「<記録映画>敬愛する最高司令官金正恩同志が戦線東部視察の途中で人民軍将兵と共に8.25を意味深く慶祝された 2012年8.25」(2012年8月27日 「朝鮮中央TV」)
ここ数日、「朝鮮中央TV」では「記録映画」や「実況録画」を次々と流している。その中でも最も興味深いのは、この動画であろう。というのも、金正恩さんの宴会での演説が収録されているからである。
http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-11-y.flv
北朝鮮では、8.25(先軍節)と8.28(青年節)という2つの行事が連続して行われた。8.25は、金正日さんが1960年8月25日にリュ・ギョンス105戦車師団を訪問した日、8.28は、金日成さんが1927年8月28日に「共産主義青年同盟」を結成した日にちなんでいるという。
「Daily NK」:「8月25日の先軍節を正式に制定 RFA「24日に中央決定が下達」…先軍革命の伝統を強調」
http://japan.dailynk.com/japanese/read.php?cataId=nk00100&num=10405
「Daily NK」:「平壌は 年中 政治行事 … 青年節 平壌慶祝行事 平壌で 「8•28青年節」 行事 初開催 … 「青年の忠誠心鼓吹」」
http://japan.dailynk.com/japanese/read.php?cataId=nk00100&num=16573
金正恩さんは、8月17日に朝鮮半島西海岸の部隊視察から始まり、今は東部海岸地域の部隊を視察していると報じられている。青年節慶祝大会の動画も配信されていたが、こちらには金正恩さんは出席していない。金正恩さんが出席できない理由は、東部戦線を視察中だからということだ。先軍節からの流れからすれば、その方が最高司令官としてはカッコイイし、金正日さんのように「野戦列車」で寝泊まりしているかのようなイメージが朝鮮人民に与えられる。しかし実際には、視察後は平壌の家に戻って寝ているはずである(別荘のような施設があれば、そういう所で宿泊をするのかもしれないが)。もしかすると、「勇敢な」金正恩さんのことだから、ヘリコプターを使っているのかもしれない。低速の列車で移動したり、未舗装の道路を何時間も走るよりも、ずっと快適なはずだ。
青年節慶祝大会には、金正恩さんから長文の「祝賀文」が送られ、崔龍海さんがそれを代読をした。崔龍海さんは所々で引っかかるなど、最高司令官からの「祝賀文」代読の練習が不足しているような印象を受けた。ともあれ、金正恩さんのメッセージが代読されるというのは、今回が初めてのはずなので、崔龍海さんの指導部における地位が急速に高まっていることが分かる。「祝賀文」には特記すべき内容は見つからなかったが、敢えて挙げるならば、「反動的な思想文化浸透と心理謀略戦は、今日、敵が侵略策動で使っている基本手段であり、その主な対象は青年たちである」と述べていることであろうか。これは、北朝鮮で韓国などからの「思想文化的浸透」が問題となっていることを反証であり、そのターゲットとなりやすい青年を金正恩さんが戒めているのかもしれない。しかし、自らも「青年」の金正恩さんは、戒めるだけでは解決しないことも承知しているはずで、徐々に「ウリ式」と称しての導入を考えているのであろう。
「朝鮮中央TV」:「<実況録画>敬愛する金正恩元帥様の指導に従い、主体革命偉業を代を継いで最後まで完成させるための青年節慶祝大会」
http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-17.flv
代読をする崔龍海さん

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-17.flv
青年節行事に参加するために、総連からも若者が北朝鮮を訪問中であり、「20時報道」でもインタビューに答える様子が放映されている。相変わらず「総連アクセント」の朝鮮語であるが、答えるべきことをきちんと暗記して話していた。また、上の動画にも総連から派遣されたと思わしき若者が映し出されているが、彼らは何を考えながら金正恩さんの「祝賀文」を聞いたのであろうか。
総連系と思わしき若者たち。当たり前のことだが、髪型や表情が北朝鮮の若者と違う。

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-17.flv
こちらが北朝鮮の若者。軍人も多数出席しているが、軍服を着ていないので学生であろう。

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-17.flv
さて、タイトルに書いた動画とは違う動画の話を書いてきたが、ここからはタイトルに書いた動画について書いていくことにする。動画の前半では、金正恩さんが夫人と共にモランボン楽団の公演を鑑賞する様子が紹介されている。先軍節公演だけあって、さすがのモランボン楽団員も軍服式の衣装で登場している。公演に先だち、北朝鮮国家が演奏されたが、朝鮮人民軍軍楽隊による演奏ではなく、モランボン楽団が電子楽器などで演奏をした。米国のロックバンドが、エレキやベースで米国歌を演奏するような、北朝鮮としては実に異様な音色であった。今までも、ポチョンボ楽団などはそうしていたのであろうか。
背景には、色々な写真が映し出されているが、この動画で確認できる限りでは、金日成・金正日さんはほとんど登場することなく、金正恩さんの現地指導・視察の際に撮影された写真が多用されている。恐らく初公開だと思われる写真は、執務室で執筆をする金正恩さんの写真であるが、眼鏡をかけている。金正恩さんの年齢で老眼ということはないはずだから、近眼なのであろうか。それとも、眼鏡をかけて執務する金日成さんをイメージさせるための眼鏡であろうか。
眼鏡をかけて執務室で執筆する金正恩さん

