27日18時頃(日本時間)北朝鮮の南浦港を出港した一般貨物船KUMSANBONGをMarine Trafficで追跡していた。この船は順調に公開を続け、28日13時(日本時間)頃には、竜口港付近に到達している。しばらく、竜口港沖合にいる北朝鮮船舶に混じって停泊していたが、直ぐに竜口港に入港した。
28日21時30分(日本時間)頃のKUMSANBONGの位置。

Source: Marine Traffic
KUMSANBONGが停泊している位置をGoogle Earthで見ると、鉱石の積み降ろし場所ではなく、一般貨物を扱っている埠頭のようである。一般貨物を積んだ北朝鮮籍船舶は、即時、入港させているようである。

Source: Google Earth
28日、「朝鮮中央TV」の「17時報道」で、李キルソン副相を代表とする北朝鮮外務省代表団が28日、中国に発ったと報じた。それ以上の詳細は伝えていないが、出発当日の「17時報道」で伝えるというのは、異例的に早い。「朝鮮中央通信」でも同じ内容の記事が配信されている。
金正男事件と石炭輸入「一時停止」問題への対応であろうか。北朝鮮側が訪中を公開しているので、中国外交部記者会見でも、報道官から何らかのコメントが得られるであろう。
27日からマレイシアの
The Starや
New Straits Timesに北朝鮮の武器関連業者のマレイシアオフィスに関する記事が出ている。オフィスについては、人の出入りがほとんどなく、「土曜日に手紙をメールボックスから取り出しに来る程度」だと同オフィスが入るビルの1階で商売をしているマレイシア人が証言している。
Glocomに関する記事を読んだ後、同社に関する検索を行ったが、既にサイトは閉鎖されており、情報を得ることができなかった。Glocomは、軍用通信機を扱う会社とのことで、2016年にマレイシアで開催されたDefence Service Asiaという軍事関連の展覧会に出展しているので、同展覧会に関するページも見たが、残念ながら同社の出展に関する情報は見つからなかった。
ところが、どこから持って来たのかは分からないが、
The StarにGlocomの通信機の写真が掲載されていた。私もシャープペンからタブレットまでかなり多くの北朝鮮製品に触れてきたが、不思議と耐久性はあるようで、シャープペンや万年筆は、未だにしっかりと使えている。過去記事で紹介した、70年~80年代に作られたのではないかと思われるモランボン腕時計も古い機械時計としては普通の精度で動き続けている。しかし、チープな作りである。
しかし、Glocomの通信機は、写真を見る限りでは、北朝鮮製と思えないようなタイトな作りになっている。北朝鮮でもこんなものができるのだと驚くほどである。民生品と軍用品の差なのか、輸出用に本気で作っているのかは分からないが、外見はとにかく素晴らしい。「光明星4」を「完全成功」させた、「衛星管制総合指揮所」にあるコントロールパネルよりもしっかりとできている。

Source:
The Star, N. Korean arms link in KL, http://www.thestar.com.my/news/nation/2017/02/28/n-korean-arms-link-in-kl-pyongyangs-spy-agency-has-military-equipment-scheme-here-says-un/
写真を見る限りでは、これはメインユニットのようでコントロール部が別にあるようだ。軍用通信機の標準装備なのかも知れないが、電信用のキーを接続すると思われるCWソケットがあるところがシブい。
この記事には、Glocom事務所があったというビルや同ビル住人のインタビューが収録された動画もアップロードされている。
ICOMの民生用トランシーバーよりは丈夫そうだし、北朝鮮の軍用品が売れるのも分かるような気がした。中身はICOMなのかもしれないが・・・
中国が19日に北朝鮮下欄石炭輸入を「一時停止」してから9日が過ぎた。その後、Marine Trafficで中朝間を往来する船を見ていたが、過去記事に書いたように一時的には減っていた。しかし、今週に入ってからは再び増加し、今朝見たらたくさんの北朝鮮籍あるいは南浦港から出港・帰港した船が確認された。
ざっと確認しただけなので、まだ他にもいる可能性がある。見つけた北朝鮮船籍船は黄色でマークしておいた。

Source: Marine Traffic, https://www.marinetraffic.com/
中国が本当に北朝鮮からの石炭輸入を「一時停止」しているのであれば、これだけの数の北朝鮮船舶は何を運んでいるのであろうか。安保理決議2321が採択されたときにも書いたが、同決議では石炭については細かな規定を設けて総量・総額規制をかけているが、鉄鉱石については同決議26(c)で、以前の石炭同様に人民生活目的除外規定を設けている。中国が石炭輸入を「一時停止」する一方、石炭減少分を「人民生活維持」を根拠に鉄鉱石輸入増大で補うことについては、同決議の目的には反するが、条項に記されていることからすれば安保理決議違反とは言い難い。すると、これらの北朝鮮船舶は、鉄鉱石を運んでいるのであろうか。
以前にも何回か紹介しているが、下の写真は竜口埠頭である。上のMarif Traffic地図で見ると、左下に黄色い点が密集している地点になる。ここには以前から北朝鮮船籍船がよく来ていたが、中国が「一時停止」をしたころから港外でずっと停泊している北朝鮮船籍船が8隻ぐらいいる。石炭を運搬してきたので、帰るに帰れず、本国からの指示を待っているのではないかというのは、過去記事に書いたとおりである。一方、その合間を縫うように北朝鮮からやってきて、埠頭に停泊、1日か2日後には北朝鮮に向けて再び出港していく北朝鮮船籍船もいる。こうしたことからすると、中国側が一様に北朝鮮船籍船入港を禁じているわけではなく、やはり積み荷によるものではないかと推測される。
下の写真を見ると、埠頭には赤茶色い鉄鉱石と思われるものと黒い石炭と思われるものが積まれている。北朝鮮船舶は比較的小さなものが多いので、しばしば停泊している場所は、右側の下から3番目か4番目である。この写真でも小型船と中型船がいる(北朝鮮船籍船とは限らない)。

Source: Google Earth, 2016/11/11撮影
最近見つけたのだが、青島の少し南に日照港という港がある。現時点では1隻しか確認できないが、ここにも北朝鮮船籍船がたくさん集まっていることがある。ここも下のGoogle Earthの写真から分かるように、石炭と鉄鉱石が大量に積み上げられており、特に石炭については、ベルトコンベアで石炭集積場まで運べるようになっているように見える。

Source: Google Earth, 2016/11/04撮影
現在、日照港付近にいるのはK Morningというバルク貨物船である。日照港付近にいる、バルク貨物船であるということからして、やはり積載物は鉄鉱石か石炭であろう。

Source: Marine Traffic, https://www.marinetraffic.com/
この船の航跡を見ると、南浦沖からAISを確認できており、最初から2つ目の地点が25日14時41分(UTC)と記録されている。恐らく、南浦を現地時間の25日午前、出港したのであろう。

Source: Marine Traffic, https://www.marinetraffic.com/
この船は、日本時間の28日9時頃から西に向かって4ノット前後で航行を始めた。どういう動きをするのか追ってみたい。
中国が北朝鮮からの石炭輸入「一時停止」を発表した直後は、北朝鮮は相当に困るのではないかと思ったが、こうした北朝鮮船舶の動きを見ていると、そうでもないようだ。崔龍海のお手柄なのだろうか。
<追記>
日本時間の11時20分頃、中国のタグボート二隻に押されて、埠頭に着岸するKMORNING。Google Earhの写真を見ると、航跡積み降ろし用と思われるクレーンがあることが分かる。

Source: Google Earh左、Marine Traffic右、Marine Trafficは2017/02/28 1120JST頃
25日、
The Starが、「北朝鮮大使館がマレイシア警察あるいはマレイシア外務省からの捜査協力要請文書を受け取っていないと発表した」という内容の記事を配信した。マレイシア側が文書を手渡したと嘘をついているとは考えられないので、北朝鮮が「受け取っていない」といのは、受け取りを拒否した(物理的に受け取っても、内容は確認していない)ということなのかもしれない。
記事では、マレイシアのイスラム教団体も北朝鮮大使館のポストに「捜査は、マレイシア警察が行うべきだ」という内容の抗議文を投函したとも報じている。
この記事には、動画が添付されているが、KCTVワッチャーの私は一瞬ではあるが、ビックリした。動画を再生したとたん、KCTVが「元帥様」などの「革命活動」を報じる際に前後で流すこの色の画面が出たからだ。直ぐに画面の中央にThe Starのロゴが出てくるのだが、あまりにも見慣れた色なので、ドキッとする。

