「20時報道」:チンダルレ・サファリニ児童基金 金正日が名付け親 (2012年11月30日 「朝鮮中央TV」)
「20時報道」を見ていたら、バッジを付けた外国人女性が登場した。しかも、ただのバッジではなく、金日成・金正日両名が赤旗に描かれている金正日逝去後に登場した(アナウンサーが着用しだした)大型バッジである。人共旗バッジかと思ってよく見たが、やはり円が二つ見えるので、金日成・金正日バッジであろう。番組では、この女性のことを「チンダルレ・サファリニ」と呼んでおり、「サファリニ」は外国人名だとしても「チンダルレ」はアナウンサーの発音からしても朝鮮語の「ツツジ」と同一である。
児童基金設立及び寄付金寄贈式で演説をするバッジを付けたチンダルレ・サファリニさん

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-29-17.flv
一体、この女性は何者なのかと思って調べてみたら、2012年3月22日付の『労働新聞』の記事「太陽の光の下、チンダルレは外国の地でも美しく咲いている」にその答えが出ていた。
『労働新聞』:「태양의 빛발아래 진달래는 이국땅에서도 아름답게 피여난다」
http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-03-22-0037&chAction=D
記事によると、この女性は駐朝パレスチナ外交代表団の代表ムスタファ・アル・サファリニの娘であるという。ムスタファ夫妻は長年不妊に悩んでおり、平壌産院で不妊治療を受け、結婚10年後に平壌でこの女性を生んだという。子供を授かった夫婦は、金正日さんが建てた平壌産院で治療を受けることができ、無事かわいい娘が生まれたということで、金正日さんに感謝の手紙を書いた。手紙の中でムスタファさんは「昔から、子供が生まれたら最も高い博識を持ち、尊敬する方にお願いをして命名してもらうのがパレスチナ人民の風習なので、偉大な将軍様に娘の名前を付けて頂きたい」と懇願した。彼の「正気の沙汰とは思えない僭越な」願いを「寛容に受け入れた」金正日さんは、この娘を「チンダルレ」と名付けた。チンダルレさんは7歳まで「平壌市民にかわいがられながら」暮らした後、平壌を離れた。
この記事が書かれた当時26歳のチンダルレさんは、北京第3病院で医者として勤務しているとのことで、「平壌は私が生まれたところで、子供時代を過ごした故郷であり、私の第二の祖国である。金正日将軍様は、私に生命を与えて下さり、暖かい愛で育てて下さったお父様だ」と語っているという。
父のアル・ムスタファ・サファリニさんとチンダルレさん(北京にて)

Source: 労働新聞、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-03-22-0037&chAction=D
北朝鮮の国籍法が出生地主義を採用しているのかどうかは分からないが、チンダルレさんは金正日さんに命名されたということもあり、準朝鮮公民扱いを受けてバッジも提供されたのであろう。
意味ありげにバッジを触る金ジョンスク対外文化連絡委員会委員長

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-29-17.flv
児童基金を設立することはよいことであるが、どう考えても北京の病院の医師であるチンダルレさんの個人的に資金だけでは、基金にはならないであろう。この式典には、北京公共外交文化交流有限公司理事長の馬振軒さんも参席し演説を行っているので、中国系の資金が投入されたのではないかと思う。
なお、私は気づかなかったのだが、9月に北京で行われた対北朝鮮投資説明会でチンダルレさんが「チンダルレ児童基金」への協力を呼びかけたとの報道がある。
『중앙일보』「김정일 아랍계 수양딸, 北 투자설명회 등장」:
http://article.joinsmsn.com/news/article/article.asp?total_id=9441574
また、チンダルレさんの名前の中国語への音訳である「金達莱」(朝鮮中央通信の中国語版で確認、中国語翻訳サイトで調べたが、「金达莱」にツツジという意味はないようだ)を彼女の名前のように紹介しているサイトもあったが、上に書いた記事のとおり「チンダルレ」は「ツツジ」を表す朝鮮語(固有語)である。
<追記>
「朝鮮中央通信」が動画でチンダルレさんのインタビューを配信した。動画では、彼女が大写しになっており、やはり胸のバッジは金日成・金正日バッジであった。7才まで平壌で育ったとのことなので、朝鮮語でインタビューを受けると思ったのだが、彼女は英語で話している。英語は非常にうまく、平壌を離れてからは英語圏の学校か国際スクールで学んだのではないかと思われる。一方、お父さんのアル・ムスタファさんと思われる男性は、金ジョンスク委員長との対談に際して中国語を話している。この両名は、朝鮮語よりも英語や中国語の方がうまいということなのであろうか。
チンダルレさんは、20年ぶりにに平壌を訪れたときに北朝鮮のために何か良いことをしたいと考えたが、自分は医学部の学生なので(自分一人では何もできないと思い)、父や中国の人々と相談して「チンダルレ児童基金」を創設し、北朝鮮の子供たちの医療・健康問題の一助にしたいと考えたと述べている。それは、北朝鮮が自分にとって第二の故郷だからであると語っている。チンダルレさんはインタビューの冒頭で「私は父なる将軍様に名前を与えられた」と言っているが、どうやら北朝鮮が強調するほど今回の基金創設の決意とそれは強い関係はなさそうである。むしろ、医学を学ぶ若い学生として、北朝鮮の子供たちの現状を見て、本当に何かしたいという気持ちが彼女のインタビューを見ていると伝わってくる。このような純粋な気持ちから創設された基金が、その趣旨通りに北朝鮮の子供たちのために使われて欲しい。思えば、チンダルレさんと金正恩さんはほとんど同じ年である。年齢的には、金正恩さんにもチンダルレさんのような純粋さがあっても良いと思うのだが。
インタビューを受けるチンダルレさん

