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    「<朝鮮記録映画>朝鮮の新たな絶景を作って下さり」:馬息嶺スキー場動画、Tバー型リフト、スノボ多数登場、猪木議員「1, 2, 3, ダー」 (2014年1月27日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」が「馬息嶺スキー場」を紹介する「朝鮮記録映画」を放送した。既に、静止画で紹介した映像がほとんどであるが、いくつか新しい映像が収録されていたので紹介しておく。

    「朝鮮の新たな絶景を作って下さり」
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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

    「元帥様」は、「馬息嶺スキー場」の「軍人建設者」に「恩情溢れる」物資を贈った。
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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

    「馬息嶺スキー場」建設に動員されている「軍人建設者」の数が尋常でないこともあり、「元帥様」が贈った物資の量も多い。どこそこの住民だの企業所が贈る「支援物資」とは比較にならない量である。

    「軍人建設者」の数の多さを示す人文字。「戦勝記念日」を表す「7.27」という人文字がスロープに展開している。「元帥様」が訪問した時のアトラクションの一つ。
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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

    過去記事の静止画で問題にした「馬息嶺ホテル」フロント上部のデザイン。やはり抽象画ではなかったようだ。
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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

    ナイタースロープ。少し暗いような気もする。
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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

    「元帥様」の指示で夜でもよく見えるようになったホテルの看板。
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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

    Tバーで緩斜面を登るスキーヤー(外国人と思われる)
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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

    声は聞こえないが、「1,2,3,ダー」をやっていると思われる猪木議員。
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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

    「ダー」
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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

    ロッドマン一行か?
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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

    今回の「朝鮮記録映画」で特徴的なことは、スノボをたくさん映し出していることだ。
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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

    これまで紹介された映像では、スノボはほとんど出てこなかったが、今回これだけ出しているということは、スノボもスキーとして認めたのかもしれない。

    また、スノーモービルで登ってきた場面も興味深い。休憩所のような建物があり、その横にリフトがある。頂上ではないと思うが、中間地点であろうか。
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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

    「接待員ドンム」と手を繋いで楽しそうに踊る外国人。
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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

    番組は「祖国賛歌」で終わる。
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    Source: KCTV, 2014/1/27放送

    「<朝鮮芸術映画>慈江道の人々」:苦難の行軍を描いた映画、食料か金正日演説か、代用食品 (2014年1月15日 「朝鮮中央TV」)

    決して新しい映画ではないが、15日、「朝鮮中央TV」が「<朝鮮芸術映画>慈江道の人々」を放映していた。以前にもこの映画は見たことがあるのだが、その時は初めの部分だけ見て止めてしまったような記憶がある。15日に放送されたのは、第1部であるが、初めから最後まで見ていたら、いくつかの発見があった。2005年以前に制作された古い映画なので、既に色々なところに書かれているのかもしれないが、私にとっては新たな発見であったので記しておく。なお、韓国統一部・北韓情報センターのDBで調べてみると、同映画の最初の放送は2005年9月11日、その後、2009年まで毎年1度(1部と2部通して)ずつ放送され、2010年には放送無し、2011年には2回、2012年には放送無し、2013年には2回、2014年には昨日第1部が放送され、今日(1月16日)第2部が放送される予定である。

    「慈江道の人々 第1部」
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    北韓情報センターのDBで調べていて気付いたのだが、映画のタイトルは「慈江道(자강도)」と「人々(사람들)」の間にスペースがない。同センターのDBも2009年まではスペース入りで検索すると出てくるが、昨日の放送も含めてそれ以降の放送分についてはスペース無しにしないと出てこない。北朝鮮が「慈江道」と「人々」をスペース無しで表記しているのは、「慈江道に住んでいる人々」という普通名詞ではなく、「慈江道人」という固有名詞の扱いをしているからだと思う。過去記事でも金正恩が金正日の言葉を引きながら「慈江道の人々」について述べていることについて書いたが、やはり、色々な意味で「慈江道人」は特別なのであろう。

    第1部のストーリーは、「苦難の行軍」時期、発電所建設を進める慈江道人民が食料も資材も電気もない中で苦労をするという話である。もちろん、その中に人間ドラマや思想宣伝なども含まれている。しかし、特に興味深いのは「代用食品」という、泥、草の根、木の皮などの話が出てくるなど、厳しい食料事情をそのまま描いている点である。本記事では、食料事情に関する部分を中心にこの映画を紹介していく。

    まず登場するのが炭鉱の労働者である。
    労働者A:「金ユンイル、子供のようにおしゃぶりを吸っているのか」
    労働者B:「後方参謀同志も腹が減ったのなら、口に入れたらどうですか。そうすればここ(胃を指さす)が申し訳なくて、少しは静かにしているはずですよ」
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    じゃんけんをする2人の女性。韓国ではじゃんけんをする時「ハサミ、岩、手を開いた状態(カウィ・パイ・ポ)」と言っているが、北朝鮮では「石と手を開いた状態(トル・グァ・ポ)」と言っているように聞こえる。日本でも「じゃんけんぽい」だけではなく、地方により色々な言い方があるので不思議ではないが、本当のところ北朝鮮では何と言っているのであろうか。ちょきの出し方も日本とは異なっている。なお、「web朝鮮語大辞典」には「돌과보」は出てこなかった。

    <追記2>
    コメントでも頂いたように、「돌 가위 보(トル・カウィ・ポ、石、ハサミ、手のひら)」のようだ。聞き直してみたら、ハサミの音「カウィ」が「グァ」と聞こえたようだ。もしかすると「o(オ)」という母音に挟まれて音韻変化し、「과」と発音されているのかもしれない。なお、「web朝鮮語大辞典」に「돌가위보」は一つの単語として「じゃんけん」の意で出ている。

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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    この女性らは遊んでいると思われ、「後方参謀同志」に「みんなが食事を待っているのに、何を遊んでいるんだ」と叱られる。どうやら、「後方参謀同志」は、人々の食生活に責任を持たされているようだ。叱られた女性は「私たちは、じゃんけんをして、勝った人はスープを分け、洗ったトウモロコシを分けることにしました」と答える。「後方参謀同志」が、「誰が勝ったのか。決まったとおりにしなくては」と言うと、じゃんけんで負けた女性が「私にはできません。私は、そのトウモロコシを1人当たり40粒ずつ配ることなど出来ません。そんなものをどうやって昼食だと・・・」と言う。そして、「後方参謀同志」に「お願いですから、私を現場で働かせて下さい」とこう。そして泣き出してしまうが、「後方参謀同志」に「子供のように泣いているな」と叱られる。しかし、「後方参謀同志」も紙巻きタバコを吸いながら、自分が食糧を十分に供給出来ないことを悔やむ。

    トウモロコシが入ったバケツ
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    暗くて分かりにくいが、トウモロコシを40粒ずつ分けている様子。
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    「スープはたくさんあります。いくらでも言ってください」とスープを配る女性。
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    人々は、食事が済むと「もっと仕事をしましょう」と出て行こうとする。女性は「もっと休んでいってください。私が歌を歌ってあげますから」と歌を歌う。
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    「昼食」というのに暗い理由がよく分からないが、この映画は全体として暗い場面が多い。場面設定では「停電している」ことになっているので、極力電気を使わず、たいまつなどを使用している。

    「後方参謀同志」は「旅団長」命を受け、修理に出しておいたテレビを取りに行かされる。しかし・・・

    隊員A:「旅団長同志、今日の朝、『声放送』で将軍様が最前戦9分隊を視察されたニュースを聞いて、全ての大隊がテレビの時間を待って欠席します」
    旅団長:「テレビは取りに行かせてあるから心配するな。交代要員も含めて、全員そろってテレビを見なくては」

    しかし、「後方参謀」は自分が食料供給ができないことに責任を感じ、テレビの代わりにトウモロコシを運んで来たのであった。

    旅団長:「まだ、自分の誤りが分からないのか。なんでテレビを受け取りに行かずに他に行ったんだ」
    後方参謀:「私は、実は、大隊のために・・・」
    旅団長:「大隊のためにだと。ドンムは全ての大隊がそのテレビをどれほど楽しみにしていたのか、どれほど渇望しながらその時間を待っていたのか分かってたのか。ドンムは大隊の渇望と大隊の要望、大隊の志向を潰してしまったんだ。ドンムはテレビの画面で将軍様に一瞬でもお会い出来れば気持ちが明るくなり、その一瞬で耐えがたいほどの(将軍様に)会いたい気持ちをくれという、この大隊を考えられなかったのか」
    隊員A:「言わせてください。後方参謀ドンム。どんなに腹がふくれても将軍様にお会い出来なくては、生きることが出来ない大隊です。それが我々の生命だということを後方参謀同志はしらなかったのですか」
    隊員B:「誰が腹が減ったと言いましたか。食い物をくれといった人がいるんですか。本当に将軍様を思う我々の心情を何でそんなに分からないのですか。後方参謀同志」

    そして、旅団長は後方参謀を解任してしまう。人間の基本的欲求である「食欲」以上に「将軍様をテレビで見たい」人などいるのだろうか。これが実態なのかプロパガンダなのかは分からないが、もしかすると当時、「将軍様をテレビで見れば食べなくても良い」というような事態が発生していたのかもしれない。さらにこの設定でおかしいのは、停電なのに、どのようにテレビを見るのかという点である。それとも「将軍様」が登場する時間は、何としてでも電気を供給したのであろうか。

    その後、この後方参謀は、責任を感じて「食用にするための泥炭」を採取に行き、帰り道で転落死してしまう。泥炭を採取する場面では、

    老婆:「ちょっとあなた。少し休んだらどう」
    後方参謀:「おばあさん、泥炭です」
    老婆:「そうだねぇ。あなたもちょっとたべてみなよ」
    後方参謀:「食べられませんね」
    老婆:「そのままでは食べられないでしょ。だけどこれを水に混ぜてトウモロコシの粉と半分ずつ混ぜれば、ちょっとはよくなるよ」
    後方参謀:「おばあさんは、いつ泥炭を召し上がったのですか」
    老婆:「日本人共がいなくなる前に。泥炭さえもなくなりそうだったんだよ」
    後方参謀:「今だって、その悪鬼のような奴らのせいで、苦労しているじゃないですか」

    <追記1月27日:本記事を書きかけてから、相当時間が過ぎたので、文脈がおかしくなるかもしれないが、続きを書いておく。>

    映画では、「代用食品品評会」についても触れている。幹部が「代用食品品評会を開催することにした」と発表すると、その場にいる女性は「代用食品て何ですか」と尋ねる。この時期までそのような言葉さえ存在しなかったのであろう。「web朝鮮語大辞典」にも「代用物資」や「代用飼料」などは出てくるが、この語彙は出てこない。「代用食品」に関する幹部の説明は次のとおりである。

    幹部:「草の根と木の皮、トウモロコシの皮や白菜の根などで食べ物を作るということだ」
    女性:「ええ、それを人が食べるということなんですか」

    「代用食品品評会」
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    いよいよ「代用食品品評会」の日が来て、各「大隊」が工夫した「代用食品」が映し出される。これまで、主として脱北者情報として伝えられてきた「苦難の行軍」時代の食料事情の厳しさを北朝鮮が公認しているという点でこの部分の衝撃は大きかった。

    各「大隊」が作った「代用食品」が並べられている。
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    「クズの根麺(左)、白菜の根のかゆ(右下)、クズ餅(右上)」
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    「ブナの煮付け(右)」
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    「ニレの葉の餅(上)」
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    「ヨモギの餅(右)、桑の葉の煮付け(左)」
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    「桑の葉がゆ」
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    「泥炭の餅(左)、泥炭の粉のパン(中)、泥炭のうどん(右)」
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    続けて、「旅団長」の話が始まる。彼は「血の涙を流しながら始まったこの苦難の行軍が、これほど胸の痛い犠牲をもたらすとは考えてみた人もないし、食べ物とは言えない草の根や木の皮、泥炭の塊を食べるなど想像した人もいませんでした。しかし、なぜ我々がこれまでになかった『代用食品』などという言葉を笑いながら言わなければならないのか。胸に流れる血の涙を飲み込み、厳しいこの道を歩まなければならないのか。その理由だけはよく分かっています。それはまさに、父なる首領様の生涯が刻み込まれている我々の赤い旗、億千万回死んでも将軍様に従ってたなびかせなければならない革命の赤い旗を最後まで守るためです。遠い将来、数千トンの米よりも貴重なこの『代用食品』を食べ、どれほど厳しい道を歩いてきたのかを誇り高く語るであろうし、進む道が厳しくても笑いながら進もうという気概を持って偉大な将軍様に従って最後まで歩いてきた我々、慈江道の人々を永遠に忘れないでしょう」と語る。

    演説をする「旅団長」
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    ここで「慈江道の人々」の第1部は終わる。第2部はまだ見ていないが、記事にするような内容があれば、記事にすることにする。

    <追記3>
    第2部には第1部ほど衝撃的な内容はなかったが、いくつかおもしろい場面があった。

    新たに完成した小規模発電所の近くに「旅団長」や「突撃隊員」が集まってくる。そこに設計士が設計図を持ってやってくる。

    設計士:「旅団長同志、これ、55号棟住宅の設計図です」
    旅団長:「うん」
    設計士:「1棟1世帯で設計したのですが、庭にはヤギ小屋と豚小屋を作ってやろうかと」
    旅団長:「いいじゃないか」
    設計士:「部屋は2つなのですが、一部屋は電気オンドルとし、もう一部屋は火で暖めるようになっています」(注:「オンドル」は床暖房システム)
    旅団長:「なぜ両部屋を電気オンドルにしなかったんだ」
    設計士:「発電所に異常が生じ、停電になる場合を想定して・・・」
    旅団長:「不合格。設計も不合格だし、あなたの思想も不合格です。電灯も付け、テレビも見て、電気式オンドルにして、ご飯も電気炊飯器で炊こうというのが、将軍様の意です。あなたは、万が一を考えてそのように設計したというのですが、我々には万が一などあり得ない。あるとすれば、この道で命を捧げることだけだ。やり直せ」

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    Source: KCTV, 2014/1/16放送

    普通に考えれば、「設計士」が正しい。しかしそれを「将軍様の意」として否定してしまうところに、「苦難の行軍」の悲劇の原点があるはずだ。思いつきや理想論の「将軍様の意」により合理的な考えが否定され、食料供給システムが成り立たなくなってしまったことこそが、「苦難の行軍」を強要し、「代用食品」を食べざるを得ない事態に至らせたはずだ。北朝鮮でなければ、この場面は強烈なアイロニーとなろうが、北朝鮮ではそれがアイロニーとならないところが北朝鮮の特殊性であろう。もし、この映画の制作者がこの場面にアイロニーとしてのメッセージを込めていたのであれば、それは大変なことであるが。

    第2部の中には、この映画のタイトルである「慈江道の人々」を象徴する場面がある。「旅団長」が執務室で自分でシャツを縫いながら補修している。すると、そこに部下が炭酸飲料とリンゴを持って入ってくる。「旅団長」の妻は入院しており、この日が手術の日である。部下は、「旅団長」に自分が持って来た炭酸飲料とリンゴを持って妻の見舞いに行くことを勧める。

    すると、2名の「突撃隊員」が凄い剣幕で入ってくる。

    突撃隊員1:「私たちが大砲で雀を捕まえるというのはそうなんですか」
    旅団長:「どうしたんだ」
    突撃隊員1:「取るに値しない奴の面倒など見る必要がないというのが事実なのかということです」
    旅団長:「何を藪から棒に」
    突撃隊員1:「そんな、藪から棒な奴が現れました。そいつが我々の大隊に来て言ったのは、ソンファ発電所を建設するのは、雀1羽を捕まえるために大砲を作るのと同じだというのです」
    旅団長:「その、藪から棒な奴に言ってやれ。道の川に中小の水力発電所を建設するというのは、首領様の意であり、将軍様の構想であると。発電所は一度建設してしまえば、百年であれ千年であれ、大きな費用をかけずに使えるんだ」
    突撃隊員2:「そうなのですが、我々のソンファ発電所建設を直ちに中止すると言うのです」
    突撃隊員1:「国家の経済発展に寄与も出来ないところに大金を使い、国家的な電力生産計画作成に混乱をもたらすと言うのです」
    旅団長:(怒りだして)「どこのどいつだ!そんなデタラメを言う奴は!」
    突撃隊員1:「上部から来たホ・ミョングク副局長という人です」
    旅団長:(ますます怒り)「副局長だと。あなたはそんなデタラメを言われても黙っていたのか。それが何を意味するのか考えなかったのか。そいつは今どこにいるんだ」
    突撃隊員1:「少し前に帰りました」

    怒る「旅団長」
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    Source: KCTV, 2014/1/16放送

    旅団長は、自分でジープを運転して「副局長」の車を追う。乗用車が「副局長」であるが、「旅団長」は四駆の性能を活かして近道をする。ハリウッド映画だとこの辺りの車の動きが現実離れするほど速いが、北朝鮮映画では実に現実的な速度で走っている。
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    Source: KCTV, 2014/1/16放送

    「旅団長」は「副局長」の車の前に回り込んで停車させる。

    副局長:「何か用ですか」
    旅団長:「あなた(『ドンム』ではなく『タンシン』という見下した『あなた』という言葉を使っている)が部から来た副局長ですか」
    副局長:「そうだが」
    旅団長:「そうか。あなたが我々の労働者の前で中小型発電所建設についてああだこうだと騒ぎ立てたというのは事実ですか」
    副局長:「うん?」
    旅団長:「はっきりと言え。今日、俺の前で適当なことを言ったら、無事でいられないと思え」
    副局長:(余裕で笑いながら)「おい、ドンム(君)。ドンムも現実を直視した方がいい。今、国の現状が・・・」
    旅団長:(車のボンネットを平手打ちして)「国の現状がなんだと。あなたが我々の尊厳、我々の自尊心を冒涜しても無事でいられると思っているのか。あなたは、我々がどれほど険しい道を歩いているのか知っているのか。どれほど、胸が痛い犠牲を出しながらこの道を歩いているのか。あなたが知っているのかと言うんだ。我々は血の涙を飲み込みながら試練を経験し、我々が進むべき道はよく分かっているんだ。とてもよく」
    副局長:「うーん」
    旅団長:「だから、しっかりと覚えておけ。あなたのような敗北主義者共がいくら泣き言をいっても、我々は自ら選択した信念の道を最後まで進むということを」

