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    「限りなく醜悪な米国のヒステリー茶番劇」:金正恩そっくりさんが登場する米国映画『インタビュー』を非難、「元帥様」の全裸も (2014年1月28日 「uriminzokkiri」)

    「元帥様」のそっくりさん(そんなに似ているとは思わないが)登場する米国映画『The Interview』については過去記事で紹介した。

    "The Interview" Official HP, http://theinterviewmovie.tumblr.com/

    同映画の公式HPによると、米国とカナダでの公開はクリスマスに合わせた12月25日になっている。 現在のところ、日本での公開は決まっていない。早く見たいのだが、米国まで見に行くことはできないので、DVDが出たら輸入しようと思っている。

    公開1ヶ月を前にuriminzokkiriがこの映画に抗議する記事を掲載した。記事は外国語に翻訳されていないようなので、ここで全文翻訳して紹介しておく。

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    限りなく醜悪な米国のヒステリー茶番劇

    米国が我々の最高尊厳を悪辣に中傷する反共和国映画『インタビュー』の最終予告編を公開するという騒ぎをした。

    我々の現実を幼稚にも荒唐無稽な虚空で無知に誤った方向に誘導しながら、我々の最高尊厳を何も気にせず冒涜中傷する場面で作られた映画は、クリスマスに公開されるということである。

    米国の反共和国謀略策動は、その卑劣さと醜悪さにおいて限界を超えただけではなく、ついに映画芸術分野にまで悪用するに至った。

    完全な現実歪曲と奇異な想像で作られた謀略映画上映騒ぎは、尊厳高い我々共和国に対する極悪な挑発行為であり、正義がある我々人民に対する耐えがたい冒涜である。

    少し前には我々の特殊部隊が米国を襲撃する映画を作り反共和国悪宣伝をし、今度は我々の尊厳を冒涜する映画で我々の体制を激しく冒涜しながら、狂乱的な反共和国「人権」謀略騒動を合理化しようという米国の醜態はヒステリー茶番劇といわざるを得ない。

    いかなる圧力も威嚇も通じなくなったので、窮地に陥り、ついにくだらない映画のたぐいで日々高まっていく我々共和国の権威を揺さぶろうともがいている米国が惨めでならない。

    奴らの侵略的妄想を実現するために幼稚な映画まで作り、ヒステリーを起こしている米国こそが、限りなく醜悪な野蛮の国、天罰を受けなければならない悪の帝国である。

    根拠のない中傷と冒涜で埋め尽くされたこの種の映画を通して、人々はむしろ侵略野望と貪欲で腐った狂った米国の真っ黒な腹の内を一層はっきりと見ることになるであろう。

    映画人の本来の道と良心を捨て、謀略軍が投げてくれる僅かなドルで買われ、今回の映画を企画・演出し、その中に面を出したクズ共は、我々の断固たる懲罰を受けなければならない。

    uriminzokkiri, http://www.uriminzokkiri.com/index.php?ptype=gisa1&no=196882
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    よく読めば『レッド・ゾーン』についても書かれているようだ。しかし、脇役の格までは行かないが、北朝鮮の映画の中にも米国や日本の「最高尊厳」(民主的な方法で選出された指導者)は時々登場している。

    「最終予告編」というのが下のYouTubeに動画だとすると、「元帥様」が全裸で登場する場面もあるようだ。北朝鮮にとっては、きつすぎるジョークなのかもしれない。

    YouTube, The Interview Official Trailer #2 (2014) - James Franco, Seth Rogen Comedy HD, https://www.youtube.com/watch?v=frsvWVEHowg

    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が朝鮮人民軍航空及び反航空軍の女性追撃機飛行士の飛行訓練を指導された」:自らカメラで女性飛行士の写真を撮る金正恩、お爺さんのポラロイド撮影を想起させる、女性の実力を評価 (2014年11月28日 「朝鮮中央TV」)

    金正恩が「航空及び反航空軍の女性追撃機飛行士の訓練を指導」した様子を「朝鮮中央TV」が「録画報道」で伝えた。この女性飛行士部隊の「訓練指導」は以前にもしているが、今回は「僅か数ヶ月前に女性追撃機飛行士を養成するという課業を与えたのに、今日、このように立派に成長した女性追撃機飛行士たちの勇敢な訓練風景を見て、大変満足で喜ばしい」と評価したとのことである。

    今回の「指導」で特筆すべきことは、これまでの「指導」ではなかった自らカメラを持って飛行士の写真を撮影するというパフォーマンスが見られたことだ。報道ではこの様子を「立派な娘をもった両親に(写真を)送ってやり、全国に大きく紹介しようと、彼女らの写真まで親しく撮って下さるという大海のような恩情を施して下さった」と言っている。

    写真を撮影する「最高司令官同志」
    20141128_kctvasf_000758103.jpg
    Source: KCTV, 2014/11/28放送

    「最高司令官同志」が撮影したと思われる写真。しっかりと縦構図になっているが、若干陰の位置がずれているような感じもする。
    20141128_kctvasf_000766605.jpg
    Source: KCTV, 2014/11/28放送

    「最高司令官同志」が撮影する別のカット
    20141128_kctvasf_000769775.jpg
    Source: KCTV, 2014/11/28放送

    上の撮影の結果か。上の写真ではかなりズームを望遠側で撮影しているように見えるので、この写真ではないのかもしれない。
    20141128_kctvasf_000779159.jpg
    Source: KCTV, 2014/11/28放送

    これも「最高司令官同志」の作品か
    20141128_kctvasf_000784479.jpg
    Source: KCTV, 2014/11/28放送

    古い「朝鮮記録映画」を見ていると、農村指導などの際にお爺さん(金日成)がポラロイドカメラで農民の写真を撮ってやっている場面が出てくる。「最高司令官同志」が使っているのはポラロイドではないものの、それに繋がるパフォーマンスではないかと思われる。「最高司令官同志」もチェキを準備した方がよさそうだ。

    この指導では、「最高司令官同志」が女性の実力を高く評価しているが、金ヨジョンの「中央委員会副部長」デビューと関連があるのかもしれない。

    「韓国、北朝鮮漁民10人を送還」:竹島近海を漂流と (2014年11月26日 「TASS通信」)

    崔龍海特使訪ロ関連で「TASS通信」の記事を読んでいたら、興味深いものがあった。韓国と北朝鮮の関係は、「ビラ散布」と「人権騒動」で悪化しているが、その裏で接触も行われているようである。「聯合通信」を引用しているので、そちらを読んだ方が良いのかもしれないが、「TASS通信」を基に書いておく。

    同通信によると「エンジンが故障した10人の漁民を乗せた北朝鮮漁船を日曜日夜に韓国当局が無人島である独島(竹島)近くで発見」、「漁民全てが北朝鮮に帰ることを希望したので、東海(日本海)上の北方限界線(NLL)で北朝鮮側に引き渡した」とのことである。島や海の呼称は、「TASS通信」のママである。

