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    KCTV stream ダウン、最高尊厳誹謗・中傷中止、李雪主再び懐妊説、北朝鮮OSとタブレット、第13期代議員選挙と「書簡」

    20日ぐらいからKCTVストリームがダウンしている。切れた場面を直接は見ていないが、15時20分から30分の間に切れているようだ。これまで、放送終了後、ストリームが止まり、しばらく止まったままの状態になったことはあるが、今回は突然切れており、さらに再開もないので、もしかしたら韓国当局の取り締まりの対象となったのかもしれない。離散家族面会で南北関係が少し進展しているように見える中、韓国では統一進歩党関連の「従北勢力」に対する取り締まりは強化されており、その一環としてストリーム放送をしていた人物あるいは団体もその対象とされた可能性はある。朴槿恵政権にとっての統一進歩党問題は南北関係というよりも、韓国の国内問題としての性格が強いので、対北朝鮮政策とは切り離して考えているのであろう。

    双方での「誹謗・中傷」はどうかというと、中断している状態が続いている。北朝鮮側は、『朝鮮中央通信』が、「ウルサン大学の教授が学生に金日成の『時代と共に』を読ませてレポートを書かせた」として同教授が逮捕された話や在韓米軍関連の話は伝えているが、朴槿恵政権や同政権閣僚への非難は中断している。北朝鮮が対南非難を中止することは容易であるが、自由主義国の韓国でも「最高尊厳に対する中傷・誹謗」が「自主規制」あるいは「自粛」されているようだ。韓国の『中央日報(韓国語版)』のここ数日間の記事を「金正恩」というキーワードで抽出しざっと読んでみたが、彼を強く「中傷・誹謗」するような内容は見られなかった。唯一、海外メディアに掲載されたシリアのアサド2世、北朝鮮の金3世、ヒットラー1世(ヒットラー当人)が後ろを向いて座り、ヒットラー1世が「息子をもうけておけばよかった」とぼやいている風刺画を紹介しているのが「中傷・誹謗」といえば中傷誹謗であろうか。それにしても、このところ亡霊のようにヒットラーが東北アジアの言説にしばしば登場する。

    『中央日報』、http://sunday.joins.com/article/view.asp?aid=33198

    韓国メディアを読んだ話のついでに書いておけば、李雪主夫人懐妊説また出てきている。その根拠は『労働新聞』に掲載された「敬愛する最高司令官金正恩同志が光明星節にちなんで開催された朝鮮人民軍海軍指揮部と朝鮮人民軍空軍および反航空軍指揮部の軍人と体育競技を観覧された」という記事に写った李雪主の写真からだ。彼女の顔がむくんでいるように見えるのと着ているコートが前回「懐妊説」が出たときに着ていたのと同様に腹部に余裕があるものだと言うことをその根拠にしている。

    『中央日報』、「이설주 임신설 … "얼굴 붓고 옷 펑퍼짐"」、http://joongang.joins.com/article/873/13975873.html?ctg=

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    Source: 『労働新聞』、「경애하는 최고사령관 김정은동지께서 광명성절에 즈음하여 진행된 조선인민군 해군 지휘부와 조선인민군 항공 및 반항공군 지휘부 군인들의 체육경기를 보시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-02-18-0001&chAction=L

    しかし、同日の『労働新聞』に掲載された「敬愛する最高司令官金正恩同志が人民軍将兵と共に光明星節慶祝功勲国家合唱団の公演を観覧された」という記事に登場する李雪主はそんなに変わったようにも見えないし、「朝鮮中央TV」が伝えた「合唱公演観覧」の静止画報道に登場する李雪主はそのようには見えなかった(このころは、まだKCTVストリームが稼働していた)。

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    Source: 『労働新聞』、「경애하는 최고사령관 김정은동지께서 인민군장병들과 함께 광명성절경축 공훈국가합창단의 공연을 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-02-18-0002&chAction=L

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    Source: KCTV, 2014/2/18放送

    「白頭の血統」を継ぐのは「女将軍」では駄目なので、男児が生まれて欲しいという期待感は当然、北朝鮮にはあるだろう。しかしこうした韓国メディアの報道を見ていると、韓国もある意味そうした「期待感」を持っているのではないだろうかと考えてしまう。

    KCTVストリームの話から大幅に脱線してしまったが、KCTVストリームに話を戻すと、このストリームが止まってしまったことはかなり痛い。uriminzokkiriがYouTubeへのアップロードを増やしているので状況は改善しているが、それでもuriminzokkiriからのダウンロードが不調なときが多い。中国の動画サイトYouKuで動画を見ようとしても、ものによっては「中国外からは見られません」というメッセージが表示される。それよりもなによりも、選別的にuriminzokkiriがアップロードする以外の番組に注目すべきものがたくさんあったということは、過去記事でもそうした版雲を多く紹介してきたように明らかだ。ともかく、上での推測が外れ、単なるサーバー・メンテナンスのためにストリームが中断していることを願うばかりだ。

    その関係で、何か情報がないかとNorth Korea Techを見ていた。久しぶりに見に行ったのだが、KCTVに関する新しい情報はなかったものの、なかなか面白い情報が色々と書いてあった。特に、IT関連では北朝鮮製のタブレット端末のメインボードは台湾製であるとか、北朝鮮製OSである「赤い星」がLinuxベースに開発されたものであり、最近ではそのGUIがWindowsではなくMacに近いものになっているなど、本当におもしろい話が書いてあった。前記事では、「三池淵タブレット」を割って中のボードを取り出しているし、後者は、平壌科学工業大学で教鞭を執った米国人コンピュータ科学者が南平壌で購入したOSの写真も多数掲載されている。どういう人々が運営しているサイトなのかは分からないが、噂や脱北者情報ではなく、自らが証拠を収集して明かしてしまうという頼もしい人々である。

    North Korea Tech, Exclusive: North Korea’s Samjiyon tablet — Made in China?, http://www.northkoreatech.org/2013/08/04/exclusive-north-koreas-samjiyon-tablet-made-in-china/

    North Korea Tech, North Korea’s Red Star OS goes Mac, http://www.northkoreatech.org/2014/01/31/north-koreas-red-star-os-goes-mac/

    3月9日の最高人民会議第13期代議員選挙に向けた準備が進んでいる。金正恩は2月18日「公開書簡 全国の全ての選挙者に」を発表した。

    『労働新聞』、「공개서한 전국의 모든 선거자들에게」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-02-19-0001&chAction=L

    この中で彼は「私は、全ての選挙者が私に厚い信任を表示してくれたことに対し、とてもうれしく思い、心から厚い感謝を申し上げます」と述べている。興味深いのは、「朝鮮民主主義人民共和国の各級人民会議代議員選挙法により、代議員候補者は一つの選挙区にだけ登録するようになっているので、私は最高人民会議第13期代議員選挙のための第111号白頭山選挙区に代議員候補として登録することにしました」と言っている点である。「朝鮮中央TV」を見ていたら、「第111号白頭山選挙区」で金正恩が候補として推戴された後、他の選挙区でも彼を推戴している様子が伝えたれた。しかし、この「書簡」を読む限りでは、「推戴」され代議員候補として登録されるのは「第111号白頭山選挙区」だけであり、他の選挙区ではこの「推戴」を支持する集会をしていただけのようだ。また、北朝鮮に選挙区がいくつあるのかは知らないが、「朝鮮中央TV」で紹介された選挙区では番号が相当に離れている。「第111号」というのは恣意的に付けた番号だとしても、他の選挙区の番号は何を基準に付けているのであろうか。

