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    「南朝鮮傀儡情報院スパイ記者会見」:証拠とされた写真 (2015年3月28日 「朝鮮中央TV」)

    過去記事に追記したように、昨夜、「南朝鮮傀儡情報院スパイ」の内外記者会見を2時間ほど放送した。会場にはテレビが設置され、証拠などが見せられたが、その場面を紹介しておく。

    大同江岸で「XXXから資料を受け取る金グッキ」。形式的には北朝鮮当局が証拠として撮影したようだが、逮捕後の再現なのかもしれない。
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    Source: KCTV, 2015/03/28放送

    その直後に逮捕され、車で連行される。
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    Source: KCTV, 2015/03/28放送

    軍用の貴金属を持ち出すために、川をボートで渡ろうとしたところで国境警備隊に逮捕された崔チュンギル。
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    Source: KCTV, 2015/03/28放送

    金グッキの北朝鮮ビザ。彼は商用(北朝鮮の取引先との打ち合わせ)名目でビザを取得して平壌と中国を行き来していたようだ。国籍は「南朝鮮」と書かれている。よって、入国自体は合法。もちろん、「目的外活動」は違法。
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    Source: KCTV, 2015/03/28放送

    金グッキの韓国パスポート
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    Source: KCTV, 2015/03/28放送

    金らに協力して逮捕された北朝鮮人。「人民の不満、市場の様子、最下層人民の生活実態」などを報告するよう要請されていたという。それにしても「市場の様子」が国家機密というのは何だろうか。また、「最下層人民」というのも金らが使った表現の引用なのかもしれないが、北朝鮮には「最下層」などいてはならないことになっているはずである。金らは、北朝鮮の教科書も持ち出すよう求めたという。話を聞いていると、どうも国情院のスパイではなく、脱北者団体か北朝鮮暴露メディアに雇われた民間人のような気がしてならない。
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    Source: KCTV, 2015/03/28放送

    というのは、彼らが使う装備が全て民間用、しかも安物ばかりだからだ。その方が怪しまれないということなのかもしれないが、ジェームス・ボンドが使うような機材は一切出てこない。下は、その一部。日本企業も貢献したようだ。
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    Source: KCTV, 2015/03/28放送

    金らが北朝鮮でばらまかせた淫乱DVDなど。こちらも「日本女」(手前下のDVDに印字)が貢献しているようである。
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    Source: KCTV, 2015/03/28放送

    また、金らは北朝鮮保衛部が脱北者を取り調べる偽動画も作成したという。以下は、どこが偽なのかということを説明した動画の一部。

    「壁に頭をぶつけていない」と字幕
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    Source: KCTV, 2015/03/28放送

    この脱北者は棒で背中を殴打されるのだが「背中に何かが入っている」と字幕
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    Source: KCTV, 2015/03/28放送

    「階級章がない」と字幕
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    Source: KCTV, 2015/03/28放送

    記者会見で見せられた動画は中国の動画サイトからダウンロードしたものが使われたようだが、オリジナルは以下で見られる。
    KAOTIC.com
    http://www.kaotic.com/9621_Justice-Videos-Is-This-Fake-?--North-Korean-Torture-Video.html

    「白頭山銃隊は米帝の終末を宣言する」:武器が多数登場する動画、ミサイルも (2015年3月27日 「uriminzokkiri」)

    uriminzokkiriに弾道ミサイルらしきものを含む北朝鮮の武器が多数登場する動画がアップロードされていた。ストーリーは、最近よく登場する「米本土で決戦」というものなのであまり新鮮味はないが、まあまあおもしろい。

    2013年に公開された「米本土打撃計画」の作戦会議
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    Source: uriminzokkiri

    飛び道具1、ロケット砲か?
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    Source: uriminzokkiri

    飛び道具2、最近公開された対艦ミサイル
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    Source: uriminzokkiri

    飛び道具3、短距離ミサイルか
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    Source: uriminzokkiri

    上昇を続ける飛び道具3
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    Source: uriminzokkiri

    飛び道具4、短距離ミサイルか
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    Source: uriminzokkiri

    飛び道具4その2
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    Source: uriminzokkiri

    飛び道具4その3
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    Source: uriminzokkiri

    YouTube: https://youtu.be/mPcywRwKNAM

    「日本反動共の白昼強盗的な総連弾圧策動を強く糾弾する 朝鮮海外同胞援護委員会声明」:総連議長宅家宅捜索を非難、拉致問題調査への影響 (2015年3月27日 「朝鮮中央通信」)

    松茸の不正輸入事件との関連で総連議長宅が家宅捜索されたことを非難する「朝鮮海外同胞援護委員会声明」が27日に「朝鮮中央通信」で報道された。日本語翻訳バージョンがあってもよさそうなものだが、まだ出ていないので全文翻訳しておく。