    旅団長はジープに向かう。

    副局長:「おい、あんたはいったい誰なんだ」
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    Source: KCTV, 2014/1/16放送

    旅団長:(ジープのドアを開けながら)「慈江道人だ」
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    Source: KCTV, 2014/1/16放送

    「旅団長」はそう言って去って行く。

    「副局長」はサングラスを掛けている。「将軍様」以外でサングラスを掛けている朝鮮人民はあまり見かけないのだが、サングラスは贅沢さを象徴する小道具なのであろうか。そうであるとすると、中央でのうのうとクラス幹部と慈江道で苦しい生活をする人民の対比を強調するための演出なのかもしれない。このような中央幹部を悪役として登場させているのは、少なからずこの種の幹部がいるということであろう。こういう幹部は「首領様(将軍様)の意に反する行動をする」という扱いになっているが、「意に反する行動」が合理的なケースも少なからずあるのであろう。現実的には、それが不正・腐敗と混ざり合って、判断がつかなくなっているということだろうか。この映画の中でも「人民のために服務する!」というスローガンが登場するが、金正恩が彼の「労作」の中でこうしたスローガンを繰り返していることが、こうした問題が深刻であることの反証ではないだろうか。張成沢事件には色々な意味合いがあろうが、彼が私利私欲を肥やす中央幹部を象徴し、それが「人民のために服務する」という「党中央=金正恩」の意に反する行動を取り処刑されたと解釈すれば、朝鮮人民も納得するのかもしれない。もちろん「党中央の意」に疑義が全くない、つまり「一心団結」の状態がその前提となるわけであるが。

    その後、試練を経ながらも発電所は完成する。工事期間は1年。前年の冬に建設を始めて1年後の初雪が降る日に完成したという設定になっている。
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    Source: KCTV, 2014/1/16放送

    中小型発電所が完成したおかげで、人民の部屋には電灯がともっている。
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    Source: KCTV, 2014/1/16放送

    「旅団長」が森で木を切っていると、「万歳!将軍様がいらっしゃいました」という「突撃隊員」の声が遠くから聞こえてくる。「突撃隊員」が雪の中を走ってくる。
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    Source: KCTV, 2014/1/16放送

    そしてナレーションが入る。

    ナレーション:「その日、父なる将軍様は、北部の険しい山を越えて、愛する慈江道人民を訪ねて下さった。真冬の厳寒も気にせず、チャンガン、江界、ソンガンの大小の発電所を一つずつご覧になった将軍様は、力強い動作音を響かせながら回る発電所をご覧になり厳しい試練の中でも決死貫徹の革命精神を持って党と首領、社会主義のための慈江道人民たちの闘争を高く評価された。そして将軍様は、慈江道内の幹部、党員、勤労者は今のように困難な時期に党をどのように支えなければならないかという実践的模範を見せたと、このような革命同志と一緒ならば、苦難の行軍をあと何百回しても怖いものはないと仰り、彼らの闘争精神を『江界精神』と名付けようと熱い信頼を下さった」

    結局、「将軍様」は完成した発電所を視察するために「北部の険しい山を(ベンツに乗って)超えて」来ただけである。ただ、映画の中では「将軍様」が不足する鉄鋼を発電所建設のために特別に手配するという「恩情に満ちた措置」をしたという設定になっている。絶対量が不足するものに対して「特別の手配」をすれば、どこかで別の不足が生じるわけで、その優先順位を「将軍様」が決定することは政策判断とはいえ、何かが間違っている。しかし、その政策判断を「恩情」とすることで人民から敬意や信頼を引き出すことができるのであれば、統治手法としては正しい。もしかすると、民主主義国家でも地方出身の政治家が当選の暁には地方に「利権」を還元し、再当選を目指すという考え方とも通じるのかもしれない。ただ、地方の政治家との絶対的な違いは、絶対的な権力を有する最高指導者がそれをやってしまうところであろう。

    映画の最後の場面では別の幹部がやって来て「早く行こう。偉大な将軍様が、朝食も食べないで、あなたを待っておられる」と「旅団長」に言う。「旅団長」は感涙にむせびながらベンツに乗り込むという場面で終わる。
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    Source: KCTV, 2014/1/16放送

    「我々民族同士の団結した力で北南関係改善の活路を開こう、南朝鮮当局に送る重大提案」:中傷停止、米韓合同演習中止、核は民族の財宝 (2014年1月17日 「労働新聞」)

    北朝鮮の国防委員会が韓国に「造成された事態の重大さに対応するため、原則的な問題を提案した」と17日付の『労働新聞』が報じた。提案の内容は以下の通り。

    1.北南関係改善の雰囲気を作ることに関する熱い呼びかけに応え、実践的な措置からとることを提案する。

    北南関係を改善し、民族的和解と団結を達成しようというのは、我々の軍隊と人民の変わらぬ立場である。
    この考えから、我々は来る1月30日から、旧正月を契機にお互いを刺激し、誹謗中傷するすべての行為から全面中止する実質的措置を取ることを南朝鮮当局に正式に提案する。<中略>
    本当に南北関係が改善されることを願うのであれば、当局者がまず発言に気を付け、メディアを関係改善の雰囲気造成に導き朝鮮半島地域に和解と団結の熱風を巻き起こさなければならない。<中略>

    2.民族の安全と平和を守護することに対する歴史的な呼びかけに応え、相手に対するすべての軍事的敵対行為を全面中止する実質的な措置を取ることを提案する。

    些細な偶発的衝突も、即時全面戦争へと発展してしまうのが今日の朝鮮半島の現実である。
    今、この地で勃発する戦争は、大国には漁夫の利を与え、我々民族には民族の滅亡を招くという想像以上の災難をもたらす。
    このようなことから我々は、外勢と野合し、同族を標的として展開される全ての軍事的な敵対行為を無条件即時中止することを再び提案する。

    当面、南朝鮮当局は「恒例」で「防衛的」であるという美名の下、2月末から強行しようとしている「キーリゾルブ」、「トクスリ」合同軍事演習から中断する政策的決断を下さなければならない。

    米軍との「合同」と「協同」をそれほどまでに捨てがたい重要事項であるならば、朝鮮半島の領土と領海、領空から遠く離れた静かな場所か、米国に渡ってやれというのが我々の立場である。

    我々についていうのであれば、これまで同様に、今はもちろん、今後も外勢を引き込み民族の安全と平和保障を阻害する軍事的行動を行うことはない。

    我々は特に、銃を向けあっている西海5島熱戦地域を含む地上、海上、空中で相手を刺激するすべての行為を全面中止することについて特に強調し提案する。

    この提案を実現するために、我々は実践的な行動をまず見せる。

    3.この地にもたらされる核による災難を防ぐための現実的な措置も相互に取っていくことを提案する。

    朝鮮半島非核化は、民族共同の目標である。
    したがって、朝鮮半島非核化を実現しようということは、我々軍隊と人民の変わりない意志である。
    我々が保有する核兵力と並進路線について述べれば、それは我々民族すべてに対する米国の核威嚇と恐喝を終息させ、朝鮮半島の非核化はもちろん、世界の非核化まで展望した民族共同の保険であり、もっとも正当な自衛的選択である。

    我々の核兵力は、徹頭徹尾、米国の核威嚇を抑制するための手段であり、決して同族を恐喝し、害するための手段ではない。

    我々は、この機会に南朝鮮当局がこれ以上米国の危険千万な核打撃手段を南朝鮮とその周辺地域に引き込む無謀な行為にぶら下がることがないようにすることについて丁重に提案する。

    同族を害する外勢の核は容認し、全民族を守る同族の核は否認する二重的行為とは断固として決別しなければならないというのが我々の主張である。

    <中略>

    この重大提案が実現すれば、離散家族・親戚訪問をはじめとした北南関係において提起される大小のすべての問題が解決されるであろう。
    我々民族同士の団結した力で北南関係改善の活路を開いていこうというのが、我々軍隊と人民の意を一つにした要求である。

    我々は、南朝鮮当局が我々の原則的な重大提案に肯定的に応じてくることに期待を表明する。

    2014年1月16日 朝鮮民主主義人民共和国国防委員会

    1については、これまで同様、韓国メディアも北朝鮮を非難しないようにするよう韓国政府がリードしていくことを求めている。北朝鮮はこれを、韓国では不可能なことを承知の上で、攻撃材料を温存するために提案しているのであろう。

    この提案が「国防委員会」からだされているのは、主として2によるものと思われる。米韓合同演習を中止しろという要求は少し前に「祖国平和統一委員会スポークスマン談話」としても出されており、基本的な主張はそれと同じである。しかし、今回は「西海5島熱戦地帯」と延坪島近海を名指ししているので、米韓が要求を聞き入れず、さらに同島近海で演習を強行した場合は、「我々の警告を無視した」と軍事行動に出る可能性がある。ただ、「この提案を実現するために、我々は実践的行動をまず見せる」とも言っているので、これが何を指すのかは注目する必要がある。北朝鮮の軍事訓練は非公開なので、「見せる」といわれても何をどうするのか分からないが、「提案を実現するために」ということは、韓国側の対応いかんにかかわらず北朝鮮が「まず見せる」のであれば、これは良いことである。

    3については、「朝鮮半島の非核化は、民族共同の目標である」としているものの、米国の核威嚇がなくなり、米国との「平和条約」締結が非核化の条件であるという従来通りの主張である。「核打撃手段」を韓国や周辺地域に持ち込むなといっているのは、核兵器自体ではなく昨年の米韓合同軍事演習で動員されたB1B戦略爆撃機を指しているのであろう。

    そして、これらの提案が受け入れられれば「離散家族訪問」が実現するであろうとしているが、韓国政府はこの北朝鮮の提案を拒否した。韓国側が受け入れがたい提案を「国防委員会」に格上げして出してきたのは、金正恩「新年の辞」を受け、南北関係改善の姿勢を示しつつ、結果的にそれが受け入れられなかったことを韓国側の責任とするためであろうか。現在は融和的な姿勢を示しているが、金正日の誕生日が終わったあたりからは、対立フェーズに切り替える可能性がある。

    『労働新聞』、「우리 민족끼리의 단합된 힘으로 북남관계개선의 활로를 열어나가자 남조선당국에 보내는 중대제안」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-01-17-0005&chAction=S

    「祖国平和統一委員会スポークスマン談話」:米韓合同軍事演習に警告、実施すれば破局的危機 (2014年1月15日 「朝鮮中央通信」)

    北朝鮮の「祖国平和統一委員会スポークスマン談話」を「朝鮮中央通信」が15日伝えた。16日付けの『労働新聞』には同談話は掲載されていない。

    「談話」は、「敬愛する金正恩元帥様は、歴史的な新年の辞で朝鮮半島の緊張を緩和し、平和と守護しながら北南関係を改善するための原則的で誠意ある立場を鮮明にした」とした上で、「2月末から数ヶ月間にわたり『キーリゾルブ』、『トクスリ』合同軍事演習を実施することを公然と宣布し、軍事分解線付近に米侵略武力が大々的に増加されるなど、険悪な事態が造成されている」と情勢についての見解を述べている。

    そして、今回の軍事演習が「1989年『チーム・スピリット』合同軍事演習以後、最大規模の上陸訓練」であり、その目的が「『北急変事態』に備えるもので、北の核施設掌握と平壌占領にある」と韓国が「騒ぎ立てている」なので、「我々共和国に対する、また一つの重大な軍事的挑発である」とし、「表では北の新年の辞を歓迎する・・と力説しながら、裏では同族に反対する戦争演習騒動を繰り広げるというのはいったい何事か」と非難している。

    また、「毎年、年初からほぼ1年を通して『キーリゾルブ』だの、『トクスリ』だの、『ウルチ・フリーダム・ガーディアン』だのという戦争演習により情勢を極度に悪化させ、時間を無駄にしながら、北南関係でいったい何が出来るというのか」とし、「このような悪循環をこれ以上放置しておくことは出来ない」としている。

    「放置しておくことは出来ない」からどうするのかという話は特にないまま「談話」は、「米国と傀儡好戦狂共が再び大規模北侵核戦争演習を宣言したことは、北南関係改善と対話に対する全面否定であり、さらに核全面対決戦の宣戦布告と違いはない」とし、「我々は、米国と南朝鮮当局に朝鮮半島情勢と北南関係を破局に至らせ、破滅をもたらす危険千万な軍事演習を中止することを厳しく警告」し、「万一、我々の警告にもかかわらず、北侵核戦争演習を強行しながら、最終的に軍事的挑発をしてきた場合、北南関係が破局的危機に瀕することはもちろん、想像を超越した惨禍と災難が起こることを肝に銘じなければならない」と締めくくっている。

    昨年この時期にも類似した「警告」を北朝鮮は発し、最終的には開城工団閉鎖にまで至ったわけだが、今年はどのような展開になるのだろうか。今年は、同談話も強調しているように「新年の辞」で「元帥様」が南北関係改善を昨年以上に強調しているので、忍耐強い対応が出来るのかどうか。また、韓国側がどのようにこれに対応するのかが注目される。

    「駐朝外交及び国際機構代表、武官団が家族と共に馬息嶺スキー場を参観し、楽しい休日の一時を過ごした」:外国人のコメント、スキーツアー紹介 (2014年1月16日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が、北朝鮮に駐在する外国公館や国際機構の関係者らが「馬息嶺スキー場」を訪れたと16日報じた。別記事にした猪木議員の訪問がこのタイミングで行われたのかは分からないが、近い時期である。

    同記事を読むと、同スキー場には、スキー用スロープだけではなく、ソリ用スロープが設置されていることが分かる。また、過去記事で大型の電光掲示板には「温度、湿度、気圧、風の状態をはじめとした気候状態」が表示されるという。

    猪木議員が同スキー場を訪問したという記事にも書いたとおり、頂上の「デファボン(海抜1360メートル)」には「リフトと雪オートバイ(スノーモービル)に乗って」 登るようだ。今のところ、「デファボン」は展望用施設という位置づけのようで、そこからのスキー滑走は考えられていない模様だ。しかし、猪木議員関連の記事にも書いたとおり、「5000メートルのコース」と言っているので、将来的には「デファボン」からの滑走も念頭に置いているのかもしれない。

    記事では、参加者たちが「元帥様」の人民愛、スキー場の素晴らしさ、短期間でスキー場を完成した人民軍軍人の忠誠心を称賛するインタビューが紹介されている。彼らは「馬息嶺ホテル」で「家庭で食べたこともない」ような食べ物を食べ、「踊りを踊り、歌を歌った」とのことである。カラオケコーナーには、どのような歌が準備されているのであろうか。

    さて、その「馬息嶺スキー場」に行く国際ツアーがある。行ってみたいことこの上ないが、私には高すぎる(それに、こんなブログを書いているので、ビザも発行されないかもしれない)。< >内は私の感想。

    旅行日:2014年2月16日~21日
    費用:950ユーロ(食費、交通費、ガイド費、リゾート代)、ただし、馬息嶺リゾート1日券25ユーロ(スキーをやらない場合は、2.5ユーロ)は含まれない
    経路:北京集合、北京列車にて丹東経由平壌(北京~平壌の航空便を利用する場合は片道70ユーロ追加)
    ツアー内容:
    19日午前
    ・万寿台の丘の銅像参拝(花束贈呈をしたい場合は、小2ユーロ、大4ユーロ)
    ・平壌地下鉄体験(5駅)<私が訪問した時は、5駅も乗らなかったような記憶があるが・・・>
    ・戦勝記念館訪問<行ったことがないので、行ってみたい>
    ・プエブロ号参観<これも実物を見たい>
    19日午後
    ・朝鮮の鍋料理の昼食<シンソルロのことだろうか>
    ・馬息嶺ホテルまで3時間の旅<平壌から車で3時間で行けるということのようだ>
    ・スキー・リゾートのツアー
    ・ディナー

    20日午前
    ・スキーを楽しむ(デファボン観光を含む)
    ・馬息嶺ホテルで昼食
    20日午後
    ・平壌に戻る
    ・羊角島ホテルにチェックイン
    ・新しい朝鮮国際旅行社のレストランで夕食
    ・楽園ビール:0.5ユーロで生ビール<これだけは安い!>
    ・ホテル泊

    21日午前
    ・開城観光と板門店視察
    ・高麗博物館:北朝鮮の切手やポスターが買える

    21日午後
    ・開城の統一食堂で昼食(5ユーロ追加でポシンタン)
    ・恭愍王の墓
    ・沙里院市観光(民族村など)
    ・地元の茶屋でマッコリが飲める
    ・ホテルに戻り羊肉の焼き肉(歌や踊りを見ながら)。
    ・大同外交クラブ:カラオケ、ビリヤード、平壌駐在の外国人と会うチャンス

    22日、北京へ

    こんなことを書いていたら、行きたくなってきた。

    このツアーを実施している海外の観光会社のurlを紹介しようと思ったが、日本では「渡航自粛」が求められており、さらに参加した場合に発生する不測の事態に対する責任も取れないので、必要であれば自力で検索していただきたい。

