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    「朝鮮半島で緊張を激化させる挑発者は一体誰なのか 米国と傀儡一味が騒ぎ立てる<北挑発論>の正体を暴く」(2012年6月29日 「労働新聞」)

    こう題する長文の論評が「労働新聞」に出た。この中に興味深い一文があったので、紹介しておくことにする。

    「労働新聞」:
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-06-29-0005&chAction=L

    この論評では、タイトルのとおり朝鮮半島情勢を緊張させているのは、北朝鮮ではなく、米国と韓国であるということを色々と書いているが、その中で「傀儡一味が口を開けば騒ぎ立てる2010年の艦船沈没事件とヨンピョン島砲撃事件も、米国との結託の下、彼らが謀略して先に火を付け、殴り返された事件であることは世間の誰もが知っている事実である」としている。ここでいう「2010年の艦船沈没事件」とは、いうまでもなく「天安号」の沈没事件のことである。ヨンピョン島砲撃事件は、北朝鮮のいうとおり、海上の南北境界線であるNLL付近で行った演習に対する報復で、そのことは北朝鮮も認めている。しかし、同海域で発生した「天安号」事件については、米韓の自作劇であるとし、北朝鮮の関与を認めていない。しかし、この論評の記述からすると両事件とも、米韓の挑発に対して北朝鮮が報復したものであると読み取れる。

    敏感な事件であるので、論評委員が間違ったことや曖昧なことを書くとは考えられないのだが、北朝鮮は主張を変えたのであろうか。

    私の理解が誤っているのかもしれないので、原文を掲げておく。

    「괴뢰패당이 입만 벌리면 떠드는 2010년의 함선침몰사건과 연평도포격사건도 미국과의 결탁밑에 저들이 모략하고 선불질을 하였다가 얻어맞은 사건이라는것은 세상이 다 아는 사실이다.」

    「母なる祖国の懐に抱かれ再び生まれ変わった、南朝鮮傀儡一味に誘引された女性、国内外記者と会見」(2012年6月29日 「労働新聞」)

    6月29日に「朝鮮中央通信」で同様の動画(約8分)が配信され見たのだが、録音状態があまり良くなかったので、この女性の発言がうまく聞き取れなかった。今日再びチャレンジしようと思っていたところ、インタビューの内容が掲載された記事が同日の「労働新聞」に掲載されているのを見つけた。動画の発言と「労働新聞」の記事との重ね合わせはしていないが、そもそもこの女性は机の上に置かれた紙を見ながら話をしているので、事前にチェックされた内容のはずである。だとすれば、「労働新聞」にはそれに基づいた記事が掲載されるはずなので、大きな違いはないはずだ。

    「労働新聞」:
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-06-29-0035

    記者会見場には、北朝鮮メディアの記者や在外北朝鮮系メディアの記者の他に、中国、ロシア、米国、日本の記者が集まったとのことである。動画で確認できたのはロシア人の記者で、ロシア語で質問をしている。その他にもバッジを付けていない東洋人の姿も見られたので、彼らが中国や日本の記者であろう。動画には、ロシア人以外の白人系の人は映っていなかったので、米国(平壌に支局を置くAP通信であろう)からは東洋人系の記者が派遣されたのであろう。APの記事はまだ確認していない。

    動画ではカットされており8分のインタビューであるが、「労働新聞」の記事はかなり長い。脱北者(北朝鮮に戻っていない)による脱北経路の説明は日本のメディアでもしばしば紹介されるが、北朝鮮による説明はこれまでになかったのではないだろうか。それを肯定的に紹介するのか否定的に紹介するのかの違いこそあれ、、重複する部分もありなかなか興味深い。そんなこともあるので、大変だが、全訳をしておく(誤訳御免)。

    朝鮮中央通信社記者:傀儡共の誘因戦術にひっかかり、南朝鮮に連れて行かれたということだが、それについて具体的に話して欲しい。

    答え:敵の誘いに引っかかり、犯罪の道に進むことになったのは、全て私の思想精神状態が誤っていたことに端を発っしている。その時、私の頭の中では、母なる祖国と共に生きながら強盛国家建設にこの身を捧げることに生き甲斐を見いだすという考えよりも、自分だけを考える利己主義思想が大きく支配していた。結局、目前の困難を考え、後には南朝鮮にいる父と中国で会い、金をもらおうという妄想まで抱くようになった。そして、2006年3月29日夜、不法越境をした。

    父に会い金をもらうという愚かな考えを抱き、国外に踏み出した歩みが国に対してどれほど大きな罪を犯す道なのかが全く分からなかった。中国東北地方に至った私は、胸を締め付けられながら寝るところを探してあちこち彷徨った後、とある煉瓦造りの家でドアを開けてくれたので、その家に入った。その家の主人は、朝鮮語を話すことができたが、事情を聞いて息子と何か話し合った後で、私をかくまってくれた。

    ある日、家の主人が、「ある人から電話がかかってくるが、尋ねられることに答え、他のことは一切話すな」と言った。その後、電話がかかってきて、電話をしてきた人は私の名前と生年月日、兄弟の関係を聞いて電話を切った。そして、3、4日が過ぎ、家の主人が私に「お父さんに会うためには、船に乗って青島に行かなければならない」言い、私を車に乗せて大連のある場所に連れて行った。

    そこで、約1週間滞在していたのだが、ある日「社長」という人が来て、私の写真を撮ったのであった。後で知った事実であるが、その人は傀儡共に買収され、北朝鮮人を南朝鮮に無理矢理連れて行くことを業とする奴であった。

    2日後、その人が現れ、「お父さんに会いに行こう」と言いながら、(私を)車に乗せてどこかに行ったであった。こうして、私は、傀儡共の脚本に従い、いろいろな奴に手渡されたのであった。

    6月28日午後4時頃、丹東港で一人の女性と共に「青島に行く船」に乗せられた。次の日朝9時頃、船が停泊すると一緒に船に乗ったその女性は、私の偽造証明書を海に投げ捨て、船から下りた。そして、ある建物の1階にあるトイレの前に私を立たせて「誰かが来るから(待っていろ)」と言って行ってしまった。

    続いて、ある男が建物の3階に(私を)連れて行った。ドアを開いて部屋に入ると、面長の威張った人が机の上に置かれている紙の箱から何か飲むものを取り出し「真実だけを話させる薬だ」と瓶をこすりながら、「ここが南の地」だと言った。その時になって、私は南朝鮮に足を踏み入れたことを知った。

    私は「青島に行く人なのだが、間違った船に乗ってしまったようだ。その船に乗って直ぐに帰る」と大きな声で訴えた。しかし、奴らは、泣きながら足をばたばたさせる私に「ここは、行きたければ思い通りに行けるところではない」と言いながら、ついには(私を)車に乗せてどこかに連れて行った。

    私は、奴らに「父にお会うとして、南に間違ってきたのだから、早く帰してくれ」、そして「父に合わせてくれ」と強く求めたが、聞こうともしなかった。奴らは、共和国(北朝鮮)での経歴と生活経緯などを尋ね、それについて書かせて、同情をしたり脅したりしながら、私を嘲りながら侮辱をした。

    ある時は、「探検室」と書かれた部屋に私をひっぱていき、手足と胸に電器コードを貼り付けて電気を流しながら、尋ねることに正直に答えろと脅迫した。今でも恐ろしい恐怖と圧迫の中で苦しんだことを考えると、夢にうなされて目が覚めてしまう。

    こうして、20日ほど取り調べを受けた後で、やっと奴らに連れられて父に会いに行った。しかし、病院のベッドに横たわる父は、脳手術を受け、見ることも聞くこともできない植物人間になった状態であった。その時になって初めて、私は奴らに騙されたということを悟った。父は、私の顔も見られないまま、死んでしまった。

    今も我が共和国周辺では、傀儡情報部員から金をもらい、北朝鮮住民を誘拐する奴が罠を仕掛けて、獲物がかかるのを待っている。

    総連朝鮮新報記者:朴チョンスクさんは、南朝鮮に連れて行かれて6年間そこで生活したわけだが、その間の暮らしを話して欲しい。

    答え:父は死んでしまったが、北朝鮮出身の兄弟もいたし親戚もいたので、彼らの助けを受けながら何とか生活できるだろうと考えた。しかし、それは甘い考えだった。北朝鮮出身の兄弟たちは、会っても口だけで、特に自分たちに被害が及ぶのではないかと、いつも私を警戒している様子だった。しかたなく、80才の従兄弟の家を訪ね、病んでいる兄の看病をしながら暮らしたが、親戚の家に居候するということは、口ほどに簡単なことではなかった。

    経済的な負担のためにこれ以上いられなくなり、従兄弟が紹介してくれたある老人の家で介護の仕事をした。後には、動くこともできず、トイレにも行くことができない90才の老人の家で、彼の面倒を見た。まさに、金で売られた可憐な奴隷と違いなかった。

    羞恥心と侮辱に耐えながら、地下鉄駅やマンションの廊下、エレベータの掃除など、できる仕事であれば何でもした。こうして何とか暮らしていたが、それに加えて、一挙一投足に対する監視や電話の盗聴がしつこく続き、恐怖と不安、焦燥感の中で生きなければならなかった。

    ある時、李ウォンジュという女性の紹介で工業燃料を生産するある会社に行ったのだが、社長に騙された。悔しくて毎日会社行ったが、馬鹿にされるだけであった。そのことばかり考えていたので、自分の体を支えることができず、地下鉄の階段から転げ落ちて膝に怪我をした。しかし、金がなく怪我した足の治療を受けることができず、今でもうまく歩くことができない。

    南朝鮮は、本当に腐って病んだ社会だ。通りに出ても、あちこちが人々を誘惑する言葉と広告のバトルで、何が何だか分からない。テレビを付けても、全て低俗で退廃的なので、見ていると頭が痛くなり消してしまった。

    聞こえてくる話も「貴金属店の店主に薬を入れた酒を飲ませて、金品を奪った」だの「医者が患者に詐欺行為をした」だの「父親を法廷に呼び出し、土地と財産を取り上げた」だの「愛人を水に沈めて殺し、保険金をだまし取った」だの「10代の子供が火を付けて無理心中した」といったたぐいの話ばかりだ。

    険悪な世の中で人々は、何をしてでも生きていくための金を作らなければならなかった。昨年10月のある日、夜中に突然息が苦しくなり警察病院に行ったことがある。医者という奴は、「命が危ないので早く保護者に連絡しろ」と言った。保護者はいないというと、それなら入院することはできないと言い、家に帰されたのであった。私は息ができない上に、夜中に戻っても、また病院に来ることになるので、病院の廊下に少し座って落ち着かせてくれと哀願した。しかし、そいつは、頑として聞かず、私を病院の外につまみ出すか、それが嫌なら早く保護者に連絡しろと怒鳴るのであった。怒りがこみ上げ、「もういい」と大声を出そうとしたときに気を失った。医者が患者の保護者を求めるのは、私が死んだ場合の治療費を受け取るためであった。我が共和国では想像もできないことである。

    傀儡当局者たちは、誰でも一生懸命働けば良い暮らしができる社会、正義と民主主義が川の水のごとく流れる社会と口癖のようにまくし立てている。しかし、それは全ての人々を騙すための詭弁である。仕事がなく、失業者が溢れ、社会悪が蔓延し、金が全てを支配し、人間の情を見いだすことができない社会、人々を精神文化的に堕落させる腐って病んだ社会がまさに南朝鮮である。

    ロシア・イタルタス通信記者:一部の人々が、朴チョンスクさんのように南朝鮮に行くのだが、彼らの生活状況や実態がどうなのか話して欲しい。

    答え:南朝鮮の傀儡共は、我が共和国で暮らして、南朝鮮に行った人々を「脱北者」と呼んでいる。その中には、祖国と人民を裏切り、逃亡した反逆者もいるが、奴らが言う「脱北者」は、私のように一時的な生活難や親戚訪問、仕事の関係などの理由で中国をはじめとした周辺国家に行き、傀儡共の誘因、拉致、買収などに引っかかり南朝鮮に連れて行かれた人々である。彼らは、南朝鮮の地に足を付けると直ぐに、傀儡情報院に連れて行かれ、重罪人扱いを受ける。初めの10日間余りは、独房に入れられ、外部と完全に遮断された状態で、一言も話せない状態で人権を無残に蹂躙される。そうでなければ、昨年、南朝鮮の保守系メディアが「脱北者」の独房を問題視する記事を書かなかったであろう。

    審問を受ける期間、彼らは監視者の過酷で冷たい待遇の下で、トイレさえ満足に使わせてもらえず、女性の場合は、取調官共の性的なおもちゃにされてしまう。

    こうして、一月あるいはそれ以上、傀儡情報院で全ての精神・肉体的苦痛を受けて出てくると、「ハナ院」というところに移されるが、そこもまた監獄と変わらない。「ハナ院」は、「脱北者」に「教育」をするというところであるが、朝5時に教育に連れて行かれ、終日、反共思想を吹き込まれ、資本主義社会の腐った思想文化と弱肉強食の法則を注入される。こうしたうんざりするような場所で3ヶ月間担当官の横暴な圧迫と統制、四方に設置されたカメラの監視の中で外出、面会、電話もできない。

