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    「<ニュース>新たに改築されたチルゴル教会:北朝鮮のキリスト教会、バッジのない牧師 (2014年7月26日 「uriminzokkiri TV」)

    uriminzkkiri-TVはあまり見ないのだが、リストを眺めていたらおもしろそうな番組があった。北朝鮮の恐らく唯一のキリスト教会であるチルゴル教会が改築されたというニュースである。uriminzokkiri-TVなので朝鮮人民向けではなく、対外向けの映像である。

    チルゴル教会
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    Source: uriminzokkiri-TV, 2014/07/26

    チルゴル教会については、以前も何かの記事で紹介したような記憶があるが何を書いたのか覚えていない。uriminzokkiri-TVの解説では、

    「チルゴル教会は1899年に設立され、植民地時代には神社参拝が強制され、勢力が弱かったチルゴル教会は、解放後に共和国政府の正しい宗教政策により、全ての信者が自分の意思を反映し自由な信仰生活ができる教会に発展した」。

    ゲートは自動で開いているように見える。
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    Source: uriminzokkiri-TV, 2014/07/26

    「しかし、50年代に米国が引き起こした超戦争により、北にある教会が全て爆撃で破壊され、多くの信者が犠牲となり、生き残った信者もちりぢりばらばらになってしまい、家庭に設けられた礼拝所で信仰生活をせざるを得なくなりました」
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    Source: uriminzokkiri-TV, 2014/07/26

    「宗教政策を重視する共和国政府の措置により、1992年に元あった場所に再び建設され、その年の11月22日には収穫感謝祭を契機に開堂式をしました。」写真は、1992年当時のチルゴル教会
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    Source: uriminzokkiri-TV, 2014/07/26

    「チルゴル教会が改築され、キリスト人が信仰生活が自由にできる物質的基礎が作られ、教会人の信仰生活がより保障されるようになりました。」
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    Source: uriminzokkiri-TV, 2014/07/26

    「教会が再建されてから今日まで、韓相烈牧師をはじめとした南朝鮮と海外の同胞たちや米国の宗教指導者ベリーグラハム牧師など、各国の教会人が訪れ信教を深めまた。」

    韓相烈牧師
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    Source: uriminzokkiri-TV, 2014/07/26

    聖歌隊は朝鮮人民なのだろうか
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    Source: uriminzokkiri-TV, 2014/07/26

    チルゴル教会牧師、ベク・ボンイル
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    Source: uriminzokkiri-TV, 2014/07/26

    ベク・ボンイル牧師によると「教会が復興した時期は、解放直後に我々の主席様が新キリスト人が信仰生活をどのようにしなければならないのかということを明らかにして下さり、キリスト人たちの信仰生活で新たな天変が起きたと言える。我々キリスト人たちは、当時、米国を神様の国であると、また神様のように考えながら米国に対する崇拝心が大変に高かった。しかし、我々の主席様が、こうしたキリスト人たちの信仰生活で、キリスト人たちが神様を信じても、朝鮮の神様を信じることについての、新しいことを明らかにして下さり、信仰生活で天変が起き、そして、キリスト・チルゴル教会の一番の復興期と言えよう。」

    ベク・ボンイルは北朝鮮の牧師のはずであるが、バッジの着用がない。今、直ぐに映像を引き出すことはできないが、北朝鮮の仏教僧侶もバッジを付けいたはずである。また、金日成の呼び方も普通の朝鮮人民と異なっている。普通の朝鮮人民ならば、「偉大な首領様」という言い方をするはずであるが、「主席様」と呼び、「偉大な」という枕詞も付けていない。バッジの着用もせず、金日成を「偉大な首領様」と呼ばないのは、北朝鮮において「キリスト人」が特殊だからなのだろうか。だとしても、バッジは「朝鮮公民」の証なので、教会の中であろうが着用するはずである。

    この番組は、北朝鮮の信仰の自由をアピールする番組なので、敢えてバッジを着用せず、金日成の呼び方も変えているのかもしれないが、何かおかしい。解放直後の朝鮮を扱う北朝鮮映画では、教会は米国人牧師が朝鮮人民に蛮行を働く場所、あるいは「南朝鮮」のスパイの隠れ家という取り扱いで、良い扱いはされていない。ベク牧師の「米国が神様」という言葉にそれが表れていると思うのだが、「朝鮮の神様」というのは一体何なのだろうか。「朝鮮の神様」は金日成だと思うのだが、それとイエス・キリストを重ね合わせているのだろうか。

    仏教に対しては、古い寺も良く保存されているし、僧侶もいるようだ。信者に関しては分からないが、少なくとも「米国の神様」転じて「朝鮮の神様」となったキリスト教に対してよりは寛容なのであろう。

    「<20時報道>全国発明及び新技術展覧会」:北朝鮮で地デジ放送か? (2014年7月30日 「朝鮮中央TV」)

    30日の「20時報道」で、「29日、第13回全国発明及び新技術展来会が三大革命展示館で開幕された」と伝えた。

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    Source: KCTV, 2014/07/30放送

    会場の様子
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    Source: KCTV, 2014/07/30放送

    いくつかの「発明品」が画面に登場したが、中でも下の写真にある「密閉型TV受信アンテナ」の宣伝文句がおもしろい。「液晶テレビで最大の効果!」、「デジタル式テレビ放送受信に最高!」などと書かれているが、「数字式(デジタル式)テレビ放送受信」と書かれている点が興味深い。北朝鮮はアナログ放送ばかりだと思っていたのだが、デジタル放送も始まっているのだろうか。アンテナの実物は写らなかったのサイズは分からないのだが、黒い棒がアンテナだとするとUHF帯のアンテナのようにも見える。北朝鮮の場合、VHF帯がいくらでも空いているはずなので、敢えてUHFに移行する必要もないと思うのだが、このように書かれているということは、デジタル放送が始まっているのか、そうでなくても計画されているのであろう。

    北朝鮮当局にとってテレビ放送は有力な宣伝手段であり、朝鮮人民にとっては主要な娯楽なので、日本のようにある日突然アナログ放送を停波することはできないであろう。すると、当面VHF帯のアナログを継続しつつ、UHF帯でデジタル放送を開始するのかもしれない。

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    Source: KCTV, 2014/07/30放送 

    「人の皮を被った老いぼれ狂犬に警告する - 労農赤衛軍スポークスマン談話-」:韓民求、韓国・新国防部長官を罵る、最大級の罵倒、なぜ労農赤衛軍なのか (2014年7月29日 「朝鮮中央TV」)

    29日夜、「朝鮮中央TV」を流していたら、「労農赤衛軍スポークスマン談話」を報道してた。「労農赤衛軍」だから「戦勝節」関連の話かと思い、その時はきちんと聞いていなかったのだが、今朝、聞き直してみるとなかなか凄いことを言っている。「凄い」というのは、その言葉遣いである。「談話」の内容は、2014年6月30日に韓国国防部長官に就任した韓民求が7月1日に延坪島を訪問し、そこでの発言に反発する内容である。

    「労農赤衛軍スポークスマン談話」
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    Source: KCTV, 2014/07/29放送

    延坪島を訪問した韓民求国防部長官
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    Source:韓国・国防部HP、「“北 도발 땐 수없이 경고했던 대로 응징”」、http://www.mnd.go.kr/user/boardList.action?boardId=I_202305&siteId=mnd&page=2&search=&column=&boardType=02&listType=&id=mnd_040302000000&parent=&boardSeq=I_989958&command=albumView&chkBoxSeq=&chkBoxId=&chkBoxPos=&chkBoxDepth=&chkBoxFamSeq=&warningYn=N&categoryId=&categoryDepth=

    前国防部長官の金寛鎮もしばしば攻撃の標的とされていたが、韓民求は就任早々、金寛鎮以上に罵倒されている。「朝鮮中央通信」でも同「談話」は配信されているが、日本語バージョンは要約された別記事の翻訳である。朝鮮語の罵倒表現を確認しつつ、以下にこの「談話」を全訳しておく。

    **********************
    最近、南朝鮮の傀儡国防部長官韓民求(ハンミング、求は単独で「ク」と発音)が(動物の)皮膚病にかかった狂犬のように騒ぎ立てている。

    傀儡国防部長官になってからいくらもたっていない、この間の行跡がそれを物語っている。こいつが就任後、初めての職務で向かったところが延坪島である。(動物のような)老いぼれた身体の上に海兵隊の軍服まで羽織った韓民求は、延坪島で誰それの「好戦性と野蛮性が克明に表出した現場がまさにここ」と言いながら、いわゆる「挑発源泉、支援勢力、指揮勢力」まで必ず「懲らしめ」なければならないと口角泡を飛ばしながらわめき立てた。

    延坪島における殺伐とした対決雰囲気を高めた韓民求は、テレビ画面でも無様な格好を晒している。我々の平和的な対話提案が「典型的な統一戦線次元の偽装平和攻勢」であり「和戦両面戦術」であるとこき下ろしただけではなく、我々が「体制生存まで覚悟しなければならない状況」を作り出してやると怪気炎を上げた。

    いくら対決に狂い、敵対感が骨に染みついていても、我々の尊厳高い体制にまで触れ、口に出すこともできないようないような険悪な妄言を躊躇することなく吐いたのは、紛れもなく韓民求だ。

    傀儡陸軍ミサイル司令部にフラフラと出向き「北の如何なる標的も打撃」できるよう「万端の準備を整えろ」と虚勢を張りながら、好戦的正体をいかんなく見せつけた。

    足を踏み入れるところ、体を突っ込む所々で、こいつは人に噛みつくことができずにたじろいでいる狂犬のように発狂している。

    こうした為体ぶりを見て、人々はこう囁いている。
    名前にイヌの「狗(ク)」であれ、クチ「口(ク)」であれ、「ク」の字が入ると、人生の縁起が悪くなるのはもちろん、周囲の人にまで大きな被害を及ぼし、さらに名前の「民」の字が百姓の「民」だとしても、姿からするとこの世に生まれたときから上っ面だけが人間で、中身は間違いなくイヌであることは明らかだ、と言っている。

    また、韓民求について「情けないほどに愚かな狂犬」、「限りなく愚かなことをわめき立てる汚い口」を持った馬鹿だとも評価している。韓民求は、外見だけ見ても、まるで一日中、ため池の中で火遊びをしようと正気を失ってしまい灰をかぶってしまったように髪の毛が白く、絞った手ぬぐいをかぶせたような全体がしわだらけの面構えだ。

    それに加えて、権力と財を得ようと出っ張ったカエルの目玉、酒色と道楽で真っ赤になった団子っ鼻、時局を狂わせた反逆の代価として得た世俗的な享楽と好事が作り出した泥のように真っ黒な面構えにそのまま反映されているように、こいつは外面は年老いているが、中身は忙しく動き回っており、悪事ばかり選んで行ってきた世間知らずの悪ガキそのものである。

    今もこいつの故郷である忠清北道のチョンウォンでは、あちこちで火遊びをして、先生の家のキムチの瓶を割り、村の井戸にイヌの糞を入れるなど、悪事ばかり選んで行った韓民求を恨み続けている。

    事物についての初歩的な理知さえない「ハン」シムハン(情けない)「ミン」チュン(民の苦衷)が、権力と財の前では体面や尊厳など関係なく「求」チャプスロッケ(だらしなく)豹変する韓民求なので、傀儡軍部チンピラ集団の親分という身分にまでなれたのかもしれない。