    <追記>
    外交団が同スキー場を訪れた様子を18日夜の「22時報道」でかなりの時間を割いて伝えていた。インタビューも組み込まれており興味深い内容であった。これについては、追って書くことにする。施設として見られたのは、ベルトコンベヤのようなものでスロープをあがる設備である。日本では、子供ゲレンデに設置されていることが多いが、名称は思い出せない。北朝鮮では、子供ゲレンデということではないようだ。また、カラオケコーナーも映し出され、よくは確認できていないが、英語曲を歌っている外国人が見られた。

    猪木議員一行、馬息嶺スキー場訪問:猪木議員のコメントなど (2014年1月15日 「朝鮮中央TV」)

    北朝鮮メディアは、猪木議員一行の平壌到着と銅像参拝は伝えたが、その後の動向については一切伝えていなかった。しかし、15日の「20時報道」の最後で、彼らが馬息嶺スキー場を訪問したことについて、日本語でのインタビューも含めて伝えている。

    馬息嶺ホテルを視察する猪木議員ら
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    雪上車に乗り込む猪木議員
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    デファボンからスキー場を望む猪木議員。デファボンへは、上の写真の雪上車で上がったようだ。
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    インタビューに答える猪木議員
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    猪木議員の声:「まずは素晴らしい景色と、本当に、また今日は天気が最高でしょう。素晴らしい、心が洗われるような感じです」
    朝鮮語字幕の日本語訳:「景色がとても良く、天気もとても良いです」
    猪木議員の声:「そうですね、初めてこの5000メートルのコースを見ましてね、感動しました」
    朝鮮語字幕の日本語訳:「5000メートルの走路にそって登りながら、感動が大きかったです」
    猪木議員の声:「こういう施設がたくさんあるって、やっぱり、生きる(音声カット)元帥が考えて、色々気配りをされていると言うことに非常に感動しました」
    朝鮮語字幕の日本語訳:「人民の喜び溢れるこのような生活のために敬愛する元帥様が配慮をたくさんして下さり、細心の指導をして下さることについて、大きく感動しました」

    スキーで「あーーっ」と言いながら滑ってくるRST株式会社社長のカワモトタツオ氏
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    インタビューに答えるカワモト氏
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    Source: KCTV, 2014/1/15放送

    カワモト氏の声:「この素晴らしいゲレンデでスキーをさせてもらって大変良かったです。また、次回、来シーズンでも、ここに来て今度上から本気になって滑ってみたいなと、こう思います」
    朝鮮語字幕の日本語訳:「馬息嶺スキー場でスキーをしたので、とても嬉しいです。次回来ることになれば、頂点からスキーをしてみたいです」

    朝鮮語字幕はほぼそのままであるが、猪木議員が「元帥様」について話す部分は原音がカットされている。やはり、「元帥様」に関する発言を放送する際は細かくチェックされるのであろう。

    <追記>
    投稿後「朝鮮中央通信」見たら、関連記事があった。
    「朝日友好親善協会顧問が日本の国会参議院議員一行と会った」:金ヨンイル労働党中央委員会秘書が15日、日本の特定非営利活動法人、体育平和交流協会理事長である猪木寛二参議院議員一行と会い、談話した。

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    Source: KCNA

    「金正恩同志に日本国会参議院議員が贈り物を差し上げた」:金ヨンイル秘書を通じて

    「偉大な歴史 12」:「労農赤衛隊」、旧「並進路線」、「隊」から「軍」へ、「隊員」はそのまま (2014年1月14日 「朝鮮中央TV」)

    1月14日は1959年に「労働赤衛隊」が組織されてから55周年に当たる。この日の『労働新聞』には、その由来と現代的意義を伝える社説と記事が掲載された。また、「朝鮮中央TV」では、この日に際し、1982年に制作された「偉大な歴史12」という「朝鮮記録映画」が放送された。古参の北朝鮮研究者にとってはほぼ常識なのかもしれないが、私のような新参者にとっては、「偉大な歴史12」は「並進路線」、「全民武装化、全国土要塞化」、「労農赤衛軍」の関係が繋がる大変興味深い「記録映画」であった。また、「労働赤衛隊」が「労働赤衛軍」に変更された背景についても、『労働新聞』の記事の中で何となく説明されている。本記事では、参照資料により「赤衛隊」、「赤衛軍」を使い分けることにする。

    「労農赤衛軍創立55周年」記念切手。「全民武装化、全国要塞化」という当時のスローガンが書かれている。
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    Source: KCTV, 「20時報道」、2014/1/14放送

    現在でも使われている「片手には銃を、もう片方の手には鎌とハンマーを」というスローガンで「偉大な歴史12」は始まる。
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    Source: KCTV, 「偉大な歴史12」、2014/1/14/放送

    1960年代初め、「米帝国主義者」によりキューバ危機やトンキン湾事件が引き起こされていた。そして、「共和国南半部」には、「大量の殺人兵器を持ち込み、北半部に反対する大戦争準備に狂奔していた」と当時の国際情勢をナレーションは説明する。「南朝鮮を占領している米帝侵略者」(下写真)
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    Source: KCTV, 「偉大な歴史12」、2014/1/14/放送

    そんな中、1962年12月「党中央委員会第4期第5次全員会議」が招集され、金日成が「経済建設と国防建設を並進する具体的な戦略的方針を指示」した。金正恩の「並進路線」は、「経済建設と核開発」と「国防建設」が強力化されているが、基本的には金日成のこの路線の踏襲である。金日成の「国防建設」は、専守防衛、そうでなくても攻撃対象は「南朝鮮」までであったはずだ。

    ところが、核とミサイルを開発した北朝鮮は、本当の実力はさておき、その範囲を日本など周辺諸国だけではなく、米本土まで拡大したと主張している。いわば、「敵(米国)の本拠地を叩く」ことが可能になったわけで、そこで「抑止力」を発揮しておき、経済建設に国力を傾注させるという考えであろう。もちろん、「核」を放棄して外部からの経済支援を得るという選択肢もあり得るわけだが、「自主・自立」という彼らの国是を引き出すまでもなく、北朝鮮は「米帝」を信じていないはずである。こうした不信感は、米国がアフガニスタンやイラクを攻撃したことで増幅されたので、核はそう簡単に放棄しないはずだ。「南朝鮮」を人質にしているので核まで必要はないとも考えられるが、北朝鮮は米国はいざとなれば「南朝鮮」など考慮せず、戦争を挑んでくるはずだと考えているのであろう。その上、核を「交換材料」として活用することで、核は温存しながら得るものを得られている。今は「核は交換材料ではない」と言っているが、それは「並進路線」の系からすれば元々そうであったわけで、金正日の巧みな外交戦術で副産物を得たと考えた方が良いのかもしれない。

    「並進路線演説」をする金日成
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    Source: KCTV, 「偉大な歴史12」、2014/1/14/放送

    1966年10月、「朝鮮労働党代表者会議招集」。「1962年、党中央委員会第4期第5次会議で下された経済建設と国防建設を並進することについての戦略的方針の正当性を再確認され、この方針を我が党の確固不動の方針として継続的に掲げていくことに関する綱領的指針を提示されました」とナレーション。演説する金日成(下写真)
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    Source: KCTV, 「偉大な歴史12」、2014/1/14/放送

    「並進路線」の話がそれてしまったが、「偉大な歴史12」を見ていると、「労農赤衛隊」は上の66年演説の後の話として登場する。どうやら、「労農赤衛隊」の基本形は1959年に組織されたということになっているが、パルチザン的な「労農赤衛隊」ではなく、「半軍事組織」としての「労農赤衛隊」は、「並進路線」を受けて66年以降に組織されたようだ。「朝鮮記録映画」でも優秀な工場労働者が同時に優秀な赤衛隊員であるという事例をいくつか紹介している。

    「国防建設の独創的な道を明らかにして下さった首領様は、我が党の主体的軍事路線である、全軍幹部化、全軍現代化と共に、全民武装化と全国要塞化方針を徹底して実現していくよう、全党と全体人民を賢明に導いて下さいました」とナレーションが入り、「労農赤衛隊」らしき人々が映し出される。
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    Source: KCTV, 「偉大な歴史12」、2014/1/14/放送

    「全国の労働者、農民、事務員、青年学生たちは、片手には銃をもう片方の手には鎌とハンマーをしっかりと持って、経済建設を進めながらも、全てが軍事知識を学び、各種の武器に精通し、敵が責めてきても一撃で殲滅できるよう準備をしました」とナレーション。工場で銃の訓練をする「労農赤衛隊員」
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    Source: KCTV, 「偉大な歴史12」、2014/1/14/放送

    農場での訓練風景か。
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    Source: KCTV, 「偉大な歴史12」、2014/1/14/放送

    「人民軍隊を核心とする我が党の革命的武装力である労働赤衛隊を創建され、それを不敗の武力に強化・発展させてきた偉大な首領金日成同志」とナレーション。「人民軍隊を核心とする我が党の革命的武装力である労農赤衛隊」の「人民軍隊」が「朝鮮人民軍」を指しているのか、「人民による軍隊」を言っているのか今一つよく分からない。しかし、続くナレーションによると「首領様は、全民が自分の力で革命の戦闘任務を確実に守護できるよう、自衛思想に大きな信念を抱かせて下さいました」と言っているので、後者なのかもしれない。訓練を指導する金日成(下写真)
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    Source: KCTV, 「偉大な歴史12」、2014/1/14/放送

    「全体人民が武装し、全国が要塞化される時、如何なる侵略者も責めてくることは出来ないと言う首領様の教えを高く頂き、労働赤衛隊員たちは我が党の軍事路線を貫徹するための闘争に立ち上がりました」とナレーション。
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    Source: KCTV, 「偉大な歴史12」、2014/1/14/放送

    「経済建設こそ、国防建設であり、国防建設こそ経済建設、これが我が祖国の気性であり」とナレーション。女性の「労農赤衛隊員」
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    Source: KCTV, 「偉大な歴史12」、2014/1/14/放送

    さらに「偉大な首領様は、赤い青年近衛隊も組織され、全民武装化の方針を徹底して実現された」と「赤い青年近衛隊」も紹介される。
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    Source: KCTV, 「偉大な歴史12」、2014/1/14/放送

    「web朝鮮語大辞典」の説明を見ておくと

    ・労農赤衛隊:社会主義建設に直接参加している労働者、農民をはじめとした勤労大衆のボランティア的な武装隊伍。抗日革命闘争の栄光的な革命伝統を継承した朝鮮労働党の非常備的革命武力である。
    ・赤い青年近衛隊:我が国で1970年9月12日に学生青年たちで組織された半軍事組織

    しかし、「労農赤衛軍」という語彙は出てこない。

    では、「労働赤衛軍」という用語は、どの時点で登場したのだろうか。『労働新聞』の「偉大な首領様が労農赤衛軍を創建されてから55周年に際し」という記事の記述が参考になる。

    同記事では、「労働赤衛軍」という用語を使いながらも、金正日の言葉を引用する部分では、「全人民的防衛体系を確立することにおいて、画期的な意義をもつのことは、労働赤衛隊の創建です。我が国では、首領様が提示された全民武装化方針に従い、1959年に労農赤衛隊が創建されました」と「労農赤衛隊」という用語を使っている。金正日の言葉は厳格に引用しなければならないということで、そのようにしているのかもしれないが、同日の同新聞の「<社説>労働赤衛軍は、我が党の偉業を忠実に受け入れる革命的武装力である」という記事の中では、同じ事実について「偉大な首領様が、1959年1月14日に労働赤衛軍を創建された」と書かれている。

    では、「隊」が「軍」にどこで変わったのか。この点については、『労働新聞』の2つの記事に明確な答えはない。しかし、「55年に際し」の方には次のような記述がある。

    「労農赤衛軍閲兵式を盛大に組織し、我が国の民間武力の威力を全世界に響き渡らせた偉大な将軍様の不滅の業績」

    どうやら「労農赤衛軍閲兵式」が鍵となるようだ。「労農赤衛軍」が「軍」名称で閲兵式に登場したのは2010年10月10日、労働党創建65周年の閲兵式で、上の記事で述べている「閲兵式」とはこのことのはずである。だとすると、「隊」を「軍」にしたのは、「将軍様の不滅の業績」ということになる。

    「隊」は「軍」になったものの、構成員はあくまでも「隊員」であり、「軍人」とは呼んでいない。過去に、「20時報道」に登場した「労農赤衛軍」に触れた記事を書いたが、その時も「李明博逆徒」打倒に燃えている人々は「労農赤衛隊員」と言っていた。上の『労働新聞』の記事も同様に、「隊員」と呼んでいる。

    『労働新聞』、「전민무장화의 새 력사를 펼치신 희세의 령장 위대한 수령님께서 로농적위군을 창건하신 55돐에 즈음하여」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-01-14-0006&chAction=D

    『労働新聞』、「사설 로농적위군은 우리 당의 위업을 충직하게 받드는 혁명적무장력이다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-01-14-0001&chAction=D

    「日本国会参議院議員一行到着」:猪木議員一行平壌到着、銅像参拝 (2014年1月13日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が猪木議員一行が平壌に到着したと写真付きで報じた。また、別記事では猪木議員一行が万寿台の丘の金日成・金正日銅像を参拝し、「敬慕の情を示し」、「花束を贈呈した」と伝えた。

    inoki arrived
    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/kcna.user.article.retrieveNewsViewInfoList.kcmsf#this

    「世界の常識:8月草(ステビア)で作った緑色清涼飲料」:北朝鮮でコカコーラ紹介、ただしグリーン版 (2014年1月12日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」の「世界の常識」という番組を見ていたら、コカコーラに関する番組を放送していた。うかつではあったが、これまでコカコーラは「異色的資本主義」の悪しき象徴とされているということを、風説を信じたのか、勝手な思い込みをしたのかは分からないが、信じていた。ロッドマン関連の記事でも、こうした思い込みに基づいた記述をしていた。

    コカコーラの北朝鮮における扱いについては自分で確認することは出来ないが、ピザ屋で普通に売られているという話を聞いたこともある。売られているとしても中国からの輸入品で、本物であるという保証はないが、それでもコカコーラを朝鮮人民が普通に入手できるという点においては変わりない。

    この疑問を解くべく、まず「コカコーラ」という語彙がウリミンジョクキリが提供する「web朝鮮語大辞典」に調べてみた。その結果は、

    코카콜라 [CocaCola《영》](コカコーラ、CocaCola<英>)
    飲料の一つ。コカの葉とコーラの木の実の成分をアルコールで抽出し、それに当分、オレンジ、レモンなどを混ぜて味を出し、色素を入れて色を付けた後、炭酸を含めて作る。

    と書かれていた。

    細かい話だが、コカコーラは「Coca-Cola」が正し表記で、いうまでもなく固有名詞、つまり、The Coca-Cola Companyの登録商標である。「朝鮮語大辞典」ではあまり拘っていないのかもしれないが、CocaとColaの間にハイフォンがなく、一般名詞的な説明がされている。ともあれ、「コカコーラ」が外来語として朝鮮語に存在することは分かった。

    「番組」では、アルゼンチンのコカコーラ現地法人が作ったステビアを甘味料として使ったコカコーラを紹介している。「番組」では使っている草のを「8月草」と紹介しており、この草は「web朝鮮語大辞典」にも韓国の「NAVER国語辞典」にも出てこなかったが、番組の映像を見ていたら分かった。

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    Source: KCTV, 2014/1/12放送

    「最近、ある国で8月草(ステビア)を使った緑色清涼飲料が人々の健康にも良く、美味しいので、人気が高まっています」
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    Source: KCTV, 2014/1/12放送

    「この緑色清涼飲料が登場して以来、長い間人々が飲んできたコカコーラがだんだん人気を失っているとのことです」
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    Source: KCTV, 2014/1/12放送

    「コカコーラ・ライフと命名されたこの緑色清涼飲料は、コカコーラ飲料に負けないくらい美味しいだけではなく、8月草を使って作ったので、健康に良い天然飲料とされています」(とはいえ甘味料が変わっただけのコカコーラなのだが)
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    Source: KCTV, 2014/1/12放送

    「8月草は、この国の高山地帯でよく育つ土着の植物で、ここの土着民たちが伝統的に使ってきた植物とのことです」
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    Source: KCTV, 2014/1/12放送

    「番組」の趣旨はもちろんコカコーラの宣伝ではなく、ステビアを地元住民が活用しているという点にある。それにもかかわらず、「コカコーラ飲料に負けないぐらい美味しい」という表現は、オリジナル番組の中で使われた表現をそのまま翻訳しただけかもしれないが、コカコーラが一般的に飲まれていない国だとすればおもしろい。それとも朝鮮人民は、コカコーラの味をよく知っているのであろうか。

    コカコーラ・アルゼンチンHP、Coca-Cola Life紹介、http://coca-colalife.com.ar/faq2.html

    「新年初の体育の日」:馬息嶺以外のスキー場が一瞬 (2014年1月12日 「朝鮮中央TV」)

    1月12日の「朝鮮中央TV」「20時報道」で、「馬息嶺スキー場」ではないスキー場が一瞬映し出された。新年最初の「体育の日」については例年報道され、集団マラソン、集団体操、綱引き、スケート(ローラとアイス)などを朝鮮人民がする様子が紹介されたが、スキー場面は初めて見た。「報道」では、「恵山市内の青年学生たちは、スケート競技とスキー競技で高い忍耐力と勇敢さ、平時に鍛えてきた体育技術を残すことなく見せてくれました」と言っている。

    恵山市内のスキー場
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    Source: KCTV, 2014/1/12放送

    映像では未整備の緩斜面でスキーをしているように見える。リフトなどの設備はなく、スキーを担いで登っているようだ。
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    Source: KCTV, 2014/1/12放送

    ちょっとしたジャンプコースもある
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    Source: KCTV, 2014/1/12放送