Source: KCNA, http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=1200419
児童基金設立及び寄付金寄贈式で演説をするバッジを付けたチンダルレ・サファリニさん

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-29-17.flv
一体、この女性は何者なのかと思って調べてみたら、2012年3月22日付の『労働新聞』の記事「太陽の光の下、チンダルレは外国の地でも美しく咲いている」にその答えが出ていた。
『労働新聞』:「태양의 빛발아래 진달래는 이국땅에서도 아름답게 피여난다」
http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-03-22-0037&chAction=D
記事によると、この女性は駐朝パレスチナ外交代表団の代表ムスタファ・アル・サファリニの娘であるという。ムスタファ夫妻は長年不妊に悩んでおり、平壌産院で不妊治療を受け、結婚10年後に平壌でこの女性を生んだという。子供を授かった夫婦は、金正日さんが建てた平壌産院で治療を受けることができ、無事かわいい娘が生まれたということで、金正日さんに感謝の手紙を書いた。手紙の中でムスタファさんは「昔から、子供が生まれたら最も高い博識を持ち、尊敬する方にお願いをして命名してもらうのがパレスチナ人民の風習なので、偉大な将軍様に娘の名前を付けて頂きたい」と懇願した。彼の「正気の沙汰とは思えない僭越な」願いを「寛容に受け入れた」金正日さんは、この娘を「チンダルレ」と名付けた。チンダルレさんは7歳まで「平壌市民にかわいがられながら」暮らした後、平壌を離れた。
この記事が書かれた当時26歳のチンダルレさんは、北京第3病院で医者として勤務しているとのことで、「平壌は私が生まれたところで、子供時代を過ごした故郷であり、私の第二の祖国である。金正日将軍様は、私に生命を与えて下さり、暖かい愛で育てて下さったお父様だ」と語っているという。
父のアル・ムスタファ・サファリニさんとチンダルレさん(北京にて)

Source: 労働新聞、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-03-22-0037&chAction=D
北朝鮮の国籍法が出生地主義を採用しているのかどうかは分からないが、チンダルレさんは金正日さんに命名されたということもあり、準朝鮮公民扱いを受けてバッジも提供されたのであろう。
意味ありげにバッジを触る金ジョンスク対外文化連絡委員会委員長

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-11-29-17.flv
児童基金を設立することはよいことであるが、どう考えても北京の病院の医師であるチンダルレさんの個人的に資金だけでは、基金にはならないであろう。この式典には、北京公共外交文化交流有限公司理事長の馬振軒さんも参席し演説を行っているので、中国系の資金が投入されたのではないかと思う。
なお、私は気づかなかったのだが、9月に北京で行われた対北朝鮮投資説明会でチンダルレさんが「チンダルレ児童基金」への協力を呼びかけたとの報道がある。
『중앙일보』「김정일 아랍계 수양딸, 北 투자설명회 등장」:
http://article.joinsmsn.com/news/article/article.asp?total_id=9441574
また、チンダルレさんの名前の中国語への音訳である「金達莱」(朝鮮中央通信の中国語版で確認、中国語翻訳サイトで調べたが、「金达莱」にツツジという意味はないようだ)を彼女の名前のように紹介しているサイトもあったが、上に書いた記事のとおり「チンダルレ」は「ツツジ」を表す朝鮮語(固有語)である。
<追記>
「朝鮮中央通信」が動画でチンダルレさんのインタビューを配信した。動画では、彼女が大写しになっており、やはり胸のバッジは金日成・金正日バッジであった。7才まで平壌で育ったとのことなので、朝鮮語でインタビューを受けると思ったのだが、彼女は英語で話している。英語は非常にうまく、平壌を離れてからは英語圏の学校か国際スクールで学んだのではないかと思われる。一方、お父さんのアル・ムスタファさんと思われる男性は、金ジョンスク委員長との対談に際して中国語を話している。この両名は、朝鮮語よりも英語や中国語の方がうまいということなのであろうか。
チンダルレさんは、20年ぶりにに平壌を訪れたときに北朝鮮のために何か良いことをしたいと考えたが、自分は医学部の学生なので(自分一人では何もできないと思い)、父や中国の人々と相談して「チンダルレ児童基金」を創設し、北朝鮮の子供たちの医療・健康問題の一助にしたいと考えたと述べている。それは、北朝鮮が自分にとって第二の故郷だからであると語っている。チンダルレさんはインタビューの冒頭で「私は父なる将軍様に名前を与えられた」と言っているが、どうやら北朝鮮が強調するほど今回の基金創設の決意とそれは強い関係はなさそうである。むしろ、医学を学ぶ若い学生として、北朝鮮の子供たちの現状を見て、本当に何かしたいという気持ちが彼女のインタビューを見ていると伝わってくる。このような純粋な気持ちから創設された基金が、その趣旨通りに北朝鮮の子供たちのために使われて欲しい。思えば、チンダルレさんと金正恩さんはほとんど同じ年である。年齢的には、金正恩さんにもチンダルレさんのような純粋さがあっても良いと思うのだが。
インタビューを受けるチンダルレさん

Source: KCNA, http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=1200419