    金正恩はまた「全ての選挙者は、最高人民会議代議員選挙に一人漏らさず参加し、人民の代表を選挙することで最も優越な我々の人民主権を盤石にし、国家社会制度をさらに強固、発展させていくようにしなければなりません」とも述べている。北朝鮮では、「推戴」された人が病気などで投票できない人を除きほぼ100%の投票率の中、100%の得票率で当選することになっている。そのような北朝鮮で「一人漏らさず参加し」というのは形式的な発言ではあるが、「推戴」されたことに感謝をしたり、投票を呼びかけるということは彼のお父さんやお爺さんもやっていたのであろうか。

    このところ、あまり記事を書かなかったので、最近、思ったことをまとめて書いた。「ジャガイモ革命」を扱った「朝鮮記録映画」の話や、国連人権委員会が金正恩に送った手紙など、記事にすべきことはたくさんあるのだが、徐々に書いていくことにする。

    「青少年映画:口先だけだと」:有線放送で節電呼びかけ、北朝鮮の公衆電話、消防車 (2014年2月9日 「朝鮮中央TV」)

    金正恩が「新年の辞」で、「1Wの電力でも節約しよう」と呼びかけた。電力供給が切迫している北朝鮮では当然のことだし、そうではない国でも節電した方が良いことは間違いない。2月9日の「朝鮮中央TV」を見ていたら、節電を呼びかける「青少年映画」を放映した。

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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    「青少年映画」というカテゴリーを拙ブログで紹介するのは初めてかもしれないが、人民一般向けの映画ではなく「学生教育用映画」という位置づけなのかもしれない。

    タイトルは、表題にあるとおり「口先だけだと」である。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    韓国・北韓情報センターのデータによると、「2013年10月6日の再放送」ということになっており、この日が初回の放送だとすると半年ほど前に初めて放送された映画である。

    主役は上の写真に写っている主婦である。左側にいる男性は夫で、中学生ぐらいの娘がいる。

    この夫婦が住んでいるという設定のアパート。10階建てであるが、エレベータはない。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    壁に取り付けられた有線放送用のスピーカー。「電気を生産するくらい重要なことは、節電をすることです」という放送が流れている。スピーカの右側に何か文字が書かれているようだが、読み取れない。そして、文字の下にあるのがボリウムなのか、スイッチなのかも分からない。絶対聞かなければならない仕組みなのだろうから、電源を切ったり、音量を下げたりすることはできないような気もするのだが。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    この主婦は、有線放送が流れている中、部屋に置かれている「録音機」(ラジカセ?)のスイッチを入れて音楽を聞き始める。夫が出勤する準備を鏡の前でしていると、妻は電気カミソリを「今日はあなたの誕生日でしょ」と言いながら手渡す。「電気を節約」と言っている最中に電気を使う「電気カミソリ」という話なのだろうが、誕生日プレゼントとして「電気カミソリ」はおもしろかった。何がおもしろいのかというと、昔、韓国語を勉強していた時、どこのどんな教科書だったか忘れてしまったが、誕生日プレゼントとして「電気カミソリ」を夫か父親に渡す話を読んだことがあるからだ。なぜこんなことを覚えているのか分からないが、「チョンギミョンドギ(전기면도기)」という言葉がなぜか印象的だったからかもしれない。さらに、私が韓国語を勉強していたのは80年代、その頃の韓国では電気カミソリは、まだ少し貴重品だったために、誕生日プレゼントであった。すると、現在の北朝鮮がちょうどその状況なのかもしれない。

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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    主婦が浴室の掃除をしていると照明が消えてしまう。主婦は「ヒューズが切れたのかしら。また分組のブレーカーが上がったみたいよ」と言う。どうやら、北朝鮮では「分組」、すなわち住民組織の最小単位に使用出来る電力量が割り当てられているようだ。この主婦の台詞からすると、各世帯にはヒューズはなく、「分組」の配電盤で一括管理しているのかもしれない。後で、配電盤の映像も出てくる。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    しかし、ヒューズは切れておらず、電球が切れただけであった。主婦は、タンスの中から電球の予備を出す。それを見た娘は、「おかあさん、それを使うと電気が80Wも消費されるのよ」という。主婦は、「わかってるわよ。でも、顔は洗わなくちゃ」と電球を取り替える。もしかすると、北朝鮮では蛍光灯型電球の使用が奨励されているにもかかわらず、主婦が電力消費量が多い古い電球を使おうとしたので娘に戒められたのかもしれない。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    主婦は、豚足料理をしている。豚足を蒸すのに「電気ご飯釜(電気炊飯器)」を使おうとすると娘が、「豚足を蒸すのに電気釜を使うの。そんなの使うと電気を食うのに」と言う。主婦は「ガスがあまり残っていないからね」と答える。この辺りもやりとりもおもしろい。電気の方は、月間割り当て量はないのでいくらでも使えるが、ガス(プロパンガス)の方は、割当量を使い切ると次の割り当てが来るまで使えないという話なのであろう。下の写真は、電気釜に豚足を入れる主婦。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    ここから主婦の電気の浪費が始まる。まず、扇風機のスイッチを入れて「ああ、涼しい」。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    次にアイロンをコンセントに挿す。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    すると、来客が来る。来客は「分組長」で、この主婦に依頼してあった「電気を大切に」という張り紙を受け取りに来る。主婦は「今日、分電盤の修理をするのよね。これでしっかりと鍵を掛けておいてね。誰も触れないように」と言いながら南京錠を「分組長」に手渡す。普通であれば分電盤など触る人はいないはずだが、もしかすると「誰も触れないように」というのは、北朝鮮ではブレーカーが落ちないように縛ったり張ったりする行為が横行しているのかもしれない。

    しかし、この主婦は、テレビも扇風機もアイロンも、そして電気釜もつけっぱなしにしている。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    一方、夫は「副局長」と電話で話ながら、「節電は、言葉だけではなく行動ですよ。私の家からまずそれをはじめるつもりです」と言っている。しかし実態は上の写真にあるような状況である。北朝鮮はスローガンの国なので、「言葉」はたくさんあるが、なかなかそれが「行動」に移されていないという状況を戒めているのであろう。朝鮮人民は、これらの「言葉」を周りの様子を見ながらどれほど「行動」に移すのかに長けているのであろう。やりすぎなければ、いざというときに「党の指示に従わない」と批判されて酷い目に遭うし、やり過ぎれば生活が不便になるしといったところだろうか。日本の道交法の運用と似ていないわけでもないが。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    主婦は家電製品をつけっぱなしで買い物に出かける。家に帰ってくと、分電盤の鍵を出す時に家の鍵を床に落としてしまったことを思い出す。主婦は、アイロンもつけっぱなしなので、火事になりはしないかと心配になる。主婦は、分電盤のブレーカーを切りに行くが、自分で「誰も触れないように」と渡した鍵がかけられており、分電盤の蓋を開けることができない。ここで電力計が映し出される。デジタル式の電力計だが、製造したのは「平壌電気器具合営会社」と書かれているように見える。「合営」というのは中国企業との「合営」ということであろうか。左側にはスイッチがあり、これを切れば良いようにも思えるが、この電力計は「電気を消費している」という象徴的な意味で見せただけなのかもしれない。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    主婦は「分組長」に「家の電灯をつけっぱなしにしたから、分電盤の鍵を下さい」と頼むが、「今、みんなテレビを見ているから・・・」と断られる。もちろん「電灯ぐらいでも節約する」という嘘をついているわけであるが。「分組長」は、「世帯主(ご主人)に電話をしたら」と勧める。主婦は「分組長」の家の電話を借りて夫に電話をするが、「アイロンをつけっぱなしにした」と言うことができず、公衆電話から電話をすることにする。ここで、北朝鮮の公衆電話が登場する。初めて見るような気がするが、色は黄色で随分丈夫そうにできている。真ん中の黒い部分がプッシュボタンであろうか。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    夫は「火事になりました」という妻の話を聞き、会社部下と一緒に家に駆けつける。