    さて、スキーの道具はどのようなものを使っているのだろうか。

    「朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議常任委員会決定第156号、2014年1月7日、朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議第13期代議員選挙のための中央選挙委員会を組織することについて」 (2014年1月12日 「労働新聞」)

    3月に予定されている最高人民会議代議員選挙のための「選挙委員会」が組織されたと『労働新聞』などが報じた。委員は以下のとおり。

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    Source: 『労働新聞』、「조선민주주의인민공화국 최고인민회의 상임위원회 결정 제156호 주체103(2014)년 1월 7일 조선민주주의인민공화국 최고인민회의 제13기 대의원선거를 위한 중앙선거위원회를 조직함에 대하여」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-01-12-0003&chAction=T

    「<録画実況>敬愛する金正恩元帥様をお迎えし開催された我が国フェップルチームと米国NBA名手チームのバスケットボール試合」:ロッドマンのスピーチと朝鮮語通訳、金正恩の「家族」、体育相 (2014年1月11日 「朝鮮中央TV」)

    11日、「朝鮮中央TV」が訪朝中のロッドマンチームと北朝鮮チームのバスケットボール試合の模様をほぼカットすることなく録画放送した。試合開始前のデニス・ロッドマンが行ったスピーチを英語でそのまま流し、それを北朝鮮の通訳が朝鮮語に訳している。この辺りの様子を中心に紹介しておくことにする。

    ロッドマンの英語は非常に聞き取りにくいので、分からない部分は「想像」で書いておく。北朝鮮の専門家ではないが、ある米国人と彼のスピーチについて話していたら、その米国人は「ロッドマンは英語もまともに話せない」と言っていた。なにが「まとも」でないのか私は判断できないが、聞き取りにくいことことは確かである。

    「競技を前にロッドマン先生が発言します」(朝鮮語アナウンス)
    "Before the game, Mr.Rodman would like to say a few words."(英語アナウンス)

    会場では、全てのアナウンスを朝鮮語と英語で行った。

    ロッドマン:「私は米国から勇気(ガッツ)を持って、そして私を信じて、元帥の誕生日のためにやって来た仲間に感謝します」
    北朝鮮通訳:「ここにいる私の同僚たちは、私を信じて、元帥様の誕生日に際して朝鮮に来ました」

    北朝鮮通訳は、ノートにメモをしながら話しているので、事前に原稿を渡されていたわけではなく、本当に逐次通訳をしているようだ。

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    Source: KCTV, 2014/1/11放送

    ロッドマン:「たくさんの人が、私や皆さんの指導者である元帥について、色々な見解を表明しています。しかし、私はそれを称賛、世界のための称賛と思っています。彼は偉大な指導者であり、彼はこの国の人々に力を与え、そして幸いにも、この国の人々は元帥を愛しています」
    北朝鮮通訳:「世界の異なる人々は、私に対する色々な見解を持っています。私は、彼らが私に対する評価をこのように受け入れています。私はここ朝鮮に来て、朝鮮の人々が敬愛する元帥様を愛しているということを感じています」(朝鮮人民の盛大な拍手)

    放送を聞いている限りでは、北朝鮮通訳の部分をカットしたようには聞こえないが、ロッドマンの発言、特に「元帥様について色々な見解」や「それを称賛と思う」、また「偉大な指導者」、「力を与える」の部分が訳されていない。「色々な見解」や「称賛と思う」は訳すとまずいから敢えて言っていないのかもしれないが、「偉大な指導者」や「力を与える」は言った方が宣伝となると思うのだが、聞き取れなかったのだろうか。通訳員も「元帥様」を前に、しかも多くの聴衆がいる中でまずいことは言えないし、事前原稿無しかつロッドマンの聞き取りにくい英語ということで、苦労し緊張したことであろう。さて、留学経験のある「元帥様」は彼の英語をどの程度理解したのであろうか。

    「偉大な指導者」の部分で「元帥様」を指すロッドマン
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    Source: KCTV, 2014/1/11放送

    そして、その先にいる「元帥様夫妻」を映し出す
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    Source: KCTV, 2014/1/11放送

    ロッドマン:「北朝鮮の人々のために、私は一つのことを言いたいです。これはこのイベントにかかわった人々にとって歴史的な出来事です。私の同僚と北朝鮮全国チーム、そして私が言いたいことは、私の友人、彼の夫人、そして彼の家族に対してです」

    そして、朝鮮語通訳を入れずにバースデー・ソングが始まる。ロッドマンが歌を歌っている間に通訳が何か言おうとしたようであるが、直ぐにやめている。その後、朝鮮語訳があったのかどうかは分からないが、番組では歌の前のロッドマンのスピーチは通訳されていない。ロッドマンは「彼の夫人、彼の家族」と分けて言っている。これは明らかに、夫人以外にも家族がいるということで、兄弟や叔母を除けば、金正恩の子供ということになる。朝鮮人民が彼の英語をどれだけ理解し、この点についてどのように考えているのかが興味深い。もしかすると、金正恩に子供がいることは、公式報道がされていないだけで周知の事実なのかもしれないが。

    なお、コメントでも頂いているように、試合終了後にロッドマンと手を繋いでいるのは北朝鮮オリンピック委員会委員長兼体育相の李ジョンムであった。ロッドマンもCNNとのインタビューで「北朝鮮オリンピック委員会から招聘された」と言っているので、委員長が出てくるのは自然である。

    李ジョンム体育相とロッドマン
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    Source: KCTV, 2014/1/11放送

    <追記>試合の様子

    NBA選手紹介。トップで紹介されるのがロッドマン。英語表記が主で括弧を付けて朝鮮語表記をしている。会場でのアナウンスは朝鮮語、英語の順である。
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    Source: KCTV, 2014/1/11放送

    NBA選手紹介、続き
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    Source: KCTV, 2014/1/11放送


    北朝鮮・フェップルチーム選手紹介。トップで紹介されるのが金ウンチョル。北朝鮮の最強選手なのであろう。
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    Source: KCTV, 2014/1/11放送

    フェップルチーム選手紹介、続き
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    Source: KCTV, 2014/1/11放送

    この後、審判紹介があり、試合が始まる。試合の解説は、朝鮮体育大学講座長・副教授マ・ジュチョンが放送員(アナウンサー)と共に行う。

    解説では、まずデニス・ロッドマンと米国におけるバスケットボール人気について次のように話す。
    放送員:「このデニス・ロッドマンはアメリカでは広く知られているバスケットボール選手ですね」
    解説者:「そうです」
    放送員:「昨年に続き、今年もやって来てこうして試合をしているのですが、米国ではバスケットボールが最も好まれる種目の扱いですよね」
    解説者:「そうです。米国ではバスケットボールといえば、ブラジル人がサッカーを好むように、米国人はバスケットボールを誰もが最も好みます」
    放送員:「今、ボールを取ったデニスロッドマンは、現役選手として選手生活をしていた時は、オフェンスラインでもディフェンスラインでもディフェンダーでしたよね」
    解説者:「そうです。デニス・ロッドマン選手は、選手生活全期間で一級のディフェンダー選手権保有者でした」
    放送員:「今日のNBA選手を見ると、(今は)選手生活をしておらず過去にNBAで活躍した選手たちですよね」
    解説者:「そうです。過去には、NBAの職業的選手(プロ選手)と共に選手生活をし、今は選手生活を止め引退した選手たちです。ですから、年齢も比較的、30以上、40代の選手もおり、30代の選手もいます」
    放送員:「今、試合に出ているデニス・ロッドマン選手は、今年53歳ですよね」
    解説者:「はい、そうです」 

    その他のスポーツ番組も同じであるが、アナウンスと解説は録画を見ながら入れているはずである。したがって、NBA選手に関する解説は打ち合わせ済みであり、バスケットボールが米国で最も人気があるスポーツであることやロッドマンが一流選手であったということを朝鮮人民に説明する狙いがあったはずだ。このような詳しい説明をしたのは、バスケットボールが米国で最も人気があるスポーツで、その一流選手が北朝鮮にやってきて「元帥様」の誕生日を祝うということを朝鮮人民に伝えたかったのであろう。過去記事に、「異色的資本主義」を見せることになるので紹介しないであろうと書いたが、北朝鮮はそれを逆手にとって「異色的資本主義」の連中ですら、「元帥様」には頭が上がらないという宣伝に出たわけである。ロッドマンは純粋に「スポーツ外交」をやりたいと考えているのだろうが、北朝鮮の方が一枚上手ということになる。本当は、純粋なスポーツ交流ができるとよいのであるが、米朝ではなかなか難しいようだ。過去記事に書いた米国務省報道官の「北朝鮮はwilling partnerではない」という言葉には、そうした含意があるのかもしれない。

    観衆の朝鮮人民は、特定チームを応援していない「イギョラ(頑張れ)」という応援はしているが、心の中ではフェップルチームを応援していても、外面的には両チーム等しい扱いである。そのように指示されたのであろう。どちらのチームが得点しても、立ち上がって拍手を送っている。

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    Source: KCTV, 2014/1/11放送

    試合中に北朝鮮選手がNBA選手に脚を絡ませて転倒させてしまった。故意には見えない。転倒したNBA選手に2人の北朝鮮選手が駆け寄り手を引いて立たせると拍手が起きた(写真右下)。
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    Source: KCTV, 2014/1/11放送

    私はバスケットボールに関する知識はほとんどないが、試合の様子からは、やはり過去記事に書いたようにNBAチームが手加減をしながら北朝鮮チームを勝たせたように見える。これも上に書いたことと関連し「元帥様」への誕生日プレゼントであろう。北朝鮮チームと元NBAチームでは、体格や技術の面で全く勝負にならないのではないだろうか。

    朝米戦前半ではロッドマンが選手として出場していたが、後半戦では彼は金正恩にバスケットボール解説をしている。
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    Source: KCTV, 2014/1/11放送

    ロッドマンは、混合試合には出場せず、金正恩と話をしている。彼らの後ろにいる人々は、後ろ向き立っているのが警護員、ネクタイをした男性が通訳、角刈りの男性が警護員、その横の男性が体育相である。
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    Source: KCTV, 2014/1/11放送

    「<朝鮮記録映画>敬愛する金正恩同志が様々な部門の事業を現地指導、2013.11-12」:馬息嶺スキー場指導が中心、現地指導の成果、スノーマシン、雪嵐の中強調 (2014年1月10日 「朝鮮中央TV」)

    10日、「朝鮮中央TV」が表題の「朝鮮記録映画」を放送した。記録映画では、「全国科学者・技術者大会」、「平壌建築総合大学」を現地指導した様子も伝えているが、その中心はやはり「馬息嶺スキー場」での現地指導である。同指導で、これまで公開されていなかった映像などが見られたので紹介しておく。

    「記録映画」では3回の現地指導の様子を伝えている。「朝鮮中央通信」が11月2日と報じた現地指導、12月15日付けの『労働新聞』に掲載された「完工を目前にした馬息嶺スキー場現地指導」、そして12月31日の「完工した馬息嶺スキー場の現地指導」であるが、15日と31日の比較がなかなか面白い。

    「ムンス・ウォーターパーク」もそうであったが、かなりできあがったところにやって来て「細心の指導」をするのが好きなようだ。そんなことなら初めから言っておけば良いような気もするが、「広大な構想」を提示しておき、後から「細心の指導」をするのが金正恩スタイルのようだ。お父さんはどうだったのであろうか。

    「記録映画」が伝えている1つめの「細心の指導」は、「馬息嶺スキー場総合案内図」である。下が12月15日の時点での図であるが、平面的に書かれている。
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    Source: KCTV, 2014/1/10放送

    これを見て「元帥様」は「立体的に描くように」と指示をした結果、31日には下の写真のように変わっていた。確かにこちらの方が全体の様子がよく分かるし、日本のスキー場のスロープ案内はこのスタイルが多い。木材の色が変わっており、作り直したのであろうか。「総合案内図」という文字が見やすくなり、掲載した写真では比較できないが新たに時計も取り付けられた。
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    Source: KCTV, 2014/1/10放送

    続けて、「馬息嶺ホテル」の看板について、「両面にホテル名を記し、照明を設置して夜でも見えるようにしなければならない」指導した。こちらは、その結果(31日の様子)は記録映画では見られなかった。
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    Source: KCTV, 2014/1/10放送

    英語メディアでのスキー場表記が「Ma Sik Ryong」となっており、何か不自然さを感じていたのだが、北朝鮮でもそのように表記しているようだ。どうやら、北朝鮮では朝鮮文字をアルファベットに置き換える際、一つ一つの音をそのまま表記する方法を採用しているようだ。朝鮮語発音ではこのスキー場は「マシンリョン」(に近い音)になるわけだが、朝鮮語を知らない外国人がこのアルファベット表記だけを見ると「マシックリョン」と発音してしまい、とても分かり難くなる。韓国では、発音どおりのアルファベット表記を採用しており、地下鉄の駅名「独立門」は、一文字ずつその音をそのまま表記する「dok rip mun」ではなく「Dongnim mun」と記されている。

    Seoul Metro Traffice Center HP, Route Map Station Information, http://dmzap1.seoulmetro.co.kr/station/eng/linemap.action (オレンジラインの中央上辺りの駅)

    ソウル方言と平壌方言を比べた場合、平壌方言においての方が鼻音化(乱暴な説明だが、カクカクした音を丸くして発音しやすくすること)されないことが多いからなのかもしれないが、興味深い。日本語でも群馬県をヘボン式の規則に従い「Gunma Ken」と表記するのか音どおりに「Gumma Ken」という問題はあるのだが。この点において群馬県や県民も苦労しているようである。

    群馬県HP、「群馬(ぐんま)のローマ字表記について」、http://www.pref.gunma.jp/04/c3610022.html

    話がそれたが、金正恩の「細心の指導」を続ける。食堂を視察した彼は、下の写真にある様子を見て「人民が使う食卓や椅子をもっと使いやすく置かなければならない」と指示した。
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    Source: KCTV, 2014/1/10放送

    その結果が以下である。大きく変わっているのは、テーブルとテーブルの間を遮るようにパーティションが設置され、プライバシーが保たれるようにした点である。「使いやすく」というナレーションの実質的な内容が「プライバシーを保てるように」ということであったのならば、なかなか興味深い。
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    Source: KCTV, 2014/1/10放送

    食堂の指導ではあまり「細心」ではない様子も見られた。31日の指導で彼は再び「人民が些細な不便さも感じないように」と指摘したとのことであるが、どうやらテーブルとパーティションの間隔が狭すぎることについて指摘したようだ。しかし、彼のように太った朝鮮人民はほとんどいないわけで、設計者は普通の人民のボディーサイズでテーブルの位置決めをしたのではなかろうか。もしかすると「世界的なスキー場」という発想から、体の大きい外国人が来ても対応できるようにという話なのかもしれないが、「人民」にはあまり関係なさそうな「細心」さである。
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    Source: KCTV, 2014/1/10放送

    テーブルを位置をずらして着席。
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    Source: KCTV, 2014/1/10放送

    続けてホテルのフロントを視察した「元帥様」は、フロントのホール(下の写真)を「馬息嶺ホテルの特色が出るように装飾しなければならない」と指示した。
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    Source: KCTV, 2014/1/10放送

    その結果が次の写真である。フロント上に掛けられている彫刻のようなものが、馬息嶺を描いたと思われる山から緑色のデザインに変わり、文字が刻まれている。北朝鮮芸術では、「抽象的なものは好ましくない」という話を聞いたことがあるし、彼らが描く絵は皆実に具象絵画的である。この映像からは分からないが、緑のものは何だろうか。
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    Source: KCTV, 2014/1/10放送

    「記録映画」では、「商店」の様子も映している。商店にはヘルメットやゴーグルなど色々なものが置かれているが、全て輸入品のように見える。スキーは、オーストリアのFischer製であるが、誰が買うのだろうか。
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    Source: KCTV, 2014/1/10放送

    「商品」の前にはプライスタグが置かれているが、いくらなのか知りたいところだ。
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    Source: KCTV, 2014/1/10放送

    一方、こちらはレンタル用と思われるブーツである。映像で見る限りは同種のブーツが大量に置かれているので、過去記事で予想したように中古品の購入ではなく、同種の新品をまとめて購入したようだ。この辺りも「世界的スキー場」を考えてのことだろうか。
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    Source: KCTV, 2014/1/10放送

    ホテルの外では、スノーマシンを映している。過去記事に紹介したのと同種のものがずらっと並んでいる。
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    Source: KCTV, 2014/1/10放送

    さらに、説明はないが、リフトのゲートのようなものを見ている映像も紹介される。12月末に「朝鮮中央TV」で放送された海外事情を紹介する「世界の常識」という番組でスキー場で使われる非接触型ICタグを紹介していた(はずである。飛ばしながら画だけざっと見た)。馬息嶺スキー場でもリフト乗り場にこのシステムを導入したのかもしれないが、「リフト代」を人民から徴収するのであろうか。外国人からは、観光フルセットでいくらという料金設定にしそうなのだが。だとすると、スキー場にいる人は勝手にリフトに乗れば良いのではないだろうか。もし、外国人と朝鮮人民が使うスロープを分離するならば、このチェック・ゲートは有効かもしれない。
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    そして「記録映画」は、「12月最後の日の雪嵐をものともせず」現地指導をする「元帥様」の様子を映し出して終わる。天気が急変したのかもしれないが、スノーマシンを見る辺りまでは晴天だったので、「雪嵐」演出で早速スノーマシンが活躍しているのかもしれない。それにしても、帽子も脱いでいるので「元帥様」はさぞかし寒かったことであろう。
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    Source: KCTV, 2014/1/10放送

    馬息嶺スキー場では、さらに多くの宿舎建設など第2期工事が計画されているという。

    「ロッドマン、インタビューでの発言について謝罪、飲んでいたことを認める」:試合後の謝罪 (2014年1月9日 「abc NEWS」)