    こうして、奴らの執拗な検討と「教育」を終えると、社会に投げ出されるのであるが、この時から嘲笑と蔑視、羞恥と冒涜を受けながら、熾烈な生存競争の中で生き残らなければならない。

    「脱北者」に与えられる仕事といえば、汚物清掃、皿洗い、身の回りの世話など、誰もやりたがらない最も卑賤でつらい仕事だけである。女性の場合、風俗店の間で売買されたり、淫乱画像撮影に出演させられるなど、どん底に落ちてしまう。

    特に、彼らの「住民登録証」には、別途の番号が記載されており、どこに行っても無視されてしまう。

    激しい生活難と陰のようにつきまとう社会的な冷遇や疎外で、彼らは精神的に不安定になったり慢性的な疲労感などで様々の病気に苦しんでいる。

    何とか職に就いても、また職を失うのではないかと日々心配しながら、ありとあらゆるつらい仕事をさせられながら、病気になっても金がないので十分な治療受けられず死ぬ以外の道はない。そのため、皆堕落して麻薬や詐欺、性売買などの犯罪の道に陥る。

    出版物などの資料によれば、南朝鮮が世界的に自殺率が1位で、その中でも「脱北者」の自殺率はその他の人の5倍に達する。金オクランという若い女性は、私に「南朝鮮社会に幻滅を感じる。共和国に帰る決心をした」と言いながら、費用を調達するために、ある風俗店でありとあらゆる侮辱と恥辱を受けながら働いた。しかし、金を受け取ることができなかったので、絶望して自殺してしまった。

    現在、「脱北者」は、一生懸命働けば何とかなるだろうという希望を持って努力しているが、どんどん困難になる悲惨な生活状況を嘆き、後で後悔をしている。そして、名節や誕生日は、故郷を懐かしみ、祖国を忘れることができずに涙の日々を送っている。今、彼らは乱れた南朝鮮社会を呪い、自身を恨み、共和国に戻ることを切実に希望している。しかし、自身が国に対し犯した罪のせいで、その決心をできずにおり、監視と統制が陰ようにつきまとうので、どうもしようがなくなっている。

    私は、この機会に彼らに言いたい。本意であれ本意でなかれ、母なる祖国を離れた人々は、今でも人間らしく生きようとするのであれば、乱れた南朝鮮社会を蹴り飛ばし、共和国の懐に躊躇なく帰ってこなければならない、と。母なる祖国は、私のように過ちを心から反省し、共和国の懐に戻ってくる人々に対しては、寛大に容赦し、暖かく抱いてくれる。

    平壌タイムス記者:今、傀儡一味が「脱北者」を通じた反共和国謀略策動に狂奔しているが、これについて南朝鮮で直接見聞きしたり、経験した事実があれば話して欲しい。

    答え:私が南朝鮮にいるとき、傀儡政府と国会、メディアなどからいつも聞こえてくる話は、「脱北者」問題だの「北人権」問題だのということだった。今、傀儡一味は「北人権」騒ぎに「脱北者」を利用しているが、傀儡共が取り上げる人々は、我が制度に対して恨みを抱いていたり、共和国で犯罪を犯して逃げ出した汚い人間の屑共である。このような醜い人間の屑は、傀儡保守一味の庇護を受けながら、僅かな金を求めて、反共和国対決に狂奔している。

    今、傀儡一味は反共和国対決宣伝のための手段と方法を選ばない。「赤十字団体」とか「ボランティア」とかいう名目で「脱北者」に金を与えながら、我が共和国をからかい、南朝鮮社会を美化粉飾するありとあらゆる虚偽とたちの悪い話を広げたり、スローガンを叫びながらデモまで主導している。嘘で反共和国対決を扇動するので、行くのを嫌がり、乱闘劇が展開されることが多く、金で誘うという方法を考え出したのである。

    いつだったか、傀儡メディアで「脱北者」が中国に行き、北に捕まった大騒ぎしたことがあった。後で分かったことだが、逆賊一味が反共和国謀略宣伝のために南朝鮮でもう生活することができずに海を越えていったり、既に死んだ人の名前まで利用して作り上げた話であった。

    人々にどうやって南朝鮮に来たのか聞くと、飲食店で会って大金と高級品をくれる人たちに誘われて来たという人、酒に酔ってトイレに入ったら刃物で脅されて連れてこられた人、女性は誘惑に騙されて来た人など様々である。

    本当の人権蹂躙の親玉は、他でもない李明博一味である。

    今日、傀儡一味が「脱北者」問題について騒ぎ続け、汚い人間の屑共を使って我が共和国のイメージを引きずり下ろそうともがいているが、これこそまったく意味のないことである。

    中国・新華社通信記者:どうして共和国へ戻ってきたのかについて話して欲しい。

    答え:もともと、私は中国で父と会い、助けを得た後で再び共和国に戻る決心をしていた。しかし、その愚かな打算が傀儡情報員の魔手にかかり、水泡のように消えてしまったが、南朝鮮に連れて行かれている間、共和国に対する思い、祖国に帰ろうとする思いを忘れたことはなかった。そして、その目的を達成しようと数えられないほどの努力をしたが、ばれると困るので誰かに話をすることもできず、また金も必要だった。祖国に帰りたかったが、あまりにも漠然とした考えで、絶望と虚無感に陥り憂鬱な日々を送っていた。

    そうな日々を送っていた昨年8月、テレビの画面でロシア連邦についての歴史的な訪問をされた偉大な金正日将軍様の尊い映像を見た。人民の幸福のためにお疲れになったお体も気にされず、シベリヤ、極東地域にまで行かれた父なる将軍様のお姿を拝見し、祖国を捨てて汚いどぶの中で彷徨う自身を恨んだ。

    複雑な私の家庭を処罰することなく、70回目の誕生日を迎える母に誕生日賞も与えて下さり、子供を平壌音楽舞踊大学(当時)を卒業させて下さい、教壇に立たさせて下さり、兄弟を過分に評価して下さった将軍様の恩恵に報いることができない辛さ、私は今、どこに来て何をしているのかという考えで、心臓が張り裂けそうになった。

    決断して行動できない自分を叱責し、例え死んでも祖国に帰らなければならないという決心を固くした。そして昨年12月、我が人民に良い生活をさせようとご苦労されていた偉大な将軍様が野戦列車であまりにも意外にお亡くなりなったという青天の霹靂のような悲報に接し、祖国の空を見上げながら泣いた。将軍様の元に戻り、土下座をして誤ろうと思ったのに、どうしたことか。死んでも祖国に戻り、その地に埋められたい。私の全ての精神は、共和国へ向かい、これ以上怖いものはなかった。

    私は、傀儡情報員の監視をかいくぐり、恨めしい南朝鮮の地を離れ、夢にも見た母なる祖国、共和国の懐に再び抱かれた。

    民主朝鮮社記者:そんなにも懐かしい祖国の懐に抱かれて、共和国に帰ってきた今の気持ちがどうか話して欲しい。

    答え:母なる祖国は、足を踏み外して奈落の底に落ちた私に命の水を与えてくれた。高鳴る胸をおさえ、飛行機のタラップから下りる私を関係者が出迎えてくれたとき、本当に驚き呆然とした。手錠をかけられても、返す言葉もない私であった。その夜、私は星が輝く平壌の夜空を見て考えた。祖国とは、二つの文字がそうであるように、情深く大きなところだなあ、私は、今、死んでも構わない。

    しかし、その時になっても、どれほど大きな愛と恩情が私を待っているのか想像もできなかった。敬愛する金正恩将軍様は、私の罪深い過去を少しも責められずに、大海のような愛と恩情を抱かせて下さった。金正恩将軍様は、罪人と変わらない私を金ウォンギュン名称平壌音楽大学の教壇に立っている息子と共に平壌で一緒に暮らせるようにして下さった。私は、他の人が腰を曲げて強盛国家建設に血と汗を流しているとき、自分だけ良い暮らしをしようと母なる祖国を捨てた、恩知らずの徳のない罪人だ。二度目の人生を抱かせて下さった敬愛する金正恩将軍様に感謝の挨拶を捧げるために、万寿台の丘に高く頂いた偉大な首領様と父なる将軍様の銅像を訪ねた。過ぎた日々を贖罪し、大元帥様に捧げることができなかった忠誠の情と合わせ、敬愛する金正恩将軍様をきれいな良心で頂くことを固く誓った。敬愛する金正恩将軍様のような方はこの世にいない。

    偉大な大元帥様と全く同じであられる敬愛する金正恩将軍様がいらっしゃり、私は再び生まれ変わった。

    <結>

    「労働新聞」の記事を半ばまで読んで、どうせならと翻訳を始めたのだが、長かった。途中で挫折しかかったが、午前を潰してなんとかやった。コメントも書きたいのだが、かなり疲れたし、そのうちに追記として書こうと思う。朴さんは、最後に息子と嫁と一緒に「忘れられぬ私の道」を熱唱した。

    「<画面音楽>最後の勝利に向かい前に」(2012年6月28日 「朝鮮中央TV」)

    最近、北朝鮮で歌われている新しい歌を「朝鮮中央TV」が紹介している。「労働新聞」の6月27日の記事でも「歌『最後の勝利に向けて前に』を大きな感激と興奮の中で頂く血の海歌劇団の関係者、創作家、芸術家たち」という記事が出ている。また、昨夜の「20時報道」のニュースの中にも、リュギョン園建設に動員されている軍人建設者がこの歌を歌いながら「革新を起こしている」というものがあった。

    「朝鮮中央TV」:
    http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-28-14-y.flv

    「労働新聞」関連記事:
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-06-27-0008&chAction=S&strSearch=%EC%B5%9C%ED%9B%84%20%EC%8A%B9%EB%A6%AC

    「20時報道」:
    http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-28-17.flv

    ともかく、この歌はこれから北朝鮮のテーマソングになっていきそうな雰囲気がある。

    歌詞を紹介しておく(「朝鮮中央TV」の番組に依拠)。

    「労働新聞」に掲載された「最後の勝利に向かい前に」の歌詞と楽譜:
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-06-26-0001

    「最後の勝利に向かい前に」
    作詞:ユンドゥクン
    作曲:金ムンヒョン

    1.
    いざ進め、最後の勝利に向かい前に

    一心の千万軍民、精神力を爆発させ
    朝鮮は強盛国家、進軍の太鼓鳴り響く
    進もう、白頭山大国よ、党中央の呼びかけにしたがい
    最後の勝利に向かい、前に、前に

    2.
    不敗の軍事力で百勝で邁進し
    朝鮮は強盛国家、銃隊で支えられる
    進もう、白頭山大国よ、先軍の旗を高く掲げ
    最後の勝利に向かい、前に、前に

    3.
    新しい世紀の産業革命ののろしを掲げて
    朝鮮は強盛国家、志は邁進する
    進もう、白頭山大国よ、太陽旗の祝福を抱き
    最後の勝利に向かい、前に、前に

    最後の勝利に向かい、前に

    *<追記:2012年6月30日>「太陽旗」とは、金日成さんの肖像画が描かれた赤旗。軍事パレードなどでは、キャデラックやメルセデスなど大型乗用車の上に掲載され先頭を行く。金正日さんの肖像画が描かれた同様の旗も併走あるいは後に続くが、こちらも「太陽旗」と呼んでいるのかは不明。北朝鮮では、太陽は金日成さん、光明星は金正日さん。ただし、「光明星旗」という言葉は存在しないようだ。もしかすると、この規定とは関係なく、あのような形状で肖像画が描かれた旗を「太陽旗」と称するのかもしれない。また、「金日成-金正日主義」の登場で、金正日さんが太陽に格上げされた可能性もあり。金日成・金正日が並ぶ金正日逝去後に登場した大型のバッジもその表れと思われる。これにともない将来、二人の肖像画が並んで描かれた「太陽旗」が登場するかもしれない。

    曲調は明るい感じである。歌詞の中に「白頭山大国」という言葉が新たに登場している。「白頭山大国」とは、金日成さんから3代続く「白頭の血統」の下で「大国」を建設しようという意味であろう。「最後の勝利」とは「主体偉業」の達成、つまり究極的には朝鮮半島の「主体思想」による統一を言っているのであろう。ただし、その前段として、思想、軍事、経済のうち経済での「強盛国家」化は依然として課題となっているので、「最後の勝利」とはむしろ経済的な「強盛国家」の建設を示しているのかもしれない。

    映像では、「不敗の軍事力で百勝で邁進し」の背景で「あの」正体不明の移動式ICBM車両が登場する。運搬用トラックの出所はかなり究明されてきたが、積載しているミサイルについては「張り子」説が有力のようだ。やはり、弾頭にに核爆弾が装着され、移動しながらICBMを発射できるということになれば、北朝鮮の兵器としては最強であろうから、あれこそが北朝鮮自慢の「不敗の軍事力」の象徴ということなのであろう。

    白頭山の雲の中を幻想的に走っていくミサイル運搬車両
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    Source: KCTV,http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-28-14-y.flv