    北朝鮮の漁船が竹島からどれほど離れたところで発見されたのかは分からないが、日本が実効支配をしていれば、竹島を中心とした日本の領海内だったのかもしれない。日本政府としては、日本の領海に侵入した北朝鮮漁船を韓国が保護し、北朝鮮に送還したことに対して何かコメントを出したのであろうか。

    それにしても、問題のない日本海(東海)側のNLL越しに漁民を北朝鮮に引き渡したというのは、スマートなやり方である。

    TASS, "South Korea repatriates 10 fishermen to North Korea ", Nov. 26, 2014, http://en.itar-tass.com/world/763715

    「敬愛する金正恩同志の特使のロシア連邦訪問と関連した報道」:崔龍海一行訪ロ総括、ロシア側の報道 (2014年11月26日 「労働新聞」)

    「朝鮮中央TV」では、25日の「20時報道」の中で紹介されていたが、同様の内容の時記事が26日付けの『労働新聞』に掲載された。同記事に出ている崔龍海特使一行の動きを整理しておく。

    ・訪問期間:2014年11月17日から同24日
    ・18日、クレムリンでプーチンと会見、金正恩の挨拶と親書を伝達
    「両国の互恵的な協力をさらに拡大発展させ、意味深い2015年に政治、経済、軍事など、全ての分野での交流と接触をより一層深めようという双方の意思を再確認した」
    ・20日、セルゲイ・ラブロフ外務大臣と会談
    「経済、貿易及び人道主義分野の双務協力を増進させ、国際舞台での協力を強化することをはじめとした伝統的な朝露親善関係をより高い段階に発展させることにおいて発生する問題について深く話し合われた」
    「祖国解放70周年とロシアの偉大な祖国戦争勝利70周年となる来年、共同の慶祝行事を盛大に組織し、代表団交流をはじめとした両国の往来と協力を活発に行うことについて見解の一致をみた」
    「朝鮮半島とその周辺での各種共同軍事演習と武力増強の動き重視し、核戦争威嚇を除去しながら朝鮮半島問題を平和的に調整していかなければならないという共同の認識を再確認した」
    「前提条件のない6者会談再開のために継続的に努力し、会談再開に有利な雰囲気と環境をつくることについての問題が論議された」

    ・ノ・グァンチョル朝鮮人民軍副参謀長と李クァングン対外経済省副相、アンドレ・カルタポルロフ貿易総参謀部副総参謀長兼作戦総局長、アレクサンドル・カルシュカ極東発展相とそれぞれ会談
    「軍事、経済、貿易分野での交流と協力をさらに活性化させることで発生する実質的な問題について意見を幅広く交換した」

    ・崔龍海一行、レーニン廟、偉大な祖国戦争中央博物館、クレムリン城壁にある無名戦士の墓、クレムリンなどを訪問

    ・崔龍海一行、21日からハバロフスク等を訪問
    「ビャチェスラブ・シュポルトゥ、ハバロフスク辺境行政長官とウラジミル・ミクルシェスキー沿海辺境行政長官と会談。両国の関係に適した工業、農業、林業、交通運輸、体育、文化などの分野での地域間協力と交流を拡大強化するための問題を討議した」

    「朝鮮民主主義人民共和国国防委員会第1委員長であられる敬愛する金正恩同志の特使の今回のロシア訪問は、長い歴史がある朝露両国の伝統的な親善協力関係をさらに強固に発展させ、東北アジア地域と世界の平和と安定を保障することにおいて重要な契機となった」

    『労働新聞』、「경애하는 김정은동지의 특사의 로씨야련방방문과 관련한 보도」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-11-26-0002&chAction=T

    「六者会談再開」について、ロシア側からどのような提案が出され、北朝鮮はそれにどのように応じたのだろうか。

    会談の様子
    20141126cherh ru
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지의 특사의 로씨야련방방문과 관련한 보도」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-11-26-0002&chAction=T

    <追記>
    TASS通信の関連記事を読んでいたら、会談の内容の一部が伝えられていた。

    同通信は、ロシアのラブロフ外相が崔龍海特使との会談後に「韓国の専門家、ロシア、北朝鮮の支援を受け、羅津は既にロシアの石炭を韓国に輸出するために使われている」とし、この事業は「ロシアのRZD(ロシア鉄道独占企業体)の協力で改築された羅津港の複合輸送システムターミナルを使って行われている」としている。羅津港を訪れた時、ロシアが建設した埠頭に石炭が積まれているのを目撃したが、それが韓国向けのものであるとは知らなかった。

    また、同外相は「ロシアは、パイロット事業としての石炭供給に続けて、朝鮮半島縦断(Trans-Korean)鉄道とシベリア横断(Trans-Siberian)鉄道連結プロジェクトを始めることを希望しており」、「こうしたプロジェクトが上手くいくことが証明されれば、北朝鮮側はロシアのガスや電気を北朝鮮経由で韓国に供給するなどの三国間プロジェクトを現実的な事業として考える準備があることを確認した」としている。

    ロシアは純粋に経済的な利益を追求しているようであるが、それが媒体となり朝鮮半島の平和と安定に繋がるのであれば良いことである。

    TASS, "North Korea ready to discuss transit of Russian gas to South Korea — Lavrov" Nov. 20, 2014, http://en.itar-tass.com/economy/760867

    これと関連して、別のTASSの記事では、「朝露の貿易・経済関係は、過去数ヶ月間で新たな次元に入った」とし、「ロシアは北朝鮮の赤字を債務を帳消しとし、2020年までに両国間の貿易を10億ドルにする計画がある」と報じている。さらに「北朝鮮の天然資源へのアクセス権と交換で、複数のグループが投資する北朝鮮の鉄道を改善するPobeda(勝利)は250億ドル規模のプロジェクトになると見られる」としている。

    また、「2014年、北朝鮮内のロシア企業従業員にマルチビザが発行されるようになり、現在、ビザなし渡航についても話し合われている」とロシアの極東地域開発相が述べたと伝えている。

    しかし、ラブロフ外相は「北朝鮮の核問題が両国の協力増進にブレーキを掛けている」とし、「六者会談を再開して」この問題について話し合う必要性があることも指摘し、北朝鮮に対しては「国連安保理決議に従う」ことを求めている。

    TASS, "Russian foreign minister to have talks with North Korean leader’s special envoy", Nov. 20, 2014, http://en.itar-tass.com/russia/760649

    <追記2>
    ロシア外務省のHPを見ていたら、上に関連したさらなる情報があったので、箇条書きにしておく。

    ・ロシア企業が開城工団に投資する可能性もある。
    ・6者会談再開で「前提条件のない」ということは、「2005年9.19合意に基づく」ということであり、北朝鮮もそれを希望している。
    ・金正恩のロシア訪問については、具体的に決められなかったが、「合意された期限内に両国の合意の下で」実現する可能性はある。

