「朝鮮中央通信社報道」:早い報道は失敗織り込み済み、失敗原因を説明、「チョンリマ-1」型は固体燃料使用か?、国内への影響、「ヌリ号」との比較、「戦勝節」前に2回目発射か、回収物 (2023年5月31日 「朝鮮中央通信」)
31日10時頃、「朝鮮中央通信」に以下。
****************
朝鮮中央通信社報道
조선중앙통신사 보도
軍事偵察衛星発射時に事故発生
군사정찰위성발사시 사고 발생
朝鮮民主主義人民共和国国家宇宙開発局は、主体112(2023)年5月31日6時27分、平安北道チョルサン郡の西海衛星発射場から予定されていた軍事偵察衛星「マンリギョン(万里鏡)-1」号を新型衛星運搬ロケット「チョンリマ(千里馬)-1」型に搭載して発射した。
조선민주주의인민공화국 국가우주개발국은 주체112(2023)년 5월 31일 6시 27분 평안북도 철산군 서해위성발사장에서 예정되였던 군사정찰위성 《만리경-1》호를 신형위성운반로케트 《천리마-1》형에 탑재하여 발사하였다.
発射された新型衛星運搬ロケット「チョンリマ-1」型は、正常飛行していた最中、1段目分離後、2段目エンジンの始動が非正常であったために推進力を喪失しながら朝鮮西海に墜落した。
발사된 신형위성운반로케트 《천리마-1》형은 정상비행하던중 1계단 분리후 2계단 발동기의 시동비정상으로 하여 추진력을 상실하면서 조선서해에 추락하였다.
国家宇宙開発局の報道官は、衛星運搬ロケット「チョンリマ-1」型に導入された新型エンジンシステムの信頼性と安定性が落ち、使用された燃料の特性が不安定であったことに事故の原因があると見て、当該科学者、技術者、専門家が具体的な原因解明に着手したと明らかにした。
국가우주개발국 대변인은 위성운반로케트 《천리마-1》형에 도입된 신형발동기체계의 믿음성과 안정성이 떨어지고 사용된 연료의 특성이 불안정한데 사고의 원인이 있는것으로 보고 해당 과학자,기술자,전문가들이 구체적인 원인해명에 착수한다고 밝혔다.
国家宇宙開発局は、衛星発射で生じた重大な欠陥を具体的に調査、解明し、それを克服するための科学技術的対策を至急講じて、様々な部分の試験を経て、できるだけ早い期間内に第2回の発射を断行すると明らかにした。
국가우주개발국은 위성발사에서 나타난 엄중한 결함을 구체적으로 조사해명하고 이를 극복하기 위한 과학기술적대책을 시급히 강구하며 여러가지 부분시험들을 거쳐 가급적으로 빠른 기간내에 제2차 발사를 단행할것이라고 밝혔다.
主体112(2023)年5月31日
주체112(2023)년 5월 31일
平壌
평 양(끝)
www.kcna.kp (주체112.5.31.)
*********************************
外国メディアを招いて行われた2012年4月13日の「光明星3-1号機」の発射は失敗した。このとき、北朝鮮はこの失敗に関する報道はしなかった。失敗について北朝鮮が「報道」として言及したのは、同年12月12日に発射成功した「光明星3-2号機」に関する報道の中でであった。
しかし今回は、失敗報道を実に早いタイミングでしている。インターネットの「朝鮮中央通信」サイトで確認できたのは31日10時過ぎだったが、メディア向けの報道はそれよりも1時間以上前だったようだ。
30日にあった李ビョンチョルによる発射予告の国内向け報道はないので、恐らく、この失敗報道も北朝鮮国内には報道されることがなく、2回目の発射が成功すれば「光明星3-2号機」と同様にその際発表されることになろう。
<追記>
よく調べたら、2012年4月13日の「光明星3-1号」発射失敗は、同日に「朝鮮中央通信」で報じられていた。
北朝鮮がこのような早いタイミングで失敗を公開したのは、「チョンリマ-1型」エンジンに鍵があるのではないだろうか。
北朝鮮が発射シーンの映像を公開すれば噴煙の色から「チョンリマ-1型」が液体燃料を使ったエンジンなのか固体燃料を使ったエンジンなのか判断できるのだが、残念ながらそれは公開されていない。しかし、「朝鮮中央通信」が「使用された燃料の特性が不安定であった」というように「燃料」に言及していることからすると、使われた燃料は既に多くの成功事例がある液体燃料ではなく固体燃料であった可能性がある(「不安定」という表現からは液体燃料にも繋がるが)。また、「2段目エンジンの始動が非正常」だったことが墜落の原因としているが、もしかすると固体燃料への点火は液体燃料への点火よりも技術的に難しく、それに失敗したことを示唆しているのかも知れない。この点については、オランダ国防大のミサイル学者に質問してみようと思う。
