「青少年映画:口先だけだと」:有線放送で節電呼びかけ、北朝鮮の公衆電話、消防車 (2014年2月9日 「朝鮮中央TV」)
金正恩が「新年の辞」で、「1Wの電力でも節約しよう」と呼びかけた。電力供給が切迫している北朝鮮では当然のことだし、そうではない国でも節電した方が良いことは間違いない。2月9日の「朝鮮中央TV」を見ていたら、節電を呼びかける「青少年映画」を放映した。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
「青少年映画」というカテゴリーを拙ブログで紹介するのは初めてかもしれないが、人民一般向けの映画ではなく「学生教育用映画」という位置づけなのかもしれない。
タイトルは、表題にあるとおり「口先だけだと」である。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
韓国・北韓情報センターのデータによると、「2013年10月6日の再放送」ということになっており、この日が初回の放送だとすると半年ほど前に初めて放送された映画である。
主役は上の写真に写っている主婦である。左側にいる男性は夫で、中学生ぐらいの娘がいる。
この夫婦が住んでいるという設定のアパート。10階建てであるが、エレベータはない。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
壁に取り付けられた有線放送用のスピーカー。「電気を生産するくらい重要なことは、節電をすることです」という放送が流れている。スピーカの右側に何か文字が書かれているようだが、読み取れない。そして、文字の下にあるのがボリウムなのか、スイッチなのかも分からない。絶対聞かなければならない仕組みなのだろうから、電源を切ったり、音量を下げたりすることはできないような気もするのだが。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
この主婦は、有線放送が流れている中、部屋に置かれている「録音機」(ラジカセ?)のスイッチを入れて音楽を聞き始める。夫が出勤する準備を鏡の前でしていると、妻は電気カミソリを「今日はあなたの誕生日でしょ」と言いながら手渡す。「電気を節約」と言っている最中に電気を使う「電気カミソリ」という話なのだろうが、誕生日プレゼントとして「電気カミソリ」はおもしろかった。何がおもしろいのかというと、昔、韓国語を勉強していた時、どこのどんな教科書だったか忘れてしまったが、誕生日プレゼントとして「電気カミソリ」を夫か父親に渡す話を読んだことがあるからだ。なぜこんなことを覚えているのか分からないが、「チョンギミョンドギ(전기면도기)」という言葉がなぜか印象的だったからかもしれない。さらに、私が韓国語を勉強していたのは80年代、その頃の韓国では電気カミソリは、まだ少し貴重品だったために、誕生日プレゼントであった。すると、現在の北朝鮮がちょうどその状況なのかもしれない。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
主婦が浴室の掃除をしていると照明が消えてしまう。主婦は「ヒューズが切れたのかしら。また分組のブレーカーが上がったみたいよ」と言う。どうやら、北朝鮮では「分組」、すなわち住民組織の最小単位に使用出来る電力量が割り当てられているようだ。この主婦の台詞からすると、各世帯にはヒューズはなく、「分組」の配電盤で一括管理しているのかもしれない。後で、配電盤の映像も出てくる。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
しかし、ヒューズは切れておらず、電球が切れただけであった。主婦は、タンスの中から電球の予備を出す。それを見た娘は、「おかあさん、それを使うと電気が80Wも消費されるのよ」という。主婦は、「わかってるわよ。でも、顔は洗わなくちゃ」と電球を取り替える。もしかすると、北朝鮮では蛍光灯型電球の使用が奨励されているにもかかわらず、主婦が電力消費量が多い古い電球を使おうとしたので娘に戒められたのかもしれない。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
主婦は、豚足料理をしている。豚足を蒸すのに「電気ご飯釜(電気炊飯器)」を使おうとすると娘が、「豚足を蒸すのに電気釜を使うの。そんなの使うと電気を食うのに」と言う。主婦は「ガスがあまり残っていないからね」と答える。この辺りもやりとりもおもしろい。電気の方は、月間割り当て量はないのでいくらでも使えるが、ガス(プロパンガス)の方は、割当量を使い切ると次の割り当てが来るまで使えないという話なのであろう。下の写真は、電気釜に豚足を入れる主婦。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
