「朝鮮民主主義人民共和国国防委員会政治局スポークスマン談話」:朴槿恵名指し非難 大統領就任後初? (2013年5月25日 「朝鮮中央通信」)
「朝鮮中央通信」が朴槿恵さんを「傀儡大統領朴槿恵」と名指しで非難する「国防委員会政治局スポークスマン談話」を伝えた。朴槿恵さんが大統領候補の時に北朝鮮との関係、記憶が正しければ「お父さん(朴正煕)の独裁は北朝鮮が南進戦争の準備を進めている中である程度やむを得ないことであった」というような発言をして北朝鮮を怒らせ、名指しで非難を受けたことはあったが、大統領就任後は今回が初めてのはずである。これまでは、「スカートの風」、「青瓦台の主人」という言葉を使って彼女を非難しているだけであった。
今回、北朝鮮が名指しで彼女を非難しだしたのは、「談話」によると米国の「戦略問題研究所の所長」との会見の席で「経済建設と核武力建設の並進路線というのは新たな『賭博』を企図」と発言したからである。(コメントでご指摘を頂き「挑発」を「賭博」と訂正した。それにしても「賭博」とは・・・)
「談話」では「そもそも知らないのであれば、知ったかぶりをしてはならず、口を開くべきではない」と非難し、「口を開けば、予想できない惨禍を引き起こすことになる」と警告している。
そして、「経済建設と核武力建設の並進路線についていえば、60年代の厳しい環境に対処し、我々が出した経済、国防建設並進路線を米国により造り出された戦争前夜の現情勢の要求に合うように深化発展させた新たな高い段階の偉大な継承である」とし、「並進路線」は今更始まったものではないという事実も朴槿恵さんが知らないと述べている。
その上で、「大統領のふりをするのであれば、当然、相手の政治的意図についてある程度吟味することも心得ていなければならず、スカートをズボンに履き替え、私服を軍服に着替えることを学ぶ前に、相手の軍事的準備がどのような状態であるかから把握することから始めなければならない」と、彼女が「対決」する相手実力を見極める必要があると警告している。「スカートをズボンに履き替え」というのは、明らかに女性大統領を意識しての表現だ。
「談話」は、「我々は、朴槿恵をはじめとした南朝鮮の現傀儡執権者の今後の動きを注視する」と締めくくっている。
今回、名指しでの非難はしたものの、未だに李明博非難のレベルと比較すれば、低い段階である。大統領候補の時に使った「あばずれ、くそ女」に値する表現は使っておらず、呼び捨てと「傀儡大統領」だけである。韓国の歴代大統領で彼らが「傀儡大統領」と呼ばなかったのは、恐らく金大中・盧武鉉大統領だけであろう(当時の報道を全て確認したわけではないのだが・・・)。朴槿恵さんが「経済・核並進路線」を非難したのは今回が初めてではないが、何が北朝鮮を苛立たせたのであろうか。
実は、少し前に書いた「聯合通信」→「新華社」→Chinadaily.comで流れてきた「北朝鮮、6.15関連行事共同開催」について調べてみたのだが、どうやら北朝鮮は「朝鮮中央通信」でも「労働新聞」でもこの事実について報じていない。私が読んだChinadaily.comの記事では、韓国・統一部関係者の発言も伝えられているので、こうした提案があったことは事実だと思うが、私の調査不足でなければ、北朝鮮メディアがまったく伝えていないのはなぜであろうか。
今回の朴槿恵名指し批判と結びつけて考えると、韓国側がそれに肯定的な反応を見せないことへの苛立ちであろうか。
『中央日報日本語版』、「【取材日記】開城工業団地の門を閉じて6・15行事を共にしようという北朝鮮」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130524-00000022-cnippou-kr
<追記: 5月27日>
昨日「朝鮮中央TV」で放送された「<座談会>歴史は告発する、光州を血の海にした殺人鬼たちの罪悪を」という番組を見た。この番組は、光州事件が発生した5月18日前後から繰り返し放送されているようである。番組の内容はなぜ光州で「人民蜂起」が起こったのか、そしていかに悪辣・野蛮に「全斗煥傀儡ファッショ一味」がそれを弾圧したのかという話を韓国から北朝鮮に渡った2人から聞くというものである。
この番組は、「今年は光州事件から33周年」と言っているので、今年制作されたものであろう。では、なぜこの番組について朴槿恵非難関連記事の「追記」としかたというと、「朴正煕」という名前が全て編集でカットされているからである。番組は、朴正煕が暗殺される辺りから話が始まるのだが、インタビューに答える2人は「軍事ファッショ独裁者朴正煕」などと言っていたはずである。ところが、数回ある彼の名前が入るべき部分でことごとく彼の名前は消されている。音声を聞いていると「軍事ファッショ独裁(プツ、切れている)が」という感じになっている。