    米国abc NEWSによると、ロッドマンがCNNとのインタビューでケニス・ベが「悪いことをした」ような発言をしことについて謝罪するメールを彼の広報担当者を通じてAPに送ったとのことである。

    その中で彼は、「私は私の行為について全て責任を取る。その日はストレスが多い日だった。といのは、私のチームメイトが彼らの家族や仕事仲間からの圧力を受けチームを去り、私の夢であるバスケットボール外交が崩れてしまったからだ。私は飲んでいた。それを言い訳にするつもりはないが、インタビューの時、私は怒っていた。あの時は飲み過ぎていた。言い分けではないが、事実だ」と述べたという。そしてケニス・ベの家族に対しては「申し訳ない。今思えば、政治的なコメントは差し控えるべきだった。本当にすまない」というコメントを出したという。

    abc NEWS, "Rodman Apologizes for Outlandish Interview, Admits He Was Drinking", http://abcnews.go.com/International/wireStory/rodman-sings-happy-birthday-north-korean-leader-21461313

    ロッドマンがこのようなコメントを出したのは、スミスなど周囲の人間から言われたからであろう。そもそもロッドマンにとっては、ケニス・ベが本当に「悪いことをした」かどうかなどは大きな問題ではないはずだ。北朝鮮にとっても、ロッドマンは十分にケニス・ベ問題を米国で広めるのに十分に役に立ったわけで、その後の彼のスタンスは問題としないはずだ。ロッドマン一行がいつまで北朝鮮に留まるのか、また金正恩主催の宴会が再び開催されるのかは分からないが、宴会が主催されているとすれば、今夜だと思う。

    「祖国平和統一委員会書記局から南朝鮮統一部に通知文を送った」:旧正月(かそれ以降)に離散家族再会を提案 (2014年1月9日 「朝鮮中央通信」)

    北朝鮮の「祖国平和統一委員会」が板門店を通じて韓国・統一部に通知文を送ったと9日、「朝鮮中央通信」が報じた。

    通知文では、「昨年のような事態を繰り返してはならない」とした上で、「我々はそのような趣旨から新年を契機に北南関係改善と関連した重要な原則的立場を鮮明にし、実践的意志を示した」と、金正恩の「新年の辞」を受け、南北関係改善に積極的に取り組むという意思を示している。

    しかし、一方で韓国側が「(北朝鮮に)失礼な言動」や「戦争演習を」しただけではなく、「我々の内部問題(張成沢問題を指すものと思われる)について云々」したり、北朝鮮が提起した「原則的問題(南北関係改善を指すものと思われる)」については「核問題を引っ張り出して、話をはぐらかしている」ことが「残念に思われる」と軟らかく非難している。

    それにもかかわらず、「旧正月を契機に離散家族の親戚訪問をしようという南側の提起が本当に分裂の痛みを和らげ、北南関係改善のための善意から出たものであれば、良いことである」とし、北朝鮮側が昨年提案した離散家族訪問が「南側当局の不純な態度と敵対行為により実現されなかった」と韓国側を非難し、「それでも再びそれをやろうと言うのであれば幸いなことである」と韓国側の提案を受け入れる意思を示している。

    ただし、韓国側が提案した「旧正月に実施」については、「南側で戦争演習が休む暇なく続き、大規模合同軍事演習開始され、銃砲弾が行き交う中で家族・親戚訪問を穏やかな気持ちで出来るだろうか」と3月に予定されている米韓軍事演習に釘を刺し、「旧正月は季節的にも時間的にも考慮されるが、南側で他のことが起こらず、我々の提案にも同じように合意する意思があるならば、良い季節に向かい合って座ることは出来る」としている。この部分の解釈が難しいので「朝鮮中央通信」の日本語訳と英語訳を読んでみたが、今一つよく分からない。何が分からないのかというと、「他のことが起こらない」という意味が「予定されている米韓合同演習は受け入れるが、それ以上のことはやるな」という意味なのか、「それも中止しろ」という意味なのかが分からない。「砲弾が行き交う中でできるのか」とも言っているので後者のような気もするが、それを言い出せば「昨年と同じ事態を繰り返す」ことになることは北朝鮮も分かっているはずなので、「米韓合同演習」には譲歩するつもりなのかもしれない。また、「良い季節」という表現も「もっと暖かくなってから」という意味なのか、「旧正月は民族的休日だから」という意味なのかも今一つ不明である。

    韓国側がこの提案にどのように反応するのかを見れば、これらの謎も解けるであろう。

    <追記>
    日本のメディアによると、この通知文は北朝鮮が「南北の離散家族の再会事業を旧正月(今月31日)に合わせて開催するとの韓国提案を拒否する通知文」(『読売新聞』、「北、離散家族再会事業を拒否…米韓演習理由に」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140109-00000958-yom-int)ということだ。また、「北朝鮮側の提案」というのは、「金剛山観光事業再開」を指しているようだ。

    韓国側からの「提案」をきちんと確認すべきだったが、それにしても分かりにくい「通知文」である。単なる「拒否」ではなく、インプリケーションがありそうな気がするが。

    <追記2>:韓国統一部情報
    韓国・統一部のHPでこの「通知文」が出るに至った過程を確認した。

    統一部は、1月6日に「旧正月を契機に離散家族訪問提案」した。その中で「この問題を協議するための南北赤十字実務接触を1月10日に板門店北側地域にある『統一閣』で開催することを提案』した。これは1月6日の「大統領新年記者会見の後続措置の次元」で行われた。

    これに対する解答がこの「通知文」であるわけだが、「通知文」に対する統一部のコメントは、

    「北側は、南側が対決的姿勢に変化がないといいながら、人道主義事業がしっかりと達成できるようにするならば、障害物を除去され、雰囲気が造成されなければならないと主張した」とし、「北側が提起した問題も一緒に行わなければならないと主張し」、それがなされるならば「良い季節に向かい合って座ることが出来ると言及した」と事実関係を述べた上で次のように韓国側の考えを主張した。

    まず「北側が毎年行われている軍事訓練などを人道的事案と結びつけたことについて遺憾の意を表明」し、「離散家族訪問問題と北側が提起する問題は別個の事案」であり、「北側は口でだけ南北関係改善を言っているのではなく、行動で真剣さを見せなければなら」ないとしている。


    韓国・統一部、「설 계기 이산가족 상봉 제안 관련」、http://www.unikorea.go.kr/board/view.do?boardId=BO0000000027&menuCd=DOM_000000101001001000&orderBy=REGISTER_DATE%20DESC&startPage=1&dataSid=227603

    韓国・統一部、「이산가족 상봉 관련 북측 회신에 대한 정부 입장」、http://www.unikorea.go.kr/board/view.do?boardId=BO0000000027&menuCd=DOM_000000101001001000&orderBy=REGISTER_DATE%20DESC&startPage=1&dataSid=227634

    今後、韓国で行われる合同軍事演習に北朝鮮がどのような反応を示すかは分からないが、「良い季節に向かい合って」と言っているので、その時期を前提にしてでも話し合いは進めていった方がよい。ただ、米軍の戦車部隊移転などとの関係で訓練期間が長引くと、「良い季節」を逃してしまう可能性が高い。

    「敬愛する金正恩元帥様が我が国と米国バスケットボール選手の競技を観覧された」:金正恩&ロッドマン酒、ロッドマンの歌をそのまま流す (2014年1月9日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」の最初の番組として表題の「朝鮮記録映画」放送された。放送内のナレーションは『労働新聞』の同タイトル記事と同じなので改めて紹介しないが、おもしろい映像があったので紹介しておく。

    「敬愛する金正恩元帥様が我が国と米国バスケットボール選手の競技を観覧された 2014.1.8」
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    Source: KCTV, 2014/1/9放送

    ロッドマンは朴奉珠よりも握手の仕方を心得ているようだ
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    Source: KCTV, 2014/1/9放送

    ロッドマンが金正恩にプレゼントした「Dennis&Jong-un Friendship焼酎」か。中身が焼酎かどうかは分からないが、1本譲ってもらいたい特製ボトルだ。
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    Source: KCTV, 2014/1/9放送

    <追記>
    米国務省定例記者会見(9日、現地時間)で、北朝鮮が公開した映像についての質疑応答があった。その中で記者は「北朝鮮が彼らグループの航空運賃など、旅費を負担した」と述べたことに対し、報道官は否定していない。続けて記者は、「彼(ロッドマン)は、ミンクのコートや高級ウィスキーなど10000ドル以上のプレゼントを金正恩にした」とした上で、そうした高価なプレゼントを与えることが安保理制裁に反しないか質問している。これに対し、報道官は「調べておく」として即答はしていないが、過去記事に書いた共同通信元社長がプレゼントした双眼鏡の件とも関連し興味深い。

    U.S. Department of State, Daily Press Briefing, http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2014/01/219509.htm#DPRK

    関連して調べていたら、ロッドマンが金正恩した酒は、彼が立ち上げた「Bad Boys Vodka」というのがあり、そのボトルに彼とベストフレンドの絵をデザインしたもののようだ。特製ボトルは手に入らないにしても、ウォッカ自体は少なくとも米国では売っているようだ。

    Dennis Rodman's Bod Boy Vodka HP, http://rodmanvodka.com/

    贈り物を受け取り、ロッドマンに手を差し出す金正恩。ここでは両者、西洋的な握手をしている。片手で握手をしているということ以上に、金正恩の手の差し出し方が格好良い。
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    Source: KCTV, 2014/1/9放送

    『労働新聞』に書かれていた「彼は、敬愛する元帥様に対する敬慕の念を込めて歌を歌い観覧者を感動させた」の後で何を出すのか心待ちにしていたら、ナレーションとBGMが止められ、ロッドマンの歌がしばらく流された。そこまでやるとは思っていなかったので、吹き出してしまった。「to you」の部分で金正恩に手を差し出すロッドマン。
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    Source: KCTV, 2014/1/9放送

    過去記事の方も修正しておいたが、彼は「Happy Birthday Dear Marshal(元帥)」と言っている。Sky Newsの動画では「master」と聞こえたのだが聞き間違いだったようだ。

    ロッドマンの歌に会わせて手拍子を打つ朝鮮人民。だが、この歌は北朝鮮で歌われていないのか、手拍子はだいぶずれている。そもそも手拍子をする曲ではないのだが。
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    Source: KCTV, 2014/1/9放送

    過去記事に書いた電光掲示板の時計はゲーム時間であったようだ。1回戦の結果。
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    Source: KCTV, 2014/1/9放送

    CNNとのインタビュー時に持っていた葉巻を指に挟んで金正恩と熱く語るロッドマン。この場面で金正恩はタバコを持っていないが、その前の場面ではタバコを指に挟んでいた。
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    Source: KCTV, 2014/1/9放送

    ロッドマンの肩を叩きながら嬉しそうに何かを話しかける金正恩。
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    Source: KCTV, 2014/1/9放送

    ロッドマンと手を繋いで頭を下げているのは誰だろうか(「朴奉珠のようだ」と書いてあったが訂正)。この人が「国家体育指導委員会」委員長を引き継いだのであろうか。ロッドマンは帽子を脱ぐのを忘れていたが、この後慌てて脱いだ。
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    Source: KCTV, 2014/1/9放送

    <追記>、<追記2>
    コメントを頂いたのだが、手を繋いで立っているのは朴奉珠ではないようだ。別記事に掲載した『労働新聞』の写真を見るとこの人物の右横に座っているのが朴奉珠のように見えるがどうだろうか。体育省関係者であろうか。ロッドマンが謝罪したという別記事のソース記事の動画を見ると握手している人物の顔がはっきり分かるが、私には誰なのか分からない。

    「元帥様」はバスケットボールチームのために宴会を準備するのだろうか。

    「敬愛する金正恩元帥様が我が国と米国バスケットボール選手の競技を観覧された」:金正恩誕生日公式化か、金正恩交流評価、ロッドマンの歌も伝える、米国務省反応、猪木議員再訪朝予定 (2014年1月9日 「労働新聞」)

    ロッドマン訪朝は、対内メディアでは伝えないであろうという見立ては見事に外れてしまった。9日の「朝鮮中央通信」が金正恩がバスケットボールの試合を観覧したと伝えていたので、まさかと思って『労働新聞』を確認したところ、早々、1面と2面にロッドマンと談笑しながら試合を観戦する金正恩夫妻の写真などと共に記事が掲載されていた。

    金正恩は「米国バスケットボール選手の我が国訪問を歓迎され、今回の競技は両国人民間の理解を図る立派な契機となると仰った」とのこと、「両国人民間の理解」という表現が米朝関係を改善したいというシグナルなのかが注目される。昨夜(日本時間)の米国務省定例記者会見の様子はまだアップロードされていないが、当面は「(対話をしたいのなら、)約束を行動で履行してから」という反応以上は見られないであろう。

    北朝鮮がロッドマン訪朝をギリギリまで伝えなかったのは、対内的に公表するかどうか躊躇していたのではないだろうか。ところが、昨日記事にした7日(米国時間)のCNN番組での彼の受け答えを評価して公表に踏み切ったのかもしれない。ロッドマンがケニス・ベが「悪いことをした」というような発言をしたことを受けて、「悪いことをした」ケニス・ベの送還を米国との交渉材料に使う可能性がある。CNNで大々的に放送させて米国内の関心を喚起しておき、ケニス・ベを交渉の交換材料に持ち出せば、米国政府が「人道的」立場からその交渉に応じないのは困難になるはずである。その際、北朝鮮は交渉相手としてキング北朝鮮人権問題特使ではなく、「外交」を扱える人物を交渉相手として要求してくるのではないだろうか。

    一方、ロッドマンについては「敬愛する元帥様に再びお目にかかれて本当に嬉しくて涙が出ると言いながら、今回の競技を組織しのは、尊敬する元帥様の誕生日を祝賀するためであると語った」と同新聞は伝えている。これは、ロッドマンの言葉を引用しながらではあるものの、1月8日が金正恩の誕生日であることを北朝鮮が公式的に認めたことになる。誕生日についてはもう1カ所言及している部分があり「競技を前に発言をしたデニス・ロッドマンは、敬愛する元帥様の誕生日に際して朝鮮に来たと語りながら、在留期間、朝鮮人民が元帥様を尊敬しているということを感じた語った」と彼の訪朝目的が金正恩の誕生日を祝うことであると伝えている。

    今後、北朝鮮が1月8日をどのように扱っていくのかが注目されるが、「大元帥様たち」の誕生日を盛大に祝っておきながら、「元帥様」の誕生日をこれまで祝わなかったことについて何らかの説明がなされるであろう。その際の説明としては、「金正日が在命中に自分の銅像を建立させなかった」という儒教的謙虚さを強調した逸話と重複させ、「金正恩も在命中は誕生日を国家的行事として祝わない」とするのか、「金正日の3年の喪が明けたから2015年1月8日からは祝う」ということなどを言うのではないだろうか。ただ、誕生日という話になると、どうしても「お母さん問題」が出てくるので、この辺りも今年中に決着を付けようとしているのかもしれない。

    昨日の記事で、ロッドマンがHappy Birthdayを歌ったと書いたが、『労働新聞』の記事には「彼は、敬愛する元帥様に対する敬慕の念を込めて歌を歌い観覧者を感動させた」と書いている。「誕生日の歌」とは書かれていないが、いわゆるHappy Birthdayの歌を朝鮮人民も知っているのか、それを韓国でやっているように朝鮮語訳して歌っているのかは分からない。今後、「朝鮮中央TV」がこの様子をどこまで公開するのか、ロッドマンがこの歌を歌っている様子を流すのかが注目される。

    競技観覧には、朴奉珠夫妻、崔龍海夫妻、姜錫柱夫妻が同席している。朴奉珠と崔龍海が出席しているのは恒例としても、対米交渉の司令塔である姜錫柱副相も出席しているのが、上記のケニス・ベ問題とも関連し注目される。

    試合を観戦しながらロッドマンと談笑する金正恩。今回はコカ・コーラの缶は置かれていない。「資本主義的異色」への配慮かもしれないが、資本主義社会の中でも「異色」のロッドマンだけで十分である。
    金正恩とロッドマン
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은 원수님께서 우리 나라와 미국롱구선수들의 경기를 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01

    <追記>:コカコーラ
    北朝鮮におけるコカコーラについて別記事に記した。

    金正恩夫妻と共に試合を観戦する朴奉珠夫妻、崔龍海夫妻、姜錫柱夫妻。部下も夫人同伴で出席させているのは、金正恩が「西欧的に洗練されている」ことを訴えるためであろうか。ロッドマンがCNNとのインタビューで「家族を残して」と盛んに言っていたことと何か関連があるのだろうか。
    観戦者
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은 원수님께서 우리 나라와 미국롱구선수들의 경기를 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01

    競技については、Sky Newsを引用しながら昨日の記事に書いたが、『労働新聞』によると2回戦行われ、1回戦が米国NBA元選手チーム対北朝鮮フェップルチーム、2回戦が米朝選手を混合させた試合であったとのことである。結果は、NBA対フェップルが39対47で北朝鮮チームの勝ち、混合試合が63対54であったとのことである。
    試合の模様
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은 원수님께서 우리 나라와 미국롱구선수들의 경기를 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01

    金正恩に敬意を示すロッドマン。試合の模様を伝える写真の点数版の時計が試合の経過時間ではなく4時7分という時刻を表示しているのであれば、これは試合前の様子である(時計は3時47分頃)。
    敬意を示すロッドマン
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은 원수님께서 우리 나라와 미국롱구선수들의 경기를 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01

    そして記念写真
    記念写真
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은 원수님께서 우리 나라와 미국롱구선수들의 경기를 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01