    問題は、韓民求には人間としての外面的な容貌もそうであるが、現実を直視する初歩的な理性も、事物現象をきちんと判断できる知能さえ完全に欠如しているということである。

    我々は、2006年に韓民求を対象として北南首脳級軍事会談をした時、既に彼を白痴中の白痴、 啞中の最上の啞として烙印を押した。

    2010年3月「天安」号沈没事件の時、我々について云々しながら状況を処理する様を見ながら、やはり馬鹿は馬鹿だと評したのであるが、今日、その馬鹿が傀儡国防長官となったのである。

    思えば、総理一人もきちんと選べない南朝鮮で、馬鹿が長官の椅子に座ることぐらいのことは、いくらでもあり得ることだ。

    そんな韓民求なので、腐臭がする口を開き「懲罰」について吠え立てるのも狂犬としての体質的な属性ではあるものの、その概念すら全く分かっていないからである。

    元来「懲罰」というものは、犯した罪科に対して悔いるようにするために懲戒である。したがって、「懲罰」は、一生民族の前に消すことができない罪悪だけを積み重ねている韓民求のような対決狂信者に我々が宣告しなければならない判決であり、断固として実行しなければならない行動措置である。

    韓民求が傀儡陸軍ミサイル部隊にフラフラと出向き、誰それに対する「打撃」と「懲罰」について再び吠え立てたことも、非常識の極致である。

    頑固ジジイのようにあれこれ命じる米国の親分に寄りかかり、やっとミサイル発射の真似ができるようになったくせに、世界的な最先端水準の打撃手段を持った白頭山革命強軍に立ち向かってみるということこそが、自らが死ぬか生きるかも分からず、トラの前で吠えるイヌころの愚かな醜態以外の何物でもない。

    特に、核保有国である我が共和国に対して「体制生存」を騒ぎ立てる韓民求の笑えてしまう為体ぶりは、空の満月を引き下ろすと吠え立てて刃向かう老いぼれた狂犬そのものである。

    思えば、生きる屍として捨てられた金寛鎮の罪悪を遙かに超える覚悟ができていると躊躇することなくほざいた奴なので、これ以上言うには及ばない。

    傀儡国防部長官資格を審議する傀儡国会聴聞会であのような人物しかいないのかという国会議員の審理を捕捉すると直ぐ、金寛鎮が餌を見るとワンワン吠え立てて分別をしなった「猟犬」だとすれば、自分は音を立てずに有利な立場を立とうと接近する「軍犬」になる意向まで表明したという。

    こんな輩を軍の首長に祭り上げた青瓦台の主人のしたことも不憫でならないが、傀儡軍部の立場も悲惨である。分別を失った狂犬、明るいところではない暗い隅っこばかり探して這いずり回るちっぽけな虫に過ぎない韓民求のような奴が、今まだに我が民族の一人として息をしていること自体が非正常である。

    狂犬は棒で叩き殺されるのが常だ。
    皮膚病を患った老いぼれ狂犬に過ぎない韓民求ごときは、我々の人民軍隊の標的にもなれない。奴の命の値段は自動小銃の銃弾1発の値段にもならない。奴の命を終わらせるのは、我々、労農赤衛軍、否、我々の赤い青年近衛隊員の単純な銃槍が適格である。人の皮を被った天下のならず者韓民求に最後に警告する。

    今のように穴の空いたふすまのように口を開き、市場の田舎女のように分別なく騒ぎ立てるな。口をしっかりと閉じているのが、汚い余命を繋ぎ、任期を全うできる唯一の道だ。我々、労農赤衛軍の鋭い銃槍がお前をはじめとした傀儡軍部好戦狂たちの罪深い命を狙っているということを瞬間たりとも忘れてはならない。

    2014年7月30日
    平壌

    訳注:訳文中では、北朝鮮の表現を生々しく再現するために敢えて差別用語を使用している。
    ********************************

    <追記>
    7月30日には、「祖国平和統一委員会書記局報道第1070号 相手が誰なのかを直視し、口のきき方に気をつけなければならない」が報道された。

    「<朝鮮芸術映画>無名の英雄たち」:20部からなる長編映画、朝鮮戦争終結期扱う、ジェンキンス元軍曹出演 (2014年7月29日 「朝鮮中央TV」)

    カテゴリーをどうするのか迷ったが、やはりこの映画は「北朝鮮と国際関係」に入れるに相応しいと思う。7月11日に第1部が放送され、今日(28日)に最終回の第20部が放送される予定である。この種の古い白黒映画は大体飛ばしてしまうのだが、偶然、第1部をじっくり見ていたらとてもおもしろかったのでどんどん引き込まれてしまった。韓国・統一部のデータによると、2011年7月から8月にかけてやはりこの映画が放送されている。

    1編が約1時間の映画なので、これまで19時間この映画を見たわけだが、つまらない場面はほとんどない。この映画の制作時期についてきちんと調べてはいないが、1970年代末から80年代初めにかけて制作されたようだ。この時期の北朝鮮映画は既にカラー版もあったはずだが、上に書いたとおりこの映画は白黒である。

    この映画は、第1部冒頭の「この映画は、偉大な祖国解放戦争時期、敵後(敵地)で戦った英雄たちに捧げる」にあるとおり、朝鮮戦争中に「敵後」、つまりソウルに浸透した北朝鮮工作員の活躍を扱った映画である。映画は1952年10月8日の板門店における「朝鮮戦争休戦会談」決裂から1953年7月27日の休戦協定締結までの時期を扱っている(はずである、今日放送の20部を見ないと確認できない)。

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    Source: KCTV, 2014/07/11放送

    この人物がこの映画の主役「ユ・リム」である。ユ・リムはケンブリッジ大卒の「ロンドン・ニュース」の特派員を装った北朝鮮工作員で、米国滞在中命令を受けソウルに浸透する。
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    Source: KCTV, 2014/07/11放送

    この映画の重要な脇役の一人がジープを運転している「バン・オ」である。彼はユ・リムのケンブリッジ大同窓生であるが、今は韓国で「陸軍本部報道処長」の任についている。バン・オは、優秀な人物であるが、何回もユ・リムに陥れられ、最終的にはクラウス(下記参照)の命で銃殺されることになる。しかし、殺されそうでなかなか殺されず、第20部まで生き残っている人物である。
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    Source: KCTV, 2014/07/11放送

    ユ・リムの主な任務は「ホワイトハウスで対朝鮮政策を指揮しているダーウィン・ケルトン」から情報を得て本国に通報することであるが、一方で米軍の動きの察知、米英間の不信の造成、韓国軍内の混乱の造成なども積極的に行っている。下の写真は、韓国軍の若手将校を決起させクーデターを目論んでいるシン・ジェソン少将。後にユ・リムの手助けで陸軍トップに昇格するが、クーデターに失敗し降格となる(米軍の要請で降格だけの処分で済む)。
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    Source: KCTV, 2014/07/11放送

    新聞を読んでいる人物はこの映画の中で最も多く登場する日本人である「記者、中村」である。中村は、ユ・リムに利用されて米軍の極秘情報を記事にし、米軍に韓国での取材許可証を剥奪されて追放されてしまう。ここからがおもしろいのであるが、彼が日本に帰国後、中村は自分が勤めていた新聞社(通信社だったかも?)も解雇され、ヤクザの親分に転身する。なぜ元新聞記者がヤクザの親分になるのか分からないのだが、『砲声なき戦区』の登場人物もそうだったように、どうも日本人とヤクザが北朝鮮の中では結びついているようである。資本主義国日本では、職を失った者はみなヤクザになるという発想なのだろうか。
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    Source: KCTV, 2014/07/11放送

    この女性も謎の人物である。「フランスの新聞記者、ヘレン」であるが、フランスにいる母親はナチスドイツの拷問を受け身体障害者になってしまったという。そういうこともありユ・リムと親しいのであるが、どうやら「チューリップ」というコード名を持つ米軍側のスパイのようだ(第19部まででは暴露されていないので、分からない)。
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    Source: KCTV, 2014/07/11放送

    ケルトンは第20部まで登場しないが、ケルトンの奥さんジャネットはこの映画で重要な役を演じる。ケルトンがいつも出張ばかりしているので暇をもてあましている有閑マダムという役柄で、ユ・リムに好感を抱いている。北朝鮮映画なので、それ以上の露骨な表現はないが、資本主義国の堕落した夫人といったところであろう。おもしろいのは、ユ・リムはジェームス・ボンドのようにプレーボーイということになっており、あちこちで女性を騙してきたという設定である。ジャネットも騙される女性の一人であるが、もちろん「工作対象」としてである。ともあれ、優秀な工作員(or spy)はプレーボーイなのだろうか。
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    Source: KCTV, 2014/07/11放送

    この女性こそが上に書いたこの映画のヒロイン、金・スンヒ米軍CIC(Counter Intelligence Corps、防諜部隊)中尉(後に大尉に昇格)である。北朝鮮からある女性を助けて越南し、グアム島で軍事訓練を受けた後、CICの隊員として勤務する沈着冷静、銃の名手、そして美貌の軍人ということになっている。スンヒは採用時の実弾訓練で、ジープで銃弾を避けながら障害物の間を走り、銃撃手を轢き殺す。銃撃手がどういう素性なのか分からないが、単なる「演出」なのであろうか。そして、北朝鮮にいた頃はユ・リムの恋人という実に複雑な役柄である。下の写真は、あるパーティーでユ・リムが金・スンヒから「私はあなたを待っている」という手紙をもらってから10年ぶりに再開をする場面であるが、この時はお互いに北朝鮮の工作員であるということは知らない。
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    Source: KCTV, 2014/07/11放送

    北朝鮮にいた頃の金・スンヒとユ・リム。この場面は、第19部でとても重要な意味を持つことになる。
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    Source: KCTV, 2014/07/11放送

    CIC隊長のクラウス大佐は敵の頭目であるが、頭が切れる軍人である。ユ・リムとは諜報戦で互角の勝負をするが、第19部までではユ・リムに敗れてしまう。この映画では、派手な銃撃シーンはほとんどない。そこがおもしろいところなのだが、コロンボ警部のように論理を積み重ねて諜報戦を勝ち抜く。というのも、ユ・リムの国籍は英国、しかも新聞記者なので乱暴な扱いをすると英国代表部から米軍が抗議を受けるという設定だからだ。クラウスはユ・リムが北朝鮮の工作員だという確信を持っているが、なかなか「犯行現場」を押さえることができない。
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    Source: KCTV, 2014/07/14放送

    「英国軍人、ルイス」はアイルランド人である。ルイスは妹と二人暮らしで大学に通っていたが学費を工面するために妹が体を売ったことを知り、大学退学して軍人となる。しかし、前戦での米軍による英軍兵士に対する酷い扱いを経験し、米軍に対する不満を抱いている。ルイスはユ・リムに頼んで妹の消息を調べてもらうのだが、妹は既に死亡していた。資本主義社会の中で窮乏化していく人民、しかも英国に占領されたアイルランド人ということでユ・リムと親交を深め、北朝鮮の工作員となる。映画の中ではIRAに関する言及はないが、IRAを意識しての配役であることは間違いない。
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    Source: KCTV, 2014/07/15放送

    CICのマーティン大尉(後に少佐に昇格)は、クラウス直属の部下であるが、後にクラウスの座を狙う。マーティンも優秀な人物でユ・リムやスンヒが工作員であることを見抜くが、彼もユ・リムやスンヒに陥れられる。
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    Source: KCTV, 2014/07/15放送

    ケルトン博士(本名:ジェンキンス元米軍曹、Charles Robert Jenkins)は第19部まででは写真でしか登場しない。下の写真は、スンヒが第19部で「極秘・米8軍司令部」というスタンプが押された写真を見せる場面である。
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    Source: KCTV, 2014/07/26放送

