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    「<テレビ記録映画>ディーンの尋問資料集を開く 2」:朝鮮戦争中朝鮮人民軍の捕虜となった米将軍、潜水艦発射型ミサイル動画 (2015年9月29日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」が28日、29日連夜で、朝鮮戦争中に朝鮮人民軍の捕虜となった米陸軍少将ディーン(William F. Dean)の「尋問書」を題材にした「テレビ記録映画」を放映した。番組では、ディーンが捕虜になってから米国に帰国するまでを「尋問書」に基づいて紹介する番組である。

    中心は、ディーンが指揮していた大田戦闘を中心にいかに米軍が弱く、いかに朝鮮人民軍が強かったのか、ディーンが軍事機密をペラペラと話した、ディーンの家族の依頼で北朝鮮がディーンに対する寛大な措置を取り米国に追放したなどという内容である。

    尋問を受けるディーン(左端)
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    Source: KCTV, 2015/09/29放送

    ディーンという軍人については全く知らなかったが、米国のwikipediaに詳しく書かれている。wikipediaを読んだ限りは、「尋問書」の内容とは異なる部分が随分ある。

    きちんとしたことを確認するためには、ディーンが帰国後に記したGeneral Dean's Storyという著書を読むのが一番良い。早速、amazonで購入しようと思ったのだが、幸いにも米国のアーカイブでこの本のフルテキストが公開されている。かなり長いので、時間のあるときに少しずつ読んでいこうと思う。

    The Internet Archive, General Dean's Story, https://archive.org/stream/generaldeansstor011699mbp/generaldeansstor011699mbp_djvu.txt

    ただ、北朝鮮が言っている「朝鮮戦争 暴露されていない内幕」という本を検索してみたが出てこない。「誰それ(外国人の名前だがよく分からない)の助けを借りて記した」と紹介しているので、「誰それ」の部分が分かれば見つけ出すことができるかもしれない。

    この「テレビ記録映画」の最後の部分には、過去記事で紹介した潜水艦発射型ミサイルの動画がある。以前公開されたものよりも大きく写っているので、ミサイル発射シーンを含む「まとめ」の部分に日本語字幕を付けてYouTubeにアップロードしておいた。

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    Source: YouTube, https://youtu.be/OfWnN0XNYrM

    「敬愛する金正恩同志が新たに建造された総合奉仕船『ムジゲ(虹)号』を視察された」:中国の中古観光船か?、回転寿司らしきものも、水質汚染にも配慮した「お言葉」 (2015年9月28日 「朝鮮中央TV」)

    28日、「朝鮮中央TV」などの北朝鮮メディアが、「元帥様」が「新たに建造された」大同江に浮かぶ「総合奉仕船」を視察したと伝えた。この種の船としては、2013年3月25日の報道で「大同江」が紹介されている。

    今回建造された「ムジゲ号」は、「(4階建てで)一度に1230人の乗客が朝鮮民俗料理、世界的に有名な料理などのサービスを受けることができ、風光明媚な大同江を遊覧することができるよう」建造されており、「総床面積は1390平方メートル、長さ120メートル、幅25メートル、排水量3500トン」ということである。過去に建造された「『大同江』と名付けられたこの「食堂船」は、全長68.98m、全高26m、排水量820トン、収容人員は300人の2階建ての船」と過去記事に書いてあったので、収容人数が4倍以上の大型の「奉仕船」ということになる。

    http://dprknow.blog.fc2.com/blog-entry-533.html

    「大同江」を「食堂船」、今回の「ムジゲ号」を「総合奉仕船」と呼んでいることからして、「ムジゲ号」は食事をするだけではなく、様々なレジャーができる船なのであろう。今回の「報道」では、レジャー施設らしきものは紹介されなかったが、売店などは紹介されていた。

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    Source: KCTV, 2015/09/28放送

    「ムジゲ号」は、「南浦造船所をはじめとした、船舶工業部門と朝鮮人民軍第541軍部隊」が「我々式に立派に建造した」と「元帥様」が称賛しているが、ゼロからの建造ではなく、中国の中古観光船を「我々式」に改造したような感じがする。何の根拠もないのだが、かつて重慶で乗った観光船と何となく雰囲気が似ているからである。

    「我々式」といえば、乗務員、特に女性乗務員の制服がなかなかよろしい。特に、首に巻いているスカーフ(と呼ぶのか?)が、北朝鮮ではこれまで見られなかったスタイルではないだろうか。革命的な赤一色ではなく、虹のような配色にしているところも心憎いデザインである。アシアナ航空のカラーと似ているところは気になるが、同じ民族なのだから、色彩感覚が似てしまうのはやむを得ないのであろう。
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    Source: KCTV, 2015/09/28放送

    今や、回転寿司は「世界的な有名な料理」の地位を得たのかもしれないが、船内には回転寿司が食べられそうな施設もある。紹介された写真では、カラフルな皿を流しているだけであるが、値段をさらの色で区別する日本の回転寿司を連想させる。厳しい制裁の中、総連が回転寿司テーブルを献上したということはないだろうが、だとすると、回転寿司という発想がどうにも中国的である。やはり、中古船なのであろうか。
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    Source: KCTV, 2015/09/28放送

    この「視察」には金ヨジョン「副部長同志」も同行しているが、彼女がはっきりと確認できる写真は一枚もない(らしき人はいるが、恐らく船舶関係者であろう)。

    「元帥様」は、10月10日までに就航するようにと指示したが、「元帥様」の「恩情深い措置」があったとしても、これだけの船を定常的に運用しながら、それなりの食料を提供し続けるというのは、なかなか大変なような気がする。習近平の豪華ビュッフェ禁止令がだされても、まだまだ飽食状態が続く中国を連想してしまうからかもしれないが、「ムジゲ号」の「奉仕」内容を見たいものである。

    「元帥様」は、「汚水処理を規定の要求どおり行うことで、大同江を汚染させることが絶対にあってはならないと強調」しているので、「ムジゲ号」からのポイ捨てや垂れ流しは厳しい処罰の対象となりそうである。

    「特別賞金」を受け取った平壌市民は、「ムジゲ号」での大同江クルーズを楽しめるということなのだろう。

    <追記>
    コメントで「ムジゲ号」がgoogle mapに写っているという情報を頂いた。確かに見事に写っていた。

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    Source: Google Map

    また、近くには桟橋と思われる構造物も建設されているようだ。構造物の下の橋が「大同橋」。
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    Source: Google Map

    写真で見る「元帥様」の体型変化:130キロ説がある (2015年9月27日)

    韓国紙『朝鮮日報』が「朝鮮の金正恩第1書記の肥満が進み、韓国政府が体形や足取りから、過去5年間で体重が約30キロ増えて現在は約130キロと分析していると報じた」と日本メディアが伝えている。

    上の引用は、『産経新聞』、「金正恩氏がストレス太り? 5年間で30キロ増の130キロ 韓国政府分析」、http://www.sankei.com/world/news/150926/wor1509260070-n1.html

    随分太ったなとは思っていたが、130キロとは、かなりの体重である。米国映画『The Interview』の中に彼が全裸になった後ろ姿見せるシーンがあるが、130キロだとあんな感じなのかなと想像してしまう。

    130キロかどうかはさておき、拙ブログに掲載した写真を掘り起こしながら、2012年以降、毎月の「元帥様」の体型変化を追ってみることにした。一度はやりたい作業だったのだが、面倒なので放置しておいた。しかし、「130キロ」報道もあったので、やってみることにする。

    2012年

    3月
    「朝鮮人民具最高司令官金正恩同志が3.8国際婦女節記念銀河水音楽会【女性は花だね】を観覧された」(2012年3月9日「労働新聞」)。この頃の「元帥様」は、太っているというよりも体格が良いという感じで、顔も締まっている。
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    Source: uriminzokkiri, You Tube, http://www.youtube.com/watch?v=DRgc9HOOEAM&context=C4db4f3eADvjVQa1PpcFOj3d50nl-a_9mUrIuunrLOJwsAhL00Sfk=

    4月
    「朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議第12期第5次会議進行」(2012年4月14日「朝鮮中央TV」)。左手首の腕時計のバンドもまだ余裕がありそうに見える。
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    Source: uriminzokkiri, You Tube, http://www.youtube.com/watch?v=DRgc9HOOEAM&context=C4db4f3eADvjVQa1PpcFOj3d50nl-a_9mUrIuunrLOJwsAhL00Sfk=

    5月
    「金正恩同志が万景台遊技場を回られた」(2012年5月9日「朝鮮中央通信」)。「管理状態が悪い」と幹部を叱責した「現地指導」の時の写真である。下着を見せているが、腹部もそれほど膨らんでいない。
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    Source: uriminzokkiri, You Tube, http://www.youtube.com/watch?v=DRgc9HOOEAM&context=C4db4f3eADvjVQa1PpcFOj3d50nl-a_9mUrIuunrLOJwsAhL00Sfk=

    6月
    「<記録映画>敬愛する金正恩同志がチャンジョン通りに建った児童百貨店と住宅を視察された」(2012年5月31日 「朝鮮中央TV」)。顔も締まっており、腹もあまり出ていない。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-01-11-y.flv

    7月
    「金正恩元帥様をお迎えしルンラ人民遊園地竣工式盛大に開催」:遊具に乗る金正恩元帥、李雪主夫人と腕組み(2012年7月25日 「朝鮮中央通信」)。手を挙げていることもあり、非常にスリムに見える。カッコイイ「元帥様」という感じ。
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    Source: KCNA,http://www.kcna.kp/userAction.do?action=photoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=757356

    8月
    「<記録映画>敬愛する最高司令官金正恩元帥様がルンラ人民遊園地1段階建設事業を精力的に指導」:会釈する金正恩夫妻、妹金ヨジョンの動き(2012年8月2日 「朝鮮中央TV」)。この頃で90キロぐらいだろうか。この頃、既に「副部長」であったかは分からないが、背景の「副部長同志」はピンクのシャツを着て笑っている。植え込みを飛び越えたと韓国メディアに書き立てられた。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-07-30-12-y.flv

    9月
    「<録画報道>敬愛する金正恩元帥様が開業を前にしたヘマジ食堂を視察された」(2012年9月1日 「朝鮮中央TV」)。見ていたら李雪主夫人と共に写っている写真は、痩せて見えるカットが多いような。手首もまだ細い。この写真など、お父さんが病気(脳卒中?)で倒れ、痩せて復帰したときの様子にも似ている。おもしろいのは、8月の写真と比べて、こちらの方が痩せて見える。8月は長袖を着用していたので、それこそお祖父さんに似せるために腹に巻物を入れていたのかもしれない。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-09-01-12-y.flv

    10月
    『<実況録画>敬愛する金正恩元帥をお迎えし開催された朝鮮労働党創建67周年慶祝モランボン楽団公演『嚮導の党を高く歌う』」(2012年10月12日 「朝鮮中央TV」)。こういう序列もあったのだなと思い出させる北朝鮮の記録からは抹消されたはずの写真。「元帥様」は敬礼している。横の張成沢と比べると「元帥様」は太ってはいるが、その差はそれほど大きくない。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-10-12-14-y.flv

    11月
    「<録画報道>朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が第534軍部隊直属騎馬中隊訓練場を視察された」(2012年11月19日 「朝鮮中央TV」)。この頃は、乗馬も問題なくできていた。本当に130キロだとすると、今は馬にまたがるのも一苦労では。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-19-11-y.flv

    12月
    「<録画報道>敬愛する金正恩元帥様が西海衛星は車上を訪ねられ『光明星3-2』号機を成功裏な発射に大きく貢献した科学者と技術者を祝賀した」 (2012年12月15日 「朝鮮中央TV」)。「銀河3-2号機」発射成功を祝し、「西海衛星発射総合指揮所」を訪れた「最高司令官同志」。コートを着用しているが、腹は出ていない。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-12-15-13-y.flv

    2013年

    1月
    「<録画実況>我が党と人民の最高指導者金正恩同志をお迎えし開催された朝鮮労働党第4回細胞秘書大会が閉幕した」 (2013年1月30日 「朝鮮中央TV」)。まだまだ痩せている。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-01-30-11-y.flv

    2月
    2月23日「第630大連合部隊演習指導」。顔が少し丸くなり、腹が出てきたように見える。
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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 조선인민군 항공 및 반항공군,조선인민군 제630대련합부대의 비행훈련과 항공륙전병강하훈련을 지도하시였다」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_01_01

