金正日の党中央事業開始50周年を記念する「朝鮮記録映画」が作られた。金正日を題材とする「朝鮮記録映画」は数多くあるが、この映画は彼の50年間の活動をコンパクトにまとめたもので、金正日時代の動画をきちんとフォローできていない私にとっては貴重な映画である。では、この「朝鮮記録映画」を基に金正日の50年を紹介していく。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
「記録映画」では、まず金正恩の言葉が紹介される。
「将軍様は、我が党を首領の思想体系と領導体系が確固として確立した革命的党として、人民大衆と渾然一体をなす人民大衆のために服務する母なる党として、鋼鉄のような規律と戦闘力を持つ不敗の党として強化発展させられ、金日成朝鮮の尊厳と威容を四方八方に輝かせたことは、我が党の歴史に輝かしく刻み込まれる最も特出した業績です。 金正恩」

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金正日が活動を始めた1960年代中盤の世界情勢を「記録映画」では次のように説明している。
「革命の状勢は、首領の思想と領導の唯一性の試練(の過程)にあり、党をさらに組織思想的に強化していくことを切実に要求している。」
「現代修正主義を断固として反対することは、ベトナム労働党の国際主義的義務である」という『労働新聞』の記事。

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そんな「革命の状勢」の中、1964年6月19日に金正日は「党中央委員会で事業を始め」た。角のエアコンが設置された部屋が金正日の当初の執務室であったようだ。金正恩が、初めから言葉通りに「党中央」の部屋で執務を始めたのとは対照的だ。

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執務室の金正日。白黒動画ではあるが、60年代半ばの映画フィルムとしては非常に状態が良い。

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金正日の最初の労作か。『我が党を永遠に金日成同志の党として強化発展させよう』。画像の関係で判読できないが、本書の初版は1984年、画面に出ている緑の書籍は2004年の出版のようだ。

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そして、万寿台の丘に金日成銅像を建立する。金正恩が就任当初、金正日の銅像をあちこちに建立したのもお父さんをまねたのであろう。

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金正日はその後、何日も徹夜をして「労働階級の百年思想史を全面的に分析・総括」したと紹介される。金正恩は、こうした勉強をする余裕もないまま指導者になってしまった点に違いがある。

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続けて、次のような金正日の言葉が紹介される。
「我々がしなければならないことは、とても多いです。眠らずに働いても時間が足りません。今、首領様の偉大な革命事業を首領様のお名前と結びつけて科学的に正式化し、世の中に宣布する事業を確信性を持ってできるようになりました。我々は近い将来、偉大な首領様の革命思想、主体思想を金日成主義として正式化して世の中に宣布し、金日成主義の旗を時代の前面で掲げていくつもりです。 金正日」
この作業も金正恩は「金日成-金正日主義」や「金正日愛国主義」という言葉を創造することで、まねている。

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「金日成主義を宣言」する金正日。

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『全社会を金日成主義化するための党思想事業の当面するいくつかの課業について』

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「党中央委員会で事業を開始され、党内に隠れていた反党修正主義分子の策動を断固として暴露、粉砕された将軍様」

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張成沢が実際に何をしたのかはさておき、金正恩も実に「反党修正主義分子の策動を暴露、粉砕」している。その業績を宣伝するためにも、小物ではなく大物の張成沢がターゲットとされたのであろう。
そして、金正日は「党中央委員会第4期第15回全員会議で反党修正主義分子の策動が暴露・粉砕」し、「首領の唯一思想と唯一的領導体系を強固に打ち立て」た。下は「全員会議」について伝える『労働新聞』の記事。

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金正日『全党と全社会に唯一思想体系をさらに強固に打ち立てよう』

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金正恩もこの流れで、張成沢処刑後に「思想幹部会議」を開催するなど、「唯一的領導体系」を確立するための作業を行っている。
そして、「党の唯一思想体系を打ち立てる闘争で人民軍隊が先頭に足すように導いてくださりました」とナレーション。下は新聞『朝鮮人軍』に「党の唯一思想でさらに強固に武装し、党の軍事路線を徹底して貫徹しよう」という記事。戦車が写っているのは、トランジション部分をキャプチャしたため。