    ともかくも、軍事はもういいので、是非とも経済建設という「最後の勝利に向かい」邁進して欲しいものである。

    「<訪問記>愛国心が花咲いた美しい通り」(2012年6月27日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」で放送された番組のようである。内容は、平壌市普通江区域の住民たちが自らの手で花などを植え、通りを美しくしたというものである。

    http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-27-14.flv

    事業としては「国土管理事業」の一環であろう。番組では、住民の自主性を強調しているが、住民組織や職場組織をつうじての少なからぬ動員が行われていることは間違いないであろう。

    道路を補修する主婦
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-27-14.flv

    道路のブロックを補修する女性
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-27-14.flv

    実は、これだけの話では、ここに記事など書くつもりはなかったのであるが、なんとこの紹介番組の中にタクシーと思わしき車が確認できるだけで4回登場しているのである。登場といっても、番組の趣旨とは全く関係なく、背景を走りすぎていくだけなのであるが、平壌にこんなにタクシーが走っているという事実にとても驚かされた。というのは、私が2010年夏に平壌に行ったときには、タクシーは一度も目撃しなかったからである。「朝鮮中央TV」の「20時報道」でも、「平壌産院」を退院する「幸せな夫婦」についてのニュースを時々流すが、その退院風景でタクシーは映し出されていた。しかし、タクシーがいたとしても、このような特別なオケージョンに呼び出されるだけであり、普通に通りを走っている、つまり市民の足として使われているとは想像もしなかったからである。この番組の中で登場するタクシーは、演出といえば身もふたもないが、何とも自然に走りすぎていくので、これは偶然の映り込みだと私は思っている。だとすると、この2年でタクシーが平壌市民の足となってきたのであろうか。それとも、私の訪朝時は、偶然タクシーを見る機会がなかっただけなのであろうか。また、自動車の数も2010年当時と比べて増えている印象がある。一体何が平壌市民を豊かにしてきているのかは分からないが、平壌に限っていえば、明らかに生活水準は上がってきているようである。

    花に水やりをする女性の背景を走り抜けるタクシー
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-27-14.flv

    真ん中の白い看板の辺りを走り抜けるタクシー
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-27-14.flv

    こんな映像を見ていたら、再び平壌を訪れたくなったが、こんなブログを書き始めたので、もうビザを発行してもらえないかもしれない。無前提的な親朝人士ではないまでも、知朝人士(少なくともその努力をしている)のつもりではあるのだが。

    「朝鮮外務省スポークスマン<人身売買>問題をもって共和国を非難する米国を糾弾」(2012年6月25日 「朝鮮中央通信」)

    米国務省が出した「人身売買に関する報告書」での北朝鮮の評価に対し、北朝鮮外務省スポークスマンが反発した。同報告書では、人身売買に関し北朝鮮は4つあるレベルのうちで最悪レベルであるTier3に位置づけられている。ちなみに、日本はTier2、韓国と米国は最も良いTier1とされている。Tier2とTier3の間にはTier2 Watch List(要注意)というレベルが設けられている。

    同報告書では、北朝鮮が「成人男女、子供に対する強制労働、強制結婚、性的人身売買の源泉」となっていると指摘し、同国内の収容所で強制労働が政治的弾圧を加えるために制度的に用いられているとしている。また、朝鮮人民には職業選択の自由はなく、政府が割り当てた職業に就かされているともしている。

    次に、北朝鮮が海外に派遣している労働者について述べ、彼らが「ロシア、アフリカ、中・東欧諸国、東・東南アジア、モンゴル、中東などで、移動や通信の自由が制限された中で強制労働を強いられている」としている。また、「労働者の賃金は、北朝鮮政府の管理下にある口座に振り込まれ、賃金のほとんどは『献金』という名目で政府に吸い取られている」と指摘している。特に「極東ロシアの林業に従事している1万~1.5万人の北朝鮮労働者の状況が悪く、年に2日の休日しか与えられない上に、ノルマが達成できない場合は厳しい懲罰を受ける」としている。さらに、「外国企業との合弁企業で働く北朝鮮国内の労働者も海外で働く北朝鮮労働者と似た状況である」と指摘している。

    さらに、脱北者についてもふれ、「中国東北部には何千人もの法的書類を持っていない北朝鮮人がおり、その70パーセントが女性である」とした上で、これら北朝鮮人が人身売買、強制結婚、売春、強制労働の対象とされているとしているとし、人身売買には、国境付近の朝鮮族、北朝鮮人、そして両国の国境警備隊が関与しているとしている。一方、「国境警備が強化」されたとも指摘しているが、「その効果については不明である」と疑問を呈している。

    そして、このような状況に対して北朝鮮政府は、「人身売買をなくすための最低基準を十分に満たしておらず、またそのための大きな努力もしていない」と非難している。また、人身売買が行われる背景として「移民を禁止し、厳しい経済・食料状況の改善に失敗している」ことを挙げている。

    こうした批判に対し北朝鮮外務省のスポークスマンは、報告書を「虚偽ねつ造資料」であると切り捨て、このような資料を発表することが「我が国に対する悪辣な政治的挑発」であると非難している。そして、「誰もが平等で真の民主主義的権利と自由、自主的な人間としての真の生活と尊厳が法的に保障されている、人間中心の我が社会では、そもそも『人身売買』などというものは存在しない」と主張している。

    確かに、北朝鮮の社会制度を前提とすれば、労働者が海外で働こうが、ましてや北朝鮮国内の合弁企業で働こうが、その賃金の扱いについては、他の北朝鮮労働者と同様にするのが社会主義的な方法であろう。しかし、これはこれから北朝鮮が改革・開放に着手したときに、大きな障害となることは間違いない。つまり、中国でもそうであったように外資系企業で働くメリットは、国内企業よりも明らかに労働条件が良い、言い換えれば賃金がよいということが最大の要因であった。外資系企業で働いても国内企業で働いても賃金が同じであれば、実質的労働時間や労働規律がきつい外資企業で働くメリットはほとんどないということになってしまう。もちろん、現段階では、開城工業団地のチョコパイのような、我々から見ればインセンティブにもならないようなものでも、北朝鮮労働者にとっては一つのインセンティブとなっている。ただ、改革・開放に着手し、外資を受け入れ、そして順調に北朝鮮経済が発展していけば、チョコパイなどはインセンティブではなくなってしまう。その時にというか、その過程で賃金制度をどのようにコントロールしていくのかということは、北朝鮮政府にとっての大きな課題である。中国の事例を十分に研究・検討して欲しいところである。

    話がずれたが、中国国内における人身売買について、北朝鮮は次のような主張をしている。つまり、「我が共和国の領域外で人身売買行為が行われているとすれば、それは米国が『北朝鮮人権法』に基づき、投げてくれる僅かな金を受け取ろうと、我が共和国の国境付近で徘徊し、不法越境者を『政治亡命客』に変身させたり、売られていく南朝鮮と日本の不純敵対勢力による政治的謀略の産物」であるとしている。確かに、中国領内での人身売買は、少なくとも表面上は北朝鮮政府の権限が及ぶ問題ではない。北朝鮮政府は、法を犯して脱北した自国民が外国で人身売買の対象となっても我関せずという姿勢であろう。報告書では、その「脱北」の背景が問題であることをきちんと指摘しているが、外務省スポークスマンはそれには触れていない。

    北朝鮮外務省スポークスマンは、人身売買は金が全ての資本主義国の産物で、なかでも「人権蹂躙の王国である米国が、誰それの『人身売買』状況を口にする立場ではない」としている。同報告書の韓国については読んでみたが、日本と米国についてはまだ読んでいない。確かに、人身売買状況の格付け(Tiar1からTiar3)が、今一つ何に基づいているのか、そしてそれが現状をきちんと反映しているのか納得しがたい部分もある(特に米国について。また、報告書をintroductionから通読すれば、どこかにきちんと書かれているはずでもある)。しかし、直感的には、現状に対する評価というよりも、むしろその現状にどれほど政府が対処しているかということに対する評価のようである。この意味では、北朝鮮政府は「そのような事実はない」としているわけなので、当然Tier3という最悪レベルの評価を受けることになる。

    北朝鮮外務省スポークスマンは最後で、「米国が時代錯誤的な対朝鮮敵対視政策に継続的にしがみつけばつくほど、我々はそれに対処せざるを得なくなり、結局、我々の自衛的核抑止力をいっそう増大させる結果を招くことになる」と威嚇することも忘れていない。

    なお、今日現在、このスポークスマン談話は、「労働新聞」には掲載されていない。

    米国務省「人身売買に関する報告書」の北朝鮮が含まれる部分:
    http://www.state.gov/j/tip/rls/tiprpt/2012/192367.htm

    「朝鮮民主主義人民共和国外務省スポークスマン談話:6月22日の米韓合同演習に反発」(2012年6月24日 「朝鮮中央通信」)」

    6月22日に行われた米韓合同訓練に対しての非難記事を「朝鮮中央通信」が「外務省スポークスマン談話」として伝えた。

    報道官談話は、米韓合同訓練が「共和国の自主権と尊厳を蹂躙する厳重な挑発行為」だとし、「史上最大規模の合同実弾射撃演習を展開し、敢えて我が共和国国旗を標的とする無分別な盲動を行った」と非難している。

    そして、「米国がことある毎に誰それの『挑発』について云々するが、今回、我が共和国旗狙った実弾射撃を通じて誰が本当の挑発者であるのかが明確にな」り、それこそが「我が国に対する敵対視政策の最も集中的なあらわれ」であり、「2.29朝米合意で我が共和国を敵対視しないと公約したことが、完全な嘘であった」としている。

    続いて、米国の敵対視政策が朝鮮戦争が勃発した「62年前も今日も少しも変化していない」が、「軍事技術的優勢はもう米国の独占物ではなく、原子力爆弾により我々を威嚇・恐喝した時代は永遠に過ぎ去った」とし、金正日さんが「強力な核抑止力を作って下さったので、我が人民は心置きなく経済強国建設を力強く進めている」と金正日さんの先軍政治による軍事力、特に核開発を称賛しながら、その土台の上で北朝鮮が経済建設に集中しているということを強調している。

    一方で、「世界最大の核保有国である米国の敵対視政策が続く限り、我々は自衛的な核抑止力をさらに強化して行くであろう」と米国を威嚇することも忘れてはいない。当面、これは米国に到達する長距離ミサイルとウラン型核爆弾の開発を意味しているのであろう。そして、米国に対し敵対視政策は、「米国が維持しようともがいている核兵器独占体系に自らの手で穴を開ける結果をもたらす」とも警告している。

    6月22日に行われた米韓合同演習は、明らかに62年前の6月25日、すなわち朝鮮戦争開戦日を意識したものであろう。米韓としては、北朝鮮に対して再び38度線を越えてくれば、完全に粉砕する準備ができているというメッセージを伝えたかったのであろう。そうであったとしても、これが北朝鮮側に「挑発」ととらえられても仕方がない。北朝鮮が行う軍事訓練については殆ど伝えられてこないが、報道されるものだけ見ていても、米韓の訓練はほぼ毎月、休むことなく続けられている。

    北朝鮮は、そのたび毎に「言葉による」威嚇を繰り返すが、実際には何もしない。何もできないといった方が良いのかもしれないが、いずれにせよ自制はかなり効いている。また、今回の非難報道は、このところ行われていた非難報道と比較して、米韓、特に李明博政権に対する非難が見られなくなっている。また、「核開発は続ける」としつつも、「核保有国」となりもう軍事的な準備は十分に整ったので、今は「経済強国建設」に邁進するともいっている。北朝鮮が、本当に「核保有国」を前提に資源を経済建設に傾注していくのかどうかは見極める必要があるが、金正日さんが作った軍事的土台(核・ミサイル、先軍政治)を否定することなく、経済建設にシフトするロジックとしては有効ではないだろうか。

    国際社会は、まずその「軍事的土台」を取り除くことを北朝鮮に求めているが、北朝鮮はそれを「中断」することはしても、白紙に戻すことはそう簡単にしないであろう。2.29合意は、まさに「中断」を約束した合意であったわけだが、北朝鮮の核・ミサイル問題を解決するための入り口としては、実に正しい方法であったといえる。米韓双方の主張を見ていると、いずれもこの合意を水に流したくはないようであるので、米大統領選挙後であろうが、この合意を糸口に米朝交渉が再開される可能性は十分にある。

    62年前のこの日を思いつつ、この記事を書いている。

    「干ばつによる被害さらに拡大」(2012年6月23日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が干ばつ被害について、もう一つ記事を配信している。指導者の偉大さや韓国非難で類似した記事をいくつか配信することはよくあるが、北朝鮮の「窮状」をこれほど連続で訴えるのは異例である。その理由の一つは、前記事にも書いたように干ばつの被害が相当に拡大しており、国際社会に対して「暗」に援助を「強く」要請したいのと、金正恩政権の透明性の強調であろうか。