    一方、中学生の娘はその間に家に戻り、母親がつけっぱなしにした電気製品の切り、さらに電気釜で蒸していた豚足を、電気を節約するために、七輪で蒸す。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    主婦が家に戻ると、ベランダから煙が出ており、主婦は本当に火事になったと驚く。しかし、この煙は七輪の煙である。日本の集合住宅でこんなことをすれば随分叱られるのであろうが、北朝鮮では問題ないようだ。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    アパートは、住民がバケツを持って集まり、夫の会社の女性が消防署にも電話をしたので、消防車がアパートに向かっている。北朝鮮の消防車、随分古そうだ。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    大騒ぎになっているところに夫が戻ってきて鍵で扉を開ける。夫と妻は、頭から水をかぶり部屋に飛び込む。部屋には当然、「大元帥様」たちの肖像画が飾られているはずである。模範的な朝鮮人民であれば、部屋に飛び込んでまずすることは、「大元帥様」たちの肖像画を「救出」することであるが、この映画ではその話は全く出てこない。「思想教養」映画ではないからかもしれないが、実際のところ、緊急事態が発生した時に肖像画のことなど皆あまり考えないのかもしれない。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    しかし、部屋の中では何事も起こっていない。もちろん、娘が戻ってきて電源を切ったからであるが、夫と妻は唖然とする。そこに消防隊員がやって来て「どうしたのですか?」、「分組班長」が夫婦の代わりに消防隊員に謝ってくれる。過去記事に別の映画の話を書いた時もそうだったが、「分組班長」は「班長」という地位を使いながら、班員の面倒を見てくれる世話役のような人なのであろう。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    娘は、大騒ぎになったので怖くなり勝手場で泣いている。「分組班長」は、娘が節電をするために七輪を使ったことを知り褒めてくれる。 
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    最終場面は、「分組班長」に「この家で節電ができるのはお父さんやお母さんではなくて、オックミ(娘の名前)だねぇ」と言われ、妻は「私は、今度のことで、国家の電気を浪費すると、家の財産も国家の財産も焼いてしまうということがよく分かりました。本当に1Wの電気でも節約するということを実践しないのは私の古い思想のせいです」と謝罪する。
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    資本主義国では、経済発展の過程で電力生産が増大し、電力を潤沢に使った生活様式が定着する。そして、ある時、日本の原発事故がその契機であったように、エネルギー問題と環境問題に気付き、省電力技術が発達し、人々の間にも節電という発想が浸透する。いわば「新しい思想」であるわけだが、北朝鮮では、電力を潤沢に使う時代を経ずして「新しい思想」が出てきているのがおもしろい。かつて、北朝鮮の信号機がLEDを使っているという記事を書いたことがあるが、「思想」と「技術」が並進しているということだろう。「技術」というのは「思想(発想)」があり進歩するものなので、当然のことなのかもしれないが。

    「祖国賛歌」:いつになくきれいな映像と演奏 (2014年2月8日 「朝鮮中央TV」)

    2月8日の「朝鮮中央TV」を見ていたら、いつになく映像がきれいな「祖国賛歌」が流れた。モランボンバージョンではなく、オーケストラが演奏しているように聞こえる曲だけのバージョンである。演奏している楽団名は表示されないので、私の能力では何楽団なのか判断できないが、非常に良い感じの「祖国賛歌」である。どなたか、コメントでご教授いただきたい。

    映像も前半部分は北朝鮮的ではなく、とてもきれいな感じで曲と相まっており、思わず見入ってしまった。途中で金正日の言葉が出てからは、金正恩の乗馬姿が登場するなどいつものパターンとなっていく。曲も力強く演奏され「労働党歌」がアレンジされるなどするが、最後まできれいな感じである。

    出てくる映像は農業関連のものが多いので、やはり「主打撃方向」に合わせた構成となっているようだ。

    こればかりは文字で説明しきれないので、YouTubeにアップロードしておいた。

    http://www.youtube.com/watch?v=To6mI6bKPmQ

    <追記:2月17日>
    拙記事を読んだ方から、この曲が1月31日に「朝鮮中央放送」(海外向けラジオ)で放送されており、演奏は「朝鮮人民軍軍楽団」であるという情報を頂いた。

    <追記2:2月23日>
    KCTVストリームが止まった関連で北朝鮮間連載とを色々調べていたら、このバージョンの祖国賛歌がきれいな画像と音質で見られるサイトがあった。

    民族大団結、「名曲」、http://www.gnu.rep.kp/

    「児童映画:交通秩序をきちんと守ろうね」:高速道路の実態、2人乗り、トラックの荷台 (2014年2月7日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」が「児童放送」の時間帯に表題のような番組を放送した。北朝鮮では、拙ブログの一番最初の記事にしたようにどこそこの国で大きな交通事故が起きたというようなニュースは流すが、自国内での交通事故に関するニュースは流さない(少なくとも、私は見たことも読んだこともない)。これまでは、道路を走っている車といえば、平壌ですら高速で走る党具幹部の乗用車、朝鮮人民が乗るバス(トロリーバスも含む)、荷物を運ぶトラック、オートバイぐらいであり、バスもトラックも特にスピードを出して走るわけでもないので、交通事故自体が少なかったのかもしれない。それに、党軍幹部の車が朝鮮人民を轢いたとしても、責任は轢かれた人民にあるということだったのであろう(遺族に対しては、何らかの手当はされたのであろうが)。

    日本に入ってくる北朝鮮での交通事故の「噂」も、党の序列上位者が「謎の交通事故死」をしたという類いのものばかりである。7日付けの『web版毎日新聞』にも「北朝鮮:側近厚遇で基盤強化 幹部息子、海外で治療」という記事が出ており、崔龍海の息子である崔賢哲が乗っていた運転手付きの車が交通事故を起こし、崔賢哲の聴覚機能が低下したためにシンガポールで治療受けたという記事が出ていた。報道によると、運転手は飲酒運転をして崔賢哲に怪我をさせたという理由で「秘密裏に銃殺」されたという。崔龍海の息子といわれる人物の写真も掲載されており、興味深い記事である。

    『毎日新聞』、「北朝鮮:側近厚遇で基盤強化 幹部息子、海外で治療」、http://mainichi.jp/select/news/20140207k0000m030155000c.html

    しかし、「朝鮮中央TV」に映し出される平壌の様子を見ていると、明らかに交通量は増えている。最近、平壌に行った人の話では、タクシーもかなり走っているそうだし、自家用ではないにしても乗用車の量が増えたとのことである。交通量が増えれば、当然、交通事故の発生率も高まるわけで、これまでは無視することができる程度であった交通事故が、だんだんと社会問題化してきているのかもしれない。

    そのようなことが表題の番組を放送した背景になっているのかもしれない。では、番組の内容を簡単に紹介しておく。この番組は子供向きのアニメ番組であるが、登場するのは擬人化した4匹の動物である。

    「児童映画:交通秩序をきちんと守ろうね」
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    「注意しようね、左と右。車が来るかよく見ようね」という歌と共に子供がやりそうな危ない場面が映し出される。