    ****************
    日本反動共の白昼強盗的な総連弾圧策道を強く糾弾する 朝鮮海外同胞援護委員会声明

    総連と在日同法に対する日本反動共の悪辣な弾圧策動が再び危険水位を超えている。

    日本の警察当局は、26日、京都府、神奈川県、山口県、島根県の各警察本部で構成された合同捜査本部を急き立て、総連中央常任委員会議長、副議長をはじめとした総連幹部の自宅を突然家宅捜索する暴挙を強行した。

    特に、総連中央議長の自宅には、20人あまりの警察と装甲車まで動員して家の周辺を完全封鎖し、日本メディアの記者を呼び出して、物々しい雰囲気の中で捜索騒ぎをした。

    今、我々民族は、日本の警察当局のファッショ的暴挙と乱暴な人権蹂躙行為に込み上げる民族的憤怒を禁じ得ない。

    朝鮮海外同胞援護委員会は、民族の自主的権利と正義を愛し大切にする全ての朝鮮人民の名で、日本反動共の白昼強盗的な総連弾圧策動を強く断罪糾弾する。

    客観的事実が物語るように、日本警察当局の今回の強制捜索は、いかなる法的妥当性もない不法無道なチンピラ行為だ。

    いわゆる「朝鮮産松茸を中国産と偽造し輸入した」という東方株式会社は、総連とは何の関連もなく、さらに総連中央の高級幹部は、その存在さえ知らない。

    それは、膨大な警察武力が動員して、何時間もかけて隅々まで捜索したにもかかわらず、如何なる証拠も見つけることができず徒労に終わったことが明らかに証明している。

    今回の強制捜索は、日本の憲法と刑事訴訟法にも違反する前代未聞の違法捜査であり、在日朝鮮人に対する許しがたい人権蹂躙と民族差別行為である。

    日本の法律専門家と良心がある言論人も、突然強行された今回の強制捜索の法的妥当性と政治的目的に疑問を表し、その不当性を叱咤している。

    総連は、共和国の尊厳高い海外公民団体であり、総連と在日同法に対する侵害行為は、共和国の自主権に対する侵害となる。

    特に、日本で社会主義祖国を代表する海外同胞組織の責任者であり、共和国最高人民会議の代議員である総連中央議長と副議長の自宅に不法に侵入したことは、我々に対する公然たる挑戦に他ならない。

    日本の歴代政権も、総連組織と在日同胞に対し様々な形態の弾圧策動を行ってきたが、総連中央議長の自宅にはさすがに汚い足を踏み入れることはで着なかった。

    祖国解放70周年を迎える年に強行された日本当局による今回の反人類的暴挙は、過去の植民地統治期、我々民族に取り返しの付かない不幸と苦痛をもたらした軍国主義の亡霊の復活を連想させる。

    日本当局が不届きにも警察武力を急き立て、不法無道なファッショ暴挙を強行した政治的意とは、火を見るよりも明らかである。

    それは、日本社会の反共和国、反総連、反朝鮮人感情を煽り、日帝植民地の過去の歴史に対する謝罪と賠償を要求する進歩的世論を黙殺し、右傾化政策を合理化しようという不純な政治的浅知恵である。

    また、あらゆる手段を動員して共和国に対する、いわゆる独自的「制裁」措置を再び延長し、朝日関係改善のための時代的流れに人為的な障害を作り出そうとする政治的陰謀の産物でもある。

    三文茶番劇で誰それを驚かし、圧迫できるとでも思っているのであれば、それほど愚かな妄想はない。

    日本当局が米国の対朝鮮敵対視政策に便乗し、総連を標的として共和国の自主権を切りつけた以上、我々もこれ以上傍観し続けることはできない。

    朝日関係改善のための信頼造成が、いつになく切実に求められる時期に、日本がむしろ不信の噴火口を敢えて噴出させた以上、我々も相応の対応策を講じ、それにより招来される全ての結果と責任は全的に日本当局が取ることになる。

    日本当局は、軽率で無分別な今回の強制捜索に対し、総連と共和国の前に謝罪し、総連に対する迫害と弾圧策動が朝日関係を取り返しの付かない最悪の事態に陥れる自滅的行為であるということをしっかりと認識し、分別を持って行動しなければならない。

    2015年3月27日 平壌
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    政府がこのタイミングで総連議長宅の家宅捜索を実施させたのは、一行に進まぬ拉致被害者に関する調査への苛立ちの表れであろう。北朝鮮側もそれを「三文茶番劇で誰それを驚かし、圧迫」と感じているわけだが、彼らの「相応の対応策」が何なのか。拉致被害者調査中断という最悪の事態は、「声明」が形式的には「同胞援護委員会」というあまり聞かない組織により出されているという点で、避けられる若干の余地はある。また、「東方株式会社は、総連とは何の関連もなく、さらに総連中央の高級幹部は、その存在さえ知らない」とこの会社は既に北朝鮮により切り捨てられており、総連幹部にこれ以上の追求が及ばなければよいというスタンスも表明している。