    前記事に出ていなかった内容を追加すると以下の通りである。まず、「家畜の飲み水も不足している」としているが、人間は大丈夫なのだろうかと心配になる。農村地域では水道が普及しておらず、井戸水を使っているはずであるから、そちらも干上がってしまったら大変なことになる。多くの農地が乾き、「数百万町歩でトウモロコシの種まきをやり直さなければならならなくなった」としている。果たして、干上がった農地に種まきをする意味があるのであろうか。また、「少なからぬ農地で大麦や小麦の穂が実らないか、穂が小さくなり安全な収穫を期待できなくなった」としている。

    崔永林総理は平壌の万景台地区の農場を視察しながら、「最近の気象条件と農作物の生物学的特性に合うように、肥料管理を科学技術的にすることについて強調した」としているが、被害が著しい黄海道ではまったく空虚な言葉に過ぎない。前にも一度書いたが、年老いた総理に任せておくのではなく、手遅れになる前に金正恩さんが前面に立ち、人民軍を動員し農業地域の揚水を助け、それでも足りなければ国際社会に直接的に援助を訴えるような、果敢な行動に出るべきである。そうすれば、金正恩さんは朝鮮人民の信任を得られる「若い指導者」になれるはずだ。

    水が干上がった川
    底の見えた川
    Source:KCNA, http://www.kcna.kp/goHome.do?lang=kor

    ひび割れた農地
    ひび割れた農地
    Source:KCNA, http://www.kcna.kp/goHome.do?lang=kor

    「黄海北道で大干ばつ続く」(2012年6月23日 「朝鮮中央通信」)

    黄海北道で深刻な干ばつ状態が続いていることについて「朝鮮中央通信」が伝えている。

    それによると6月「23日現在、約2万町歩の土地が激しくひび割れ、農作物が乾きで枯れてしまった」とのことである。被害は、黄海北道における穀物生産の中心地域である黄州郡で特に深刻であるとされ、69才の農民は「70才なろうとしている今まで、こんな干ばつは初めてだ」と語っている。共同農場経営委員会の委員長の李さんも「2000町歩余りのトウモロコシ畑で3回も種まきをしたが、安定した収穫を全く期待できない状態」と述べている。また、別の共同農場の委員長朴さんも「普通であれば、今頃はトウモロコシの背が1~1.5mになっていなければならないのに、干ばつで40~50cmにしか成長していない」といっている。また、別の共同農場委員長は「このような干ばつが続けば、十分に生長できないトウモロコシを残念だが刈り、他の作物を改めて植えなければならない状況だ」と「残念な心情を」語ったとのことである。

    そして、「郡内の貯水場の大部分で底が見える程度に干上がってしまって」おり、「深刻な水不足により一部の苗代では未だに苗を採れずにいる」とのことである。このような状況は、「住民の安全な食料供給を危険な状態にしている」と食糧事情に赤信号が点灯したことを北朝鮮自身が認めている。報道では、「現在、人民軍軍人と省、中央機関関係者、関係各層の人民が積極的な支援をし、干ばつ被害を減らすための事業を展開している」としているが、状況は北朝鮮自身の努力では解決できないレベルに至っているようである。

    何回も言うが、90年代の悲劇を再現しないよう、国際社会は北朝鮮に対する食料・栄養援助を検討しなければならない。もちろん、そのためのアセスメントとモニタリング強化も同時に行わなければならない。アセスメントについては、FAO/WFPなどの在北朝鮮国際機関によりかなり正確に行われていると思われるが、モニタリングには未だに課題が残されている。しかし、金正恩政権発足の年に、大規模な餓死者を出すような状態をもたらせば、同政権にとってのダメージは計り知れない。だとすれば、国際機関による強力なモニタリング要請を北朝鮮は受け入れざるを得ないはずだ。ともかく、朝鮮人民に最大の不幸をもたらす事態を避けなければならない。

    ところで、アクセスログを見ていたら、本日未明に「STAR-KP」ネットを通じての平壌の普通江区からのアクセスがあった。総連系組織からのアクセスは数回あったが、アクセス記録に残る形での北朝鮮からのアクセスはこれが初めてである。このアクセスで閲覧した記事は、「深刻な干ばつが北朝鮮南西部と中央部の2012年の収穫に影響を及ぼす」(2012年6月18日 FAO)」(http://dprknow.blog.fc2.com/blog-entry-217.html)でgoogleの検索を通してのアクセスのようである。この平壌からのアクセスが何を意味をするのか分からないが、「労働新聞」などで今回の干ばつについて大きく報じられているので、その裏返しであろうか。

    私は朝鮮人民、そして、敢えて言うならば金正恩さんに対してもモデレートな主張をしているので、拙宅の緯度・経度を割り出して、「恐ろしい打撃を与える」と言い出さないことを願ってはいるのだが。

    <追記:2012年6月24日>
    「朝鮮中央通信」に干ばつの様子を紹介する動画が掲載された。

    70才に至るまで経験しなかった酷い干ばつと語る農民
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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=648230

    トウモロコシの生長状態について語る共同農場の委員長。まく種がなくなったので、一度まいた種を掘り返してまいていると述べている。何回まいても同じだと思うのだが。
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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=648230

    消防車と思われる給水車
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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=648230

    水まきを手伝う消防隊員?(人民軍ではないようだが)
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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=648230

    水をまく農民か消防隊員の靴、貧しさが伝わってくる
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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=648230

    「<私たちの言葉、常識手帳>オクリュキョとオクリュキョタリ」(2012年6月22日 「朝鮮中央TV」)

    こんな、短い番組が「朝鮮中央TV」で放送されたようである。

    http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-22-13.flv

    正しい朝鮮語を使いましょうという教養番組であるが、なかなかおもしろかった。「オクリュキョ」(正しい「平壌方言」の発音は、オンリュギョ)というのは、大同江にかかる橋の名前である。まず番組の初めで、

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-22-13.flv

    というように、二つの朝鮮語の単文が提示される。両方とも「オクリュキョで会いましょう」という意味であるが、緑の字の文かオレンジ色の文が間違っているということである。正解はどちらかというと、緑の字の文である。その理由は、

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-22-13.flv

    「オクリュキョ」を漢字で書くと上の写真のようになり、「キョ」という「橋」という漢字の音に固有語で「bridge」を表す「タリ」を続けて使うのはおかしいという説明がある。説明はまさにその通りであるが、これぞまさにそもそも漢字を含んで構成されている言語から文字としての漢字を除外してしまった悲劇である。我々は、画面に表示されている「橋」を見て直ぐにその意味が分かるが、漢字教育を受けていない朝鮮人民にとっては、全く意味を持たない形としか見えないであろう。朝鮮人民の名前も漢字「音」で付けられているので、もしかすると案外と漢字を知っているのかもしれないが、大学レベルの高等教育、しかも漢字を使う専門分野では教えられているのかもしれないが、高校まででは漢字教育は全廃されているはずである。もちろん、確認をするすべなどないが、北朝鮮の言語を表す「文化語」の起源から行けば、そういうことになろう。

    しかし、思えば漢字語(漢字音)に固有語を続ける使い方は、韓国語にも見られる。例えば、「3日」のことを「サムイルナル」(正しい発音はサムイルラル)、つまり「三日(サムイル)」という漢字音に「day」を表す「ナル」を重ねて言っているのをよく耳にした。上記の北朝鮮番組の説明にしたがえば、これは誤った用法となる。韓国文法では、このような用法を正しいとしているのであろうか。韓国では、その数は減っていると聞いているが、一応漢字教育は続けているはずなので、「日」ぐらいの漢字は誰でも知っていると思うのだが。単に、慣用的な用法なのかもしれない。今度、知り合いの韓国語教育学者に尋ねてみることにする。

    「深刻な干ばつが北朝鮮南西部と中央部の2012年の収穫に影響を及ぼす」(2012年6月18日 FAO)

    FAOが北朝鮮の2012年の北朝鮮の農業生産に関する見通しを発表した。

    http://www.fao.org/giews/countrybrief/country.jsp?code=PRK

    レポートによると北朝鮮では昨年11月から今年4月中旬まで雨に恵まれ早期作物の成長を助けたが、「現在収穫期である早期作物が熟成していく過程の5月初めから40日間に及ぶ干ばつにより影響を受けた」としている。また、「干ばつは、トウモロコシの大収穫地域である、黄海北道、黄海南道、平壌北部、平壌南部、平壌の農業地域における、移植されたトウモロコシの主要収穫期に影響を与えた」としている。

    そして、干ばつにより影響を受けたトウモロコシ、ジャガイモ、大豆などを栽培する農地は、全農地の17%(早期収穫農地約3万7千ヘクタールを含む約20万ヘクタール)に当たるとしている。しかし、米作に対する影響は今のところ報告されいないとのことである。FAO/WFPの予測では、北朝鮮の2012年食料生産は4.66百万トンであったが、これには早期収穫作物が50万トン含まれているので、2012年の食料生産は予想を下回るであろうとのことである。

    今回の干ばつ前のFAO/WFPによる予測では、北朝鮮は2011年11月から2012年10月にかけて73万9000トンの食料輸入が必要であろうとされていたが、これは早期収穫作物50万トンがあるとの前提であったので、その収量の減少は、輸入量がそのままであれば、北朝鮮の食糧事情を悪化させるであろう、としている。「5月中旬現在の食料商業輸入量は、33万3300トンでその殆どが中国からの米とウクライナ、アルゼンチン、EUからのトウモロコシであり、食料援助は8万3500トンしか受けられていない状態である」としている。そして、10月、11月の収穫期までの端境期に、北朝鮮の食糧配給制度を維持するためには、さらなる食料輸入や援助食料が必要になるであろうとしている。

    FAO/WFPでは、「両江道、慈江道、咸鏡南道、咸鏡北道、江原道といった食料供給状態が良くない地域に、不適切な食料生産と商業輸入による、妊婦や子供、老人を中心とした3百万の弱者がおり、国際的な緊急食料援助を必要としている」としている。

    昨夜の「20時報道」では、これから予想される集中豪雨への対策がいろいろと紹介されていたが、今後、集中豪雨により洪水などが発生すれば、さらに食料生産に影響を及ぼし、さらに深刻な事態となるであろう。

    「20時報道」:
    http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=10241

    「朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議常任委員会政令 韓ヒョンギョン学生に金正日青年栄誉賞を授与することについて」(2012年6月20日 「労働新聞」)

    今朝、ウリミンジョクキリにアップロードされた「20時報道」を見て知ったのだが、一人の少年に勲章を授与する決定が最高人民民会議常任委員会で下された。関係記事は、昨日の「労働新聞」に出ていた。

    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-06-20-0004&chAction=L

    記事によると、「去る6月11日未明、豪雨により家が倒壊する危険な状況で、白頭山3大将軍の肖像画を身を挺して守ることで、党の懐で育った先軍時代の青年同盟員の輝かし生き様と清い精神をいかんなく見せてくれた咸鏡南道新興郡のインプン中学校4年、韓ヒョンギョン学生に金正日青年栄誉賞を授与する」ということである。

    3大将軍の肖像画を命がけで守るのが、北朝鮮では非常に重要であるという話は、韓国・国民大学のAndrei Lankovさんが「Asia Times」に投稿した記事で読んではいたが、北朝鮮メディアで確認したのは初めてである。このような状況で、特に子供は、まず先に逃げ出して身を守るのが普通であるが、やはり北朝鮮では自分の命よりも3大将軍の肖像画の方が大切なのであろうか。「身を挺して」と書かれているが、この少年が生きているのか死んでしまったのかは書かれていない。以前にも、工事現場で落盤事故が発生した際に「身を挺して」仲間を助け、自分は死んでしまった労働者に勲章を授与し、平壌の人民英雄墓地(だったか、正式名称は失念)に埋葬したというニュースはあった。この少年も、もし死んでしまったのであれば、特別な場所に埋葬されるであろう。

    3大将軍、特に金日成さんは朝鮮人民にとって神様であると何回も書いてきたが、例えば信心深いキリスト教徒が部屋に掲げてあるイエスキリストの肖像画や十字架をこのような状況で持ち出すであろうか。いくら北朝鮮でも、豪雨で家が倒壊し、3大将軍の肖像画が流されてしまっても懲罰の対象にはならないと思うのだが。

    願わくば、この少年は無事で、勲章を授与された少年一家が特別待遇を受けながら幸せに暮らすことになって欲しい。

    <追記:2012年6月27日>
    6月23日に「朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議常任委員会政令」として、「韓ヒョンギョン学生を立派に育てた父母と学校青年同面関係者、教員に朝鮮民主主義人民共和国名誉称号と勲章を授与する」ことを発表した。

    興味深いのは、国旗勲章第1級を韓少年のお母さんである韓クムソクさんに与え、それより低い勲章である労力勲章をお父さんである韓ミョンスさんに与えていることである。学校関係者では、前者を校長に後者を副校長に与えているので、前者の方がより高い功績を賞するものであることは間違いないであろう。韓少年のお父さんは人民軍の士官であるが、お母さんの職業はよく分からない。「부양」という朝鮮語が書かれているのだが、普通に考えると「扶養」という言葉ぐらいしか当てはまらない。家族を「扶養」する専業主婦という意味であろうか。外で働くお父さんと、専業主婦として子育てに尽力したお母さんで、韓少年の教育により大きな寄与をしたということでお母さんに高いクラスの勲章を授与したのかもしれない。

