微妙な言い回しをしている。つまり記事では「宣言採択時、我々は宣言を持って懸案問題を日本側との合意の下、十分に解決してやった。そのため、朝日両国の人民はもちろん、世界他これを積極的に支持歓迎し、朝日平壌宣言がただちに履行されることを望んだ」としているが、「懸案問題を・・・十分に解決」というのが何を指しているのだろうか。拉致問題は解決済みというこれまでの北朝鮮の立場からすると、この「解決」はそれを指すのであろうが、この記事の中では「ありもしない拉致問題」という表現は使っていない。

    そもそもこの記事で言いたいことは「日本は今日までも朝日平壌宣言の精神に反し、米国の反共和国圧殺策動に便乗し、対朝鮮敵対視政策を悪辣に追従しながら、朝日関係を極度に悪化させた」と米国の「制裁策動」に賛成したという日本非難である。

    過去記事にも書いたが、日朝平壌宣言は北朝鮮との関係において非常に重要な宣言であり続けることは間違いない。しかし、その理解について北朝鮮と日本との間で差が広がっていることも事実である。記事はそれを端的に示す言葉で締めくくられている。「朝日関係問題解決の基本は、過去清算である」と。

    『労働新聞』、「조일평양선언의 기본정신을 오도하지 말라」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-12-0027&chAction=D

    「反共和国『制裁』は、まさに戦争行為である」:米国の反応 (2013年3月11日 「労働新聞」)

    北朝鮮が休戦協定破棄を明言した3月11日の「労働新聞」にこのような記事が掲載された。

    記事では「米国は、カカシのような国連安保理事会を動員し、今年に入り二回目、過去8年間には5回目となる『制裁決議』をでっち上げた」と制裁決議採択を非難している。ただし、安保理決議2087が採択されたときと違い、北朝鮮は「大国=中国とロシア」を非難していない。「カカシのような国連安保理事会」と総体として非難はしているものの、より直接的に中国やロシアを指す「大国」という言葉は避けている。2087よりも2094の方がその内容においても実効力においても強化されているにもかかわらず、これら二国を決議に賛成したことについて非難していないという点は注意しておく必要がある。

    北朝鮮が、中ロ、特に中国を刺激しすぎて安保理決議2094に対応する実効性のある行動に出られることを警戒しているのか、あるいは、既に中国との間で決議内容と実効性についての話し合いがなされたのかは、今後の中朝経済関係がどうなるのかを見ないと分からない。ただし、過去記事にも書いたとおり、2094では金融や物品の制裁の対象がことごとく「核・ミサイル開発」と限定されており、これとその他を分けることは難しいはずである。

    とはいえ、北朝鮮も安保理決議2094が強化されたことは認識しており、「『制裁履行』に対する、いわゆる『義務化』をすることで、『制裁』をより国際化」したという認識を示している。

    おもしろいのは、北朝鮮が「制裁」に関する一定の危機感を表していることである。記事では「当時、米国など関係国は、イラクに対する制裁が人道主義的需要に必要な物品に限っては例外とすると騒ぎ立てた」が、「制裁がもたらした結果は残酷なものであった」とし、制裁が課された「10年間に約160万人の住民が飢餓や病気で苦しんだ末に死んだ」としている。これを危機感とみるべきか、朝鮮人民を盾にした脅迫と見るべきかは別とし、中国が本気で制裁に荷担するとどういうことになるのかという北朝鮮の認識が見え隠れしている。

    また北朝鮮は、安保理決議と米韓合同演習の時期との関係を指摘しながら、「より厳重なことは、米国が反共和国『制裁決議』でっち上げを『キーリゾルブ』、『トクスリ』合同軍事演習を強行している中で出したことである」とし、「これは米国の反共和国『制裁』が一般的制裁の性格を飛び越え、軍事力を伴った侵略行為となっていることを実証している」と主張している。そして米国の目的は「集団的な反共和国『制裁』騒ぎを引き起こす米国の本心は、我が国に対する侵略をイラク式にしてみようということである」とし、米国がサダム・フセイン政権を倒すためにイラクに侵攻したように、北朝鮮政権を倒すことを企てていると主張している。北朝鮮は、少し前は「リビアやバルカン半島(アルバニアを指すものと思われる)」と言っていたが、このところイラクを持ち出すようになった。核武装(計画)解除をさせられたリビアより、米軍の侵攻を受けたイラクに状況は近いということであろう。

    記事では、そしてこのような状況により「我が軍隊と人民は、集団的『制裁』を我が共和国に対する宣戦布告、無差別的な戦争行為とみな」さざるをえなくなり、「今日から停戦協定の効力は完全に白紙化され」、「反米対決戦に突入した」とし、「世界は我々の軍隊と人民が米国の集団的な『制裁』と戦争挑発騒動をいかに粉砕し、核保有国、衛星発射国の尊厳と地位をどのように守り輝かせるのかをまざまざと見せつけられるであろう」とした上で、「我々は空言はいわない」と締めくくっている。「空言はいわない」というのは、米国が「毎度の言葉による挑発だけだ」としていることへの反発であろう。

    『労働新聞』、「반공화국《제재》는 곧 전쟁행위이다」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-11-0005

    では、米国はこのような状況をどのように見ているのであろうか。まず、米国務省定例記者会見での質疑応答から見ていくことにする。まず、北朝鮮の休戦協定破棄宣言についての質問が出されている。ヌーランド報道官は、この点についてはホワイトハウスのドニロン国家安全保障問題担当大統領補佐官の演説とサーマン在韓米軍司令官の声明を参照するようにと述べている。これらは、追って参照するとし、国務省の見解としては「サーマン在韓米軍(国連軍)司令官がいうように、休戦協定は休戦をさせた協定であるので、(休戦協定の破棄が)どれほどの影響力を持っているのかは明白ではない」と答えている。過去記事でも見たとおり、まさしく休戦協定はそのほとんどが休戦をするための条文からできあがっている。しかし、「敵対行為は行わない」という文言に関しては、休戦成立後も生き続けているはずである。よく分からないのは、国際法が言う「敵対行為」の定義である。この点について、職場の国際法専門家に質問を投げかけてあるのだが、まだ回答は得られていない。北朝鮮は、米国の「敵視」や過去の軍事演習による「敵対行為」は何回も繰り返されてきており、休戦協定は有名無実化していたのだから、それをこの時点で破棄するもしないも同じであるという論を展開している(これが書かれた記事はまだ探していないが)。米国務省と北朝鮮の主張は、論点のずれこそあれ、「休戦協定の意義は喪失された」という点で一致している部分もある。

    しかし、北朝鮮が一方的に破棄を宣言したことについては、「法律的に見た場合、相互協定なので、他方の同意なくして一方が破棄することはできない」という見解も示している。

    記者会見ではまた、金正恩の秘密口座が上海で多数発見されたことについても質問されている。報道官はこれについて「現在のところそれに関して話すことはない」と答えているが、そのような事実がないとも明確に否定していない。検索はしていないが、恐らくこのような報道が韓国のメディアでなされたのであろう。仮にこのような口座が発見されたとしても、中国がそれをどのように扱うのかなどもう含めデリケートな問題なので、慎重になっているのであろう。