    ストーリーが非常に複雑なので登場人物以上の紹介はできないが、とてもおもしろい映画である。今日の第20部での展開が楽しみである。

    「<新しく出た歌>近衛部隊自慢歌」:久しぶりのモランボン楽団の新曲、「祝砲」ミサイル発射、「花火大会」と「しまじろう」、『戦勝の年代が今日も語る』、「戦勝」と「最後の勝利」 (2014年6月27日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」の「戦勝節祝砲発射」を見ていた。こちらは、予告された「祝砲(花火)」で、「最高司令官同志」が「直接指導された」短距離ミサイル発射ではない。頂戴したコメントのお返事にも書いたが、今回の「戦略ロケット発射」は、「米帝と南朝鮮傀儡の合同訓練」に対する反発であることは間違いないが、それ以上に「戦勝節」前日の発射であることからして「祝砲」の性格が強い。

    「朝鮮人民軍最高司令官、朝鮮民主主義人民共和国元帥、金正恩同志、68102110141 戦略軍ロケット打撃計画」と書かれた地図を見る「最高司令官同志」。軍事分解線の南側には目標地点とみられる地点に何か書き込まれている。仁川、ソウル、東海市辺りだろうか。「敬愛する最高司令官同志は、南朝鮮侵略軍基地の現配置状態とそれを打撃消滅できるよう仮想して作成した新たな発射計画をご覧になった後、ロケット発射訓練を指導された」とあるので、これらの地域にある在韓米軍基地がマークされているのであろう。
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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 조선인민군 전략군의 로케트발사훈련을 또다시 지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-07-27-0005&chAction=L

    ともあれ、27日21時からは前日の予告通りに大同江の対岸での花火大会があった。北朝鮮の花火大会は、「将軍様の誕生日」も「首領様の誕生日」もまだ寒い時期なので、見物も楽ではない。今後、1月8日に「元帥様」の誕生日花火大会が開催されれば、さらに寒いし、「新年慶祝花火大会」直後なので、朝鮮人民もあまり盛り上がらないかもしれない。

    「戦勝節」61周年記念「慶祝祝砲」
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    Source: KCNA

    しかし「戦勝節」の花火大会は、ちょうど日本の花火大会と同じ時期であり、涼しい大同江川岸で花火を眺めるには最適の時期である。テレビに映った朝鮮人民も、寒い時期の花火大会よりもリラックスしているように見える。

    先生と一緒に見物に来た子供たち。おそろいのシャツのデザインが「しまじろう」っぽいが、この子たちの個人情報が流出したということはないであろう。
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    Source: KCNA

    さて、その花火大会が終わったところで「新しく出た歌」が流れた。コメントへのお返事にも書いたが、26日にも「戦勝節」関連の「新しく出た歌」が紹介されていた。『戦勝の年代が今日も語る』という曲であるが、伴奏は「万寿台芸術団三池淵楽団」となっている。「三池淵楽団」という楽団がこれまでもあったのかどうかは未確認であるが、あまり新鮮さがない曲である。

    今年は、「戦勝」61年というあまり意味がない年なので、60周年の時のようにたくさんの曲は出さないとモランボン楽団の曲は諦めていたのだが、今日、花火大会の直後で紹介された。やはり、モランボン楽団の曲は特別なのか、人民が楽しむ「花火大会」の後で、雰囲気を盛り上げるように紹介されている。今日も終日「朝鮮中央TV」を視聴していたわけではないので、以前に流れたのかもしれないが、それは本記事を各時点で未確認である。

    せっかく書きかけたので、『戦勝の年代が今日も語る』とまとめて紹介しておくことにする。
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    Source: KCTV, 2014/07/26放送

    作詞:金マンヨン、作曲:チャ・ソンチョル、編曲:オ・ユンソク、歌:ハン・ヘオク、伴奏:万寿台芸術団、三池淵楽団、指揮:ソン・スンチョル
    M3u8 Streamsd56ikmnbmp4_001908900
    Source: KCTV, 2014/07/26放送

    曲調は、出だしが去年の「戦勝節」に発表されたモランボンの楽曲(曲名失念)に似ている。

    1.
    戦火のその日は、遠くに去っても
    忘れられない追憶はこの心臓を鳴らす
    火の雨を打ち砕いた首領様のお姿

    百勝の旗印で千万に呼びかける
    勝利がこの地にどのように訪れたのか
    偉大な戦勝の輝かしい年代が
    今日も語ってくれる

    朝鮮人民軍の進路、釜山侵攻目前のムンギョン峠まで赤線が続いている。
    M3u8 Streamsd56ikmnbmp4_001953690
    Source: KCTV, 2014/07/26放送

    2.
    岩も燃えた厳しい日々に
    この国の息子と娘 命を賭けて戦った
    決戦に向かいながら書き留めた誓いの文
    今日もこの胸に響く
    勝利がこの地にどのように訪れたのか
    偉大な戦勝の輝かしい年代が
    今日も語ってくれる

    3.
    戦勝の歴史が輝くこの地に
    英雄の子孫が勝利者として育つ
    先軍の旗をもっと高く掲げ
    党中央に従い英雄朝鮮を轟かせよう
    我々が進む最後の勝利一途に
    偉大な戦勝の輝かしい年代は
    永遠に引き継がれる

    「我々が進む最後の勝利一途に」という字幕と共に農場に設置された「主打撃方向」と書かれた看板が写る。コメントでも話題になった「戦勝」という言葉との関連からすると、「戦勝」はあくまでも「米帝と南朝鮮傀儡の北進で始められた朝鮮戦争」を38度線まで押し戻したから「戦勝」なのだろう。そして、今の課題は「最後の勝利」となるのだが、それはまず「経済強国」を建設し、「南朝鮮を解放」することなのだろう。
    M3u8 Streamsd56ikmnbmp4_002043787
    Source: KCTV, 2014/07/26放送

    と、続けてモランボン楽団の新曲を紹介しようと思ったのだが、録画に失敗していた。記事のタイトルの曲について書けないのは残念だが、今日も流されるだろうからそれを受けて書くことにする。

    今年の「戦勝節」にはモランボン楽団の演奏はなく、「元帥様」は「功勲国家合唱団」公演を観覧した。
    元帥様功勲国家20140727
    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 전승절경축 공훈국가합창단의 공연을 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    <追記>
    曲は聞けないが、『労働新聞』にタイトルの「新しく出た歌」の歌詞と楽譜は出ていた。

    『近衛部隊自慢歌』
    作詞・作曲:ソル・テソン

    1.
    怒濤の疾風を吹かせ一気にソウルに共和国旗をたなびかせた
    鋼鉄の馬と噂された近衛105タンク師団
    米帝の傲慢な乗っ取り師団と将校たちを包囲殲滅し
    この世に名を轟かせた勇敢な戦士たち
    近衛4歩兵師団の軍旗にその偉勲が輝く
    近衛部隊 昨日も今日も明日も永遠の栄光を轟かせろ

    2.
    海の島とわめき散らしていた米帝侵略船の重巡洋艦を
    痛快に水葬した海軍の勇敢な近衛2魚雷艇隊
    空の要塞と気取り忍び込んだ米帝の空中匪賊ども
    秋の落葉にした空軍の見事な近衛追撃機連隊
    近衛部隊 昨日も今日も明日も永遠の栄光を轟かせろ

    3.
    名前を聞いただけで敵共を恐れさせ死の恐怖に震えさせた
    滅敵の部隊である進撃の矢近衛3歩兵師団
    懲罰の砲火で正義の銃剣で昼強盗米帝をたたき切り
    滅亡の罠に陥れた防衛者たち近衛2歩兵師団
    近衛部隊 昨日も今日も明日も永遠の栄光を轟かせろ

    4.
    広闊な激戦場を走り回り進軍し輝かしい戦果を上げ
    洛東江「燃えたぎる防御戦」も打ち破った近衛6歩兵師団
    険しい山を嵐のように超え勝戦の砲声を響かせ
    敵を戦慄させたその名も誇り高い安東12歩兵師団
    近衛部隊 昨日も今日も明日も永遠の栄光を轟かせろ

    5.
    首領の命令を決死で遵守し米帝を撃滅した部隊
    戦勝と共に伝説として記憶された誇らしい近衛部隊
    祖国の輝かしい勝利の歴史に燦爛と刻み込まれた
    その名は永遠に後代の胸に誇りとして光を放つ
    近衛部隊 昨日も今日も明日も永遠の栄光を轟かせろ

    朝鮮戦争で「米帝を打ち破った」部隊を「自慢」する歌である。『労働新聞』に掲載された楽譜を貼っておくので、音楽が得意な方は、それを見てモランボン楽団の演奏を想像されたい。

    近衛部隊自慢歌
    Source: 『労働新聞』、「近衛部隊自慢歌」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    カウンター10万突破のお礼 (2014年7月19日)

    少し前に見たら、カウンターが100011になっていました。

    カウンターの桁数が5桁しかなく、10万を超えたら昔の自動車の積算距離計のようにゼロに戻るのかと思っていましたが、桁数が自動的に増えていました。2012年1月から始めた拙ブログですが、約2年半でカウンターの桁数を増やすことができました。

    これもひとえに、たびたび拙ブログをごらんにくださっている方や貴重な情報を含んだコメントをくださった方々のおかげだと思います。拙ブログを支えてくださった皆様方にお礼を申し上げるとともに、これからもおつきあいくださりますよう宜しくお願いいたします。

    「敬愛する金正恩元帥様が諸部門の事業を現地指導 2014.5-6」:手招きする金正恩夫妻、バスケットボールに厳しい目、子供好きの「元帥様」パパ、「大同江」ブランドのウォータースライド、シャンプーの香り、「通報員」 (2014年7月16日 「朝鮮中央TV」)

    過去記事に対するコメントでも話題になったが、7月16日「朝鮮中央TV」が金正恩の5月~6月の非軍事部門に対する指導を紹介する「朝鮮記録映画」を放送した。

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    Source: KCTV, 2014/07/16放送

    「第9回全国芸術人大会参加者のためのモランボン楽団祝賀公演」の公演が終わり拍手をする金正恩夫妻
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    Source: KCTV, 2014/07/16放送

    しばらくすると金正恩が手招きを始める「와 와 (来い、来い)」と言っているような口の動きだ。
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    Source: KCTV, 2014/07/16放送

    この時に軍服を着た女性が右から左に走っていく。通常、金正恩が参観する公演では、カメラマン以外が動き回ることはない。すると、この女性は警護関連の女性だったのだろうか。コメントには「演出」と書いたが、もしかすると金正恩の突然の指示に警護体制の立て直しが必要になったのかもしれない。

    すると李雪主夫人も手招きを始める。
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    Source: KCTV, 2014/07/16放送

    走って金正恩の椅子の後ろに回り込み握手をする楽団員
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    Source: KCTV, 2014/07/16放送

    コメントを下さった方も書かれているが、金正恩夫妻の座席は、ステージから相当離れている。ステージ上にいるモランボン楽団員のサイズを見れば分かるが、この距離で「元帥様」の手招きが直ぐに伝わったのであろうか。いくら「元帥様」を注視していても、拍手をしているのか手招きをしているのか見分けが付くのだろうか。もしかすると後ろを走って行った軍服の女性は、「元帥様」の命令を楽団員に伝達した伝令だったのかもしれない。
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    Source: KCTV, 2014/07/16放送

    「青年学生宮殿」の多機能体育館でバスケットボールをチェックする金正恩。「元帥様」は色々なものをチェックするが、バスケットボールを見る目つきは他とは違う。ボールの弾み具合もチェックしている。
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    Source: KCTV, 2014/07/16放送