    3月
    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が呉仲洽7連隊称号を授与され朝鮮人民軍第1973部隊を視察された」:青瓦台、果川を狙う? (2013年3月23日 「労働新聞」「朝鮮中央TV」)。3月になり、さらに顔が丸くなったように見える。この時は、「米帝と総決算する時が来たと判断するに至ったことを認め」、「米国本土とハワイ、グアム島をはじめとした太平洋全作戦地域の米帝侵略軍基地、南朝鮮駐屯米軍基地を事情を勘案せず打撃しなければならないとし、戦略ロケット軍の火力打撃計画を検討し最終批准」などをした時期で、「鋼鉄霊将」の「最高司令官同志」にもストレスがあり太ったのかもしれない。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-03-24-13-y.flv

    4月
    4月26日「人民軍創建81周年礼式」。頬の辺りの肉が落ちたように見える。「米帝との総決算」がさしあたり終わり、ホッとしたのか。
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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군창건 81돐에 즈음한 조선인민군 례식 엄숙히 거행 경애하는 최고사령관 김 정 은원수님께서 당과 군대,국가의 책임일군들과 함께 참석하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-04-26-0001&chAction=L

    5月
    「<録画報道>敬愛する金正恩元帥様が万寿台創作社を訪れ祖国解放戦争戦争勝利記念館に掲げる偉大な首領様の映像作品創作事業を指導された」 (2013年5月13日 「朝鮮中央TV」)。腹も少し出ているが、このぐらいであれば、背景の絵のお祖父さんと大体同じ感じ。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?categ1=12&no=14730

    6月
    「<録画報道>敬愛する金正恩元帥様が1月18日機械総合工場を現地指導された」:金正恩、農業部門指導、機械工場幹部を強く叱責 (2013年6月19日 「朝鮮中央TV」)。この「現地指導」は、「元帥様」叱責シリーズの第2弾だったはずです。この「現地指導」では、背後からのカットがある。臀部の大きさが確認できるが、「肥大」というレベルでは全くない。
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    Source: KCTV, 2013年6月21日放送

    7月
    「祖国解放戦争勝利60周年慶祝閲兵式および平壌群衆示威盛大に挙行」:「核」を避ける崔龍海演説、李源潮の顔つき、金正恩に椅子 (2013年7月27日 「朝鮮中央TV」)。この写真では、腹の膨らみが目立っている。内々で左の方で敬礼している叔父さん問題が出てきており、ストレスが溜まりだしていたのかもしれない。
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    Source: KCTV、2013年7月27日放送(生放送)

    8月
    筆者の海外滞在期間が長かったので、拙ブログにアップロードした写真なし。

    9月
    「金正恩元帥様がデニス・ロッドマンとその一行とお会いになった」 (2013年9月6日 「朝鮮中央通信」)。写真の関係かもしれないが、少し腹が出てきているように見える。顔も少し丸くなったようだ。
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    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은원수님께서 우리 나라를 방문하고있는 미국 NBA 이전 선수 데니스 로드맨과 그 일행을 만나시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-09-07-0002&chAction=T

    10月
    モランボン・国家功勲楽団合同公演、21世紀楽団・国家功勲楽団合同公演 (2013年10月17日、20日 「朝鮮中央TV」)。体型は9月とあまり変わっていない。
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    Source: KCTV,2013/10/17放送

    11月
    記事はたくさんあるものの、「元帥様」の写真が1枚もない。今思えば、「この人」の問題で大忙しだったのかもしれない。
    11月初旬、猪木議員一行と会見した時の張成沢
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    Source: KCNA

    12月
    「朝鮮労働党中央委員会政治局拡大会議に関する報道」:張成沢を激しく糾弾、政治的不正から女性問題、麻薬使用まで (2013年12月9日 「労働新聞」)。そして、張成沢を処断した会議。会議の時点では、10月と比較して特に太ったようにも見えない。
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    Source: KCTV, 2013/12/09放送(午後3時9分より)

    2014年

    1月
    「<朝鮮記録映画>敬愛する金正恩同志が様々な部門の事業を現地指導、2013.11-12」:馬息嶺スキー場指導が中心、現地指導の成果、スノーマシン、雪嵐の中強調 (2014年1月10日 「朝鮮中央TV」)。厚いコートを着ているからかもしれないが、太ってきており、顔も丸くなったように見える。元記事に掲載した写真は、「元帥様」が太ったかどうかなどは全く考慮していないので、平均的に見て、太ってきているのであろう。
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    Source: KCTV, 2014/1/10放送

    2月
    2月18日「敬愛する最高司令官金正恩同志が人民軍将兵と共に光明星節慶祝功勲国家合唱団の公演を観覧された」。腹が出てきるように見える。
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    Source: KCTV, 2014/2/18放送

    3月
    「敬愛する最高司令官金正恩同志が人民軍将兵と共にモランボン楽団公演を観覧された」:金ヨジョンも随行者最後で紹介、拍手をしていない金ヨジョン、モランボン再活性化か (2014年3月23日 「労働新聞」)。深く座っていることもあるが、体が丸くなり、首の辺りの肉が増えているように見える。
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    Source: KCTV, 2014/03/23放送

    4月
    「黃炳瑞同志に朝鮮人民軍次帥称号授与」:崔龍海今度は本当に失脚? 体調悪化? (2014年4月28日 「朝鮮中央通信」)。崔龍海が消えたように思われたときの写真。体重増加はしているように見えないが、減ってはいないようだ。
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    Source: KCTV, 2014/04/30放送

    同月の「<録画実況>敬愛する金正恩元帥様をお迎えし開催された朝鮮人民軍第1回飛行士大会参加者のためのモランボン楽団祝賀公演」 (2014年4月21日 「朝鮮中央TV」)では、「元帥様」の幼少時代と思われる写真も紹介された。合成写真なのかもしれないが、顔がやたらと丸い。
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    Source: KCTV, 2014/04/21

    5月
    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が『朝鮮人民軍航空及び反航空軍飛行指揮官の戦闘飛行術競技大会-2014を指導された」:再塗装された政府専用機、ファーストレディ(李雪主)とレッドカーペットをさっそうと歩く、崔龍海「党人」としてダブルNo.2か、「党中央委員会責任幹部」として金ヨジョンも同行 (20140年5月10日 「労働新聞」)。何枚か写真があるが、下の写真など、腹が異常に出ていることが分かる。夫人と一緒に写っても、カッコイイ「元帥様」ではなくなってしまった。
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    Source: kCTV, 2014/05/10放送

    6月
    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が朝鮮人民戦略軍の戦術ロケット発射訓練を指導された」:日本海に発射された短距離ロケット、日本への揺さぶり、日朝交渉、安倍政権の外交能力 (2014年6月30日 「朝鮮中央通信」)。2013年6月の写真と対比すると太ったことがよく分かる。
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    Source: KCTV, 2014/06/30放送

    7月
    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が朝鮮人民軍第171軍部隊の砲射撃訓練を指導された」:ロケット砲発射訓練も指導、韓米訓練への反発、米国が日朝交渉を牽制 (2014年7月15日 「労働新聞」)。顎から首の辺りの肉付きが進行か。
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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 조선인민군 제171군부대의 포실탄사격훈련을 지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-07-15-0002&chAction=L

    8月
    海外滞在期間が長く、「元帥様」の写真を掲載した記事はない。

    9月
    「<朝鮮記録映画>人民のための領導の日々(2)」:金正恩、「不自由な体」と表現 (2014年9月25日 「朝鮮中央TV」)。記事のタイトルにも書いた通り、8月の「元帥様」の「革命活動」を紹介する「朝鮮記録映画」の中で、足を引きずっている様子を見せながら、「不自由な体」とナレーションを入れている。体重増加と足の不調の因果関係については諸説あるが、何らかの関連があることは間違いないであろう。
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    Source: KCTV, 2014/09/25放送

    10月
    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が呉仲洽7連隊称号を授与された朝鮮人民軍航空及び反航空軍第1017軍部隊と第458軍部隊の戦闘飛行士の道路飛行場での離着陸飛行訓練を指導された」:復帰後初の軍部隊指導、横転飛行、命令違反と度胸 (2014年10月19日 「労働新聞」)。「不自由な足」の治療を終えて杖を持って登場した「元帥様」。多少腹がへっこんだように見える。
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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 오중흡7련대칭호를 수여받은 조선인민군 항공 및 반항공군 제1017군부대와 제458군부대 전투비행사들의 도로비행장에서의 리착륙비행훈련을 지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    11月
    「敬愛する金正恩同志が朝鮮4.26漫画映画撮影所を現地指導された」:金ヨジョンを「労働党中央委員会副部長」と紹介、妹らしく笑う金ヨジョン、幹部化と紹介作業 (2014年11月27日 「労働新聞」)。約2年前の2012年12月のコート姿と比べると、随分太っていることがはっきりと分かる。
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    Source: KCTV, 2014/11/27放送

    12月
    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が朝鮮人民軍第851軍部隊管下女性放射砲区部隊の砲射撃訓練を指導された」:金ヨジョン軍指導に同行、党人と軍人の分離 (2014年12月30日 「朝鮮中央TV」)。肥満進行か。
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    Source: KCTV, 2014/12/30放送

    2015年

    1月
    「<朝鮮記録映画>敬愛する金正恩元帥様が平壌育児院、愛育院を訪問され、新年を迎える園児たちを祝福して下さった」:金正恩、「子供を持ったお父さんは、子供のために全てのことをしてやりたい」:金正恩、子供がいることを公式化「朝鮮記録映画」か?、感動する金正恩はいい人、メモを取る金ヨジョン副部長 (2015年1月3日 「朝鮮中央TV」)。
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    Source: KCTV, 2015.01.03放送

    と、9月まで並べようと思ったが、随分時間がかかったし、これ以上並べても変化は見られないと思うので、ここで止めておく。2年分の「元帥様」カレンダーを作ったような感じだが、ついでに自分が書いた過去記事を読み直すと、よくもまあ色々なことを書いたもんだと妙に感心してしまう。

    「敬愛する金正恩同志が新たに建設されたチャングァン商店を現地指導された」:軍事工業部門で生産された日用品、「特別賞金」でショッピングか?、メモを取る真面目な金ヨジョン (2015年9月25日 「朝鮮中央TV」)

    25日、「朝鮮中央TV」が「録画報道」で、「元帥様」が「新たに建設されたチャングァン商店を現地指導」した様子を伝えた。

    「現地指導」は、日没後に行われた。
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    Source: KCTV, 2015/09/25放送

    売り場には数日前に「元帥様」が「視察」した「軍需部門」で生産された商品も陳列されている。
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    Source: KCTV, 2015/09/25放送

    「録画報道」では、器、バケツ、スポーツ用品、玩具売り場などが紹介された。今年になってよく使われるようになった、前面に商品や機械を入れ、フォーカスを「元帥様」に合わせたカット。金ヨジョン(宣伝扇動副部長?)のアイディアか。
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    Source: KCTV, 2015/09/25放送

    その、「副部長同志」の登場写真は3枚。この「現地指導」では、真面目にメモを取っている。
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    Source: KCTV, 2015/09/25放送

    「特別賞金」を支給することに関する「政令」が出されたことは昨日の記事に書いたが、どうやら、「賞金」をもらっても買えるものがないのではなく、こうした商店で「日用品」がいくらでも購入できるということをPRしたいようだ。ただし、「チャングァン商店」の開店は「10月10日までに」ということなので、「賞金」支給の時期とも相まって、ショッピングはしばらく後になりそうだ。

    「共和国に不法入国して逮捕された米国ニューヨーク大学学生が記者と会見」:引用ながら「独裁者達」 (2015年9月25日 「朝鮮中央通信」)

    25日、「朝鮮中央通信」が中国・丹東から北朝鮮に不法入国して逮捕された韓国系米国人大学生の記者会見の様子を報じた。

    ソウルで7才まで暮らし、両親と共に米国に渡ったニューヨーク大学で経営学を学ぶ学生、チュ・ウォンムン(21)は、4月22日に丹東から北朝鮮に不法入国して逮捕された。入国目的は、「北朝鮮の実態が知りたくて」ということであったそうであるが、米国旅券を持っていれば、「北朝鮮を見る」だけなのであれば、不法入国しなくても北朝鮮にはいくらでも行けるはずである(韓国系米国旅券保持者の扱いの規定はあるのかもしれないが、北朝鮮を称賛したとして韓国から強制追放させられた韓国系米国旅券保持者の女性もいる)。

    目的が純粋であったためか、この学生は、「金正恩元帥様」から「特恵」的な配慮をされ、金日成総合大学をはじめとした、ほとんどが一般観光客が行けるような場所を見学することができた。韓国系米国人にこのタイミングで発言をさせているのは、北朝鮮の「人権問題」に対する反論を間接的にするためであることは間違いない。しかしよく読むと、彼は部分的に興味深いことを言っている。