    U.S. Department of State, "Daily Press Briefing",
    http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2013/03/205954.htm#NORTHKOREA

    では、サーマン在韓米軍(国連軍)司令官の声明を見てみよう。声明は3月7日に出されており、いたって短い。英文と韓国文で出されているので、韓国文の方を翻訳しておくと以下のとおりだ。

    ****
    ジェームズ・サーマン国連軍司令官声明

    大韓民国ソウル龍山基地: 停戦協定は、過去60年間、朝鮮半島において平和と安定を保障してきた。停戦協定署名当事者が、双方の合意に反する公式声明を発表したことについて憂慮を表明する。国連軍司令官として本人は、停戦協定を履行しなければならない全的な責任がある。停戦協定のせいこうりな履行は、大韓民国を強力な民主主義国家に成長する基盤を作り、我々は大韓民国を守護するための万全の体制を整えている。
    ****

    ヌーランドさんは、サーマンさんが言ったように「戦争を終わらせた協定だから」それを破棄することにつてのインパクトを疑問視しているが、サーマン声明の中ではそのことは述べられていないようだ。むしろ「60年間、朝鮮半島の平和と安定を保障してきた」という点で、その重要性を強調しているようなのだが、どうなのだろうか。

    United States Forces Korea, "Statement by Gen. James D. Thurman, Commander, United Nations Command",
    http://www.usfk.mil/usfk/press-release.statement.by.gen.james.d.thurman.commander.united.nations.command.1031

    ホワイトハウスのドニロン国家安全保障問題担当大統領補佐官の演説は非常に長い。というのも当然で彼は北朝鮮問題についてのみ話しているのではなく、アジア太平洋地域全体に対する見解を述べているからである。一応、始めから終わりまで目を通してみたが、その中に占める北朝鮮関連の部分が多いこともまた確かである。ドニロンさんは、できるだけ多くのアジア太平洋諸国について具体的な国名を挙げながら触れようとしているが、もちろん全ての国について触れることはできていない。ラオスやカンボジアについては、ASEAN加盟国ということで間接的に触れてはいるが、例えばバングラデシュには全く触れていない。1人当たりGDPが1400ドルあまりの小国には関心がないといえばそれまでだが、1人当たりGDPがバングラデシュとほとんど変わらない北朝鮮については大きく扱っているというのは実に対照的である。これぞ北朝鮮が目指してきたことの反証でもあるのだが、北朝鮮が核・ミサイルの開発をしていなければ、せいぜい人権問題で叩かれるだけで、良きにつけ悪しきにつけこれほど大きくは扱われなかったであろう。北朝鮮が、核・ミサイルと引き替えに外国からの経済支援を取り付け、少なくとも誰も知らない東アジアの最貧国ではないことは明らかである。もちろん、中長期的に見た場合、北朝鮮の核・ミサイルが同国に何をもたらすのかということを断定するのは難しいが。

    では、ドニロンさんが北朝鮮について何を言ったのかを見ていくことにする。ドロニンさんは、同盟国との防衛関係について述べる最後の部分で「我々は危険で地域を不安定にする北朝鮮のような国の当面の脅威に対してレーダーやミサイル防衛システムを拡充することに同盟国と共に取り組んでいる」としている。北朝鮮問題につなげるために北朝鮮を出していることもあるが(中国を出すわけにもいかないし)、そうだとしても北朝鮮が地域にとって「当面の」最大の脅威であると認識していることは間違いない。

    まず「過去60年間、米国は朝鮮半島の平和と安定に関与してきた」とし、北朝鮮を抑止し、北朝鮮を非核化さえることこそが同盟国を守ることであると述べている。そして、「米国は北朝鮮を核保有国と認めず」、「北朝鮮が米国を狙った核ミサイルを開発することを座視しない」という姿勢を表明している。しかし、「開発」とはいっているものの、北朝鮮を「核保有国とは認めな」いと「米国を狙った核ミサイル」には若干の矛盾が感じられる。核保有国を増やしたくないという米国の立場と現実との間で整合を取ることの困難さが見える。

    その上で、米国の北朝鮮政策の基本について何点かに分けて説明をしている。

    1.まず、日米韓3カ国の北朝鮮問題における連携の強化を強調し、「北朝鮮が我々の連携のほころびを利用する時代は終わった」としている。また、安倍政権や朴槿恵政権の外交による問題解決方針も評価している。また、中国に対しても北朝鮮と「通常通りの関係」を維持するべきではないと求め、「朝鮮半島の安定が中国の利益であるとするならば、北朝鮮の非核化こそがそれに繋がる道筋だ」と安定以上に非核化を重視するよう求めている。中国も「朝鮮半島の非核化」こそが彼らのゴールであるとしているが、問題はその方法が米国が求めている方法と異なる点である。ドニロンさんは国連安保理決議採択に結びついた中国の協力に謝辞を述べることを忘れていないが、しかし、「制裁が決議の目的ではない」とのギャップをいかに埋めるのかという大きな課題が残っている。

    2.次に「米国は北朝鮮の悪い行いに代価を支払わない」と述べ、北朝鮮の瀬戸際戦略にはこれ以上乗らないことを強調している。しかし、北朝鮮が援助を得るための条件として、「コースを変更しなければならない」と述べているが、「コース変更」が何を意味するのかは明確ではない。北朝鮮が核・ミサイルを放棄するとは言い出すはずもないので、2.29合意の時のように「凍結・視察受け入れ」程度で「コース変更」と認めるのかどうかは明らかではない。今後、交渉をする場合のグレーゾーンを確保しているのであろう。
    また、米財務省が朝鮮貿易銀行や主要な外為銀行を制裁の対象に含めるとしたことも発表している。

    3.米国が自国のみならず同盟国の防衛にも積極的に関与していくと述べている。そして、米国は北朝鮮の攻撃に対して自国を防衛し反撃するのみならず、同盟国に対する攻撃にも同じことをするとしている。そして、それが発動される条件として、北朝鮮によるWMD使用のみならず、それを他国やテロリストに移転することも含むとしている。米国は日韓に対する核の傘を保障し、北朝鮮による核開発以上に核拡散については厳しい措置を取るというこれまでの姿勢の再確認である。しかし、現実問題として、北朝鮮のファースト・ストライクに対する米国の日韓防衛能力も大いに疑問であるし、ましてや北朝鮮に反撃するにしてもその結果に配慮し核を使用することはないであろう。北朝鮮も核技術をテロリストに売り渡せば米国がどれだけ怒るか分かっているので、それだけはしないであろう。

    4.最後に、米国は北朝鮮と話し合う準備もあるということを述べている。その条件として「平壌が国際的な義務に従うこと、約束を履行すること、国際法を遵守することで意味のある行動に踏み出すことで示し、その真剣さを証明すれば」を挙げている。北朝鮮にとってなかなか高いハードルではあるが、それを飛び越えずとも「踏み出せ」ば、話し合いに乗るとも解釈できるし、そうしなければ現実的には何も動かないであろう。