    The Ministry of Foreign Affairs of Russia, "Remarks and answers to media questions by Foreign Minister Sergey Lavrov during a news conference following talks with Special Representative of DPRK leader Choe Ryong Hae, Moscow, 20 November 2014, 2663-20-11-2014", http://www.mid.ru/BDOMP/Brp_4.nsf/arh/A7417EB3A6EF6A2BC3257D9A002F05F6?OpenDocument

    「敬愛する金正恩同志が朝鮮4.26漫画映画撮影所を現地指導された」:金ヨジョンを「労働党中央委員会副部長」と紹介、妹らしく笑う金ヨジョン、幹部化と紹介作業 (2014年11月27日 「労働新聞」)

    「速報」にも書いたとおり、27日付けの『労働新聞』に掲載された「敬愛する金正恩同志が朝鮮4.26漫画映画撮影所を現地指導された」という記事の中で金ヨジョンを「現地指導」の同行者の紹介の中で「朝鮮労働党中央委員会秘書金己男同志、朝鮮労働党中央委員会第1副部長李ジェイル同志、朝鮮労働党中央委員会副部長たちである金ヨジョン同志、金ウィスン同志が同行した」と紹介した。

    『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 조선4.26만화영화촬영소를 현지지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    金ウィスンは、韓国・統一部の情報によると「国家検閲相」であり、2013年5月から「労働党中央委員会副部長」ということである。金ヨジョンを「大臣(相)」である金ウィスンの前で紹介しているところからすると、それ以上の格の扱いということになる。

    韓国統一部ポータル、人物、http://nkinfo.unikorea.go.kr/nkp/theme/viewPeople.do?nkpmno=7509

    金ヨジョンが写っている『労働新聞』に紹介された写真は、以下のとおりである。

    「野戦服」のようなコートを着た金ヨジョン
    20141127kimuyj1.jpg
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 조선4.26만화영화촬영소를 현지지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    金正恩のジョークを聞いて笑っているように見える金ヨジョン(右端)。妹なので、笑い方が自然だ。
    20141127kimyj2.jpg
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 조선4.26만화영화촬영소를 현지지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    「お言葉」のメモを取らずに笑っている金ヨジョン
    20141127kimyj3.jpg
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 조선4.26만화영화촬영소를 현지지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    この「現地指導」に関する「録画報道」は昨夜の「朝鮮中央TV」では放送されていないので、今日、さらなる写真と共に紹介されるのではないかと思われる。新たな写真が公開されたら、追記で紹介することとする。

    過去記事で予想した金ヨジョンの公式幹部化とその紹介作業が進められているようだ。今後、さらなるポジションが与えられるのかもしれない。

    <追記:11月28日>
    「朝鮮中央TV」の「録画報道」より、金ヨジョンの写真を追加しておく。

    これだけ大きく写しながら横を向いている。
    20141127kju 425manhwaflv_000141190
    Source: KCTV, 2014/11/27放送

    ドアの外に立つ金ヨジョン
    20141127kju 425manhwaflv_000290429
    Source: KCTV, 2014/11/27放送

    20141127kju 425manhwaflv_000331023
    Source: KCTV, 2014/11/27放送

    微笑む金ヨジョン
    20141127kju 425manhwaflv_000431659
    Source: KCTV, 2014/11/27放送

    速報:金ヨジョン「朝鮮労働党中央委員会副部長」と『労働新聞』が報道

    金正恩の漫画撮影所現地指導に同行した金ヨジョンを「朝鮮労働党中央委員会副部長」と紹介した。詳細は、追って。

    「敬愛する金正恩同志が満船の汽笛を高らかに鳴らしている朝鮮人民軍第567軍部隊管下18号水産事業所を現地指導された」:金ヨジョン同行しながら写真に写らず、<追記>日本のEEZ内の北朝鮮イカ釣り漁船 (2014年11月19日 「朝鮮中央TV」)

    金正恩が軍の水産事業所を現地指導したニュースが19日付けの『労働新聞』に掲載され、同日の「朝鮮中央TV」で「録画報道」があった。今回の「現地指導」には、久々に金ヨジョンが同行しているが、『労働新聞』に掲載された写真にも「録画報道」で紹介された写真にも彼女は写っていない。これまで、彼女が同行者として紹介された報道では、少なくとも1枚は彼女の写真を出していたが、今回出してこなかったのはなぜだろうか。

    「元帥様」は、水揚げされる大量の魚を見て大変喜んだとのことである。水揚げされた魚は、「軍人に毎日、魚を切らせることなく供給したい」と「元帥様」の気持ちを伝えていることから、軍向けと思われるが、それのみならず、中ロへの輸出用にも向けられるのかもしれない。

    大満足する「元帥様」
    2014111901-01.jpg
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 만선의 배고동소리를 높이 울리고있는 조선인민군 제567군부대관하 18호수산사업소를 현지지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-11-19-0001&chAction=L

    <追記:11月27日>
    11月27日付けの『朝日新聞デジタル』に「北朝鮮漁船、日本海で急増 昨年の3倍、経済水域に9割」という記事が掲載された。「船体の記載番号から、北朝鮮東部の清津(チョンジン)や元山(ウォンサン)などから出港した軍所属の漁船が大半」ということなので、この水産事業所の所在地は分からないが、もしかするとこの事業所の船も関連しているのかも知れない。「元帥様」の背景に積み上げられているのが魚なのかイカなのかは分からないが、色はイカのようでもある。

    『朝日新聞デジタル』、「北朝鮮漁船、日本海で急増 昨年の3倍、経済水域に9割」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141127-00000012-asahi-bus_all

    「敬愛する金正恩同志がシンチョン博物館を現地指導された」:金ヨジョン再び同行、序列が上がる? (2014年11月25日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」が「録画報道」として金正恩が「シンチョン博物館を現地指導」したと伝えた。同内容の記事は、26日付けの『労働新聞』にも掲載されている。過去記事にも書いたとおり、11月19日に報道された「18号水産事業所」の「現地指導」にも金ヨジョンは同行している。ただし、この「現地指導」報道では彼女は写真に写っていない。

    今回の「シンチョン博物館現地指導」指導では、彼女の「録画報道」でも『労働新聞』でも彼女が写った写真が出ている他に紹介される序列が上がっている。

    11月19日「18号水産事業所現地指導」の時の紹介序列:「 黄炳瑞、ソ・ホンチャン、尹東絃、李炳哲、パク・ジョンチョン、金養建、呉日晶、韓光相、朴明哲、李載佾、金與正の各氏が同行した」(「朝鮮中央通信」日本語版の同報道)

    11月25日「シンチョン博物館現地指導」の時の序列紹介:「金己男、韓光相、李載佾、金與正、朴明哲の各氏が同行した」(「朝鮮中央通信」日本語版の同報道)