Source:
The Star, Embassy: We didn’t receive any document from cops, Read more at http://www.thestar.com.my/news/nation/2017/02/25/embassy-we-didnt-receive-any-document-from-cops/#2ISYAGuAreCvuDJt.99
24日、New Straits Timesが、マレイシア警察化学兵器分析センターが現状の分析結果を発表し、被害者の目と顔から採取された物質が物質がVXガスであると報じた。
New Straits Times, VX nerve agent used in Kim assassination: IGP, Read More : http://www.nst.com.my/news/2017/02/214953/vx-nerve-agent-used-kim-assassination-igp
<追記2>
コメントでご指摘いただいたので、タイトルを修正しておいた。金正Xの人が多いのでややこしい。
********************
23日、The Starが、マレイシア保健相が「金正男の死因は、来週までに判明するであろう」と語ったと報じた。
The Star, Subra: Jong-nam's cause of death to be known next week, Read more at http://www.thestar.com.my/news/nation/2017/02/23/subra-kim-jong-nam-cause-of-death-determined-by-next-week/#d9se0h5UmXtY1Aak.99
また、マレイシア警察副長官が、「被害者の血縁者(子供か親戚)が数日以内にマレイシアに来る」と語ったとも報じている。
<追記>
これは、副長官の間違いだったと警察長官
The Star, Jong-nam's next-of-kin expected in Malaysia within days, Read more at http://www.thestar.com.my/news/nation/2017/02/23/jong-nam-next-of-kin-expected-in-malaysia/#xleHTShMzPu6uKgl.99
過去記事にも書いたように、金正男の死因が直接的には「心臓ショック」であったにしても、それを引き起こした原因がはっきりとすれば、自然死なのか殺人なのかがはっきりすることになる。マレイシア警察が実行犯2名を確保しているが、現状では彼女らが金正男の顔に何かを付けたことしかはっきりとしていない。北朝鮮国籍者も拘留されているが、彼については空港付近で彼の車のナンバーが見られたという理由以上のことは公開されていない。死因が解明すれば、マレイシア警察も、より詳しい容疑を発表するであろう。
北朝鮮大使は、自国民でもない2人の女性の釈放も要求しているが、彼女たちを釈放させ、証拠隠滅のために殺害を企てているのかも知れない。昨日、北朝鮮が、金で雇われた2人の女性を生かしておく理由と殺害する理由を書いたが、もしかすると、金正男殺害後に彼女たちを殺害するのに失敗したのかもしれない。拘留されている女性の男友達が一時逮捕された後に釈放されたが、この男性が実行犯の女性を暗殺者の手から守った可能性すらある。だとすると、容疑者としてではあれ、マレイシア警察に拘留されていることは、彼女たちの身の安全を確保するには最も適切な手段である。
そして、金ハンソルと思われる「血縁者」がマレイシアに来てDNAを提供、マレイシア警察が鑑定をして金ハンソルとの親子関係が判明すれば、「共和国公民」の「被害者」は、金ハンソルの父である金正男であることがはっきりする。北朝鮮は、「共和国公民」が「外交旅券を持つ金チョル」ではなく、金正男であることが判明したら、「マレイシア警察が出鱈目な捜査をした」と言い続けるしかなくなる。そんなこともあり、金ハンソルがマレイシアに来ることは、絶対に阻止したいであろう。マレイシア警察は、捜査官を金ハンソルがいるとされる「マカオに派遣していない」としているが、全ての捜査を自国の主権が及ぶ地域で貫徹しようという意志の表れなのかも知れない。ともかく、マレイシア警察としては、金ハンソルの保護に最善を尽くさなければならない。もしかすると、「数日以内」というのも、安全に入国されるための偽装発表なのかも知れない。
来週、事件捜査は大きく進展しそうだ。
<追記3>
容疑者の女が、VXガスの影響で嘔吐したと。
The Star, Jong-nam died a 'horribly painful' death, says toxicologist, Read more at http://www.thestar.com.my/news/nation/2017/02/24/jongnam-died-a-horribly-painful-death-says-toxicologist/#uskUj4ZiTHUogA9W.99
23日の「朝鮮中央TV」では、金正男事件の捜査に関してマレイシア政府を非難する「朝鮮法律家委員会スポークスマン談話」は放送されなかった。同日の『労働新聞』にも掲載されていないので、北朝鮮国内向けには非公開とする方針なのかもしれない。
23日、The Starによると、マレイシアの文化観光相がマレイシア国民に対して北朝鮮を旅行しないように呼びかけた。その理由として文化観光相は、北朝鮮は「ならず者国家」なので、「何をされるか分からない」と述べている。
マレイシアと北朝鮮の関係は悪化の一途を辿っている。それにしても、北朝鮮は、比較的友好的であったマレイシアで何でこんなことをやらかしたのであろうか。金正男殺害と引き替えに支払った代償が大きすぎるような気がしてならない。
The Star, Don't visit North Korea, Nazri tells Malaysians, Read more at http://www.thestar.com.my/news/nation/2017/02/23/nazri-dont-visit-north-korea/#D99M29Y4aoJ586Ph.99
23日の
The Starによると、マレイシア警察に拘留されているベトナム人の女は、歌手だという。以前は、マッサージャーという情報が流れていたが、今回は歌手ということらしい。
The Star, Jong-nam murder: Vietnamese suspect was keen singer, Read more at http://www.thestar.com.my/news/nation/2017/02/23/jong-nam-murder-vietnamese-suspect-was-keen-singer/#dOI53kkJepcG2TLX.99
記事によると、この情報は、このベトナム人の女がFacebookにアカウントを持っており、そこに書き込まれていることから判明したという。アカウントに添付されている写真をベトナムにいる女の家族に見せたところ、自分の娘であると答えたという。
しかしこの「歌手」、かなり怪しい仕事をしていたようで、「携帯番号を入れてメッセージを返してくれれば、今夜あなたの所で歌ってあげるわ」というような書き込みをFBにしている。断定はできないが、このメッセージから想像されるのは、売春など、風俗関係の仕事をしていたのではないかということである。そう考えると、時には「マッサージャー」、時には「歌手」というのも説明が付く。
そして、この歌手であるが、「昨年11月に済州島に4日間の旅行(韓国警察の情報)」しているとこのとである。さらに、FB上で65人の友達がおり、27人がコリアンの名前、そして56人が男性という。
実は、この女性の逮捕前の写真が以前公開されたとき直ぐに思ったのは、韓国人のような顔、あるいは化粧をしているということである。商業メディアなので写真は転載しないが、URLで見られる一番上の写真を見て、ベトナム人か韓国人かと聞かれれば、私は悩むことなく韓国人と答える。
この女性、韓国人相手の「商売」をしているうちに、韓国人を装う工作員に取り込まれたのではないのだろうか。韓国人を相手にしていれば、「北韓の金正男という悪い奴を殺す」と言われ、「北韓=悪」と思っている彼女は、容易に騙すことができた可能性はある。多くの金を払ってもらえば、なおさらである。
<追記>
2016年6月3日、ベトナムのテレビのタレント・コンテストにに出場した容疑者と似た女性。
Source: YouTube
<追記2>
マレイシア警察に拘留されているベトナム人の女のFBを見つけた。彼女のFB上での書き込みを見ると、上で書いた「風俗営業説」は間違っているかも知れない。挑発的な写真は掲載しているが、少し目立ちたがりの女の子のようにも思える。書き込みはほとんど英語であるが、詩的な表現が好きなだけかも知れない。2月11日にマレイシア国際空港があるセパン近郊のBesut村から「あなたの横で眠りたい」と書き込んでいる女の子が、翌々日に殺人事件を引き起こすなど、にわかには信じ難い。