    横断歩道のところで左右を確認せずに飛び出そうとする
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    自転車の2人乗りを戒めているのか、スピードの出し過ぎを戒めているのかは分からないが、後との話との関係で後者であろう。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    踏切での一時停止。踏切の遮断機には「止まれ」と書かれている。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    ボールを追って道路に飛び出し。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    ここかストーリーに入る。「カンチュンイとヤウンイ」(前者がウサギ、後者がネコの名前)
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    子供たちが卓球で遊んでいるとヤギの「通信員」おじさんがやってくる。「通信員」おじさんは、子供たちの先生からの手紙を届けてくれるのだが、手紙には「4時から新しい映画を上映するから、みんなドンサン宮殿に集まってください」と書かれている。それにしても「通信員」がヤギとは、偶然の一致かもしれないが「黒ヤギさんからお手紙ついた・・・白ヤギさんたら読まずに食べた」という童謡を思い出してしまった。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    子供たちは映画に遅れないように卓球を止めて「ドンサン宮殿」に向かう。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    「ドンサン宮殿」は、高速道路の反対側にある。子供たちは「あー、高速道路にはいつでも車が多いなぁ」という。この静止画には車が1台しか出ていないが、動画を見ると車が切れることなく走っている。木の向こうに見える青い屋根の建物が「ドンサン宮殿」である。しかしこの高速道路、片側2~3車線で、白線がきちんと引かれ、緑色のガードレールもある。私が平壌から開城に向かう時走った高速道路は、白線もなし、車もほとんどなし、ガードレールもなしという状況であったのだが。北朝鮮の高速道路もいずれはこうなるというイメージなのかもしれない。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    しかし、「ドンサン宮殿」に行くためのは、遠回りをして高速道路の高架橋の下を通らなければならない。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    イヌとウサギが遠回りの道に向かって歩き出すと、ネコが「おいみんな、宮殿にはやく行くことができるよ。高速道路を渡ればいいんだよ」と言う。イヌは「それは危ないよ。車が速く走っているから」と反対するのだが、ネコは「そんなの、僕たちが間を縫って渡ればいいんだよ」と言う。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    結局、イヌは危ないからと言いながら遠回りの道の方に歩いて行ってしまう。ネコはウサギに一緒に高速道路を横断しようと誘う。ウサギはイヌの所に走って行き、ネコを止めようと言うのだが、ネコに「意気地無し」と言われたイヌは「止めるならお前が止めろ」とウサギに言って1人で歩いて行ってしまう。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    ウサギは、なんとかネコが高速道路を横断しないよう考える。良いアイディアが浮かんだのだが、それはネコを追いかけていきわざと転ぶことである。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    ネコは転んだウサギの所に駆けつけて、抱きかかえて立たせようとするが、ウサギは「あー、足が痛い」と言いながら立ち上がろうとしない。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    ネコはウサギを何とか立たせて、高速道路を横断しようと誘うが、ウサギは「私はついていけないわ。歩くこともできないのに、どうやって走って渡ったらいいの」という。ネコは「こんなことしていたら、映画が見られなくなっちゃうじゃないか」と怒るが、
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    木の棒を見つけて肩を貸して遠回りの道を通って「ドンサン宮殿」へと向かうことにする。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    するとそこに、再びヤギの「通信員」おじさんが通りかかる。ネコはヤギの「通信員」に自転車に乗せてくれるよう頼むが、ヤギは「君たち、2人は乗れないなぁ」と言う。ネコは「僕はいいからウサギだけ」とウサギだけ乗せる。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    ウサギは心配そうな顔をしながらもヤギの「通信員」おじさんの自転車の後ろに乗っていく。上記の「2人乗り」についてであるが、この場面からは北朝鮮の2人乗り(特殊な補助椅子を設けない荷台への)は問題ないようだ。

    ネコは高速道路を横断しようとするが、通過車両が多くて横断出来ない。それだけではなく、白バイも通った。ネコは「ふっー、捕まるところだった」と言う。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    白バイが通り過ぎ、ネコが高速道路を横断しようとするとウサギが戻ってくる。ネコが「なんで戻ってきたんだ!」と怒ると、ウサギは「1人で自転車で楽していこうと乗っていたら、あなたのことが気になって・・・」と言う。当然、ウサギはネコが高速道路を横断しようとすると困るので芝居をしているだけである。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    イヌは既に「ドンサン宮殿」に到着しており、ネコたちが着かないので心配している。

    ネコは「自転車で行けと言っただろう」と怒りながらも、ウサギを連れて行くことにする。高速道路の高架橋の下を歩いているとウサギの親戚の叔父さんが乗ったトラックが通りかかる。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    このアニメは北朝鮮で制作されたものであり、車は右側通行である。しかし、なぜかウサギの叔父さんが運転するトラックは右ハンドルだ。これが、サイドミラーに映し出されるウサギとネコの姿と叔父さんを一緒に出すための工夫なのか、北朝鮮では日本から持ち込んだ右ハンドルのトラックも多く用いられているという現実の反映なのかは分からない。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    子供たちは荷台に乗るが、叔父さんは「助手席に乗れ」と言う。しかし、子供たちは「僕たちはこっちの方がいいです」と言って、荷台に乗ることにする。日本の道交法では違反となるが、北朝鮮ではトラックの荷台に人を乗せて運ぶことが一般的に行われているためか、アニメの中での問題とされない。普通のアニメであればこれほどこだわる必要もないのであろうが、このアニメは「交通秩序教養」アニメなのでこだわってしまう。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    イヌが心配しながら待っていると、ネコとウサギを乗ったトラックが「ドンサン宮殿」に到着する。ウサギは「もうここまで来たから、杖はいらないよ」と杖を放り投げ、トラックから飛び降りる。そしてイヌの所に行き、自分が足が痛いふりをしていたことをイヌに耳打ちする。ネコはこの場ではじめて騙されていたことに気付くが、なぜウサギが騙したのかということにまで考えが及ばず怒り出す。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    ネコは怒りが収まらないが、3人は映画館に入っていく。今日上映される映画は「クルグリ(ゾウの名前)はなんで泣いたのでしょうか}」という映画である。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    映画の内容は、ゾウのクルグリが高速道路を無理に横断しようとして車に轢かれてしまうという内容である。ネコは、ゾウに自分を投影し、高速道路を無理に横断していたら大変なことになっていたという自分の姿を想像する。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    3人は、映画の後で公園で仲直りをする。そして、「高速道路に入ったり、渡ったりするのは止めようね」と約束をする。
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    Source: KCTV, 2014/2/7放送

    これでアニメは終わるが、このアニメがいつ制作されたのかは出てこない。

    このアニメのおもしろい点は、北朝鮮における高速道路の交通量、そして高速道路を横断することが危険と認識されるようになった実態、さらに高速道路建設で人々が遠回りをしなければならなくなった現実という問題である。ありもしない問題を子供たちに「教養」しても仕方がないだろうから、多かれ少なかれこうした問題が北朝鮮でも発生していると言うことなのであろう。

    「体育常識:冬期オリンピック競技大会」競技種目紹介、馬息嶺以外のスキー場? (2014年2月6日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」がソチ冬期オリンピックを紹介する番組を放送した。北朝鮮から何名の選手が参加しているかは分からないが、金永南最高人民会議常任委員会委員長が5日に「名誉賓客」としてソチに向かった。

    『労働新聞』、「김영남 최고인민회의 상임위원회 위원장 제22차 겨울철올림픽경기대회 개막행사에 참가하기 위하여 출발」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-02-06-0005&chAction=S

    そして、中継地点のモスクワで6日、ロシア連邦評議会議長と会談を行っている。『労働新聞』の記事には「伝統的な露朝親善関係を強化発展させることは、露西亜の確固たる立場である」とロシア側が述べたという程度しか書かれていないが、掲載されている写真を見ると、ソファに座って挨拶をした程度ではなく、かなり突っ込んだ話し合いが行われたようにも見える。