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ここから「先軍革命領導」が始まるわけであるが、金正日は「偉大な首領金日成同志を首班とする党中央委員会を体で死守しよう!」というスローガンを「人民軍隊が先頭に立って掲げていくように」したとナレーション。下は、スローガンが掲げられた建物。「革命史跡」なのだろうが、何に使われた建物かは分からない。

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金正恩の場合は、「党中央」ではなく「最高司令官を体で死守しよう」というスローガン(歌)をまず打ち出した。
「全社会の金日成主義化の要求に合致するよう、党組織思想事業を改善強化し、党の領導的役割を高めるための多くの不滅の古典的労作を発表された」とナレーション。

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金正日『全党に新たな党生活総括制度を打ち立てることについて』

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「朝鮮労働党党員証」

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「党員証」の中身。党員証の1枚1枚に金正日が「親筆(サイン)」をした。サインの位置や傾き方が違うので、誰が書いたかは別とし、手書きであることは間違いない。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
「親筆」をする金正日

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1974年10月9日、党中央委員会及び政務院責任幹部と道党委員会責任秘書の協議会にて「全党が動員され、70日戦闘を力強く展開しよう」と、経済建設に動員を掛ける。

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「党思想事業は、常に経済事業密接に結びつけられなければならず、思想事業の成果も経済建設の成果から現れなければなりません」と金正日。

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金正恩の経済建設のスローガンは、「馬息嶺速度創造」辺りからだと思うが、これも「70日戦闘」から来たアイディアなのかもしれない。「70日戦闘」は、思想と経済建設を無理矢理に「密接に結びつけ」たために、効率が非常に悪かったという話をどこかで読んだことがある。
全国各地の「革命戦跡地」を整備したり、金日成銅像を建立する。金正恩についていえば、「錦繍山太陽宮殿」に改装したり、全国各地に「太陽像(金日成と金正日のモザイク壁画)」を建立したのがこの事業に当たる。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
「第1回全国芸術人学習競演大会」

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「芸術人」がどんな「競演」をするのかと思いきや「問答式学習方法」の「競演」だったようだ。下は、「問答式学習方法」の「競演」をする「芸術人」。

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「問答式学習方法」という知らない言葉が出てきたので、Web「朝鮮語大辞典」で調べてみが、
「問答式学習方法:一定の問題を出し、それに基づきお互いに答える形式で進められる学習方法。偉大な首領金日成同志が抗日武装闘争時期に創造された戦闘的な学習形式を現実発展の要求に合うように継承発展させた革命的で戦闘的な学習方法である。」
と分かるような分からないような説明しか書かれていない。問題集を与えておきそれを暗記させ、お互いに問答させながら競わせるということなのだろうか。「党の革命戦士としてさらに強固に準備された」と言っているので思想学習なのだろうが、時期的には中国の文革期と重なるので、「毛沢東語録」を暗記させるやり方から得たアイディアなのであろう(北朝鮮は、文革期に中国から批判されてはいるのだが・・・)。
「首領様が抗日革命闘争時期に自ら創作された不滅の古典的名作を映画や歌曲、演劇にして、全社会の金日成主義化を力強く支えよう」と金正日は、芸術指導を積極的に行った。
『朝鮮芸術映画 血の海』

Source: KCTV, 2014/06/19放送
『朝鮮芸術映画 花を売る娘』

Source: KCTV, 2014/06/19放送
いずれも有名な北朝鮮映画である。金正恩は、映画指導ではなく「モランボン楽団」の創設で「芸術指導」を開始し、その総括が今年の「第9回全国芸術人大会」ということになる。
1974年5月7日「我が党の出版報道部門は、全社会の金日成主義化を支える威力のある思想的武器である」と「出版報道部門」を指導。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
つづく・・・・
<追記>
『労働新聞』のレイアウト

Source: KCTV, 2014/06/19放送
それをチェックする金正日

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「社説のタイトルから内容に至るまで細心に指導」したと、金正日が手を入れた部分を紹介している。