    ドニロンさんは、北朝鮮に「ビルマを見習え」と言っている。この点については、拙ブログでも過去に何回も書いたが、「南ビルマ」がないビルマと「南朝鮮」がある北朝鮮では全く状況が異なっており、そう簡単にはビルマの真似はできないであろう。もっといえば、「南朝鮮」がなければ、北朝鮮は少なくとも中国が改革・開放をやり始めた時点で、同じ道筋を選んだに違いない。分かって言っているのであろうが、それは無理な話だ。

    それとは別に、朴槿恵さんが5月に訪米をしてオバマさんと会談することもドニロンさんは明らかにした。

    the WHITE HOUSE, "Remarks By Tom Donilon, National Security Advisory to the President: "The United States and the Asia-Pacific in 2013",
    http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2013/03/11/remarks-tom-donilon-national-security-advisory-president-united-states-a

    「<特集>尊厳と権利を守ろうとする世界の女性の声」 (2013年3月8日 「朝鮮中央TV」)

    3月8日は「国際女性デー」である。「朝鮮中央TV」はこの日にちなんだ番組を何本か放送しているが、その中でも「<特集>尊厳と権利を守ろうとする世界の女性の声」と題する番組はなかなかおもしろい。何がおもしろいのかというと、タイトルとは異なり、その内容は「資本主義社会でいかに女性が迫害されているか」という内容であるからである。確かに、世界からは社会主義国家が消滅しつつある中、女性が迫害されている国が資本主義国家である確率が高まっているのも確かである。しかし、この番組は対外向けの宣伝番組ではなく朝鮮人民に見せるために製作された番組なので、「北朝鮮は資本主義国家と比べてこんなにもよい」か、そうでなくても「資本主義国家もこんなものなのだから、北朝鮮も仕方がないか」という内容でなければならない。

    番組は外国の報道フィルムを編集したものなので、映像自体はそんなにおもしろくはないが、ナレーションがなかなかおもしろいので、そちらを中心に紹介していく。

    まず、「英国の女性問題専門家」の音声を流しながら、例によって「独創的」な字幕を付けている部分がおもしろい。

    2013-03-08-21flv_000076276.jpg
    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-08-21.flv

    英国人女性:「女性が重要であるということは認めているが、決定権があるレベルでは女性をあまり見ない。特に、政府、議会、地方自治体などにおける政治的決定権を行使する場面には女性があまり見られない。また、CEOや高級管理職のような経済的な場面においてもこれは同様である。これは、我々が社会的な潜在的可能性の一部を失っていることを意味する。それは、女性が平均しても人口の半分を占めるからである」

    字幕:「多くの人々は女性がなくてはならない存在であることは認識しているが、女性の社会生活と発展において決定的な役割をする存在とは考えていない。そのために今日、女性の尊厳と権利を主張する声が多くの国際舞台で上がってきている」

    政治や経済の問題を「社会生活や発展」とまとめて訳しているところが何とも北朝鮮的である。

    続いて、資本主義国での女性問題に入る。そして

    「資本主義社会では、女性は労働の権利において酷い差別を受けている。女性を蔑視する観点が支配している資本主義制度では、女性は、女性であるという理由のために就業することがとても困難で、西側のメディアも女性が職を得るということは、「牛が針穴を通り抜けるぐらい難しい」と表現するほどである。やっと職に就けたとしても、労働生活(労働条件)において酷い差別を受けている。」

    とした上で、米国やオーストラリアの男女間賃金格差を紹介している。

    また「世界的な経済危機の中で経営赤字を埋めるために、大々的な解雇旋風が巻き起こっているが、その一番初めの対象となるのが女性である。」そして、その結果として「世界的に15億人の女性貧困者」を生まれているとしている。

    「資本主義社会で女性たちは、自らの最も神聖な権利である母性の権利さえも無残に蹂躙されている。資本主義社会の絶対多数の女性たちは、膨大な出産費用を負担することができず、出産時に専門医療陣の助けを受けることができずにおり、子供を産んだ後も子供を育てるための過重な経済的負担を解決することができず、苦労をしている。」

    ここでまた別の「英国の女性問題専門家」が登場する。

    2013-03-08-21flv_000246180.jpg
    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-08-21.flv

    英国女性:「問題は、母親が産休を取ると、彼女らの所得は平均して約半分になってしまう。約40%の所得減少を補うための貯蓄がない場合は問題が発生し、彼女らはクレジット-カードに頼らざるを得なくなる。」

    字幕:「子供を産んで育てることについて英国女性の40%が問題を抱えている。多くの女性が出産時にお金がなかったり社会的な支援を受けられないので、多くの負債を抱えて苦労することになる。」

    この女性、若干早口なのできちんと聞き取れているかは自信がないが、それでも字幕とは随分違ったことをいっていることだけは確かだ。要は、北朝鮮の無料医療制度のお陰で北朝鮮では「平壌産院」のようなところで安心して子供を産み、その後も「社会主義祖国の恩恵」を受けながら安心して子供を育てられるという話なのだろうが、子供に飲ませるミルクがないのでは話にならない。

    そしてその結果、多くの国では「子供を産まないのが一つの風潮」となっているとしている。確かに、少子化の原因の一つはそこに見いだすこともできるので、全く間違った説明とも言い切れない。さらに、「自分が産んだ子供をゴミ箱に捨てるといった、悲劇も発生している」と続けている。ゴミ箱に捨てることはないにしても、コインロッカーに置き去りは時々ある。

    その他にも、
    「今日、資本主義社会では女性に対する暴行と人権蹂躙行為は爆発的に増加しており、社会的に憂慮されている。」
    「口を開ければ人権と騒ぎ立てる米国では、毎年約50万人の女性が性的暴行を受けているということです。」また、「欧州女性の12~15%が性的暴行の被害者となっている。」
    「フランス、英国、イタリアなどで、ドメスティック・バイオレンスがなくならず、深刻な社会問題となっている。」
    「どれほどドメスティック・バイオレンスが激しいかというのは、米国でドメスティック・バイオレンス防止法まで制定されたことからしてもよく分かる。」
    等の例を挙げている。

    そして、「世界の女性たちは、女性の権利と尊厳を守るための闘争、腐敗した資本主義制度を改変するための闘争に立ち上がっている」と締めくくっている。

    「国立交響楽団音楽会開催」:井上道義さんが指揮 (2013年3月8日 「朝鮮中央通信」)

    8日「朝鮮中央通信」が過去記事でも紹介した井上道義さんの指揮で国立交響楽団の演奏会が人民大劇場開催されたと報じた。

    記事は「長い歴史を持ち、才能ある指揮者、演奏家を網羅し、世界的な名声を誇る国立交響楽団と国際コンクール受賞者で構成された日本の指揮者一行が出演する音楽会は観覧者に深い関心を集中させた」とし、「管弦楽『アリラン』」と「歓喜(喜びの歌)」を演奏したと伝えている。

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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/kcna.user.home.retrieveHomeInfoList.kcmsf

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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/kcna.user.home.retrieveHomeInfoList.kcmsf