Source: Facebook
23日のThe Starに、金正恩事件の容疑者の女2人がクアラルンプールなどのショッピングモールで予行練習し、さらに事件前日には空港でも予行練習している姿が防犯カメラに写っていたと報じた。
拙ブログでは、防犯カメラに写っていたとされる映像から1人の女が手袋をしていたとしていたが、同記事によるとマレイシア警察は「手袋は着用していなかった」と発表したとしている。
The Star, IGP: Duo did dry runs at malls, Read more at http://www.thestar.com.my/news/nation/2017/02/23/igp-duo-did-dry-runs-at-malls-assassins-knew-the-substance-they-used-was-toxic-says-khalid/#th4SsPUv43Qd0Km4.99
だとすると、昨日の拙記事に書いた通り、2つの物質は混合しなければ無害ということになる。
もう一つ興味深いのは、「2人の女がトイレに行って手を洗うよう指示されていた」という点である。これを読んで2つの考えが頭によぎったが、一つは、北朝鮮の工作員、ましてや金で雇われた使い捨て工作員であれば、逮捕されるて自供されるよりも毒で死んでもらった方が北朝鮮にとっては有利であるにもかかわらず、なぜ「人倫的」にトイレに行って手を洗うよう指示したのだろうかという点である。もう一つは、例え毒物が混合されない状態では無毒であっても、女の手に毒物が付着した状態で逮捕されれば、重要な証拠となってしまうので、証拠隠滅のためにとにかくトイレで直ぐに手を洗えと指示したという考えである。筋金入りの工作員であれば、手を洗った後、トイレの個室に入り、「金正恩将軍万歳」と心の中で叫びながら青酸カリを服用して自殺をすれば完璧な証拠隠滅ができるはずだが、さすがに金で雇われた工作員ではそれは無理である。別の工作員が、彼女らを消すというやり方もあっただろうが、死体が増えればそれだけマレイシア警察の捜査範囲も広がるし、インドネシアやベトナム当局の関与も深まるので、それも避けたのかも知れない。
昨日、記事の中でも話題にした、マレイシア警察が北朝鮮に対して引き渡し要求をした2人の容疑者、北朝鮮大使館2等書記官と高麗航空社員の居場所に関する報道がNew Straits Timesに出ていた。
New Straits Times, Police checking if N. Korean suspects "hiding at embassy": IGP, Read More : http://www.nst.com.my/news/2017/02/214641/police-checking-if-n-korean-suspects-hiding-embassy-igp
記事のよると、マレイシア警察は、彼らが大使館内にいるのかどうかについては「確認できていない」としており、「捜査に協力するために自ら出頭することを望んでいる」としている。マレイシア警察は、控えめに言っているが、彼らが出国したのかどうかという事実は把握しているはずなので、大使館に匿われていることを確信しているのであろう。
北朝鮮人が他国の大使館に保護を求めて逃げ込むことは時々あるが、北朝鮮人が自国の大使館に逃げ込むというのは珍しい。
23日、The Starが、駐マレイシア北朝鮮大使カン・チョルのプロフィールを伝えている。
記事によると、カン・チョルは北朝鮮大使としては珍しくメディアにフレンドリーで、昨年の1月(「水素弾完全成功」)と3月(「光明星4号発射」)後に、大使側の要請でThe Star紙とのインタビューを行い、問題のない英語で「ミサイル発射は通常」、「平壌は美しい都市」などの話をしたという。
カン・チョルには2人の子供がおり、平壌外国語大学(1972-73)とソマリア国立大学(1973-76)で学び、北朝鮮外務省中東部に就職したという。
興味深い話は、13日に金正男が殺害されたとき、カン・チョルは、「金日成」の誕生日を祝うために北朝鮮食堂でマレイシアメディアの関係者などを招いてパーティーをしていたとのことである。The Star記事には「金日成」と書かれているが、これは「金正日」、つまり「光明星節」祝賀のパーティーであったはずである。
北朝鮮は、「米軍が北侵して朝鮮戦争を引き起こしたとき、それを隠すために、そして日本に避難させるために米軍の将校は東京でパーティーをしていた」と主張しているが、その系で説明するなら、金正男事件への関与を隠すために、大使は「光明星節」を祝うパーティーをしていたということになる。このパーティーについては、今のところ、北朝鮮は言及していない。
The Star, Kang a N. Korean diplomat with good media relations, Read more at http://www.thestar.com.my/news/nation/2017/02/23/kang-a-n-korean-diplomat-with-good-media-relations/#FJUOlBFMo2XvKGWY.99
23日、「朝鮮中央通信」が「朝鮮法律家委員会スポークスマン」の言葉として、初めてマレイシアでの金正男事件について報道した。国内向けの報道があるかについては、『労働新聞』や「朝鮮中央TV」で追って確認できると思う。
同報道では、当然のことながら金正男という名前は一切出さず、「去る13日、マレイシアで外交旅券所持者である共和国公民が、飛行機搭乗を前にして突然ショック状態に陥り、病院に移送途中死亡した」と報じている。
지난 13일 말레이시아에서 외교려권소지자인 우리 공화국공민이 비행기탑승을 앞두고 갑자기 쇼크상태에 빠져 병원으로 이송되던 도중 사망하였다.
記事を斜め読みすると、「南朝鮮」の関与を強く主張しながら、マレイシア当局の捜査手法などを非難している。
追って、全訳を本記事に追記する。
<追記1>
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(平壌2月23日発 朝鮮中央通信)
去る13日、マレイシアで外交旅券所持者である共和国公民が、飛行機搭乗を前にし、突然ショック状態に陥り、病院へ移送途中死亡した。
(평양 2월 23일발 조선중앙통신)
지난 13일 말레이시아에서 외교려권소지자인 우리 공화국공민이 비행기탑승을 앞두고 갑자기 쇼크상태에 빠져 병원으로 이송되던 도중 사망하였다.
初期、マレイシア外務省と裁判所側は、共和国公民に対する領事保護権を行使しているマレイシア駐在朝鮮大使館に心臓ショックによる死亡であることを確認しながら、死体を我々の大使館に移管し、火葬することにしたと通報してきた。
초기 말레이시아외무성과 병원측은 공화국공민에 대한 령사보호권을 행사하고있는 말레이시아주재 우리 대사관에 심장쇼크에 의한 사망임을 확인하면서 시신을 우리 대사관에 이관하여 화장하기로 하였다는것을 통보해왔다.
そのため、我々の大使館側では、死亡者の身分を確認し、死体を移管することを要求した。
이에 따라 우리 대사관에서는 사망자의 신분을 확인하고 시신을 이관할것을 요구하였다.
しかし、その日の夜、南朝鮮補修メディアが「政府消息通」によるものとして、誰それによる「毒殺」を主張し始めると直ぐ、マレイシア秘密警察が介入し、これを無前提的に既成事実化しながら、死体解剖問題を提起してから、問題が複雑になり始めた。
그런데 그날밤 남조선보수언론이 《정부소식통》에 의한것이라고 하면서 그 누구에 의한 《독살》을 주장하기 바쁘게 말레이시아비밀경찰이 개입하여 이를 무작정 기정사실화하며 시신부검문제를 제기하면서부터 문제가 복잡해지기 시작하였다.
我々の大使館では、心臓ショックによる死亡と結論づけられたので、解剖をする必要がなく、さらに死亡者が外交旅券所持者なので、ウィーン協約に従い治外法権の対象として絶対に解剖できないことを明白にした。
우리 대사관에서는 심장쇼크에 의한 사망으로 결론된것만큼 부검을 할 필요가 없으며 더우기 사망자가 외교려권소지자로서 윈협약에 따라 치외법권대상이므로 절대로 부검을 할수 없다는것을 명백히 밝히였다.
しかし、マレイシア側は、我々の正当な要求と国際法を無視し、我々とのいかなる合意もなく、死体解剖を強行しただけではなく、解剖結果も発表しないまま、2時解剖まで行ったと騒ぎ立てた。
그러나 말레이시아측은 우리의 정당한 요구와 국제법을 무시하고 우리와의 그 어떤 합의나 립회도 없이 시신부검을 강행하였을뿐아니라 부검결과도 발표하지 않고 2차부검까지 진행하겠다고 떠들어댔다.
朝鮮法律家委員会スポークスマンは、22日発表した談話で、これは我が共和国の自主権に対する露骨な侵害であり、人権に対する乱暴な蹂躙であり、人倫道徳にも反する反人倫的な行為であると糾弾した。
조선법률가위원회 대변인은 22일 발표한 담화에서 이것은 우리 공화국의 자주권에 대한 로골적인 침해이고 인권에 대한 란폭한 유린이며 인륜도덕에도 어긋나는 반인륜적인 행위라고 규탄하였다.
談話は、特に重要視しなければならないことは、マレイシア側の不当な行為(複数)が、南朝鮮当局が行った反共和国謀略騒動と時を同じくして行われている点であるとし、次のように指摘した。
담화는 더우기 엄중시하지 않을수 없는것은 말레이시아측의 부당한 행위들이 남조선당국이 벌려놓은 반공화국모략소동과 때를 같이하여 벌어지고있는것이라고 하면서 다음과 같이 지적하였다.
南朝鮮保守メディアは、死体解剖結果が発表される前に「北朝鮮偵察総局女性要因2名による毒殺」だの、「北朝鮮の犯行に間違いない」だのというデマを大騒ぎしながら拡散し始めた。
남조선보수언론들은 시신부검결과가 발표되기도 전에 《북조선정찰총국 녀성요원 2명에 의한 독살》이라느니,《북조선의 소행이 틀림없다.》느니 뭐니 하는 랑설들을 지독스럽게 퍼뜨리기 시작하였다.
我が共和国が死亡した翌日である14日、青瓦台がガヤガヤと騒がしくなり、16日、長官級会議が開かれるなど、南朝鮮当局の反応が目立っており、その後、我が公民の死亡と何の連関もない「サード」配備問題まで公然と持ち出した。
우리 공민이 사망한 다음날인 14일 청와대가 법석 끓고 16일 장관급회의가 열리는 등 남조선당국의 반응은 눈에 띄우게 나타났으며 나중에는 우리 공민의 사망과 아무런 련관도 없는 《싸드》배비문제까지 공공연히 거론되였다.
これは、明白に南朝鮮当局が、今回の事件を事前に予想しており、その台本まで既に書いていたことを示している。
이것은 명백히 남조선당국이 이번 사건을 이미전부터 예견하고있었으며 그 대본까지 미리 짜놓고있었다는것을 보여준다.
ところが、ただマレイシアだけが、このような事実に目をつぶっているのは、実に残念なことであるといわざるを得ない。
그런데 유독 말레이시아만이 이러한 사실을 외면하고있는것은 실로 유감스러운 일이 아닐수 없다.
我が公民が、マレイシアの地で死亡したので、それに対する最も大きな責任はマレイシア政府にある。
우리 공민이 말레이시아땅에서 사망한것만큼 그에 대한 가장 큰 책임은 말레이시아정부에 있다.
マレイシア側の非友好的な態度は、したい如何問題でさらに顕著であった。
말레이시아측의 비우호적인 태도는 시신이관문제에서 더욱 뚜렷이 나타났다.
非法的で日道徳的な方法で死体解剖と法医学鑑定を行い、当然我々に死体を返還しなければならないのに、マレイシア法に従い、死亡者の家族側からDNA見本を提出される前には、死体を引き渡せないという出鱈目な口実をつけながら、未だに死体を引き渡さずにいる。