    韓少年の生死については依然として不明だが、埋葬報道が流れてこないので、恐らく無事生きているのであろう。3大将軍の肖像画を「身を挺して」救うことには大きな疑問を感じるが、ともあれ勲章を与えられた一家は幸せに暮らせるはずから、よしとしよう。

    「労働新聞」の関連記事:
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-06-26-0004&chAction=L

    「朝鮮外務省スポークスマン共和国を非難する米国務長官の妄言を糾弾」(2012年6月17日 「朝鮮中央通信」)

    過去記事にも書いたが、クリントン米国務長官の北朝鮮関連発言(people first)に北朝鮮が反発している。

    「朝鮮中央通信」の記者の質問に朝鮮外務省スポークスマンが答える形で「最近、米国当局者が我々の『人権問題』、『人民の生活問題』を云々しながら、立場もわきまえずに騒いでいるが、その代表的な人物が、まさにヒラリー国務長官である」と始まる。

    以前からそうだったのであろうが、この記事を読んでいて気がついたのは、「クリントン国務長官」ではなく「ヒラリー国務長官」とファーストネームで呼んでいることである。クリントン元大統領と区別するために意図的にそう呼んでいるのか、単なるミスなのかは分からないが、おもしろい。

    北朝鮮が国防に資金を傾けなければならない理由を米国に押しつけ、「我が共和国を長期的に敵対視して威嚇し、我々にそれに対処するための国防力を持たざるを得なくした米国が、今になって『人民生活』を第一にしろと言うのは、病気にしておいて薬を与えるような卑劣な偽善である」と主張している。

    そして、「人民生活」問題については、「我々の敬愛する金正恩同志は、既に我々人民を世の中にうらやむことがないほど生活水準を上げる我々式の発展目標と戦略戦術を立てられ、経済建設と人民生活向上のための我々人民の総進軍を賢明に導いておられる」とし、金正恩さんが経済建設に力を入れていることを力説している。

    その前提として、北朝鮮は金正日さんにより「自衛的軍事強国」が打ち立てられ、それが「社会主義強盛国家建設を推進できるようにする土台となる」としている。つまり、軍事的には「強国」となったので、次は経済面での建設に邁進することができるということであろう。

    続いて、北朝鮮の核開発について、「米国が言葉では我々に対して敵意がないといいながら、このように行動では依然として敵視する限り、国と民族の平和と安全を担うための我々の核抑止力は継続して強化されるであろう」とし、その責任を米国に押しつけている。また、米国が「言葉ではなく行動で」といっているのをそのまま米国に当てはめている。さらに、「我々の軍事工業もついに人民を犠牲にすることなく、核抑止力を自らたゆまず強化発展させることができる土台と能力を持っている」とし、米国が主張するように核開発のような軍備増強が人民生活を犠牲にしない「レベルまで来た」と主張している。しかし、この部分は別の読み方をすれば、これまでは人民生活を犠牲にしながら核開発を行ってきたことを認めていることにもなる。事実そうなのであろうが、朝鮮人民は「米国の核による威嚇」があるので仕方がないと思っているのであろうか。そして、もう今は人民を苦しめることなく核開発を推し進めることが可能になり、あるいは米国に対抗するための核抑止力は既に手にしたので、これからは人民生活向上のための経済建設を推し進めると考えるのであろうか。

    この記事は、今日付の「労働新聞」には掲載されていないが、そのうちに掲載されることになれば、朝鮮人民も読むことになる。その時に、例え米国がその原因であったにせよ、朝鮮人民の生活を圧迫しながら進めた核開発をどう考えるのであろうか。単に米国に怒りをぶつけて昇華することができるのであろうか。

    また、金正恩さんは軍事に資金を注ぎ込むのはやめるとまではいわないにしても、人民生活の向上を約束したとも取れることが書かれている。それに対して朝鮮人民はどんな夢を抱くのか。

    失敗に終わった4月のロケット発射が、最近では最大の浪費であったであろう。しかし、あれが金正日さんの遺言で行われたということであれば、金正日時代の幕が閉じ、金正恩時代が開幕するという一つのセレモニーになったのかもしれない。十分な準備もできないまま、そして米国との約束を反故にしてまであの時期に打ち上げをしたのは、米国に到達する弾道ミサイルの実験という側面がなかったとはいわないが、それ以上に国威発揚のセレモニーであったと考えられるのではないか。

    「我ら人民自身が選択した我々式社会主義制度が、米国式の資本主義制度よりはるかに無窮繁栄するであろうということは、時が証明してくれるであろう」という北朝鮮であるが、朝鮮人民のためにも是非証明して欲しいものである。

    <追記:2012年6月13日>
    「労働新聞」にこの記事が掲載されるかと数日間眺めていたが、出てこない。やはり、「人民を犠牲にしながらの核開発」などという「過激」な表現は国内向けには出せないのであろうか。「朝鮮中央TV」でも、この「スポークスマン談話」については伝えていないようである。

    「パネッタ米国防長官、金星煥韓国外交通商大臣、金寛鎮韓国国防大臣の会見」(2012年6月14日 US Department of State)

    韓国と米国の2+2に際して米国防長官、韓国外交通商大臣、韓国国防大臣が持った記者会見のレコードが米国務省のHPに掲載されている。既に新聞などで報道されているが、その中でのクリントン国務長官の北朝鮮に関する発言が注目される。

    米国防省HP:
    http://www.state.gov/secretary/rm/2012/06/192400.htm

    米国務長官は、「リーダーは、人々により良い生活をさせるようにし、安定、安全、繁栄、機会を創造することができるのかで判断される」とし、「若いリーダー」が「彼の人民を利するよう」な選択をすることに期待しているとしている。

    そして、いつもの主張である、北朝鮮による国際ルール遵守を呼びかけ、「威嚇と挑発」は北朝鮮に対する関与や「よりよい未来」に繋がらないとしながら、先軍をやめ「先民(people first)」にするようにと求め、「戦争遂行のために金を使うのではなく、人々を食わせ、教育と医療を提供し、人々を貧困と孤立から抜け出させる」ことが必要であるとしている。

    最後に「この若者(this young man)」は、「21世紀に北朝鮮に変革(transformative)をもたらしたリーダーとして歴史に残る」こともできるし、そうしなければ「過去のやり方を踏襲し、抑圧的な状況に耐えられなくなった人々により変えられる」であろうとしている。

    「people first」とはよく言ったと思った。「先軍」という言葉こそ口にしていないが、明らかにそれを意識していった言葉であろう。米国は、金正恩登場直後はむしろ「若さ」に対する不安を抱いていたようだが、金正恩体制発足後の6ヶ月を見ながら、当面は金正恩さんが権力を掌握し、安定した状況が続くであろうと判断したのであろう。だからこそ、「this young man」をネガティブに捉えるのではなく、「若いから」今までと違うことをするようにと呼びかけているのであろう。

    しかし、現実的には「過去のやり方」を一気に捨て去るのは不可能である。そんなことをすれば、「young man」が北朝鮮のリーダーになっているという根拠が崩れ去ってしまう。「this young man」は、自分の立場を脅かさないように「過去のやり方」を踏襲しながら、党や軍からの支持と朝鮮人民からの支持を得ながら「transform」させていく必要があるが、これはとても難しい。しかし、金正日時代よりも朝鮮人民の声は明らかに強まっているはずである。金正恩さんは、その声に耳を傾け、一方で党と、特に軍を説得しながら少しずつ「金日成-金正日主義」に対する自分の解釈権を拡大し、方向転換していくことはできるであろう。もしそれが、朝鮮人民に受け入れられるのなら、金正恩さんは「白頭の血統」に基づく指導者ではなく、人民に選ばれる(支持される)本当の指導者になれるであろう。

    クリントンさんがそんなことを考えているかどうかは分からないが、私はそう思う。

    「<記録映画>偉大な指導者金正日同志が金大中大統領とサミット会談:2000年6月13日~15日」(2012年6月15日 「朝鮮中央TV」)

    2000年6月15日に平壌で金正日さんと金大中さんが署名した「6.15北南共同宣言」関連の番組を「朝鮮中央TV」が放送いくつか放送したようだ。「政治常識:6.15北南共同宣言」や共同宣言について話をする座談会の番組もあった。その中で、北朝鮮が伝えた金大中さん訪平壌の記録映画はおもしろかった。韓国メディアが伝えるフィルムは見たことがあるが、北朝鮮のフィルムは初めてである。

    主催国かつ金正日さんが登場するということで、北朝鮮メディアのカバーは凄い。平壌空港から金大中大統領の宿所までの車列が、沿道のあちこちに設置されたカメラで撮影されている。ナレーションは、南北サミットに至った背景をほぼ一方的に金正日さんの功績として称えている。もちろん、韓国に対する非難はないし、「金大中大統領」と言っている。しかし、敬語の用法で金正日さんとは明らかに区別しており、金大中さんの行為に対しては敬語は使われていない。

    映像も、どちらかというと、金正日さんが中心に来るような構成であるが、金大中さん、夫人、韓国の随行員などもしっかりと映っている。記録映画の中で、久しぶりに「あなたがいなければ祖国はない」、「我々の希望は統一」、「朝鮮は一つ」などの挿入曲を聞いた。

    韓国メディアがどこまで伝えたか記憶はないが、韓国側が設定した宴会では別のテーブルに座っていた金大中さんの夫人を両金の間に呼び寄せて座らせている。金正日さんの夫人が出席していないことに対する韓国側の配慮(外交儀礼?)か、北朝鮮の要請による演出かわからないが、よくできている。

    初めは金正日さんと金大中さんだけ
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-15-16-y.flv

    別テーブルに座る金大中夫人(中央)
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-15-16-y.flv

    3人で座る
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-15-16-y.flv

    最終日の宴会では、両金が親しく話し合う姿や、手をつないで「我々の希望は統一」という歌を歌っている様子を映し出している。金大中さんと夫人の口は動いているが、金正日さんは歌っていないように見える。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-15-16-y.flv

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-15-16-y.flv

    こうした様子を見ていると、南北関係がここまで冷え込んでしまったのが信じがたい。盧武鉉さんがほぼ無前提的に北朝鮮を抱擁していったことと、そのリパーカッションとしての李明博さんの強攻策がその背景にあろう。韓国の次期大統領選挙で誰が大統領になるのか。それにより南北関係は進展する可能性はある。南北関係が良好な期間にも北朝鮮は核・ミサイルの開発を続けたわけだが、その保有ではなくて使用に関する安全性は当時の方が格段に高かったということも間違いない。また、北朝鮮にとって、核・ミサイルは対南関係に直接的にシンクロするものではなく、対米関係にシンクロしている。米国の立場は、「南北関係を改善してから米朝関係改善」を原則としているので、やはり韓国の次期大統領は朝鮮半島の安定と安全の鍵となる。

    「明朗なテレビ舞台:文明的に生きよう」(2012年6月11日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」で放送した、金正恩さんの初論文を聞いていた。アナウンサーのリ・チュニさんが久々に登場していたが、彼女は、重大ニュースだけ伝えるアナウンサーになったようだ。約40分の動画なのだが、「労働新聞」などで既に読んでいたこともあり、半ばで挫折してしまった。6月13日の「20時報道」でも最高人民会議常任委員会の幹部が「学習」している様子を紹介していたが、特に新鮮味のない論文を「学習」する朝鮮人民も大変だと思う。もっとも、「学習」を怠れば、人生にかなり深刻な影響が及ぶであろうから、真面目にやらないわけにはいかないはずだが。

    「明朗なテレビ舞台」なる番組があったので、数日前にダウンロードしておいた。過去記事に書いた「要請舞台」のように歌番組(リクエストショー)なのかと思ったが、歌だけではなくて、トランポリンショー、漫才、奇術などを紹介している。トランポリンショーや奇術はプロによるものであるが、平壌第一百貨店の店員なども出演し歌や楽器演奏を披露している。

    KCTV「明朗なテレビ舞台」:
    http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-05-27-14.flv

    その中でも特におもしろかったのが、「才談」(漫才)である。多分に教条的ではあるが、特に前半の部分では朝鮮人民の生活実態を垣間見ることができる。特に、嫁と姑の会話、妻と夫の会話などは、「主体の国でもやはりそうなのか」という感じである。こちらは、日本語字幕を付けてYoutubeにアップロードしておいた。(おかげで、昨日はそれで半日潰れてしまった。こんなことなら、金正恩論文を最後まで聞いておけば良かった・・・と後悔はしていないが・・・)

    「明朗なテレビ舞台」:(才談)文明的に生きよう!
    http://www.youtube.com/watch?v=wUV4B4QHV3E

    この動画に出てくる「対外建設」という言葉であるが、「対外」にはもしかすると別の同音の漢字が入るのかもしれない。朝鮮語字幕に「対外建設」指導局」と出たので、初めは海外に派遣された北朝鮮労働者を管理・監督する部署かと思ったのだが、そうではなくて国内の建設現場に朝鮮人民を動員する部署のようである。漫才ではそう言っていないが、実態としては、朝鮮人民に嫌がられている部署かもしれない。