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-11-y.flv
また、金正恩夫妻の前には何か飲み物が置かれている。色からするとコーヒーかブドウジュースなのかもしれないが、動画公開前の静止画報道では泡立っているようにも見えたので、コーラか。また、金正恩夫婦が手でリズムを取りながら、演奏を聴いている場面も出てくる。関係ないのだが、中国の北朝鮮レストランで、演奏のクライマックス部分で「(リズムに合わせて)手を叩いて下さい」と促してきたのを思い出した。

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-11-y.flv
引き続いて、上に書いた金正恩演説がある宴会が開かれた。そもそも、金正日さんの肉声は公式には1度しか放映されていないので分からないが、金正日さんもこのような席上で気軽に演説をしたのであろうか。写真類を見ると、金日成さんが演説しているものは多く見られるが。「戦線視察」の途中ということもあるのだろうが、最高司令官が演説をするにしては、宴会場とはいえ、にも貧相なマイクのセッティングである。画角外で他のマイクを使って声を拾っているのかもしれないが、画面にはカラオケマイクのような物が1本しか映っていない。
演説をする金正恩さん

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-11-y.flv
この演説もいずれ「労作」となるのだろうが、内容的には特段新しいものはなかった。上記、青年節行事の「祝賀文」でもそうだが、目新しいことといえば「一粒の火の粉でも我が領域に落ちれば、反撃せよ」という命令書に金正恩さんがサインをしたということぐらいであろうか。それにしても、先軍節という実に良いタイミングで、米韓合同演習をやってくれたものだと北朝鮮は考えているであろう。それがなければ、この「サイン」の意味も弱まってしまったであろうから。
宴会場の各テーブルには、各種酒が置かれているが、興味深いのは、細長い瓶に入った酒である。特に、右側に置かれている短い物は、ロケット(ミサイル)を模して作られたもののように見えてならない。
右側に置かれている細長い白い瓶は「銀河3号」酒であろうか?

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-11-y.flv
この記事を書いている間に、モランボン公演全体の動画のダウンロードも終わったので、これから見ることにする。
http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-11-y.flv
北朝鮮では、8.25(先軍節)と8.28(青年節)という2つの行事が連続して行われた。8.25は、金正日さんが1960年8月25日にリュ・ギョンス105戦車師団を訪問した日、8.28は、金日成さんが1927年8月28日に「共産主義青年同盟」を結成した日にちなんでいるという。
「Daily NK」:「8月25日の先軍節を正式に制定 RFA「24日に中央決定が下達」…先軍革命の伝統を強調」
http://japan.dailynk.com/japanese/read.php?cataId=nk00100&num=10405
「Daily NK」:「平壌は 年中 政治行事 … 青年節 平壌慶祝行事 平壌で 「8•28青年節」 行事 初開催 … 「青年の忠誠心鼓吹」」
http://japan.dailynk.com/japanese/read.php?cataId=nk00100&num=16573
金正恩さんは、8月17日に朝鮮半島西海岸の部隊視察から始まり、今は東部海岸地域の部隊を視察していると報じられている。青年節慶祝大会の動画も配信されていたが、こちらには金正恩さんは出席していない。金正恩さんが出席できない理由は、東部戦線を視察中だからということだ。先軍節からの流れからすれば、その方が最高司令官としてはカッコイイし、金正日さんのように「野戦列車」で寝泊まりしているかのようなイメージが朝鮮人民に与えられる。しかし実際には、視察後は平壌の家に戻って寝ているはずである(別荘のような施設があれば、そういう所で宿泊をするのかもしれないが)。もしかすると、「勇敢な」金正恩さんのことだから、ヘリコプターを使っているのかもしれない。低速の列車で移動したり、未舗装の道路を何時間も走るよりも、ずっと快適なはずだ。
青年節慶祝大会には、金正恩さんから長文の「祝賀文」が送られ、崔龍海さんがそれを代読をした。崔龍海さんは所々で引っかかるなど、最高司令官からの「祝賀文」代読の練習が不足しているような印象を受けた。ともあれ、金正恩さんのメッセージが代読されるというのは、今回が初めてのはずなので、崔龍海さんの指導部における地位が急速に高まっていることが分かる。「祝賀文」には特記すべき内容は見つからなかったが、敢えて挙げるならば、「反動的な思想文化浸透と心理謀略戦は、今日、敵が侵略策動で使っている基本手段であり、その主な対象は青年たちである」と述べていることであろうか。これは、北朝鮮で韓国などからの「思想文化的浸透」が問題となっていることを反証であり、そのターゲットとなりやすい青年を金正恩さんが戒めているのかもしれない。しかし、自らも「青年」の金正恩さんは、戒めるだけでは解決しないことも承知しているはずで、徐々に「ウリ式」と称しての導入を考えているのであろう。
「朝鮮中央TV」:「<実況録画>敬愛する金正恩元帥様の指導に従い、主体革命偉業を代を継いで最後まで完成させるための青年節慶祝大会」
http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-17.flv
代読をする崔龍海さん