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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/kcna.user.home.retrieveHomeInfoList.kcmsf

    米国務省定例記者会見:安保理決議と中国の対応 (2013年3月8日 「U.S. Department of State」)

    8日の米国務省定例記者会見では、まず北朝鮮が南北不可侵条約を破棄したことについての質問が出され、ヌーランド報道官は「このような言葉による挑発は、北朝鮮の人々の生活をさらに悪化させるだけだ」と述べ、安保理決議2094については「(北朝鮮がさらなる核実験をするならば)(重大な)結果を招くといった以上、結果を招くようにしなければならない。そして、その結果は北朝鮮を間違った方向に導いている体制に直接的な影響を与えるものでなければならない」とし、同決議が金正恩体制にインパクトを与えるものであるという認識を示している。

    記者がオバマ1期政権下で北朝鮮の核問題についてこれといった有効な政策を実行できなかったのではないかと質問すると、「北朝鮮に対する国際的制裁を強化したし、中国の支持を得ることもできた」と否定している。さらに、記者が中国が実効性確保に非協力的ではないかと質問をすると「中国の強力なくしては2087と2094という2つの安保理決議を出すことはできなかったであろう」と中国を持ち上げ、「中国も平壌の決定に重大な憂慮を示している。(しかし)中国は通常、北朝鮮との関係を広い枠組みで捉えており、実効性を持たせるための施策を実施するか否かは中国が決めることである」と答えている。そう述べた上で同報道官は「北朝鮮は中国に消費物資やエネルギーなどの70%を依存している。(しかし、)それらは北朝鮮の人々のライフラインでもあり、これらの人々は北朝鮮政権の間違った選択の被害者である」と中国が北朝鮮との経済関係を断絶しないことについての理由付けをして、理解を示している。

    米国は中国の協力を取り付け、強化された制裁内容を含む安保理決議2094を採択できたことでとりあえずは満足しているようである。しかし、それを実施する段階で、中国から北朝鮮に流れ込む核・ミサイルの開発や政権維持のために使われる金や物資と朝鮮人民の日常生活に関わる金や物資との切り分けの難しさについても理解を示している。

    U.S. Department of State, "Daily Press Briefing",
    http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2013/03/205849.htm

    「傀儡軍部チンピラどもは我々に不用意に突っかかった代価を終局的破滅で支払うであろう -祖国平和統一委員会書記局報道-」 (2013年3月9日 「労働新聞」)

    分類は「労働新聞」としたが、「朝鮮中央TV」の「録画報道」でこの報道を知った。韓国の合同参謀本部作戦部長が北朝鮮の「最高司令部スポークスマン声明」に対する「立場表明」を6日に行ったことへの反発である。

    報道では「傀儡軍部チンピラどもは、やつらの『キーリゾルブ』、『トクスリ』侵略戦争騒動を『防御のための例年的な訓練』と弁明し、我々の重大措置を『挑発』であると悪態をついたばかりか、北の『指揮勢力まで強力で断固とした応酬をするであろう』だの『これを行うための全ての準備はできている』という暴言まで吐いた」、また「昨年4月にも『平壌の執務室の窓を打撃』と騒ぎ立て、ミサイル攻撃場面まで公開する極悪無道な悪行を行った」と過去まで遡って非難している。

    しかし、過去記事にも書いたように、このような「極悪無道」な行為は、「既に民族に対する大逆罪だけでも天罰を免れない李明博逆徒のような天下の逆賊一味が未だに血迷ってかけずり回っているのは民族の悲劇だ」と責任を李明博さんになすりつけ、既に政権が変わり「傀儡軍部チンピラ」の「極悪無道」な発言も朴槿恵さんに責任があるのに、彼女には責任をなすりつけていない。

    もちろん「傀儡軍部チンピラが、もし『北の指揮勢力応酬』をしようとする瞬間に、度重なる対決と反逆の巣窟である青瓦台がバラバラに砕け散り、ソウルが火の海になる」と威嚇はしているが、青瓦台の住人には直接矢を向けていない。

    やはり、幾ら勇ましいことを言っても、新大統領との関係には注意しているのであろう。青瓦台と言おうが朴槿恵と言おうがあまり変わりないといえないこともないが、過去において北朝鮮が批判してきた韓国大統領を名指ししたことからすれば、この状況でも朴槿恵さんを名指ししていないことには意味があるはずである。

    当面は、北朝鮮が休戦協定の白紙化をするといっている3月11日以降に注意しなければならない。過去記事にも書いたように、金正恩さんがNLL付近の島の部隊を訪問していることからして、北朝鮮の対南攻撃が同地域の韓国側島嶼地域に向けられる可能性はある。3月11日と敢えて日にちを指定しているので、場合によっては、金正恩部隊訪問で攻撃を臭わせておき、軍隊を動かし、韓国の先制攻撃を誘引する戦術を使うかもしれない。韓国側も島嶼防衛はしなければならない、北朝鮮に口実を作らせないようにしなければならないと、厳しい対応を迫られることになるのではないだろうか。

    『労働新聞』、「괴뢰군부깡패들은 우리를 함부로 건드린 대가를 종국적파멸로 치르게 될것이다 조국평화통일위원회 서기국보도」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-09-0022&chAction=D

    『<録画報道>朝鮮人民軍最高司令部スポークスマン声明 - 最後の勝利は自主権守護に奮い立つ我が軍隊と人民にある -」 (2013年3月5日 「朝鮮中央TV」)

    以下は、3月5日の「休戦協定白紙化」を受けて書き始めた記事である。いろいろな出来事があり、なかなかまとめることができなかったが、追記も含めて何とかまとめた。

    <3月5日朝>
    諸メディアで既報ではあるが、北朝人民軍最高司令部が「休戦協定を白紙化」するというスポークスマン声明を出した。インターネット上の北朝鮮メディアでこの「声明」を確認できたのは(私が見つけた時間という意味で)、「朝鮮中央通信」で20時頃、uriminzokkiriの「朝鮮中央TV」で放映された番組の動画ファイルは6日0時過ぎである。ただし、韓国「北韓情報センター」の情報では、5日の放送番組にこの「声明」は含まれていない。恐らく、朝の番組予告以外の枠で放送されたのであろう。5日の20時22分からは「金正恩バスケットボール観戦」の再放送が放送されると予告されていた。この報道をヤフー・ニュースで検索をすると「時事通信」がソウル発で伝えている「休戦協定を全面白紙化=板門店代表部の活動も中止―米韓演習に反発・北朝鮮軍」という記事が最も早いので、やはり「朝鮮中央通信」がインターネット配信をした(私がこの報道を見つけた)時間とほぼ重なっている。恐らく、「朝鮮中央TV」でもこの辺りの時間帯で「臨時報道」をしたのであろう。元帥様のバスケットボール観戦を番組を中断することはないと思われるので、その後だろうか。

    『時事通信』、「休戦協定を全面白紙化=板門店代表部の活動も中止―米韓演習に反発・北朝鮮軍」
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130305-00000191-jij-kr

    「休戦協定白紙化」を伝える朝鮮人民軍最高司令部スポークスマン
    2013-03-05-11flv_000348949.jpg
    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=13841