    <追記>米国務省の反応
    8日(米国時間)開かれた国務省定例記者会見では、ロッドマン問題についての質疑応答が行われた。国務省報道官は「彼ら(ロッドマン一行)について分析やコメントをすることで、彼らに威厳を与えるつもりはない」とした上で、「我々は独自のチャンネルを持っており、北朝鮮と話をしている」とケニス・ベ問題解決は国務省が独自の方法で取り組んでいると述べている。

    また、昨日の記事に書いた米中関係樹立の契機となった「ピンポン外交」とロッドマンが言う「バスケットボール外交」の違いについて、「70年代に我々が中国との間で展開したピンポン外交では、中国が自発的な(あるいは意思のある)パートナーであったが、現在(北朝鮮との関係における)シナリオはそれと異なる」と性質の違いを述べ、「したがって、我々にはスポーツ外交計画はない」と断じている。

    米国の記者は、今回のロッドマン訪朝がケニス・ベ問題に悪影響を与えるのかと質問するが、報道官はそれについて何もコメントしない。上に書いたとおり、ロッドマン訪朝がケニス・ベ問題にどのような影響を及ぼすのかは、今後の北朝鮮の出方を見なければ判断できない。もし、現状で彼の帰国に向けた話し合いがある程度進んでいるのであれば、ロッドマン訪朝は悪影響を及ぼす可能性はあるが、報道官の話しぶりからは何らかの話し合いはあるものの全く進展がみられていないような感触を受ける。

    報道官はキング特使にケニス・ベ問題を扱ってもらうとし、北朝鮮が同特使との交渉を受け入れるのを待っていると述べている。

    米国政府は、北朝鮮に足下を見られないよう、外面的には「ロッドマンごとき道化が」というスタンスであるが、ロッドマン訪朝に関心を寄せていることは間違いない。昨日の記事に「スミスの方がまとも」と書いたが、北朝鮮の狙いは、まとめではないロッドマンの方が扱いやすかったということなのかもしれない。彼が米国政府にとって、まともではないので非常に扱いにくい人物というところまで計算に入れていた可能性もある。

    U.S. Department of State, Daily Press Briefing, http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2014/01/219481.htm#DPRK

    一方、猪木議員が13日から再訪朝をすると日本メディアが伝えていた。誰かが国家体育指導委員会委員長に既に指名されているのか、副委員長が代行しているのか、あるいはどう委員会自体が解散させられたのかが注目される。金正恩が党幹部と共に観戦したバスケットボールの試合に『労働新聞』に紹介された人物以外に誰が来ていたのか、これも今公開されている写真だけでは分からない。

    ロッドマン、金正恩に英語でBirthday Songを歌う (2014年1月8日 「Sky News」)

    コメントも頂いているのだが、米国系のメディアをチェックしていたら、ロッドマンが金正恩夫妻を前に英語でBirthday Songを歌い、北朝鮮チームとバスケットの試合を行ったようだ。動画を提供しているオリジナルソースはSky Newsの以下のURLである。

    Sky News, "Rodman In Birthday Song For BFF Kim Jong-Un", http://news.sky.com/story/1191904/rodman-in-birthday-song-for-bff-kim-jong-un

    ここにアップロードされている動画を見ると、ロッドマンは北朝鮮チームとの試合を前にBirthday Songを英語で歌っている。歌詞は以下のように聞こえる。<追記・修正>今、「朝鮮中央放送」で報道を見ていたら、ロッドマンの英語の歌を流した。ロッドマンは「Master」ではなく「Marshal(元帥)」と歌っている。

    Happy Birthday to you
    Happy Birthday to you
    Happy Birthday Dear Master Marshal
    Happy Birthday to you

    通常は"Dear James"などと名前が入る部分を"Dear Marshal"と歌っている。さすがに"Dear Jong-un"とは歌えなかったのか。彼は歌を歌った後にサングラスを外して慣れない様子で東洋式の挨拶を金正恩にしている。

    朝鮮人民が、いわゆるBirthday Songを知っているのか分からないが、会場からはロッドマンが歌っている間、手拍子が響いていた。なお、Sky Newsの動画には金正恩夫妻は一切映し出されない。

    試合は、ロッドマンチームが北朝鮮チームに敗れたとのことである。それが彼らの実力であったかどうかは分からないが、「元帥様」の誕生日なので北朝鮮チームに花を持たせたということは十分に考えられる。

    同ニュースによるとロッドマンは試合を前にして、「これは彼(金正恩)の誕生日のためであり、贈り物だ」、「これは私から世界への贈り物だ」、「私はその人が好きだ、その人は私の友達だ、永遠の友達だ」などと語ったという。CNNのインタビューでスミスが述べたように「偶然」ではなく、ロッドマン自身がこのゲームが金正恩への誕生日プレゼントであることを歌付きで認めたことになる。

    同ニュースのHPにはロッドマンが金正恩の白馬に乗っている写真も掲載されている。この写真は今回の訪問ではなく、ロッドマンが半袖を着ていることからして、昨年夏に訪問した時のもののように見える。

    北朝鮮メディアは依然としてロッドマン訪朝について一切伝えていない。しかし、バスケットボールの試合はロッドマンと共に北朝鮮を訪問した約50人と言われる米国人グループが参観しただけではなく、ビデオを見る限りでは少なからぬ朝鮮人民も参観したようだ。米国のカメラは金正恩夫妻が着席している方向の撮影を許されなかったようだが、複数の北朝鮮ものと思われるカメラが金正恩夫妻が座っている方向を撮影している。これが、単なる記録のためなのか、後日、何らかの形で「朝鮮記録映画」として使われるのかは分からない。

    いずれにせよ、北朝鮮では1月8日を金正恩の誕生日と公式的に公布していないので、朝鮮人民がBirthday Songを知っているか否かにかかわらず、この部分は公開しないであろう。しかし、ロッドマンに歌まで歌わせていることからすれば、対外的には半ば公に1月8日が金正恩の誕生日と認めたことになる。

    ロッドマンが試合前後に金正恩と会見したのかは明らかにされていないが、同ニュースが伝える試合後のロッドマンに対するインタビューでは、特にそのことを述べていない。

    今夜(日本時間)の米国務省定例記者会見でこの問題に関する質疑応答がされるであろうが、米国務省の「彼は米国政府の代表ではない」という回答が予想されるとはいえ、明朝読むのが楽しみである。

    「朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議常任委員会決定、代議員選挙を実施することについて」:3月9日任期どおりに選挙実施 (2014年1月8日 「労働新聞」)

    『労働新聞』に8日掲載された記事、「朝鮮民主主義人民共和国常任委員会決定第155号、朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議代議員選挙を実施することについて」によると「社会主義憲法第90条により最高人民会議第13期代議員選挙を2013年3月9日に実施する」ということである。前回の代議員選挙は2009年3月8日に実施されているので、「社会主義憲法」に規定された任期をきちんと守っての実施である。金日成死去の関係もあり、金正日時代にきちんと実施されていなかった代議員選挙を規定どおりに行うわけだが、「遵法」を重視する金正恩スタイルであろうか。

    『労働新聞』、「조선민주주의인민공화국 최고인민회의 상임위원회 결정」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-01-08-0004&chAction=L

    「偉人称賛の宝物庫、世界の自慢(13)」:共同通信元社長が金正恩に双眼鏡 (2012年4月12日 「労働新聞」HP)

    『労働新聞』HPに「馬息嶺スキー場」の写真が埋もれていたので、その他にもおもしろい写真はないのかと眺めていた。すると、金正日や金正恩に北朝鮮を訪問した著名人が贈呈したプレゼントを紹介する写真があった。「偉人称賛の宝物庫」という写真集なのだが、過去のものは削除されてしまい現在見られるのは12~14までである。プレゼントは訪問者の国の伝統工芸品や絵画などがほとんどだが、その13集の中に2012年4月に北朝鮮を訪問した山内豊彦共同通信社元社長が金正恩に伝達したとされる双眼鏡が出てくる。

    山内共同通信元社長が金正恩に伝達したとされる双眼鏡
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    Source: 『労働新聞』HP, http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2014-01-01-0044&chAction=L

    解説には、

    「敬愛する金正恩同志に日本の共同通信社社長石川聡が2012年4月12日に差し上げた贈り物である。贈り物を意味深い太陽節に際して我が国を訪問した日本の共同通信社前社長山内豊彦が持参し、朝鮮中央通信社を通して差し上げた。贈り物は石川聡社長が東京で最新型ということで購入した双眼鏡である。双眼鏡の長さは17.5cm、幅は14cm、高さは6cmである。」(敬称他、原文ママ)

    と書かれている。

    「東京で購入した」とされるこの双眼鏡であるが、調べてみるとNIKON製の8X42HG LDCFあるいは10X42HG LDCFのようだ。NIKONのpdf版カタログで調べると、形状が上の写真に最も近く、サイズがほぼ一致している。色は、カタログでは黒色であるが、上の写真はカーキ色っぽく見える。カタログ価格は前者が15万円、後者が16万円である。参照しているカタログは最新版なので、2012年当時は別のモデルがあったかもしれないが、同社のプレスリリースを確認した限りでは、このシリーズが2004年11月に発売されて以来、新製品は出ていないようである。

    NIKON双眼鏡カタログ、http://www.nikonvision.co.jp/products/dl/catalogue/Sport_Optics201308.pdf

    技術立国の日本なので、伝統工芸品でではなく、一流光学メーカNIKONの双眼鏡をプレゼントする意味は分かるが、当時既に実施されていた対北朝鮮全面禁輸措置との関係で問題はなかったのであろうか。

    以上、『労働新聞』HPに掲載されている内容に基づいてこの記事を書いている。その事実関係について共同通信社に問い合わせはしていないので、この点は十分に留意して頂きたい。

    ともあれ、「元帥様」はもっと良い双眼鏡をお持ちのようだ。
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    Source: 『労働新聞』HP、「人民軍部隊の火力打撃訓練を視察される敬愛する最高司令官金正恩同志 2013年10月」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2013-12-29-0006&chAction=L

    デニス・ロッドマン平壌からCNNに生出演:拘留されている米国人「何をやったか知っているのか?」、キャスターに激怒するロッドマン、対内的に非公開?、金正恩会見はない? (2014年1月7日 「CNN TV」)

    平壌訪問中のデニス・ロッドマンが米国CNN「New Day」のライブインタビューに応じた。「朝鮮中央通信」をはじめとした北朝鮮メディアは、現時点でロッドマン訪朝について一切伝えていない。「New DAy」のキャスター、クリス・クオモの狙いは北朝鮮に拘留されている韓国系米国人ケニス・ベについてロッドマンがどう考えているのか、さらに張成沢を処刑した「残忍な」金正恩の31歳の誕生日を祝うためにバスケットボールの試合をすることについてどう考えのかということをロッドマンから聞き出すということである。以下、インタビューの様子を紹介する。

    CNN, "Angry Dennis Rodman defends North Korea basketball game", http://edition.cnn.com/2014/01/07/world/asia/north-korea-dennis-rodman/

    ロッドマンは、同行した元バスケットボール選手らと共に会議室のような場所からインタビューに出演した。話をするのは、元NBAプレーヤーのチャールズ・スミスとロッドマンだけである。インタビューは冒頭でスミスが訪朝について説明をする。

    スミスによると、彼らは北朝鮮のオリンピック委員会からバスケットボール試合に関する招待状を受け取ったとのことである。そして、「我々の訪問は、政治についての話をするためではない。バスケットボール外交以外では、バスケットボールを通じて北朝鮮の人々と交流することだ」とその訪問目的を述べ、ケニス・ベ問題も含めた政治的な話については「北朝鮮のリーダーが我々のいうことを聞くとでも思うのですか」とクオモ(キャスター)に問いかけている。

    クオモが「ことはそんなに単純ではない」と切り返すとスミスは、「バスケットボールは我々にとってシンプルだ。我々の存在が議論を巻き起こしたのであれば謝罪するが、我々がしていることについては謝罪しない。我々は人々とバスケットボールを結びつけ、人々と人々を結びつけようとしているだけだ。」と答える。

    するとクオモは「それは分かっているが、バスケットボールの試合はつい最近叔父を処刑した支配者の誕生日プレゼントではないか。そして、拘留されているケニス・ベの家族や多くの米国人が彼について心配しているのだ」と切り返すと、スミスは「我々はバスケットボールを文化交流として使おうとしているだけだ。繰り返すが、我々は政治目的でここにいるのではない。バスケットボール試合の日は、偶然その日になっただけだ。今日、北朝鮮のバスケットボール選手と通訳を介して話をした際、彼らはプロ・バスケットボールについて、我々の暮らしについて、試合について質問してきた。我々はバスケットボール選手として国を代表しているのであり、我々が専門とするバスケットボールを通じて交流をしているだけだ。(北朝鮮の)ファンは、我々にリタイアしたのに、そして年齢も多いのに彼らよりバスケットボールが上手だと言っていた。そういうことを我々が(北朝鮮で)しているのであり、それを楽しんでいるのだ。」と答える。

    クオモは「それは分かっているし、その目的が達成されることを願っている。しかし、デニス(・ロッドマン)、あなたは金正恩に会ったらケイス・ベの家族の気持ちを伝えるつもりなのか。」と尋ねる。すると、その前から少しイライラしていた様子のロッドマンは、

    ロッドマン:「あなたはケニス・ベがこの国で何をしたのか分かっているのか?」
    クオモ:「何をしたんだ、言ってくれ」
    ロッドマン:「ケニス・ベがなぜ拘留されているのかお前が言ってみろ。俺はそのことについて言いたい。」
    クオモ:「北朝鮮は、拘留の理由を明らかにしていないぞ。」

    クオモが本当に知らないのか、ロッドマンを煽るために言っているのかは分からないが、北朝鮮は彼の罪状について国営メディアで伝えている。また、北朝鮮と外国関係がない米国の代理として北朝鮮当局と接触しているスウェーデン大使館にもこの点については説明しているはずである。ロッドマンは北朝鮮当局からケニス・ベについて話をしないように言われているのか話題をそらして、

    ロッドマン:「ここに自分の家族を米国に残した10人の仲間がいる。その人たちがスポーツを通じてこの国を助けようとしているんだ。」
    クオモ:「そのことは分かっている。」

    ここからロッドマンは激怒し始める。

    ロッドマン:「お前が何を分かっているかなど関係ねぇ。こいつらを見ろ。一つのことをするために敢えてここに来たんだぞ!」(と怒鳴る)
    クオモ:「デニス、彼ら(同行しているバスケ選手)をあなたの行動の言い分けや盾に使うなよ。」
    ロッドマン:「行動?行動だと!!!」
    クオモ:「デニス、あなたはケニス・ベが何か悪いことをしたような言い方をしたが、我々は彼が何をしたのだか分からないのだよ。デニス、彼らを言い分けの盾に使うなよ。」
    ロッドマン:「盾だと!!一つ言わせてくれ!世界の人々のために俺は一つのことをやっているだけだ。お前はマイクの前に座っているだけだろう。俺たちはここに来て一つのことをやっているんだ。俺たちは、暴言を受け入れるために米国に帰らなければならないんだ。お前は暴言を受け入れる必要もないだろう。でも、俺たちは受け入れなければならないんだ。いつかこのことはきっちりと片を付けよう。ここには10人の仲間がいる。俺たちは人々のために北朝鮮のドアを少しずつ開けようとしているだけだ。」

    ロッドマンの「家族を残して・・・」、「米国に帰らなければならないんだ」という発言はおもしろい。文脈をそのまま受け取れば「家族を残して」は「大変な苦労をして」、「米国に帰らなければならないんだ」は「良いことをしているのに、米国に帰れば責められる」ということになるが、北朝鮮当局から「変なことを言うと米国に帰れなくなりますよ」と言われているような気がしないでもない。

    その後、再びスミスが話し出し、北朝鮮には50人あまりの団体で来ていること、自分たちが政治目的で北朝鮮に来ているのではないことを繰り返す。そして、クオモが訪朝の成果が出ることを祈っていると述べて番組は終わる。

    50人の中にはCNNのクルーも含まれるのであろう。カメラを操作しているのはCNNのクルーだと思うが、ロッドマンが激怒する部分では彼がアップになっている。

    ロッドマン一行は今頃バスケットボールの試合をしているのかもしれない。彼の「生涯の友達(金正恩)」がその様子を会場で見ているかどうかは分からない。しかし、CNNのライブを見て彼はさぞかし喜んだであろう。対内的な宣伝には使っていないが、ロッドマンを対外的、特に米国に対する宣伝には十分に活用することが出来たからである。米国からおもしろい奴がやって来て、米国のニュース番組で北朝鮮について「肯定的」に騒ぎ立ててくれれば、北朝鮮の目的は十分に達成されたことになる。

    米国務省の定例記者会見でも、ロッドマン訪朝がケニス・ベ問題に与える影響について多くの質問が出されているが、国務省報道官は一貫して「彼は米国政府の代表ではない」と繰り返し、その影響についても言及していない。米国としては、政府の代表であるキング北朝鮮人権問題特使による北朝鮮との交渉を求めているが、昨年8月の訪朝予定がキャンセルされて以来、北朝鮮は彼の訪朝を許可していない。

    U.S. Department of State, Daily Press Briefing, http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2014/01/219433.htm#DPRK

    今回も金正恩はロッドマンと会わないか、会ってもメディアでは公開させないような気がする。ただし、あのロッドマンであるから、秘密会見をしたところで帰国後にテレビで話してしまうだろうから、会うことすらしない可能性が高い。というのは、張成沢事件の余韻が依然として残る中、「体育熱気」を取るのか「資本主義的異色風潮排除」を取るのかといえば後者であろう。金正恩は、ロッドマンは声を掛ければいつでも喜んでやってくることが分かったので、別の機会に彼を招請してバスケットボールの試合でもやらせれば良いと思っているのではないだろうか。