    「国際児童節」に「平壌愛育院」を訪問し、子供の牛乳にストローを差し込んでやる「元帥様」。宣伝4割だとしても、過去記事にも書いたとおり、「元帥様」はこの年齢の子供は大好きなようだ。金正恩パパなのだろう。
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    Source: KCTV, 2014/07/16放送

    よく分からないは「愛育院」というのが通常の保育園なのか、それとも孤児院なのかということである。そう思って、早速web「朝鮮語大辞典」を調べたら、「愛育院」は、「보호자가 없는 유치원나이의 어린이들을 맡아서 키우고 교양하는 양육기관(保護者がいない幼稚園年齢の子供たちを預かって育て、教育する養育機関」と書いてあった。

    「愛育院」の子供たちの食事にも気を配る「元帥様」
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    Source: KCTV, 2014/07/16放送

    「元帥様」のポケットを引っ張る孤児たち
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    Source: KCTV, 2014/07/16放送

    過去記事でも話題にした、北朝鮮製のウォータースライド。依然として材質についての説明はないが、「大同江」ブランドのようだ。
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    Source: KCTV, 2014/07/16放送

    「大同江果物総合加工工場」で「李雪主同志」に勧められて、シャンプーの香りをチェックする「元帥様」。実に自然な動画なのだが、「夫婦なんだなぁ・・・」というか、仲睦まじい感じである。
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    Source: KCTV, 2014/07/16放送

    金正恩夫妻が香りをチェックした「リンゴシャンプー」と「リンゴリンス」。リンゴの香りのシャンプーは日本にあるのだろうか。
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    Source: KCTV, 2014/07/16放送

    「李雪主同志」は、ローションでもつけたのだろうか、両手をこすり合わせている。
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    Source: KCTV, 2014/07/16放送

    「気象観測設備の現代化を高い水準で実現しなければならない」と「元帥様」。「通報員(あるいは元)」と書かれた地図。気象観測地点なのだろうか。
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    Source: KCTV, 2014/07/16放送

    「新たに出た朝鮮記録映画」ではいろいろな発見がある。

    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が朝鮮人民軍第171軍部隊の砲射撃訓練を指導された」:ロケット砲発射訓練も指導、韓米訓練への反発、米国が日朝交渉を牽制 (2014年7月15日 「労働新聞」)

    15日付けの『労働新聞』が「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が朝鮮人民軍第171軍部隊の砲射撃訓練を指導された」という記事を報じた。日本のメディアなどは「北朝鮮軍が同日正午ごろ、北朝鮮東部の北方限界線(NLL)付近から日本海に向けて、放射砲(多連装ロケット砲)を発射した」(14日、『東京新聞』)と報じており、『労働新聞』などが報じた「砲射撃訓練」も「東部前線を守っている砲兵部隊が海上軍事分解線(NLL)を超えて侵入する敵を強力な砲兵火力打撃で鎮圧できるよう準備されているかを検閲し」と書かれているので、日本などのメディアが伝えた「放射砲」発射と同一のものであろう。

    『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 조선인민군 제171군부대의 포실탄사격훈련을 지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-07-15-0002&chAction=L

    『東京新聞』、「ロケット砲100発発射 北朝鮮、日本海に向け」、http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2014071402000206.html

    車両搭載ランチャーから発射されるロケット砲、発射の様子を見る金正恩
    2014-07-15-03-01.jpg
    Source: 前掲、『労働新聞』

    海上に着弾するロケット砲
    2014-07-15-03-02.jpg
    Source: 前掲、『労働新聞』

    「敵の如何なる些細な形の戦争演習騒動や挑発行為も我々に対する耐えがたい冒涜であり、挑戦として見なし、絶対に見逃さない朝鮮人民軍の決死の意志を誇示した訓練は爽快に終わった」ことに「大満足」する「最高司令官同志」。
    2014-07-15-02-01.jpg
    Source: 前掲、『労働新聞』

    過去記事でも金正恩の短距離ミサイル発射訓練指導について書いたが、今回も通常は「指導」していないか「指導」していても報じられない金正恩のロケット砲発射訓練を大きく伝えていることは、米韓合同軍事演習に対する反発であろう。特に、北朝鮮はロケット砲発射を「通常の訓練」とはせず、上記のように「戦争演習騒動や挑発行為」を前提とし、しかも「最高司令官」が「直接指導」する訓練であるということには、特別な意味合いがある。

    日本のメディアによると、ケリー国務長官が岸田外相と電話で会談し「日米は同盟国だ。北朝鮮との交渉については透明性をもって、事前にきちんと相談してほしい」と要求したとのことである(16日、『毎日新聞』)

    『毎日新聞』、「<拉致問題>米、安倍首相の訪朝けん制 事前の相談要求」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140716-00000012-mai-pol

    米国務省定例記者会見でもこの「電話会談」については取り上げられ、サキ報道官は「電話会談」があったこと以上については言及せず、「日朝交渉について説明するために岸田外相の訪米予定があると聞いているが」という質問に対しても「歓迎はするが、具体的な予定は今のところない」と答えている。

    米国は、北朝鮮のこうした挑発に対して批判のトーンを下げた安倍政権に対して不満があるのであろう。とはいえ、イラン、シリア、ウクライナに加えてイスラエル・パレスチナ問題で手一杯の米国は、北朝鮮にまで関与している余裕はない。せいぜい「40年間続けてきた定例かつオープンな軍事演習」(サキ報道官)で北朝鮮を威圧しておくのが手一杯といったところであろう。北朝鮮としては、そうした国際情勢を見ながら、「最高司令官が直接指導する」弾道ミサイル発射訓練やロケット砲発射訓練を連続して行い、日米韓の足並みの乱れを誘発しているのであろう。

    U.S. Department of State, Daily Press Briefing, http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2014/07/229290.htm#KOREANPENINSULA

    本記事を書くにあたり、中国の動きについてはきちんと調べていないが、韓中関係を強化しつつ、如何なる形であれ日米韓の連携が崩れることは、歓迎しているであろう。もちろん、一方で日朝関係の進展如何で、北朝鮮に対する中国の影響力が低下することに対する警戒も強めているはずである。

    「米国と南朝鮮当局は全世界が厳しい視線で時代錯誤的な軍事的妄動を注視していることを忘れてはならない、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会政治局スポークスマン談話」:「日本侵略軍海軍艦船」も参加 (2014年7月13日 「労働新聞」)

    7月12日に「朝鮮中央通信」が報じていた記事の中に「日本侵略軍海軍」という表現があった。日朝交渉が進展している中、なかなかきつい表現をするものだと思ったが、それ以上の追求をしなかった。

    『労働新聞』、「미국과 남조선당국은 온 세계가 엄한 시선으로 시대착오적인 군사적망동을 지켜보고있다는것을 잊지 말아야 한다 조선민주주의인민공화국 국방위원회 정책국 대변인담화」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-07-13-0013&chAction=L

    ところが、ロイターが配信した「日米韓、21日から合同海上訓練」によると、「日本の海上自衛隊と米韓両国の海軍が21、22両日に韓国南方の公海で、合同で海上捜索・救助訓練を行うことが13日分かった。韓国軍関係者が明らかにした」となっている。この記事を書いている時点でのタイムスタンプを見ると「2014年 07月 13日 20:12 JST」となっており、「韓国軍関係者」がいつ明らかにしたのかは分からないが、「朝鮮中央通信」が「スポークスマン談話」を配信してから半日以上経過している。

    REUTERS, 「日米韓、21日から合同海上訓練」、http://jp.reuters.com/article/kyodoPoliticsNews/idJP2014071301001723

    日本の防衛省や自衛隊が、この事実をどの時点で公開したのかについては、本記事を書くに当たって全く確認していないので、もしかしたら、公開済みなのかもしれない。日本のメディアは、ハワイで行われているリムパックに自衛隊が参加し、米国だけではなく第三国とも一緒に訓練をしていることを「集団的自衛権」との絡みで報じているが、21日からは「米国が仲介する形で人道目的の救助訓練」(ロイター)を米日韓で行うことになる。

    『労働新聞』の同記事では「7月22日からは、日本侵略軍の海軍艦船まで引き入れ、済州島近海で連続して大規模な海上合同訓練を強行する」としており、日にちは1日ずれているが、自衛隊が「訓練」に参加することは把握しているようだ。

    『産経新聞』によると小野寺防衛大臣は、北朝鮮が31日早朝に開城付近から再び短距離ミサイルを発射したことに対し「韓国に対しての威圧的な発射ではないか」と述べているが、いくつかの理由があるにせよ、北朝鮮が軍事境界線に隣接した開城から過去記事でも紹介した移動式車両に搭載されたと思われる短距離ミサイルを発射したことは、「韓国に対する威圧」であることは確かであるし、米韓合同演習への威圧であることも間違いない。

    『産経新聞』、「北ミサイル「韓国への威圧」 小野寺防衛相が見解」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140713-00000531-san-pol

    その米韓合同演習に「人道目的の救助訓練」であれ、自衛隊艦船が参加していることははっきりと認識しておくべきである。北朝鮮にとっては、米韓合同訓練は「人道目的」どころか「北侵戦争準備」であり、そこに関与する船舶はどの国の船舶であれ「北侵戦争準備」に協力していると解されても不思議ではない。

    もちろん、北朝鮮側も日朝交渉に配慮しつつ、「日本侵略軍の海軍艦船」については、上記の記述だけにとどめ、以下の部分では「(米帝が)南朝鮮と日本を掌握し」と日本は「米帝」の「被害者」扱いになっているが、日朝交渉がなければ、「日本反動は、朝鮮半島支配の野望を実現しようと」と書かれていたことであろう。

    日本側も、安倍首相の「(ミサイル発射と)拉致問題とは分けて」という彼らしからぬ抑制したコメントからも分かるように、「拉致問題解決」には相当に重きを置いていることが分かる。

    北朝鮮と日本のベクトルは全く異なる方向を向いているが、現状、安倍政権の「思惑」と金正恩政権の「思惑」のベクトルが交差点で均衡が取れ、双方が抑制をしているのが現状であろう。

    日朝関係、日韓関係、日米関係が「スパゲッティボール」に投げ込まれ、それに日中、韓中、米中の「ミートソース」が欠けられているような状況ではないだろうか。

    「朝日友好親善協会顧問が日本国会議員代表団と会った」:手強い元外交官、姜锡柱が会見 (2014年7月12日 「労働新聞」)

    12日付けの『労働新聞』は、姜锡柱が猪木議員一行と会見したと報じた。

    『労働新聞』、「조일우호친선협회 고문이 일본국회의원대표단을 만났다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-07-12-0012&chAction=S

    姜锡柱は2014年4月9日に開催された「最高人民会議第13期第1回会議」で「副総理」の職を解かれた。その後、4月14日の『労働新聞』が「朝鮮労働党中央委員会政治局委員であり、党中央委員会秘書である姜锡柱同志は、(4月)13日、アルベルト・アナヤ・クティエルス全国指導者を団長とするメキシコ労働党代表団と会」ったと報じ、「副総理」は解任されたものの、依然として党の中央にいることが確認された。

    『労働新聞』、「조선로동당 중앙위원회 비서 강석주동지가 메히꼬로동당대표단을 만났다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-04-14-0026&chAction=S

    その後も、ナミビア西南アフリカ人民組織党代表団やモンゴル人民党代表団と「朝鮮労働党中央委員会政治局委員、党中央委員会秘書」として接見している。

    これまで、猪木議員らスポーツ交流代表団が平壌を訪問した際には、金永南最高人民会議常任委員会委員長と「国家体育指導委員会委員長」の張成沢が会見している。拙ブログでも、その様子を伝えた「朝鮮中央通信」の動画を引用しながら、張成沢の肉声と「日本語」を紹介した。