    「休戦白紙化声明」の発表時間にこだわるのは、この声明が何を受けたものであるのかということに関係している。声明では「休戦白紙化」の直接的原因を米韓合同軍事演習としているが、その前段部分で昨年12月のロケット発射に対する国連安保理決議2087採択、そしてそれに対する対抗措置としての第3回核実験実施の正当性について述べており、軍事演習自体よりもやはり国連安保理での採択が近づいた新たな決議に対する反発であろう。

    そして「声明」では、米韓の合同軍事演習が「昨年とは違い、100発あまりの核弾を積載した米帝侵略軍の超大型原子力航空母艦打撃集団と戦略爆撃機『B-52H』」などを動員して「我々を標的とした最も危険な核戦争騒動」であり「軍事的挑発」であると非難している。

    5日昼前後には「ロイター」の「北朝鮮制裁、安保理決議の草案で米中が暫定合意=外交筋」など、米中の話し合いがまとまったことを伝えるニュースが配信されており、その後行われた安保理会合で決議案のドラフトができあがったことを米国のライス国連大使が発表している。ライスさんは「おはようございます」と切り出しているので、日本時間の6日未明の発表であろう。ちなみに、ライスさんは新たな制裁決議の内容について「既に課されている制裁を強化・拡大したもの」であるとし、「北朝鮮外交官の不法活動、北朝鮮銀行の取引、不法な現金移動が対象となり、新たに渡航制限も加える」としている。

    『ロイター』、「北朝鮮制裁、安保理決議の草案で米中が暫定合意=外交筋」
    http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20130305-00000053-biz_reut-nb

    US Mission to the UN, "Remarks by Ambassador Susan E. Rice, Permanent Representative of the United States to the United Nations, At a Security Council Stakeout, March 5, 2013",
    http://usun.state.gov/briefing/statements/205642.htm

    <追記:3月8日>
    国連安保理決議2094が採択された。上に書いた米中合意と採択のタイミングが中国の第12期全人代第1回会議開催とほぼ重なっていることも注意しておく必要がある。このタイミングでの採択は、中国新政権の国際社会との協調をアピールすることになり、また同時に新政権の北朝鮮に対する今後の中朝関係に関するメッセージにもなる。

    米国連代表部が発表した決議内容の要約は以下のとおりである。

    <主用内容>
    1.北朝鮮によるウラン濃縮を含む核活動を最も強い言葉で非難し、北朝鮮が現存する核および大量破壊兵器、そして弾道ミサイルを放棄する義務があることを確認する。
    2.北朝鮮による不法な活動を助長する金融取引を封鎖するために新たな金融制裁を課す。また不法行為がある場合は、現金の移動、北朝鮮の金融部門に対するより強い制約を取り締まる。
    3.加盟国が疑いがある貨物に対する検査をする権限を強化するとともに、北朝鮮関連の輸送であることが確認された場合、船舶の入港や航空機の着陸を拒否する権限も強化する。
    4.加盟国が現存する制裁を強化できるようにする。
    5.個人と企業に対する制裁
    6.新たな品目を安保理制裁リストに加える。

    金融制裁
    1.北朝鮮による不法な計画あるいは安保理決議に違反する金融取引あるいは金融サービスを凍結あるいは封鎖することを加盟国の義務とする。
    2.北朝鮮による不法な計画あるいは安保理決議違反に関係する北朝鮮銀行支店を、自国領内に開設することを禁止することを加盟国に求める。
    3.北朝鮮による不法な計画あるいは安保理決議違反に関係する北朝鮮からの金融機関事務所の開設を禁止することを加盟国に求める。
    4.金融制裁は現金移動にも適用することを決定する。これには鞄等に入れた現金の移動も含む。
    5.北朝鮮による不法な計画あるいは安保理決議違反に関係する北朝鮮との貿易のための公的金融支援をしないことを加盟国の義務とする。
    6.核拡散に関わる金融取引を扱う金融行動タスクフォース(多国で構成される機関)による指針を履行することを加盟国に要求する。

    禁止事項
    1.当該貨物が禁止されている物資を含んでいると信じるに値する合理的な根拠がある場合は、自国領内の貨物を検査することを加盟国の義務とする。
    2.北朝鮮船籍あるいは旗国に認められた船舶で検査を拒絶する船舶は寄港を拒否することを加盟国の義務とする。
    3.禁止物資を輸送している疑いのある航空機に対し離陸、着陸、あるいは自国領内の飛行許可を与えないことを加盟国に求める。
    4.北朝鮮の航空機あるいは船舶による制裁逃れに関する情報を安保理北朝鮮制裁委員会に提供するよう希望する。

    その他の措置
    1.現存の制裁が禁止している禁止品目の仲介取引を決定する。
    2.既に制裁対象とされている企業の下請け会社やフロント会社に対しても資産凍結の枠を広げる。
    3.現存する制裁に違反すると指定された個人や企業のために働いている認められるいかなる個人の旅行をも禁止することを加盟国の義務とする。その個人が北朝鮮人の場合は、加盟国は当該個人を追放あるいは北朝鮮に帰国させることを加盟国の義務とする。
    4.核あるいは弾道ミサイル計画、または安保理決議で禁止された活動、または制裁逃れをしようとしている北朝鮮外交官に対する監視を強化することを加盟国に求める。
    5.制裁委員会に対して北朝鮮との間で移転が禁止されている核・ミサイル技術のリストを毎年更新することを指示する。
    6.北朝鮮の核・ミサイル計画あるいは安保理決議に違反する品目の北朝鮮との間での移転を防止することを加盟国に認め、また求める。
    7.宝石や高価な石、ヨット、高級な自動車、レーシングカーを含む北朝鮮に移転することが禁止されている禁制贅沢品を特定する。

    制裁の実施
    1.制裁の実施状況および制裁違反に関する情報を90日以内に安保理に報告することを加盟国に求める。
    2.制裁委員会に対して制裁対象となっている個人や企業の制裁違反に対応することを指示する。
    3.国連専門家委員会(制裁監視チーム)の権限を更新し、委員を7人から8人に増やす。
    4.加盟国が提訴を恐れることなく制裁を実施できるようにするよう施策を強化する。

    政治トラック
    1.安保理の外向的解決への関与を繰り返して述べ、加盟国が話し合いによる解決に努力することを歓迎し、6者会談を支持することを再確認する。
    2.安保理は北朝鮮の行動を継続的に見直し、対応を適切に調整することを確言する。
    3.北朝鮮がさらなるロケット発射あるいは核実験行った場合は、「さらなる重大な対応策」を講じる決意があることを表明する。

    US Mission to the UN, "FACT SHEET: UN Security Council Resolution 2094 on North Korea",
    http://usun.state.gov/briefing/statements/205698.htm

    金融制裁についても強化され具体化された内容となっているが、いずれもそれが「核・ミサイル関連計画か安保理決議違反の場合」とされているので、これに抵触しない北朝鮮銀行の支店開設を許可したとしたとしても、決議に違反したことにはならない。一方、銀行支店の開設や金融取引が当該決議に抵触しているのかどうかという見極めも難しい。このあたりは、北朝鮮との経済関係があり金融取引や銀行支店開設を一元的に停止することができない中国の意向が反映されたのであろう。