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    Source: 『労働新聞』、「김영남 최고인민회의 상임위원회 위원장이 로씨야련방평의회 의장을 만났다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-02-08-0003&chAction=S

    「冬期オリンピック競技大会」
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    Source: KCTV, 2014/2/6放送

    番組では冬期オリンピックについて「世界的な規模で4年に1度ずつ冬期種目だけで開催される総合体育競技大会である冬期オリンピック大会は、今日、夏季オリンピック大会と共に現代オリンピック運動において重要な位置を占めています」と解説している。

    そして、雪上開催種目としてスキー、「スキー射撃」、リューズ、「自由形スキー」、氷上開催科目として「速度氷上(スピードスケート)」、「フィゴ:figure(フィギュアスケート)」、「氷上ホッケー」、カーリングなどとしている。

    そして、スノーマシンを大きく映し出すが、これは「馬息嶺スキー場」を想起させるためであろう。
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    Source: KCTV, 2014/2/6放送

    続いて、「2014年冬期オリンピック競技大会、2014年2月7日~2月23日、ロシアの南部ソチで開催」とソチオリンピックに関する情報を紹介しする。
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    Source: KCTV, 2014/2/6放送

    これだけならば、この番組を紹介することもしなかったのだが、番組の終わりの方に「白頭山地区体育村、総合スキー競技場」なるものが映し出された。リフトも設備されたスキー場だが、景色を見る限りでは「馬息嶺スキー場」とは別のスキー場のようだし、「馬息嶺」は「白頭山地区」ではない。「総合スキー競技場」とされているので、スキー選手強化施設か人民軍スキー部隊の訓練施設ではないだろうか。

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    Source: KCTV, 2014/2/6放送

    北朝鮮は「1964年から冬期オリンピック大会に参加しており、我々の選手は国際協議大会で良い成果を上げている」と下の写真を紹介している。
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    Source: KCTV, 2014/2/6放送

    さて、ソチオリンピックには何人の北朝鮮選手が参加しているのか。また、メダルを取れるのであろうか。人民軍軍人であれば、「スキー射撃」の腕は良いと思うのだが。

    <追記:2月9日>
    「朝鮮中央TV」がソチオリンピックの開会式といくつかの競技を伝える番組を放送した。日本で放送された開会式の映像は見ていないが、金永南委員長が一瞬写った様子も紹介している。

    手を振っている男性の右横に帽子をかぶって座っているのが金永南
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    Source: KCTV, 2014/2/9放送

    韓国報道によると、北朝鮮からの選手の参加はないということである。

    「金正恩:社会主義農村テーゼの旗を高く掲げ農業生産で革新を起こそう、全国農業部門分組長大会参加者に送った書簡、2014年2月6日」:種子輸入、有機農法、穀物増産、土地利用、分配 (2014年2月7日 「労働新聞」)

    金正恩が表題のような「書簡」を2月6日から平壌で開催されている「全国農業部門分組長大会」の参加者に送った。彼は、同大会に参席していないので、この「書簡」でそれを代替しようということのようだ。昨日は、参加者の中から誕生日などの理由で選ばれた一部の人のために宴会を設けたが、その場にも現れなかった。おそらく、大会が終わった日に「記念写真」を撮影して終わりであろう。同大会では朴奉珠が冒頭演説を行ったが、「新年の辞」で農業問題を最重要視していることもあり、内閣だけに押しつけておくというわけにはいかないのであろう。

    「書簡」は、昨日の『労働新聞』1面に掲載され、「朝鮮中央TV」でも繰り返し読み上げられている。

    『労働新聞』、「김 정 은 사회주의농촌테제의 기치를 높이 들고 농업생산에서 혁신을 일으키자 전국농업부문분조장대회 참가자들에게 보낸 서한주체103(2014)년 2월 6일」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-02-07-0001&chAction=D

    長文なので、興味深い部分をいくつか拾い出して紹介しておく。

    「新年の辞」で農業問題が強調されたのは、何よりも今年が金日成が「社会主義農村テーゼ」を発表してから50年になる年だからである。しかし、「書簡」でも「我が国が既に政治・思想強国、軍事強国の地位に堂々と登り立ったので、農業をしっかりと行い、食料を自給自足することさえすれば、敵がいくら策動しても我々式の社会主義は傾くことはな」いと述べている。北朝鮮にとって「食料問題」は依然として解決されていない問題であり、また、「敵の策動」により強いられた「苦難の行軍」を繰り返さなくてもよいということなのであろう。過去記事で紹介した映画「慈江道の人々」の中でも「苦難の行軍」の構図は「敵の策動」、つまり「経済的圧殺」がその原因としているが、彼らの解釈では、「正当な核・ロケット開発」に対する安保理制裁、つまり「経済的圧殺」があり、朝鮮人民は「苦難の行軍」を強いられたということである。

    この点について、「核・ミサイルの開発を止めればよい」、「核・ミサイルに費やす金で人民に食わせればよい」という主張がある。確かにそのとおりであるが、社会主義崩壊後の国際社会で「餓死者でも出せば、北朝鮮も他の社会主義国と同様に体制が崩壊するであろう」という期待や「策動」があったことも事実である。当時、米国の高官や研究者が「金正日体制が向こう何年で崩壊するであろう」という発言をしていたことも、客観的事実認識という側面があるものの、期待を述べていたとも考えられる。いわば政治が人道の上位に置かれていたわけであるが、そう考えると、北朝鮮の主張も完全に間違っているわけではない。

    現在に至っても北朝鮮は「苦難の行軍」当時以上の「帝国主義者による経済的圧殺」を受けている。それにもかかわらず、「苦難の行軍」を繰り返さなくても良くなった背景には、北朝鮮がそれに備えたシステムを構築したと評価できる。一つは、「苦難の行軍」が「帝国主義者の圧殺」に先だち、異常気象により発生したという経験から、それに対応する堤防建設や河川整備をやってきたことであろう。また、「苦難の行軍」時期には社会主義全盛時代の甘えから市場経済中国に対する対応を誤ったのであろう。しかし今は、市場経済中国ときちんとビジネスができる関係を構築したはずである。つまり、中国から「恵んでもらう」のではなく、「取引をする」体制作った。また、中国に対しても変化した国際環境の中で「帝国主義者の策動に同調し、我々を圧殺しようとすれば、暴発するかもしれませんよ。核もミサイルも準備出来ましたよ。それでもいいのですか」というシグナルをより強く発信している。中国が反発することを覚悟の上で第3回核実験を強行したのもその一環であろう。今の中朝関係を見る限りでは、北朝鮮のこの戦略は成功しているといえよう。

    話がそれたが、それでも「農業問題」は北朝鮮にとって重要な問題である。「自給自足」は無理としても、自給率を上げることは、他国が戦略的に食糧自給率にこだわりを持っている以上に、少なくとも数十万人という餓死者を出し身をもって痛みを経験した北朝鮮にとっては、喫緊かつ重要な問題である。その系で「社会主義農村テーゼ」50周年を契機に(口実に)、農業問題に力を入れるのは、正しい選択といえる。

    その「社会主義農村テーゼ」については、不勉強で未だにきちんと読んでいない。実は、「書簡」の内容について論じるには、まず「社会主義農村テーゼ」を読まなければならないのであるが、本記事では、乱暴にもそれをきちんと読まずして論じていくことにする。

