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    北朝鮮の旧正月:花火大会 (2014年1月31日 「朝鮮中央TV」)

    1月30日の「朝鮮中央TV」、「20時報道」で「報道を終わります」と言った後、別の「放送員(アナウンサー)」が登場し「視聴者の皆さんにお伝えします、視聴者の皆さんにお伝えします」と言い始めた。何か重大な会う案素手もするのかと思いきや「明日、午後7時30分より旧正月の花火大会があります」という知らせだった。私のような北朝鮮ワッチャーの悪い癖は、「悪いこと」に期待してしまうことである。決して、朝鮮人民が不幸になることを願っているわけではないのだが、その方が「ネタ」にしやすいし、ある意味おもしろい。拙ブログも、それではいけないという思いから始めたのだが、それを克服するのは自分の関心からしても、北朝鮮の体制の特性からしてもなかなか難しい。

    「花火大会」は朝鮮人民にとっては楽しい行事であることは間違いない。しかし、受け入れ側(朝鮮人民)がどのように受容しているのかはさておき、発信側(政権)は「花火大会」にも政治的なメッセージを込めている。それは、下で紹介する「花火大会」を生中継する番組の「放送員」のアナウンスを聞いていても分かる。さらに、「花火大会」に続いて放送された「子供の歌」を多く紹介する番組でも、「子供の歌」の中に政治的なメッセージが込められていることが分かる。だから、西側のワッチャーは北朝鮮を「自由がなくつまらない国」とステロタイプ化してしまう傾向があるが、相対的にはそうであっても、そうした体制と70年近くつきあってきた朝鮮人民にとっては、つまらなさの中におもしろさを見いだしているのであろう。それは、隠れて韓国のテレビ番組のDVDを見ているとか、K-POPを聞いているという話ではなく、政治的なメッセージと切り離して「花火大会」を楽しんだり、「朝鮮中央TV」の番組を楽しんでいるはずである。

    昨年までは、uriminzokkiriにアップロードされた番組を断片的にしか見ていなかったので分からなかったのだが、北朝鮮でも韓国同様、陽暦の正月よりも陰暦の正月の方が重要であることが分かった。伝統料理を食べたり、伝統的な遊びをしたり、両親や祖父母に「セベ(正月の挨拶)」をするのも旧正月のようだ。「朝鮮中央TV」でもその様子を伝える番組を組んでいる。

    昨年の放送全体を見ていないので比較できないのだが、今年は「子供たち」が登場する番組がとても多い。後でゆっくり見ようと思っているのだが、最近「朝鮮中央TV」が制作したと思われる、ワイドサイズの子供を扱ったドラマも放送されていた。こちらについては、視聴後に記事にできればと思う。本記事では、「花火大会」の一部について紹介したいと思う。

    7時半から放送が始まり男女の「放送員」が話をしていると、花火打ち上げが始まる。
    男性「放送員」:「ああ、いよいよ、初めの祝砲(花火)の音が鳴り響きました」
    女性「放送員」:「意味深い2014年旧正月を迎えた全国、全体人民におくる祝賀の挨拶です。みなさん、旧正月おめでとうございます」
    男性「放送員」:「旧正月、おめでとうございます」
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    Source: KCTV, 2014/1/31放送

    「朝鮮中央TV」では「金日成広場側の大同江岸」からの映像を流していた。花火大会会場では、ラウドスピーカーがモランボン楽団の曲を色々流している。「初めの祝砲」が打ち上げられた時は、「人民が愛する金正恩元帥」が流れていた。

    花火大会を楽しむ平壌市民
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    Source: KCTV, 2014/1/31放送

    「放送員」は「敬愛する元帥様の新年の辞を受け、信念を強くして進軍の道を・・・」などと政治的メッセージを伝えている。

    しばらくすると、ハート型のようにも見える花火が打ち上げられる。すると、

    男性「放送員」:「ああ、愛、愛の象徴です」
    女性「放送員」:「ああ、今、青春男女が心をときめかしていることでしょう。美しいこの年にやってくる愛に対する期待。今年、実を結ぶ愛に対する歓喜」
    男性「放送員」:「本当に、どれほど美しい夢でしょうか」
    女性「放送員」:「どれほど美しい私たちの生活でしょうか」
    男性「放送員」:「どれほど美しい私たちの未来でしょうか」

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    Source: KCTV, 2014/1/31放送

    「愛」というので「元帥様の愛」かと思ったのだが、そうではなかった。しかし「男女間の恋愛」の話から始め、「美しい生活」や「美しい未来」につなげていくなど北朝鮮らしい。

    花火大会のクライマックス
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    Source: KCTV, 2014/1/31放送

    花火大会は、平壌だけではなく地方の都市でも開催された。2012年と2013年の『労働新聞』には、旧正月を迎えての花火大会に関する記事がないので、開催されなかったのであろう。2011年の同新聞にも記事はないので、金正日死去との関連ではなさそうだ。だとすると、平壌のみならず各地での花火大会開催は、金正恩時代の新しい行事なのかもしれない。今年これほど大々的な花火大会を開催したのは、やはり2013年末の張成沢事件で生じた社会的な緊張感を緩和し、「怖い元帥様」から「優しい元帥様」へと彼のイメージを引き戻そうとしているからかもしれない。

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    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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