    日本政府のこのジャブがどう効くのか、遠からず見えてくるであろう。

    <追記2>
    「朝日親善友好協会」が上と類似した「声明」を出した。(28日「20時報道」)

    <追記3>
    「朝鮮中央通信」が更新されており「朝日交流協会」も28日に類似した「声明」を出している。この声明で注目されるのは、
    「今回の事件で朝日平壌宣言とストックホルム合意履行に取り返しの付かない重い否定的結果がもたらされても、それに対する責任は全的に日本にある」としている点である。拉致問題調査合意である「ストックホルム合意」にもついに触れてきているが、未だに「委員会」の声明に留まっている。

    「南朝鮮当局が拡散している『原発ハッキング』事件に対する『北の仕業』説の真相を明らかにする 朝鮮民主主義人民共和国インターネット中央研究所真相公開状」:不可解な点 (2015年3月27日 「朝鮮中央通信」)

    昨年、12月6日に韓国の「水力原子力株式会社」にハッキング攻撃が加えられ、原発に関するデータが盗み出されただけではなく、原発を一時停止せざるを得ない事態になったという。韓国側では、一連のハッキングが北朝鮮の仕業であるとしているが、北朝鮮の「インターネット中央研究所」がそれに反駁している。大変長い「真相公開状」であるが、ざっと読んでみると、理解できない点がある。

    まず、ハッキングに使われた「キムスキ」という悪性コードが北朝鮮がこれまでも使ってきたものであるとの韓国側の主張に反駁している。同公開状によると「傀儡情報合同捜査団は、この悪性コードが自己の動作状態と感染した体系に対する情報を伝達する時に使ったメールアドレスが『北朝鮮式の名前』である「金スキ(김수키)」として登録されて」おり、「『金スキ』は元来『金スックヒャン(김숙향)』であったが、発音が(北朝鮮式に)訛り、その後『金スキ』」となったと「朴槿恵一味」は主張するが、「共和国で『金スックヒャン』という名前を表記する時、『ヒャン』と表記し、『キャン(컁)』と表記しない」。

    これはその通りである。

    しかし、次の説明が理解できない。「例えば、妙香山(묘향산을 《MyoHyangSan》)と表記し、묘컁산《MyoKyangSan》とは表記しない」としているが、「묘(myo)」に終声がないのだから「《MyoKyangSan》」と表記することもあり得ないし、発音上でもそのようにはならない。事例ならまだ他にもありそうなものだが、なぜこのような変な例を出してきたのだろうか。私の知らない何らかの発音上のルールがあるのかもしれないが、全く理解できない。

    もう一つは、「必要な資料を引き出したり、メール攻撃や脅迫文掲示のような経路として使われたVPNが管理する接続IPのうち、昨年12月に我々共和国のIP25個と逓信省傘下の通信会社KTPCに割り当てられたIP5個が接続」に使われたという「傀儡一味」の主張は間違っているという反駁である。

    その理由として「今、アジア諸国では、南朝鮮で運営しているインターネット・ゲームをするために、VPN業者に金を払い、その会社が提要するIPを利用し、ネットワークに接続している」からだとしており、「もし、傀儡共が『論拠』としているサイバー攻撃が行われた昨年12月に南朝鮮のVPNにが提供したIPを利用した全ての国、全ての人が『北朝鮮ハッカー』という結論になる」としているが、これも理解できない。無理に理解しようとするならば、北朝鮮から「南朝鮮のインターネット・ゲーム」をやるために、北朝鮮当局の規制を受けずに韓国のVPNに接続したことになる。北朝鮮の誰が「南朝鮮のインターネット・ゲーム」をやるのだろうか。

    もしかすると、VPNに関する私の理解が間違っているかもしれないが、よく分からない。

    その他の論拠は、それなりに納得できるのだが、上の2つだけは何とも理解し難い。

    「追憶の歌」:ポチョンボ、旺戴山時代のオールドメロディー (2015年3月26日 「朝鮮中央TV」)

    『労働新聞』や「20時報道」では報じられていたが、昨夜、「朝鮮中央TV」で「追憶の歌」と題する懐メロ番組を放送した。古い映像を編集した番組ではなく、数日前に平壌であった当時の歌手や演奏者が出演した演奏会の「実況録画」である。

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    Source: KCTV, 2015/03/26放送

    昨夜は、BGM程度で聞いていて画面はしっかりと見ていない。先ほど、高画質ファイルをuriminzokkiriからダウンロードできたので、追ってゆっくりと見ることにする。以下は、ざっと見た感想である。