    まず、学生は、「私が米国で生活している時、メディアと社会世論を通して、共和国について見聞きしたことによれば、共和国は『核兵器で武装した悪名高い好戦国』であり、『独裁者達』が権力維持のために人民を残忍に抑圧しながら、自分たちは豪華な生活をしている」とした上で、こうした「認識は間違っていた」と語っている。確かに、学生の言葉どおり、日本を含めた西側の北朝鮮に対する一般的な認識であろう。『労働新聞』HPの日付が変わっていないのでまだ分からないが、もしこの「朝鮮中央通信」の記事をそのまま転載し、上記の学生の言葉を掲載するとすれば、それはなかなか勇気のいることである。それは、朝鮮人民こそが「認識が間違っていた」のかどうか、一番よく分かっているからである。

    金日成総合大学を訪れ、「電子図書館には、インターネットと局部網が使えるコンピュータが」あったと言っている。ここでいう「局部網」というのは何だろうか。インターネットで国外の情報も自由に取得できる状況であるならば、「局部網」は北朝鮮国内に限定されたネットワークを指すのかもしれない(あるいは、学内ネット)。

    この学生は、「7月19日、地方主権機関の代議員を選挙する姿も見ら」れたという。北朝鮮の「選挙の歌」や投票スローガンから既に明らかになっていることではあるが、学生は「(選挙は)選挙者が誰某に反対したり、候補がお互いに競争をする場ではなく、人民が候補者を支持し、候補者は社会のために服務することを約束する場所であった」と述べている。スローガン等でも「賛成投票をしよう」と呼びかけているが、候補者が複数出てこない時点で我々の選挙の発想あるいは方式とは全く異なっていることが分かる。その系からすれば、国家の指導者たる「第1秘書」なり「第1委員長」が「推戴」され、100%賛成投票で選ばれるというシステムは分かる。「唯一指導体系」なので、「反対」はあり得ず、全ては「唯一」ということなのであろう。

    北朝鮮が「孤立して、閉鎖された国」と言われており、「人民が外部世界について知らない」と言われていることについては、「平壌国際映画会館で、西側の日常生活を見せるインド芸術映画『TEZZ』を観覧し、中央テレビや録画機でロシア、中国、インドをはじめとした各国の映画を数多く見た」と語っている。ロシア(正確には、旧ソ連)や中国映画が、「朝鮮中央TV」で放映されていることは確認済みであるが、インド映画は「中央TV」では見たことがない。『TEZZ』を検索してみると、2012年に製作されたアクション映画のようだ。 インドは確かに西側ではあるが、なぜインドなのだろうか。映画の内容にも関わるのだろうが、このDVDを手に入れられたら、一度見てみたいと思う。

    さらに、「人民大学習堂では、米国人作家、マーク・トゥエインが書いた小説『ハックルベリー・フィンの冒険』も見た」と言っている。この小説は「世界名作」のカテゴリーに入れられているのだろうから、それがあったとしても不思議な話ではない。もちろん、「世界名作」カテゴリーの存在を知らない西側の一般人にとっては、「米国作家の!」という驚きとなるので、それを狙ったものなのであろう。

    と、記事を書き終えて投稿しようと思ったところ、26日付けの『労働新聞』に関連記事が出ていた。しかし、予想どおりというべきか、上に書いた内容は一切書かれていない。後日、「朝鮮中央TV」で「記者会見」の様子が放送されるのかが見物である。

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    Source: 『労働新聞』、「공화국에 비법입국하였다가 단속된 미국 뉴욕대학 학생 기자들과 회견」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2015-09-26-0027

    「朝鮮で特別賞金を授与することを決定」:「月基準生活費」の100%、景気刺激策? (2015年9月25日 「朝鮮中央通信」)

    25日付けの「朝鮮中央通信」が、北朝鮮で「特別賞金を授与」することになったと報じた。

    同通信によると「最高人民会議常任委員会」が「党に捧げる忠情の労力的贈り物を作るために献身的に闘争してきた朝鮮の軍隊と人民に特別賞金を適用」」することにしたという。23日に発表された「政令」では、「朝鮮労働党創建70周年を迎え、全ての人民軍将兵と勤労者、年金、補助金、奨学金を受けている全ての人を対象に月基準生活費の100%に該当する特別賞金を授与する」ということである。

    「月基準生活費」というのは、恐らく日本の「基本給」に近い概念であると思われるが、「特別賞金」で購入できる商品やサービスが十分に供給されていれば、景気刺激策となるわけだが、北朝鮮の場合は、ばらまかれた金はどこに行くのであろうか。

    「朝鮮民主主義人民共和国外務省スポークスマン談話」:国連人権理事会の「調査報告書」と「人権決議」に反発、北朝鮮を擁護した国、北朝鮮公式見解「公開処刑はある」 (2015年9月23日 「朝鮮中央通信」)

    2015年9月21日に開催された第30回国連人権理事会における北朝鮮の人権問題に関するパネルディスカッションでの議論に反発する「外務省スポークスマン談話」を北朝鮮が出した。

    色々なことを主張しているが、要は「『集まり(パネルディスカッションを指す)』は、米国の対朝鮮敵対視政策の産物であり、人権を口実に我々の『制度転覆』を企てた不純な政治的謀略劇であったことを再び世界に示した」ということである。

    パネルディスカッションでの議論でも、北朝鮮代表は「国連人権高等弁務官の声明に反対」し、「国連人権高等弁務官ソウル事務所設置は政治的挑発」であり、同事務所は「米国と敵対追従国」が設置した「敵対政策の道具」にすぎず、「国連人権高等弁務官事務所は、反北朝鮮の側に立ち、北朝鮮の信頼を失墜させ、現政権を転換することを目的としている」ものなので、「理事会の公正性と客観性の原則に反するものである」と主張している。

    パネルディスカッションでは、日本も含む多くの国の代表が発言しており、そのほとんどは北朝鮮の人権侵害を非難している。

    日本からは飯塚耕一郎氏(拉致被害者家族の会副会長)が参加しており、北朝鮮が拉致被害者情報を「悪用(misuse)」しており、「少なくとも・・・12人の拉致被害者」と「数百人の日本国民」や「それ以外の国の国民」の北朝鮮による拉致は「重要な国際問題」なので、「各国が一丸となって解決すべきだ」などと発言している。

    レポートは斜め読みしただけなので見落としがあるかもしれないが、多くの北朝鮮非難発言の中で、北朝鮮の人権状況を擁護あるいは積極的に非難していない国は以下。

    ・キューバ:「キューバは、(北朝鮮の)体制転換に繋がる如何なる行動も支持しない。『普遍的・定期的なレビュー(UPR: Universal Periodic Review)』のようなメカニズムが対話を強化させる、この問題を扱うには最も適切な方法である」
    ・中国:「今年は六者会談開催から12周年を迎える年であり、全ての関係国は朝鮮半島情勢を危険にする如何なる行動も控えることを願う」
    ・ロシア:「人権理事会は政治化されたと烙印を押され、純粋な対話を北朝鮮と行うのではなく、(北朝鮮に対して)理事会は攻撃的な語調の度合いを高めている」
    ・ベネズエラ:「特定国を指定することは、如何なる国の人権状況を議論するのにも相応しい道ではない。UPRメカニズムこそが今後進むべき正しい道である」
    ・イラン:「人権問題の政治化に反対する。国連人権高等弁務官は、建設的な方法で北朝鮮と協議し、実際の人権状況の改善に貢献すべきである」
    ・ベラルーシ:「特定国を指定することに反対する。人権改善に貢献しないので、(人権問題を)政治化すべきではない。真の対話がなされるとき、(人権問題改善は)成功する」
    ・ラオス:「如何なる国の人権状況改善と人権保護は、協力の原則と関係国の完全な同意に基づく対話を原則とすべきである。人権の実現は、それぞれの国の脈絡に基づくべきである。国際社会は積極的に北朝鮮と協議することを求める」
    ・ミャンマー:「人権理事会が特定国を指定することに反対という立場を繰り返す。それは、(特定国の指定が)真の対話のための建設的な環境や関係国間の建設的な協力関係を作り出すものではないからである。理事会の業務は、ユニバーサル、普遍性、客観性、非主観の原則に基づくものでなければならない。

    これらは北朝鮮をサポートしそうな国々ではあるが、それぞれの発言は必ずしも間違ってはいない。

    UNHC, OHCHR, Human Rights Council holds panel discussion on the human rights situation in the Democratic People's Republic of Korea, http://www.ohchr.org/en/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=16475&LangID=E

    いくつかの国が『普遍的・定期的なレビュー(UPR: Universal Periodic Review)』メカニズムを主張しているので、こちらについても確認してみた。一読しただけなので正しいかは分からないが、一方的に北朝鮮を非難するのではなく、彼らにも発言や弁明の機会を十分に与えつつ、北朝鮮に人権状況改善を要求し、北朝鮮は「同意する」事項については改善に努めるというメカニズムのようである。

    イソップの「北風と太陽」ではないが、確かに攻撃をすればするほど、北朝鮮は反発を強める。その点、UPRは一方的な非難ではないので、北朝鮮も受け入れられるものは受け入れている。もちろん、それが本当に北朝鮮における人権状況の改善に繋がっているのかという疑問は残るが、何もやらないよりは良いことは間違いない。URPの報告を読むと、北朝鮮側からの説明は、どれそれという法律を制定し、状況の改善に努めているというものが多い。人権の話ではなく経済の話であったが、別記事に書いた延吉での国際フォーラムでも、中国人学者が北朝鮮における法律とその執行あるいは実際の運用の乖離について質問し、北朝鮮の学者を困らせていた。北朝鮮としては、それを誰もが納得するように実証することが課題である。

    UPR報告書の中で「公開処刑」に関する質問が出されており、北朝鮮代表がそれに以下のように答えている。

    「原則として、処刑は公開されていない。公開処刑は、犯した罪が極めて重大であるというように、例外的な場合にのみ行われる」

    この発言は北朝鮮が公式的に「公開処刑の存在」を認めたものであるが、「犯した罪が極めて重大」ということからすれば、張成沢が「公式的に」公開処刑された可能性は十分にある。「罪の重大さ」の定義は不明であるが、その基準が低ければ低いほど、「例外的」にではあるものの、頻繁に公開処刑が行われているということになるのであろう。

    UNHRC, "Report of the Working Group on the Universal Periodic Review* Democratic People’s Republic of Korea", http://daccess-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/G14/072/22/PDF/G1407222.pdf?OpenElement

    「敬愛する金正恩同志が軍需工業部門の生活必需品品評会場を視察された」:軍需工場で民生品生産、金ヨジョンへのよそ見警鐘か? (2015年9月22日 「朝鮮中央TV」)

    22日、「朝鮮中央TV」で「元帥様」が「軍需工業部門の生活必需品品評会」を視察した。軍需工業部門で働く労働者への生活必需品を自ら生産して供給する、さらには同部門以外の人民にも供給するということのようだ。軍事工業という再生産不可な部門で生活必需品生産を拡大するのであれば、良いことである。本来の意味(技術的な)でのスピルオーバー効果ではないが、生産ラインを変更・拡充することで民用製品をどんどん生産してもらいたいものである。

    「録画報道」で紹介された写真を見る限りでは、バケツ、単純な家電製品(扇風機、卓上照明器具)、器、石油コンロ、玩具、乳母車など、ローテク製品ばかりではあるが、ローテクであるだけにいずれも「生活必需品」であることは間違いない。別記事に書いた朝鮮人民ファミリーが空港で乳母車を搭乗口に持ってくれるサービスを見て、「あんなこともやってくれるんだな」と驚いていたのを思いだした。

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    Source: KCTV, 2015/09/22放送

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    Source: KCTV, 2015/09/22放送

    金正恩パパは、チュエ(ロッドマンによると元帥様の娘の名)の乳母車も押したのだろうか。
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    Source: KCTV, 2015/09/22放送

    さて、上の写真にも写っているが、今回の視察には久しぶりに金ヨジョンが同行している。彼女がはっきりと写っている写真は、後ろ姿も含めて4枚あるが、1枚彼女が鏡の中に写っている写真がある。
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    Source: KCTV, 2015/09/22放送

    これまでもあったように、彼女は「元帥様」の肩付近など、「元帥様」の近くに写っているのだが、上の写真では、例によって「元帥様」の方を見ずによそ見をしているように見える(彼女の立ち位置がよく分からないので、必ずしもそうとは限らないが)。鏡の中でよそ見をしている姿を敢えて出しているというのは、よそ見をするなという彼女に対する警鐘なのか、あるいはよそ見を許可する妹に対する特別待遇なのか、これまでは後者なのかと思っていたが、鏡の中ということからすると、前者のような気がしないでもない。粛清云々はないだろうが、「副部長同志」も少し気をつけた方がよいのかもしれない。