비법적이고 비도덕적인 방법으로 시신부검과 법의학감정을 하였으면 응당 우리에게 시신을 돌려주어야 하겠으나 말레이시아법에 따라 사망자의 가족측에서 DNA견본을 제출하기 전에는 시신을 넘겨줄수 없다는 터무니없는 구실을 붙이면서 아직까지 시신을 넘겨주지 않고있다.
これは、マレイシア側が、国際法と人倫道徳は眼中になく、死体移管問題を政治化し、何か不純な目的を達成しようとしていることを示している。
이것은 말레이시아측이 국제법과 인륜도덕은 안중에도 없이 시신이관문제를 정치화하여 그 어떤 불순한 목적을 이루어보려 한다는것을 보여준다.
次に、事件初期、殺人容疑者を逮捕したと騒々しく騒いだが、それ以後、そのことに関して全く言及させしていない点である。
다음으로 사건초기 살인용의자를 체포하였다고 요란스럽게 떠들어댔지만 그 이후 그에 대해 전혀 언급조차 하지 않고있는것이다.
特に、呆れる殺人容疑者達が陳実したという「掌に偽物の油のような液体を頭に塗ってやる」ために死亡者が毒殺されたというのに、手に塗った女性は生きており、塗られた人は死ぬなどという毒薬がどこにあるのだろうか。
더욱 어이 없는것은 살인용의자들이 진술했다고 하는 《손바닥에 짜주는 기름같은 액체를 머리에 발라주었기》때문에 사망자가 독살당했다는것인데 손에 바른 녀성은 살고 그것을 발리운 사람은 죽는 그런 독약이 어디에 있는가 하는것이다.
我々は、既に今回の事件の正確な解明のための共同捜査を提起し、我が法律家代表団を派遣する準備ができていることを明らかにしている。
우리는 이미 이번 사건의 정확한 해명을 위한 공동수사를 제기하고 우리 법률가대표단을 파견할 준비가 되여있다는것을 밝힌바 있다.
法律家代表団を直接現地に送り、殺人容疑者に会い、彼らの陳実も聞き、彼らが誰の指示を受けたのか確認し、逮捕された我が公民にも会い、事件現場と動画資料などを具体的に調査し、事件捜査を公正に結束しようというのである。
법률가대표단을 직접 현지에 보내여 살인용의자들을 만나 그들의 진술도 들어보고 그들이 누구의 지시를 받았는지 확인하며 체포된 우리 공민도 만나보고 사건현장과 동영상자료 등을 구체적으로 조사하여 사건수사를 공정하게 결속하자는것이다.
我々は、尊厳高い自主の強国、核強国の威厳を毀損しようといういかなる企ても絶対に容赦しないし、今回の事件の黒幕を最後まで明らかにする。
우리는 존엄높은 자주의 강국,핵강국의 영상을 훼손시키려는 그 어떤 시도도 절대로 용납하지 않을것이며 이번 사건의 흑막을 마지막까지 깨깨 파헤쳐볼것이다.
我々は、マレイシア側の今後の態度を見守る。
우리는 말레이시아측의 앞으로의 태도를 지켜볼것이다. (끝)
『朝鮮中央通信』、조선법률가위원회 대변인 말레이시아측의 비우호적인 태도를 단죄
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「心臓ショック」を言っているが、それは直接的な死因であり、「心臓ショック」を引き起こした原因をマレイシア当局は究明しようとしている。特に、不審な女性が被害者に飛びかかった直後の死亡であればなおさらである。そんなことは、北朝鮮の「人民保衛部」でも、普通に行うはずである。
北朝鮮は、自ら「我が公民が、マレイシアの地で死亡したので、それに対する最も大きな責任はマレイシア政府にある」と言っているのだから、「最も大きな責任」があるマレイシア政府が、事件の全容解明に努めていることに全面的に協力することが筋で、事件解明の鍵となる「死体の引き渡し」など今は要求すべきではない。マレイシア政府は、親族のDNAが確認できれば引き渡すと明言しているのだから、そんなに引き渡して欲しいのなら、「元帥様」と「副部長同志」の「お母様」問題を公にしたくないのであれば、公式の場に登場していない「共和国公民」の義理の弟(金正哲)のDNAでも提供すれば、父親が同じ親族であることは確認されるであろう。これも、金正男の息子、金ハンソルがDNAを提供する前にしなければ、間に合わない。
「法律家委員会スポークスマン」は、「手に付けた女だけ死なない毒などあるのか」と言っているが、マレイシア警察が死因となった毒物を検出、特定できないと、北朝鮮の主張通り原因不明の「心臓ショック」死ということになってしまう。昨日の記事にも書いたが、北朝鮮は毒物が検出されないという自信があるように思えてならない。
マレイシア警察の毒物検査に時間がかかっているのも、これと関連しているのではないだろうか。
なお、「朝鮮中央通信」には、上の要約ではなく、全文も掲載されているので、そちらもこれから読んでみることにするが、ほとんどの場合、北朝鮮が言いたいことは要約に含まれているので、とりわけ重要な主張は書かれていないと思う。あれば追記する。
<追記2>
全文では、「南朝鮮」のみならず、米国もこの事件の背後にいるようなことが書かれており、マレイシア非難で上に書かれていない部分は以下。
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現在まで、マレイシア警察が行った捜査状況を犯罪捜査学的見地と法律的見地から見れば、全てが矛盾だらけである。
현재까지 말레이시아경찰이 진행한 수사정형을 범죄수사학적견지와 법률적견지에서 보면 모든것이 허점과 모순투성이들뿐이다.
まず、初期、心臓ショックによる死亡であると結論づけたのを、何の端緒もなく無前提的に無前提的に「毒殺」と固執したことだ。
우선 초기 심장쇼크에 의한 사망이라고 결론했던것을 아무런 단서도 없이 무작정 《독살》이라고 고집한것이다.
心臓ショックと結論づけたのがマレイシア病院側であり、「毒殺」という世論を広げているのが南朝鮮メディアであるという点を考慮すると、どうしてマレイシア警察が自国の病院側の結論を信じることなく、確認もされていない他人の言葉に無前提的に従ったのかという点である。
심장쇼크라고 결론한것이 말레이시아병원측이고 《독살》이라는 여론을 퍼뜨린것이 남조선언론이라는 점을 고려해볼때 어째서 말레이시아경찰이 자국병원측의 결론을 믿지 않고 확인도 되지 않은 남의 말부터 무작정 따랐는가 하는것이다.
マレイシア警察側が、記者会見で死亡原因について確定できていないと言いながらも、毒殺検査結果を待っていると矛盾することを言ったのは、彼らが初めから死亡原因を「毒殺」に固着させていたことを彼ら自らが立証していることになる。
말레이시아경찰측이 기자회견에서 사망원인에 대해 확정할수 없다고 하면서도 독성검사결과를 기다린다고 모순되는 소리를 한것은 그들이 처음부터 사망원인을 《독살》로 고착시켜놓고있었다는것을 그들스스로가 립증한것으로 된다.
(中略)
最も重大なことは、マレイシア警察が今回の事件を「共和国公民の背後操縦」説によるものと間違った方向に誘導している点である。
가장 엄중한것은 말레이시아경찰이 이번 사건을 《공화국공민들의 배후조종》설에 의한것으로 오도하고있는것이다.
17日、マレイシア警察は、我が大使館に知らせることもなく、マレイシアで働いている我々公民の住宅に突然突入し、無前提的に彼を逮捕しながら、彼の家族まで殴打する行為を行った。
17일 말레이시아경찰은 현지 우리 대사관에 알리지도 않고 말레이시아에서 일하고있는 우리 공민의 살림집에 불의에 들이닥쳐 무작정 그를 체포하면서 그의 가족들까지 구타하는 행위를 저질렀다.
19日、マレイシア警察庁副総監が、捜査結果というものを発表しながら、事件当日である13日、北朝鮮人がマレイシアを出国し、周辺国(複数)に行ったので、全て犯罪嫌疑者達であると言ったが、、事件当日、マレイシアから出国した他国の人は嫌疑を受けず、なぜ我が公民だけ嫌疑対象になるのかという点である。
19일 말레이시아경찰청 부총감이 수사결과라는것을 발표하면서 사건당일인 13일 북조선사람들이 말레이시아를 떠나 주변나라들에 갔기때문에 모두 범죄혐의자들이라고 하였는데 사건당일 말레이시아에서 출국한 다른 나라 사람들은 혐의를 받지 않고 왜 우리 공민들만 혐의대상으로 되는가 하는것이다.
こうした矛盾点は、マレイシア警察が客観性と公正性なく、誰かの操縦により捜査方向を定め、意図的に事件嫌疑を我々になすりつけようとしていることを示している。
이러한 모순점들은 말레이시아경찰이 객관성과 공정성이 없이 그 누구의 조종에 따라 수사방향을 정하면서 의도적으로 사건혐의를 우리에게 넘겨씌우려 한다는것을 보여준다.
我が共和国は、法的保護を受けなければならない外交旅券所持者である我が公民が死亡したことについて、被害者の立場から異見が多かったが、マレイシア警察の公正で客観的な捜査を信じて耐えてきた。
우리 공화국은 응당 법적보호를 받아야 할 외교려권소지자인 우리 공민이 사망한데 대하여 피해자의 립장에서 의견이 많았지만 말레이시아경찰의 공정하고 객관적인 수사를 믿고 인내성을 발휘하여 왔다.
「朝鮮法律家委員会スポークスマン談話」
조선법률가위원회 대변인담화
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北朝鮮大使館2等書記官や高麗航空職員の関与に対する反論はこの時点ではなかった。「談話」発表後に、マレイシア警察が発表したため、間に合わなかったのであろう。
空港での北朝鮮籍の男4人については、私も少し考えた。自動チェックイン機の近くにあるカフェで「自動チェックイン機の方を監視していた」とのことであるが、私も空港の待ち時間にカフェにいるときは、周囲を眺めている。そういうことからすれば、偶然彼らの視線が金正男が立っている自動チェックイン機の方に向けられていたとしても、「監視」と決めつけることはできない。また、殺害直後の出国とされているが、出国するから空港に来ているのであって、私の目の前で何か事件があっても、私は自分の用事を優先して出国するであろう(警察などから特段の捜査協力要請があれば、出国を遅らせるにしても)。この点については、客観的に考えて、北朝鮮の主張にも一理あるような気がする。
23日、「朝鮮中央通信」が、「敬愛する最高領導者金正恩同志をお招きし、功勲国家合唱団創立70周年記念公演盛大に開催」という記事を配信し、同行者として黄炳瑞の次に崔龍海を紹介している。
しばらく、「光明星節」関連の重要行事に出席しなかった崔龍海であるが、久しぶりに名前が出てきた。失脚、病気、秘密外遊という3つの可能性を過去記事に書いたが、失脚の可能性はなくなった。病気の可能性は依然として残るものの、中国との関係からすると、やはり秘密外遊だった可能性が最も高くなる。数日中に、この演奏会の様子は「朝鮮中央TV」で「録画実況」として放送されるであろうから、その際、崔龍海の様子は詳しく観察することができよう。
今年が同楽団創立70周年と言うことは気付いていなかった。昨夜、「朝鮮中央TV」で、「功勲国家合唱団」に関する長詩を放送していたし、過去記事で紹介した最新の『<新しく出た歌>社会主義ただ一途へ』も同合唱団によるものであったことからして、今思えばそういうことなのだったと思う。
「光明星節」関連で何か音楽会が開催されるとは思っていたが、「モランボン」でも「青峰」でもなく、今年は「功勲国家合唱団」ということになるのであろう。
全くの偶然であるが、数日前に一部字幕を付けて紹介した非公開「映画文献」の中でも、高英姫が「(将軍様は)辛いときは、功勲国家合唱団の歌で新たな力を得」ていたと言っている。昨夜、放送されていた長詩を聞き直し、「将軍様」と同楽団の関係を確認したいと思う。
<追記>
『労働新聞』に写真が1枚掲載された。「元帥様」の左2人目が崔龍海。