    朴明哲の序列が引き下げられたのか金ヨジョン(金與正)の序列が引き上げられたのかは明らかではないが、金正恩の現地指導に相変わらず同行している朴明哲の序列が引き下げられる理由もないと思うので、やはり金ヨジョンの序列の引き上げであろう。
    以下、「録画報道」で紹介された順に金ヨジョンが写った写真を並べると、

    「お言葉」をメモする金ヨジョン(右下)
    sinchonnpakumul kju 20141125flv_000080000
    Source: KCTV, 2014/11/25放送

    金正恩の肩の辺りに金ヨジョンの顔が見える。
    sinchonnpakumul kju 20141125flv_000232554
    Source: KCTV, 2014/11/25放送

    顔は他の同行者で見えないが金正恩の左肩上辺りにいる金ヨジョン
    sinchonnpakumul kju 20141125flv_000280000
    Source: KCTV, 2014/11/25放送

    建物の中に立っている金ヨジョン(金正恩の右腕横)
    sinchonnpakumul kju 20141125flv_000347487
    Source: KCTV, 2014/11/25放送

    金正恩の左上にいる金ヨジョン
    sinchonnpakumul kju 20141125flv_000352973
    Source: KCTV, 2014/11/25放送

    金ヨジョンの左肩上辺りにいる金ヨジョン
    sinchonnpakumul kju 20141125flv_000365482
    Source: KCTV, 2014/11/25放送

    金正恩の車の近くに他の同行者と共に立っている金ヨジョン
    sinchonnpakumul kju 20141125flv_000400000
    Source: KCTV, 2014/11/25放送

    「シンチョン博物館」関係者と撮影した記念写真。この中に上で「金ヨジョン」とした女性はいないので、彼女が金ヨジョンであることは間違いないと思う。
    sinchonnpakumul kju 20141125flv_000407812
    Source: KCTV, 2014/11/25放送

    最初の1枚を除き、金ヨジョンが金正恩の腕や肩の近くに写った写真を使っているのも興味深い。ちなみに、『労働新聞』に掲載された写真は、2番目と5番目の写真である。比較的短い期間に2回同行させ、序列を上げ、金正恩の横位置の複数の写真を紹介していることからすると、今回、金正恩が療養している期間に彼女の立場が強化されたのかもしれない。金敬姫が全く登場しなくなった今、いざというときに頼りになるのは金ヨジョンのみということなのだろうか。

    「米国とその追従勢力の『人権』騒動に無慈悲な懲罰の鉄槌を」:交通事故現場か交通取り締まり現場でインタビューか、「人権保護」 (2014年11月25日 「朝鮮中央TV」)

    25日、「朝鮮民主主義人民共和国国防委員会声明を支持し、平壌市軍民、米国とその追従勢力の反共和国『人権』騒動を無慈悲に粉砕するため平壌市軍民大会」が開催された。この日、「『人権』騒動」に憤怒する平壌市民のインタビューを「朝鮮中央TV」の「20時報道」が伝えた。

    インタビューでの発言は、概ね「国防委員会声明」の内容を復唱するものであるが、おもしろかったのは、その背景である。

    一人目の市民
    20141125kctv 20sipdoflv_000754569
    Source: KCTV, 2014/11/25放送

    二人目の市民
    20141125kctv 20sipdoflv_000790790
    Source: KCTV, 2014/11/25放送

    三人目の市民
    20141125kctv 20sipdoflv_000810525
    Source: KCTV, 2014/11/25放送

    四人目の市民
    20141125kctv 20sipdoflv_000850341
    Source: KCTV, 2014/11/25放送
    五人目の市民
    20141125kctv 20sipdoflv_000870787
    Source: KCTV, 2014/11/25放送

    六人目の市民
    20141125kctv 20sipdoflv_000911711
    Source: KCTV, 2014/11/25放送

    これら6枚の写真の中で「三人目の市民」の背景にだけボカしを入れてある。「四人目の市民」の背景もボカしてある可能性があるが、マイクははっきりと写っているので「F開放+望遠」で撮影した可能性はある(スチールカメラを基準にした話ではあるが、原理的には同じはず)。しかし、「三人目の市民」は、等距離にあるマイクもボケているので、これは編集段階で入れたボカしであるはずだ。マイクは動いておらず、動画からのキャプチャー時にぶれているわけではない。

    では、背景で何が起こっているのだろうか。写してはいけない場所でインタビューをするはずはないので、背景で偶発的に何かが起こってしまった、あるいはそれを意識せずにインタビューをしてしまったのであろう。では、この人の背景で何が起こってしまったのだろうか。

    「三人目の市民」のインタビューをカット(顔の前方向)
    20141125kctv 20sipdoflv_000813836
    Source: KCTV, 2014/11/25放送

    背景には、トロリーバスが止まっており、その横にオートバイ、そして白いヘルメットをかぶっているように見える人と黒っぽい服を着た人が話をしている。

    「三人目の市民」のインタビューをカット(頭の後ろ方向)
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    Source: KCTV, 2014/11/25放送

    トロリーバスの前方には赤い乗用車が止まっている。動いているのは白いヘルメットらしき者をかぶった人と黒っぽい服を着た人だけで、車とバスは止まっている。どうやら、インタビューをしている背景で、トロリーバスと乗用車の交通事故が発生、そこにオートバイに乗った「交通保安員(警官)」がやってきて事情聴取をしている、こんなところではないだろうか。そうでなければ、交通違反をした赤い車の運転手がオートバイの「交通保安員」に停止させられたというところだろうか。実は、平壌の町中では、オートバイの「交通保安員」に停止させられている車が案外多い。2010年にほんの数日間平壌を訪問し、市内を車で走っただけでも、何件か目撃した。もちろん、何をしていたのかは不明であるが、運転手と「交通保安員」が口論しているような場面も見た。念のため書いておくが、北朝鮮は「権力に無条件服従」の国ではない。最高指導者には「首領決死擁護(命を捧げる)」ことにはなっているが、末端の「国家権力」とは結構議論をする。北朝鮮のドラマや映画の中でもそうだし、羅先のガイドも税関職員に「少しだけ」不平を言った。

    そして、芸が細かいのは別の場所でインタビューをした「四人目の市民」の背景にもそのままボカしを入れているところである。そうすることで「三人目の市民」のボカしが目立たなくなるが、残念ながらマイクにボカしを入れるのを忘れてしまったようだ。

    しかし、経済が発展し、乗用車が増え、交通事故が発生することなどある意味当たり前のことで、ボカすほどのことではないのではないだろうか。しかも、それを「交通保安員」が迅速に処理しているなど、ある意味立派である。撮影クルーもそのように思って撮影を続けたのかもしれない。しかし、編集段階の「検閲」で引っかかり、ボカしを入れることになってしまったのであろうか。