    上記の米国務省定例記者会見でもバスケットボール外交を米中国交正常化の契機となったピンポン外交になぞらえる質問が出されたが、国務省報道官はそれとは全く結びつけようとしていない。スポーツ交流をすること自体は良いことだと思うが、ロッドマン会見を見ていると何か違うような気がしてならない。

    それにしても、金正恩はなぜロッドマンを選んだのだろうか。知名度は低いのかもしれないが、横に座っているチャールズ・スミスの方がよほどまともな受け答えが出来ている。それが出来ないロッドマンの方が都合が良いのであろうか。

    「馬息嶺スキー場写真」:リフトは最低3基設置、カナダ製スノーモービル、スウェーデン製スノーマシン、ドイツ製圧雪車、安保理制裁の効果は?、中朝関係 (2013年1月6日 「労働新聞」HP)

    過去記事に「馬息嶺スキー場にリフトは1基しか設置されていない」というようなことを書いたが、6日に北朝鮮が公開したと思われる同スキー場の写真が大量に『労働新聞』HPにアップロードされていた。以下、これらの写真について紹介をして行く。

    まず、リフトであるが、写真で見る限り少なくとも3基はあるようだ。

    金正恩が乗ったリフト1
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    Source: 『労働新聞』、同新聞HPに2014.1.6に掲載された写真

    スロープの中心に設置されたリフト2(<追記>乗っている人の服装がなぜか同じであるし、もしかすると1のリフトが途中からコース中央を横切るようになっているのかもしれない。だとするとリフトは2基か。)
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    Source: 『労働新聞』、同新聞HPに2014.1.6に掲載された写真

    シートが赤い3人乗りリフト3
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    Source: 『労働新聞』、同新聞HPに2014.1.6に掲載された写真

    上と同じと思われる3人乗りリフト3の乗り場(高速リフトのようにも見える)
    2014-01-01-06-03.jpg
    Source: 『労働新聞』、同新聞HPに2014.1.6に掲載された写真

    次に、スノーモービルであるが、これがまた凄い。

    スノーモービルでスキー客を山頂に運ぶサービスも提供するのか。このスノーモービル、調べてみるとBombardier Recreational Products(BRP)というカナダ企業の製品である。北朝鮮が購入したのは2014年モデルとして紹介されているTUNDRA XTREMEで、同社のHPによると販売価格は10899米ドルとなっている。国連安保理制裁で規定された贅沢品のはずであるが、最新型を輸入し、これ見よがしに『労働新聞』HPで写真を公開するところなど心憎い。
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    Source: 『労働新聞』、同新聞HPに2014.1.6に掲載された写真

    北朝鮮が購入したと思われるスノーモービル
    tundra xtreme
    Source: BRP社のSKI-DOOスノーモービル紹介HPより, http://www.ski-doo.com/showroom/tundra/overview

    次に登場するのがスノーマシンである。このスノーマシンはスウェーデン企業areco製であることが判明している。インドのニュースメディアzeenewsがAFPを引用して伝えたところによると、同社の関係者は同社のスノーマシンが北朝鮮のスキー場で使われていることに驚きを表し「我々は直接輸出したことはない」と述べたという。中古品の可能性もあるとのことだが、北朝鮮が調達した経路を明らかにすることは困難だという。こちらもメーカーが分かるよう写真を公開するところなど心憎い。
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    Source: 『労働新聞』、同新聞HPに2014.1.6に掲載された写真

    areco社のHPより。「環境に優しい(An environment friendly classic)」というのが、「元帥様」の「馬息嶺スキー場」構想と重なっているところが心憎い。
    areco.jpg
    Source: areco HP, http://www.areco.com/en/areco-standard/fan-guns/areco-standard

    zeenews, "Swedish surprise at seeing snow cannon used in North Korea", http://zeenews.india.com/news/world/swedish-surprise-at-seeing-snow-cannon-used-in-north-korea_901345.html

    圧雪車であるが、『労働新聞』HPの写真には3台写っている。こちらは調べてみたところドイツのKässbohrer Geländefahrzeug AGという企業の圧雪車のようだ。全てのモデルを確認することはしなかったが、中央の赤い圧雪車はこの会社のPB100というモデルのようだ。
    2014-01-01-06-09.jpg
    Source: 『労働新聞』、同新聞HPに2014.1.6に掲載された写真

    Kässbohrer Geländefahrzeug AG社のHPより。同社が販売している中古のPB100の値段は73000ユーロ(約1040万円)である。残りの2台もほぼ同じ価格だとすると3台で3000万円以上の買い物になる。こちらも当然贅沢品として安保理制裁の対象品目となっているはずである。
    圧雪車
    Source: Kässbohrer Geländefahrzeug AG, http://www.pistenbully.com/en/products/pistenbully-100/scr.html

    『労働新聞』HPでは、「馬息嶺スキー場」の全景を2枚の写真で紹介している。これらの写真を見ると金正恩視察で写ったスロープと少し離れたところにもう一つ幅の広いスロープがあり、こちらに上で紹介した赤いシートの3人乗りリフトが設置されているように思われる。両スロープ間は林間コースで繋がっているのかもしれないが、見る限りでは独立したスキー場といった方が良いのかもしれない。スキー場間の移動の手段はどのように確保されているのであろうか。
    2014-01-01-06-01.jpg
    Source: 『労働新聞』、同新聞HPに2014.1.6に掲載された写真

    もう一枚の写真では、「馬息嶺ホテル」の前にたくさんのバスが止まっており、既に朝鮮人民(平壌市民?)がやって来てスキーを楽しんでいるようだ。
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    Source: 『労働新聞』、同新聞HPに2014.1.6に掲載された写真

    ともかくも、「馬息嶺スキー場」は思ったよりも完成度が高いようである。リフトが山頂にある小屋まで繋がっているのかは確認できなかったが、長いリフトが3基あれば十分にスキーを楽しめそうだ。

    しかし、安保理制裁をかわしてこれだけのものを調達してしまう北朝鮮も侮りがたい。中国経由で持ち込まれた可能性が高いが、そうだとすると第3回核実験後に悪化した中朝関係は回復し、これら設備の輸出あるいは通過を中国が許容したということであろう。それが金正恩特使として訪朝した崔龍海の功績なのか処刑された張成沢の功績なのかは分からないが、後者の可能性が高いような気がする。そうだとすると、彼に代わるほど中朝関係において実力を持つ人間がいるということなのだろうか。

    「敬愛する最高司令官金正恩同志が人民軍隊事業を現地指導、2013,11-12」:金正恩眼鏡 (2014年1月6日 「朝鮮中央TV」)

    まだ最後まで見ていないのだが、標記番組の中で「金正恩同志の指導の下、朝鮮人民軍第2回保衛軍幹部大会が開催された」という部分があった。そこに登場する金正恩は張成沢事件を暴露する「拡大会議」の際に使用していた眼鏡とは異なるものの、眼鏡を掛けている。「朝鮮中央通信」が配信した記事に添付された写真を見ると確かに眼鏡を掛けているが、全く気付いていなかった。しかし、こちらの「朝鮮記録映画」の映像でははっきりと確認できる。「保衛軍幹部大会」はで張成沢問題が討議されたのかは分からない。同大会については11月21日付けで「朝鮮中央通信」が報じている。

    「保衛軍幹部大会」で眼鏡を掛けた金正恩
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    Source: KCTV, 2014/1/6放送

    さらに、金正恩はこの大会での討議などを聞き「人民軍保衛機会幹部に貴重な教えを下さった」としている。この種の会議の壇上で金正恩が部下に直接指示をする場面はこれまでなかったと思う。やはり、この会議が張成沢事件と深いつながりがありそうだ。

    何か指示をする金正恩
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    Source: KCTV, 2014/1/6放送

    「朝鮮労働党は先軍革命の偉大な嚮導者である」:金日成銅像の顔、「先軍」しかし党主導、金正恩賛美、そして「太陽」に、デニスロッドマン再訪朝、8日に親善試合か (2014年1月6日 「労働新聞」)

    一つ前の記事に書いた「スローガン変更」と関連し、6日の『労働新聞』トップに掲載された論説を読んでみた。以下、それについてもコメントである。

    『労働新聞』、「조선로동당은 선군혁명의 위대한 향도자이다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01

    論説は「新たな主体100年代に朝鮮労働党は、将軍型の偉大な領導者であられる敬愛する金正恩同志を高く頂き、先軍革命を百勝の一途へ嚮導している」と始まる。「将軍様と全く同じ」という言い回しは、金正恩が最高司令官に就任した直後にしばしば使われたが、「将軍型」という言葉はあまり聞かなかったような気がする。金正恩は、当初「将軍様(金正日)と全く同じ」というイメージ戦略を用いたが、その後、髪型や帽子などでどちらかというと「首領様(金日成)」をイメージさせる戦略を用いてきた。記事にしようとしてしなかったのだが、「白頭山大国の全盛期」という「朝鮮記録映画」の中で「戦勝記念館」建設の逸話を紹介する部分があるが、「戦勝記念館」に建てられた若き日の金日成銅像は金日成自身よりも金正恩に似ているような気がしてならない。

    「朝鮮記録映画」ではまず、完成した金日成銅像を満足げに眺める金正恩を映し出し、
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    Source: 2014/1/4放送、「白頭山大国の全盛期」

    続けて、銅像を映した場面に切り替える。
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    Source: 2014/1/4放送、「白頭山大国の全盛期」

    あるはずもないのだが、一瞬、金正恩の銅像をついに建立したのかと思うほど、顔つきや髪型が金正恩に似ている。彼がお爺さんをコピーしようとしているのでそうなるのも当然かもしれないが、それでもお爺さんというよりも金正恩に近い気がしてならない。

    タイトルを失念したが、昨年「戦勝記念日」に放送された「朝鮮記録映画」に登場するこの銅像作製のモデルとされたと思われる時期の金日成と比較してみても、
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    Source: KCTV, 2013/7/27放送

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    Source: KCTV, 2013/7/27放送

    やはり孫に似ていると思うのは私だけであろうか。

    話がそれたが、お爺さんのイメージ路線で来た金正恩を「将軍型」とお父さんに戻すような表現を使っているのは、やはり「先軍」との結びつきを示すためであろう。

    そして、「我々の軍隊と人民は、偉大な大元帥様たちの思想と偉業を輝かしく継承している党の先軍革命領導の下、限りなく繁栄する祖国の蒼々たる明日を展望している」と論説のタイトルにあるように「先軍革命」こそが金日成・金正日の「思想と偉業」であり、それを継承してこそ「蒼々たる明日」が訪れると「先軍」の位置づけをしている。

    続けて、「革命の道で占める首領の絶対的地位と決定的役割を明確にし、軍隊を核心とし、革命隊伍の統一団結を非常に強化してきたことは、我が党が一瞬たりとも手放すことがなかった最大の重大事であった」と「先軍革命」の中心に「軍隊」が置かれていることについて「我が党(の)最大の重大事」とした上で、「銃隊革命の歴史、先軍革命団結の伝統を世紀と世紀を繋いで限りなく輝かしているところに、我が党の偉大性があり必勝不敗性がある」と「先軍」の重要性を強調している。

    さらに「今日の時代に、人民軍隊は団結の典型であ」り、「党の唯一的領導体系確立においても最高であり、最高司令官命令を決死貫徹することにおいても最高である」と「人民軍隊」こそが「唯一的領導体系確立」の「典型」であると軍隊を持ち上げている。過去記事で紹介した「錦繍山太陽宮殿」参拝に際し、軍部を二歩後ろに立たせたのとは対照的である感じもするが、記事を読み進むと「先軍」としつつも「党(金正恩)の軍隊」であることが強く暗示されている。

    これと関連して論説では張成沢事件にも触れており、「我々の軍隊と人民は、領導者の周りに一つの心、一つの意志で固く団結し、信念が揺らいだ者たち、面従腹背する者たちを断固として打ち破った」とし「我が党と異なる道を歩む者には、それが誰であれ革命の赤い剣で断固として処断する」としている。「それが誰であれ」というのを張成沢事件直後には党内の彼とその一味と読んだが、実は李英浩解任など郡部も含めた「それが誰であれ」なのかもしれない。そして、「革命の赤い剣」を振り下ろすことが出来るのは、金正恩しかいないと言いたいのであろう。

    また、「先軍の旗を高く掲げ、革命軍隊の先駆者的役割を最大に高めていく我が党の領導があるからこそ」とも書かれており、「先軍」であり、その「先駆者」が「革命軍隊」であろうとも、それを「領導」するのが「党」であることが強調されている。

    さらに、「軍民共同作戦が力強く展開される中、平壌市と国の至る所で社会主義文明国のあるべき姿を造り出すための戦闘が力強く展開され、我が祖国の面貌が1~2年間に根本的に一新された」と「1~2年」という金正恩就任後の期間に限定しつつ功績を称え、「人民軍隊を先軍革命の旗手として打ち立て、全国の人民が革命的軍人精神と軍人気質を学ぶよう導いた朝鮮労働党の領導によるもの」と「革命的軍人精神と軍人気質を学ぶ」という「先軍」精神でありながらも、「労働党の領導による」としている。

    続けて論説は、金正恩と先軍の関連性を説明する。「敬愛する元帥様は、久しい前から偉大な将軍様と先軍の道を共に歩まれ、革命偉業の継承者、後継者が兼ね備えなければならない思想理論的叡智と領導力、崇高な人民的風貌を最上の体得された。早くから革命の銃隊と深いつながりをもたれ、軍事に精通しておられ、霊将としての風格と資質を立派に持たれた白頭山型の将軍が敬愛する金正恩元帥様であられる」と「先軍」、「銃隊」、「軍事」、「霊将」という言葉を使いながら金正恩と「先軍」を結びつけている。

    また、金正恩の「継承性」の「正統性」についても触れ、「我が党において、領導継承の時期は、革命実践についての解答を待つ数多くの理論的問題が提起され、重大な時期であった。党の前には、偉大な大元帥様たちの領導の下で歩んできた誇らしい道のりを輝かしく総和し、新たな主体100年代の進軍をどのように前進させなければならないのかという時代的問いかけが提起されていた。まさに、このような時期に敬愛する元帥様は非凡な思想理論的叡智で我が党と革命が進むべき道を鮮明に明らかにして下さった」とし、継承問題を正統に解決できるのが「非凡な思想理論的叡智」を持つ金正恩以外にはいなかったと主張している。

    その「非凡な思想理論的叡智」について「敬愛する元帥様の叡智は、遠く今後を展望し、百勝の真理を明らかにして下さる非凡な先見の明であり、如何なる難しい問題も即時正される思想理論的叡智である。燃え上がる熱情で一貫した先取性、世の中の全ての科学の秘密を読破する多面性、一点を貫き、困難さを悟り、複雑な情勢の中で一つの結論を導き出す分析の鋭さと奥深さ、そしてあるものに留まらずいつも新しいものを求める創造性は、敬愛する元帥様の思想理論活動に一貫する根本特性である」と最大限に持ち上げている。それだけではなく、「明哲な軍事的戦略」、「社会主義文明国建設に関する独創的思想」、「主体思想に基礎を置く経済管理を我々式に発展させ」たなどと具体的な例を挙げている。「経済管理を我々式に発展させ」たについては、各経済部門について「元帥様が解答を下されない分野はない」と述べているだけで、具体的な施策には触れていない。モランボン楽団については「元帥様の領導により、モランボン楽団公演のような先取的で革新的な公演が」行われたとしている。そして、「千であれば千、万であれば万、革命と建設で提起される全ての問題を一つ残さず巧みに解決していく」としている。

    以上のように金正恩を持ち上げておき、「我々の軍隊と人民に革命をする方式を教えてくださり、我々全ての運命も未来も懐一つに抱き、限りなく光明な未来を開いてくださる敬愛する金正恩元帥様は先軍朝鮮の偉大な太陽であられる」とまとめている。「太陽」については過去記事にも書いたが、「光明な未来」と「太陽」、つまり金正日と金日成を組み合わせたような最大の形容で金正恩を称賛している。

    スローガンがいつから変わったのか分からないが、この論説を読むとどうやら関連がありそうだ。1月8日は北朝鮮のカレンダーを眺めると赤字(休日)になっており、公式化はしていないが金正恩の誕生日休日のようだ。北朝鮮が、この休日を人民にどのように説明しているのかは分からない。

    12月20日に平壌を訪問したロッドマンは、金正恩と会わずして帰国したが、1月8日に再び訪朝し平壌で親善バスケットボール試合をするとのことである。1月4日には米国側のバスケット選手を指名したとのことなので、日程的には既に今日ぐらいには平壌入りしていてもおかしくない。しかし、12月20日の訪問時同様、北朝鮮メディアはロッドマン訪朝を全く伝えておらず、現時点ではその扱いは前々回とは異なっている。今回も彼が「生涯の友人」と呼ぶ「元帥様」と一緒にゲームを観戦することになれば、北朝鮮官製メディアが大々的に報じるのであろうが、現時点ではその兆候は見られない。

    HUFF POST, "Dennis Rodman Names Team For North Korea Exhibition That Includes Former NBA All-Stars" quoting AP, http://www.huffingtonpost.com/2014/01/04/dennis-rodman-team-north-korea-nba-players_n_4542250.html