    姜锡柱はこのように外国の政党代表団と会見しているので、猪木議員一行と会見したこと自体は異例とは言えないが、彼の肩書きに「朝日友好親善協会顧問」という肩書きが付いている点に注目される。2014年1月15日に「朝日友好親善協会顧問」の肩書きで猪木議員と会見したのは、金英日であった。金英日の肩書きは韓国・統一部の資料によると「朝鮮労働党国際部部長」となっている(今日現在)。しかし、「朝日友好親善協会顧問」が「朝鮮労働党国際部長」の兼職であるということになっているのであれば、姜锡柱が「国際部長」の職責を引き継いでいるのかもしれない。

    『労働新聞』、「조일우호친선협회 고문이 일본국회 참의원 의원일행을 만났다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-01-16-0031&chAction=S

    いずれにせよ、姜锡柱は北朝鮮の外交、特に対米交渉を担ってきた人物なので、「国際部長」に任命されたのであれば、手強いながらも現実的な交渉ができる相手であるといえよう。

    猪木議員らはどんな話をしたのであろうか。

    また、『労働新聞』は、猪木議員一行が「敬愛する金正恩同志に・・・団長が贈り物を差し上げた」とも伝えている。「贈り物」の内容については不明。

    『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께 일본국회의원대표단 단장이 선물을 드리였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-07-13-0001&chAction=S

    「日本国会議員代表団万景台訪問」:猪木議員一行平壌の「名所」を視察 (2014年7月11日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が猪木議員一行が「万景台(金日成の生家)」などを訪問した様子を動画で伝えた。

    「万景台」での解説を聞く一行。「講師」は日本語で説明をしている。私が行ったときは朝鮮語を話す若い女性「講師」が案内をしてくれた。
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    Source: KCNA

    定番の記念撮影
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    Source: KCNA

    この井戸の由来は忘れてしまったが、「パガジ(ヒョウタンを半分に切ったしゃく)」で水を飲んだことは覚えている。暑い日だったので、冷たい水は美味しかった。水の成分は分からないが、体調に影響はなかった。
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    Source: KCNA

    水を飲む阪口直人議員
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    Source: KCNA

    「ミリン乗馬クラブ」で馬に乗る阪口直人議員
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    Source: KCNA

    山田太郎議員も
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    Source: KCNA

    「ムンスウォーター・パーク」の様子をスマホで撮影する石関貴史議員
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    Source: KCNA

    写真撮影をする訪問者
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    Source: KCNA

    平壌の11日の最高気温は31.5度。屋外プールも賑わっている。
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    Source: KCNA

    これまでの猪木議員がスポーツ関係者などと訪問したときは、猪木議員が中心に映されていたが、今回は、複数の国会議員が参加しているので、各議員を大写しにしている。

    「敬愛する金正恩同志が平壌国際飛行場ターミナル建設場を現地指導された」:平壌空港第2ターミナル建設、「他国のよい点はとりいれろ」と指示、高麗航空HP、「信用カード」、オンライン予約で使えない名前 (2014年7月11日 「労働新聞」)

    11日付けの『労働新聞』が金正恩が「平壌国際飛行場ターミナル建設現場を現地紙指導」したと伝えた。

    『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 평양국제비행장 항공역사건설장을 현지지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    平壌への定期便は現在、中国国際航空と高麗航空のみである。中国国際航空は、北京と平壌の往復(CA121,CA122)している1便が毎日運行されている。中国国際航空のHPで運行状況などを調べようとしたが、エラーとなってしまい検索できない。その他のサイトで調べてみると、CA121が13:20平壌到着、CA122が18:15北京到着で運行されているようだ。

    Airportia, Sunan International Airport, http://www.airportia.com/north-korea/sunan-international-airport/

    一方、高麗航空は朝鮮語と英語で表示されるきちんとしたHPを持っている。今まで知らなかったのだが、HPからフライト予約もできるようになっている。高麗航空HPには、同HPが2012年8月7日に開設されたと書かれている。気付いていなかったが、これも金正恩時代の新たな動きのようだ。

    高麗航空HPの英語トップページ
    Air Koryo1
    Source: Air Koryo, http://www.airkoryo.com.kp/en

    オンライン予約のページはこのようになっている。なお、「国籍(nationality)」に韓国は出てこない。この画面から「NEXT」に進もうとしたが、進むことはできなかった。どの条件が「NEXT」を不可にしているのか試してみたところ、特定の名前(金正恩、金正日、金日成)では進めないようにしてあるようだ。
    koryo air2
    Source: Air Koryo, http://www.airkoryo.com.kp/en

    名前を朴奉珠に変更すると次の画面に進むことができる。
    air koryo 3
    Source: Air Koryo, http://www.airkoryo.com.kp/en

    北朝鮮では、「元帥様」や「大元帥様」と同じ名前は「使用不可」となっているのかもしれないが、例えば中国朝鮮族で同姓同名の人がいたらどうするのであろうか。なお、金敬姫や張成沢はオンライン予約ができるようだ。

    張成沢でチェックイン画面
    air koryo 4
    Source: Air Koryo, http://www.airkoryo.com.kp/en

    発券手数料ということなのだろうが、総額が9ドルと10ドルで表示される。
    air koryo 5
    Source: Air Koryo, http://www.airkoryo.com.kp/en

    「PURCHASE」をクリックするとLOG INを要求される。
    air koryo 6
    Source: Air Koryo, http://www.airkoryo.com.kp/en

    メンバー登録の画面は次のようになっている。
    air koryo 7
    Source: Air Koryo, http://www.airkoryo.com.kp/en

    ここから後には進まなかったが、オンライン予約の支払いをどのように処理するのか非常に気がかりである。通常の航空会社であれば、クレジットカードでの決済となるが、高麗航空はどのようにしているのであろうか。北朝鮮にはクレジットカードなど存在しないはずであるが、もしかすると中国の支社を経由してクレジット決済が可能になっているのかもしれない。

    そう思って同HPを見ていると、

    英語:
    "E-ticket can be purchased by all the way of payment approved by Air Koryo, such as cash, traveller’s cheque, credit card, etc."

    朝鮮語:
    「 전자비행기표는 현금, 행표, 신용카드 등 고려항공이 인정하는 모든 지불수단을 리용하여 구매하실수 있습니다.」

    と書いてあり、やはりクレジットカードでの決済も可能なようだ。驚いたのは、朝鮮語版にクレジットカードを示す「신용카드(信用カード)」という語彙が使われていることだ。この語彙が北朝鮮で使われているのだろうかと思い、例によってweb「朝鮮語大辞典」を調べてみたが、思った通り「신용카드」は出てこなかった。この語彙に関しては、韓国で使っている語彙を借用しているようだ。

    <追記>
    コメントで北朝鮮にもクレジットカードがかなり前からあるという情報を頂いた。頂いた情報を基に調べてみると、7月7日付けの『朝鮮新報』に「タクシーサービス、座右の銘は『人民のために奉仕する』、好評の『大同江』の運転手たち」という記事が掲載されており、その中に「距離測定器とその結果により、料金が電子カード決済機で支払われる」と書かれている。

    『朝鮮新報』、「택시봉사, 좌우명은 《인민을 위하여 복무함!》/호평을 받는 《대동강》의 운전수들」、http://chosonsinbo.com/2014/07/sk77-2/

    また、同新聞の2011年6月の「ICカード開発、導入」という記事には「平壌情報センターが新しいICカードシステムを研究、完成したのに基づいて各種のICカードを開発した」と書かれている。

    『朝鮮新報』、「ICカード開発、導入」、http://jp.korea-np.co.jp/article.php?action=detail&pid=51574

    これらの記事を読むと、カードを使った決済は行われているようであるが、諸外国で使われているクレジットカードのように何の支払いにも使えるカードではなく、特定の支払いにのみ使える専用カードのような気がする。例えば、かつてJRが販売していた切符購入専用の「オレンジカード」のようにである。

    やはりそうなると「信用カード」は、少なくとも一般には普及していないのではないだろうか。カード作りは「平壌情報センター」で技術的に可能であっても、ソフトの面、つまり金融システムが国際的信用基準をクリアした状態で機能していなければ、国際カードの運用は困難なはずである。

    高麗航空のカード決済は、中国のシステムを使っているのではないだろうか。
    *******************

    また、空港へは出発の90分前に到着するようにとも書いてある。出入国カードの見本も見ることができる。

    air koryo 8
    Source: Air Koryo, http://www.airkoryo.com.kp/en

    高麗航空のHPでの悪戯にはまってしまったが、肝心のフライトである。水・日を除く毎日、平壌-北京間、水・土には平壌-瀋陽間、月・金には平壌-ウラジオストック間の定期便を運行しているようだ。
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    Source: Air Koryo, http://www.airkoryo.com.kp/en

    高麗航空の海外オフィスは、北京、瀋陽、ウラジオストック、モスクワ、ベルリン、クウェートにある。このうち、瀋陽オフィスは七宝山ホテルの1階にあり、同ホテルに泊まったときに覗いてみたらバッジを着用した男性が1人いた。クウェートにオフィスを構えているのは、どのような需要を考えてなのであろうか。

    高麗航空HP、海外事務所、http://www.airkoryo.com.kp/kp/company/foreign_offices

    少し長いが、同航空の沿革を翻訳しておくことにする。

    **************
    会社沿革
    高麗航空は、朝鮮民主主義人民共和国の唯一の国家航空会社です。

    高麗航空は、1995年9月21日に創立されました。
    創立当時の名称は「朝鮮民航」でした。
    朝鮮民主主義人民共和国政府の決定により「朝鮮民航」は、1992年3月28日に高麗航空となりました。
    高麗航空は、50年あまりの歴史があります。

    1955.11 平壌-チタ国際定期空路開設
    1957.3 平壌-感興-清津国内定期空路開設
    1559.4 平壌-北京国際定期空路開設
    1970.3 平壌-恵山国内定期空路開設
    1974.10 平壌-ハバロフスク国際定期空路開設
    1980.7 平壌-感興-恵山国内定期空路開設
    1983.4 平壌-モスクワ国際定期空路開設
    1987.11 平壌-モスクワ-ベルリン国際定期空路開設
    1989.11 平壌-モスクワ-ソフィア国際定期空路開設
    1992.2 平壌-新潟・名古屋旅客、貨物チャーター空路運営開始
    1993.4 平壌-バンコク国際定期空路開設
    1996.9 平壌-マカオ国際定期空路開設
    1997.8 平壌-ウラジオストック国際定期空路開設
    2000.4 平壌-瀋陽国際定期航路開設
    2000.7 平壌-ソウル旅客チャーター航路運営開始
    2008.8 平壌-クアラルンプール旅客チャーター航路運営開始
    2008.9 平壌-シンガポール旅客チャーター航路運営開始
    2008.9 平壌-クウェート旅客チャーター航路運営開始

    高麗航空HP、会社沿革、http://www.airkoryo.com.kp/kp/company/history
    *********************

    上で見たとおり、これらの航路で現在運営中のものは、北京、瀋陽、ウラジオストックのみである。少し前、中国ベースの北朝鮮旅行斡旋会社がクアラルンプールからの旅行も募集していたので、もしかすると不定期便が飛んでいるのかもしれない。