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-17.flv
青年節行事に参加するために、総連からも若者が北朝鮮を訪問中であり、「20時報道」でもインタビューに答える様子が放映されている。相変わらず「総連アクセント」の朝鮮語であるが、答えるべきことをきちんと暗記して話していた。また、上の動画にも総連から派遣されたと思わしき若者が映し出されているが、彼らは何を考えながら金正恩さんの「祝賀文」を聞いたのであろうか。
総連系と思わしき若者たち。当たり前のことだが、髪型や表情が北朝鮮の若者と違う。

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-17.flv
こちらが北朝鮮の若者。軍人も多数出席しているが、軍服を着ていないので学生であろう。

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-17.flv
さて、タイトルに書いた動画とは違う動画の話を書いてきたが、ここからはタイトルに書いた動画について書いていくことにする。動画の前半では、金正恩さんが夫人と共にモランボン楽団の公演を鑑賞する様子が紹介されている。先軍節公演だけあって、さすがのモランボン楽団員も軍服式の衣装で登場している。公演に先だち、北朝鮮国家が演奏されたが、朝鮮人民軍軍楽隊による演奏ではなく、モランボン楽団が電子楽器などで演奏をした。米国のロックバンドが、エレキやベースで米国歌を演奏するような、北朝鮮としては実に異様な音色であった。今までも、ポチョンボ楽団などはそうしていたのであろうか。
背景には、色々な写真が映し出されているが、この動画で確認できる限りでは、金日成・金正日さんはほとんど登場することなく、金正恩さんの現地指導・視察の際に撮影された写真が多用されている。恐らく初公開だと思われる写真は、執務室で執筆をする金正恩さんの写真であるが、眼鏡をかけている。金正恩さんの年齢で老眼ということはないはずだから、近眼なのであろうか。それとも、眼鏡をかけて執務する金日成さんをイメージさせるための眼鏡であろうか。
眼鏡をかけて執務室で執筆する金正恩さん

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-11-y.flv
また、金正恩夫妻の前には何か飲み物が置かれている。色からするとコーヒーかブドウジュースなのかもしれないが、動画公開前の静止画報道では泡立っているようにも見えたので、コーラか。また、金正恩夫婦が手でリズムを取りながら、演奏を聴いている場面も出てくる。関係ないのだが、中国の北朝鮮レストランで、演奏のクライマックス部分で「(リズムに合わせて)手を叩いて下さい」と促してきたのを思い出した。

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-11-y.flv
引き続いて、上に書いた金正恩演説がある宴会が開かれた。そもそも、金正日さんの肉声は公式には1度しか放映されていないので分からないが、金正日さんもこのような席上で気軽に演説をしたのであろうか。写真類を見ると、金日成さんが演説しているものは多く見られるが。「戦線視察」の途中ということもあるのだろうが、最高司令官が演説をするにしては、宴会場とはいえ、にも貧相なマイクのセッティングである。画角外で他のマイクを使って声を拾っているのかもしれないが、画面にはカラオケマイクのような物が1本しか映っていない。
演説をする金正恩さん

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-11-y.flv
この演説もいずれ「労作」となるのだろうが、内容的には特段新しいものはなかった。上記、青年節行事の「祝賀文」でもそうだが、目新しいことといえば「一粒の火の粉でも我が領域に落ちれば、反撃せよ」という命令書に金正恩さんがサインをしたということぐらいであろうか。それにしても、先軍節という実に良いタイミングで、米韓合同演習をやってくれたものだと北朝鮮は考えているであろう。それがなければ、この「サイン」の意味も弱まってしまったであろうから。
宴会場の各テーブルには、各種酒が置かれているが、興味深いのは、細長い瓶に入った酒である。特に、右側に置かれている短い物は、ロケット(ミサイル)を模して作られたもののように見えてならない。
右側に置かれている細長い白い瓶は「銀河3号」酒であろうか?

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-08-27-11-y.flv
この記事を書いている間に、モランボン公演全体の動画のダウンロードも終わったので、これから見ることにする。