恐らく、「朴正煕」の名前をカットしているのは、朴槿恵さんに配慮したものであろう。北朝鮮らしからぬ配慮といえば配慮であるが、その北朝鮮が朴槿恵名指し非難を始めたというのは、やはり相当に意味があることではないだろうか。
米国シンクタンクの所長とのインタビューで彼女が何を言ったのかは確認していない。後で映像メディアか文字メディアで彼女の言葉を調べてみようと思うが、「並進路線は駄目」という以上に北朝鮮を怒らせることを言ったのではないだろうか。もしかすると、金正恩さんを名指しで非難したのかも知れない。
「中央階級教養館」にて撮影。中央が「朝鮮中央TV」にしばしば登場する解説委員。両横が北朝鮮に渡った韓国人、

Source: KCTV, 2013年5月26日放送
<追記2: 5月27日>
予想はしていたのだが、朴槿恵さんと会ったのはCSIS所長であった。青瓦台HPには会ったときの写真などは掲載されているものの、朴槿恵さんが金正恩さんを名指しにしたり「賭博」と発言していることは掲載されていない。しかし、韓国メディアを見ると彼女が「金正恩委員長が継続的に朝鮮半島の緊張を高める賭博をし、経済発展と核開発を同時に行うという新たな賭博をしようとしている」と語ったと伝えている。
『chosun.com』、「朴대통령 "김정은 '도박' 시도, 결코 성공 못해"」、http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2013/05/23/2013052302223.html?news_Head1
彼女が何語で語ったのかは分からないが、金正恩さんを呼び捨てにした訳ではなさそうだ。いずれにせよ、『朝鮮日報』が文言どおりを伝えているとすれば、「賭博」と2回発言しており、これが北朝鮮を怒らせたのであろう。私が初め間違えて書いたように「挑発」とでも言っておけば、毎度のことなので北朝鮮はこれほど怒らなかったのかもしれない。憲法にまで定めた「並進路線」を「賭博」と言われたので激怒したということのようだ。
また、「私服を軍服に着替え」を示すような写真も青瓦台HPに出ていたので紹介しておく。
韓国型機動ヘリ「スリオン」戦力化記念行事(5月22日)

Source: 青瓦台HP、http://www.president.go.kr/kr/president/photo/photo_list.php?req_uno=153#photoViewT
今回、北朝鮮が名指しで彼女を非難しだしたのは、「談話」によると米国の「戦略問題研究所の所長」との会見の席で「経済建設と核武力建設の並進路線というのは新たな『賭博』を企図」と発言したからである。(コメントでご指摘を頂き「挑発」を「賭博」と訂正した。それにしても「賭博」とは・・・)
「談話」では「そもそも知らないのであれば、知ったかぶりをしてはならず、口を開くべきではない」と非難し、「口を開けば、予想できない惨禍を引き起こすことになる」と警告している。
そして、「経済建設と核武力建設の並進路線についていえば、60年代の厳しい環境に対処し、我々が出した経済、国防建設並進路線を米国により造り出された戦争前夜の現情勢の要求に合うように深化発展させた新たな高い段階の偉大な継承である」とし、「並進路線」は今更始まったものではないという事実も朴槿恵さんが知らないと述べている。
その上で、「大統領のふりをするのであれば、当然、相手の政治的意図についてある程度吟味することも心得ていなければならず、スカートをズボンに履き替え、私服を軍服に着替えることを学ぶ前に、相手の軍事的準備がどのような状態であるかから把握することから始めなければならない」と、彼女が「対決」する相手実力を見極める必要があると警告している。「スカートをズボンに履き替え」というのは、明らかに女性大統領を意識しての表現だ。
「談話」は、「我々は、朴槿恵をはじめとした南朝鮮の現傀儡執権者の今後の動きを注視する」と締めくくっている。
今回、名指しでの非難はしたものの、未だに李明博非難のレベルと比較すれば、低い段階である。大統領候補の時に使った「あばずれ、くそ女」に値する表現は使っておらず、呼び捨てと「傀儡大統領」だけである。韓国の歴代大統領で彼らが「傀儡大統領」と呼ばなかったのは、恐らく金大中・盧武鉉大統領だけであろう(当時の報道を全て確認したわけではないのだが・・・)。朴槿恵さんが「経済・核並進路線」を非難したのは今回が初めてではないが、何が北朝鮮を苛立たせたのであろうか。