    北朝鮮ではカロリーベースでの「食料問題」が解決されていないはずである。それにもかかわらず、「書簡」で興味深いことは、「穀物増産」について述べる前に「穀物生産を決定的に増やすことと共に、畜産、果樹をはじめとした農村経理(運営)の全ての部門で新たな革新を引き起こさなければならない」と述べている。FAOなど国際機関の発表資料でもカロリーベースでの「食料問題」が指摘されているが、「書簡」が必ずしもカロリー効率が高くない副食をまず強調している点は注目される。この部分を、国際機関の観察以上に自給と輸入を合わせた北朝鮮のカロリーベースでの食料問題は解決できていると解釈するべきなのか、あるいは一般人民がとても遊べないようなスキー場建設のように宣伝目的とみるべきなのかは分からない。しかし、スキーは人民生活と直結しないが、食べ物は人民生活に直結する。それに、「馬息嶺スキー場」も、日本のようにあちこちにスキー場があり、誰もがその気になればスキーを楽しめる国の基準からすれば、「食べられもしないのに馬鹿げている」ということになるが、北朝鮮では「ウリナラ(我が国)にもあんなに立派な国際的スキー場ができ、外国人が絶賛している」ということは、「元帥様」の偉大さとは無関係に、国(党ではない)あるいは朝鮮人であることに対する自負心になるはずである。日本とて、高度成長期の東京オリンピックや大阪万博は、日本人にそのような気概を持たせたはずである。

    あるいは、カロリーベースでの食料問題はある程度解決出来ているのかもしれない。それは、「セポ台地開墾事業」のように大規模な畜産基地を建設していることからも伺える。「セポ台地」の気象条件からして、畜産以外の農業生産に適しているのかは分からないが、ともかくも大規模な畜産基地を建設しているということは、朝鮮人民の胃袋に入る動物性タンパク質を増やそうという意図からであろう。畜産に関しては「農業と畜産の環状型循環生産体系を確立しなければならない」とも述べている。「環状型循環生産体系」とは、化学肥料生産が不足している北朝鮮で家畜の排泄物を利用して肥料や堆肥を作っていくという仕組みのことであるが、その効率性については疑問である。投入労働力比の非効率であれば、北朝鮮ではさして大きな問題ではないだろうが、農作物の育成という側面からの効率性については、専門家に聞いてみないと分からないが、生産性における両者の効用の比率はさておき、両方であろう。

    肥料と関連して「有機農法を積極的に奨励しなければならない」とした上で、「今、農業部門の幹部の中に、化学肥料がなくては農業を営むことが出来ないと考える傾向が少なからずあるが、それは間違った見解である」と断じている。「農業部門の幹部」が労働生産性という側面からそう考えているのか、肥料の実質的な効果あるいは土地生産性からそう考えているのかは分からない。そして「有機農法を積極的に奨励」する別の理由として、「世界の農業発展趨勢を見ても、化学肥料ではなく、有機質肥料を持って農業を行う方向へと向かっている」としている。確かにそうともいえるが、これは「化学肥料が不足している」という北朝鮮が直面する問題と全く異なる「食の安全」や「環境」といった問題であるわけだが、それには触れていない。

    「書簡」では、品種改良(種子改良)についても述べている。興味深い点は、「我々自身で良い品種を作り出す一方、外国から多収穫品種を導入するための事業にも関心を示さなければならない」と述べている点である。「我々自身で」とまず断っているものの、「自力更生」を過度に強調せず、適宜海外から導入するという考えは、よい考えではあるが、北朝鮮らしくない。もしかすると、過去にFAOなどの協力で北朝鮮の土地に適したジャガイモ品種ができたことを回想しているのかもしれない。FAOの協力による「ジャガイモ革命」については、過去記事に書いたような記憶があるし、追って書こうと思っている別の農業関連記事でも触れる予定である。

    「農業科学技術」については、「古い経験に固執し、科学技術を疎かにする傾向をなくし、科学研究成果を農業生産において積極的に受け入れなければならない」としている。上下下達式に物事が動いているように思われている北朝鮮ではあるが、やはり農業のような伝統的部門では、いくら社会主義農場であるとはいえ、伝統的農法から脱却させるのは分組長など、幹部にとって頭の痛い話なのであろう。北朝鮮映画でも、こうしたテーマを扱っているものを見たことがある。

    土地については、「農業生産を高めるためには、農耕地を保護し、穀物栽培面積を増やさなければならない」とし、「土地を流用浪費する現象をなくさなければならない」としている。いうまでもなく、北朝鮮では土地は国家財産であるが、それを「流用浪費」するということはどういうことであろうか。農場員個人レベルの話ではないと思うので、農場単位で「流用浪費」しているということであろうが、問題はどのような用途で「流用浪費」しているのかということである。

    上で「食料生産」について触れたが、「書簡」の中程で「農業部門で食料生産を最大限に増やすことが出来るように、農業生産構造を穀物中心の生産構造へと改善しなければならない。食料問題を解決することが我々の前に最も切実な要求として立ちはだかっている状況で、できるかぎり非穀物作物栽培面積を減らし、米やトウモロコシ栽培面積を増やさなければならない」と述べている。上で「畜産や果樹も」と言っておきながら、「穀物生産中心の生産構造へ」というのは矛盾するように思えてならない。この辺り、上述のカロリーベスの食料供給や「セポ台地開墾事業」とも関連し、なかなか実態がよく分からない部分でもある。

    「分組管理制」についても興味深い記述がある。「分組管理制を実施することにおいて、分配を徹底して社会主義の分配原則通りにすることが重要である」と「社会主義の分配原則」を強調しつつ「分配における平均主義は、社会主義分配原則と関係がなく、農場員の生産意欲を落とす有害な作用をする」としている。北朝鮮の農場を取材した番組や農場を舞台とした映画を見ていると、農場員毎の達成目標が記された棒グラフがしばしば登場する。この棒グラフと分配の関係は分からないが、もしかすると理念的・形式的には「平均主義」は用いられていないのかもしれない。こうした前提条件が明らかではないので、これが何を意味するのか断定することはできないが、「書簡」では「分組において、農場員の労力日評価を、労働の量と質によって遅滞なく正確に行わなければならない。そして、社会主義分配原則の要求に合うように、分袖生産した穀物の中で国家が定めた一定の分を除外した残りは、農場員に彼らの労力日により現物を基本として分配するようにしなければならない。国家的に国の食料受容と農場員の利害関係、生活上の要求を正しく計算したことに基づき、穀物義務収買(穀物強盛買取)課題を合理的に定め、農業勤労者が自信を持って奮発し闘争するようにしなければならない」としている。上述のように前提が分からないのでなかなか評価しにくいが、国家へ売り渡す分以上の収穫物については、労働実績に応じて現物分配するということであろうが、国家への売り渡し分を下降調整し、農場員の成果に応じて積極的に分配量を増やすようにするとも読み取れる。

    以下の部分では、「分組長」が愛国心や人民を愛する心を持って農場の幹部として服務すべきという内容が書かれている。

    「いつもと違う様子の楽しい民俗遊び」:旧正月の遊びを紹介 (2014年2月1日 「朝鮮中央TV」)

    過去記事で、北朝鮮における旧正月の遊びを「20時報道」の中から拾い出していくつか紹介したことが、今回は表題のような「朝鮮中央TV」の番組からの紹介である。この番組では、遊び方まで細かく紹介しているので、なかなかおもしろかった。「(2)」となっているので、その前に「(1)」があったのだろうが、こちらはまだ見ていない。

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    Source: KCTV, 2014/2/1放送

    番組ではまず、大同門の前で子供たちが遊んでいる「南大門遊び」を紹介する。番組の解説によると「南大門遊びは、昔、南大門を通過しなければ、街にに入れなかったことに由来する遊びであるが、今は汽車遊びとも呼ばれている」という。

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    Source: KCTV, 2014/2/1放送