今回の発射は「西海発射場」からだったと報道しているが、それが従来のタワーからだっのか、新たに建設されたタワーからだったのかも問題になる。新たに建設されたタワーは衛星写真分析で従来のものよりも「高い」とされているが、それ以上に固体燃料ロケットを発射する仕様の施設だった可能性もある。
北朝鮮がこれまでに固体燃料を使用したICBM級のミサイルで発射に成功しているのは「火星砲-18」型のみである。そうだとすると、今回の「チョンリマ-1」は、衛星運搬ロケット用に開発された「火星砲-18型」に搭載された2022年12月15日、西海衛星発射場での地上噴出試験に成功したエンジンと同じか重量のある衛星運搬のために改造されたエンジンである可能性がある。
そうしたことからすると、今回の失敗はある程度、織り込み済みだったのかも知れないし、「朝鮮中央通信報道」の内容にそのような含意を持たせている可能性がある。
国内的に発射を予告していないことも、失敗が織り込み済みだったことを示しているのかも知れない。今後、偵察衛星の2回目の発射が行われて成功すれば、「光明星3-2号機」と同様に失敗から成功に至る科学者・技術者の「血の滲む徹夜戦闘」と「元帥様」の「不眠不休の献身と労苦」が紹介され、朝鮮人民を大いに「激動」させ「鼓舞」することになる。
韓国の「ヌリ号」の発射成功後の失敗はそれなりに痛いであろうが、ざっと調べたところ韓国の「ヌリ号」はロシアのエンジンを基盤にした液体燃料エンジンを使用しており、北朝鮮の「我々式」「チョンリマ-1型」エンジンが固体燃料エンジンだったとすると、技術的にはその上を行っていることになる。そのため、1度や2度の失敗は韓国との競争でも問題がないという見方もできる。
「元帥様」が「娘様」と視察していた「マンリギョン-1」号機が海に沈んだのは惜しいかもしれないが、もしかするとそれさえも失敗を見込んでダミー衛星を搭載していただけかも知れない。成功すれば、第2回の発射で「2号機」と称して「マンリギョン-1」を搭載すればよい。
「チョンリマ-1-2型」エンジンになるのかどうかは分からないが、2回目の発射は早ければ7.27「戦勝節」前後、遅くても9月、10月の「慶祝日」前後までには断行されるのではないだろうか。
<追記>
書き忘れたが、「聯合ニュースTV」を見ていたら、韓国の専門家が今回の発射は従来の発射よりも1段目の段階では西寄り、つまり中国寄りに発射されたと言っていた。理由は、「落下物が韓国や米国に回収されにくい方向を選択したからだ」とその専門家は説明していたが、今回の墜落地点が中国のEEZ内になるのかなるのかどうかは不明ながら、そうだとするとこの対策は功を奏したことになる。
****************
朝鮮中央通信社報道
조선중앙통신사 보도
軍事偵察衛星発射時に事故発生
군사정찰위성발사시 사고 발생
朝鮮民主主義人民共和国国家宇宙開発局は、主体112(2023)年5月31日6時27分、平安北道チョルサン郡の西海衛星発射場から予定されていた軍事偵察衛星「マンリギョン(万里鏡)-1」号を新型衛星運搬ロケット「チョンリマ(千里馬)-1」型に搭載して発射した。
조선민주주의인민공화국 국가우주개발국은 주체112(2023)년 5월 31일 6시 27분 평안북도 철산군 서해위성발사장에서 예정되였던 군사정찰위성 《만리경-1》호를 신형위성운반로케트 《천리마-1》형에 탑재하여 발사하였다.
発射された新型衛星運搬ロケット「チョンリマ-1」型は、正常飛行していた最中、1段目分離後、2段目エンジンの始動が非正常であったために推進力を喪失しながら朝鮮西海に墜落した。
발사된 신형위성운반로케트 《천리마-1》형은 정상비행하던중 1계단 분리후 2계단 발동기의 시동비정상으로 하여 추진력을 상실하면서 조선서해에 추락하였다.
国家宇宙開発局の報道官は、衛星運搬ロケット「チョンリマ-1」型に導入された新型エンジンシステムの信頼性と安定性が落ち、使用された燃料の特性が不安定であったことに事故の原因があると見て、当該科学者、技術者、専門家が具体的な原因解明に着手したと明らかにした。
국가우주개발국 대변인은 위성운반로케트 《천리마-1》형에 도입된 신형발동기체계의 믿음성과 안정성이 떨어지고 사용된 연료의 특성이 불안정한데 사고의 원인이 있는것으로 보고 해당 과학자,기술자,전문가들이 구체적인 원인해명에 착수한다고 밝혔다.
国家宇宙開発局は、衛星発射で生じた重大な欠陥を具体的に調査、解明し、それを克服するための科学技術的対策を至急講じて、様々な部分の試験を経て、できるだけ早い期間内に第2回の発射を断行すると明らかにした。
국가우주개발국은 위성발사에서 나타난 엄중한 결함을 구체적으로 조사해명하고 이를 극복하기 위한 과학기술적대책을 시급히 강구하며 여러가지 부분시험들을 거쳐 가급적으로 빠른 기간내에 제2차 발사를 단행할것이라고 밝혔다.