    「金正恩 偉大な金日成同志は我が党と人民の英英の首領であられる 金日成同志の誕生100周年にちなんで発表した論文」(2012年6月12日 「労働新聞」)

    金正恩さんが、初の「論文」を発表した。4月20日の日付が付いているが、約2ヶ月が過ぎたこの時点で「労働新聞」に掲載された。

    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-06-12-0001

    北朝鮮指導者の「労作」や「論文」は、国家指針となるばかりではなく、朝鮮人民が学習する対象となるのでその意義は大きい。しかし、今回発表された「論文」は、そのほとんどが「金日成回顧録」で、金日成さんの業績とその偉大さについていろいろと書き連ねられているだけのものである。私は、「金日成-金正日主義」について、何らかの解釈があるのかと期待したのだが、「金日成-金正日主義」という用語すら、ほんの数回しか出てこない。ただ、「朝鮮労働党と朝鮮人民は、金日成-金正日主義を唯一の指導思想とし、国家建設と革命を推し進める」と書かれているだけである。

    金正恩さんは、お父さんやおじいさんの権威にすがり、一方でそれに縛られながら、何か新しいことをしようとしているのかもしれない。ただし、今回の「論文」からそれは見えてこない。

    <追記:2012年6月13日>
    KCTVの「20時報道」でこの論文について、記者が人民経済大学の総長などにインタビューしている。なぜ、金日成総合大学ではなく、人民経済大学なのか分からないが、上記のとおり、この論文は金日成さんの偉大さに関する記述に終始しており、経済に関する事項は「強盛国家建設」程度としか書かれていない。人民経済大学の先生も記事にアンダーラインを引きながら熱心に「学習」しておられるようだが、「金日成同志の業績や偉大さが明らかにされている」程度としかコメントできない内容である。金日成・金正日さんの遺訓と路線を貫徹することを掲げている金正恩さんなので、この程度の内容でも良いのかもしれないが、私のような北朝鮮ワッチャーだけではなく、朝鮮人民も「もう少し何か」を期待したのではないだろうか。

    KCTV「20時報道」:
    http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=10147

    「朝鮮民主主義人民共和国外務省スポークスマン談話:核実験計画はない」(2012年6月9日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」は、北朝鮮外務省が、韓国の李明博政権が北朝鮮の朝鮮少年団創設66周年関連行事を非難していることに対する非難声明を出したと報じた。

    非難声明自体は、これまで繰り返させている李明博政権批判の繰り返しが大部分であるが、記録しておべき文章が含まれている。それは、

    「我々をわざわざ刺激し、現在、計画もしていない核実験やヨンピョン島砲撃事件のような強行対応措置を発生させて、まるで我々が『好戦的』かのように見せて、我々と周辺国間の関係を緊張させ、反共和国国際制裁圧迫の雰囲気を造り出そうということなのであろうか」

    と、核実験や韓国に対する軍事行動計画の存在を否定している。また、

    「逆賊一味が、これ以上暴れないよう、静かに引き下がれるようにすることは、地域の平和と安定を願う全ての国の利害関係にも符合する道である」、「もし、南朝鮮を自分たちの利害関係目的に少しでも利用するために、逆賊一味の危険で無謀な挑発策動を続けてそそのかし、目をつぶる周辺国があるとすれば、その結果に対する責任から絶対に免れることはできないであろう」

    と威嚇しているが、「李明博逆賊一味」を北朝鮮による「聖戦」のような実力行使で処断するのではなく、国際社会がこれ以上「自らの利益のために」韓国を利用せず、「静かに引き下が」れるようにすれば良いということであろう。

    北朝鮮が、このタイミングでこのような宣言をしたのは、4月から6月にかけての一連の行事が一段落し、「2.29合意」に立ち返るための米国との交渉を再開したいという考えがあるのではないだろうか。もちろん、その背景には金正恩訪中に向けた素地作りや異常気象による農業生産減少に対応するための食料・栄養援助をできるだけ早い時期に得られるようにしておきたいという事情もあろう。

    <追記:2012年6月13日>
    この報道に対して、米国務省報道官は6月11日の定例記者会見で「我々は、北朝鮮の言動ではなくて行動で判断する。彼らがよいことを言っているのはよいことである。しかし、我々は北朝鮮に対し国際的義務を履行し、周辺諸国に対する言葉での挑発も含む挑発をやめることを求めていく」とし、「2.29合意」については「北朝鮮は、国連が課した義務と2005年の会談(6者会談)で課された義務に拘束されている。したがって、2.29合意は、北朝鮮がした約束を再確認し、国際的義務を段階的に履行しながらそうした義務を果たすための試みである。北朝鮮は、1週間でそれを反故にすることを選んだ。しかし、基本的な問題は変わっておらず、米国は北朝鮮が国際的義務を果たすことに期待している」と述べている。

    米国の認識は、「2.29合意」は2005年9月19日の6者会談における合意を「段階的に」履行するための措置ということのようである。2.29もそうであるが、9.19も双務的であり「行動に対して行動」という原則が貫かれている。米国の認識としては、これまで「先に行動に出て裏切られた」ということがあるだろうし、また、大統領選挙を前にしたタイミングで敢えてそうしたリスクはおかしたくないということであろう。

    報道官は、「米朝接触はない(ようだ)」としているが、何らかの動きに出なければ、事態の進展は見られないであろう。北朝鮮が言っている「よいこと」を米国がどう評価するかである。

    "Victoria Nuland
    Spokesperson
    Daily Press Briefing
    Washington, DC
    June 11, 2012";
    http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2012/06/192080.htm#NORTHKOREA

    「<記録映画>敬愛する金正恩同志を頂き朝鮮少年団創立66周年盛大に慶祝」(2012年6月8日 「朝鮮中央TV」)

    「朝鮮中央TV」が金正恩さんの少年団創立66周年関連動画の総集編を伝えた。

    http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-08-11-y.flv

    この「総集編」では、金正恩さんが子供たちとより密に接している様子が強調されている。動画の中では、例えば、銀河水管弦楽団の演奏会場で、会場に設置された大型スクリーンに金日成さんが子供と腕を組んで歩く姿などが映し出されているが、私は金日成時代の動画を見る機会はなかったので、金正恩さんと比較することはできない。ただ、金正日さんが子供と親しく接している姿はあまり出てこないようなので、そもそも金正日さんはそういうことをしなかったのか、金正恩さんを金日成さんに重ね合わせようとしているのか、いずれかの理由であろう。この記録映画では、「我らの父、金日成元帥様」(という、タイトルかどうかは分からないが、そういう歌詞が繰り返される)が何回も流されているが、それからすると、金正恩=金日成ということであろうか。

    最も驚いたのが、金正恩さんが子供たちと「愛の写真」を撮る場面である。錦繍山太陽宮殿前の広場での撮影であるが、動画では何回も子供たちの前を手を振りながら通り過ぎる金正恩さんが映し出されている。なんともくどい編集だなと思いながら見ていたのだが、思えば金正恩さんが平壌に招待した少年団員は2万人である。だとすると、2万人全員と「愛の写真」を撮るのであろうか。韓国の情報当局では、動画を解析しているはずであるが、私はそこまでやる気がないものの、雰囲気で言うのであれば、多分、2万人と写真を撮っていると思う。下の写真を見て頂きたい。

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    Source: KCTV,http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-08-11-y.flv

    これは、錦繍山太陽宮殿前の広場であるが、これだけ集まっている。写真に写りきるサイズの塊で撮影をしているようで、動画で確認しても。錦繍山太陽宮殿前の角度が皆違っている。朝鮮人民にとって「愛の写真」が将来の人生や一族郎党にとってどれだけ重要かということは過去記事にも書いたが、それにしてもこれだけの人数の少年団員と写真を撮った金正恩さんには「ご苦労様」と言いたい。

    7日にこの写真を撮影したと言うことなので、8日にKCTVで放映、9日にインターネットで海外に配信という速度は実に早い。

    「20時報道」:「祖国統一汎民族連合」南側本部の盧修熙副議長板門店へ(2012年6月8日 「朝鮮中央TV」)

    「祖国統一汎民族連合(汎民連)」南側(韓国側)本部の盧修熙副議長が板門店などを訪れた様子を「朝鮮中央TV」が伝えた。

    http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-08-18.flv

    関連ニュースは、韓国の新聞「朝鮮日報」にも掲載されている。

    「朝鮮日報日本語版」:無断訪朝の汎民連幹部、人民服姿で板門店に
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120609-00000570-chosun-kr

    盧修熙さんは、4月頃からたびたび北朝鮮のメディアに登場し、「労働新聞」やKCTVで写真や動画が紹介されている。いつか、ここに記事として書こうかと思っていたが、今まで書かなかった。そもそも、どんな経歴の人かよく分からなかったのであるが、上記の「朝鮮日報」記事によると「世運商店街で露天商」をしていたとのことである。2012年の世運商店街がどうなっているのか分からないが(まだ存在するのだろうか?)、盧修熙さんが露天商をやっていた頃(80年代)には、私もよく家電製品を買いに出かけた。龍山に大規模家電街が形成されるまでは、ソウルの電気街といえば世運商店街であった。だから、もしかすると、私も盧修熙さんの露店で何かを買ったのかもしれない。その後の盧修熙さん遍歴については上記の記事を参照されたい。

    初めて盧修熙さんをKCTVで見たときは、北朝鮮がでっち上げた「南側」人士かと思った。というのは、KCTVのカメラの前で「金日成将軍の歌」を口ずさんだりしたからである。これを見て、さすがに本当の「南側」人士ではないと思ったが、本当に南側人士だったとは驚きである。時代が変わったとでもいうべきか。「前科19犯」の強者というべきか。

    盧修熙さんは、朝鮮戦争の停戦協定が調印された建物を見学している
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-08-18.flv

    この建物は、北側からの板門店観光のルートに入っており、私も盧修熙さんと同じ席に座って、案内員ドンムに写真を撮ってもらった。調印場ではやはり「この席」に座るのが習わしのようで、駄目とは言われないが、あまり反対側には座らないようである。なぜか?こちら側に北朝鮮代表が座ったからである。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-08-18.flv

    どこで着替えたのか分からないが、盧修熙さんは人民服姿になり、板門閣の展望場にやってきた。私もここから南側を眺めたのだが、南側から北側は何回も眺めていたので、何とも異様な感じであった。中国人観光客もここに来ていたが、そのうち一人が知ってか知らずか、韓国の「愛国歌」を口笛で吹いていたのにはたまげた。北朝鮮側の関係者は誰も制止しなかった。中国人の若者であったが、中国は朝鮮戦争の当事者であるにもかかわらず、彼らにとってはあまり関係のないことになってしまったのかもしれない。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-08-18.flv

    そして、望遠鏡で韓国側が設置したというコンクリートの障害物を見たようだ。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-08-18.flv

    「朝鮮日報」記事には、盧修熙さんは、かつて北朝鮮を無断訪問した人々のように、板門店経由で韓国に戻るのではないかと書かれている。あまり滞在が長引くと、宣伝材料としての価値も低くなって来るであろうから、そろそろ韓国に戻った方が良いのかもしれない。

    「米キング特使:ミャンマーの改革は北朝鮮が見習うべき偉大な改革である」(2012年6月8日 「The Washington Post」

    米国のキング人権問題担当特使の記者会見での発言をThe Washington PostがAPを引用しながら紹介している。

    http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/us-special-envoy-myanmars-reforms-are-a-great-example-for-north-korea-to-follow/2012/06/08/gJQAoAL4MV_story.html

    同特使は、昨日の日本における日本外交当局者との協議に続き、今頃はソウルで韓国外交当局者と打ち合わせをしているはずである。

    同特使は、北朝鮮に対する食料援助の可能性について、ロケットの発射が「現状において、食料援助を可能性の外に追いやってしまった」とし、「今後、検討する可能性はあるものの、現状では考えていない」としている。これは、米国務省が示してきた態度と一致する。しかし、ロケット発射を直接的な援助中断の原因としながらも、「米国が憂慮しているのは、平壌が援助を最も必要としている人々に物資が届けられているんかどうかについて、米国が監視することを許すかどうかである」とし、「約束」を破った平壌がモニタリングについても「約束」を破るのではないかという憂慮を示している。ただし、ロケットを発射したから絶対に駄目だと言っているのではなく、「約束」を守れるのであれば援助を考慮するという含意もあるように思われる。米国は、人道援助と政治は切り離すとしてきたので、本来であればロケット発射と関係なく栄養不足の朝鮮人民に援助を始めるべきであろう。それが、「援助をしても必要な人々に届けられるかどうか分からないのでしない」、そしてその責任は米国にではなく北朝鮮にあるというのは、ロジックとしては一応成立するが、実は、人道援助と政治が切り離されていないことの証左でもある。オバマさんは、大統領選挙を控え、「2.29合意」での手痛い失敗を繰り返したくないのであろう。

