「大衆律動体操」:北朝鮮のラジオ体操、金正恩の「体育強国建設書簡」との関係、日本のラジオ体操 (2015年4月12日 「朝鮮中央TV」)
金正恩の「労作」、「白頭の革命精神で体育強国建設において新たな全盛期を切り開こう、第7回全国体育人体界参加者に送った書簡 2015年3月25日」が発表されて以来、「朝鮮中央TV」で「大衆律動体操」を流す回数が増えたような気がしている。
同「労作」が発表されたときは、斜め読みをしただけで、特段新たな発見をしなかったが、「体操律動体操」の放送回数が増え、もう一度読み直してみると、金正恩は同「労作」の中で「体育の大衆化」を繰り返している。もちろんこれは、金正恩が言い出したことではなく、お父さんの時から言われている。金正恩は、自分がスポーツ好き(太った今ではスポーツ観戦)ということもあり、再び強調しているのであろう。北朝鮮の場合、メタボを減らして保険・医療事業にかかる国家予算を減らす必要はないのだろうが、運動が健康増進に繋がるのであれば、「国家が全て負担する医療費」も削減することができよう。また、北朝鮮ではスポーツを大衆動員、あるいは思想教化の場として活用しているので、「一心団結」のなかで金正恩体制支持を扇動することもできる。
同「労作」の中で「大衆」という言葉が一番多く使われている段落を翻訳すると以下のとおりである。
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体育を大衆化、生活化することは、体育強国建設における我が党の重要な政策です。我が国で体育は、人民のための事業であり、人民自身の事業です。体育を大衆化、生活化すれば、全体人民が健康な体で祖国保衛と強盛国家建設に積極的に貢献することができます。国の専門体育部門を速く発展させるにも、体育の大衆化、生活課方針を貫徹しなければなりません。
『労働新聞』、「김 정 은 백두의 혁명정신으로 체육강국건설에서 새로운 전성기를 열어나가자 제7차 전국체육인대회 참가자들에게 보낸 서한 주체104(2015)년 3월 25일」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2015-03-26-0001&chAction=S
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「太陽節」に際し、北朝鮮各地で開催されている体育行事が「20時報道」で紹介されているが、「律動体操」をやっている姿もしばしば写る。「労作」を読むと、大衆体操は「律動体操」だけではなく、「人民保健体操」というのもあるそうだ。
NPO法人・全国ラジオ体操連盟のHPによると、日本でラジオ体操が行われたのは1928年11月で、「旧ラジオ体操第一は、逓信省簡易保険局が昭和天皇ご即位の大礼を記念し、「国民保健体操」という名称で制定され、NHKの電波にのって放送開始」されたそうである。1946年4月には「旧ラジオ体操を中止し、新ラジオ体操(第一~第三)を制定し、放送開始」されているが、恐らくGHQが旧ラジオ体操の「国家総動員」的性格を警戒して中止させたのであろう。1947年9月には、「新ラジオ体操の放送中止」もされており、ラジオ体操が存在しないアメリカ人にとっては、どうにも人が集まって同じ動きをする体操が健康目的であることが理解できなかったのであろう。それを示すかのように、「新ラジオ体操の放送開始」は1951年5月、つまりサンフランシスコ講話条約調印のわずか4ヶ月前である。
NPO法人・全国ラジオ体操連盟HP、「ラジオ体操の歩み」、http://www.rajio-taiso.jp/taisou/ayumi.html
植民地朝鮮でもラジオ体操は行われていたはずで、もしかすると金日成も経験したのかもしれない。もちろん「天才的な英知を持つ天出名将」金日成なので、それを解放された北朝鮮での大衆動員に利用しないはずはない。北朝鮮の「律動体操」の歴史は調べていないが、上記の通り、金正日時代には既にあったはずである。
そのようなことで、5月13日の「朝鮮中央TV」から収録した「体操律動体操」を日本語字幕(といっても大した量ではないが)付きでYouTubeにアップロードしておいたので、関心のある向きはご覧頂きたい。YouTubeには様々なバージョンの「律動体操」がアップロードされているので、合わせてみると面白いかもしれない。