Source: 『労働新聞』、「경애하는 최고령도자 김정은동지를 모시고 공훈국가합창단창립 70돐 기념공연 성대히 진행」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2017-02-23-0001_photo
22日のThe Starによると、駐マレイシア北朝鮮大使館は報道声明を出し、その中で「死因は毒によるものではない」と主張している。その理由として、「毒であれば、女性も死亡しているはずだ」とし、さらにマレイシア警察が死因を科学的に特定できていない点を追求している。
The Star, It couldn't have been poison, says North Korea, Read more at http://www.thestar.com.my/news/nation/2017/02/22/it-couldnt-have-been-poison-says-north-korea/#QdkRtGK3sdAUC26B.99
北朝鮮側は、毒殺であるという科学的証拠を出ないことに自信がを持っているようにも感じる。確かに、それほど強い毒性物質であるならば、容疑者の女性にも何らかの健康異常が発生しても不思議ではないと過去記事に書いたが、考えてみれば、2人の女性を使っているので、それぞれにAとBという単体では無毒な物質を持たせ、金正男の顔になすりつけることで混合させ、強毒性の物質に変化させたのかも知れない。1人の女性が手袋をしていたのは、後に付ける物質と直前に付けた物質の化合物が自分の手に付着しないようにするためではなかったのだろうか。
そして、北朝鮮大使館が、毒性物質が検出できないことに自信を持っているのは、体内に吸収されると消えてしまう性質の物質だからなのかも知れない。
化学の知識も医学の知識もないが、スパイ小説のように想像を巡らせるとそんなことになりそうだ。
22日のThe Starによると、マレイシア警察が北朝鮮側に容疑者の引き渡しを要求した。
容疑者の1人は駐マレイシア北朝鮮大使館の2等書記官、もう1人は高麗航空の社員という。彼らは、マレイシア警察が金正男事件と関連しているとして注目している7人のうち2人というが、既にマレイシアから出国したとされる4人なのか、依然として確認されていない1人なのかは明らかにされていない。
マレイシア警察は、北朝鮮側が容疑者引き渡しに応じなければ、逮捕状を請求するとしている。
マレイシア航空社員は、一般人なので逮捕状が出れば逮捕できるが(北朝鮮大使館にかくまわれていると面倒なことになるが)、2等書記官の方は外交官特権を行使されると、身柄を拘束することは難しい。
大使館員が容疑者であると名指しされた北朝鮮大使は、どのように反論するのであろうか。本件、マレイシア当局は「政治問題化」することなく、穏便にことを進めようとしていたが、北朝鮮大使の発言がマレイシア首相まで「外交的に無礼」と怒らせてしまったので、マレイシアと北朝鮮の政治問題に発展してきている。
本来ならば、北朝鮮は北朝鮮大使を報復で召還させたいところなのだろうが、召還してしまうと、現地で反論できる人間がいなくなってしまうので、召還は避けているのであろう。
北朝鮮が容疑者引き渡しに応じる可能性はないので、マレイシアと北朝鮮の関係は断交か、そうでなければ断交直前にまで悪化することになろう。
The Star, IGP to North Korea: Hand them over, Read more at http://www.thestar.com.my/news/nation/2017/02/22/igp-to-north-korea-hand-them-over/#9K0BxjUDhr2r8DUH.99
<追記>
New Straits Timesにも同様の記事があり、「あと2人の容疑者を捜している」と書かれている。混乱しているが、これまで言われていた容疑者に加えて新たに2人なのだろうか。2人は、北朝鮮大使館2等書記官ヒョン・グァンソン(44)、高麗航空社員の金ウクイルとされている。
New Straits Times, Jong-nam murder: Two more N. Korean suspects sought, says IGP, Read More : http://www.nst.com.my/news/2017/02/214447/jong-nam-murder-two-more-n-korean-suspects-sought-says-igp
22日のNew Straits Timesによると、マレイシア警察署長が、「女性容疑者は、持っていたものが毒物であることを知っていた」と述べたと伝えた。その理由として、マレイシア警察署長は、女性容疑者が「犯行後直ぐにトイレに向かい、手を洗っている」をあげているが、毒物ではなくても、汚いものやベトベトしたものが手に着いていれば、手を洗いたくなるのは普通だと思うのだが。
毒物だと知って、冷静に金正男の顔に付けたのであれば、普通の女性ではなく、訓練を受けた工作員ということになる。怨恨が理由の犯罪であれば、時として結果を恐れず人は残酷な行為をするが、この女性は金正男に個人的な恨みはないはずである。
New Straits Times, Female suspects in Kim killing knew it was poison attack: IGP, Read More : http://www.nst.com.my/news/2017/02/214429/female-suspects-kim-killing-knew-it-was-poison-attack-igp
22日付けの『労働新聞』に「特級人権犯罪国日本の人権実状を暴露する-朝鮮民主主義人民共和国国際問題研究院告発状」なる長文の記事が掲載された。
この種の記事は、日本当局による朝鮮総連に対する「弾圧」を糾弾する際にしばしば登場するが、今回の記事にも最後の方に総連に対する「弾圧糾弾」が書かれているものの、3分の2以上は、日本の社会・経済問題についてである。北朝鮮のこの種の記事は、第二次世界大戦中を含む、20世紀の古い話ばかり書かれていることが多いが、この記事では2015年12月の電通社員が過労を苦にして自殺した事件についてまで触れられている。記事には、
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しかし、日本では大財閥の利益だけを重視する当局の反人民的な労働施策により、日本固有の社会的疾病である過労死、部下虐待、賃金格差、失業など、重大人権侵害が根絶されておらず、生きる権利さえ時々刻々危険に晒されている。
그러나 일본에서는 대재벌의 리익만을 중시하는 당국의 반인민적인 로동시책들로 하여 일본고유의 사회적질병인 과로사, 하급학대, 임금격차, 실업 등 중대인권침해가 근절되지 않고있으며 삶의 권리마저 시시각각 위협당하고있다.
2015年12月、電通広告会社の24歳の新入女性社員が、過酷な長時間労働を苦にして、「体も心もずたずた」という遺書を残し、自ら命を絶ったことは、「息が止まるまで働かなければならない」日本の反人民的労働制度を如実に表している。
2015년 12월 덴쯔광고회사의 24살 난 신입녀성사원이 가혹한 장시간로동에 시달리다 못해 《몸도 마음도 갈기갈기!》라는 유서를 남기고 스스로 목숨을 끊은것은 《숨이 질 때까지 일하지 않으면 안되는》 일본의 반인민적로동제도를 여실히 드러낸것이다.
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と書かれている。電通の長時間労働は日本で大きな問題となっていることは事実であるが、これまで紹介してきた北朝鮮映画の中でも、「首領決死擁護」のために工場で長時間労働をし、場合によっては開発中の溶鉱炉の中に実験データを取りに行くために入り、焼け死ぬという「英雄」も登場する。「首領決死擁護」も「財閥決死擁護」も「反人民的労働制度」である。
その他に、「ネットカフェ難民」などについても書かれており、全訳したい記事であるが、ともかくとても長いので、金正男事件がおちついて、ニュースがなくなってきたら全訳を出したいと思っている。
そうだとして、金正男事件で世界が騒いでタイミングでこんな記事を出してくるというのは、北朝鮮は血迷ったのであろうか。
この記事を題材にした番組を「朝鮮中央TV」で放送してくれることに期待している。
『労働新聞』、「특급인권범죄국 일본의 인권실상을 폭로한다 조선민주주의인민공화국 국제문제연구원 고발장」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2017-02-22-0028
22日、The Starに、マレイシア人の北朝鮮旅行に関する記事が出ていた。このところ行っていないが、かつてマラヤ大学と仕事をしていた頃、同大学の各民族(マレー系、中国系、インド系)の先生と深い交流があった。1月近く滞在したこともあったので、色々と話をしたが、北朝鮮は当然のこと、韓国に対する関心もほとんどなく、話題に上がらなかったという記憶がある。一方、マレイシアでは日本の経済的プレゼンスが圧倒的であったことも印象的であった。
私がマレイシアをしばしば訪問したのは、もう十数年前の話なので、状況は変わっているかも知れないが、韓国はさておき、マレイシア人が未だに北朝鮮旅行に関心がないことは、容易に想像できる。
The Starの記事によると、マレイシア人が北朝鮮に入国するためには、「入国許可証」が必要で、許可証を取得するためには、私が平壌や羅先を訪れた時に使ったような、フルパッケージの旅行商品を購入する必要があるという。イメージとしては、私が羅先に行く際、北朝鮮への入国で使用した「入国許可証」と同じだと思う。
The Starは、マレイシアの旅行会社2社にインタビューをしているが、両社とも北朝鮮への旅行パッケージを販売したことはないと回答している。
The Star, M’sians not keen on visiting North Korea, Read more at http://www.thestar.com.my/news/nation/2017/02/22/msians-not-keen-on-visiting-north-korea/#8dEmBC8xoeBIJOYv.99
本当に長い間行っていないが、マレイシアの新聞に出てくる地名や、TOMBO Enterpriseまでの道筋を案内するYouTube動画を見ていると、自分が走った道も出てきたりして、とても懐かしくなる。XX洞の北朝鮮もよいが、XXJayaのマレイシアにまた行きたくなった。
22日、New Straits Timesにマレイシア警察に金正男事件の容疑者として逮捕されている李ジョンチョル容疑者に関する記事が出ていた。
New Straits Times, For over three years, Kim murder suspect lived mystery life in Malaysia, Read More : http://www.nst.com.my/news/2017/02/214401/over-three-years-kim-murder-suspect-lived-mystery-life-malaysia
記事によると、李容疑者は3年前からマレイシアに就業ビザで滞在しているが、ビザ取得のための書類を作った会社(TOMBO Enterprise)には、一度も出社していないし、同社は李容疑者に賃金を支払ったこともないという。TOMBOというので、日本の鉛筆会社を連想してしまったが、同社に関するHP等を調べてみると、日本の鉛筆会社とは全く関係なく、健康水や健康サプリを販売している会社ということであった。
同社の社長は、北朝鮮をしばしば訪れているが、李容疑者とは同容疑者クアラルンプールを訪れたときに出会ったという。社長は、李容疑者を「助ける」ために偽の就業契約書類を作成したというが、「助ける」というのは、「脱北」させるということではなく、どうやら、李容疑者の茸ビジネスを「助ける」ということのようである。李容疑者は娘(通訳として)と共にしばしば社長の所に来て、「癌に効く茸」(いかにも北朝鮮の製品らしい)のプレゼンをしたという。
その娘であるが、HELP Universityというマレイシアの私立大学に在学中という。興味深いのは、同大学が2013年に「元帥様」に名誉経済学博士号を授与したという話である。授与の理由は、「北朝鮮の教育と人民生活の向上のために多くのたゆまぬ努力をした」からという。『逸話で見る偉人像』をよく読めば書いてあるのかも知れないが、「元帥様」が名誉博士号を保持しているというのは初耳である。そして、そんな大学に李容疑者の娘が在学しているという話もおもしろい。
これまで、北朝鮮人と接触するのは中国かと思っていたが、マレイシアもあったということになる。金正男事件がなければ、これほどまでに北朝鮮とマレイシアの関係は報道されなかったであろう。マレイシアから平壌に直行便があった(現在は、休航中)ぐらいは知っていたが、ノービザで双方行き来できるとまでは知らなかった。
そのクアラルンプールにも北朝鮮食堂があり、北朝鮮人などが来ていたらしいが、金正男事件後シャッターが下ろされており、警備員が警戒しているという。北朝鮮食堂の2階が人民軍偵察総局のアジトだったという記事もNew Straits Timesに出ていた(過去記事なので、検索して出てきたらソースを書いておく)。
22日10時半頃の北朝鮮船籍の船の位置を調べてみた。
下の図にあるように、南浦沖にいる多くの北朝鮮籍(黄色い丸)の船は、南浦に向けて航行している。しかし、1隻だけ、船首を中国に向けて航行している北朝鮮籍船(白い丸)がいる。データでは、威海に向かって航行していると出てくるが、出港港も威海とされているので、正確なデータなのかは分からない。航跡トラックを見ると南浦方面から航行してきている。
この図では、南浦に向かい航行している船が多くなっているが、北朝鮮に関しては、出港する船よりも帰港する船のAISが多く捕捉されている。北朝鮮船舶が出港時にはAISをONにせず、帰港時には中国にトラックされる地点まではAISをONにしているのかもしれない。そうでなければ、北朝鮮沿岸ではMarine TrafficにAISデータを提供する受信局が存在しないので、受信できていないだけなのかも知れない。おもしろいのは、南浦港に入港後もAISが捕捉できていた船舶もいるということである。現在、AISデータとして残っているのは、2隻で、1隻はフィジー船籍の「VAST LINE」という貨物船、もう1隻は北朝鮮船籍の「金剛山」という貨物船である。外国船籍の船がAISを発信しっぱなしにしているのは分かるが、「金剛山」も受信できているところが興味深い。
しかし、そのようなMarine Trafficの特性を割り引いても、帰港している船が多きことは間違いない。中国に向かい航行している船は、石炭以外の品目を積んでいるのだろうか。