    また、キングさんは「北朝鮮の干ばつのニュースは見たが、先週、大雨が降ったというリポートもあるので、干ばつもある程度緩和されたであろう」とも述べている。そして、「米国は北朝鮮の食料状況についての全般的なアセスメントは持っていないが、昨年と同程度であろう」と予測している。なぜ「同程度」なのかは分からないが、別記事にも書いたように、干ばつと集中豪雨は北朝鮮のように河川や農地といった農業基盤が脆弱な国には大きな被害をもたらすことは間違いない。

    記事のタイトルにもあるように、キングさんは北朝鮮に対し「ビルマ」の改革を「肯定的なもの」として捉え、自らもそれを進めるようにと述べ、その「肯定的なもの」としてIAEAによる核査察を挙げている。実に、IAEAによる核査察は「2.29合意」に含まれており、北朝鮮も前向きに取り組んでいた事項である。続けてキングさんは、「そうすれば、何か他の方向に向けての肯定的な動きが、ビルマで見られたようにあると思う」と述べているが、「2.29合意」に立ち返ればそうした流れができるということであれば、米朝共に是非、そういう方向に向けて努力してもらいたいものである。

    中国もIAEAの理事会で米朝に対して「2.29合意」に立ち返るよう促したという報道があるが、朝鮮半島の安定という中国の国益がこうした動きの背景にあるにせよ、当面進むべき方向はそれしかないのだから、米朝間の仲裁者としての役割を十分に担ってもらいたい。

    「聯合ニュース」:「2月の米朝合意 中国高官が履行努力促す」
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120606-00000020-yonh-kr

    北朝鮮にとってミャンマーの改革は一つの参考にはなろうが、「南ミャンマー」が存在しないミャンマーと「韓国」が存在する北朝鮮、冷戦とはほぼ無関係のミャンマーと冷戦の残滓である朝鮮半島などという点で、「同じように」というわけにはいかないであろう。

    「朝鮮で7、8月に多くの雨が降る見込み」(2012年6月8日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」は、「北朝鮮の今年の梅雨は、7月上旬頃に始まり8月中旬までで、西海岸と東海岸中部、南部の一部地方に集中豪雨を伴い比較的多くの雨を降らせるであろう」と「気象水門局署長 朴・スンニョ」さんの言葉を引用しながら伝えた。朴さんは、北朝鮮のお天気「オバサン」(気象学者)で、「20時報道」にも時々登場して気象解説をしている。朴さんは、「東海岸の北部地方では今月から、南部地方では7~8月に断続的な低温現象がある」とも述べている。

    農業生産に必要な降雨量が回復するのは良いことだが、「集中豪雨」とも言っているので、今度は洪水が心配される。干ばつと洪水のダブルパンチということになると、北朝鮮の農業生産へのダメージは相当に大きくなる。北朝鮮では、干ばつ対策として河川から水路で引き水を確保しようとしているが、臨時に作った水路に大量の水が流れ込めば、溢れ出すことは容易に想像される。また、異常低温も農業生産に影響を与えるであろう。北朝鮮当局には、90年代の悲劇を繰り返さぬよう、適切な措置を講じて欲しいものである。

    「<録画実況>我が党と人民の最高指導者であられる敬愛する金正恩同志をお迎えし盛大に開催された朝鮮少年団創立66周年慶祝朝鮮少年団全国連合団体大会」(2012年6月6日 「朝鮮中央TV」)

    金正恩さんが朝鮮人民の前で2回目の演説を朝鮮少年団体大会で行った。演説原稿は、昨日、「朝鮮中央通信」が配信していたが、KCTVの動画は今朝、ウリミンジョクキリで配信が始まった。

    http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-06-10-1-y.flv

    金正恩さんの演説であるが、気のせいか、第1回目よりもうまくなったし、体を揺する動作も小さくなったようだ。演説の内容は、朝鮮少年団創設の経緯、金日成・金正日さんとの関係などを述べた後で、「みなさんは、先軍革命の継承者であり、未来の主人公です。未来の朝鮮は、我が少年団員たちのものであり、みなさんの姿に朝鮮の明日が映っています。我が党は、みなさんに世の中で最も立派な社会主義強盛国家を建設し引き渡そうと努めています」と述べている。

    そして、その後で金正恩さんがイメージする「最も立派な社会主義強盛国家」を示しているような次の言葉がある。

    「宇宙ロケットが青い空を飛び、CNC機械が並んでいる今日にはもちろんのこと、最先端に至る明日の我が国で、成績が悪い学生は何もできず、祖国の前進についていくことができません。学生少年は、強盛朝鮮のために勉強しようというスローガンを高く掲げ、わずかな時間も無駄にしないように、一生懸命勉強し、また勉強しなければなりません。世界を驚かす未来の世界的な発明家も我が少年団員の中から出なければなりません」

    金正恩さんは演説で様々なことをいっているが、子供たちに一生懸命勉強してもらい、北朝鮮の経済建設を先導する人材に育って欲しいと思っているのかもしれない。

    そして、演説冒頭で言った先生と父兄に対する感謝の言葉を演説の終わりでも繰り返し「強大なこの国、社会主義祖国のさらなる明るい未来のために、あらゆる努力を傾注している先生と父兄に、もう一度暖かい挨拶をいたします」と述べている。これが、金正恩さんの本来の人柄なのか、それとも演説用に創造されたものなのかは分からないが、少なくとも教師や親に頑張って欲しいと思っていることは間違いないであろう。

    演説をする金正恩さん。赤いスカーフは少年団の象徴。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-06-10-1-y.flv

    続いて、少年団代表が答礼として詩の朗読をする。もちろん、この詩も事前に金正恩演説を受けて準備されたものであろうが、何ともつまらない。というのは、その内容がほぼ金日成・金正日さんの偉大な業績に終始し、金正恩さんが演説に込めた「強盛国家建設のために頑張って勉強しろ」という素朴な付託にきちんと答えていない。子供たちが作った詩ではないことは明らかであるが、詩の作者は新しい風を感じる感性のない薄っぺらい人間ではないのだろうか。

    詩の朗読をする少年団員
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-06-10-1-y.flv

    金日成・金正日さんの偉大な業績を語る部分では、金正恩さんは両横に座った子供たちと何か話をしている。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-06-10-1-y.flv

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-06-10-1-y.flv

    会場には、この詩を聞きながら泣いている子供や先生も見受けられた。やはり金日成・金正日さんの話というのは、人々を泣かせるようだ。上に詩の作者の悪口を書いたが、亡き金日成・金正日で人々の感涙を誘い、次に金正恩さんをそれに重ね合わせて持ち出すという演出は一流である。もちろん、カメラが来たので「泣くふりをしている」ということもあろうが、次の写真の金正恩さんの後ろに立つ警護要員と思わしき男性もハンカチで目を拭いていることからして、必ずしも演技ではないのであろう。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-06-10-1-y.flv

    最後に、少年団員が金正恩さんに誓いの言葉を述べている。こちらの内容もおもしろくないが、繰り返し「知・徳・体」を述べている。知と体は勉学や体育であるが、「徳」というのは指導者や党に対して忠実な人間になろうという意味であろう。そもそも、少年団組織というのは、そういう人間を育成するための組織であろうから、当然といえば当然かもしれない。金正恩さんも「組織生活や組織活動をしっかりやれ」と言っているが、実態として何をやっているのか詳しく知りたい。

    「逆賊一味は自ら最後の選択をしなければならない-朝鮮人民軍参謀本部公開通牒状」(2012年6月4日 「朝鮮中央通信」)

    韓国のマスコミ各社が、平壌に2万人の子供たちを招待して行う少年団関連行事を否定的に伝えていることに対して、朝鮮人民軍参謀本部が「公開通牒状」を出した。

    北朝鮮が反発している理由は、韓国のマスコミが少年団関連行事を「金正恩の人気取りのため」と批判していることが、北朝鮮の「最高尊厳」を冒涜する行為だからだという。

    「公開通牒状」では、「見せるための行事」、「人気集めの集中行事」、「好感を得るための行事」、「(その)様子をみると、ヒットラーも真似している」、「ナチスの少年国民隊の子供を育てる政治ショーを展開している」などと書いていることが「最高尊厳の冒涜」としている。

    そして、朝鮮人民軍の将兵は、こうした「冒涜をする者を銃隊で断固として決算することをみな願っている」とし、新聞社所在地の経緯度を「朝鮮日報社、ソウル市中区北緯37度56分83秒、東経126度97分65秒の位置」などと具体的に挙げながら、「最高尊厳」を冒涜する者は「見逃すことができないということが我々軍隊の鉄のような意思である」とし、「我が軍隊の打撃に全てのことをそのまま委ねるのか、そうでなければ遅ればせながら謝罪して事態を収拾する道に出るのか」と「最後の選択」を迫っている。

    そして、「悪行の巣窟が一つや二つ吹き飛んでも、その責任は全的に逆賊一味が取らなければならない」とし、「我々は既に布告したとおり、我々式の無慈悲な聖戦で応えるであろう」としている。

    いずれの国の政治家も少なからず「人気集め」は行っている。それが、自由選挙による投票を前にして行おうが、自動的に決まってしまった結果を受けてであろうが、政治家としての自然な行動であろう。むしろ、それすらなければ、つまり「国民からの人気」に関心すらなければ、独裁恐怖政治の極地ということができるであろう。その意味で、金正恩さんが子供たちを平壌に集めて人気取りをするのは理にかなっているし、北朝鮮から流れてくる映像を見る限りでは、子供たちも純粋に楽しんでいるようなので、それはそれでよいのではないだろうか。

    6月3日の「20時報道」でも、各地から平壌にやってきた子供たちの様子が紹介されている。地下鉄乗り場のエスカレーターにたくさんの子供たちが乗って降りてくる映像の後で、KCTVのレポーターが子供たちに「エスカレーターに乗って降りてきましたね。どうでしたか?」とインタビューしている。日本や韓国では考えられないような質問であるが、北朝鮮ではやはりエスカレーターは平壌にしかないのであろう。確かに、私が乗った平壌地下鉄のエスカレーターは、とても長かったが、それでもである。また、子供たちに地下鉄に何回乗ったことがあるのかと質問している。この子たちは地方から来た子供たちなので、1度とか3度とか言っていた。日本にも地下鉄が走っていない都市はいくらもあるので、これは同じかもしれない。映像で紹介された子供たちは、千里馬線の勝利駅から戦友駅まで乗ったようである。地下鉄車内では「この世にうらやましことは一つもない」という歌をみんなで歌っている。「うらやましい」とは相対化が必要である概念なので、相対化する機会がないのであればそういうことになるのであろう。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=10029

    6月1日の「朝鮮中央通信」が「6.1国際子供デー62回記念親善大会 進行」という動画を配信している。その中に、過去記事にも書いた「敵たたき殺し競技」をはっきりと見せる動画があった。

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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=641460

    見てのとおり、「ネズミ明博」と米兵が立ち並んでおり、それを棒を持った子供が叩き、ゴールに向かって走っていく。このようなことを「国際子供デー」の行事としてやらせるのは、全くナンセンスであるということは過去記事にも書いたが、「尊厳」というのはお互いに尊重するべきものではないのだろうか。

    「<特集>愛を運び、幸福を運び、平壌の空へ」(2012年6月2日 「朝鮮中央TV」)

    両江道の子供たちが航空便で平壌に向かう様子を紹介する番組を「朝鮮中央TV」が放送した。

    過去記事にも書いたが、地方に民間空港があるのかとても疑問だったのだが、この放送を見ると民間空港らしき場所が映っている。軍用との共用かもしれないが、建物は民間空港のようである。

    少年団代表に選ばれた子供の母。字幕には「恵山市鉄道分局労働者 朴ヒョスク」と書かれている。「平凡な労働者の子供」を平壌に招いてくれる金正恩さんに対し感謝の言葉を述べている。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-02-18.flv

    高麗航空の飛行機。後ろにもう1機いる。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-02-18.flv

    飛行機を見送る人々。左にあるのが管制塔、右が待合室か。フィリピンの小さな地方都市にある空港のような感じだ。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-02-18.flv

    飛行機に乗り込む子供たち。手にしているのは搭乗券。教育的配慮なのか、タラップの下では、一応、高麗航空の職員が搭乗券をチェックしているようだ。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-02-18.flv

    高麗航空のフライトアテンダントの高ユンミさん。「今まで多くのお客さんのお世話をしましたが、このようなことは初めてです」と語っている。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-02-18.flv

    平壌に向けて飛び立つ高麗航空機
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-02-18.flv

    機内で子供たちを歓迎する機長。持っているマイクは、KCTVの放送機材のマイクのようである。私が乗った機体には機長の頭の両側辺りにテレビモニターが設置されており朝鮮歌謡が流れていたが、この機体にはないようである。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-02-18.flv

    平壌に到着した子供たち。日本から輸出された中古バス(ドアに「自動扉」と表記されてる)に乗り込んでいる。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-02-18.flv