    これと関連してライス国連大使の記者会見では、記者から「罰則規定のない義務化では効力が薄いのではないのか」という質問が出され、「決議自体に意義があるのであり、特にそれが全会一致で行われたことからしても効果的な運用ができるであろう」と答えている。罰則規定云々以前に、上に書いたとおり義務履行違反をどのように認定するのかが難しい問題なのであろう。

    また、話し合いによる解決の道筋が確保されていることも明記し、北朝鮮の対応如何では6者会談を再開して協議をする準備があることも明記している。安保理が発表する原文で確認する必要があるが、北朝鮮の核放棄が6者会談再開の前提になっていないことにも注意しておく必要がある。

    これと関連し同記者会見では、制裁を強化したところで制裁と挑発の悪循環から抜け出すことができるのかという質問が出されている。これに対してライス大使は目的は制裁自体ではなく話し合いにより問題を解決するための決断を北朝鮮指導者に迫ることであると応じている。

    US Mission to the UN, "Remarks by Ambassador Susan E. Rice, U.S. Permanent Representative to the United Nations, At the Security Council Stakeout, March 7, 2013",
    http://usun.state.gov/briefing/statements/205792.htm

    ****<以上、追記>****

    それでは、この「声明」を出した北朝鮮は何をするのだろうか。「休戦協定白紙化」というショッキングな言葉が出ているので、これが声明のトップにあるようであるが、実はトップは「第2、第3の対応措置」である。「第1の対応措置」は第3回核実験であったわけだから、さらなる核実験を実施するという威嚇である。しかし、これについては北朝鮮は既に繰り返し述べてきているので新しい話ではない。北朝鮮が中国の影響力についてどのような読みをしているのかは分かないが、さらなる核実験をやったとしても北朝鮮の不安定化を恐れてこれ以上強い措置を取ることができないと読むならば、さらなる核実験もあり得る。しかし、核実験カードを安易に乱発するとその効力が薄まってしまうので、核実験については威嚇で終わるかもしれない。本当にあるのかどうか分からない長距離弾道ミサイルの発射もしないであろう。それは「ある」と思わせておいた方が良いわけで、威嚇であるだけなら短距離ミサイルを海に向けて発射する程度で十分である。

    『労働新聞』、「최후승리는 자주권수호에 떨쳐나선 우리 군대와 인민에게 있다 조선인민군 최고사령부 대변인성명」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-06-0001&chAction=L

    問題となる「休戦協定白紙化」は、「声明」の項目2番目に挙げられており、「3月11日、その時刻から形式的にであれ維持されていた朝鮮停戦協定の全ての効力を全面白紙化する」とし、「我々も停戦協定の拘束を受けず、任意の時期、任意の対象に対して制限なく、思い通りに正義の打撃を加え、民族の宿願である祖国統一大業を達成する」としている。「声明」で「我々も」と言っている点からして、米国は既に停戦協定を白紙化しているという認識なのであろう。(これに関して、「事実上もうとっくにそうなっている」という記事を読んだのだが、どの記事だったか失念してしまった。)

    <追記:3月8日>
    北朝鮮は「祖国平和統一委員会」の発表として、「休戦協定白紙化」に加えて「南北不可侵条約破棄」を表明した。「休戦協定白紙化」で表明していた「板門店代表部の活動停止」に加えて「北南連絡通路(電話)遮断」を表明した。南北不可侵条約はいわば休戦協定とセットなので、威嚇の度合いを上げた以上の意味はないであろう。さらに、本当に北朝鮮が韓国と対決をするつもりであるならば、開城工業団地も閉鎖するはずであるが、こちらには一切触れていない。韓国を攻撃するならば、まずここで勤務する韓国人を人質にするか追い出して、韓国の資産を全て没収することから始めるであろう。

    ****<以上、追記>****

    日本時間昨夜の米国務省定例記者会見では、この問題につて冒頭で質問が出された。記者は「停戦協定白紙化」の意味について質問をしているが、ベントレル国務長官は弁護士の話を聞いてから答えると即答を避けている。私も停戦協定を改めて読んでみたが、やはり法文というか、かなり分かりにくい。

    U.S. Department of State, "Daily Press Briefing",
    http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2013/03/205667.htm

    協定条文で北朝鮮の声明と関連しそうな部分は、まず第1条2「当事者双方はDMZ(非武装地帯)の中、DMZから、DMZを超えて敵対行為を行わない」である。国際法で「hostility act」というのをどのように解釈するのか、つまり相手に対する「攻撃」を意味するのか、米韓合同演習のような「威嚇」も意味するのか。後者であるとするとその幅は限りなく拡がってしまうので、前者のような気がする。しかし北朝鮮は、強引に後者と考えている可能性は十分にある(この点についても上記同様、「労働新聞」の記事でこの認識を表明しているが、記事を失念。追って再調査)。

    協定条文の第5条61では、「この停戦協定への改定と追加は双方の同意」が必要とされているが、一方的な破棄については触れられていない。

    そして何よりも重要なことは下記の署名者である。

    NAM IL
    General, Korea People's Army
    Senior Delegate,
    Delegation of the Korean People's Army
    and the Chinese People's Volunteers(ボールド化、川口)

    WILLIAM K. HARRISON, JR.
    Lieutenant General, United States Army
    Senior Delegate,
    United Nations Command Delegation

    つまり、北朝鮮が停戦協定を一方的に破棄するとしても、最低限、一緒に戦い停戦協定に署名した中国人民義勇軍に相談をすべきである。それをやらずして破棄するということは、中国に対して大変無礼な行為であることはいうまでもない。「休戦協定白紙化声明」に対しては「全ての関係国は冷静に」というコメントしか出していないが、中国としては「休戦協定白紙化声明」をまともに取り扱っていないのであろう。

    FindLaw, "TEXT OF THE KOREAN WAR ARMISTICE AGREEMENT",
    http://news.findlaw.com/cnn/docs/korea/kwarmagr072753.html

    <追記:3月8日>

    北朝鮮は、3月7日「北朝鮮外務省スポークスマン声明」を出して「侵略者の本拠地(複数)に対する核先制打撃権利を行使する」と威嚇している。そもそも、北朝鮮の核が「侵略者の本拠地」に到達するのかというのも疑問であるが、一応注意しておく必要はある。

    『労働新聞』、「조선민주주의인민공화국 외무성 대변인성명」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-08-0009&chAction=L

    これについて、米国務省定例記者会見で出された記者の質問にヌーランド報道官は「北朝鮮の言葉による挑発は驚くに値しない。・・・(しかし、)この機会に言っておくならば、米国は北朝鮮の弾道ミサイル攻撃を防衛する能力を有している。また、我々は韓国と日本の防衛にも着実に関与し、地域の平和と安定を維持する」と述べている。しかし、国務省報道官が北朝鮮の弾道ミサイル攻撃の可能性について言及し、それに対して米国は防衛能力があると述べているのは、やはり「銀河3-2号」の打ち上げと第3回核実験の成功が米国の安全保障上の脅威のレベルを上げたことを示しているのであろう。