    もちろん、「人権保護(プライバシー保護)」の目的でボカしを入れたならば、「人権が完全に保護された国」として相応しい配慮ということにもなるのだが。

    「朝鮮民主主義人民共和国外務省スポークスマン声明」:国連人権委員会決議非難、米国・日本・EUが主導、日朝協議への影響、新たな核実験 (2014年11月20日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が20日付けの報道として「朝鮮民主主義人民共和国外務省スポークスマン声明」を伝えた。同「声明」では、国連人権委員会(第3委員会)が、「北朝鮮人権状況決議」を採択したことについて、「当事国(北朝鮮)に対する一度の訪問もなく」作成された「調査報告書」に基づくものであるとし、「少なからぬ国が人権問題ではなく、経済援助を中止するという米国と日本の威嚇により投票した」とし、「今回の『決議』採択騒ぎが政治的欺瞞であった」と非難している。

    また「声明」は、今回の「決議」を主導したのは、「(米国)の下手人である」「EUの一部の国と日本」であるとしており、「奴らが標榜してきた『人権努力』が本当の人権向上のためのものではなく、米国の対朝鮮敵対視政策に対する追従でであり、ゴマスリであったことを自ら明らかにした」としている。

    その上で「米国の追従国は、人権対話を呼びかけた奴らの立場が偽善であったことを明らかにし、人権対話はもちろん、対話一般と交流協力の門を自ら閉じてしまった」としている。注目すべきは、この「声明」が「対話一般と交流協力の門を自ら閉じた」と言っている点で、「対話一般と交流協力」に現在進行中の「ストックホルム合意」が含まれるのかという点である。特に、日本は今回の「決議」に拉致問題を含ませるよう働きかけており、それが「対話一般と交流協力の門を」「閉じ」させる結果となるのであれば、国連の場を通じた国際的「人権」圧力を拉致問題解決に繋げようという日本の目論見は失敗であったということになってしまう。

    過去記事にも書いたとおり、北朝鮮は日本の選挙結果を見極めるまでは、拉致問題協議に関する動きは一時止めることになろうが、この「声明」を上記のように捉えるのであれば、日本に対する不満の表出である。日本側は、最高裁による総連ビルの「売却許可確定」で北朝鮮に圧力を加えたが、それへの反発の意味も含まれるのであろう。

    一方、米国に対しては、「米国の対朝鮮敵対行為が、我々の新たな核実験をこれ以上自制することができなくさせた」としており、場合によっては12月に「将軍様追悼核実験」を実施することになるのかもしれない。さらなる核実験を行えば、かなり高い確率で日朝協議は中断されるであろうし、崔龍海のロシア訪問で得られるであろう経済協力や金正恩訪ロといった成果の一部も流れてしまうことになろう。

    この「声明」は単なる威嚇に過ぎないのかもしれないが、国連総会でさらなる決議が行われ、中国(とロシアも?)の反対で実現しないにせよ、国連安保理で「元帥様」を国際刑事裁判所(ICC)に提訴することが議論されるような状況になれば、北朝鮮はさらに反発を強めるのではないだろうか。

    <追記:11月22日>
    20日発の「朝鮮中央通信」が、「ロシア外務大臣セルゲイ・ラブロフが国連機関が裁判検察機関となってはならないと言明した」と伝えた。同通信によると「ロシアは国連総会で朝鮮民主主義人民共和国の『人権状況』に関する『決議』に反対投票をする」としており、これも崔龍海一行の訪ロ成果の一つであろう。12月中下旬に予定されている国連総会での投票結果を見なくては分からないが、ロシアの他にも金永南が訪問したアフリカを中心とした国々が反対投票をする可能性がある。

    ロシアメディアでラブロフ発言は確認していないが、20日(ワシントン時間)の米国務省定例記者会見でラブロフ発言に関する質問が出されているので、この発言内容は事実なのであろう。

    上記で「将軍様追悼核実験」の可能性についても言及したが、投票前に核実験をしてしまうと国連総会での投票のみならず、安保理で中ロが賛成に回る可能性もあるので、核実験はしばらく控えるのかもしれない。

    「プーチンロシア連邦大統領が崔龍海朝鮮労働党中央委員会秘書と会った」:金正恩訪ロは「意味深い来年」か (2014年11月19日 「朝鮮中央TV」)

    ロシアを訪問中の崔龍海一行が18日、プーチンと会見したと「朝鮮中央通信」、「朝鮮中央TV」が伝えた。「朝鮮中央TV」では、22時過ぎの報道で写真と共に伝えている。

    崔龍海は金正恩の親書をプーチンに伝達し、これを受けてプーチンは「深い謝意を表明」した上で、「金正日同志と数回会見したことについて回顧し、ロシアと朝鮮は近い国であり、長い親善協力の伝統を持っていると語った」という。崔龍海は「意味深い来年、朝露両国間の親善協力関係をより高い段階に拡大発展させることについて言及した」とのことである。

    朝ソ友好協力相互援助条約は61年に締結されているので、55年という「意味深い年」にするには1年足りない。しかし、相互援助条約の軍事同盟部分を削除した朝露友好善隣協力条約は2000年2月に締結されているので、締結15年周年となる「意味深い来年」はこちらのことを言っているのであろう。

    協力条約が2000年2月なので、これを前後して金正恩がロシア訪問をすれば、「将軍様」の誕生日の祝賀ムードを高めることはできる。

    プーチンと握手をする崔龍海
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    Source: KCTV, 2014/11/19放送

    「金正恩同志の特使、ロシア連邦訪問のために出発」:崔龍海党中央政治局常務委員会委員一行ロシアへ出発、トップで報道、朝露の思惑、崔龍海の位置、金正恩訪ロなるか、機体 (2014年11月17日 「朝鮮中央TV」)

    17日、「朝鮮中央TV」の「20時報道」で、崔龍海一行が金正恩の特使としてロシアを訪問するとトップで報じた。崔龍海特使のロシア訪問については、14日夜の「20時報道」でも報じていたが、トップではなかった。14日と17日の報道順序を比較すると以下のとおりである。

    14日
    1.金正恩同志の革命活動ニュースを各国で報道
    2.金正日同志回顧委員会がアンゴラで結成
    3.敬愛する金正恩同志の特使がロシア連邦を訪問

    17日
    1.敬愛する金正恩同志の特使として崔龍海委員がロシアへ向け出発
    2.金正恩同志の労作をネパール新聞が掲載
    3.金正日追慕イラン・イスラム教連合団委員会がテヘランで結成

    とこのような順序となっており、海外メディアが金正恩の「労作」を紹介したというニュースよりも先に報道している。

    今回ロシアを訪問するのは、「金桂官第1外務次官、朝鮮人民軍の努光鉄副総参謀長、朝鮮労働党中央委員会の李永哲副部長、対外経済省の李光根次官」であり、金正恩の特使に加え、外務、人民軍、労働党、経済とワンセットそろっている。

    「朝鮮中央通信」、「김정은동지의 특사 로씨야련방 방문을 위하여 출발」(日本語訳)、http://www.kcna.kp/kcna.user.article.retrieveNewsViewInfoList.kcmsf#this