    「南大門遊び」は、上の写真にあるように2人が手を繋いで「門」を作り、その間を子供たちが繋がって走っている。

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    Source: KCTV, 2014/2/1放送

    そして、「ときどき」この2人は門を閉じる。子供たちは歌を歌いながら走っているので、日本の「かごめかごめ」のように歌が切れたところで「門」を閉じるのかと思ったのだが、どうやら歌とは関係なく適当に閉じているようだ。

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    Source: KCTV, 2014/2/1放送

    上の写真にあるように「門」にかかってしまった子供には、「どちらのチームなのか」という意味で「何を食べたのか」と聞く。そして、引っかかった学生は「ご飯あるいはお餅」と答える。なぜ食べたものについて質問するのかというと、昔から正月にこの遊びをしたので、「正月の朝、何を食べたのかという意味で聞くようになったのではないか」と説明している。したがって、食べたものは「ご飯あるいはうどん」、「リンゴあるいはナシ」など何でもよい。重要なことは、遊びを始める前に何を言うか決めておくことである。そして、「ご飯」と言えばご飯チームの「門」の後ろに繋がり、「うどん」と言えばうどんチームの後ろに繋がる。勝負は、どちらの列が長くなるかで決まることもあるが、昔は列が出来た後で、引っ張りっこをして切れた方が負けという決め方をしたこともあるという。

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    Source: KCTV, 2014/2/1放送

    何を言うのかは秘密にしておくのだろうか。そうしないと「門」が意図的に門を閉めて自分のチームを増やそうとする。しかし、どちらでもよいとしてしまうと、片方に集中してしまう可能性もある。まあ、子供の遊びなので、厳密さは必要ないのだろうが、引っ張りっこで勝敗を決めるというのは、その辺りと関係しているのかもしれない。

    番組では、こうした「民俗遊び」は子供だけではなく、大人も楽しむという。北朝鮮らしい。

    続いて、「足合わせ民俗遊び」が紹介される。歌を歌いながら遊ぶ「足合わせ民俗遊び」は、一見踊っているように見えるが、踊りではないようだ。

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    Source: KCTV, 2014/2/1放送

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    Source: KCTV, 2014/2/1放送

    取材班は、「4.25文化会館前広場」に移動する。そこでも子供たちが「民俗遊び」をしている。まず紹介されるのは「しっぽ捕まえ」である。この遊びは、蛇のように繋がりチームを作り、相手チームのしっぽ、つまり一番後ろの子供を捕まえるという遊びである。

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    Source: KCTV, 2014/2/1放送

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    Source: KCTV, 2014/2/1放送

    この遊びでは、「大将」として体が大きく、動きが速い子供を選ぶことがポイントになるという。下の写真の「大将」たちも、他の子供より体が大きい。また、勝つためには「チームが一つになり、大将にしっかりとくっついて、大将の意図に従って行動しなければならない」としている。「若大将」の意図に従って行動する話と似ている。
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    Source: KCTV, 2014/2/1放送

    そして、「テレビを見ている学生ドンムの皆さん。皆さんも力が強くて、能力のある大将を選んで、皆が心を一つにして、しっぽ捕まえ遊びをやってみてくださいね」と「放送員」が言う。「能力のある大将」を「選べる」制度ならよいのだが。

    <追記:2月9日>
    「若大将」、いや「若元帥様」は、「第111号白頭山地区選挙区」を皮切りに全国の選挙区で「代議員候補者に高く推戴」された。形式的には選ばれたわけだ。

    番組ではこの他にもたこ揚げ、「玉蹴り」、縄跳びなどを紹介している。

    過去記事でも紹介した「玉蹴り」
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    Source: KCTV, 2014/2/1放送

    北朝鮮の旧正月:花火大会 (2014年1月31日 「朝鮮中央TV」)

    1月30日の「朝鮮中央TV」、「20時報道」で「報道を終わります」と言った後、別の「放送員(アナウンサー)」が登場し「視聴者の皆さんにお伝えします、視聴者の皆さんにお伝えします」と言い始めた。何か重大な会う案素手もするのかと思いきや「明日、午後7時30分より旧正月の花火大会があります」という知らせだった。私のような北朝鮮ワッチャーの悪い癖は、「悪いこと」に期待してしまうことである。決して、朝鮮人民が不幸になることを願っているわけではないのだが、その方が「ネタ」にしやすいし、ある意味おもしろい。拙ブログも、それではいけないという思いから始めたのだが、それを克服するのは自分の関心からしても、北朝鮮の体制の特性からしてもなかなか難しい。

    「花火大会」は朝鮮人民にとっては楽しい行事であることは間違いない。しかし、受け入れ側(朝鮮人民)がどのように受容しているのかはさておき、発信側(政権)は「花火大会」にも政治的なメッセージを込めている。それは、下で紹介する「花火大会」を生中継する番組の「放送員」のアナウンスを聞いていても分かる。さらに、「花火大会」に続いて放送された「子供の歌」を多く紹介する番組でも、「子供の歌」の中に政治的なメッセージが込められていることが分かる。だから、西側のワッチャーは北朝鮮を「自由がなくつまらない国」とステロタイプ化してしまう傾向があるが、相対的にはそうであっても、そうした体制と70年近くつきあってきた朝鮮人民にとっては、つまらなさの中におもしろさを見いだしているのであろう。それは、隠れて韓国のテレビ番組のDVDを見ているとか、K-POPを聞いているという話ではなく、政治的なメッセージと切り離して「花火大会」を楽しんだり、「朝鮮中央TV」の番組を楽しんでいるはずである。

    昨年までは、uriminzokkiriにアップロードされた番組を断片的にしか見ていなかったので分からなかったのだが、北朝鮮でも韓国同様、陽暦の正月よりも陰暦の正月の方が重要であることが分かった。伝統料理を食べたり、伝統的な遊びをしたり、両親や祖父母に「セベ(正月の挨拶)」をするのも旧正月のようだ。「朝鮮中央TV」でもその様子を伝える番組を組んでいる。

    昨年の放送全体を見ていないので比較できないのだが、今年は「子供たち」が登場する番組がとても多い。後でゆっくり見ようと思っているのだが、最近「朝鮮中央TV」が制作したと思われる、ワイドサイズの子供を扱ったドラマも放送されていた。こちらについては、視聴後に記事にできればと思う。本記事では、「花火大会」の一部について紹介したいと思う。

    7時半から放送が始まり男女の「放送員」が話をしていると、花火打ち上げが始まる。
    男性「放送員」:「ああ、いよいよ、初めの祝砲(花火)の音が鳴り響きました」
    女性「放送員」:「意味深い2014年旧正月を迎えた全国、全体人民におくる祝賀の挨拶です。みなさん、旧正月おめでとうございます」
    男性「放送員」:「旧正月、おめでとうございます」
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    Source: KCTV, 2014/1/31放送

    「朝鮮中央TV」では「金日成広場側の大同江岸」からの映像を流していた。花火大会会場では、ラウドスピーカーがモランボン楽団の曲を色々流している。「初めの祝砲」が打ち上げられた時は、「人民が愛する金正恩元帥」が流れていた。

    花火大会を楽しむ平壌市民
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    Source: KCTV, 2014/1/31放送

    「放送員」は「敬愛する元帥様の新年の辞を受け、信念を強くして進軍の道を・・・」などと政治的メッセージを伝えている。

    しばらくすると、ハート型のようにも見える花火が打ち上げられる。すると、

    男性「放送員」:「ああ、愛、愛の象徴です」
    女性「放送員」:「ああ、今、青春男女が心をときめかしていることでしょう。美しいこの年にやってくる愛に対する期待。今年、実を結ぶ愛に対する歓喜」
    男性「放送員」:「本当に、どれほど美しい夢でしょうか」
    女性「放送員」:「どれほど美しい私たちの生活でしょうか」
    男性「放送員」:「どれほど美しい私たちの未来でしょうか」