    <追記:2012年6月13日>
    書き忘れていたが、先週、「朝鮮中央TV」の番組(番組名失念ながら、「20時報道」か6.6に関する特別番組)を見ていたら、上の写真にある空港名を言っていた。三池淵空港とのことで、白頭山観光などに使われる空港である。どうやら、金正恩さんが航空便を準備したのは、この三池淵空港空港を使える地域と羅先市に近いオラン空港(軍用空港)の子供たちのようである。三池淵空港については、外国人の白頭山観光の際に使われているようであるが、オラン空港の方はどうなのであろうか。羅先地域を開発するためには、空港の一つもあった方が良いと思うのだが、軍用ということで外国人は近寄れないのかもしれない。「朝鮮中央TV」も上の写真のように三池淵空港の映像は流していたが、オラン空港の方は流さなかった。

    「20時報道」朝鮮における国際子供デーの様子(2012年6月1日 「朝鮮中央TV」)

    KCTVの「20時報道」で北朝鮮各地の国際子供デーの様子を紹介している。

    金正恩さんが5月30日に訪問したキョンサン幼稚園には、金正恩さんが「贈る」と約束した遊具が届けられた。予め準備しておいた中国製の中古遊具であろう。確証はないのだが、外見はマニラの大型ショッピングセンター内にあるアミューズメントセンターに置かれている中国製の中古と類似している。ただし、飛行機だけは、主体の国らしく「高麗航空」化してある。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=10009

    それはよいのだが、先軍政治とはいえ、子供たちに戦争や憎悪心を植え付けるのはいい加減にやめられないのであろうか。

    キョンサン幼稚園の先生と子供たちであるが、後ろのボードを注目すると戦車と戦闘機が描かれている。報道では何も言っていないが、戦車組と戦闘機組に分かれて運動競技をしているようである。こんなことをせずに、北朝鮮の国旗にちなみ赤組と青組でやれば良いのに。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=10009

    この子は、戦車の絵を描いている。私も戦車や軍艦は大好きで、子供の頃はこれらのプラモデルをよく作った。しかし、それらはどこの国の物でもよく、かっこよければ良かったのである。この子にとっても戦車はかっこよいのであろう。ただ、大きな北朝鮮国旗がたなびいているところが私の子供の頃と異なる。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=10009

    先軍時代の子供なのか、軍人の役も演じている。誤解をされないように書いておくが、「20時報道」には、日本の子供たちが普通にやるような動物のかっこうなどをして登場する子供の方が圧倒的に多い。日本の幼稚園では、軍人のまねなどしないという意味である。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=10009

    「20時報道」のナレーションによると、運動競技の中には「敵のたたき殺し」や「偵察兵走り」などがあるそうである。「偵察兵走り」は障害物競走なのかもしれないが、「敵のたたき殺し」は絶対にいただけない。下の静止画に対する直接的なナレーションはなかったが、子供たちは銃のおもちゃを持って走り、顔を叩いているので、これが「敵のたたき殺し」であろう。静止画ではよく分からないかもしれないが、恐らく「たたき殺し」の対象は「ネズミ明博」であろう。

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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=10009

    国連のHPに書かれている、国際子供デーの精神を忘れないで欲しい。

    "We were all children once. And we all share the desire for the well-being of our children, which has always been and will continue to be the most universally cherished aspiration of humankind."

    We the Children: End-decade review of the follow-up
    to the World Summit for Children
    Report of the Secretary-General (2001)


    http://www.un.org/en/events/childrenday/

    「<記録映画>敬愛する金正恩同志が新たに建設されたチャンジョン小学校、キョンサン託児所、キョンサン幼稚園を現地指導された」(2012年5月31日 「朝鮮中央TV」)

    金正恩さんが、万景台高層住宅地区内に新たに建設された、小学校などを現地指導したと「朝鮮中央TV」が動画で紹介している。「新たに」と書かれているが、動画の中で過去にこの学校を金日成さんや金正日さんが訪れているようなので、正確には建て直したということであろうか。この視察は、下の記事に書いた、住宅視察の「ついで」であろう。これだけ大きな住宅を建てるのであれば、住民の子供たちが通う学校なども当然必要となろう。居住可能世帯数を北朝鮮メディアが繰り返し伝えていたが、1万戸だったか4000戸であったか失念した。ともかくも、多くの世帯が入居することは間違いない。

    まず、小学校を視察している。掲げられているスローガンは「朝鮮のために学ぼう!」である。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-01-12-y.flv

    次に、校長先生が金正恩さんと腕を組みながら校内を案内する。この女性、この記録映画では「校長先生」と紹介はされていないのだが、そうであろう。「指導者と肩を組んで、腕を組んで」というのは、金正恩体制のスローガンなので、この腕組みは演出であろう。
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    http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-01-12-y.flv

    「コンピューター講義室」だそうであるが、まだコンピューターは置かれていない。「直ぐに開校する」とナレーションで言っているので、早く導入しなくては間に合わない。
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    http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-01-12-y.flv

    興味深い教室があった。下の2枚の静止画を比べて欲しい。上の静止画には写真が1枚しか貼られていない。映像を見る限りでは金正日さんの写真であろう。下の静止画には2枚の写真が貼られている。金日成・金正日さんである。通常は、下の静止画のように2枚並べて掲げることになっているのであるが、上の部屋はなぜ1枚しかないのだろうか。
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    http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-01-12-y.flv

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    http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-01-12-y.flv

    その後、金正恩さんは託児所と幼稚園を現地指導している。幼稚園では「園児たちが公演を準備したので、貴重な時間を割いてそれをご覧になった」そうである。韓国のメディアだったか、金正恩さんが園児たちと「愛の写真」を撮ったことを取り上げながら、宣伝用だと言うようなことを書いていたが、私はむしろ彼が園児たちの公演を見ている顔に注目した。「愛の写真」(北朝鮮では首領様や将軍様と写真を撮ることをそういうだけである)は演出でいくらでも撮れるが、あの顔は彼の子供に対する気持ちが表出した真顔であろう。金正恩さんに夫人がいるのかどうかについては諸説あるが、いるとして、子供もいるのであろうか。2012年の韓国は知らないが、30年前の韓国では「男は結婚してこそ一人前」という考え方が一般的であった。そう考えれば、北朝鮮でも同じであろうし、ましてや指導者たるべき者、やはり夫人がいるべきであろう。そして、金正恩さんに子供がいるのであれば、年齢的には幼稚園ぐらいであろうか。思い込みかもしれないが、あの笑顔は最高司令官の笑顔ではなく、子供(国家ではない)の父としての笑顔のような気がする。子供がいないときの単なる「クソガキ」も、自分に子供ができると皆可愛くなるのは私だけであろうか。

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    http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-01-12-y.flv

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    「<記録映画>敬愛する金正恩同志がチャンジョン通りに建った児童百貨店と住宅を視察された」(2012年5月31日 「朝鮮中央TV」)

    金正恩さんの動静に関する報道は実に早い。5月30日に行った視察を31日には報道し、ウリミンジョクキリには6月1日朝には掲載されている。金正恩さんの新しいスタイルを強調するという目的の他に、動画処理技術の向上(もちろん、これは世界的な動向で、個人所有のPCでもリニア編集をストレスなくできる時代になった)や金正恩さんが細かな編集や処理にこだわらず、映ったままを出させているのかもしれない。

    これが、児童百貨店の内部である。まだ、未完成ということで一部に工事用の支柱などが残っている。なんでも、3階建ての店舗のようで、ここを子供用品で埋め尽くすという説明である。イメージとしては、トイザラスであろうか。しかし、埋め尽くすための商品はどうするのであろうか。やはりここも商品のほとんどがmade in Chinaになるのであろうか。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-01-11-y.flv

    次にやってきたのが一番高層の住宅のペントハウスのようである。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-01-11-y.flv

    報道では、ペントハウスとは明言していないが、ナレーションで45階と言っているし、エレベーターが45階に昇っていく様子を映し出している。それにしても、エレベーターの表示が主体の国としてはよろしくない。「F」とは何事か。朝鮮語で「층」(階の意味)と表示して欲しいものである。表示器のLEDのセグメントを増やすなりして、是非とも頑張って欲しいところである。まさか、中国製をそのまま使っているということはあるまい。エレベーターであるが、少なくとも制御部分でなく本体については、北朝鮮の工場で製造している様子が、過去に「20時報道」で紹介されている。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-01-11-y.flv

    さすがにペントハウスは広い。4LDKか5LDKはありそうな上、各部屋は10畳以上ありそうである。誰が住むのだろうか。社会主義国ではあってはならないような気もするが、それが社会主義国の現実であり、一方で資本主義化の兆候ともいえよう(期待ではあるが)。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-01-11-y.flv

    金正恩さんは、ペントハウスのベランダから怖々と身を乗り出して下の方を少しだけ眺めた。そして直ぐに、笑いながら同行者たちに何かをいっている。「高いなぁ」と言っているのか、「怖いなぁ」と言っているのか、同行者たちはそれを聞いて笑っている(読唇術を試みたが、さすがに私には無理だった)。金正日さんが飛行機に乗らなかった一つの理由として、高所恐怖症であったと言われているが、金正恩さんはそれほどではないにせよ、高いところは怖いのであろうか。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-01-11-y.flv

    続いて、金正恩さんは、普通の住居も視察しているようである。下の写真のように、エレベータの直ぐ脇にあり、ペントハウスと比べると狭いことが分かる。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-01-11-y.flv

    キッチンの様子であるが、ペントハウスのそれとあまり変わらない。窓越しに外の様子が見られるが、道を歩く人が見えているので、2階か3階であろう。ペントハウスだけ見て満足するのではなく、普通の住居もきちんと視察するところなど、私は評価する。
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    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-06-01-11-y.flv

    平壌の高層住宅建設については、いろいろな批判はあるものの、凱旋門のような記念碑ではなく住居としての実用性がある分だけよいのではないだろうか。もちろん、KCTVが映し出していない室内もこれほどまでにきちんとできあがっているのかは分からない。高層住宅建設は、金正日さんのアイディアであるが、朝鮮人民がよく使う表現を借りれば「将軍様が生きておられれば、これをご覧になりどれほど喜ばれたことでしょうか」ということになろう。

    <追記:2012年7月4日>
    金正恩さんが訪ねたこの部屋に入居した人を紹介する記事「ここが、まさに私の家です」が「朝鮮中央通信」に出た。内容は、いかにこの住宅が素晴らしく、平凡な労働者が「一銭も払うことなく」素晴らしい住宅に住める社会主義制度を称賛するものである。たいした話ではないが、記事によると2階の部屋ということで、上の記事に書いた「2階か3階」という観察が的中していたのが、私としては嬉しかった。

    一方、「朝鮮中央TV」の「20時報道」によると、45階のペントハウスには中区被服工場の労働者が入居したと紹介している。この労働者は、「テレビで見ていたときは、私が住めるとは想像もしなかった」と言っているが、私も「平凡な労働者」が住むとは思わなかった。事実如何について確認するすべもないが、党か軍の幹部が入居するのではという予想は外れたのであろうか。

    「20時報道」:
    http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-07-03-17.flv

    「世界禁煙の日に際し行事進行」(2012年5月31日「朝鮮中央通信」)

    世界禁煙デーに平壌で海外の海外から代表を招いて行事が行われたようた模様を「朝鮮中央通信」が伝えた。

    金正日さんも2008年に倒れた後であったか、禁煙をして朝鮮人民にも禁煙を呼びかけていた。ところが、ある日からまたタバコを吸い始めたようで、それが死期を早めた一つの要因となったのかもしれない。また、金正恩さんも愛煙家のようで、韓国のメディアが金正恩さん愛飲のタバコを北朝鮮メディアの動画から分析していた。イヴサンローランだったよう気がするが、よく覚えていない。

    さて、そんな最高指導者がいる国で世界禁煙デーの会議が開かれたわけである。海外や北朝鮮の禁煙運動関係者がプレゼンテーションをしている。

    人民文化宮殿で開催された会議
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    Source: KCNA, http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=542584

    会議の主題は「タバコ工業の干渉反対」となっているが、社会主義国、ましてや北朝鮮のようにリーダーの一声で動くような国ならば、干渉などありようもないと思うのだが
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    http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=542584

    「禁煙栄養丸」、さてその効力は・・・
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    http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=542584

    字幕には「禁煙活動、これは人民の健康増進のための社会的な問題であるのと同時に、自分自身と家庭のための運動である」と書かれている。
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    http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=542584

    禁煙デーのポスター1:「未来のために、タバコを断固としてやめよう!」と書かれている。
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    http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=542584

    喫煙が心臓に悪影響があることを啓発するポスター
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    http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=542584

    北朝鮮のタバコ統制法第32条「行政的責任について」、その内容は分からないが、タバコのパッケージに健康への影響に関する警告を表示するなどの規定があるのだろうか。私は非喫煙者なので、平壌でタバコのパッケージをまじまじと見る機会はなかったが、案内員ドンムは愛煙家であった。北朝鮮は喫煙率に関する公式データなど公開していないと思うが、観察した限りではかなり高いと思う。1980年代の日本ぐらいであろうか。
    禁煙デイ.flv_0000841¥18
    http://www.kcna.kp/userAction.do?action=videoindex&lang=kor&newsyear=2012&newsno=542584
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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