    ロシアと米欧の間でウクライナ問題が発生してから、ロシアは急速に北朝鮮に再接近しているようだという記事は書いたが、公式的にこれほど大きなミッションを受け入れるのは金正恩体制発足以来初めてである。ロシアの対米欧関係で北朝鮮カードを有効に使うという目論見と、北朝鮮の中国への依存度を低下させようという目論見が一致したのであろう。羅先シリーズにも書いたと思うが、羅先港の埠頭の中では、ロシアが建設中の埠頭が最も新しく、動きが活発であった。

    金正恩は、依然として海外訪問はできていない。本来であれば、中国を初訪問地として選択すべきところなのであろうが、その中国訪問が実現していない。北朝鮮は中国への働きかけは続けているのであろうが、中国側の事情で受け入れていないのであろう。中国としては、国レベルでの北朝鮮との関係を強化しなくても、地域レベル、東北三省と北朝鮮との経済関係だけで、北朝鮮の安定は取りあえず維持できるとみているのであろう。エボラウィルス遮断を理由中朝国境を10月末に閉じた北朝鮮が、その後、国境を明けたかどうかは確認していないが、エボラ予防と中国マネーの流入のバランスを考えると、長期間の国境閉鎖は北朝鮮にとって決して最善の選択とはいえない。

    今回の訪朝で、年内の金正恩のロシア訪問が決まれば、これまで乏しかった彼の外交成果を出し、新年を迎えることができる。もちろん、ロシアを訪問しただけでは足りないので、経済的な協力をロシアから取り付ける、例えば、パイプラインを通してロシアから天然ガスや重油の供給を受ける取り決めなどができれば、これは経済的には大きな成果となる。もちろん、ロシアも国際的に核問題を抱えている北朝鮮とどうつきあうのか、ウクライナ問題とのバランスの中で微妙な選択が必要となってくるであろう。

    北朝鮮は、こうした国際関係の微妙なバランスの中での駆け引きには非常に長けた国なので、今回もそれができるのかどうか。特に、お父さんの時代までできていたこの「わざ」を金正恩時代にもできるのか。崔龍海の同行者である金桂官はお父さんの時代からの外交官なので、交渉という意味では彼が活躍するのであろう。

    それにしても、最近、崔龍海の株が上がっているような気がしてならない。黄炳瑞と人民軍総政治局長を交代した後、少し影が薄れたような時期もあったが、映像を見ている限り、黄炳瑞以上に金正恩との近さが強調されているような感じがしてならない。人民軍総政治局長の職から外して、忠誠心を高めさせたということなのかどうかは分からないが、黄炳瑞と崔龍海をお互いに牽制させ、第二の張成沢が出てこないようにしようということなのかもしれない。

    訪ロ前に平壌空港に見送りに来た黄炳瑞とにこやかな感じで握手をする崔龍海。
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    Source: KCTV, 2014/11/17放送

    特別機の前で記念撮影をする崔龍海一行。
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    Source: KCTV, 2014/11/17放送

    金正恩専用機かは不明であるが、機種が同じで尾翼に人共旗が描かれているところからすると、「専用機」が貸し出されたのかもしれない。
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    <追記>
    18日の「20時報道」は、「特使一行が17日にモスクワに到着した」と伝えた。時間については明らかにしていないので、韓国側の報道にあるように、一行が乗った飛行機が故障で平壌に引き返し、出発が遅れたのかどうかは分からない。空港には、「ロシア外務省関係者や在露北朝鮮大使か出迎えに来た」とのことである。ロシア側の報道もざっと調べてみたが、一行のその後の行動についてはまだ報じられていない。

    「『来月14日総選挙で調整を』 安倍首相が指示」:北朝鮮の出方 (2014年11月13日 「JNN」)

    「Yahoo!ニュース」などによると、来月中旬に解散総選挙が実施される見込みであるという。

    JNN, 「『来月14日総選挙で調整を』 安倍首相が指示」、http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20141113-00000027-jnn-pol

    北朝鮮は、日本の政治情勢をしっかりと分析しているはずであるが、選挙が安倍政権に不利という局面になれば、同政権に有利になるよう、一気に拉致被害者問題を進展させる可能性がある。もちろん、それは日本とのバーゲニングで北朝鮮に有利だと判断するからで、より大きな代償を期待してのことであることは間違いない。逆に、安倍政権が現状維持かより安定した状態で選挙後も続くと判断すれば、拉致被害者問題の急激な進展はみられないであろう。

    「<朝鮮記録映画>敬愛する最高司令官金正恩同志が人民軍隊事業を現地指導 2014.8-10」:ストリーミングの音声流れず、3ヶ月分、戦闘機の梯子 (2014年11月13日 「朝鮮中央TV」)

    13日18時頃から「新しく出た」、「<朝鮮記録映画>敬愛する最高司令官金正恩同志が人民軍隊事業を現地指導 2014.8-10」が放送された。しかし、ストリーミングの音声が流れておらず、映像を見ることしかできなかった。ストリーミングは何本か流れているが、どうやらどこも同じソースを使っているようで、いずれも音声が流れていなかった。現在もテストパターンは見られるものの、シングルトーンは切れたままの状態である。先週末辺りから、音声に韓国放送の音声が混入していたり、その後は音声レベルが高すぎて歪んだりと状態が悪かった。ストリーミングのオーディオ系で何か問題が発生している可能性があるが、ともかく早く復旧してもらいたいものである。

    それにしても、音がない「朝鮮記録映画」はつまらない。静止画報道等で彼が何の「現地指導」をしたのかは分かっているのだが、やはりその時は語られなかったことが「朝鮮記録映画」では語られるので、これが聞けないと見る気にならない。というわけで、この「朝鮮記録映画」は小さなウィンドウにして他事をやりながらチラチラと見ていただけである。音が聞こえるバージョンを見ることができたら、きちんと記事にしようと思う。画を見ている限りでは、やはり「航空及び反航空軍」の訓練指導の様子が一番おもしろそうである。

    「<朝鮮記録映画>敬愛する最高司令官金正恩同志が人民軍隊事業を現地指導 2014.8-10」
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    Source: KCTV, 2014/11/13放送

    戦闘機の操縦席に座るための梯子は、自力で登っている。この時点で、足はかなり回復していたのであろう。
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    Source: KCTV, 2014/11/13放送

    「<20時報道>羅先ヘシン服工場で生産成果」:訪問した工場を紹介 (2014年11月12日 「朝鮮中央TV」)

    以前、「朝鮮中央TV」で羅先滞在中に訪問した靴工場が紹介されたという記事は書いたが、今回は「服工場」が紹介された。やはり、外国人に見せるに値する工場ということなのであろう。

    「生産成果」
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    Source: KCTV, 2014/11/12放送

    ミシンの上にある制御用スイッチ
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    Source: KCTV, 2014/11/12放送