    「在日同胞祖国訪問団が出国した」:ポジティブな朝鮮人民、同じ便に訪問団、中国国際航空減便、中朝関係悪化が原因か (2015年9月21日 「朝鮮中央通信」)

    タイトルは日朝関係カテゴリーなのだが、内容的には中朝関係なのでそちらに入れておいた。中国からの帰路、北京から関空に飛んだのだが、同じ便に朝鮮総連の関係者と思われる人々がたくさん乗っていた。実は、延吉から北京に着いたとき、北京発平壌行きCA121がちょうど飛び立ったところだった。待ち時間がやたらと長かったので、暇つぶしに出発ゲートの様子でも見に行きたかったのだが、残念ながら飛び立った後だった。

    北京空港には、往路、1組の朝鮮人民グループがいた。関係は分からないが、家族のような雰囲気だった。鞄には、アラビア文字のタグが付いていたので、中東方面からの帰国だったのだろうか。お土産をたくさん持っており、「これはおじさんにあげて・・・」云々という話をしていたので、やはり家族だったのだろう。北京入管で私と一緒に中国に入国していたので、北京-平壌間は経費節減のために列車で移動する予定だったのかもしれない。行きも乗り継ぎ時間が5時間近くあったので、暇つぶしにこの人達の近くで話を聞きながら歩いていた。面白かったのは、椅子に座って休憩している奥さんと思われる女性に夫と思われる男性が「さあ行こう。時間を争取(쟁취:戦い取る)しなければ」と言っていたことだ。延吉で会った韓国の先生に聞いてみればよかったのだが、韓国人であれば「時間を大切に(아끼다)しなければ」と言ったのではないだろうか。朝鮮人民はポジティブなんだなと思いつつ、この家族と別れた(といっても、一方的にだが)。

    話を21日に戻して、関空に向かう帰りの便には朝鮮総連関係者と思われる人がたくさん乗っていた。例によって、一部朝鮮語の日本語を話しており、朝鮮で撮った写真を見ていた。私が「偉大な首領金日成同志は・・・」云々と書かれた金日成総合大学の先生の論文を読んでいたら、隣に座った総連関係者と思われるオジサンが、微妙な表情をしていた。

    で、「朝鮮中央通信」を見たら「21日に去った」と書いてあるので、まず間違いないであろう。裏を取るために、平壌-北京便のフライトスケジュールを調べてみた。21日には、08:30平壌発10:00北京着の高麗航空便(JS151)があった。

    Fly Team, http://flyteam.jp/airline_route/pek_fnj/flight_schedule

    そうしたら、中国国際航空の平壌-北京間の便数が9月25日から大幅に減便されることが分かった。9月21日までは、月・水・金のフライトがあったのだが、9月25日以降は金曜日のみになる。例年の時期的なフライトスケジュール変更かと思い、昨年同時期のフライトデータを検索してみたら、昨年は9月25日以降も月・水・金で飛んでいたようだ。

    過去のフライトデータ:Flight Status, http://www.flightstats.com/go/Home/home.do

    単に乗客数が少ないことからの減便なのかもしれないが、最近の中朝関係を考えると、どうやらそれだけの理由ではないような気がする。しかも、北朝鮮が新ターミナルを建設して張り切っているときに、減便するというのは仕打ちとしては酷い。瀋陽など、いくつかの都市で調べてみたが、中国国際航空(CA)の増便はないようだ。

    今回の減便に伴い、水曜日の平壌-北京間のフライトはなくなってしまった。中朝関係、本当に悪くなっているようだ。

    『<新しく出た歌>想いは私の幸福』:静かな感じの曲 (2015年9月20日 「朝鮮中央TV」)

    色々とコメントを頂いているが、取りあえずYouTubeに日本語字幕付きをアップロードしておいた。

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    Source: YouTube, https://youtu.be/_dC9cuWYJCc

    モランボン楽団風の接待員楽団:ソヌ・ヒャンヒの話し、世界名曲 (2015年9月22日)

    中国の先生にサプライズで延吉の北朝鮮レストランに連れて行っていただいた。普通の中国レストランに行くと思い、カメラを持参しなかった。レストランでの撮影は可であったにもかかわらず、撮影できなかったのは大変悔やまれる。ということで、申し訳ないのだが、ここでは文字だけでの紹介となってしまう。

    実は、8月にも延吉を訪れ、例によって、北朝鮮系の柳京ホテルに宿泊した。ここでもショーがあり、時間の関係で1度だけ見た。8月ということもあり、韓国からの白頭山観光目的の旅行者で超満員。申し訳ないのだが、あまりよい雰囲気ではなかった。また、韓国人旅行者がいたからかどうかは分からないが、歌う歌は「啓蒙期歌謡」系ばかり。革命的な「新しく出た歌」など出る雰囲気すらなかった。

    ところが、今回行ったレストランは凄かった。私が到着したときには既に「公演」は始まっていたのだが、なんと電子バイオリンを持った奏者が、ソヌ・ヒャンヒよろしくブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」を独奏していた。動きから何から、明らかに「モランボン楽団」のコピー。それが終わったら、なんと白い軍服風の衣装を着た3人組が出てきた。ここまでコピーをするのかと驚いた。そして、歌ったのが「パルコルム」。北朝鮮レストランはそこそこ行っているが、「パルコルム」は初めて聞いた。軍服風の衣装を着ていない「俳優」も合流し、大合唱。席で一緒に歌っていると、「俳優」とチラチラ目が合う。変な奴がいると思ったのであろう。数曲入り、最後は「金日成将軍の歌」。これもレストランでは初めて聞いた。感動の坩堝の中、一緒に歌っていると、また「俳優たち(複数)」がチラチラと見ている。確かに、喜んで歌っているオッサンは私だけ。

    9月になると白頭山観光がなくなるので、レストランにいたのは中国人(ほとんどが朝鮮族)であった。朝鮮族のグループは、「社長」の誕生パーティをやっていたようだ。ここからまた、おもしろいことが起こった。一人の朝鮮族のオッサンが「サクソフォーンを自分が演奏したい」と。演奏するために支払った費用はいくらかは知らないが、結局演奏を始めた(ちなみに、このレストランで「俳優」とデュエットするには1曲100元。50元ぐらいなら記念にデュエットも悪くないが、100元(約2000円)は高すぎる)。

    この朝鮮族オッサン、「接待員楽団」のギター、ベース、ドラムをバックにサックスで演奏を始めた。普通に聞いて、とても上手く感じた(私にはその程度しか評価能力はない)。演奏した曲は、カーペンターズなどの西側の曲ばかり。オッサンのサックス演奏も上手かったのだが、なんと「接待員楽団」がバックでしっかりとオッサンのサックスに合わせている。オッサンとの打ち合わせは演奏曲目だけのようだったが、西側の曲を次から次へとオッサンのサックスに合わせて演奏してしまうのには驚いた。どこで覚えたのであろうか。曲目をメモすれば良かったと後悔している。もちろん、「社長」の誕生日に贈る「ハッピーバースデー」も含まれていた。

    さて、演奏が終わり、会場が少し静かになったので、後ろに立ってビールをついでくれていた「俳優」から「接待員」に変身したドンムに話しかけた。このレストランの特徴なのか、料理をたくさん注文したからなのかは分からないが、このドンム、フレンドリーに話しに応じてくれた(後者であるとすれば、資本主義をしっかりと学習しているということになる)。

    以下、ドンムとの話の一部。

    川口:「柳京ホテルの楽団と水準が違いますね。驚きました」
    ドンム:「そんなことはありません。柳京の俳優も上手ですよ」
    川口:「バイオリンを使って演奏するのは初めて見ましたよ。他の公演はギター中心です」
    ドンム:「そうですか。バイオリンを使うところもありますよ」
    川口:「バイオリンを弾いていた俳優はソヌ・ヒャンヒみたいですね」
    ドンム:「・・・」(この、・・・がちょっと不思議な空気だったので)
    川口:「最近、モランボン楽団の公演がありましたね」
    ドンム:「そうですか?」
    川口:「元帥様がキューバ代表団と一緒に観覧された公演です」
    ドンム:「それなら報道で見ました」(どうやらあの「朝鮮記録映画」は「革命活動」を紹介するもので、我々のように「モランボン楽団」にはあまり注目していなかったのかもしれない。)
    川口:「私のように朝鮮音楽を愛する(拙ブログでコメントを下さる方のような)日本人の間で話題になっているのですが、あの公演にソヌ・ヒャンヒは出ていましたか?」
    ドンム:「出ていなかったと思います」

    考えすぎなのかもしれないが、ソヌ・ヒャンヒという名前への微妙な反応と「出ていなかった」という答えが気になるところである。このドンム、中国2年目なので、本国事情はテレビなどを通じてしか知らないのかもしれないが、どうなのだろうか。

    西側の曲をサックスのオッサンと演奏したことについて、

    川口:「資本主義国の退廃的な曲も演奏するのですね」
    ドンム:「世界名曲ですよ」

    例によって、「世界名曲」という説明であったが、カーペンターズは、さすがに本国ではまだ「世界名曲リスト」に入っていないのではないだろうか。もちろん、お金を払えば「世界名曲」として何でも演奏するというのも、資本主義を学習した結果ではある。

    以上は会話の一部であるが、このドンムとは色々と「イルカ館」の話や「馬息嶺スキー場」の話しもした。こうした部分については、いずれまたどこかで紹介することにする。

    <追記>
    失念したレストランの名前を中国の先生に教えていただいた。「千年白雪会館」、北朝鮮の「白雪会社」が中国企業と合弁で運営しているレストランということである。ご招待いただいたので幾ら払ったのかは分からないが、多分、時間を合わせて行けば(19時少し前)、冷麺とビール(このレストランには、延吉の「氷川ビール」がある。偽物は絶対ないので、これがお勧め)で「公演」は十分に楽しめると思う。白頭山観光の韓国人がいない時期(寒くなってから)行くのがお勧め。

    「朝鮮民主主義人民共和国外務省スポークスマン談話」:安保法案参院決議を非難、金日成総合大学の先生との話し、「総連弾圧」と「安保法案」 (2015年9月20日 「労働新聞」)

    9月20日の『労働新聞』に日本の安保法案参院決議を非難する北朝鮮「外務省スポークスマン談話」が掲載された。別記事にも書いたように、金日成総合大学の先生と「少しだけ」ではあるが、話をする機会があった。20日のことであるが、「日本の情勢はどうか」と聞かれたので、安保関連法案の話しをしたら「『労働新聞』にはそのことは出ていなかった。総連弾圧のことが出ていたが」と言われた。

    「総連弾圧」については、過去記事にも書いたとおり北朝鮮の論調は知っていたので、「テロ」とは言わなかったものの、「政治的なもの」と言っておいた。金日成総合大学の先生が、「捜索をするには、捜査令状が必要じゃないか」と言ったので、「捜索令状は当然あったはず」だが、「捜索令状を裁判所に請求して捜索するのかが政治的判断」と説明しておいた。もちろん、この説明は場当たり的なものではなく、過去記事に書いた理由によるものである。

    北朝鮮の先生とは、立ち話しかできないので、ここから「拉致問題」に話を展開することができないのが残念だった。

    話がそれたが、「安保法制」については、北朝鮮の先生は全く知らなかった。『労働新聞』に記事が掲載されたのが20日なので、彼らはPCを持参していなかったため、インターネットで『労働新聞』を読めなかったのであろう。ソースが官営情報に限られる情報統制というのは、恐ろしいとつくづく感じた。「日本反動共の悪辣な策動」すら、官営メディアが報じるまで知らないのだから。

    「集団的安全保障を可能にした」とも説明したが、「集団的安全保障」という言葉を知らなかった。確かに、北朝鮮の『朝鮮語大辞典』には「集団的安全保障」という言葉は出ていない。なので、「これまでは、『ある国』(日本首相が度々持ち出す、北朝鮮とはもちろん言わなかったが)に日本が攻撃されたら米国が守るだけだったが、今は『ある国』が米国を攻撃したら日本が米国を守る」と説明しておいた。非常に大まかではあるが、間違いではないと思う。