主体112(2023)年5月31日
주체112(2023)년 5월 31일
平壌
평 양(끝)
www.kcna.kp (주체112.5.31.)
*********************************
外国メディアを招いて行われた2012年4月13日の「光明星3-1号機」の発射は失敗した。このとき、北朝鮮はこの失敗に関する報道はしなかった。失敗について北朝鮮が「報道」として言及したのは、同年12月12日に発射成功した「光明星3-2号機」に関する報道の中でであった。
しかし今回は、失敗報道を実に早いタイミングでしている。インターネットの「朝鮮中央通信」サイトで確認できたのは31日10時過ぎだったが、メディア向けの報道はそれよりも1時間以上前だったようだ。
30日にあった李ビョンチョルによる発射予告の国内向け報道はないので、恐らく、この失敗報道も北朝鮮国内には報道されることがなく、2回目の発射が成功すれば「光明星3-2号機」と同様にその際発表されることになろう。
<追記>
よく調べたら、2012年4月13日の「光明星3-1号」発射失敗は、同日に「朝鮮中央通信」で報じられていた。
北朝鮮がこのような早いタイミングで失敗を公開したのは、「チョンリマ-1型」エンジンに鍵があるのではないだろうか。
北朝鮮が発射シーンの映像を公開すれば噴煙の色から「チョンリマ-1型」が液体燃料を使ったエンジンなのか固体燃料を使ったエンジンなのか判断できるのだが、残念ながらそれは公開されていない。しかし、「朝鮮中央通信」が「使用された燃料の特性が不安定であった」というように「燃料」に言及していることからすると、使われた燃料は既に多くの成功事例がある液体燃料ではなく固体燃料であった可能性がある(「不安定」という表現からは液体燃料にも繋がるが)。また、「2段目エンジンの始動が非正常」だったことが墜落の原因としているが、もしかすると固体燃料への点火は液体燃料への点火よりも技術的に難しく、それに失敗したことを示唆しているのかも知れない。この点については、オランダ国防大のミサイル学者に質問してみようと思う。
今回の発射は「西海発射場」からだったと報道しているが、それが従来のタワーからだっのか、新たに建設されたタワーからだったのかも問題になる。新たに建設されたタワーは衛星写真分析で従来のものよりも「高い」とされているが、それ以上に固体燃料ロケットを発射する仕様の施設だった可能性もある。
北朝鮮がこれまでに固体燃料を使用したICBM級のミサイルで発射に成功しているのは「火星砲-18」型のみである。そうだとすると、今回の「チョンリマ-1」は、衛星運搬ロケット用に開発された「火星砲-18型」に搭載された2022年12月15日、西海衛星発射場での地上噴出試験に成功したエンジンと同じか重量のある衛星運搬のために改造されたエンジンである可能性がある。
そうしたことからすると、今回の失敗はある程度、織り込み済みだったのかも知れないし、「朝鮮中央通信報道」の内容にそのような含意を持たせている可能性がある。
国内的に発射を予告していないことも、失敗が織り込み済みだったことを示しているのかも知れない。今後、偵察衛星の2回目の発射が行われて成功すれば、「光明星3-2号機」と同様に失敗から成功に至る科学者・技術者の「血の滲む徹夜戦闘」と「元帥様」の「不眠不休の献身と労苦」が紹介され、朝鮮人民を大いに「激動」させ「鼓舞」することになる。
韓国の「ヌリ号」の発射成功後の失敗はそれなりに痛いであろうが、ざっと調べたところ韓国の「ヌリ号」はロシアのエンジンを基盤にした液体燃料エンジンを使用しており、北朝鮮の「我々式」「チョンリマ-1型」エンジンが固体燃料エンジンだったとすると、技術的にはその上を行っていることになる。そのため、1度や2度の失敗は韓国との競争でも問題がないという見方もできる。
「元帥様」が「娘様」と視察していた「マンリギョン-1」号機が海に沈んだのは惜しいかもしれないが、もしかするとそれさえも失敗を見込んでダミー衛星を搭載していただけかも知れない。成功すれば、第2回の発射で「2号機」と称して「マンリギョン-1」を搭載すればよい。
「チョンリマ-1-2型」エンジンになるのかどうかは分からないが、2回目の発射は早ければ7.27「戦勝節」前後、遅くても9月、10月の「慶祝日」前後までには断行されるのではないだろうか。
<追記>
書き忘れたが、「聯合ニュースTV」を見ていたら、韓国の専門家が今回の発射は従来の発射よりも1段目の段階では西寄り、つまり中国寄りに発射されたと言っていた。理由は、「落下物が韓国や米国に回収されにくい方向を選択したからだ」とその専門家は説明していたが、今回の墜落地点が中国のEEZ内になるのかなるのかどうかは不明ながら、そうだとするとこの対策は功を奏したことになる。