    さて、随分遠回りになってしまったが、金正恩の平壌空港第2ターミナル建設現場視察に話を戻す。同記事によると、金正恩は「第2ターミナル」建設前の2012年7月、平壌国際空港第1ターミナル工事の現地指導も行っているという点である。この現地指導について当時報道されたのかどうかは記憶が定かではないが、上で紹介した高麗航空HPが開設されたのがまさにその1ヶ月後の2012年8月である。金正恩は、この時に航空事業に関して様々な指導を行い、高麗航空HP開設もその一環であったのであろう。今回の第2ターミナル工事は、この時に彼が指示をしたようだ。

    同記事には、金正日の名前は一切登場しない。この種の大規模工事は、「金正日の遺訓を継いで」ということがおおいが、金正恩が就任して間もない2012年7月に彼が「将軍様の遺訓」としてではなく、独自の事業として空港整備事業を始めていたのであれば、注目すべき事実である。

    金正恩は「平壌国際飛行場のターミナルは、平壌の関門、我が国の顔と同じである」と述べているが、空港を「我が国の顔」と例える辺りは、さすがに国際派金正恩といったところだ。さらに、「空港ターミナル建設にあたり、世界的な趨勢と外国のよい点を受け入れつつ、民族性をいかして完成しなければならない」とも指示しており、世界水準の国際空港ターミナル建設を目指しているようだ。

    もちろん、最大の課題は空港に発着する国際便をどれだけ増やすのかということであるが、そのためには、北朝鮮がより開かれた魅力ある国にならなければならない。「元帥様」に何か名案でもあるのだろうか。

    空港第2ターミナル建設の現地指導する金正恩
    2014-07-11-01-01.jpg
    Source: 前掲、『労働新聞』

    第2ターミナル全景
    2014-07-11-01-03.jpg
    Source: 前掲、『労働新聞』

    「日本国会議員代表団到着」:猪木議員、松浪健太議員など訪朝 (2014年7月11日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が日本の国会議員が平壌に到着したと伝えた。同通信によると訪朝者は、以下のとおり(所属政党は筆者による)。

    日本維新の会所属議員
    猪木寛至参議院議員(団長)、松浪健太衆議院議員、石関貴史衆議院議員、阪口直人衆議院議員
    清水貴之参議院議員

    みんなの党
    山田太郎参議院議員

    その他に日本体育平和交流協会のメンバーが同行しているという。

    <追記>
    10日の「朝鮮中央TV」「20時報道」では、猪木議員一行到着の様子を動画付きで紹介した。

    高麗航空機から降りる猪木議員ら
    2014-07-10-19flv_000980054.jpg
    Source: KCTV, 2014/07/10放送

    平壌空港に到着した一行
    inoki and his group
    Source: KCNA

    「朝鮮オリンピック委員会委員長が第17回アジア競技大会組織委員会委員長に通知文を送った」:北朝鮮大規模応援団派遣を希望、7月15日に板門店で会談提案 (2014年7月10日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」いよると、北朝鮮の「オリンピック委員会委員長」が韓国側の組織委員会に対して「北南関係を改善し、民族団合の雰囲気を作り出し、選手の競技応援をするために、南朝鮮の仁川で開催される第17回アジア競技大会に我々の選手団と共に大規模な応援団を派遣することにした」という「通知文」を送ったとのことである。

    選手団派遣については既に韓国側でも承認されているが、加えて「大規模な応援団」を韓国側が受け入れるのかどうかは分からない。北朝鮮は少なからず体制宣伝を考えているはずであるが、北朝鮮側の「応援団」を受け入れた経験がある韓国なので、この際、受け入れてみるのも南北関係打開に繋がる方策なのかもしれない。

    北朝鮮は、7月15日に「板門店の我々側地域(北朝鮮側地域)あるいは南側地域」でこの問題について会談することを希望している。

    流れとしては、「通知文」にもあるように7月7日に出された「朝鮮民主主義人民共和国政府声明」などを受けたものであろうが、韓国側の対応が注目される。

    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が朝鮮人民軍戦略軍西部前戦打撃部隊の戦術ロケット発射訓練を指導された」:金正恩が再び短距離ミサイル発射訓練指導、ミサイルや搭載車両を公開、米中戦略・経済対話を牽制、日本の出方を見る、全秉浩死去 (2014年7月10日 「労働新聞」)

    北朝鮮が短距離ミサイルを発射したことは既に報じられているが、10日の『労働新聞』は今回の「戦術ロケット発射訓練」も金正恩が指導したと伝えた。

    『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 조선인민군 전략군 서부전선타격부대들의 전 술 로 케 트 발 사 훈 련 을 지 도 하 시 였 다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    『労働新聞』によると「今回の発射訓練は、戦略軍西部前戦打撃部隊(複数)の実戦能力を判定検閲するために機動と火力打撃を組み合わせて行われた」とのことである。

    「機動」については、車両で移動する短距離ミサイルを用いたことがはっきりと分かる写真も公開している。
    スカッドと移動車両1
    Source: 前掲、『労働新聞』

    こちらの写真では、車両から打ち上げられたミサイルが大きく写っている。
    移動車両とスカッド2
    Source: 前掲、『労働新聞』

    上の写真を半分にして拡大すると、ミサイルが迷彩色にペイントされていることまで確認できる。この形の車両は北朝鮮の軍事パレードにも登場しているが、搭載されているミサイルはカーキ色一色で迷彩色ではない。もしかすると、軍事パレードで搭載されているのは、モックアップで実戦配備されているものと異なるのかもしれない。ただし、光線の関係で迷彩色に見えている可能性もある。

    <追記>迷彩色のスカッドの写真をコメントで教えていただいた。コメントを参照されたい。

    ミサイル2
    Source: 前掲、『労働新聞』

    また、下半部を拡大するとミサイル搭載車両がいる。
    車両1
    Source: 前掲、『労働新聞』

    これまで、北朝鮮がどのような方法で短距離ミサイルを発射しているのか公開してこなかった。日本の報道では、ミサイルは「黄海道付近から発射された」ということであるが、金正恩が「現代戦の要求に合った迅速な機動力と組み合わせて成功裏に行われたと大満足された」ということで、「西部前戦打撃部隊」は車両でミサイルを移動させながらどこからでも発射できるということを誇示することが目的であったのであろう。また、前回の「発射訓練」同様、今回も日が昇る前の早朝に行っているので、「敵」の探知能力を測る目的もあったのであろう。

    決して公開はしないだろうが、日米韓の防衛当局がこうした北朝鮮の動きをどれだけ事前に察知できていたのかは非常に重要である。今回の「発射訓練」では約500キロ飛行して「日本海に着弾」したということであるが、北朝鮮のスカッドに600キロ程度の飛行能力があるとすると、北朝鮮が移動車両にスカッドを搭載し北朝鮮東南部の地域から発射すれば、福岡、北九州、広島ぐらいまでは射程距離に含まれる。650キロぐらいの飛行能力があれば、米軍佐世保基地や米軍岩国飛行場も射程距離内に入り、朝鮮半島有事の際には攻撃対象となり得る(日本が集団的自衛権を行使すればなおさらである)。日米韓が北朝鮮の発射準備をを察知できれば、ミサイル防衛システムを稼働させることもできるのであろうが、それができていなければ飛来するミサイルを撃破することは不可能であろう。(各地点間の距離については大まかな計算である)

    移動式のノドンがあるのかは不明であるが、日本全域を射程距離におさめるとされるノドンであればさらに脅威は高まる。

    ミサイル発射地点と着弾点については、『産経新聞』、「北、日本海にミサイル」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140710-00000113-san-kr

    「敬愛する最高司令官同志は、戦略軍参謀部が作成した発射計画、設定された飛行軌道と目標水域封鎖状況などを具体的に了解され、戦術ロケット発射命令を下された」とのことであるが、「目標水域封鎖」が具体的のどのような方法で行われたのかは明らかにしていない。

    「戦略軍火力打撃計画」と書かれた地図を見ながら説明を受ける金正恩
    戦略軍火力打撃1
    Source: 前掲、『労働新聞』

    では、今回の「発射訓練」はなぜ行われたのであろうか。前回については、日朝会談に対する日本の態度を見極めるのがその主目的であったと思われるが、今回は米中、特に中国に対する不快感の表れであろう。特に、習近平が韓国を訪問し「朝鮮半島の核兵器開発に断固として反対」し「2005年9月19日に合意された9.19共同声明と国連安保理関連決議を誠実に履行しなければならない」と北朝鮮に求め、韓国の「朝鮮半島信頼プロセス」などの韓国側の努力を中国が「積極的に評価した」ことなどに対して反感を抱いているのであろう。

    『아시아투데이』、「박근혜 대통령-시진핑 주석 채택 한·중 공동성명 전문」、http://www.asiatoday.co.kr/view.php?key=20140703010002390

    それを受けたのが7月7日付けの『労働新聞』に掲載された「朝鮮民主主義人民共和国政府声明」であり、この中で「我々の核は統一の障害でも北南関係改善の障害物でもなく、共和国の核武力は外国勢力の侵略野望を抑止し、自主統一と民族万代の平和と安全、繁栄のための確固たる担保である」とし、「南朝鮮当局は、我々の核問題を騒ぎ立て、外に出かけて『協力』を請託するような無謀な行為は止めなければならない」と非難している。この記事は、形としては金日成が逝去した日に際して、彼が南北関係改善に努めてきたことを強調しながら南北関係改善を呼びかける形を取っているが、これまでも繰り返してきたように「北朝鮮の核は民族共有の財宝」と主張している。

    『労働新聞』、「조선민주주의인민공화국 정부 성명」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-07-07-0002&chAction=L

    米国は今回の発射について、9日の国務省定例記者会見で報道官が「2週間に4回も発射することに対して憂慮」しているとし、北朝鮮が主張している「目標水域封鎖」について「北朝鮮は、当該水域を航行する商船、漁船、客船、貨物船に対する事前通報を怠っており、これは国際規則に違反するものである」と非難している。

    また、拙ブログでも紹介した「ハリウッド映画に対する反発なのか」という記者の質問に対し報道官は、「ハリウッド映画は随分前から公開されている」と答えている。さすがに、北朝鮮も「最高尊厳」をハリウッド映画で中傷されたからとミサイルを発射することはないであろう。

    現在、ケリー国務長官が北京を訪問し米中戦略・経済対話が行われている。今回の「発射訓練」がこの米朝対話と関連しているのかという質問に対して報道官は「これで4度目の発射なので憶測はできない」としながらも「北朝鮮と北朝鮮の脅威に関する事項は、以前から米中対話の懸案事項に含まれていた」としている。米中戦略・経済対話では、北朝鮮の核問題に関する声明も出されるのであろう。

    一方、日朝交渉については「拉致に関する日朝交渉が透明性を持って行われる限り米国政府はそれを支持する」としながらも「日本がさらなる制裁解除」をすることについては、「そのことについては関知していない」と答えている。「さらなる制裁解除」は、あったとしてもしばらく先のことになろうが、「関知していない」という表現で日米協調をきちんとやるよう日本に求めているのかもしれない。

    Department of State, Daily Press Briefing, http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2014/07/228980.htm#NORTHKOREA

    <追記>
    コメントでご指摘を頂いたのだが、対内的には金日成死去20周年や全秉浩人民軍陸軍大将の死去とも関係がありそうだ。特に、『労働新聞』に掲載された「全秉浩同志逝去に関する訃報」には、「全秉浩同志は偉大な領導者金正日同志の忠実な先軍革命戦友であり、長期間、国防工業部門の重要職責を歴任し、人民軍隊を現代的な攻撃手段と防御手段を備えた最精鋭革命強軍へ、我々の祖国を人工地球衛星製作および発射国、核保有国へと変化させることにおいて特出した貢献をした」と書かれており、これまでも言われてきたように、北朝鮮の核・ミサイル開発に全秉浩が深くコミットしていたということが伺える。