ここから主婦の電気の浪費が始まる。まず、扇風機のスイッチを入れて「ああ、涼しい」。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
次にアイロンをコンセントに挿す。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
すると、来客が来る。来客は「分組長」で、この主婦に依頼してあった「電気を大切に」という張り紙を受け取りに来る。主婦は「今日、分電盤の修理をするのよね。これでしっかりと鍵を掛けておいてね。誰も触れないように」と言いながら南京錠を「分組長」に手渡す。普通であれば分電盤など触る人はいないはずだが、もしかすると「誰も触れないように」というのは、北朝鮮ではブレーカーが落ちないように縛ったり張ったりする行為が横行しているのかもしれない。
しかし、この主婦は、テレビも扇風機もアイロンも、そして電気釜もつけっぱなしにしている。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
一方、夫は「副局長」と電話で話ながら、「節電は、言葉だけではなく行動ですよ。私の家からまずそれをはじめるつもりです」と言っている。しかし実態は上の写真にあるような状況である。北朝鮮はスローガンの国なので、「言葉」はたくさんあるが、なかなかそれが「行動」に移されていないという状況を戒めているのであろう。朝鮮人民は、これらの「言葉」を周りの様子を見ながらどれほど「行動」に移すのかに長けているのであろう。やりすぎなければ、いざというときに「党の指示に従わない」と批判されて酷い目に遭うし、やり過ぎれば生活が不便になるしといったところだろうか。日本の道交法の運用と似ていないわけでもないが。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
主婦は家電製品をつけっぱなしで買い物に出かける。家に帰ってくと、分電盤の鍵を出す時に家の鍵を床に落としてしまったことを思い出す。主婦は、アイロンもつけっぱなしなので、火事になりはしないかと心配になる。主婦は、分電盤のブレーカーを切りに行くが、自分で「誰も触れないように」と渡した鍵がかけられており、分電盤の蓋を開けることができない。ここで電力計が映し出される。デジタル式の電力計だが、製造したのは「平壌電気器具合営会社」と書かれているように見える。「合営」というのは中国企業との「合営」ということであろうか。左側にはスイッチがあり、これを切れば良いようにも思えるが、この電力計は「電気を消費している」という象徴的な意味で見せただけなのかもしれない。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
主婦は「分組長」に「家の電灯をつけっぱなしにしたから、分電盤の鍵を下さい」と頼むが、「今、みんなテレビを見ているから・・・」と断られる。もちろん「電灯ぐらいでも節約する」という嘘をついているわけであるが。「分組長」は、「世帯主(ご主人)に電話をしたら」と勧める。主婦は「分組長」の家の電話を借りて夫に電話をするが、「アイロンをつけっぱなしにした」と言うことができず、公衆電話から電話をすることにする。ここで、北朝鮮の公衆電話が登場する。初めて見るような気がするが、色は黄色で随分丈夫そうにできている。真ん中の黒い部分がプッシュボタンであろうか。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
夫は「火事になりました」という妻の話を聞き、会社部下と一緒に家に駆けつける。
一方、中学生の娘はその間に家に戻り、母親がつけっぱなしにした電気製品の切り、さらに電気釜で蒸していた豚足を、電気を節約するために、七輪で蒸す。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
主婦が家に戻ると、ベランダから煙が出ており、主婦は本当に火事になったと驚く。しかし、この煙は七輪の煙である。日本の集合住宅でこんなことをすれば随分叱られるのであろうが、北朝鮮では問題ないようだ。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
アパートは、住民がバケツを持って集まり、夫の会社の女性が消防署にも電話をしたので、消防車がアパートに向かっている。北朝鮮の消防車、随分古そうだ。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
