11月1日、全国情報化成果展覧会2019が開幕した。2日の「朝鮮中央TV」の「20時報道」でも「開幕式」の様子を報じていたが、展示物については見せず、展示会場の全景を写しただけだった。

Source: KCTV, 2019/11/02
「成果」なるものを見たかったのだが、この報道では見ることができなかった。例年、この種の展覧会報道ではブースの様子を大きく見せるのに見せなかったので、制裁や中国との関係で見せにくいものが展示されているからではないかと思っていた。
そうしたら、5日、uriminzokkiriにもう少しだけブースの様子が分かる動画が掲載された。しかし、これもチラ見をさせるだけで、動画を止めなければ何が何だかよく分からない。しかし、動画を止めてみると、色々とおもしろい「成果」を発見することができる。
「赤い星」の新バージョンが3種。左から「赤い星」4.0.2「仮想化システム」、「赤い星」4.0.5「サーバー用システム」、「赤い星」4.0.5「ユーザー用システム」。それぞれの用途に対応したOSなのか、アプリケーションなのかはよく分からないが、「仮想化システム」だけバージョンが異なる。「仮想化システム」と「サーバー用システム」は「金日成総合大学赤い星研究所」が出展しており、「ユーザー用システム」は「赤い星研究所」が出展しているところから、「ユーザー用システム」以外は商用化されていないのかもしれない。

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
3Dモーション・キャプチャー
3D動画編集及び制作で最も手間がかかるアニメ化作業を20個の3D高性能カメラと専用サーバーを利用し、造形と運動の正確さとダイナミックさを保障できる。
利用分野
3D映画制作、スポーツ、舞踊をはじめとした様々な運動を3D画像処理による動画編集とプログラム制作に効率的に利用する。
実物動作パラレル処理機

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
光復地区商業センター統合サービスシステム

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
「科学で飛躍する教育で未来を保証しよう!」
「朝(아침)」、左「科学技術普及室閲覧機」、右「電子黒板、左(一体式)、右(赤外線式)」

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
「朝コンピューター合営会社」
テレビ画面の文字「朝」、「自強力」

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
「自強力」などとさりげなく書くところなど北朝鮮的だが、
「楽園」
左の黒い広告の「デジタルも今となっては過去・・・コンピューター映画と接続する楽園、知能型(スマート)テレビ」などのキャッチコピーは西側でも使える。
右の白い広告の「2個の(判読不能)楽園、もう一つ+」、「もう一つ+」されたのは、何かの入力端子のようだが、画像からは何か分からない。今更、アナログビデオ端子をを増やしたところで自慢にならないし、北朝鮮の放送システムでは地上波と衛星波のアンテナ端子は不要だし。もちろん、「もう一つ+」が衛星放送受信用アンテナ端子ならば画期的なことである。

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
ズームインした部分では「アンテナ」とも読めるが、どうなのだろうか。

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
「青い空、新型のスマートフォンS2」、「これよりも薄くて軽いスマートフォンがありますか?」、「ユーザーにとっての便利さ+(判読不能)、<青い空>2.0」、「衝撃に対する強い(判読不能)」、「多国語翻訳機」

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
「逓信省、完全IP化、通信網のブロードバンド化、大容量、高速のブロードバンドネット」

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
「金策工業総合大学」、「多国語機械翻訳プログラム、復興、外国文科学技術資料を朝鮮語に翻訳するプログラム」、英中露日を朝鮮語に翻訳するプログラム。ネット翻訳が普及する前の日本にもこの種のスタンドアローン・アプリはたくさんあった。google翻訳が使えない北朝鮮では、まだまだ有効なのだろう。もしかすると、北朝鮮の国内ネット上で使えるようなシステムなのかもしれないが、この画面だけではよく分からない。

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
「朝鮮中央TV」などでは、パソコンメーカーのロゴにモザイクを入れることが多いが、このシーンではTOSHIBAがはっきり見えている。

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
「コンピューターウィルスワクチンプログラム<すき櫛>」。一般人民は海外のネットに接続できない北朝鮮で、こんなものが必要なのと思われるが、北朝鮮国内でもウィルス被害が出ているのかもしれない。朝鮮人がウィルスを作っているのか、海外から感染したソフトウェアを持ち込んだ結果なのかは分からないが、これには驚いた。後ろのボードには「(判読不能)及び保護システム」とか「<大同江>情報検索システム」とか書かれているので、中国の「万里の長城」のような有害情報接続制限システムを構築し、さらに「百度」のような情報検索システムと組み合わせて、海外のネットへ接続できる人民の範囲の拡大を考えているのかもしれない。だとすれば、これも画期的なことだ。