Source: YouTube, https://youtu.be/DV1RvFJ-vPc
同「労作」が発表されたときは、斜め読みをしただけで、特段新たな発見をしなかったが、「体操律動体操」の放送回数が増え、もう一度読み直してみると、金正恩は同「労作」の中で「体育の大衆化」を繰り返している。もちろんこれは、金正恩が言い出したことではなく、お父さんの時から言われている。金正恩は、自分がスポーツ好き(太った今ではスポーツ観戦)ということもあり、再び強調しているのであろう。北朝鮮の場合、メタボを減らして保険・医療事業にかかる国家予算を減らす必要はないのだろうが、運動が健康増進に繋がるのであれば、「国家が全て負担する医療費」も削減することができよう。また、北朝鮮ではスポーツを大衆動員、あるいは思想教化の場として活用しているので、「一心団結」のなかで金正恩体制支持を扇動することもできる。
同「労作」の中で「大衆」という言葉が一番多く使われている段落を翻訳すると以下のとおりである。
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体育を大衆化、生活化することは、体育強国建設における我が党の重要な政策です。我が国で体育は、人民のための事業であり、人民自身の事業です。体育を大衆化、生活化すれば、全体人民が健康な体で祖国保衛と強盛国家建設に積極的に貢献することができます。国の専門体育部門を速く発展させるにも、体育の大衆化、生活課方針を貫徹しなければなりません。
『労働新聞』、「김 정 은 백두의 혁명정신으로 체육강국건설에서 새로운 전성기를 열어나가자 제7차 전국체육인대회 참가자들에게 보낸 서한 주체104(2015)년 3월 25일」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2015-03-26-0001&chAction=S
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「太陽節」に際し、北朝鮮各地で開催されている体育行事が「20時報道」で紹介されているが、「律動体操」をやっている姿もしばしば写る。「労作」を読むと、大衆体操は「律動体操」だけではなく、「人民保健体操」というのもあるそうだ。
NPO法人・全国ラジオ体操連盟のHPによると、日本でラジオ体操が行われたのは1928年11月で、「旧ラジオ体操第一は、逓信省簡易保険局が昭和天皇ご即位の大礼を記念し、「国民保健体操」という名称で制定され、NHKの電波にのって放送開始」されたそうである。1946年4月には「旧ラジオ体操を中止し、新ラジオ体操(第一~第三)を制定し、放送開始」されているが、恐らくGHQが旧ラジオ体操の「国家総動員」的性格を警戒して中止させたのであろう。1947年9月には、「新ラジオ体操の放送中止」もされており、ラジオ体操が存在しないアメリカ人にとっては、どうにも人が集まって同じ動きをする体操が健康目的であることが理解できなかったのであろう。それを示すかのように、「新ラジオ体操の放送開始」は1951年5月、つまりサンフランシスコ講話条約調印のわずか4ヶ月前である。
NPO法人・全国ラジオ体操連盟HP、「ラジオ体操の歩み」、http://www.rajio-taiso.jp/taisou/ayumi.html
植民地朝鮮でもラジオ体操は行われていたはずで、もしかすると金日成も経験したのかもしれない。もちろん「天才的な英知を持つ天出名将」金日成なので、それを解放された北朝鮮での大衆動員に利用しないはずはない。北朝鮮の「律動体操」の歴史は調べていないが、上記の通り、金正日時代には既にあったはずである。
そのようなことで、5月13日の「朝鮮中央TV」から収録した「体操律動体操」を日本語字幕(といっても大した量ではないが)付きでYouTubeにアップロードしておいたので、関心のある向きはご覧頂きたい。YouTubeには様々なバージョンの「律動体操」がアップロードされているので、合わせてみると面白いかもしれない。

Source: YouTube, https://youtu.be/DV1RvFJ-vPc