大騒ぎになっているところに夫が戻ってきて鍵で扉を開ける。夫と妻は、頭から水をかぶり部屋に飛び込む。部屋には当然、「大元帥様」たちの肖像画が飾られているはずである。模範的な朝鮮人民であれば、部屋に飛び込んでまずすることは、「大元帥様」たちの肖像画を「救出」することであるが、この映画ではその話は全く出てこない。「思想教養」映画ではないからかもしれないが、実際のところ、緊急事態が発生した時に肖像画のことなど皆あまり考えないのかもしれない。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
しかし、部屋の中では何事も起こっていない。もちろん、娘が戻ってきて電源を切ったからであるが、夫と妻は唖然とする。そこに消防隊員がやって来て「どうしたのですか?」、「分組班長」が夫婦の代わりに消防隊員に謝ってくれる。過去記事に別の映画の話を書いた時もそうだったが、「分組班長」は「班長」という地位を使いながら、班員の面倒を見てくれる世話役のような人なのであろう。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
娘は、大騒ぎになったので怖くなり勝手場で泣いている。「分組班長」は、娘が節電をするために七輪を使ったことを知り褒めてくれる。

Source: KCTV, 2014/2/9放送

Source: KCTV, 2014/2/9放送
最終場面は、「分組班長」に「この家で節電ができるのはお父さんやお母さんではなくて、オックミ(娘の名前)だねぇ」と言われ、妻は「私は、今度のことで、国家の電気を浪費すると、家の財産も国家の財産も焼いてしまうということがよく分かりました。本当に1Wの電気でも節約するということを実践しないのは私の古い思想のせいです」と謝罪する。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
資本主義国では、経済発展の過程で電力生産が増大し、電力を潤沢に使った生活様式が定着する。そして、ある時、日本の原発事故がその契機であったように、エネルギー問題と環境問題に気付き、省電力技術が発達し、人々の間にも節電という発想が浸透する。いわば「新しい思想」であるわけだが、北朝鮮では、電力を潤沢に使う時代を経ずして「新しい思想」が出てきているのがおもしろい。かつて、北朝鮮の信号機がLEDを使っているという記事を書いたことがあるが、「思想」と「技術」が並進しているということだろう。「技術」というのは「思想(発想)」があり進歩するものなので、当然のことなのかもしれないが。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
「青少年映画」というカテゴリーを拙ブログで紹介するのは初めてかもしれないが、人民一般向けの映画ではなく「学生教育用映画」という位置づけなのかもしれない。
タイトルは、表題にあるとおり「口先だけだと」である。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
韓国・北韓情報センターのデータによると、「2013年10月6日の再放送」ということになっており、この日が初回の放送だとすると半年ほど前に初めて放送された映画である。
主役は上の写真に写っている主婦である。左側にいる男性は夫で、中学生ぐらいの娘がいる。
この夫婦が住んでいるという設定のアパート。10階建てであるが、エレベータはない。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
壁に取り付けられた有線放送用のスピーカー。「電気を生産するくらい重要なことは、節電をすることです」という放送が流れている。スピーカの右側に何か文字が書かれているようだが、読み取れない。そして、文字の下にあるのがボリウムなのか、スイッチなのかも分からない。絶対聞かなければならない仕組みなのだろうから、電源を切ったり、音量を下げたりすることはできないような気もするのだが。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
この主婦は、有線放送が流れている中、部屋に置かれている「録音機」(ラジカセ?)のスイッチを入れて音楽を聞き始める。夫が出勤する準備を鏡の前でしていると、妻は電気カミソリを「今日はあなたの誕生日でしょ」と言いながら手渡す。「電気を節約」と言っている最中に電気を使う「電気カミソリ」という話なのだろうが、誕生日プレゼントとして「電気カミソリ」はおもしろかった。何がおもしろいのかというと、昔、韓国語を勉強していた時、どこのどんな教科書だったか忘れてしまったが、誕生日プレゼントとして「電気カミソリ」を夫か父親に渡す話を読んだことがあるからだ。なぜこんなことを覚えているのか分からないが、「チョンギミョンドギ(전기면도기)」という言葉がなぜか印象的だったからかもしれない。さらに、私が韓国語を勉強していたのは80年代、その頃の韓国では電気カミソリは、まだ少し貴重品だったために、誕生日プレゼントであった。すると、現在の北朝鮮がちょうどその状況なのかもしれない。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