    これまで、北朝鮮でこのような「懐メロ」番組があったのかなかった分からないが、私は初めて見た。古い楽曲はしばしば流しているが、このように当時活躍した歌手や奏者を一堂に集めて、当時を振り返りながらという構成は初めてである。形式的には、「将軍様」の音楽芸術指導を懐かしむ形になっているが、しっかりと「今と昔」を対比させるなど、エンターテイメント的要素も加えてある。

    「フィパラム(口笛)」を歌うチョン・ヘヨン。当時と今の背景映像が「懐メロ」番組らしい。
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    Source: KCTV, 2015/03/26放送

    ポチョンボの奏者だと思う(実は、ポチョンボはほとんど見ていない)が、みんなおじさんになった。しかし、当時のままのメラ入りシャツは現役のようだ。
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    Source: KCTV, 2015/03/26放送

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    Source: KCTV, 2015/03/26放送

    年齢まではっきりと書いてしまうところが北朝鮮的か。「パンガプスムニダ」を歌う李ギョンスク(45歳)。現在は平壌音楽大学声楽学部の先生になったようだ。
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    Source: KCTV, 2015/03/26放送

    聴衆も中高齢者が多い。
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    Source: KCTV, 2015/03/26放送

    「光明星節」にモランボン公演がなかったのでその代わりかもしれないが、来る「太陽節」には、モランボン公演はあるのだろうか。

    「南朝鮮傀儡情報院スパイ、反共和国情報収集謀略行為の犯罪真を自白」:北朝鮮で逮捕 (2015年3月26日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が26日、「南朝鮮傀儡情報院のスパイ」2名の記者会見が行われたと報じた。この記者会見場には、いつもいるロシア人記者以外に、西欧人と思われる記者がたくさん来ており、また、「スパイ」の声を直接拾うための各報道機関のマイクも卓上に設置されている。これまでのこの種の記者会見では、北朝鮮側が卓上に設置したマイクが1本だけあり、会場にアンプを通して流れる音をビデオカメラのマイクで拾っているケースが多い。また、今回の会見場所も、人民文化宮殿と明記しているところから、力を入れた記者会見であったことが伺える。

    記者会見をしている「南朝鮮傀儡情報院」のスパイ、金グッキ」
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    Source: KCNA

    会見会場の様子。これまで行われたこの種の記者会見の時よりも記者が多い。会場には記者だけではなく、駐朝外交使節も来ているという。
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    Source: KCNA

    左に座っている軍服を着た人物に関する紹介は静止画でも動画でもないが、国家安全保衛部関係者かもしれない。また、大きななモニターに調査過程で応酬された証拠品などを映している。頭を下げているのは、「南朝鮮国情院のスパイ」崔チュンギル。
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    Source: KCNA

    彼らの罪状は、北朝鮮紙幣偽造、(中国闇ドル商より)偽造紙幣入手、麻薬密造、最高尊厳冒涜資料作成、北朝鮮当局による逮捕者暴行映像の偽造、金正日訪中情報収集、北朝鮮幹部DNA収拾、人民軍服・軍人証不正入手、中国で働く朝鮮人民の韓国行き示唆及び実行など、実に多い。

    通貨偽造や麻薬密造など、国際的基準に照らしても明らかな犯罪行為も含まれているが、「最高尊厳冒涜資料作成」などは名誉毀損と表現の自由とのグレーゾーンにある。

    犯罪構成要件はさておき、記者会見を見ている限りでは、これらの行為が北朝鮮国内で行われたのではなく、全て中国、丹東と瀋陽で行われたということが問題である。北朝鮮の国家安全保保衛部員は中国で逮捕権を行使できないはずなので、逮捕したのは中国当局のはずである。だとして、通貨偽造や麻薬密造などの重罪を中国の法に照らして彼らを裁くことなく、なぜ北朝鮮に引き渡したのであろうか。この部分の説明が一切ない。

    北朝鮮の刑法では、国家転覆罪などの重罪は、それが国外で計画あるいは実行されたとしても、北朝鮮の刑法で裁けるよう規定されている。

    北朝鮮刑法
    第8条(公民、領域、現実原則)
    (省略)・・・共和国領域外で、共和国に反対したり、共和国公民を侵害した外国人にもこの法は適用する (当然、共和国公民には適用される)

    韓国人が「共和国公民」なのか「外国人」なのかは微妙なところだが、いずれにしても上記規定があるので同じである。北朝鮮が並べている犯罪事実からすれば、彼らは北朝鮮刑法の規定上では死刑になっても余ることになる。