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    Source: KCTV, 2014/1/31放送

    「愛」というので「元帥様の愛」かと思ったのだが、そうではなかった。しかし「男女間の恋愛」の話から始め、「美しい生活」や「美しい未来」につなげていくなど北朝鮮らしい。

    花火大会のクライマックス
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    Source: KCTV, 2014/1/31放送

    花火大会は、平壌だけではなく地方の都市でも開催された。2012年と2013年の『労働新聞』には、旧正月を迎えての花火大会に関する記事がないので、開催されなかったのであろう。2011年の同新聞にも記事はないので、金正日死去との関連ではなさそうだ。だとすると、平壌のみならず各地での花火大会開催は、金正恩時代の新しい行事なのかもしれない。今年これほど大々的な花火大会を開催したのは、やはり2013年末の張成沢事件で生じた社会的な緊張感を緩和し、「怖い元帥様」から「優しい元帥様」へと彼のイメージを引き戻そうとしているからかもしれない。

    「<世界名作童話集 第60巻>恩を返した鶴」:日本の民話「鶴の恩返し」を紹介 (2014年1月30日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」を飛ばしてみていたら、何だか着物を着た絵が出ているではないか。しかも、毎度おなじみの「日帝」ではなく、もっと古い時代の日本人だった。よく見たら、子供向け番組「世界童話集」の中で紹介された「鶴の恩返し」だった。日本のオリジナルストーリーをきちんと確認はしていないが、大筋では日本で語られているストーリーと変わらない。この番組はシリーズで、色々な国の童話を紹介しているが、以前見た「イソップ童話」では番組の最後でイソップ童話について簡単な紹介をしていたが、「鶴の恩返し」では日本の民話であるという紹介はなかった。この「世界童話集」は金正恩がチャンジョン通りのアパートに入居した家庭に「恩情溢れる」お土産として持って行ったものでもある。絵は日本の本かアニメをコピーしたものなのかもしれないが、日本の絵本として売れるぐらいによく描けている。

    「世界名作童話集 第60巻」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「恩を返した鶴」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「遠い昔、ある山の中の小さな家に貧乏な若者が住んでいました」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「寒いある冬の日、若者が白い雪深い道を歩いて行くと、どこからかバタバタする音が聞こえてきました」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「そして、音がする所の近くに行くと美しい鶴がいました。鶴は罠にかかり苦しそうにもがいていました」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「若者はそれを見て可愛そうに思い、罠からはずしてやり、『もう二度と罠にかかるなよ』といいました。鶴はとても喜び空に飛び立ち、若者の上をグルグル回って遠くの空に消えてしまいました。若者はずっと鶴が消えた遠くの空を眺めていました」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「数日後、若者の家に美しい娘が尋ねてきました。『私を嫁にして下さい』と娘が言うと、若者は驚きました。『何を言っているんだい。僕ははとても貧乏で、そんなことはできない』」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「すると娘はこう言いました。『あなたが私を嫁にして下さるなら、いくら貧乏でも我慢して生きていきます』そしてこの若者は、その娘を嫁にしました。嫁は一生懸命働きました」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「朝、若者が目を覚ますと、囲炉裏で火がパチパチと燃え、暖かい朝食も準備されていました」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「『こんな貧乏者の若者の家に嫁が来るなんて、本当に夢のようだなぁ』若者は本当に幸せでした」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「ある日、嫁は夫に『今から私が機を織るので、許して下さい。そして、私が機を織っている間は、絶対にこの扉を開けないで下さい』と頼み、扉を閉めてしまいました。カッタン、コットンと機を織る音が昼も夜もずっと聞こえました」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「数日過ぎて現れた嫁は、とても疲れた様子でした。若者は『お前、無理しすぎているんじゃないのか』と嫁を心配しました。しかし嫁は美しい絹の織物を見せながらこう言いました。「この絹の織物を通り(ママ)に持って行って売って下さい。間違いなく高い値段で売れるはずです』」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「若者は絹織物の美しさに驚き、通り(ママ)に持って行きました」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「若者が通り(ママ)で絹織物を広げていると、領主が通りかかりそれを見てこう言いました。『これは、本当にまれに見る立派な絹織物だ。こんな絹織物は初めて見る』」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「そして、領主は若者に多くの金を与えながら、『このような織物をもっと持ってこい。こんな織物ならいくらでも買ってやる』と言いました。若者はとても嬉しくて、たまりませんでした」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「そしてたくさんの食べ物を買って、嫁が待つ家に帰りました。若者は家に帰ると直ぐに通りでの出来事の話をしました。『領主様がとても満足し、絹織物をもっと持ってこいと言ったんだ。だから、もう一反織ってくれ』嫁はどうすることもできず、再び扉を閉めて機を織り始めました」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「カッタン、コットンという機を織る音が止むことなくしていました」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「何日かが過ぎ、やっと扉が開きました。嫁がとてもやつれたのですが、若者はそのことに全く気付きませんでした。若者は嫁から絹織物を受け取ると、『領主様に直ぐに持って行かなければ』と言って、さっさと出て行ってしまいました」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「領主は若者が持って来た織物を見て、大変満足しました。『実に立派な織物だなぁ。もっと持ってこい。金はいくらでもくれてやる』と言い、前よりももっと多くの金をくれました。若者は嬉しくてたまりませんでした」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「若者は『必ずまた持って来ます』と言い、急いで家に帰りました」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「若者は嫁に頭を下げながら『おいお前、あと一回だけ、機を織ってくれ』嫁はとてもやつれて歩くのも辛そうだったのですが、しばらく考えた後で「それなら、あと一回だけ織りましょう。しかし私が機を織っている間は絶対にこの扉を開けないで下さい』」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「カッタン、コットン、機を織る音が之までとは異なり、弱々しく聞こえました。その音を聞いて若者は、嫁が土嚢に機を織っているのか見たくて我慢出来なくなりました」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「そして、そっと扉を開いて覗いてみました。その瞬間、若者はとても驚きました。なんと、機を織っていたのは一匹の鶴だったのです。鶴は自分の羽を抜きながら機に挟み込んでいました。此の様子を見てとても驚いた若者が口を開けずにいると、嫁が現れて頭を下げながらこう言いました」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「『私は、いつか罠にかかってあなたに助けてもらった鶴です。私は恩を返すためにこのような姿をしていました。それなのに、今日、あなたがこんな姿を見てしまったので、もうこれ以上一緒にいることが出来なくなりました。どうか幸せに暮らして下さい』」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「嫁は突然鶴の姿に変わり、空高く飛んでいきました。『俺が悪かった。金なんかいらない。お願いだから戻ってきてくれ』若者が懇願しましたが、鶴は飛び立ち若者の頭の上をぐるっと回り、一度『キー』と鳴いて、遠い空に飛んで行ってしまい、見えなくなってしまいました」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「『恩を返した鶴』の主人公は、罠にかかった鶴を助けてやった心の優しい若者でした。その後、美しい娘と暮らすようになり、貧乏な暮らしでしたが、幸せな日々でした。しかし、金を手にしてからは、心が変わってしまいました。もっと多くの金があれば、もっと幸せになれると考え、とうとう嫁との約束を破ってしまいました。嫁が去ってはじめて、若者が本当の幸せは金ではないということに気付いたという話です」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

    「朗読、朴ウンハ」
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    Source: KCTV, 2014/1/30放送

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    Source: KCTV, 2014/1/30放送
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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