実は、少し前に書いた「聯合通信」→「新華社」→Chinadaily.comで流れてきた「北朝鮮、6.15関連行事共同開催」について調べてみたのだが、どうやら北朝鮮は「朝鮮中央通信」でも「労働新聞」でもこの事実について報じていない。私が読んだChinadaily.comの記事では、韓国・統一部関係者の発言も伝えられているので、こうした提案があったことは事実だと思うが、私の調査不足でなければ、北朝鮮メディアがまったく伝えていないのはなぜであろうか。
今回の朴槿恵名指し批判と結びつけて考えると、韓国側がそれに肯定的な反応を見せないことへの苛立ちであろうか。
『中央日報日本語版』、「【取材日記】開城工業団地の門を閉じて6・15行事を共にしようという北朝鮮」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130524-00000022-cnippou-kr
<追記: 5月27日>
昨日「朝鮮中央TV」で放送された「<座談会>歴史は告発する、光州を血の海にした殺人鬼たちの罪悪を」という番組を見た。この番組は、光州事件が発生した5月18日前後から繰り返し放送されているようである。番組の内容はなぜ光州で「人民蜂起」が起こったのか、そしていかに悪辣・野蛮に「全斗煥傀儡ファッショ一味」がそれを弾圧したのかという話を韓国から北朝鮮に渡った2人から聞くというものである。
この番組は、「今年は光州事件から33周年」と言っているので、今年制作されたものであろう。では、なぜこの番組について朴槿恵非難関連記事の「追記」としかたというと、「朴正煕」という名前が全て編集でカットされているからである。番組は、朴正煕が暗殺される辺りから話が始まるのだが、インタビューに答える2人は「軍事ファッショ独裁者朴正煕」などと言っていたはずである。ところが、数回ある彼の名前が入るべき部分でことごとく彼の名前は消されている。音声を聞いていると「軍事ファッショ独裁(プツ、切れている)が」という感じになっている。
恐らく、「朴正煕」の名前をカットしているのは、朴槿恵さんに配慮したものであろう。北朝鮮らしからぬ配慮といえば配慮であるが、その北朝鮮が朴槿恵名指し非難を始めたというのは、やはり相当に意味があることではないだろうか。
米国シンクタンクの所長とのインタビューで彼女が何を言ったのかは確認していない。後で映像メディアか文字メディアで彼女の言葉を調べてみようと思うが、「並進路線は駄目」という以上に北朝鮮を怒らせることを言ったのではないだろうか。もしかすると、金正恩さんを名指しで非難したのかも知れない。
「中央階級教養館」にて撮影。中央が「朝鮮中央TV」にしばしば登場する解説委員。両横が北朝鮮に渡った韓国人、

Source: KCTV, 2013年5月26日放送
<追記2: 5月27日>
予想はしていたのだが、朴槿恵さんと会ったのはCSIS所長であった。青瓦台HPには会ったときの写真などは掲載されているものの、朴槿恵さんが金正恩さんを名指しにしたり「賭博」と発言していることは掲載されていない。しかし、韓国メディアを見ると彼女が「金正恩委員長が継続的に朝鮮半島の緊張を高める賭博をし、経済発展と核開発を同時に行うという新たな賭博をしようとしている」と語ったと伝えている。
『chosun.com』、「朴대통령 "김정은 '도박' 시도, 결코 성공 못해"」、http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2013/05/23/2013052302223.html?news_Head1
彼女が何語で語ったのかは分からないが、金正恩さんを呼び捨てにした訳ではなさそうだ。いずれにせよ、『朝鮮日報』が文言どおりを伝えているとすれば、「賭博」と2回発言しており、これが北朝鮮を怒らせたのであろう。私が初め間違えて書いたように「挑発」とでも言っておけば、毎度のことなので北朝鮮はこれほど怒らなかったのかもしれない。憲法にまで定めた「並進路線」を「賭博」と言われたので激怒したということのようだ。
また、「私服を軍服に着替え」を示すような写真も青瓦台HPに出ていたので紹介しておく。
韓国型機動ヘリ「スリオン」戦力化記念行事(5月22日)

Source: 青瓦台HP、http://www.president.go.kr/kr/president/photo/photo_list.php?req_uno=153#photoViewT