    救われるとすれば・・・

    北朝鮮刑法
    第4条(祖国と民族反逆国威を悔やむ者の処理原則)
    国家は、祖国と民族に反逆行為を行った者でも、祖国統一のために積極的に立ち上がった場合、過去を問わず、刑事責任を取らせないようにする。

    という規定もある。崔チュンギルは「記者の皆様、民族の和合と統一のために二度と私のような奴が出てこないよう、世界の良心と公正な世論に訴えて下さることを痛切に、痛切にお願い申し上げます」と深々と頭を下げている。第4条の規定適用を想定してのコメントだろうか。

    ともかく、この問題について、中国側がどのように報道するのかが見物である。これから、中国の英語メディアを探ってみることにする。

    <追記>
    「中国で逮捕」と書いたが、関連するもう一つの記事を読み忘れていた。それによると「朝鮮民主主義人民共和国国家安全保衛部では、共和国に対するスパイ謀略行為を行う目的で侵入した傀儡情報院のスパイ、金グッキ、崔チュンギル共を現行犯で摘発、逮捕した」と書かれている。よって、北朝鮮領域内での逮捕である。

    『労働新聞』、「남조선괴뢰정보원 간첩들 국내외기자회견에서 반공화국정탐모략행위의 범죄진상 자백」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2015-03-27-0015&chAction=S

    <追記2>
    28日、2人のスパイの逮捕場面を「朝鮮中央TV」が放送。金は北朝鮮の大同江沿いで、崔は北朝鮮に渡る船の中で逮捕された。

    <追記3>
    番組は20時過ぎから22時過ぎまで約2時間放送された。逮捕シーンを隠し撮りしたような動画や安全保衛部が押収した証拠物件、北朝鮮の協力者らの動画証言があった。また、中国に潜伏しているという国情院のスパイの名前、年齢、住所などを具体的に列挙していた。

    金と崔は、これまで行われたこの種の記者会見同様、紙を読み上げていた。不規則発言をさせないためか、横に座った安全保衛部も彼らが読み上げるのと同じと思われる原稿を眺めていた(紙をめくるタイミングが同じだったので同一原稿であろう)。

    また、記者の質問も予め設定されていたようで、それに対する答えも全て原稿に書かれていた。質問した記者は、北朝鮮メディアと総連の朝鮮新報記者のみであった。総連から派遣された女性記者は、紙を見ながら短い質問を読み上げていた。

    見てて観じたのは、金も崔も感情を全く表さずに話をしたことである。金は「申し訳ありません。許して下さい」と何回か立ち上がって深々と頭を下げたが、それすら感情移入は感じられなかった。彼らが本当のスパイだとして、最後の抵抗だったのかもしれないが、感情表現が豊かな朝鮮民族にしては実に不自然であった。

    「17時報道」:ロシアの戦勝節慶祝行事について報道、金正恩訪ロとの関連、済州島にロシア核爆撃機接近? (2015年3月25日 「朝鮮中央TV」)

    3月25日に放送された「17時報道」の中で、「朝鮮中央通信」が報じた「ロシア大統領戦勝節慶祝準備をしっかりすることを強調」という報道とほぼ同内容の報道があった。『労働新聞』HPを「戦勝節」あるいは「戦勝節慶祝」で検索すると、北朝鮮の7.27戦勝節の記事はたくさん出てくるが、ロシアの「戦勝節」の記事はこれまで一つもない。「朝鮮中央通信」も同様で、この「17時報道」の元となった報道以外では、「戦勝節」というキーワードではロシアの「戦勝節」関連記事は出てこない。

    このようなことからすると、この報道が北朝鮮国内向けに初めてロシアの「戦勝節慶祝」を報じたものではないだろうか。「朝鮮中央通信」と「17時報道」の内容は以下のとおり。

    ****************
    (モスクワ3月20日発 朝鮮中央通信)
    ロシア大統領ウラジミール・プーチンが17日「勝利」組織委員会の会議で(朝鮮中央TV:「少し前、ある会議で」)演説し、戦勝節慶祝行事準備をしっかりとすることについて強調した。
    彼は、今、西側が現代ロシアの威力と戦勝国としての地位を既存するために、あらゆる策動をしていると非難した。
    彼は、”戦勝節慶祝行事は”(朝鮮中央TV:” ”部分無し)、ロシア人民の統一団結を検証する契機となり、その準備事業を(朝鮮中央TV:「契機となる慶祝行事準備事業を」)頑強に進め、偉大な祖国戦争に対する真実とファシズム打倒でソ連が果たした役割を見せなければならないと言明した。
    ***************

    このニュースの次には、ベネズエラ大統領が反米キャンペーンを世界的に展開することを訴えたという報道がある。形としては、国際情勢に関するニュースの一つとしての扱いであるが、金正恩の訪ロと関連して興味深い。なお、このニュースは、この時、1回限りの放送である。