Source: Marine Traffic, 2017/02/22 1015JST頃
一方、竜口港を見ると、昨日見た8隻の北朝鮮船籍船(黄色い丸)はほぼ同じポジションで停泊している。しかし、知らぬ間に「小白水(SOBAEKSU)という北朝鮮船籍の貨物船が埠頭で停泊している。中国が「一時中止」を厳格に履行しているのであれば、石炭以外の貨物のつみおろしをしているのであろう。

Source: Marine Traffic, 2017/02/22 1030JST頃
20日朝の「朝鮮中央TV」の放送開始部分を見ていたら、「今日の放送順序」の画面が変更されていた。これまでは、背景に景色が蟻、その上に四角いウィンドウをはめ込んでいたが、変更後は、ウィンドウが小さくなり放送時間などは別のウィンドウで表示されるようになった。
20日前数日間、開始直後の録画ができていないのでいつ変更されたのかははっきりしないが、16日は以前の映像なので、17日~20日の間に変更があったと思われる。
なお、テレビ放送の最後に放送される「明日の放送順序」は、これまでと変わっていない。
日本語字幕付き。
Source: KCTV, 2017/02/20
2016年12月17日の「今日の放送順序」。
Source: KCTV, 2016/12/17
19日、uriminzokkiriに「第7回光明星節料理技術競演」の様子を紹介する動画がアップロードされた。同「競演」については、過去記事でも扱ったので、この動画に特段新しいものが出てくるわけではないのだが、以下所だけ謎のボカシがあるので紹介しておく。