    下は工場で撮影した写真。上の写真にあるスイッチを背面から見ている。
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    労働者を指導する支配人
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    Source: KCTV, 2014/11/12放送

    工場で話を聞かせてくれた支配人。同一人物と思われる。
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    この工場の問題点については、過去記事に詳しく書いてあるが、この支配人は温和でとても人の良い人であった。ともかくも、この工場で「生産成果」を出せたんであれば、良いことである。

    「<朝鮮記録映画>敬愛する金正恩元帥様が諸部門の事業を現地指導された 2014.9-10」:階段シーンを多数使用、足が治っていく様子、自然エネルギー活用、定番となったキティちゃん、ボールプール、 (2014年11月10日 「朝鮮中央TV」)

    11月10日夜、「朝鮮中央TV」で「<朝鮮記録映画>敬愛する金正恩元帥様が諸部門の事業を現地指導された 2014.9-10」が放送された。金正恩復帰後、静止画のみで報道されていた民間部門の指導を動画で紹介した「記録映画」である。動画で見ると、復帰後、徐々に彼の足が治癒していく様子がよく分かる。

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    Source: KCTV, 2014/11/10放送

    9月4日報道、「モランボン楽団新作音楽会」。足治療のためにしばらく出てこなくなる直前の映像である。9月の「現地指導」としてはこれだけしか紹介されていない。
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    Source: KCTV, 2014/11/10放送

    演奏会後に指導をする金正恩。
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    Source: KCTV, 2014/11/10放送

    10月14日報道、「衛星科学者住宅地区現地指導」、杖に相当依存した歩き方をしている。動画からは、杖無しでは歩行困難であることが分かる。
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    しかし、「衛星小学校」を視察するために、階段を上るシーンも紹介されている。「元帥様」のタフネス演出といったところであろうか。
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    プールの飛び込み台への着座も話題になったが、金正恩が座ろうとした時、崔龍海が手を差し出している。
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    「第一訓練場」を視察するために階段を上る金正恩。右脇を抱えられている。
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    「科学者が入居する住宅」の階段を上る金正恩。右手で壁を押さえながら上っている。
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    「衛星初級中学校」でも階段を上る金正恩
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    金正恩は「衛星科学者住宅地区」に建設された「国家科学院自然エネルギー研究所」も視察している。ナレーションは「環境汚染がなく、生態環境を破壊しないエネルギー資源を積極的に開発するという問題について深い関心を向けてこられた偉大な将軍様の崇高なご意思を受け継がれ」と言っているが、現実的には電力不足を省エネと自然エネルギーでカバーしようということが目的であろう。「将軍様の崇高な意思」は、電力が十分に供給されている国での話であり、北朝鮮はその条件が整っていない。しかし、一挙両得で自然エネルギー活用研究を行うことは正しい選択である。「住宅地区内」の街路灯は、太陽光+風力発電を用いているように見える。
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    太陽光+風力発電の街路灯
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    「国家科学院自然エネルギー研究所」内に置かれた、太陽光パネルと太陽熱温水器。
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    10月17日報道、「金策工業総合大学教育者住宅現地指導」。注意深く階段を降りる金正恩。
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    10月22日報道、「ヨンプン科学者休養所現地指導」。「休養所」内に建設された「託児所」視察後、支えられながら階段を降りる金正恩。
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    10月26日、「平壌育児院、愛育院現地指導」。歩き方を見ていると、足の回復が感じられる。左足に体重を掛けて歩けるようになってきているように見える。
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    「子供たちの身体条件に合った食卓と椅子を置いた食事室が気に入ったと仰りながら、敬愛する元帥様は食器類を見て下さいました」と出てきた「キティーちゃん」の食器。羅先で見た子供たちのリュックサックもそうであったが、どうやら「キティーちゃん」は定番になっているようだ。
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    もう一つの定番「隠れミッキー」のベッドも出てきた。
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    手すりを掴んではいるが、階段を上るのも楽になってきたようだ。
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    「平壌育児院、愛育院」に設置された歯科治療用の椅子
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    「育児院、愛育院の最後の階まで全て上られ、本当のお父さんの熱い情を注いで下さる敬愛する元帥様」と再び階段を上るシーン。
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    ボールプールを見る金正恩。この種の施設を紹介する番組中でボールプールを見るのは初めてだと思う。その後、ボールプールは何回も写しているので、新しいアトラクションなのかもしれない。
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    11月1日報道、「平壌国際飛行場建設場現地指導」。手すりのない階段を上る金正恩。
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    下りは依然として少し辛そうに見える。
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    エスカレーターもまだ動かないのか、歩いて降りてくる。
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    10月19日報道、「アジア競技大会などで金メダルを取った選手と会う」。「元帥様」が何の種目の選手か分からず「国家体育指導委員長」に尋ねると、委員長の崔龍海が重量挙げのポーズをするという面白いシーン。
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    「平和な時に他国に共和国旗をなびかせるのは体育人しかいない」と意味深長なことを言っている。「戦時には、軍人が他の国(南朝鮮)に共和国旗をなびかせる」という意味なのだろうか。
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    10月29日報道、「改築された5月1日競技場で女子サッカーを観戦」。試合終了後、人民の歓声に応え嬉しそうに手を振る金正恩。
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    「金正恩同志が朝鮮人民軍第3回大隊長、大隊政治指導員大会参加者と共に記念写真を撮られた」:金正恩, 杖を使わず歩行 (2014年1月5日 「労働新聞」)

    標記記事の中で、金正恩が杖を使わずに歩いている写真を紹介している。足の状態は相当によくなったようだ。

    立って拍手をする金正恩
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    Source: 『労働新聞』、「김정은동지께서 조선인민군 제3차 대대장,대대정치지도원대회 참가자들과 함께 기념사진을 찍으시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    杖無しで歩く金正恩
    20141105 kju 2
    Source: 『労働新聞』、「김정은동지께서 조선인민군 제3차 대대장,대대정치지도원대회 참가자들과 함께 기념사진을 찍으시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    <追記>
    5日、「朝鮮中央TV」が放送した「録画報道」の中で紹介された写真。しっかりとした足取りに見える。

    「朝鮮人民軍第3回大隊長、大隊政治指導者大会」に入場する金正恩
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    Source: KCTV, 2014/11/05放送

    「朝鮮人民軍第3回大隊長、大隊政治指導者大会参加者」と記念写真を撮るために歩き回る金正恩。大会参加者が多いため、複数の人の山を回りながら「記念写真」を撮影しなければならない。
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    Source: KCTV, 2014/11/05放送

    <追記2:2014/11/06 21:03>
    金正恩復帰後初めての動画が放送されている。歩行状態は足を引きずっているものの杖を使わずに歩けている。

    この「大会」は、金正恩復活記念大会という感じがある。『労働新聞』も多数の魚眼レンズで撮影された写真を紹介していたが、「人民軍」がこぞって「最高司令官同志」の復帰を祝賀している雰囲気がある。