    故全秉浩陸軍大将
    2014-07-09-04-01.jpg
    Source: 『労働新聞』、「전병호동지의 서거에 대한 부고」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-07-09-0010&chAction=S

    全秉浩が死去したときの職責は「朝鮮人民軍陸軍大将であり、朝鮮人民軍武装装備館名誉館長」と紹介されており、「陸軍大将」ではあるものの、党や軍内部の組織の要職には就いていない。それにもかかわらず、金正恩が彼の霊前に率先して哀悼の意を表すなど特別の扱いがされているのは、職責以上に彼の貢献が高く評価されたからであろう。

    故全秉浩に哀悼の意を示す金正恩
    2014-07-10-02-03.jpg
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서고 전병호동지의 령구를 찾으시여 깊은 애도의 뜻을 표시하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-07-10-0002&chAction=S

    全秉浩は、88歳と高齢とあったので第一線からは退いていたのであろうから、今は第に、第三の全秉浩が活躍しているのであろう。

    転載「すべての日本人に関する包括的かつ全面的な調査のための「特別調査委員会」が設置されたことについて」:「朝鮮中央通信」日本文記事の転載 (2014年7月4日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が「特別調査委員会」の詳細に関する「記事」を掲載した。朝鮮語の他に英語、中国語、スペイン語、日本語で配信している。今回は、同通信が掲載している日本文をとりあえずそのまま転載しておく。朝鮮語版と比較してみたが、正確に翻訳されている。以下、コメントを書き込んでいくことにする。(   )内は著者の注釈とコメントである。

    ************************************************

    【平壌7月4日発朝鮮中央通信】朝日政府間の合意に従って、共和国は2014年7月4日から「特別調査委員会」を設け(原文:組織し)てすべての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を開始することになる。
    1.「特別調査委員会」の権能
    「特別調査委員会」は、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会から、すべての機関を調査し、必要に応じて当該機関および関係者をいつでも(原文:任意の時に)調査(原文:調査事業)に動員することのできる特別な権限が付与される。

    (日本政府が配付した資料には、「北朝鮮の最高指導機関である国防委員会から」と記されているが、北朝鮮の報道ではこの部分についての記述はない。自明なので省かれただけであろう。「国防委員会第1委員長」は金正恩なので、形式的には金正恩の権限が及ぶ「委員会」と解釈することができる。)

    2.「特別調査委員会」の構成体系と主要メンバー
    1)「特別調査委員会」の構成体系
    「特別調査委員会」は、国家安全保衛部、人民保安部、人民武力部、人民政権機関をはじめ30人程度の当該機関の人員で構成し、中央に次のような4つの分科と各道を中心に必要な市・郡に支部を置く。
    ―分科構成
    ○日本人遺骨分科
    国土環境保護省、人民政権機関、赤十字会、社会科学院、人民武力部など、当該機関の関係者

    (林野に埋葬された遺骨収集に「国土環境保護省」、地方での調査協力を得るための「人民政権機関」、日本との連絡窓口となる「赤十字会」、歴史的な検証が必要な場合「社会科学院」、軍管轄地域の調査や「建設軍人」は件要請をする「人民武力部」、地方の調査協力を要請する「人民政権機関」ということであろう)

    ○残留日本人および日本人配偶者分科
    赤十字会、人民保安部、人民政権機関など、当該機関の関係者

    (各機関の上記役割に加え、戸籍等を管理する警察組織としての「人民保安部」)

    ○拉致被害者分科
    国家安全保衛部、人民保安部、最高検察所、保健省、人民政権機関の当該の関係者

    (「特別調査委員会」自体に「特別な権限」が付与されているにもかかわらず、それをさらに担保するための「国家安全保衛部」。「国家安全保衛部」は「国防委員会」直属の常設機関である。特に、拉致に関わった「軍部や特務機関」の調査には、張成沢をも処罰した「国家安全保衛部」の田んぼが絶対的に必要となる。「最高検察所」をなぜ含めたのか今ひとつ分からないが、司法警察の最高機関を含めることで司法関係の記録調査を行えるようにしたのか、場合によっては、拉致に関与したり、拉致被害者に対する不法行為を行った者を罰する目的なのかもしれない。「保健省」は、まずは拉致被害者の健康状態チェックが目的であろうが、亡くなっており遺骨として返還される場合にはDNA鑑定などに関与させるつもりなのかもしれない。)

    ○行方不明者分科
    人民保安部、国家安全保衛部、赤十字会、人民政権機関の当該の関係者
    ―支部構成
    安全保衛部、人民政権機関など、当該機関の関係者

    <追記>
    あまり気にしなかったので書かなかったのだが、日本側資料と北朝鮮側資料で「分科」の順が異なるという指摘がある。この部分のすり合わせがきちんとできていなかったのか、あるいはいずれか一方が順序を入れ替えたのかは不明である。安倍政権とすれば「拉致問題」をトップにした方が国民に対する説得力(同時に、政権の宣伝にも繋がる)があるし、北朝鮮としては、成果を出しやすい(さらにいえば、墓参りという形で現在進行中)の「遺骨収集」をトップにした方が今後の交渉においても説明がしやすくなる。
    それよりも注目すべきは、各「分科」を構成している組織で、「拉致被害者分科」のトップに「国家安全保衛部」を置いていることに意義がある。一つ下の「行方不明者分科」では「国家安全保衛部」と「人民保安部」の順序が逆転していることからも、「拉致被害者分科」に最高の権威付けをしていることは間違いない。
    ******

    2)「特別調査委員会」の主要メンバー
    委員長 徐大河 朝鮮民主主義人民共和国国防委員会安全担当参事兼国家安全保衛部副部長

    (「参事」という職責は、「大使館参事」という程度でしか北朝鮮報道の中に登場しない職責である。web「朝鮮語大辞典」で調べると「(一部の国家機関で)一定の部門の事業を研究し、当該責任幹部に意見を提出することを基本任務とする職位またはその職位にある者」と書かれている。このことからすると、徐大河は今回の「特別調査委員会」発足と関連し、「参事」を任命され「国防委員会」にコミットされるようにした可能性はある。マ・ウォンチュンが「設計局長」であるように、「国防委員会」にも「局」があるはずであるが、「安全担当」と曖昧な表現を使っているのもそれとの関連なのかもしれない。ともあれ、「国家安全保衛部副部長」が要職であることは間違いない。本名ではない可能性もある。)

    副委員長 金明哲 国家安全保衛部参事

     (金明哲は、2012年4月に「少将」昇格者のリストの中で紹介されている。単に同姓同名の可能性はある。上記と同じ「参事」という職責である)

    副委員長 朴永植 人民保安部局長
    日本人遺骨分科責任者 金賢哲 国土環境保護省局長
    残留日本人および日本人配偶者分科責任者 李虎林 朝鮮赤十字会中央委員会書記長
    拉致被害者分科責任者 姜成男 国家安全保衛部局長
    行方不明者分科責任者 朴永植 人民保安部局長 (「特別調査委員会」副委員長兼任)
    支部責任者 各道・市・郡の安全保衛部副部長

    3.「特別調査委員会」の運営方法
    ―中央の整然とした指揮体系の下で(原文:中で)運営する。
    ―各分科責任者が当該の対象別による調査を責任を持って行い、その結果を「特別調査委員会」の担当副委員長に随時報告し、必要な対策を立てる。
    ―各分科別に調査が深まって日本側の関係者との連携、協同が必要な場合、各分科責任者が調査委員会に提起して日本側の当該関係者の協力を求める。
    ―調査進行状況と結果に対しては分科別にまとめて「特別調査委員会」の指揮部に提起するようにし、「特別調査委員会」はその状況を日本側に随時通報し、互いに情報を共有しながら対策を立てる。
    4.調査形式と方法
    ―調査は一定の対象分野だけを優先視せず、あらゆる分野にわたって同時並行的に行い、関係者に対する面談および証言聴取、関係場所に対する現地踏査などの方法で行う。

    ―必要な対象に対する調査を深めるために日本側の関係者との面談、日本側の当該機関が持っている文書と情報に対する共有、日本側の関係場所に対する現地踏査も行う。

    (日本側関係者を北朝鮮に入国させて関係者と合わせるという意義は大きい。また、日本側の「文書」、つまり「資料」についてもきちんと調査の対象とするという点も評価できる。「日本側の関係場所に対する現地踏査も行う」と言うことは、日本側の「資料」をそのまま受け入れるのではなく、北朝鮮側も日本に入国してその信憑性についてきちんと確認するという意味であろう。この辺りは、相互主義の観点から尊重し、お互いが納得できる調査結果を出すためにも受け入れていく必要があろう。)

    ―調査の客観性と透明さを保障するために必要な時点で日本側の関係者をわが国に受け入れる。

    (しかしながら、「必要な時点で」というのがどの「時点」なのかも問題である。北朝鮮側は、「受け入れる」に際して、新たな要求を出してくる可能性もあるので、その準備はしておかなければならない。)

    5.分科別活動方向
    ―日本人遺骨分科
    現在、共和国の領内に散在している日本人遺骨埋葬地に対する対策を講じながら、現在掌握されている資料、証言などに基づいて現地の踏査と試験発掘を行い、遺骨に対する処理問題を協議し、対策を立てる。
    ―残留日本人および日本人配偶者分科
    人民保安機関と当該の人民委員会が持っている住民登録台帳と関係者の申告および証言聴取を通じて現況を確認し、対策を立てる。

    ―拉致被害者分科
    日本政府が認めた拉致被害者に対して再び調査を行い、各対象別に入国などの具体的な経緯を確認する。

    (北朝鮮報道文書「再び(다시금)」、日本政府が配布した文書では「改めて」と若干の違いはあるが、一度は調査したことを日本側も認めた表現となっている。金正日の顔を立てた形だ。)

    ―行方不明者分科
    日本側が提起する資料も参考して人民保安機関が持っている住民登録台帳に基づいて行方不明者の入国いかんおよび身元などを確認する。---

    **************************************

    「朝鮮中央TV」が放送開始直後に下記の「『特別調査委員会』の設置に関する朝鮮中央通信社報道」を報道した。以下も、「朝鮮中央通信」の日本語版からの転載である。

    【平壌7月4日発朝鮮中央通信】朝鮮中央通信社が、「特別調査委員会」の設置に関連して4日、次のような報道を発表した。
    朝日政府間の合意に従って、日本政府は2014年7月4日、人的往来の規制(朝鮮語文も「規制」。北朝鮮は「米帝とその追従勢力のありとあらうゆる制裁」などという形で「制裁」という表現はしばしば使っているが、敵対性を強調する「制裁」という表現を敢えて避けて、「規制」と言っているところは日本の「敵対勢力」としてのカラーを薄めようとしているのかもしれない。5月には意識しなかったのだが、「合意文書」でも「対北朝鮮措置」という表現を使っている。)、送金および携帯金額に関連して共和国に加えている特別な規制、人道目的の共和国国籍船舶の日本入港禁止を内容とする対朝鮮制裁を解除することを決めて公式に発表した。
    朝鮮民主主義人民共和国は、7月4日から「特別調査委員会」を設けてすべての日本人に関する包括的調査を開始することになる。
    「特別調査委員会」は、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会から、すべての機関を調査することができ、必要に応じて当該の機関および関係者を調査に動員することのできる特別な権限が付与される。
    「特別調査委員会」は、委員長と副委員長、分科責任者をはじめ必要な人員で構成され、当該地域に支部を置く。
    「特別調査委員会」の委員長は、徐大河・朝鮮民主主義人民共和国国防委員会安全担当参事兼国家安全保衛部副部長が、副委員長は金明哲・国家安全保衛部参事と朴永植・人民保安部局長が務めることになる。---
    **********************