Source: uriminzokkiri, 2017/02/19
上の写真は、茹で魚の料理のように見える。皿の横(写真では上)に置かれている黄色い物体にボカシがかけられている。この動画では、この魚料理が出された瞬間、フワッと湯気が上がるので湯気なのかと思って見ていたが、このようにキャプチャしてみると、円形のボカシが入れてあるように見える。食材か調味料だと思うのだが、「我々のもの」ではない何か不適切なものだったのだろうか。
しかし、その横にあるカセットコンロを見ると、CEナンバーの後がCNとなっているので、中国製だと思われる。中国製だとすると、「我々のもの」ではないのだが、こちらにはボカシは入れてない。

Source: uriminzokkiri, 2017/02/19
ボカシなど入れなければ、気にもならずに通り過ぎる場面なのだろうが、ボカシが入ったせいでよけいに気になってしまう。
動画はこちら。
Source: uriminzokkiri, 2017/02/19
21日に行われた中国外交部の定例記者会見で、中国の北朝鮮産石炭輸入一時停止措置に関する質問が出され、報道官が答弁した。
報道官は、「安保理決議2321は、2016年12月と2017年の北朝鮮からの石炭輸出に制限を加えている」と前置きした上で、「中国の関連部門の統計によると、中国による北朝鮮からの石炭輸入は概ね決議で設定された制限に達した。したがって、今年末まで石炭輸入を中止する公告を出した。・・・これは、中国が北朝鮮の核問題に対する責任ある姿勢と安保理決議を誠実に履行していることを示している」と述べている。
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<追記>
「中国による北朝鮮からの石炭輸入は概ね決議で設定された制限に達した」と訳したが、「達するものと推計された」訳した方が適切だった。こうしておけば、以下に書いた、「現時点では達していないが、このままのペースで輸入を続けると超過する」という意味で整合する。
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もし、報道官の発言通りであれば、2ヶ月にも満たない間に、中国は2017年割当量輸入したことになる。
Ministry of Foreign Affairs of the PRC, Foreign Ministry Spokesperson Geng Shuang's Regular Press Conference on February 21, 2017, http://www.fmprc.gov.cn/mfa_eng/xwfw_665399/s2510_665401/2511_665403/t1440264.shtml
数日前まで、各国から報告された数値が出ていなかった国連関連ページに、数値が出ていた。
2016年12月 2,001,634.429トン (総割当量の100%)
2017年1月 1,441,985.6 (総割当量の19.22647%) 報告国数 1 (中国と思われる)
2017年2月18日までにほぼ同量の石炭を中国が輸入したとしても、総割当量の40%にしか満たない。国連のページには金額が記載されていないので、金額ベースで400,870,018ドルを超過した可能性はあるが、いくらなんでも石炭の国際取引価格がそこまで急騰しているとは思えない。だとすると、中国外交部の報道官が言っている「概ね達した」というのは、安保理決議の割当総量ではなく、中国政府が予定していた輸入総量の可能性がある。
そうでなければ、このペースで輸入を続けると、5月には重量ベースで総割当量に達してしまうので、ここで一度輸入を「一時中止」し、しばらく後に残りの割当量を確認しつつ、輸入を再開するということなのかもしれない。
いずれにせよ、安保理決議を誠実に履行しているという姿勢を国際社会、特に米国に示しつつ、北朝鮮に当面の圧力を加える中国のこのやり方は上手い。
UNSC Subsidiary Organs, Procurement of DPRK coal by Member States, https://www.un.org/sc/suborg/en/sanctions/1718/procurement-of-dprk-coal-by-member-states
<追記2>
いつも、私が中国語の訳文で困っているとき、タイムリーに訳文を教えて頂く方からコメントを頂戴した。中国語は感じなので、眺めていれば、何となく意味は分かるものの、やはり正確な意味はきちんとご存じの方でなければ理解できない。本当に有難い。
その方のご指摘で気付いたのだが、中国外交部報道官は、「量と額」と前置きしておきながら、「額では」と言っている。ここは、見落としていたが、中国の推計では「金額的に安保理割当総額に近づいている」ということのようだ。
しかして、そんな額になっているのであろうか。上の安保理機関のHPを見ると、2016年12月分に関しては金額が明示されているが、2107年1月分に関しては金額が記されていない。そこで、2016年21月分を参考に1トン当たりの金額を出してみると、約91ドルになる。国際石炭取引価格を見ると、2016年9月辺りから急騰し始め、11月には100ドルを超えている。12月には若干落ちてはいるものの、依然として90ドル台にある。こうしたことからすると、12月分を91ドルと計算しているのは妥当である。申告書には総量と金額を記入するようになっているので、2016年12月分については、中国当局が国際取引価格を反映させて申告していることになる。
そして、2017年1月の総輸入量に1トン=91ドルを乗じてみると、輸入金額は131220635ドルとなり、2017年割当額の約33%となる。2月半ばまで石炭輸入を続けたとしても、多くても45~46%ぐらいであろうか。国際取引価格が、2017年初旬に2倍に跳ね上がっていれば、当年度の割当額を充足することになるが、さすがにそれはないのではないだろうか。
だとすると、中国が「金額的に」としている点については、依然として疑問が残る。
世界経済のネタ帳、石炭価格の推移、http://ecodb.net/pcp/imf_usd_pcoalau.html
中国商務省が発表した北朝鮮産石炭輸入一時停止措置が効いているようだ。やはり、19日からこの措置を執行しているようである。
下は2017年1月28日11時半頃のMarine Trafficでみた状況で、過去記事でも紹介した。青丸で囲んである中の船で南浦(Nampo)に船首か船尾を向けている船のほとんどは、北朝鮮船籍の船である。