    U.S. Department of State, "Daily Press Beiefing",
    http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2013/03/205831.htm#NORTHKOREA

    上で北朝鮮は韓国を攻撃しないであろうと書いたが、不安要素が一つある。金正恩さんは3月7日「西南前線の最南端・・・チャンジェ島防御隊とムド英雄防御隊を再び」視察した。これらの島は、北朝鮮が認めていないNLL付近にある島で、米韓合同軍事演習がNLL一体で行われたことを口実に再び韓国(ヨンピョン島)に対する何らかの攻撃を行うための準備の可能性も排除できない。現時点では攻撃が確定していないにしても、何かの都合で攻撃した場合、それを金正恩さんの業績とすることができるからである。こちらも威嚇に終わってほしいが、注意しておかなければならない。

    『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김 정 은동지께서 서남전선의 최남단 최대열점지역에 위치한 장재도방어대와 무도영웅방어대를 또다시 시찰하시였다」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-08-0001

    一応、ここ数日間の展開を時系列的に追ったつもりだが、あまりうまくまとめることはできなかった。関連部分のurlぐらいは参考になるかもしれない。

    「20時報道」:携帯を使う平壌市民があちこちに、ゴルフの本 (2013年3月6日 「朝鮮中央TV」)

    昨夜の「20時報道」では、「最高司令部声明」に関する平壌市民のインタビューに多くの時間を割いている。また、インタビューの特番も放送されており、学校や企業でインタビューを行っている。市民が話す内容は、ほぼ「労働新聞」に書かれていることなので新鮮さはないが、「我々は米国に石一つ投げこんだこともないのに」、「この際、米国がない地球にする」、「我々はリビアやバルカン半島ではない」など、記事に書かれている象徴的な表現はきちんと押さえてある。

    勇ましいインタビューを聞きながら背景を見ていると、あちこちに携帯電話を使う人が映り込んでいる。過去記事でタクシーの映り込みが増えたということを書いたことがあるが、携帯電話もこれだけ映り込むということは、言われるとおり100万台以上普及しているのかもしれない。

    右下の女性に注目(インタビュー特番より)
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-06-16.flv

    平壌駅前広場。中央下の男性(「20時報道」より)
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-06-15.flv

    インタビューを受ける男性の右肩の右にいる男性 (「20時報道」より)
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-06-15.flv

    街路灯の下を歩いているダウンジャケットらしきものを着た女性 (「20時報道」より)
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-06-15.flv

    「20時報道」では、金正恩さんが「人民大学習堂」に本を寄贈したというニュースも伝えている。高句麗古墳などの本と共に紹介されたのが下の本である。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-06-15.flv

    エジプトの観光案内書なのかもしれないが、「swing into the everlasting sun」というタイトルがなんとも金正恩さんらしい。オラスコム会長がゴルフ好きという金正恩さんに「エジプトでゴルフをどうぞ」と持って来た本を寄贈したのかもしれない。

    「20時報道」:バスケ一行帰国、井上道義インタビュー、米国と決戦 (2013年3月5日 「朝鮮中央TV」)

    休戦協定白紙化を受け記事を書いていたのだが、なかなか上手くまとまらない。まとめられれば投稿しようと思うが、考えていることを羅列するのであれば、1.休戦協定白紙化宣言は、新たな安保理決議への牽制である、2.しかし「宣言」中の「休戦協定白紙化」は2番目の項目で、北朝鮮は新たなる核実験で「対応」するのか、韓国を攻撃するのか、3.「宣言」は威嚇であり両者もないだろう(毎度のごとくはずれるかもしれないが)、4.というのは、核実験はもう中国が容赦しない(中国の影響力行使もだんだん怪しくなっているが)、韓国への攻撃は時期が悪い、5.4の後者については、「宣言」をよく読むと非難の対象としている「傀儡国防部長官」も「合同参謀本部議長」も「そもそも、こいつらは口を開けば政治も軍事も知らない李明博逆賊と共に北南関係を悪化させた逆賊度一味」でありとし、朴槿恵政権とは注意深く切り離している。ある意味、李明博のやり方を踏襲するなという朴槿恵政権への威嚇ではあるが、まだ様子を見るという姿勢の表れでもある。だから、この時点での攻撃はないであろう。6.休戦協定を読み返してみたが、「白紙化」というのが一方的にできるのだろうか。一般的な「休戦協定」についてイラク戦争などに関する論文を読んでみたりしたが、読んだ論文も「一般的」ではなかったので、よく分からない。朝鮮戦争の休戦協定をそのまま解釈すれば、その内容の改定については双方で話し合うと最後に書かれている。しかし、改定ではなく「破棄」については何も書かれていない。一方的破棄は可能なのだろうか。また、「声明」では「我々も」と米国が既に「破棄」したともとれるような表現を使っている。

    追って詳細を書くが、「20時報道」ではバスケ一行が帰国したニュース(今度こそ、みんな)、井上さんがインタビューに答え日本語で話しているニュースなどを伝えている。井上さんは「日本には北朝鮮の情報が正しく入ってきておらず、北朝鮮にも日本の情報が正しく入ってきていない」と話しているが、井上さんの日本語はそのまま音声で流れているものの、字幕は後半部分、つまり「北朝鮮に日本の情報が正しく入っていない」という部分は翻訳されていない。日本語が分かる朝鮮人民は、これを聞いてどう思うのであろうか。

    <追記>
    白紙化、制裁決議・・、色々とニュースは入ってきているが、まだまとめられていない。

    井上さんのインタビュー、日本語の発言と朝鮮語の字幕を対比すると以下のとおりである。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-05-16.flv

    井上氏「日本(に)も民族音楽がたくさんありますが、学校であまり教えることがありません。(北朝鮮の)学校で(民族音楽を)中心に教えていることに発見がありました。」(括弧内、川口加筆、以下同様)
    字幕「今日、大学を参観しながら、日本の学校では民族音楽についての講義をしないが、朝鮮の音楽大学では民族音楽を重視して、それに力を入れていることに感動しました。」

    井上氏「建物も素晴らしいけれど、たくさんの人たちが、今も民族音楽をどんどん新しく作ったりしていることを発見して驚いています。」
    字幕「建物も素晴らしいが、学生が民族楽器を自由自在に弾きながら、歌も民謡を多く歌い、また民族音楽、民族作品をたくさん創作する方向で教育をし、公演もしていることについて感動しました。」

    井上氏「日本にいると、あんまり情報が、この国(北朝鮮)のことは入ってこないので、逆に日本のことは(北朝鮮に)間違って入ったりするでしょう。こういう交流が、僕、今回来て本当にみんなに話ができると思います。」
    字幕「日本にいると、共和国に関するニュースがあまり伝えられませんが、あったとしても間違ったニュースが氾濫しているので、このように直接来てみて、多くのことを知りました。帰ったら、朝鮮について多くの人々に話できることを嬉しく思います。」

