「全党、全国、全人民が総動員され、今年の戦闘を輝かしく続けよう」(2012年9月28日 「労働新聞」)
昨夜の「20時報道」を見ていたら、「1970年代のように」という言葉が何回も使われた。明らかにスローガンとして使われているようであったので、昨日の「労働新聞」の記事を見たらやはり「社説」でこの言葉が繰り返し使われている。
「労働新聞」記事:
http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-09-28-0001&chAction=D
1970年代は、北朝鮮経済が依然として順調な時期であった。「労働新聞」の社説の主張は、要約すれば「70年代のような気概で年末までに経済建設を推進しよう」ということである。70年代は金日成時代ではあるが、金正日書記(当時)の提唱で「三大革命赤旗獲得運動」が始められた時期でもある。北朝鮮がここで「1970年代」を持ち出してきたのは、金正恩時代の(少なくとも1970年代の水準への)経済立て直しを、「先軍」に偏重した金正日さんの経済政策の総体的な失敗を否定することなく、という目的ではないだろうか。
というのは、私は、この記事を読んだときにすぐさま「金日成時代」と「金正恩時代」を連結するための作業かと考えた。もちろん、そういう側面が強いのであろうが、「労働新聞」の記事では巧妙に金正日さんも取り込んでいる。例えば「1970年代は、主体革命偉業の継承完成のための闘争で特出した意義を持つ偉大な転換の年代、全国に創造と革新の風火が力強く吹き荒れた激動の年代として我が党の歴史として記録されている。偉大な将軍様を党と革命の陣頭に高く頂いた我が軍隊と人民の闘争気勢は、実に大きなものであった」とし、金日成時代であるにもかかわらず、70年代の経済発展の成果が将軍様、つまり金正日さんによるものであるという論を展開している。そして、上述の「三大革命赤旗獲得運動」という言葉は避けつつも、同様に北朝鮮経済を混乱させた「70日戦闘」については紹介している。「三大革命赤旗獲得運動」や「70日戦闘」は、思想や精神主義に陥った金正日後継体制の基盤固めのための大衆動員運動であった。そのため、北朝鮮経済にはネガティブな影響を与えたことこそあれ、ポジティブなことは何もなかったといえる。
問題は、金正恩体制を固めるために「三大革命赤旗獲得運動」や「70日戦闘」を同じ手法で繰り返せば、どうなるのかについて北朝鮮がきちんと認識しているのかどうかである。私は、基本的には上述したとおり、比較的経済状態が良好であった70年代を金正日時代を否定することなく金正恩時代と結びつけて想起させるためのものであり、愚行を繰り返すためのものではないと考えているが、その判断を下すためにはしばし様子を見る必要がある。悪いシナリオとしては、今週の最高人民会議で経済改革案を打ち出せなかっただけではなく、「70日戦闘」への回帰・後退という可能性もあるが、それはあってほしくない。
「三大革命赤旗獲得運動」を批判してきたが、その中心的役割を果たした「三大革命小組」の役割は、当時と比較して今日は変質したと考えている。「20時報道」などで報道される三大革命小組員の見ていると、どうやら北朝鮮経済の現実に適合しない実現不可能なことを企業所などの生産現場に押しつけているのではなく、できる範囲内での改善、特に技術的な改善に協力しているような印象がある。一流大学を卒業したエリートたちが、北朝鮮の経済的現実に照らして「できる範囲内で」生産技術や経営の改善に導いていけるのであれば、それは良いことであると思う。
「労働新聞」記事:
http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-09-28-0001&chAction=D
1970年代は、北朝鮮経済が依然として順調な時期であった。「労働新聞」の社説の主張は、要約すれば「70年代のような気概で年末までに経済建設を推進しよう」ということである。70年代は金日成時代ではあるが、金正日書記(当時)の提唱で「三大革命赤旗獲得運動」が始められた時期でもある。北朝鮮がここで「1970年代」を持ち出してきたのは、金正恩時代の(少なくとも1970年代の水準への)経済立て直しを、「先軍」に偏重した金正日さんの経済政策の総体的な失敗を否定することなく、という目的ではないだろうか。
というのは、私は、この記事を読んだときにすぐさま「金日成時代」と「金正恩時代」を連結するための作業かと考えた。もちろん、そういう側面が強いのであろうが、「労働新聞」の記事では巧妙に金正日さんも取り込んでいる。例えば「1970年代は、主体革命偉業の継承完成のための闘争で特出した意義を持つ偉大な転換の年代、全国に創造と革新の風火が力強く吹き荒れた激動の年代として我が党の歴史として記録されている。偉大な将軍様を党と革命の陣頭に高く頂いた我が軍隊と人民の闘争気勢は、実に大きなものであった」とし、金日成時代であるにもかかわらず、70年代の経済発展の成果が将軍様、つまり金正日さんによるものであるという論を展開している。そして、上述の「三大革命赤旗獲得運動」という言葉は避けつつも、同様に北朝鮮経済を混乱させた「70日戦闘」については紹介している。「三大革命赤旗獲得運動」や「70日戦闘」は、思想や精神主義に陥った金正日後継体制の基盤固めのための大衆動員運動であった。そのため、北朝鮮経済にはネガティブな影響を与えたことこそあれ、ポジティブなことは何もなかったといえる。
問題は、金正恩体制を固めるために「三大革命赤旗獲得運動」や「70日戦闘」を同じ手法で繰り返せば、どうなるのかについて北朝鮮がきちんと認識しているのかどうかである。私は、基本的には上述したとおり、比較的経済状態が良好であった70年代を金正日時代を否定することなく金正恩時代と結びつけて想起させるためのものであり、愚行を繰り返すためのものではないと考えているが、その判断を下すためにはしばし様子を見る必要がある。悪いシナリオとしては、今週の最高人民会議で経済改革案を打ち出せなかっただけではなく、「70日戦闘」への回帰・後退という可能性もあるが、それはあってほしくない。
「三大革命赤旗獲得運動」を批判してきたが、その中心的役割を果たした「三大革命小組」の役割は、当時と比較して今日は変質したと考えている。「20時報道」などで報道される三大革命小組員の見ていると、どうやら北朝鮮経済の現実に適合しない実現不可能なことを企業所などの生産現場に押しつけているのではなく、できる範囲内での改善、特に技術的な改善に協力しているような印象がある。一流大学を卒業したエリートたちが、北朝鮮の経済的現実に照らして「できる範囲内で」生産技術や経営の改善に導いていけるのであれば、それは良いことであると思う。