主婦が浴室の掃除をしていると照明が消えてしまう。主婦は「ヒューズが切れたのかしら。また分組のブレーカーが上がったみたいよ」と言う。どうやら、北朝鮮では「分組」、すなわち住民組織の最小単位に使用出来る電力量が割り当てられているようだ。この主婦の台詞からすると、各世帯にはヒューズはなく、「分組」の配電盤で一括管理しているのかもしれない。後で、配電盤の映像も出てくる。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
しかし、ヒューズは切れておらず、電球が切れただけであった。主婦は、タンスの中から電球の予備を出す。それを見た娘は、「おかあさん、それを使うと電気が80Wも消費されるのよ」という。主婦は、「わかってるわよ。でも、顔は洗わなくちゃ」と電球を取り替える。もしかすると、北朝鮮では蛍光灯型電球の使用が奨励されているにもかかわらず、主婦が電力消費量が多い古い電球を使おうとしたので娘に戒められたのかもしれない。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
主婦は、豚足料理をしている。豚足を蒸すのに「電気ご飯釜(電気炊飯器)」を使おうとすると娘が、「豚足を蒸すのに電気釜を使うの。そんなの使うと電気を食うのに」と言う。主婦は「ガスがあまり残っていないからね」と答える。この辺りもやりとりもおもしろい。電気の方は、月間割り当て量はないのでいくらでも使えるが、ガス(プロパンガス)の方は、割当量を使い切ると次の割り当てが来るまで使えないという話なのであろう。下の写真は、電気釜に豚足を入れる主婦。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
ここから主婦の電気の浪費が始まる。まず、扇風機のスイッチを入れて「ああ、涼しい」。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
次にアイロンをコンセントに挿す。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
すると、来客が来る。来客は「分組長」で、この主婦に依頼してあった「電気を大切に」という張り紙を受け取りに来る。主婦は「今日、分電盤の修理をするのよね。これでしっかりと鍵を掛けておいてね。誰も触れないように」と言いながら南京錠を「分組長」に手渡す。普通であれば分電盤など触る人はいないはずだが、もしかすると「誰も触れないように」というのは、北朝鮮ではブレーカーが落ちないように縛ったり張ったりする行為が横行しているのかもしれない。
しかし、この主婦は、テレビも扇風機もアイロンも、そして電気釜もつけっぱなしにしている。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
一方、夫は「副局長」と電話で話ながら、「節電は、言葉だけではなく行動ですよ。私の家からまずそれをはじめるつもりです」と言っている。しかし実態は上の写真にあるような状況である。北朝鮮はスローガンの国なので、「言葉」はたくさんあるが、なかなかそれが「行動」に移されていないという状況を戒めているのであろう。朝鮮人民は、これらの「言葉」を周りの様子を見ながらどれほど「行動」に移すのかに長けているのであろう。やりすぎなければ、いざというときに「党の指示に従わない」と批判されて酷い目に遭うし、やり過ぎれば生活が不便になるしといったところだろうか。日本の道交法の運用と似ていないわけでもないが。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
主婦は家電製品をつけっぱなしで買い物に出かける。家に帰ってくと、分電盤の鍵を出す時に家の鍵を床に落としてしまったことを思い出す。主婦は、アイロンもつけっぱなしなので、火事になりはしないかと心配になる。主婦は、分電盤のブレーカーを切りに行くが、自分で「誰も触れないように」と渡した鍵がかけられており、分電盤の蓋を開けることができない。ここで電力計が映し出される。デジタル式の電力計だが、製造したのは「平壌電気器具合営会社」と書かれているように見える。「合営」というのは中国企業との「合営」ということであろうか。左側にはスイッチがあり、これを切れば良いようにも思えるが、この電力計は「電気を消費している」という象徴的な意味で見せただけなのかもしれない。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