    今回も前回の発表同様、日本側と相当にきちんとすりあわせをした内容になっている。

    <追記>
    7月4日付けの『労働新聞』に「朝鮮中央通信」を引用した日朝会談関連の記事が掲載されていた。

    ***************

    朝日政府間会談開催

    朝日政府間会談が2014年7月1日、中国の北京で開催された。
    会談には、我々側からソン・イルホ外務省大使を団長とする代表団が、日本側から井原純一外務省アジア・オセアニア局長を団長とする代表団が参加した。
    会談で双方は、去る5月に締結された朝日ストックホルム合意事項を履行するため、これまでの活動状況について言及した。
    日本側は、対朝鮮制裁解除の内容と手続き進行状況などについて詳細に通報した。
    我々側は「特別調査委員会」の権能と構成体系、運営方法、調査形式と方法などを通報した。
    双方は、外交経路を通して連携をしながら、今後、必要な措置を取ることにした。
    *************************

    『労働新聞』、「조일정부간회담 진행」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-07-04-0021&chAction=L

    この記事の中では「対朝鮮制裁解除」という表現を使っている。なお、別記事に書いた3日の「17時報道」は、これをそのまま読み上げたものと思われる(「17時報道」の録画に失敗したので、確認ができない)。

    北朝鮮、「朝鮮中央TV」の「17時報道」で日朝協議の概要を紹介 (2014年7月3日 「朝鮮中央TV」)

    少し前、「朝鮮中央TV」の「17時報道」で、7月1日の日朝協議について簡単に報道した。

    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が朝鮮人民軍海軍指揮官の水泳能力判定訓練を指導された」:人民軍海軍指揮官の水泳能力は? (2014年7月2日 「労働新聞」)

    7月2日の『労働新聞』に金正恩が「人民軍海軍指揮官の水泳能力判定訓練を指導」したという記事が出ており、同日の「朝鮮中央TV」もその様子を放送していた。

    金正恩は指揮官の射撃大会などの指導をしたことはあるが、「水泳能力判定」のような体力勝負の指導が公開されたのは初めてである。写真が公開されていない時点では、彼がどのように指導するのかに関心があったのだが、どうやら砂浜で激励した後は、ボートに乗って激励するわけでもなく、陸地で待っていたようだ。

    砂浜で指揮官に話をする金正恩。「水泳能力判定訓練」には「東海艦隊」と「西海艦隊」の全ての指揮官が参加したというが、彼らの平均年齢は決して低くないようだ。「敬愛する最高司令官同志」は、「戦闘序列の第一線に立たなければならない指揮官が、思想・精神状態がいくら良く、軍事技術的資質が高くても、肉体的能力が追いつかなければ、指揮官の資格がない」、「肉体的能力」があれば「『突撃、進め!』ではなく、『俺について進め!』というスローガンを叫び、常に軍人の前に立って強度の高い訓練を行うことができる」と述べている。「最高司令官同志」も指揮官の一人のはずだが・・・
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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 조선인민군 해군 지휘성원들의 수영능력판정훈련을 지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-07-02-0001&chAction=L

    指揮官に話をする「最高司令官同志」。何を話しているのか、笑っている。指揮官の腹は出ているが、肩幅は広い。これが人民軍海軍指定の水着のようだ。
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    Source: KCTV, 2014/07/02放送

    「水泳能力判断訓練を砲声のない戦場と考え」入水する指揮官たち。「砲声のない」という表現、昔から使われているのか、例の映画以来か。
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    Source: KCTV, 2014/07/02放送

    泳ぐ人民軍海軍指揮官。ゴムボートが併走しているが「最高司令官同志」は乗っていない。
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    Source: KCTV, 2014/07/02放送

    平泳ぎのように見えるが、軍隊式の特殊な泳法でもあるのだろうか。
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    Source: KCTV, 2014/07/02放送

    「最高司令官同志」は、「長時間にわたり指揮官の水泳動作を注意深くご覧下さり、彼らを鼓舞して下さった」そうだ。
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    Source: KCTV, 2014/07/02放送

    「5kmの折り返し点を回って来る」総10kmの「水泳能力訓練」であるが、本当に「長時間」だったようで、日が傾き
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    Source: KCTV, 2014/07/02放送

    夜になった。
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    Source: KCTV, 2014/07/02放送

    「水泳能力判定訓練では、朝鮮人民軍海軍西海艦隊が高い評価を受けた」ということであるが、やはり「西海5島水域」という「熱戦地帯」を抱える「西海艦隊」の指揮官の方が「肉体的能力」が高いということなのだろう。

    「朝鮮人民軍軍楽団とロシア国防省中央軍楽団の共同公演」:何とも奇妙な雰囲気の楽曲構成、『カチューシャ』を踊る朝鮮人民 (2014年7月1日 「朝鮮中央TV」)

    「国防委員会」が韓国に呼びかけた「自主、平和、民族大団結の3大原則を固守し、北南関係改善の新たな局面を開いていこう 南朝鮮当局に送る特別提案」を読みながら、1日に放送された「中ロ軍楽団共同公演」をBGMとして聞いていた。「特別提案」を読むに際して、過去に南北間で出された「宣言」や「合意」を読み返していたのだが、「共同公演」の演目が進むについれて、そちらの作業を放置して「共同公演」に見入ってしまった。音楽の魅惑には勝てない。

    この公演、朝露の「共同公演」ということなので、奏者の数はとても多い。きちんと数えてはいないが、100人以上いそうだ。

    北朝鮮の「愛国歌」を演奏する両国の軍楽団
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    Source: KCTV, 2014/07/01放送

    曲目は、1.(朝鮮曲)「我々はあなたしか知らない」(「元帥様」称賛曲)、2.(ロシア曲)「街に雪嵐が吹いているのに」(恋人に対する愛の歌)、3.(朝鮮曲)「魅惑と敬慕」(「元帥様」称賛曲)ロシア人女性歌手

    (朝鮮曲)「魅惑と敬慕」を朝鮮語で歌うロシア人歌手
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    Source: KCTV, 2014/07/01放送

    4.(朝鮮曲)「朝鮮人民軍歌」(「帝国主義侵略者、まとめて叩きつぶせ」と歌う私の好きな曲)、5.(ロシア曲)「ウグイス」、6.(ロシア曲)「アムール川の流れ」、7.(ロシア曲)「遠い道」(日本では「花の季節」というタイトルが一般的。中学校の音楽教科書にも出ているらしい)、8.(ロシア曲)「黒い瞳」(YouTubeでこの曲のジャズまたはジャズ・アレンジとして出ているものを聞いてみたが、このトランペットもそれにかなり近い。過去記事にも書いたが、北朝鮮で外国の楽団とはいえ、これほどジャズっぽい曲の演奏はあったのだろうか。)

    「黒い瞳」を演奏するロシア人トランペッター
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    Source: KCTV, 2014/07/01放送

    ジャズで盛り上がったかと思うと、9.(朝鮮曲)「金正日同志に捧げる歌」(金正日称賛曲)、 10.(朝鮮曲)「同志愛の歌」(ロシア人男性歌手が朝鮮語で歌う)、 

    「同志愛の歌」を朝鮮語で歌うロシア人歌手。軍服着用なので軍楽団員であろう。
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    Source: KCTV, 2014/07/01放送

    12.(ロシア曲)「先軍勝利行進曲」(テロップの解説では、「この作品は、ロシア連邦武力軍楽曲調兼軍楽総指揮者、ウァルレリ・ハリロブが我が国を何回も訪問し、偉大な金正日将軍が展開される先軍政治こそが最も正当な政治であり、先軍思想を具現していけば、進歩的人類は本当の自由と平和を守ることができるということを心より切実に感じ、自身が直接創作したものです。2006年のお目出度い2月の名節にこの軍楽団が我が国を訪問して演奏しました」となっている)、13.「グリンカ作曲、歌劇『ルスランとリュドミラ』より序曲」、14.(朝鮮曲)「祖国賛歌」(拙ブログで何回も紹介した曲である。今回はロシア軍楽団との共演なので迫力がある。背景スクリーンに使われている映像は、過去記事で紹介した吹奏楽バージョンで使われていたものである)、 

    そして、「将軍様」が「元帥様」を推薦する「お言葉」も出てくる。
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    Source: KCTV, 2014/07/01放送

    15.(ロシア曲)「ウグイス」(5とは別の同名の曲、こちらは人民軍軍楽団男性歌手が朝鮮語とロシア語で歌う)、16.(ロシア曲)「モルドバ幻想曲」、17.(朝鮮曲)「あなたがいなくては生きられない」(金正恩称賛歌)、18.(ロシア曲)「行商人たち」、19.(朝鮮曲)「前戦行き列車」(この曲の歌詞を知らないが、もしかすると金正日の前線視察を歌った歌かもしれない、タンゴのような曲調でも演奏されアレンジがおもしろい)、20.(どこの曲か不明)「ジャングルの中で」(この演奏は、「黒い瞳」以上に驚いた。「黒い瞳」はそれでもロシア曲であるが、この「ジャングルの中で」はどこの曲かも分からない。テロップには「この作品は、題目自体が示しているように音もなく木々で覆われた熱帯地方の森の情緒を音楽的に描いています」と出ている。奏者は、電子クラリネットのような楽器を使って演奏しており、相当にジャズっぽい。「ジャズっぽい」というのは、何というかジャズ独特のダラダラした感じを意味している。「ジャングルの中で」の原曲名などは検索したが見つけることができなかった)

    「ジャングルの中で」を演奏する奏者
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    Source: KCTV, 2014/07/01放送

    21.(ロシア曲)「カチューシャ」

    この曲でおもしろかったのは、ロシア人女性歌手がステージの袖をどんどん歩いて行き、
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    Source: KCTV, 2014/07/01放送

    歌いながら朝鮮人民聴衆の手を引いてステージに連れて行く。女性がこの男性の手を握った瞬間、会場からは「ウォーー」と声が上がった。
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    Source: KCTV, 2014/07/01放送

    男性は初めは戸惑っていたようだが、女性歌手に促されて一緒に踊っていた。
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    Source: KCTV, 2014/07/01放送

    会場からは手拍子が起き、曲が終わった瞬間、「ワー」という歓声と共にこの公演最大の拍手喝采があった。この演出、仕組まれたものかどうかは何とも言えないが、男性の戸惑いようからすると、サプライズだったのかもいしれない。しかし、平素、ロシア風のフォークダンスを「舞踏会」で踊っているためか、しばらくするとリズムに乗っていた。

    22.(朝鮮曲)「7.27行進曲」(これも、ロシア軍楽団との共演なので、とても迫力があった)、23.(ロシア曲)「我々は朝鮮へ戻ってきた」(演奏の前にロシア功勲文化人アレクサンドル・サバスキーが「我々は朝鮮へ帰ってきた」を朗読した。この詩は、「敬愛する金正恩同志の偉大性に魅了され、今回我が国を訪問しながら、本人が直接創作したもの」であるという)

    詩を朗読するロシア功勲文化人
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    Source: KCTV, 2014/07/01放送

    23.(ロシア曲)「モスクワ郊外の夕べ」(定番のロシア曲。良い曲だ。人民軍軍楽団女性歌手などがロシア語で歌う)、24.(朝鮮曲)「革命武力は元帥様の領導だけ頂く」(会場から手拍子)、25.「公演を終わります」のアナウンス後に、曲名不詳の曲を1曲演奏
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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