    日本に関する部分の字幕
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-05-16.flv

    字幕では要約されたり意訳されることはあるが、この字幕はかなり独創的である。

    「<録画実況>敬愛する金正恩元帥様をお迎えし開催された朝鮮体育大学フェブルバスケットボール選手と米国ハーレム・グローブトロッターズ選手との混合試合」 (2013年3月4日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」が昨夜、金正恩さんが観戦したバスケットボール試合の録画を放送した。番組は約1時間半なのだが、試合の場面は後から見ることとし、初めと最後の部分だけを取りあえず見た。

    番組の冒頭では、米国のフィルムを使用しながら、ロッドマンさんの紹介を行っている。説明はまず朝鮮語でなされ、続いて英語でされている。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-04-17-y.flv

    その後、朝鮮体育大学のバスケットボール選手が入場してくる。

    金正恩さんはこの後で李雪主夫人らと共に登場するが、「一号歓迎曲」の演奏はない。金日成軍事総合大学での演説など、屋外で登場する場合は演奏なしがあったかもしれないが(しかし、過去動画は未確認)、室内で彼が登場する際に「一号歓迎曲」が演奏されないのは異例である。当然、観衆の万歳は延々と続くのであるが、珍しい光景である。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-04-17-y.flv

    次に米国選手が登場する。会場には選手を紹介するアナウンスが流れるが、英語、朝鮮語の順である。テレビの字幕も上が英語、下が朝鮮語になっている。お客さんに対する儀礼なのか、「目は世界を見て」なのか。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-04-17-y.flv

    紹介が一通り終わると、米国選手が模範演技を行う。「一号歓迎曲」なしでの登場でも若干驚いていたのだが、この場面でひっくり返りそうになった。というのは、彼らが模範演技を行う背景で流れる曲は、ハーレム・グローブトロッターズのテーマソングであるジャズである。音楽には疎いが、あのリズムはジャズで良いと思う(音楽に詳しい方、間違っていたらご指摘頂きたい)。

    ジャズといえば、金日成さんが強く否定した音楽である。昨日、偶然読んでいた『コチェビよ、脱北の川を渡れ 中朝国境滞在記』によると『金日成元帥様革命歴史』という本には「ジャズはだめです」と書いてあるそうだ。(この本の内容は、本の著者が延吉に滞在していた時期よりも少し前ではあるものの、延吉を訪問した私にとってはあまり新鮮ではなかった。訪問目的は脱北者探しではなく、企業調査であったのだが・・・)

    高英起『コチェビよ、脱北の川を渡れ 中朝国境滞在記』(新潮社、2012)

    この本以外でも金日成さんがジャズを否定したという話は読んでいるので、これは事実であろう。ジャズは、北朝鮮映画の中で「南朝鮮傀儡軍」が米国の親分と共に退廃的な雰囲気の中でパーティーをやる場面などの効果音として使われるが、肯定的に使われたのを聞いたことがない。ところが、例えハーレム・グローブトロッターズのテーマソングとはいえ、首領様が「だめ」と言った曲を大衆の面前で流したばかりか、それを放送している。下の写真は、曲に合わせて模範演技をする選手である。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-04-17-y.flv

    そればかりか、「資本主義の退廃的な曲」に合わせて、朝鮮人民が嬉しそうに拍手をしているではないか。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-04-17-y.flv

    このような場合も、サクラがいて拍手を誘導しているのであろうが、そのような設定をしたこと自体驚きである。

    この後、模範演技の続きと試合に入るのであるが、その部分は飛ばしているのでまだ見ていない。追って、何か面白い場面があれば紹介するとし、試合後の様子である。

    一番聞きたかったロッドマンさんのスピーチもしっかりと放送されている。聞いた限りではノーカットだと思う。また、過去記事にも書いたとおり、事前原稿なしのスピーチのようで通訳が言い直している部分もある。それで、問題の「友人」発言だが、ロッドマンさんは北朝鮮の人々も金正恩さんも「永遠の友人(you're my friend for life)」と言っている。私が過去記事で推測したようなラフな表現ではなく、金正恩さんには「sir」と呼びかけた上で「永遠のと友人」と言っている。朝鮮語通訳は「敬愛する」という枕詞を机加えた上、過去記事にも書いた「友人」に当たる言葉を使っている。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-04-17-y.flv

    その後、チームシャツのプレゼント贈呈があるが、金正恩さんは嬉しそうに観衆に見せている。これも米国式というか実に異例のことだ。日本でもプレゼントをその場で開封すると言うことはあまりしないが、米国ではその場で包装を破いて中身を披露するのが普通のようだ。これまでに私が見た北朝鮮指導者に対する贈り物贈呈シーンでは、大体さっと受け取ってすぐにおつきに渡してしまう。背番号1というのも心憎い。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-04-17-y.flv

    贈呈式終了後、金正恩一行は再び「一号歓迎曲」なしで退場する。バスケットボールコートには、バナーをもらった米国選手が嬉しそうな顔をして立っている。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-04-17-y.flv

    さて、ロッドマン一行の訪朝をどのように考えたらよいのかまだ上手く表せない。しかし、一義的にややはり金正恩「kid」のバスケットボール好きの産物なのであろう。しかし、コカコーラだけではなくジャズまでも「朝鮮中央TV」で延々と朝鮮人民に聞かせてしまうなどということは、米国に対する強いメッセージといわざるを得ない。

    朝鮮人民も米国と全面対決をするといいながら、平気でこういうことをやらかす「kid」をついて行けないと思っているのか、なかなかやるなと見ているのか。

    <追記>
    さらに、番組を見ていたのだが、また驚くべきシーンがあった。なんと、米国選手が朝鮮人民の女性の手を引いて出てくるではないか。形としては、「エスコート」であり、我々の日常ではそんなに驚くようなシーンではない。しかし、北朝鮮のドラマや映画を見ていても、結婚したカップルが手を繋いでいるシーンが時々あるものの、恋人同士で未婚の男女の身体接触(といっても、手を繋ぐ程度)は私が見た限りではない。朝鮮人民同士でもそうなのに、米国人に手を握られたこの女性、元帥様の命令とはいえ、大丈夫なのであろうか(偵察総局の関係者なら、訓練は受けているはずだが)。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-04-17-y.flv

    それで終わりと思いき、手をパチンと合わせる米国式のポーズもやっている(名称は失念)。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-04-17-y.flv

    また、北朝鮮のチームメートとも手をパチンと合わせている。北朝鮮の選手、ぎこちないが何とか合わせている。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-04-17-y.flv

    前半戦が終わったところで、「金平海同志(労働党秘書)、盧斗哲同志(国家体育指導委員会副委員長)などが家族と共に観覧している」と紹介している。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-04-17-y.flv

    ハーフタイムには、マーチングバンドやテコンドーの模範演技が行われた。マーチングバンドは、しっかりと「金正恩将軍、体を張って死守しよう」という曲を使った後、西側のクラシックマーチを演奏している。子供たちのテコンドー演技を見る金正恩ら。ロッドマンの前には、コーラがなくなりコップが置かれている。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-04-17-y.flv
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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