    この話も、時間があれば「日本は朝鮮のように強力な戦争抑止力(核)がないのですよ」と核の話しに持って行きたかったのだが、残念ながらタイムアウト。

    「談話」全文を翻訳すると、以下のとおりである。

    *************
    朝鮮民主主義人民共和国スポークスマン談話

    日本が歴史の教訓を忘却し、軍国化と再侵略の道へと走っている。

    18日に開かれた日本の国会参議院本会で新たな「日米防衛協力指針」による安全保障関連法案が通過し、正式に法として成立したという。

    自衛隊法と武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動協力法など、10個の法を一括改訂した「平和安全法制整備法」と「自衛隊」の海外派兵と関連した「国際平和支援法」となっており、いわゆる「安全保障関連法」は、徹頭徹尾、他国に対する侵略の道を開くために作られた悪法である。

    日本の危険千万で無分別な動きに対して、周辺とアジアの各国はもちろん、西側からからまで日本が再び戦争ができる国になったという不安と憂慮の声が上がり、日本国内でも強力な反発が起こっている。

    内外の糾弾と排撃にもかかわらず「安全保障関連法」を成立させたことは、「東洋平和」を叫びながら世界を制覇しようとした軍国主義の昔の夢を必ずや実現してみようという日本の支配主義的野望がどのレベルに至っているのかを如実に物語っている。

    「安全保障関連法」は、日本を突撃隊にして、力でアジアと世界に対する支配戦略を実現してみようという米国を背負って、海外侵略野望を実現しようという日本の醜悪な野望の産物である。

    米国は、去る4月、日本との防衛協力指針を改定し「日本周辺」に限られていた日本の「自衛隊」の活動範囲を「全世界」に拡大することで、アジア太平洋重視戦略をはじめとした世界制覇戦略実現に日本を深く組み込もうとしている。

    一方、日本は、如何なる法的制約を受けることなく任意の時刻に米国と共に海外侵略の道に出ることができる政治軍事的、法的条件を作ろうとしている。

    「安全保障関連法」の成立で、日本は平和と安全を守り、米国を支援するという口実の下、世界のどこでも軍事作戦を展開し、「自衛隊」をいつでも海外に派遣できるようになった。

    日本が戦争の放棄と戦力及び交戦権の否認を明示した憲法9条を完全に白紙化することは時間の問題となった。

    日本の軍国主義策動は、アジアと世界の平和と安全に対する重大な脅威を作りだしている。

    特に、日本が我々と交戦状態にある米国の侵略的な軍事行動に公然と加担し、過去同様、朝鮮を侵略の第一の対象とし要としていることに最も大きな脅威がある。

    我々は、過去、朝鮮人民に行った万古大罪を敗亡後70年となる今日まで清算しない日本が、再び再侵略の寒々とした刀を口にくわえて、駆け込んでくることを絶対に見過ごすことはできない。

    我々の現実は、我々が先軍の旗を高く掲げ、自衛的国防力を強化してきたことが、どれほど正当であったのかとうことをはっきりと実証している。

    我々は、我々を巡って起こっている危険な侵略策動に対処し、戦争抑止力をさらに強化していく。

    日本は、時代錯誤的な侵略野望にとりつかれ、戦争法をついにでっちあげることで、再び悲惨な戦争の惨禍を経験するであろうし、永遠に後悔することになるであろう。

    2015年9月19日 平壌
    *******************************

    コメントを頂いた方々へ (2015年9月22日)

    色々とコメントをありがとうございます。先ほど、中国・延辺から帰ってきました。今回は、金日成総合大学の先生と話をするなど、色々と記事にできそうなネタを仕入れてきました。また、北系レストランで驚きの演奏を聴きました(既知のようではあるのですが、私には感激ものでした)。

    それぞれのコメントには、追ってお返事をお送りいたします。

    「<時事フォーカス>卑劣な政治テロ」: 北海道警による総連北海道本部捜索を非難する動画、ほとんど日本のニュース映像で構成 (2015年9月17日 「uriminzokkiri」)

    uriminnzokkiri-TVに北海道県警による総連北海道本部捜索を非難する動画が掲載された。例によって、日本語字幕を付けてYouTubeにアップロードしようと思ったのだが、あまりにも日本のテレビ局のニュース映像が多いので、公開は控えた。

    「卑劣な政治テロ」
    hokkaido chong ryon jpn policeflv_000007207
    Source: uriminzokkiri-TV, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=chojom&st=true&no=28702

    映像のほとんどは日本と韓国の報道番組からの引用である。uriminzokkiri-TVは、韓国の報道番組の引用をしばしば行うが、今回は内容との関連から日本が多い。

    独自映像は最後の15秒ほど
    hokkaido chong ryon jpn policeflv_000224505
    Source: uriminzokkiri-TV, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=chojom&st=true&no=28702

    ナレーションの内容は、ほぼ過去記事に書いた「朝日友好協会スポークスマン談話」と同じであるが、追加されている部分を訳出しておく。

    ****************
    日本反動共がメディアを煽り、総連組織と総連幹部が、まるで事件に加担したがごとく騒ぎ立てていること自体が、今回の暴挙の陰謀的真相をはっきりと見せています。

    日本警察のチンピラ共は、今年3月、合同捜査本部を設置し、装甲車まで動員して総連議長と副議長の自宅を奇襲強制捜索したのに続き、今回再びこのような暴挙を行うことで、日本反動共の総連抹殺策動が、既に見過ごすことができない危険なレベルに達しているということをはっきりと示している。

    内外世論が指摘しているように、このような事件の直接的な責任は、日本当局にある。安倍首相官邸は、8月20日から25日の間に、朝鮮半島に造成された緊張状態以後、総連に対する監視と組織内部探知を警察当局に直接指示するなど、総連に対する弾圧策動を計画的に推進してきました。

    安倍政権の総連と在日同胞に対する弾圧蛮行は、日本の歴代政権と比べられないほど、最も悪辣で残忍な方法で、規模においても広範囲に行われています。

    今、弾圧の対象となっている在日朝鮮人は、日帝植民地統治期に強制的に日本に連れて行かれた人であったり、その後世たちなので、日本当局は彼らを保護する法的・人道的責任を負っています。

    それにもかかわらず、日本反動共は、過去に彼らが朝鮮民族に対して行った憤怒に値する犯罪行為に対する謝罪と賠償は行わず、在日同胞を迫害するだけではなく、ついには彼らを対象として国家権力を動員した暴圧テロ行為まで躊躇することなく行っているのです。

    今回の事件で、日本こそが民主主義と人道主義が窒息しており、民族排他主義が蔓延している、世界最悪の犯罪国家、最も悪辣な戦犯国であるということが、満天下に暴露されました。

    しかし日本反動共は、愚かな陰謀を企て、弾圧の強風を巻き起こしても、躍動する若さで飛躍する、不敗の気性を誇る、我々共和国に従い、勝利の信念と楽観に溢れ前進する一心団結の隊伍、総連の前途を絶対に遮ることはできません。

    総連と在日同胞に対する日本反動共の卑劣な政治的テロと迫害策動は、百年宿敵日本に対する我々人民の敵対心と無慈悲な報復を千百倍に増加させるだけです。

    日本反動共は、我々千万軍民の胸で活火山のように吹き上がる対日敵対心を直視し、無分別な反共和国・反総連行為を直ちに止めなければなりません。
    *****************

    ラストシーンは戦車のパレード。
    hokkaido chong ryon jpn policeflv_000236493
    Source: uriminzokkiri-TV, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=chojom&st=true&no=28702

    「総連に対する弾圧策動」はブラフにも交渉を中断する理由にも使えるが、10月10日前後のロケット発射や核実験の可能性も高まっているので、拉致問題を巡る日朝交渉はさらに厳しくなってきているといえよう。

    「朝中政府間の南陽-図們、新たな国境橋の共同建設と管理及び保護に関する協定締結」:政治関係は冷え込んでも経済は動いている (2015年9月15日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が15日に配信した記事で、中国・図們と北朝鮮・南陽間の橋に関する協定が締結されたと伝えた。

    ******
    朝鮮民主主義人共和国政府と中華人民共和国政府間の南陽-図們の新しい国境橋の共同建設と管理及び保護に関する協定が15日平壌で締結された。

    我々の側から朴ミョングク外務省副相が、相手側から李ジングン駐朝中国特命全権大使がそれぞれ自国政府の委任により協定文に署名した。
    *****************

    2015年8月、著者が中国側から撮影した現在の橋。対岸は北朝鮮・南陽。
    IMGP0423s.jpg


    「日本は内外の警告に耳を傾けなければならない」:安倍談話を糾弾する対談 (2015年9月15日 「朝鮮中央TV」)

    15日夜、「朝鮮中央TV」が安倍談話を糾弾する対談番組を放送した。安倍談話が出されてから1ヶ月ほど過ぎているが、このタイミングで談話批判の番組を放送したのは、日朝関係のプライオリティーの低下と韓国と連携しながら歴史問題を追及しようという意図があるからかもしれない。

    番組内では、「南朝鮮」で行われた安倍談話に抗議する集会やデモを紹介しながら、そこでのスローガンを引用する形で「安倍は、韓半島(ママ)植民地支配の侵略犯罪を認めて謝罪しろ」と「韓半島」という言葉を使っている。「朝鮮芸術映画」や「テレビドラマ」の中では、米軍人が言う「Korean Peninsula」を「韓半島」と訳しているケースはあるが、この種の対談ではあまり聞いた記憶はない。

    また、村山元首相や日本の野党が安倍談話を批判したことも紹介している。

    YouTubeに日本語字幕を付けてアップロードしておいた。
    20150915jpnmust listen1
    Source: YouTUbe, https://youtu.be/V1q-PTfm0bo

    それにしても、「南朝鮮人民」ではなく、本家の朝鮮人民は抗議集会などを開かなかったのであろうか。「談話」発表直後に何らかの動きがったのかもしれないが、この番組では紹介されていない。

    「今日の話はここまで」と打ち切っているので、続きがあるのかもしれない。

    「朝鮮民主主義人民共和国原子力研究院院長回答」:核爆弾用ウラニウム製造を認める (2015年9月15日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が15日、「原子力研究院院長回答」として、核実験を示唆する記事を配信した。

    記事では「2013年4月、当時、我々の原子力総局スポークスマンが明らかにしたように、歴史的な党中央委員会全員会議で提示された経済建設と核武力建設並進路線に従い、ウラニウム濃縮工場をはじめとした寧辺の全ての核施設と5MW黒鉛減速炉の用途が調節変更され、再整備され正常稼働を始めた」としている。「用途が調節変更」ということは、発電用から核爆弾用ウラニウム抽出用に変更されたということを言いたいのであろう。

    一つ前のロケット発射予告記事と合わせれば、10月10日には、ロケットと核をセットでと予告しているのかもしれない。

    国内向けの宣伝はロケットだけで十分なはずなのだが、核まで持ち出してきたのは、何のためなのであろうか。前の記事にも書いたように、核はロケット発射の反応を見てからやればよいのだが、ブラフのタイミングが早すぎるような気がする。

    「朝鮮民主主義人民用和国国家宇宙開発局局長回答」:10月10日前後にロケット発射か、国際関係、気象静止衛星 (2015年9月15日 「朝鮮中央通信」)

    9月14日付けの「朝鮮中央通信」の記事において、北朝鮮は「国家宇宙開発局局長回答」という形で、労働党創建記念日である10月10日前後のロケット発射を示唆した。

    記事では「意義深い今年、他の全ての部門と同様に宇宙開発部門でも誇らしい成果が出ている」とした上で、「我々、国家宇宙開発局は、国の経済発展に積極的に寄与するために、気象予報などのための新しい地球観測衛星開発の最終段階にあり、これと共に宇宙開発の新しい高い段階である静止衛星に関する研究事業でも大きな進展を達成した」と述べ、「より高いクラスの衛星を発射できる衛星発射場を改築拡張する事業が成功裏に進捗しており、国の宇宙科学発展を力強く推し進める確固たる土台が構築されている」としている。

    過去記事でも、北朝鮮は労働党検討記念日前後にロケット発射か核実験をやるのではないかと書いたが、とりあえずは前者を実行することにしたようだ。さらに、ロケット発射に国際社会が強く反発すれば、核実験も遂行するという金日成生誕100周年記念のパターンを考えているのかも知れない。

    国際関係では、中露がどのような反応をするのか。関係改善ムードにある韓国がどう反応するのかが見物である。日本に関しては、北朝鮮はプライオリティーを下げているはずなので、ロケット発射と拉致問題解決破綻で解除された制裁の再開、あるのであれば、さらに強い制裁を課されることも計算済みであろう。10月10日には、総連系訪問団をたくさん受け入れたいはずなので、彼らが北朝鮮に入った後のタイミング(訪朝に影響がないタイミング)を狙うはずである。