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    Source: KCTV, 2015/03/25放送

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    Source: KCTV, 2015/03/25放送

    関連して、25日の米国務省定例記者会見では、記者から「ロシアの核爆撃機が済州島に接近したのだが」という質問が出され、国務省報道官は「その報道は見ていないので、確認してみる」と答えている。記者は、韓国メディアが伝えた情報を引用しているものと思われるが、米韓合同演習をロシアが威嚇したとすると、自国極東地域への脅威もさることながら、北朝鮮との連帯強調の意図があったのかもしれない。

    U.S. Department of State, Daily Press Briefing, http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2015/03/239769.htm#SOUTHKOREA

    「高麗人参を訪ねて 開城 (第1部)」:全文日本語字幕 (2015年3月25日 「朝鮮中央TV」)

    数ヶ月前に初めの7分間だけ日本語字幕を付けてYouTubeにアップロードしておいた「高麗人参を訪ねて 開城 第1部」全てに日本語字幕をつけた。誤訳や漢字未調査の部分は残っているが、ストーリーは理解できると思う。北朝鮮の番組らしからぬできのドキュメンタリーなので、関心のある向きはご是非覧頂きたい。

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    Source: YouTube, https://youtu.be/NNM9y7Z2Sg4

    「私達の言葉常識手帳 비키다 と 비끼다」:日本語話者には困難な区別、朝鮮語話者には? (2015年3月18日 「朝鮮中央TV」)

    以前、一度「私達の言葉常識手帳」は紹介したことがあるはずだ。この番組は、「児童放送時間」の中でしばしば放送され、子供たちに朝鮮語の語彙の正しい用法を教えている。大体は、意味が類似していて、用法を間違えるケースが多いが、この日取り扱われた番組は発音の類似であった。

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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    扱われる語彙は「비키다(避ける)」と「비끼다(斜めに日が差す、斜めに進む)」の2つである。おもしろいのは、「(これら2つの単語は)発音は似ていますが、意味は全然違います」と言っている点である。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    発音が似ているかどうかは主観的な判断となるが、朝鮮語を母語とする人が「키」と「끼」の発音が似ているというのは意外であった。「키」も「끼」も日本語を母語とする人には「キ」としか聞こえず、それを聞き分のはなかなか難しい。しかし、朝鮮語を母語とする人にとっては全く異なる音に聞こえ、聞き取りによる区別も容易だと思っていたからだ。

    もちろん逆の例もあり、朝鮮語を母語とする日本語学習者が、下の文でどちらの虫がいるのか、聞き取りでも発話でもしっかりと区別するのはなかなか難しい。

    「あそこに蚊(カ)がいます」
    「あそこに蛾(ガ)がいます」

    これは、朝鮮語を母語とする人が有声音(濁音)と無声音(清音)を意識的に区別することができないからである。朝鮮語にも有声音と無声音は存在するが、文字上の区別がないので意識的な使い分けはされていない。

    だから、「키」と「끼」も「カ」と「ガ」のように文字が異なるため、区別は容易だと思ったのである。

    もちろん、「発音は似てますが」というのが「子供の耳にとって」ということかもしれないが、逆に考えれば、文字としての語彙を知っている大人にとっては簡単だが、文字を知らない子供が音として聞いていて「発音が似て」いるということであれば、なかなかおもしろい。

    番組では、2つの単語の意味の違いを次のような例文で説明している。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    (何かを避けて)少し場所を移動するという意味
    例:「道の横に避ける。」
    (邪魔になるものを)少し動かすという意味
    例:「椅子を少し横に移動させておく。」

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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    斜めから射すという意味
    例:「夕日が射す」
    (感情や表情、姿などが)顔に表れるという意味
    例:「喜びが表れる」(嬉しそうな顔をする)
      「悲しそうな表情が表れる」(悲しそうな顔をする)
      「情が顔に表れる」(情深い顔をしている)

    番組は「みなさん、よく分かりましたね。では、また次の時間に」と終わる。

    「<TV連続劇>旺載山 第13~16部」:「花子」の出自と結末 (2015年3月22日 「朝鮮中央TV」)

    『旺載山』の第15部と16部が22日夜に連続放送され、ドラマは終わった。この記事は、

    *****
    3月20日、「旺載山 第13部」が放映された。今回は、「花子」の出自と「シム・チョルソン」の工作の進捗がテーマとなっている。
    *****

    と、20日の第13部が終わったところで書き出したものであるが、下書きのまま放置しておいたら、ドラマが終わってしまった。なので、途中までは第13部の話し、途中からは14部~16部の話となる。

    *******以下、13部終了時に書いた部分********
    「石田」の家に「松井」がやって来て話をしている。
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    Source: KCTV, 2015/30/20放送