Source: Marine Traffic, 2017/01/28 1140JST頃, https://www.marinetraffic.com/en/ais/home/centerx:122/centery:38/zoom:8
ところが、2月21日10時半頃に同じ場所を見ると、船がほとんどいない。全ての船をくまなく確認したわけではないが、南浦方向に向かっている船をざっと調べたところでは、黄色いマークがしてある船2隻のみであった。

Source: Marine Traffic, 2017/02/21 1030JST頃、https://www.marinetraffic.com/jp/ais/home/centerx:123/centery:39/zoom:8
中国商務省が「一時停止」を決定したと報じた日から、時々Marine Trafficで確認してきたが、徐々に減り、ほとんどいなくなったという感じがする。これが一時的な状況なのか否かは、もう少し続けて観察してみないと分からないが、現時点では中国の措置が効いているようである。
また、この措置が執行される前に北朝鮮を出港し、既に目的地近海にいた船も入港禁止にされているようである。下は、以前にも北朝鮮船籍の船が出入りしていると紹介した山東省竜口港であるが、港の沖合に多くの北朝鮮船籍の船舶が停泊している。ここには、中国船籍の船に混ざり、数隻の北朝鮮船籍船舶はだいたいいつも停泊しているが、これほど大量に集まって停泊しているのは、私が観察を始めてからでは初めてである。上同様、黄色くマークしたのが北朝鮮船籍船である。竜口港には、過去記事でも見たように、Google Earthで見ると、埠頭には石炭と思われるものが大量に積まれている。

Source: Marine Traffic, 2017/02/21 1040JST頃、 https://www.marinetraffic.com/jp/ais/home/centerx:120.3/centery:37.7/zoom:12
昨夜確認した時点で唯一入港していたKUMSAN BONGという北朝鮮籍の貨物船は、20日23時48分に竜口を出港し、南浦に向かっている。もし一時停止措置がしばらく続くのであれば、この船が当面入港できる最後の船になるのではないだろうか。

Source: Marine Traffic, 2017/02/21 1050JSTJST頃、 https://www.marinetraffic.com/jp/ais/home/shipid:677610/zoom:10
竜口沖で停泊している北朝鮮の船は、単に入港の順番待ちをしている可能性はあるが、行き場を失って、本国からの指令を待っているのかも知れない。依然として姿を見せない崔龍海が中国に行ったとすれば、どのような話をしてきたのかとも合わせて気になるところである。
「お母様問題」を前の記事で書いたので、少しだけ字幕を付けて塩漬けにしてあった高英姫宣伝映画『先軍朝鮮の偉大な母』のはじめの22分を公開しておく。
途中、あまりおもしろくない部分が続き、最後の方で高英姫の肉声と「元帥様」の幼少時代の写真などが出てくるので、それを第2部として字幕が準備できたら公開する。
途中、「将軍様」の提案で家族皆で軍部隊を訪れたとあるが、残念ながら、家族は出てこなかった。「元帥様」、金正哲、「副部長同志」が出てくればおもしろかったのだが。また、この頃、金正男が家族扱いされていたのかも確認できる重要な場面だが、外されてしまった。
Source: 不明
<追記>
最後の部分に字幕を付けた。「お母様」の50歳の誕生日に、「お母様」が読み上げた祝杯の辞が肉声で収録されている。また、「お母様」は、「(「元帥様」が)自分の実力で人民の前に立つ」とも言っているが、「将軍様」あっての「実力」ということはさておき、世襲競争の中で金正哲にも、金正男にも勝ち抜いて指導者になるということを言いたかったのだろうか。かつて、「モランボン楽団」の飛行士公演で上映されたスライドに天然パーマの男の子が後ろ向きで操縦桿を握る場面があり、未だに天然パーマの金正哲ではないかと書いたが、この「映画文献」に登場する幼い頃の「元帥様」は天然パーマである。「青年大将」時代の「元帥様」の写真も出てくるが、この頃の髪型の方がかっこいいと思うのは私だけだろうか。
Source: 不明
21日、「朝鮮中央通信」が、「元帥様」が「サムチョン・ナマズ工場を現地指導」したと報じたが、同行者の中に崔龍海の名前はなかった。
경애하는 최고령도자 김정은동지께서 세계적수준의 대규모양어기지로 훌륭히 전변된 삼천메기공장을 현지지도하시였다
20日のマレイシア新聞The Starによると、駐マレイシア北朝鮮大使金チョルが、マレイシア警察が李ジョンチョル容疑者を逮捕する際に拳銃を突きつけ、10歳の息子に暴行を振るったと非難したという。また、同大使は、本事件のマレイシアと北朝鮮の合同捜査を申し出たという。
以前の記事にも書いたが、北朝鮮大使は自国民の保護をマレイシア政府に要請するところまではよいとし、殺人事件の合同捜査などあり得ない。北朝鮮で逮捕された米国人の合同捜査を米国側が申し込んだら、受け入れるとでも言うのだろうか。
The Star, Malaysia and N. Korea on verge of diplomatic row, Read more at http://www.thestar.com.my/news/nation/2017/02/20/malaysia-and-n-korea-on-verge-of-diplomatic-row/#WVTrbf62Wv0XBXPf.99
マレイシアの新聞、The Starによると、金正男の息子金ハンソルがまもなくAK8321便でクアラルンプールに到着する。今後、父親の遺体の確認等を行うものとみられる。
The Star, Jong-nam’s son Han-sol arriving in KL, http://www.thestar.com.my/news/nation/2017/02/20/han-sol-arriving-in-kl/
<追記>
金ハンソルがマレイシアに来るという情報は、誤報だったようだ。
New Straits Times, Media sent on wild goose chase at KLIA2 over rumours of Jong-nam's son's arrival, Read More : http://www.nst.com.my/news/2017/02/214124/media-sent-wild-goose-chase-klia2-over-rumours-jong-nams-sons-arrival