    しかし、今回は「気象静止衛星」と言っているので、成功か失敗かがかなりはっきりと分かってくる。前回のように、とりあえず軌道に乗った衛星ではなく、静止軌道で気象観測ができる、日本の気象衛星のように写真撮影をして「天気予報」で見せることができるのかどうか。もちろん、その前に「銀河4号?」(4は、縁起が悪いので使わないかも)が爆発しないのかも問題であるが、発射をするのであれば、このあたりが注目される。

    「敬愛する金正恩同志が完工を前にした白頭山英雄青年発電所建設現場を現地指導された」:金正恩、右腕に湿布か? <追記>湿布ではなくてインナー(2015年9月14日 「労働新聞」)

    9月14日付けの『労働新聞』HPに掲載された写真を見ると、「元帥様」が右腕に湿布のようなものをつけている。

    シャツのようにも見えるが、腕時計をしている左手にはシャツは見られないので、人民服の下には長袖のシャツは着用していないようである。
    20150914kjuarm18.jpg
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 완공을 앞둔 백두산영웅청년발전소 건설장을 현지지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2015-09-14-0001

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    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 완공을 앞둔 백두산영웅청년발전소 건설장을 현지지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2015-09-14-0001

    キューバ代表団を接見したときの様子。右腕に白いものはない。
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    『労働新聞』の関連記事には、怪我等の話は書かれていない。

    <追記>
    「朝鮮中央TV」の「録画報道」で紹介された写真の中に、左手首にも白いものが見える写真があった。どうやら、シャツを着ているようだ。「白頭山英雄青年発電所」がどのぐらいの標高にあるのかは不明であるが、もう時間帯によっては寒くなっているはず。とはいえ、ダウンジャケットでは暑すぎるし、インナーを着ているのであろう。

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    Source: KCTV, 2015/09/14放送

    「ロシアの地に響き渡った親善の歌」:「功勲・青峰」訪露公演紹介番組、「青峰」は少しだけ (2015年9月10日 「朝鮮中央TV」)

    番組を見ながら書いた記事だったので、修正しておく。この「テレビ記録編集物」では、ロシアに向かう機内、モスクワの公演会場、観客の様子、モスクワ市内を観覧する「功勲」楽団員、ハバロフスク公演会場、そしてそれぞれの公演の様子を「功勲」中心に紹介している。「青峰」については、北朝鮮が公開した番組の中では最も見せているが、「編集物」なので短い。ロシア語の実力については私に判断する能力はないが、聞いた限りではロシア語らしい発音で、ロシアの歌を歌っていた。「モランボン」の初期公演で、外国の歌曲をたくさん歌ったが、全部、朝鮮語翻訳版だったような気がする。中国の革命歌については、中国語で歌ったような気もするが、確認していないと、記憶は曖昧である。国内公演なので朝鮮語でよいのだろうが。

    ロシア語の歌を歌う青峰楽団。
    20150910chonbong2ndday1.jpg
    Source: KCTV, 2015/09/10放送

    <追記>
    YouTubeに日本語字幕を付けてアップロードしておいた。

    20150913russiakonchong111.jpg
    Source: YouTube, https://youtu.be/wfSa60Xdkks

    「青峰楽団」だけ見たい場合は、6:55あたりと13:45あたりだけ見れば良い。

    「ルンラ・イルカ館に溢れる幸福の笑いの花」:「朝鮮中央テレビ」の中継車、イルカショー、「水中舞踊」、台本通りの朝鮮人民参加、称賛が上手な館長 (2015年9月11日 「朝鮮中央TV」)

    翻訳で疲れ果てて、記事に詳細を書かなかったので、少し書いておく。

    9月11日、「朝鮮中央TV」で「ルンラ・イルカ館」を紹介する「編集物」が放送された。これまで、「ルンラ・イルカ館」内部を紹介する番組はあったが、今回は「イルカショー」の全体を紹介する番組である。

    「ルンラ・イルカ館」にやってくるボルボ製の中継車。
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    Source: KCTV, 2015/09/11放送

    メルセデス製の中継車の前で話す「放送員同志」。中継車を背景に置いているので、新規購入したものか。国連安保理制裁の「贅沢品」のカテゴリーに入りそうなのだが。
    runra dolphin showflv_000033022
    Source: KCTV, 2015/09/11放送

    「ルンラ・イルカ」のショーから始まる。
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    Source: KCTV, 2015/09/11放送

    観覧者も交えてショーは進行する(もちろん、台本どおりの進行ではある)。この人は、子供のお母さんであるが、きれいなチマチョゴリを着ている。背景の観覧者と比べると「異彩を放って」いる。予定された出演であることが分かる。
    runra dolphin showflv_000633753
    Source: KCTV, 2015/09/11放送

    「水中舞踊」を水中カメラ(あるいは、「観覧水槽」に設置されたカメラ、詳細はYouTube動画参照)で捉えているのがおもしろい。水深は6メートルぐらいありそうだが、普通に潜っていく。
    runra dolphin showflv_001038275
    Source: KCTV, 2015/09/11放送

    フラフープが上手なお年寄りも登場する。
    runra dolphin showflv_002593260
    Source: KCTV, 2015/09/11放送

    「ルンラ・イルカ館」館長。「元帥様」が「現地指導」する「朝鮮記録映画」にも、しばしば登場している。役割なのかもしれないが、この人は「将軍様」や「元帥様」への称賛の辞が大変上手。こういう人だから館長になれるのかと思えてしまうほどである。
    runra dolphin showflv_000055921
    Source: KCTV, 2015/09/11放送

    YouTubeに日本語字幕を付けてアップロードした。

    20150912runradolhipin1.jpg
    Source: YouTube, https://youtu.be/Py1P-Rl89yA

    「総連と在日同胞に対する日本反動共の弾圧妄動は高い対価を支払うことになる-朝日友好親善協会スポークスマン談話-」:総連北海道本部捜索等を非難 (2015年9月9日 「朝鮮中央通信」)

    9日、「朝鮮中央通信」に北海道警が総連北海道本部などを家宅捜索したことなどを非難する「朝日友好協会スポークスマン談話」が掲載された。類似した「談話」は、「朝鮮対外文化連絡協会スポークスマン」も出している。総連の事実上の機関紙、『朝鮮新報(朝鮮語版)』は、北海道本部捜索や北朝鮮が出した「談話」については、この記事を書いている時点では報じていない。

    日本のネットニュースでこの事件について読んだのだが、テレビニュースを文字化した報道では、何が何だかよく分からなかった。しかし、『朝日新聞』が報じた記事でやっと何があったのか理解できた。

    朝日新聞デジタル、「朝鮮総連傘下企業、不正受給の疑い 北海道本部を捜索」、http://www.asahi.com/articles/ASH965RQLH96IIPE00X.html

    事件の概要は、朝鮮初中高級学校に勤めていたが、解雇された人々を北海道の飲食店が実際は雇用していないにもかかわらず、雇用されているかのように装い、離職者雇用を促進する目的の雇用関係助成金を搾取した疑いがあるので、その搾取に加担したと疑われる飲食店、総連北海道本部、朝鮮初中高級学校を家宅捜索し、証拠物件を押収したということのようだ。要は、公的資金の不正受給事件である。

    「補助金不正受給」というキーワードで検索してみると、実に色々出ては来るが、いきなり刑事告発されて、警察の捜査の手が入るという例は少ないようだ。例えば、厚労省東京都労政局のページを見ると、「雇用調整助成金・中小企業緊急雇用安定助成金不正受給に係る事業所名等の公表について」として不正行為を行った事業所が公開されているが、こうした企業が刑事告発され、警察の捜査が入っているのだろうか。

    厚生労働省東京労働局HP、「雇用調整助成金・中小企業緊急雇用安定助成金不正受給に係る事業所名等の公表について」、http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/news_topics/houdou/2014/_120507.html

    総連北海道本部捜査の経緯がよく分からないので何ともいえないのだが、不正受給が発覚、厚労省傘下の事務所等が返還を請求、総連関連の不正受給を受けた飲食店が不正受給を認めず返還も拒否、厚労省傘下の事務所等が刑事告発し、家宅捜索という流れであれば、おかしくはないであろう。

    もちろん、このタイミングで総連北海道本部を家宅捜索したのは、総連議長次男の松茸不正輸入事件同様、拉致被害者調査について北朝鮮に圧力を掛けるためである。時期的にもそろそろであるし、安保関連法案決議後に、拉致問題解決で安倍政権の支持率を稼ごうという目論見であろう。もちろん、解決に繋がらなければ支持率はさらに下落するであろうが、ある意味かけである。「アベノミクス」だの「三本の矢」だのという言葉もマンネリ化しインパクトを失っているので、何かが欲しいはずである。

    日本側の事情はこんなところであろうが、「朝日友好協会スポークスマン談話」は何を言っているのか。全訳は以下のとおりである。

    ******************
    去る9月6日、日本の北海道警察当局は、数十人の無頼漢共を急き立て、北海道総連初中高等学校と総連北海道本部会館内にある総連関係機関を強制捜索する蛮行を躊躇することなく行った。

    同時に警察チンピラ共は、飲食店を経営する在日同胞と総連幹部の家を強制捜索したのに続き、前総連北海道商工会経理室副室長を不当に逮捕するという横暴無道な暴挙を働いた。

    今回、日本反動共が雇用補助金の「不正受給」云々しながら、朝鮮学校と総連本部会館にまで捜索を拡大する乱動を行ったのは、どうしても総連に「違法団体」、「犯罪団体」の帽子をかぶせ、我々共和国の尊厳高い海外公民団体である総連の権威に墨を塗り、さらには抹殺しようという悪辣な目的がある。

    日本反動共が、言論をとおしてまるで総連組織と総連の幹部が事件に加担したように嘘の世論を留伏していること自体が、今回の弾圧策動の陰謀的正確をはっきりと表している。

    今回、再び行われた総連と在日朝鮮人に対する極悪無道な弾圧蛮行の責任は、全的に日本当局にある。

    内外世論が一致して評しているように、総連と在日同胞に対する安倍政権の弾圧策動は、日本の歴代のどの当局とも比較できないほど極めて悪辣で残忍な方法、最も広範囲な規模で行われている。

    世界が21席を平和と発展の世紀と定め、国と民族間に和合と親善を図るために努力しているときに、日本で展開している総連と税日朝鮮人に対する弾圧蛮行は、時代の流れに対する悪辣な朝鮮であり、人類の良心に対する愚弄である。

    元来、在日朝鮮人問題の発生経緯からしても、国際法的要求からしても、日本当局は、総連と在日同胞に民主主義的民族権利と利益を保障し、積極的に保護しなければならない責任がある。

    それにもかかわらず、日本反動共は、過去、彼らが我が民族に犯した激憤する犯罪に対して謝罪と賠償も行わず、在日同胞を迫害するだけではなく、彼らを対象に国家権力を動員した暴圧テロ行為まで躊躇することなく行っている。

    ここ数年、総連組織と幹部たち、在日同胞を標的とし、立て続けに行われている日本反動共の強制捜索と逮捕騒動は、外国人の権利に関する宣言と外国人の地位に関するハバナ条約、世界人権宣言など、国際法に乱暴に違反する特大型の反人類的犯罪である。

    日本が我が民族に犯した全ての罪悪を最後まで計算し、積もり積もった民族の恨みを必ずや晴らそうというのが、我々軍隊と人民の確固不同な意志である。

    我々軍隊と人民は、総連と在日同胞に対する迫害と弾圧に狂奔しながら、朝日関係を最悪の破局へと向かわせている日本反動共の策動を決して座視することはなく、日帝の過去罪悪と共にその対価を必ずや支払わせるであろう。

    日本反動共は、我々軍隊と人民の対日敵対心と報復の熱気をしっかりと見て、総連と在日同胞に対する無分別な政治的弾圧行為を直ちに止めなければならない。

    万が一、日本当局が我々が繰り返す警告を無視し、反総連、反朝鮮人敵対行為を継続するのであれば、それによりもたらせる全ての結果について全的な責任を負うことになるであろう。

    2015年9月9日 平壌
    ********************************

    「それによりもたらせる全ての結果」というのは、拉致被害者調査中断を意味しているのであろうか。

    <追記>
    「北朝鮮の宋日昊(ソン・イルホ)日朝国交正常化担当大使」、「相手がいてこそ情報も共有できる」そうだ。総連を弾圧する「日本反動」は「相手」ではないということか。

    TBS News、「北朝鮮・宋大使「報告書ほぼ完成したが・・・」、http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20150910-00000051-jnn-int

    「敬愛する金正恩同志がキューバ共和国国家代表団を接見された」:「モランボン楽団」フルメンバーでオンステージか (2015年9月9日 「朝鮮中央TV」)