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『労働新聞』の印刷工場で紙面をチェックする金正恩。70年代後半と思われるが、この時、既に同新聞はカラー印刷されていたようだ。

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金正日が「宣伝・扇動」活動を指導していたことを紹介する映像であるが、下の写真の背景に写っているのは板門店から見える機井(キジョン)洞のように見える。というのは、このカットは川沿いの有刺鉄線柵を映してからカメラを回しているが、この川が臨津江のように見えるからである。70年代の映像を使っているので、機井洞だとしても建てられた国旗掲揚タワーはまだない。
「全党が群衆の中に入ろう!全党が宣伝員、扇動員になろう!」、「扇動」される農民

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臨津江(あるいはその支流)と軍事分解線か?「南朝鮮」との分解線で「宣伝・扇動」するというのは、象徴的である。

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金正日が指導したとされる各種経済建設関連スローガン
「速度戦」

Source: KCTV, 2014/06/19放送
「全撃戦」

Source: KCTV, 2014/06/19放送
「殲滅戦」

Source: KCTV, 2014/06/19放送
金正恩時代の「馬息嶺速度」、「朝鮮速度」もこれらのスローガンの流れを受けたものであろう。
1970年代の北朝鮮の工場(製鉄工場か?)。この時代の北朝鮮は、韓国よりも経済的にまだ優位であった。しかし、その後、こうした工場が改築もされないままそのまま使い続けら、老朽化しているのかもしれない。

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1980年10月10日に開催された「朝鮮労働党第6回大会」。「偉大な首領、偉大な領導者を高く頂き開催された党6回大会は、我が党を永遠に首領の党として強化・発展させる組織思想的な基礎が強固になり、党と革命の将来の運命を左右する主体革命偉業継承問題が輝かしく解決されたことを世界に誇示しました」とナレーション。
「朝鮮労働党第6回大会」。「全世界の労働者は団結せよ!」とスローガン。中東からの賓客と思われる白い服を着た人物など、外国人も数多く参席している。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
そして、正式に後継者指名された金正日

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80年代の北朝鮮建設現場や鉱山。稼働している重機やトラックの台数が今と比べても圧倒的に多い。最近は、このように多くの重機やトラックが動き回っている映像は流れない。その状況を肯定的に捉えるならば、「知識経済時代」になり必要性が減少したということなのだが、やはり80年代と比べると状況はまだ良くないのであろう。

Source: KCTV, 2014/06/19放送

Source: KCTV, 2014/06/19放送
「全党、全軍、全員を新たな『80年代速度』創造へと力強く導いてくださった偉大な将軍様」80年代に入り、金正日は経済部門の指導に力を入れたという説明である。

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「人民生活をさらに高めることについて 金正日」重工業部門の建設が一段落ついた80年代初頭、「人民生活の向上」をスローガンに軽工業部門にも力を入れ始めた。金正日曰く「我が党の活動の最高原則である人民生活の向上」のための「戦闘」は金正恩時代も続けられているが、質的に80年代と比較してどのように違ってきているのかに関心がある。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
商店で軽工業品をチェックする金正日。

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「社会主義国で革命が次々と挫折を経験した時期、我が党員は、如何なる政治風波が押し寄せてきても、心を一つにして将軍様だけに従う信念をさらに強く誓いました」とナレーション。下は「親愛なる指導者金正日同志に差し上げます」という手紙。

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それに対する金正日の「親筆」の返事、「偉大な主体思想の勝利のために同志たちと共に戦っていこう」と書かれている。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
金正日は「党細胞を強化することは、全党を強化するための第一歩である」といい、1991年5月に「第1回全国党細胞秘書講習会」を開催。金正恩も2013年2月に「朝鮮労働党第4回党細胞秘書大会」を開催している。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
「20世紀90年代。我が党の歴史でこれまでにない試練を勝ち抜いていかなければならなかった時期、革命の赤い旗を変わりなく高く掲げて守り、我が党を偉大な金日成同志の党としてさらに強化・発展させる堅い意思を宣言された偉大な金正日同志」とナレーション

Source: KCTV, 2014/06/19放送
「首領永世偉業」の契機となる「労作」、「朝鮮労働党は偉大な首領金日成同志の党である 金正日 (1995年10月2日)」