    「石田」は花子に対して疑いの念を抱き始めている。「松井」と偽パルチザン謀略の話をするために、「花子」にお茶を入れさせる。「花子」は、偽パルチザンについては、全く知らなかった。

    「花子」が朝鮮人だからという設定ならば実に凝っているのだが、「花子」は急須を使いながらもお茶の入れ方を知らない。まず、湯飲みにお湯を入れ、その次に粉状のものを湯飲みに入れいている。インスタントコーヒーを作る要領と大体同じだ。ドラマ制作者の日本研究不足に起因するものであろう。
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    Source: KCTV, 2015/30/20放送

    偽パルチザンについての話を立ち聞きする「花子」。謀略だと知ってショックを受ける。下の字幕は、「ゴビ砂漠と中国の内モンゴル地域で発生した黄砂は、今日夜から明日の午後の間に西海岸の一部地域に弱い影響を及ぼすものと予想されます。」という黄砂予報。昨日は、黄砂の発生原因や健康被害予防策などを紹介する番組も放送していた。
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    Source: KCTV, 2015/30/20放送

    ドラマでは、日本人同士の会話や朝鮮人を卑下する場面では、基本的に「チョウセン人」と日本語を使用している。上の場面でも「松井」が「石田」に、「花子をあまり信じるな。花子はどうせチョウセン人なんだから」と言っている。

    「花子」と「シム・チョルソン」が馬を連れて歩いている。第13部から、「花子」の「チョルソン」に対する語調が全く変わった。「花子」の朝鮮人としての自覚、「チョルソン」に対する好意を表現しているのであろうが、豹変しすぎである。
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    Source: KCTV, 2015/30/20放送

    上の場面では、「チョルソン」が「ある女性」ということで、彼が調べた「花子」の出自について話をする。「花子」は、済州島の漁師と海女の夫婦の子供で、名前は「ウンヒ(ウニ)」。

    「ウンヒ」(「花子」)の母。海女の衣装がおもしろい。
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    Source: KCTV, 2015/30/20放送

    倒れて泣いている少女が「ウンヒ」、つまり「花子」。「ウンヒ」は警官に足蹴にされる。警官と一緒にいるのは、「地主」。「ウンヒ」の両親が「子供になんて酷いことを」と警官に詰め寄ると、銃を持った男(恐らく地主の子供)が両親をライフルで撃ち殺す。

    「花子」が両親共々日本に渡る高英姫ストーリーを想定したのだが、そうではなかった。「ウンヒ」(「花子」)は、その後、済州島の牧場主のところにいるが、日本から来た「少尉」が牧場主から「ウンヒ」を買ったという。その「少尉」が「石田」であろう。
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    Source: KCTV, 2015/30/20放送

    「花子」は、このころから「チョルソン」に協力的になる。悪徳地主(朝鮮人、杖を持った男)が農民を虐めている。その様子を村人がどうすることもできずに眺めている。仲裁に入る村人もいるが、悪徳地主に頑強に対抗することはできない。
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    Source: KCTV, 2015/30/20放送

    そこに「花子」がやって来て、悪徳地主を馬の鞭で打ち、蹴飛ばす。村人は「花子」に逆らうことができない悪徳地主をあざ笑う。
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    Source: KCTV, 2015/30/20放送

    「花子」が地主を鞭で打ったことが「石田」に伝わり、「花子」は言い訳をするが、「お前は、私の妹である前に、大日本帝国の軍人であることを肝に銘じろ」と叱られる。
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    Source: KCTV, 2015/30/20放送

    ****************ここまでが、第13部の話し************

    第14話では、「花子」が「シム・チョルソン」からもらった雑誌を読むシーンがある。「チョルソン」は、「花子、これは最近東京で発刊された雑誌だ。ここには、日本の有名な詩人マキムラヒロシ(ママ)書いた『間島パルチザンの歌』がある。一度読んでみろ」と渡した。「花子」は心の中で、『間島パルチザンの歌』を読み始める。彼女が読むのは、この詩冒頭の以下の部分の朝鮮語訳である。(  )内は私が聞き取った朝鮮語なので、間違っているかもしれない。

     間島パルチザンの歌 槇村浩

    「思い出はおれを故郷へ運ぶ (이추억은 나를 고향으로 이끄나니 )
    白頭の嶺を越え、落葉(から)松の林を越え(백투 련봉을 넘어 락옆 솔 슾속을 지나)
    蘆の根の黒く凍る沼のかなた(갈뿌리도 식 거맣게 얼어든다는 등 넘어 )
    赭ちゃけた地肌に黝(くろ)ずんだ小舎の続くところ(검붉은 흙토우에 거밋한 움악살이들이 엉기정이 들어않은 곳)
    高麗雉子が谷に啼く咸鏡の村よ (고려까치 울지는 함경의 마을이여)」