    9月9日、「朝鮮中央TV」で金正恩がキューバ代表団を接見したという「朝鮮記録映画」が放送された。接見部分だけと思いきや、公演観覧部分も見せている。「モランボン楽団」が、「タンスメ」を演奏している動画も一部見せている。同楽団は、どうやらフルメンバーで演奏したようで、正面にバイオリニストや歌手、後方の壇上にドラム等がいた模様。

    「モランボン楽団」が出る部分だけ切り出してYouTubeにアップロードしておいた。
    20150909morangbisbackonstage1.jpg
    Source: YouTube, https://youtu.be/zRowQzH4Aos

    その他の事柄については、追記する。

    <追記>

    「<朝鮮記録映画>敬愛する金正恩同志がキューバ共和国国家代表団を接見された」
    20150909_kctvasf_001148366.jpg
    Source: KCTV, 2015/09/09放送

    キューバのミゲル・マリオ・ディアス第1副首相も朝鮮の儀礼を心得ており、深く頭を下げている。「元帥様」が「錦繍山太陽宮殿」でお父さんやお祖父さんの遺体を参拝する場面などを研究したのであろう。若い指導者に対しても礼を尽くせるとすれば、なかなかの大物なのかもしれない。
    20150909_kctvasf_001175678.jpg
    Source: KCTV, 2015/09/09放送

    北朝鮮側の通訳は「元帥様」の右に座ってメモを取っている男性。
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    Source: KCTV, 2015/09/09放送

    一方、キューバ側の通訳は、雰囲気からすれば手前に座っている女性のようであるが、この女性はメモを一生懸命取ってはいるが、通訳はしていないようである。キューバ側は、通訳を連れてこなかったのかもしれない。キューバ外務省に朝鮮語通訳がいないのかもしれないが、首脳級の会談であれば双方の通訳が付くのが通常である。別記事にも書いた通り、第1副首相は北京での戦勝記念式典の帰りに平壌の寄ったはずであるが、中国語の通訳も北京に同行しなかったのであろうか。あるいは、この女性を通訳として連れてきてみたものの、あまりにも朝鮮語能力が低く、結局、北朝鮮通訳が1人でやることになったのか。いずれにせよ、昔話と友好親善だけの話であれば、北朝鮮側だけの通訳に任せても誤訳が将来問題となることはないであろう。しかし、韓国とキューバの修交関係の話が出たすれば、別の話だ。
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    Source: KCTV, 2015/09/09放送

    この時だけではないが、なぜか腕時計をしていない「元帥様」。西側製のチャライ腕時計はまずいとでも思ったのだろうか。
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    Source: KCTV, 2015/09/09放送

    キューバ第1副首相が「元帥様」に贈ったシャツ。首回りが小さすぎるような気がしないでもない。どのみち「国際親善展示館」に飾られるだけなので関係はないのだが。
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    Source: KCTV, 2015/09/09放送

    演奏会が開催されたコンサートホールと思われる。劇場名についてのナレーションはなし。
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    Source: KCTV, 2015/09/09放送

    第1副首相夫人に花束を渡す「モランボン楽団」員。
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    Source: KCTV, 2015/09/09放送

    キューバ国家と北朝鮮「愛国歌」演奏中、敬礼をしている「元帥様」。過去の公演で国歌演奏中に彼が敬礼をしたのかどうかは、記憶が定かではないが、軍人「金正恩」を示しているのであろう。第1副首相は、軍人ではないので敬礼はしていない。
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    Source: KCTV, 2015/09/09放送

    「死んでも革命信念捨てるなかれ」演奏中か、手拍子を打つ「元帥様」。「元帥様」が手拍子を打っている様子は初めてかあまり出なかったような。「首領様」とフィデロ・カストロ映像に対する拍手喝采の流れなのかもしれない。
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    Source: KCTV, 2015/09/09放送

    李雪主夫人は「元帥様」式の軽い拍手。ファーストレディーらしさの演出か。普段は、熱烈な拍手をしていたようだが。
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    Source: KCTV, 2015/09/09放送

    手首がよく見えないが、李雪主夫人の腕時計未着用か。
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    Source: KCTV, 2015/09/09放送

    キューバと米国が関係修復をしたので、韓国も関係修復に向けて動いている。キューバとしても、経済力がある韓国と国交を樹立して損することはないはずだ。敢えていえば、北朝鮮との関係にヒビが入るだけであるが、それは旧ソ連も中国もやってきたので、今更、それほど気にすることもなかろう。特に、第1副首相が目にした北京での崔龍海冷遇からすれば、実を得る方向で考えるであろう。一方、北朝鮮はといえば、お祖父さんとお父さんの時代に経験した屈辱を子供(金正恩)の時代に再び経験したくないという思いが強いはずである。それが、今回の首脳会談にも繋がったのであろうが、さて、キューバはどうするのか。

    <追記2>
    2回目の「朝鮮記録映画」の放送が始まった。書き忘れたが、「朝鮮記録映画」冒頭のバックで流れているのは「金正恩将軍賛歌」。過去記事に書いた8月の「功勲国家合唱団」公演以降、初めて「朝鮮中央TV」で流されたと思う。

    『<連続テレビ小説>初めての麓で』:解放直後の「共産主義青年同盟」活動を描いた長編ドラマ (2015年9月8日 「朝鮮中央TV」)

    別記事でも少し触れたのだが、『初めての麓で(첫 기슭에서)』を一気に見た。5部ぐらいまでバラバラと見ていたのだが、昨日、続きを17部まで一気に見た。きちんと計算してはいないが、総14時間ぐらいの長編ドラマである。

    ドラマの時代背景は、解放直後、チョルウという青年が「ヨンピョン郡共産党青年同盟」(共青)の「秘書」として、「共青」を拡大していく過程で、国際共産主義運動をしたという「不純分子」や米軍とつながりがある地主で牧師の「反動」の妨害を受けながらも、金日成の教示に従い「共青」を発展的に解散しながら、青年団体を統合し「民主青年同盟」に発展させていく過程を描くドラマである。

    全編に日本語字幕を付けることはとても無理なので、おもしろいシーンを切り出して、字幕を付けながら紹介していくことにする。今日はその第1弾で、主人公の友人、「共青副秘書」ヘドンが婚約者ウナと密会をするシーンである。婚約者ウナは、上記の反動牧師に騙されてキリスト教徒にされた女性である。ウナが歌う『アリラン』がなかなかよい。エフェクトで挿入された虫の声が突然切れるのはいただけないが・・・

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    Source: YouTube, https://youtu.be/doL_qeWEwfA

    「電子商業体系『サンヨン』サービス活動に導入」:北朝鮮のインターネットショッピング (2015年9月8日 「朝鮮中央通信」)

    9月8日、「朝鮮中央通信」が、「サンヨン」というインターネットショッピングのサービスが開始されたと報じた。

    記事によると、「産業科学研究所」が開発したこのサービスは「国家コンピューターネットワークを通じて商品紹介、販売、商業情報紹介を行う電子決済方式の商業サービスシステムである」とのことである。このシステムは、「中央銀行で発行する『チョンソン』カードを利用し、顧客が商店に行かなくとも必要な商品に対する検索、注文、カードを利用した電子決済、配達ができるようになる」とのことである。そして、「全国的範囲で商業発展趨勢に合わせ、キャッシュレス流通を拡大し、商品購入の利便性を高める電子商業サビースは、24時間サービスして」おり、「西平壌百貨店をはじめとした多くの単位(企業)で導入され、使用者には好評な電子商業サービスは、継続して拡大されている」とのことである。

    中国語版の記事がないので、「サンヨン」、「チョンソン」などの漢字が分からない。

    <追記>
    日本語版には「サンヨン(商研)」と出ていた。「チョンソン」はカタカナ。
    いずれ、「朝鮮中央TV」で動画が紹介されることであろう。

    「敬愛する金正恩同志がキューバ-共和国国家代表団と接見された」:金正恩、料理人やバスケット選手ではない外交ミッションと初会見 (2015年9月8日 「労働新聞」)

    「モランボン楽団」関係の記事を先に書いてしまったが、本当は金正恩が、料理人やバスケット選手ではなく、外交ミッションと初めて接見したということの方が重要である。

    会見で話し合われた内容などは具体的に報道されていないが、配信された写真を見ると、これまでの外国人との接見と違う点がある。

    「モランボン楽団」を観覧する「元帥様」の写真を紹介しながらも書いたが、まず必ず置かれている灰皿がない。加えて、会談中、椅子にふんぞり返ることなく、浅く座って話をしている。『労働新聞』に掲載されている会談の様子の写真の中には背もたれに寄りかかっているものは1枚もない。「モランボン楽団」公演でキューバ外交ミッションと一緒の椅子に座り、タバコも吸わず、背もたれにも寄っかからないというのは、明らかに外交ミッションに敬意を表しているものであろう。

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    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 꾸바공화국 국가대표단을 접견하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2015-09-08-0001_photo

    キューバ代表団団長は、「キューバ共産党中央委員会政治局委員でありキューバ共和国国家理事会第1副委員長であり、内閣第1副首相であるミゲル・マリオ・ディアス=カネル・ベルムーデス同志」と紹介されている。キューバの政治システムや政治指導者についてはラウル・カストロぐらいしか思いつかないが、ざっと検索してみるとこの人がラウル・カストロの後継者のようだ。

    だとすると、「元帥様」が接見するに値するクラスの政治指導者であり、年長(55才)のこうした指導者に礼を尽くす若き「元帥様」の姿を初めて見せたということになるのであろう。

    また、米国と外交関係を回復したキューバを、外交関係樹立55周年という節目の年と言うことがあるものの、これほど丁重に遇したと何か意味があるのかもしれない。ディアス氏は「強行派」とも紹介されているので、米国との国交交渉でどのような態度を取ったのかはもう少し調べてみないと分からない。

    事実関係を確認はしてはいないが、タイミングとしては、キューバ代表団は中国の戦勝記念行事の帰りに北朝鮮に立ち寄ったのであろう。

    昨日は、1日中、「テレビ連続小説」、「初の麓で(첫 기슭에서)」見ていたのだが、その中で、「共産主義青年同盟ヨンピョン郡秘書」の青年が、「共産主義者など、礼儀知らずだし、目上の人にもドンム、ドンムと言う」と怒っている封建的かつ裕福な老人(反動ではない)に対して、礼儀正しく接し、その老人を驚かせた姿に「元帥様」と重なったような気がしないでもない。

    老人に正座をして深々と頭を下げる「共青郡秘書」。この姿を見て、老人はこの若者は共産主義者ではないと確信していた。
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    Source: KCTV, 『初の峰で 第14部』、2015/08/29放送

    <追記>
    思えば、外交儀礼としては当たり前のことなのだろうが、「元帥様」となると、どうも違って見えてしまう。

    「敬愛する金正恩同志がキューバ共和国国家代表団を歓迎するモランボン楽団と国家功勲合唱団の祝賀公演を観覧された」:しかし「モランボン楽団」の写真がない、モランボンは「タンスメ」など3曲のみ演奏、「モランボン楽団」9名参加か、「旺載山芸術団」も参観 (2015年9月8日 「労働新聞」)

    コメントで教えて頂き、『労働新聞』の写真を見たのだが、「元帥様」の写真ばかり(web配信ページ。紙面ページはダウンロードに時間がかかっている)。遠くから撮影した「国家功勲合唱団」は見えるが、「モランボン楽団」は全く見えない。「朝鮮中央TV」はストリーミングが止まっているので、追加写真があっても確認できない。

    <追記>
    紙面版でも「モランボン楽団」の姿が写った写真はない。さらに、記事によると「モランボン楽団」は3曲演奏しただけのようだ。

    朝鮮曲『タンスメ』
    キューバ曲『カンタナメラ』、『カプリ島』

    一方、「功勲国家合唱団」は5曲演奏している。それぞれの曲の尺は分からないが、短い公演だったのかもしれない。

    「モランボン楽団」はいいずこに?
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    Source:『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 꾸바공화국 국가대표단을 환영하는 모란봉악단과 공훈국가합창단의 축하공연을 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2015-09-08-0002

    公演会場は明らかにされていないが、「元帥様」用のセッティングが貧弱。灰皿や飲み物を置くテーブルもないし、椅子もその他幹部と同じものが置かれている。キューバ代表に気を遣って「禁煙」をする「元帥様」でもないと思うのだが。
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    Source:『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 꾸바공화국 국가대표단을 환영하는 모란봉악단과 공훈국가합창단의 축하공연을 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2015-09-08-0002

    <追記2>
    『朝鮮中央TV』が「モランボン楽団」を一部見せた。

    「元帥様」に花束を渡す「女性楽団員」
    20150908moranbflower1.jpg
    Source: KCTV, 2015/09/08放送

    演奏の様子。中央の5人が歌手、両横の2人ずつが演奏者であろうか。
    20150908moranwithkon2.jpg
    Source: KCTV, 2015/09/08放送