Source: KCTV, 2014/06/19放送
「1990年代中頃は、我が党と革命の前に試練と難関が積み重なった実に厳しい時期でした。帝国主義者共の奴隷となるのか、そうでなければ自主的近衛兵になるのかという革命の生死の分かれ目となった微妙な時期、死ぬか生きるかの決断の意志を抱かれ先軍の道に上がられた敬愛する将軍様」前戦から「南朝鮮」の軍事ポストを指さす「将軍様」

Source: KCTV, 2014/06/19放送
「南朝鮮」のポスト

Source: KCTV, 2014/06/19放送
「偉大な将軍様は、先軍政治を我が党の政治方式、革命領導方式として定立され、我が党を先軍革命の政治的参謀部、共同的力量を強化・発展させ、革命発展の新たな歴史的時代を開かれました」とナレーション。下は、『我が党の先軍政治は威力のある社会主義政治方式である 金正日 (2001年7月)』。ナレーションの時期とこの本の出版時期が随分ずれている。再版なのか、さもなければ2001年になって初めて公開されたのであろうか。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
金日成の死去が1994年7月であり、金正日はその後3年間喪に服して前面に現れなかったとされている。この当時の北朝鮮一次資料をきちんと調べてはいないが、日本で出版された権威ある著者による北朝鮮研究にはそのように書かれている。しかし、この映画の中では「喪」の話は一切出てこない。見ている限りでは、金日成死去後、直ぐに「首領永世偉業」に着手し、先軍革命の道に舵を切るというように描かれている。上の「労作」が2001年の出版であることもそれと関連しているのかも知れない。
「軍人に対する思想教養事業」に用いられるテキスト。「革命は信念だ」と書かれている。軍隊を前面に押し出して優遇する一方で、忠誠心を高めさせて金正日体制を強固にする事業も合わせて行われたようだ。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
上のテキストらしきものが置かれた軍部隊の学習室を視察する金正日。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
続けて、興味深い「労作」が出てくる。『全軍が革命の首脳部を決死擁護する今日の7連隊になろう (朝鮮人民軍指揮官と行った談話 1995年1月1日)』がそれであるが、一番上に「全軍を金日成-金正日主義化しよう!」というスローガンが記されている。単なる私の不勉強なのかもしれないが、「金日成-金正日主義」という用語は金正日死去後に登場した用語だと思っていた。ところが、実は金正日の在命中に父親と並列にして「金日成-金正日主義」とやっていたようだ。金正恩は、まだ「主義」や「思想」を発表していないが、それらを発表した暁には「金日成-金正日-金正恩主義」とでもするんであろうか。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
「呉仲洽7連隊称号争奪運動」を展開し、党中央への忠誠心を高めた。

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また、「先軍政治」とは「軍」を「民」より優先したのと同時に、「軍」を「民」に引き寄せることもやったようだ。金日成時代は、軍は軍事に専従していたが、金正日時代になると軍を積極的に「民」の建設事業に動員したようだ。
金正日は「人民軍隊は、党が一度課業を与えると山岳のように立ち上がり、無条件やり遂げる」と言い、「党と首領に対する絶対的な忠実性を持った我々の人民軍隊を先軍革命偉業遂行の斥候隊に」したとナレーション。
「敬愛する最高司令官同志の命令を貫徹するまでは祖国の青い空を見るのを止めよう!」というスローガン。描かれた男性は軍人である。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
そして、炭鉱かダム工事に動員された軍人

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そして、「人民軍隊の創造物」としてダムが紹介される。

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そして、金正日は「首領決死擁護精神、決死貫徹精神、英雄的犠牲精神を革命的軍人精神と命名し、その精神を全国が模範とするように」した。「軍」に「民」がやるべき事業をやらせておき、その「精神」を「民」にフィードバックするところなど実に巧妙である。「先軍政治」は「軍事優先で民を疎かにする」というコンテクストで捉えられることが多いが、その傾向があるにせよ、実は「軍」と「民」を融合させながら国家経済を発展させていく「政治」であったのではないかという気がする。下の「労作」は、『革命的軍人精神を手本に学ぶことについて 金正日 (朝鮮労働党中央委員会XX幹部とのした談話 1997年3月17日) 2001年出版』