    <追記3>
    6日夜放送された金正恩の歩行場面の動画が出る「<朝鮮記録映画>敬愛する最高司令官金正恩同志の指導の下、朝鮮人民軍第3回大隊長、大隊政治指導員大会が盛大に開催 2014.11.3-4」の写真を掲載しておく。明らかに足を引きずっているが、杖は使っておらず、歩行場面でのアップでは足下が見えないようなカットを使っている。

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    Source: KCTV, 2014/11/06放送

    「清水観光開発区観光開通」:新たな中国人対象の観光地 (2014年10月31日 「朝鮮中央通信」)

    日朝交渉の陰に隠れてしまい記事にするのが遅れてしまったが、「朝鮮中央通信」が新たな中国人観光客を主な対象とした観光地、「清水観光開発区」が10月30日に「開通」した。

    「清水観光開発区」は、「2014年7月23日に発表された朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議常任委員会政令により、開発される経済開発区で平安北道サクジュ郡バンサン里の一部地域とチョンソン労働者区を含んでいる」という。

    「開通式」で掲げられていた地図
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    Souce: KCNA

    場所をGoogle Mapで確認。赤丸が北朝鮮・新義州市、その対岸が中国・丹東市の中心部。右上の青い四角がKCNAの地図にある中国領の鴨緑江中州の島と「清水観光開発区」
    青島2google map
    Source: Google Map

    KCNAの地図とほぼ同縮尺のGoole Map
    青島3 google map
    Source: Google Map

    Google Mapの航空写真を見る限りでは、島の対岸の入江部分にはいくつかの建物が見えるが、KCNAの地図でピンク色になっている部分にはほとんど建物は見られない。やはり、これから開発するということなのであろう。
    青島4googlemap
    Source: Google Map

    同記事によると「開発区の総面積は3800町歩」で、「清水観光開発区の開通事業は、平安北道人民委員会と中国の丹東市人民政府、丹東海外旅行社有限公司が協力して推進された」ということである。

    「平安北道人民委員会経済地帯開発区局長のクァン・ジンホ」によると「ここは朝鮮民俗の特色を活かしながらも現代的な観光奉仕施設が兼備された観光開発区になる」とのことである。「朝鮮民俗の特色を活かす」と言うところなど、10月24日に出された「元帥様」の「民族遺産保護事業は我々民族の歴史と伝統を輝かす愛国事業である」という「談話」を受け、平壌国際飛行場の第2ターミナルでの「どこか外国のターミナルのコピー版のようだ」というような「元帥様のお叱り」を受けないように語っている。

    「清水観光開発区」には、「観光客のための特産物加工及び畜産、果樹、養魚基地を建設し」、「文化娯楽区域、朝鮮民俗村、総合奉仕区域、民俗旅館、ミネラルウォーター工場、果物及び山菜加工工場、キムチ加工工場などが計画」されているという。また、「モモをはじめとした優良品種の果樹を植え、果樹園化された観光対象として発展させる」ともしている。羅先シリーズにも書いたように、同地は水産加工品を中心に山菜などを中国人観光客に販売していたが、こちらでは果物と山菜、朝鮮の伝統食品などを中国人観光客に販売することを計画しているようだ。羅先では「将軍様」が考案した水産物加工直売事業が成功していたので、こちらではその農産物バージョンをやってみようということであろう。

    「文化民俗村地域」などと書かれた地図
    青島5kcna
    Source: KCNA

    「養魚技術研究基地」と書かれた地図
    青島6養魚
    Source: KCNA


    「開通」は同通信の日本語訳では「開通」、英語訳では「open」とされているが、観光地として機能し始めたというよりも一部施設が完成し、中国人観光客を受け入れる準備ができたということのようだ。記事にも「開発区では、地域内に既にある対象に対する観光を開始しながら、開発を並行して推進する」と書かれている。「並進路線」ということのようだ。

    観光は「半日あるいは1日を基本」とし、「革命史跡地」をその対象としているようであるが、「革命史跡地」観光は、中国人にあまり受けないかもしれない。やはり、飲食・サービスで売り込む方が、観光ビジネスとしては成功するはずである。羅先で大成功している「健康中心」(朝鮮マッサージセンター)も開業してはどうだろうか。

    「朝鮮中央通信」の同記事は日本語版、中国語版共に「チョンス」を「青水」と漢字表記してあるが、同通信が同時配信した下の写真からは「清水」が正しい表記だと思われる。
    清水1
    Source: KCNA

    「高松の業者に売却許可=総連本部競売で最高裁―代金納付で所有権移転」:「圧力」とはこれだったのか (2014年11月5日 「時事通信」)

    「Yahoo!ニュース」に「時事通信」が配信した「高松の業者に売却許可=総連本部競売で最高裁―代金納付で所有権移転」という記事が掲載された。

    Yahoo!ニュース、「高松の業者に売却許可=総連本部競売で最高裁―代金納付で所有権移転(時事通信)」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141105-00000064-jij-soci

    何とも絶妙なタイミングで「売却許可が確定した」ものである。というのも、5月29日の「ストックホルム合意」後、6月20日に最高裁は「落札した不動産業者への売却許可の効力をいったん停止する異例の決定をし」、今度は10月末の「北朝鮮側の説明」直後に「売却許可を確定」している。

    『日本経済新聞』Web版、「総連本部の「売却許可」一時停止認める 最高裁」、http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG20046_Q4A620C1000000/

    北朝鮮は、日本政府が「政治と司法の分離をいいながらも、総連ビルを政治的に利用している」と主張してきたが、状況的にはそれを追認したような形である。

    過去記事にも書いたように、「ストックホルム合意」で北朝鮮側が得ようとしているのは、総連ビルの現状維持と万景峰号の入港許可である。特に、前者については「ストックホルム合意」後の宋日昊(朝日国交正常化交渉担当大使)発言からも明らかである。

    安倍政権は「対話と圧力」と言うものの「圧力」は既に使い切っていると思っていたが、実はこれが「圧力」だったのだと今回の最高裁決定を見て思った。「拉致被害者調査状況に対する説明」に対する日本側の不満をこの「決定」で表明していると考えて間違いないであろう。

    民事上、今後どのような手続きが行われるのかについてであるが、上記記事によれば「マルナカHDは代金納付後6カ月以内であれば、総連が立ち退かない場合に備えて引き渡し命令を東京地裁に申し立てることができるが、総連は争うことも可能」ということである。進捗状況として「総連は争うことも可能」という状態を維持しているところなど、確実に今後の日朝交渉を睨んでのことであろう。

    「政治と司法の分離」という視点からすれば、グレーな感じはするが、北朝鮮との交渉で有効なカードであることは間違いない。ただし、上述のとおり状況的には北朝鮮の主張を暗に認めたことになっているので、これをどう上手く活用していくのかが安倍政権の腕の見せ所であろう。
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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