主婦は「分組長」に「家の電灯をつけっぱなしにしたから、分電盤の鍵を下さい」と頼むが、「今、みんなテレビを見ているから・・・」と断られる。もちろん「電灯ぐらいでも節約する」という嘘をついているわけであるが。「分組長」は、「世帯主(ご主人)に電話をしたら」と勧める。主婦は「分組長」の家の電話を借りて夫に電話をするが、「アイロンをつけっぱなしにした」と言うことができず、公衆電話から電話をすることにする。ここで、北朝鮮の公衆電話が登場する。初めて見るような気がするが、色は黄色で随分丈夫そうにできている。真ん中の黒い部分がプッシュボタンであろうか。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
夫は「火事になりました」という妻の話を聞き、会社部下と一緒に家に駆けつける。
一方、中学生の娘はその間に家に戻り、母親がつけっぱなしにした電気製品の切り、さらに電気釜で蒸していた豚足を、電気を節約するために、七輪で蒸す。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
主婦が家に戻ると、ベランダから煙が出ており、主婦は本当に火事になったと驚く。しかし、この煙は七輪の煙である。日本の集合住宅でこんなことをすれば随分叱られるのであろうが、北朝鮮では問題ないようだ。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
アパートは、住民がバケツを持って集まり、夫の会社の女性が消防署にも電話をしたので、消防車がアパートに向かっている。北朝鮮の消防車、随分古そうだ。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
大騒ぎになっているところに夫が戻ってきて鍵で扉を開ける。夫と妻は、頭から水をかぶり部屋に飛び込む。部屋には当然、「大元帥様」たちの肖像画が飾られているはずである。模範的な朝鮮人民であれば、部屋に飛び込んでまずすることは、「大元帥様」たちの肖像画を「救出」することであるが、この映画ではその話は全く出てこない。「思想教養」映画ではないからかもしれないが、実際のところ、緊急事態が発生した時に肖像画のことなど皆あまり考えないのかもしれない。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
しかし、部屋の中では何事も起こっていない。もちろん、娘が戻ってきて電源を切ったからであるが、夫と妻は唖然とする。そこに消防隊員がやって来て「どうしたのですか?」、「分組班長」が夫婦の代わりに消防隊員に謝ってくれる。過去記事に別の映画の話を書いた時もそうだったが、「分組班長」は「班長」という地位を使いながら、班員の面倒を見てくれる世話役のような人なのであろう。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
娘は、大騒ぎになったので怖くなり勝手場で泣いている。「分組班長」は、娘が節電をするために七輪を使ったことを知り褒めてくれる。

Source: KCTV, 2014/2/9放送

Source: KCTV, 2014/2/9放送
最終場面は、「分組班長」に「この家で節電ができるのはお父さんやお母さんではなくて、オックミ(娘の名前)だねぇ」と言われ、妻は「私は、今度のことで、国家の電気を浪費すると、家の財産も国家の財産も焼いてしまうということがよく分かりました。本当に1Wの電気でも節約するということを実践しないのは私の古い思想のせいです」と謝罪する。

Source: KCTV, 2014/2/9放送
資本主義国では、経済発展の過程で電力生産が増大し、電力を潤沢に使った生活様式が定着する。そして、ある時、日本の原発事故がその契機であったように、エネルギー問題と環境問題に気付き、省電力技術が発達し、人々の間にも節電という発想が浸透する。いわば「新しい思想」であるわけだが、北朝鮮では、電力を潤沢に使う時代を経ずして「新しい思想」が出てきているのがおもしろい。かつて、北朝鮮の信号機がLEDを使っているという記事を書いたことがあるが、「思想」と「技術」が並進しているということだろう。「技術」というのは「思想(発想)」があり進歩するものなので、当然のことなのかもしれないが。