    アナウンスを良く聞いていたら、「旺載山芸術団」も観覧したと。同「芸術団」の名前を『労働新聞』HPで検索しても今回の公演記事しか出てこない。公式報道に同「芸術団」が登場したのは、かなり久しぶりということのようだ。同「芸術団」についても解散説があったが、健在ということが判明した。

    「人民のための真の服務精神-首都旅客運輸局-」:平壌のトロリーバス、管理運営、新技術 (2015年9月8日 「朝鮮中央TV」)

    9月7日、『朝鮮中央TV』で「人民のための真の服務精神-首都旅客運輸局-」という「紹介編集物」番組が放送された。韓国統一部サイトで調べたところ過去の放送履歴が出ないので、初放送だと思う。

    Pyongyang trolley buslv_000049007
    Source: KCTV, 2015/09/07放送

    この番組で面白いのは、最近の平壌中心部の街の様子が分かることと、トロリーバスに使われているモーターなど「新技術」が紹介されているということである。この辺りは、YouTubeに日本語字幕を付けて動画をアップロードしておいたので、そちらをご覧頂きたい。

    https://youtu.be/wmEys8Nkuc0

    技術情報をある程度調べながら字幕を付けたのだが、モーターの種類や電源制御機構に関する字幕が違っているかもしれない。私の理解では、これまでは直流電源電圧をトランスの2次側のタップか抵抗で変えることによりマグネット式直流モーターの回転数を調整し、トロリーバスの速度をコントロールしていたのだが、「新技術」により開発した「SR(Switched Reluctance)モーター」、つまりマグネットを使用しない高効率モーターをローコストで生産し、それをスイッチングレギュレーターで発生させたパルスをマイコン制御してスムーズに変速コントロールしているということのようである。

    SRモータについては、
    日本電産株式会社、「EV用SRモータ開発と展望」、http://www.nidec.com/ja-JP/technology/story/srmotor/

    「首都旅客運輸局」内部を紹介する映像でボカシが入っている部分がある。壁のように見えるが、生産計画でも掲げられているのだろうか
    Pyongyang trolley busflv_000281799
    Source: KCTV, 2015/09/07放送

    同様に反対の壁面にもボカシを入れている。
    Pyongyang trolley buslv_000289325
    Source: KCTV, 2015/09/07放送

    「モランボン楽団」はどうなったのか? (2015年8月11日 「朝鮮中央TV」)

    「青峰楽団」の記事には、たくさんのコメントを頂いた。いつもコメントを下さる方に深く感謝すると共に、これらの方々の北朝鮮音楽に対する深い造詣に敬意を表する。

    まず、拙記事の訂正をしなければならないのだが、「金正恩楽団の組織宣布」という記述は誤りであった。思い込みとは恐ろしいもので、「軽音楽団」と「朝鮮中央通信」の記事に書かれていたものを勝手に「金正恩楽団」と読んでいたようだ。

    「青峰楽団」については、過去記事で引用した7月28日の「朝鮮中央通信」記事以外では報道されていない。コメントで頂いているように、ラジオ放送で同楽団の曲を流しているようであるが、確認できた限りにおいては「朝鮮中央TV」ではその後、この曲は流していないようである(かなりおおざっぱな確認なので精度は低いが)。

    「もう一つの楽団」、「新たな楽団」という「朝鮮中央通信」の記事で使われている表現についてもコメントを頂いた。実は、私もこれをどう読むのか迷った。「もう一つの新たな楽団」と続けて書かれていれば、「モランボン楽団」とは別に新しい楽団を作ったと解したのであるが、「もう一つの楽団」と「新たな楽団」が別の文の中で使われていたので、「一つの楽団が作られ解散し、新しい楽団が作られた」と読んだ。そのため、「モランボン楽団は解体された」のではないかと書いたのだが、今思えば拙速だったかもしれない(しかも、上記のように「金正恩楽団」という読み間違いが追い打ちを掛けた)。

    では、「モランボン楽団」はどうなったのであろうか。「朝鮮中央TV」では、モランボン楽団の楽曲を流し続けている。同楽団に何かが起こったとしても、「元帥様」が「将軍様」の意を引き継いで創設し、称賛した楽団なので、張成沢のように消し去ることはできないであろう。また、同楽団の楽曲の放送を中止すれば、金正恩称賛ソングの「ほとんど」がなくなってしまうことにもなる。

    「朝鮮中央TV」を7月上旬まで遡りながらおおざっぱではあるが見てみると、「モランボン楽団」の扱いについて興味深い変化が見られる。確認できた限りにおいては、7月15日までは「モランボン楽団の公演の中から」という同楽団の楽曲を数曲繋げて放送する番組を放送していた。

    「モランボン楽団の公演の中から」(キャプチャーは7月9日の同番組)
    20150709_kctvasf_010108366.jpg
    Source: KCTV, 2015/07/09放送

    この番組では、北朝鮮の風景などの合間に、モランボン楽団の演奏者や歌手の姿が写っている。(キャプチャーは7月9日の同番組)
    20150709_kctvasf_010143417.jpg
    Source: KCTV, 2015/07/09放送

    ところが、7月19日を境に「モランボン楽団の公演の中から」という番組はなくなり、「モランボン楽団の音楽」という番組に変わっている。オープニングに使われる楽曲もデザインも同じなので見落としやすいが、番組名は明らかに変更されている。

    「モランボン楽団の音楽」(キャプチャーは8月8日の同番組)
    20150808_kctvasf_011656515.jpg
    Source: KCTV, 2015/08/08放送

    番組名称変更後に放送された楽曲までは未確認であるが、この番組では「モランボン楽団」の演奏風景は出てこず、北朝鮮の風景などが使われている。

    7月上旬以前に遡り、「モランボン楽団」番組をきちんと確認していないので、「公演の中から」と「音楽」が並行して放送されていた可能性はもちろんある。しかし、7月28日の「朝鮮中央通信」報道のほぼ10日前(北朝鮮地方選挙当日)から演奏風景を出さない措置がなされたとすると、解体まではないにしても、同楽団に何らかの変化が起こった可能性はある。この辺り、確認には時間がかかりそうなので、少しずつ進めていこうと思う。

    「モランボン重唱組」が「モランボン楽団」の歌手を指すものではないというコメントも頂いた。これについては、私の北朝鮮研究の短さと浅さから、何とも判断が付かない。

    7月27日の「戦勝節」には、『金正恩将軍賛歌』との関連もあるのか、「モランボン楽団」も「青峰楽団」も登場しなかったが、今後、様々なオケージョンがあるので、どの楽団が登場するのか注視する必要がありそうだ。

    <追記:9月8日>
    韓国系メディアが「モランボン楽団」解散説を伝えている。根拠にしているのは、上で紹介している写真であるが、さらによく見ると、文字の後ろにある画面からも楽団員の姿が消されている。張成沢映像抹消ほどではないにしても、かなり徹底している。

    Yonhap News Agency, N. Korea's all-female music band disappears from broadcasts, http://english.yonhapnews.co.kr/northkorea/2015/09/07/72/0401000000AEN20150907004400315F.html

    上で使った動画と同じ動画であるが、キャプチャのタイミングを少し変えたもの。
    20150709_kctvasf_010104188.jpg
    Source: KCTV, 2015/07/09放送

    コメントでもモランボン楽団にいたアコーディオン奏者が「功勲国家合唱団」で演奏しているという情報を頂いているが、やはり解散なのだろうか。「青峰とモランボンのコラボ」で出した新曲情報もコメントで頂いているが、確認できた限りでは「朝鮮中央TV」では放送されていないし、北朝鮮系ウェブメディアにも掲載されていないようである。その後、ラジオでは流されているのであろうか。

    <追記2>
    コメントを頂き、返信を書いていたのだが、書いているうちに面白い話になったので、記事に反映させておくことにする。
    ***************
    記事にも書いた通り、動画中の演奏風景だけではなく、オープニングの顔写真まで消されているのには、やはり何か意味があるのだと思います。音楽は継続放送しているので、連座粛清まではないと思うのですが、一部の団員に不祥事があった可能性はありますね。例えば、芸術人大会で壇上に上がったような人物(歌唱組の人物)が不祥事を起こしていれば、これは張成沢並みの映像抹消をすることでしょう。解散していないのであれば、しばらく冷却期間をおいてほとぼりを冷ましてから、問題となった団員を抜いた形で演奏風景放送再開をするのかもしれません。

    「青峰楽団」その繋ぎ兼エクスキューズに使われるのではないでしょうか。上で「歌唱組」と書いたのは、敢えて「モランボン重唱組から」と報道しておき、一部歌手を「モランボン楽団」から離脱させたようにしておき、実際は、処分されているのかもしれません。教えいて頂いた動画を見ていても、「青峰楽団」は、結局あそこで歌っている5~6人の歌手のことを言っているような気がしてなりません。花火を打ち上げておき、敢えて「功勲国家合唱団」とロシアに派遣したのも、「モランボン楽団」から耳目を「青峰楽団」に向けさせるためなのかもしれませんね。

    「青峰楽団」の奏者を見せないのも、発表した新曲の演奏は「モランボン楽団」がしているからなのかもしれません。そうなると、別の方がコメントで情報を下さった「モランボン楽団と青峰楽団のコラボ」の意味も分かります。
    ****************

    「功勲国家合唱団ハバロフスクで招待講演を成功裏に開催」:臨時ニュースで、「青峰楽団」は参加せず、朝露友好を強調、ロシアへ派遣されたその他のミッション (2015年9月4日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」を見ていたら、半端な時間に「報道」が流れた。何事かと思いや、「功勲国家合唱団」のハバロフスク公演に関する報道であった。突然画面が切り替わった際、モスクワ公演の「録画実況」を流すのかと期待したが、そうではなかった。しかし、通常の「報道」時間帯以外で、公演報道をするというのは、よほどそれに意義を見いだしているということになる。冒頭部分を聞き逃してしまったので、いつの公演だったのかは未確認であるが、昨日、場合によっては今夜だったのかもしれない。「朝鮮中央通信」にもこの公演に関する記事は出ていない。

    「青峰楽団」は、別ルートで平壌に戻ったのか、ハバロフスク公演には出演しなかった。

    やはり、北京での崔龍海冷遇を朝露親善でカバーしようとしているように思えてならない。ロシア側の思い入れはあまり伝わってこないが、北朝鮮側の懸命さは伝わってくる。朝鮮人民も「中国人民抗日戦争」は金日成の抗日パルチザンとの関係でよく知っているはずなので、中国に冷遇された状況をカバーするために、朝露親善をさかんに宣伝しているのであろう。

    「功勲国家合唱団」と「青峰楽団」をロシアに派遣したことは順当な措置だったとはいえ、中国との関係をどのように説明するのであろうか。

    <追記>
    公演は9月3日であった。「朝鮮中央通信」も写真付きで記事を配信。同通信にはロシア語配信がないが、今後、ロシア語が追加されるのかもしれない。

    公演が開催されたハバロフスク地方フィルハーモニーコンサートホール(会場名の和訳は、在ハバロフスク日本総領事館による。日本のミッションが公演したときの記事より)
    flv_000078875.jpg
    Source: KCTV, 2015/09/04放送

    壇上で挨拶をしているのは、ビクトル・マルチェンコハバロフスク地方政府副首相と思われる。「青峰楽団」は出ていないので、黒いドレスの女性は、ロシア人の司会者であろう。
    flv_000087087.jpg
    Source: KCTV, 2015/09/04放送

    公演の様子
    flv_000117368.jpg
    Source: KCTV, 2015/09/04放送

    「功勲国家合唱団」と「青峰楽団」を大きく取り上げてきたが、実は、同時期に他にも2つミッションがロシアに行っている。「朝鮮中央通信」報道から拾ってみると以下のとおりである。

    ・9月4日 「ロシア極東地域を訪問した親善文化代表団帰国 (로씨야 원동지역을 방문하였던 친선문화대표단 귀국)」
    ・9月4日 「ロシアを訪れた民用航空総局代表団帰国 (로씨야에 갔던 민용항공총국대표단 귀국)」

    「親善文化代表団」は、今回のハバロフスク公演関連の訪露であろう。「民用航空総局代表団」は、ロシアと北朝鮮の空路増設について話し合いをしたのかもしれない。現在ロシアとの定期便は、ウラジオストック-平壌間に月・金に定期便があるだけである。

    Fly Team, http://flyteam.jp/airline_route/vvo_fnj/flight_schedule#vvo_fnj
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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