    <追記>
    「今年の新年の辞に提示された課業貫徹のための平壌市群衆大会開催」という番組を6日午後「朝鮮中央TV」が放送した。この種の番組が昨年も放送されたのかは今すぐ確認できないが、今日の番組を見る限りではタイトルのとおり金正恩色で埋め尽くされている。これまでのこの種の集会では、少なからず「大元帥様たち」に触れる時間が多かったが、今日の「群衆大会」では「金日成-金正日主義」というプラカードこそあれ、そこで叫ばれるスローガンはほとんど金正恩に関するものばかりであった。また、「群衆示威(パレード)」で演奏される曲目も「パルコルム」から始まり、「金正恩将軍を体で死守しよう」、「我々はあなたしか知らない」など金正恩関連の曲目が繰り返し演奏されていた。「群衆大会」の趣旨は分かるが、あまりにも「大元帥様たち」を疎外した感じがするがどうなのだろうか。

    「偉大な金日成-金正日主義万歳! 我が党と人民の最高領導者金正恩同志万歳!」:『労働新聞』スローガン変更、「唯一的領導体系」強化か (2014年1月6日 「労働新聞」)

    『労働新聞』1面上部のスローガンが変わっている。同新聞は12月31日ダウンロードしたのが最後なので、1月1日以降、今日までのどの時点で変更されたのか確認できないが、2013年12月31日の「偉大な金日成同志と金正日同志の革命思想で徹底して武装しよう!偉大な金正恩同志に従い最後の勝利に向けて前進!」から「偉大な金日成-金正日主義万歳! 我が党と人民の最高領導者金正恩同志万歳!」と変更になっている。

    金日成と金正日を「人の思想」から「主義」に、金正恩を「最高領導者」に変更することで金正恩の権威向上と「唯一的領導体系」強化を狙ったものと思われる。

    実は、1月6日付け同新聞紙面トップの「朝鮮労働党は先軍革命の偉大な嚮導者だ」という論説を読もうと思いこの変更に気付いたのであるが、もし今日からの変更であれば、この社説と何らかの関係があるのかもしれない。社説を読んだ上で追記をすることにする。

    1月1日~5日の期間、この部分がどうなっているかお分かりの方には情報提供をお願いします。

    <追記>
    本件に関して、大変貴重かつ詳細なコメントを頂いた。頂いたコメントによると、「重要な日」には2012年から「最高領導者金正恩同志万歳!」を使っていたということで、今回が初めてではないとのことである。ただし、1月6日が「重要な日」ではないにもかかわらず、こちらのスローガンを使ったのは異例かもしれないとのことである。1月7日(今日)の『労働新聞』は「最後の勝利に向かって前進!」に戻っている。本記事の内容以上に詳細かつ重要なコメントなので、是非ともコメントをクリックしてご一読頂きたい。

    平壌訪問中の朝鮮総連関係者が金正恩「新年の辞」にコメント (2014年1月3日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」では、金正恩の「新年の辞」を受けて、党関係者、軍人、工場労働者、農場員などが決意表明をする場面を報道番組などで紹介している。総連関連では、平壌訪問中の教育関係者など3名が取材を受けて決意表明をしている。

    ソン・グンハク総連中央常任委員会教育局長は、次のように述べている。

    「私は、敬愛する金正恩元帥様の限りない感動の中で拝聴しました。敬愛する元帥様の高貴な映像を拝見しながら、我々の主体革命偉業が必勝不敗であるという固い信念を改めて確信しました。昨年、我々、総連幹部と在日同胞たちは、敬愛する金正恩元帥様の新年の辞と許宗萬議長同志宛に送って下さった初めての新年祝電を高く頂き、外国の困難な環境の中でも、総連組織を盤石にし、在日朝鮮人運動を大きく発展させることができました。私は新年の辞を高く頂き、在日朝鮮人運動の新たな全盛期をもたらします。敬愛する元帥様お一人だけを信じ、元帥様を団結の中心、領導の中心としてさらに高く頂き、総連組織を一層確固たるものとし、在日同胞を敬愛する元帥様に忠誠を尽くす隊伍としていきます。」

    ソン・グンハク教育局長
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    Source: KCTV, 2013/1/3放送

    金ユンソン大阪朝鮮高級学校校長は、次のように述べている。

    「敬愛する金正恩元帥様の新年の辞をいただき、新たな力と勇気が強まりました。我々、第28次在日朝鮮学生少年芸術団のメンバーが祖国の地を踏んでから1ヶ月が過ぎます。その間に我々は、母なる祖国が我々在日同胞を一家族として抱いてくれる暖かい家庭であり、我々の祖国が若い気性で未来に向かって邁進する幸福の楽園であるということをはっきりと見ました。今回の新年の辞で、敬愛する金正恩元帥様は農業部門、建設部門、科学・技術部門の烽火を固守して進んでいかなければならないと教えてくださったのですが、この祖国訪問の期間、日々変貌する祖国の姿を見ながら、我々は多くのことを感じました。祖国解放戦争勝利記念館、銀河科学者通り、ムンス・ウォーターパークをはじめとした多くの建築物が最上・最高の水準で建設されていたではないですか。もちろん、これらの建築物が世界的水準で本当に素晴らしく建設されたということも大変喜ばしいことですが、そこに敬愛する元帥様の偉大な祖国愛、人民愛、後代と未来愛の偉大な禍福が込められていることが、さらに感動的でした。私は日々変貌する姿を見ながら、父なる元帥様を頂いたので、我々の祖国が大元帥様たちの遺訓が毎日実現されていくことを私は確信しました。私はいつでも外国の地にいながらも、ひたすら金正恩元帥様だけを信じて従い、その方に従い最後まで進んでいくという決意をしました。今後、総連の民族教育を担当する幹部として教育で主体を確立し、学生をひたすら領導者と祖国をいただく、強固な人材として育て、献身していきます。」

    金ユンソン校長(右側の男性)
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    Source: KCTV, 2013/1/3放送

    崔インア在日朝鮮青年同盟中央常任委員会部員は、次のように述べている。

    「今年は、新年の辞にあるように偉大な首領様が祖国統一の歴史的文献に最後の親筆を残されてから20周年です。私は、信念の辞を読みながら偉大な首領、金日成大元帥様と偉大な領導者金正日大元帥様の崇高な遺訓である祖国統一を成し遂げることにおいて、今年が重要な局面となり突破口を開くことが出来るという確固とした信念を得ました。敬愛する金正恩元帥様が、去る共和国創建65周年にあたり祝賀文を送って下さったのですが、そこで敬愛する大元帥様たちの崇高な遺訓どおりに総連を組織・思想的に強固にし、一生懸命団結を強化し、強盛国家建設と祖国統一偉業実現のために特色を持って貢献するであろうと教えてくださりました。私は、外国の地にいますが、元帥様が祖国統一の主体は民族同士しなければならないとお話になったように、金日成民族、金正日朝鮮の一人のメンバーとして敬愛する金正恩元帥様だけを最後まで信じて従い、日本の全ての朝鮮青年を広範に結びつけ、祖国統一運動に積極的に取り組んでいきます。」

    崔インア部員
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    Source: KCTV, 2013/1/3放送

    朝鮮語は訪朝期間が長いからか、金校長が一番上手い。やはり、若い崔部員は日本語のアクセントが強い朝鮮語を話している。朝鮮人民同様、彼らも原稿を暗記した上で話しているのであろうが、その内容についてどのように考えているのかは、彼らにしか分からない。

    「敬愛する金正恩同志が新年2014年にあたり錦繍山太陽宮殿を訪問された 2014.1.1」:朴奉珠の握手、軍部が一歩引き下がるポジション、金正恩の表情、金敬姫 (2014年1月2日 「朝鮮中央TV」)

    金正恩一行が「錦繍山太陽宮殿」に詣でた様子を「朝鮮中央TV」が2日伝えた。参拝のパターンは昨年12月の金正日追悼の時のパターンと同じである。「太陽宮殿」前に整列した幹部、そこに金正恩と夫人李雪主が登場する。その後、金正恩が幹部と握手をするが、やはり朴奉珠は片手を出す癖があるようだ。金正恩との握手の際片手を差し出し、それから左手を添えている。李雪主との握手の際には、両方の手が前にあったためか、初めから両手で握手をしている。

    朴奉珠と金正恩との握手
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    Source: KCTV, 2014/1/2放送

    朴奉珠と李雪主の握手
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    Source: KCTV, 2014/1/2放送

    続いて赤い絨毯が敷かれた階段を金正恩・李雪主夫妻が先頭に立ち登る。今回は腕組みはしていないようだ。
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    Source: KCTV, 2014/1/2放送

    その後、花輪献納が行われ、参拝をする。金正日2周期参拝では、金正日が参拝ラインに、李雪主が一歩下がり、幹部はその後ろに並んでいた。ところが、今回は金正恩と金永南・朴奉珠がほぼ同じラインに、李雪主が一歩後ろに、もう一歩引き下がり党幹部が、そしてさらにもう一歩引き下がり軍幹部が並んでいる。金永南と朴奉珠を同列に並べているのは、彼が張成沢の座を引き継いだということなのだろう。やはり、張成沢事件は軍部と党の対立ではなく、復活した朴奉珠と張成沢の争いが根底にあったのかもしれない。しかし、軍部を党の第二陣より後ろに立たせた意図は何なのだろうか。特に、軍人の扱いとはいえ、崔龍海もまとめて後ろに立たせたというところが興味深い。

    <追記>
    もしかすると、案外深刻な金正恩の下での権力闘争が発生しているのかもしれない。それが軍部を前に出したり引っ込めたり、そして金正恩の険しい顔に繋がっているという可能性もある。過去記事に書いたかどうか記憶がないが、私は金敬姫がこの辺りのバランサーの役割を担っていたと考えていた。それが金正恩にとってはプラスでもありマイナスでもあるので、過去記事では金敬姫が「横枝切り」の対象になったのではないかと予想した。その金敬姫、確かに張成沢と共に表面上は処断されていないが、バランサーの役割から外され、事実上の隠遁に追い込まれた可能性はある。

    金正恩の右横が金永南、その隣が朴奉珠
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    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은동지께서 새해 2014년에 즈음하여 금수산태양궁전을 찾으시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-01-02-0001&chAction=D

    金日成・金正日銅像参拝後、記念館内を歩く一行であるが、今回はその様子は詳しく伝えられていない。ただ、金正恩は目を見開いて厳しい表情で何かを指示している。

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    Source: KCTV, 2014/1/2放送

    金敬姫はこの場に現れなかった。しかし、1月1日に放送された「白頭山大国の全盛期」という「朝鮮記録映画」の中で、万景台革命学院に建立された金日成・金正日銅像の除幕式において金正恩が金敬姫と談笑する場面が出てくる。過去の映像ではあるが、12月15日に『労働新聞』に掲載された金国泰国葬委員会の名簿に登場して以来の登場である。

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    Source: 2014/1/1放送、「白頭山大国の全盛期」

    「2014年 新年の辞」:宗派打倒が冒頭に (2014年1月1日 「労働新聞」)

    金正恩による2014年「新年の辞」が1日9時から「朝鮮中央TV」で放送された。今日の放送開始は8時からで音楽や詩、「新年の辞」予告に続いて9時から放送があった。

    入退場、演説の初めと終わりの短い時間を除いては、労働党庁舎の静止画が映し出されていた。昨年同様、録音されていたと思われる拍手が挿入されていた。昼から再放送がされている。演説後、『労働新聞』の更新が行われ、「新年の辞」が掲載された。

    以下、重要と思われる部分のみ抄訳しておく。

    「新年の辞」では、まず「大元帥様」に敬意を示し、人民と軍人、そして海外同胞に新年の挨拶をする。

    続けて、「党内に潜んでいた宗派汚物を除去するという断固たる措置を取った」と張成沢事件解決の成果を強調する。加えて、「自衛的国防力を強化し、帝国主義者たちとの激しい対決戦で大きな勝利を達しした」と昨年3、4月に展開された米国との「全面対決戦」での勝利を強調している。

    次に昨年の成果として「困難で複雑な環境の中でも軍隊と人民が力を合わせて経済強国建設と人民生活向上のための闘争で輝かしい成果を達成した」ことを挙げている。また、「元帥様」の「呼びかけ」を受けて人民軍人と建設者が「マシンリョン速度を創造」し、「短期間に労働党時代の創造物を立派に打ち建て」たことを評価している。30日に放送された2013年を振り返るというような内容の番組でも「短期間に」が強調されており、「労働党時代の創造物」の建設について紹介しながら、それらが「何か月」で完成したということを強調していた。

    「セポ台地建設」については、年度内完成はなかったが、「新年の辞」では「難関を勝ち抜き、自然を切り開き党の偉大な構想を前倒しで実現できる突破口を開いた」と評価している。「セポ台地建設」についても、30日に「特集番組」を放送していたが、こちらは広大であるばかりか、厳しい建設条件のように見えた。しかし、管理事務所などいくつかの建物はすでに完成しており、春季に工事が本格的に再開すれば、夏までには完成するのではないだろうか。工事現場には「セポ速度」という看板も建てられていたが、残念ながら「マシンリョン速度」のように全国的なスローガンとしては使われていない。「セポ台地建設」を紹介するこの「特別番組」は、後日記事にしたいと思っている。

    次の項目は「体育強国建設構想」である。「国家体育指導委員会委員長」は処刑されてしまったが、それは「体育強国建設」に影響を与えていないようだ。「新年の辞」でも「体育人は、国際競技で金メダルにより祖国の栄誉を輝かせた」と評価している。「金メダル」についても別の年末「特別番組」の中で選手を登場させながら振り返っていた。

    「全面的12年制義務教育」については、「実施に向けた準備が成功裏に推進され」たとしており、昨年の段階では依然として「全面」には至っていないようである。

    音楽については、「音楽芸術部門で、時代の名曲が多く創作され」と年末に連続して出された金正恩称賛ソングを評価している。

    <追記>
    1月1日に放送された「<朝鮮記録映画>白頭山大国の全盛期」という2013年の金正恩の活躍を紹介する番組の中で、彼が功勲国家合唱団をステージの上で指導している場面が紹介されている。これまで、公演終了後に新たな「課業」を与える場面は紹介されたが、オンステージでの紹介場面は初めてのはずである。

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    Source: KCTV, 2014/1/1放送、「白頭山大国の全盛期」

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    Source: KCTV, 2014/1/1放送、「白頭山大国の全盛期」

    金正恩は「同志たち!」と呼びかけ、「新年、2014年は社会主義強盛国家建設の全ての前線で新たな飛躍の日の嵐を力強く巻き起こし、先軍朝鮮の繁栄期を切り開く荘厳な闘争の年、偉大な変革の年です」と述べている。「闘争」については「人民の美しい理想と夢を前倒しで実現するための誇り高い闘争であり、栄光的な朝鮮労働党創建70周年を輝かしく装飾する大祝典場につながる」としているが、「変革」については具体的な言及はない。


    「革新の烽火」は「農業部門と建設部門、科学技術部門が前面」に立って進むとしており、その中でも農業は「金日成同志が社会主義農村問題に関するテーゼを発表されてから50周年となる意味深い年」ということもあり、「主打撃方向」としている。軽工業に関する言及はあるものの「人民生活向上につながる軽工業に大きな力を傾注しなければならない」とだけ述べており、トーンダウンしているようだ。

    昨年の「新年の辞」にはなかったと思うのだが、今年は「節約闘争」という言葉が出ている。「節約」を人民生活が向上し、その余裕から浪費が増えているので「節約」を求めているのか、それとも逆に供給が逼迫しているので「節約」を求めているのか分からない。もちろん、人民生活レベルの「節約」ではなく、工場などでの資材浪費を戒めるためなのかもしれない。

    経済に対していは「国家の統一的指導を強化する」とする一方で「企業の責任性と創造・発想性を高める」としている。これは中央の統制を強化するとも、企業の自律性を高めるとも読める。張成沢事件の際に、経済運営は「内閣中心」といっているので、それを前提としつつも、つまり宗派が勝手なことをしないようにしつつも、企業の自律性を高めていくということであろうか。

    「国防力強化は、国事中の国事であ」るとしている。国防工業については、「強力化、無人化、知能化、精密化した我々式の現代的武装装備をさらに多く作る」としているが、核兵器については触れていない。中国をこれ以上刺激しないための配慮であろうか。

    思想については「唯一的領導体系を徹底して確立」するとし、張成沢事件以来強く言われている「偉大な金日成同志、金正日同志と我々の党以外、誰も知らないという確固たる信念を持ち、党の思想と意図どおりにだけ思考し、行動しなければならない」としている。そして、「我々の制度を蝕む異色な思想や退廃的な風潮を掃討するための闘争を強力に繰り広げ」るとしている。それと関連して「革命闘争と建設事業のすべての分野で革命的規律と秩序を厳格に打ち立てなければならない」としている。そのために「すべての部門、全ての単位で党の政策と方針、国家の法と決定指示を徹底して執行」しなければならないとしている。

    「祖国統一」については、「南北関係問題を外部に持ち出して『国際共調』を請託することは、民族の運命を外勢に委ねてしまう愚かな事大売国行為である」と朴槿恵がヨーロッパなどを歴訪して核問題解決のための協力を依頼したことを実名をげることなく批判している。

    また、「この地で戦争が再び勃発すれば、それはとてつもない核被害をもたらし、米国も決して無事ではいられない」と暗に「銀河3-2号」発射成功で自信をつけたミサイル能力を誇示している。

    しかし、「南北間の関係改善のための雰囲気を作らなければならない」とし「我々は民族を重視し、統一を願う人であれば、それが誰であれ過去を問わず共に進んでいく」と述べ、朴槿恵政権も態度を改めれば話し合いの対象からは排除しないことを暗示している。

    その上で、朝鮮半島情勢が米国の「敵対視政策」により依然として厳しいという認識を示し、「我々は、決して傍観することはなく、強力な自衛的力で国家の自主権と平和を守護」するとし、「強力な自衛的力」という「核兵器」を指す言葉を使いながら、現状では核は放棄しないという姿勢を明確にしている。

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    『労働新聞』、「신년사 김 정 은」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-01-01-0001&chAction=L
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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