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
「知能型テレビ<小白水>」、「三池淵」の製品で、子供用のパッド型PCのようだ。日本だと、犬の顔の部分がアンパンマンになっていそうな製品。

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
「平壌啓明技術開発所」の「スマートフォン及びパッド・コンピュータープログラム、シンギ(신기)」。はじめに見たときは「シンギ」と読めず、「SDI(Strategic Defense Initiative)」か何かだと思った。左の戦車が出ているゲームは「無敵タンク2019」。オンラインゲームなのかスタンドアローンのゲームなのかは分からない。戦車ゲームの背景のボードには、またウィルス対策ソフトらしき説明が出ており、「ワクチン自制保護機能、ウィルスにより変更されたシステム回復機能、常時監視機能と予約検査機能、動作環境<赤い星>OS2.0 3.0」と書かれている。複数の会社がウィルス対策ソフトを出していることからしても、北朝鮮でPCウィルス汚染が拡散していることが推測される。「シンギ」HPのurlも書かれているが、モニターの影になっており見えない(どのみち、日本からは接続できないだろうが)。

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
「平壌第1百貨店」統合経営情報システム、商品管理システムのようだがよく分からない。

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
「切符予約、販売サービスシステム」
「使命:統合的な切符予約販売システム構築、切符予約及び販売サービスの情報化実現、国家資料通信網と移動通信網で切符予約を行う」
「機能:映画、芸術公演、体育競技観覧日程閲覧及び予約、各種切符予約情報サービスを規格化、標準化し統合管理支援、切符予約情報の統計及び分析、電子決済機能」
「効果:パソコンやスマホを利用して各種のサービス日程を閲覧、時間と場所に関係なく切符予約、切符予約及び販売業務の現代化、情報化を実現」

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
飛行機の切符もと思ってしまう看板だが、映画や公演、スポーツ競技の切符のネット予約システムのようだ。平壌では、サーカス公演と歌劇公演を観覧したが、これらの公演があるのかないのか、観覧できるのかどうか、切符を買えるのかどうかなど、案内員同志がいちいち旅行社に電話をして確認させていた。私は音楽公演を希望していたのだが、残念ながら音楽公演はなかった。党創建記念日の10月10日前後には多くの音楽公演が開催され、「朝鮮中央TV」でも公演案内を放送していたが、残念ながら建国節にはそうした公演はなかったようだ。案内員に切符を見せてもらうのを忘れてしまったが、席番号が指定された切符を持っていたようだ。このシステムが稼働するようになれば、案内員同志も自分のスマホで検索、予約ができるようになるのだろう。
「大衆映画サービス実現方案」、「方案」なので方法の提示にとどまるが、既存の「マンバン」による映画配信サービスを拡大し、「生活の友」、「木蓮」、「サムフン」などのサービスを利用して映画視聴を可能にしようということのようだ。

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
「ネナラ(私の国)電子百貨店」、「<信用>電子支払いシステム、<響き(ウルリム)>電子決済中継システムを利用した決済実現。<天星(チョンソン、判読不能)>カードによる直接決済、決算機能による自動的な販売、公正性、透明性、正確性が保証されている電子決済実現」
「販売単位が管理する<ネナラ電子百貨店>」、「国家網、銀行、パソコン画面」
上で見たように、「百貨店」などの大規模小売店がネット上で商品を販売しているケースはこれまでも確認できていたが、「ネナラ電子百貨店」は、イメージとしては中国の「淘宝(タオバオ)」に近いのかもしれない。もちろん、中国のように個人がネット上で販売をするようになるには時間がかかろうが、「単位」が参入し、「電子決済」が可能になれば、市場化は拡大する。特に、地方の「単位」が裕福な平壌市民に商品を売れるようになれば、地方経済を豊かにする契機にもなる。しかし、北朝鮮は地域毎にワンセットで経済パッケージが形成されており(「首領様」の政策)、それに加えて道路や鉄道など、流通インフラが脆弱なので、ネット環境がいくら整備されても、現実的には不可能となる。中国のやり方を学ぶのであれば、ネット環境の整備と同時に地方と連結する道路や鉄道の整備が必要となるが、「奉仕者」と「建設軍人」だけでは限界があろう。

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
スマホを取り付けて回転する便利グッズ。どこが便利なのかは今一つ分からない。

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
「自分の地に足をつけ、目では世界を見よう!」

Source: uriminzokkiri, 2019/11/05
平壌では、平壌国際空港の売店でスマホやパソコンが売られているのを見た。
一応、日本語字幕付き。
Source: uriminzokkiri, 2019/11/05