Source: KCTV, 2014/06/19放送
「偉大な将軍様が抱かせてくださった革命的軍人精神。その不屈の精神力を高く発揮していく時、この世に克服することができない難関がないということを闘争の真理と心に刻み込みました」と、労働「闘争」をする朝鮮人民。「偉大な将軍様の6000里強行軍・・・我々の歩みを・・・・」というスローガンと労働者。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
「革命的軍人精神に基礎を置く軍隊と人民の思想と闘争気風を一致を実現させるように導かれ、我が党の隊伍は最も戦闘力がある必勝不敗の革命隊伍へと強化された」とナレーション。「千万軍民」という用語がどの時代から使われていたのかは分からないが、上記のとおり実に巧妙な「軍」と「民」の活用である。下の写真などそれを象徴するのもである。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
もちろん、「革命的軍人精神」というスローガンを使って、「苦難の行軍」を朝鮮人民に強いたという側面もある。例えば、食料不足の影響が深刻であった慈江道江界市の人民を称えた「江界精神」という言葉がそれに当たろう。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
『党の提示した先軍時代の経済建設路線を徹底して貫徹しよう 金正日 (党、国家、経済機関の責任幹部と行った談話、2003年8月28日)』

Source: KCTV, 2014/06/19放送
上の「労作」に続いて出てくる指導風景。2003年頃の金正日だろうか。説明はないが、触っている白いものは「ビナロン」のように見える。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
「偉大な生涯の最後の瞬間まで超人間的な精力で現地指導の道を歩み続け、我々の軍隊と人民の大高調進軍を勝利へと導いて下さった父なる将軍様」とナレーション。下は、煕川1号発電所建設現場での現地指導の様子。2008年に脳卒中で倒れた後の映像で左手が不自由になっているようだ。金正日の「生涯の最後の時期」のスローガンとして「煕川速度創造」と盛んにいっていたのを思い出した。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
「絶世の愛国者、偉大な金正日将軍様の不滅の革命業績がもたらした輝かしい結実です」とナレーション。「銀河3-1」号ロケットの発射であろうか。この発射までは、「将軍様の不滅の革命業績がもたらした輝かしい結実」ということなのだろう。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
世界の指導者が敬慕するとして紹介された写真の中から何枚か紹介しておく。
江沢民と握手

Source: KCTV, 2014/06/19放送
プーチンと握手

Source: KCTV, 2014/06/19放送
金正恩が未だにできていないのは、こうした外交である。米国のバスケットボール選手ロッドマンとは会っているものの、肝心の中国、ロシアの指導者との会見は実現していない。7月初旬の習近平韓国訪問も決まっており、これに北朝鮮はどう反応するのか。中韓が対日政策、特に対北朝鮮政策で結束を強めれば、北朝鮮は中国への不満から日本との関係を強めようという動きに出る可能性がある。特に、拉致問題を巡る日朝交渉が続いている中、状勢が急展開して金正恩が初めて握手をする外国首脳が日本の首相となる可能性さえも決して排除することはできない。
最後に再び金正恩の言葉「朝鮮労働党総秘書であられる将軍様の慈悲深いお姿は我々党員と人民の心の中に永遠にあり続けます 金正恩」が紹介される。上記の「首領永生偉業」の「将軍様」版である。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
そして、金日成銅像の横に金正日銅像が建つ。

Source: KCTV, 2014/06/19放送
この「朝鮮記録映画」では、金正日の軍事関連の指導や業績は紹介されることなく、思想と経済関連の業績が紹介された。「絶世の愛国者金正日将軍」のこれまでに発表されたシリーズはきちんと見ていないので既に以前に紹介されているのかどうか分からないが、今回は「党事業開始50周年」の記念版なので思想・経済のみを紹介しているのであろう。ともあれ、金正日の50年がコンパクトにまとめられた興味深い「朝鮮記録映画」であり、これまで気付いていなかった「先軍政治」の別の側面を垣間見ることもできた。