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    Source: KCTV, 2015/30/21放送

    槇村浩というプロレタリア詩人については、ほとんど知らない。いずれ、詩集でも買って読んでみようと思う。なお、名前の読みは「ひろし」ではなく「こう」が正しいということだ。

    第15部でも、「花子」は朝鮮民族としての覚醒、「シム・チョルソン」に対する憧憬と愛情が入り交じった感情にさいなまれる。「石田」は、「愛情など任務の邪魔になるだけだ」と「スミエ」を東京に送り返してしまっている。「シム・チョルソン」の抗日武装闘争の組織化は順調に進み、農民の地主に対する「生存権闘争」は豆満江沿岸地域に拡散していく。また、金日成も朝鮮入りを目指して、豆満江の近くにまで進軍してきている。「石田」と「松井」は、金日成の朝鮮入りを阻止するべく、大規模な抗日パルチザン討伐作戦を計画している。抗日パルチザン討伐には軍馬が必要なので、「石田」の牧場で育てた軍馬を豆満江地域に連れて行くよう「松井」が「石田」に命じる。一方、「シム・チョルソン」は、軍馬が金日成討伐作戦に使われるのを阻止し、さらに抗日パルチザンに塩などの支援物資を送ることを画策する。

    そして、第16部を迎える。「シム・チョルソン」は、危険を冒して牧場に保管してる塩を奪いに来る。ところが、それを察知して潜んでいた「日帝」の私服警官に捕まってしまう。「花子」は、その知らせを付いて「チョルソン」が捕まった現場に駆けつけ、私服警官を倒して「チョルソン」を救う。
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    Source: KCTV, 2015/30/22放送

    さて、花子の運命は・・・
    「花子」の日本酒一気飲み、ベートーベンの『運命』のBGM、「石田」の運命、「花子」の銃撃戦、「花子」から「ウンヒ」へなど、見所満載の20分。上に書いた「チョルソン」救出場面以降を日本語字幕を付けてYouTubeにアップロードしておいた。

    YouTube:
    https://youtu.be/dVg5uMVY7pk

    「我々の最高尊厳と体制を中傷する無謀なビラ飛ばし行為を懲罰する -朝鮮人民軍前戦部隊(複数)の公開通告-」:『ザ・インタビュー』のDVDとUSBも、気球だけではなく無人機の使用、北朝鮮住民避難を勧告 (2015年3月22日 「朝鮮中央通信」)

    脱北者団体「自由北韓運動連合」が「天安号事件」5年目の3月26日に再び風船ビラを飛ばすという。これに対する「公開通告」を「朝鮮人民軍前線部隊(複数)」を21日に出した。脱北者団体がこうしたことを計画をしているのかどうかは未確認だが、北朝鮮が激怒しているところからすると、事実であろう。

    北朝鮮が「特に」怒っているのは、「我々の最高尊厳を悪辣に中傷冒涜し、世界的規模で酷い懲罰を受けた不純反動映画『ザ・インタビュー』を収録したDVDとUSBを米国から持ち込み、まき散らす」ことであるという。DVDは製品版だとして、それをUSBメモリにコピーすることを映画制作会社は許可したのだろうか。確かに、USBメモリの方が小さくて隠しやすいという利点はあるが、再生機器の普及を考えると北朝鮮では依然としてDVDの方が圧倒的に有利だと思う。北朝鮮が「USBと」と言っていることからして、USBメモリ飛ばしは今回が初めてではなく、南側への警告と共に、朝鮮人民にも拾ったUSBメモリを当局に提出するよう呼びかけているのかもしれない。羅先でのUSBメモリ価格は調べなかったが、SDカード(8GB Kingstonのロゴが印刷されていたが、恐らく中国製の偽物)は10元ぐらいだったような記憶がある。朝鮮人民には、「最高尊厳を悪辣に中傷冒涜」したファイルを消し去れば、USBメモリの再販価値も出てきそうだ(どうせ、飛ばすメモリは中国製の安物であろうし)。

    今回の「公開通告」が「前線部隊(複数)」名義出されているので、「司令部」から既に前戦に配置された各部隊に命令が下されているということなのだろう。では、風船ビラが飛んでくるとどうするのか。「公開通告」では、

    1.朝鮮人民軍前線部隊(複数)管下の全ての火力打撃手段は、事前警告なく、無差別的な気球消滅作戦を開始する。我々の自主権が行使される領空、領土、了解に対する如何なる形態の侵犯も許さないということは、我々革命武力の不変の立場である。
     反共和国ビラ飛ばしが軍事分解線、海上、空中、如何なる場所で行われても、そのビラ飛ばす手段が風船であれ無人機であれ、飛ばす方法が公開であれ非公開であれ、気球消滅作戦を行う我が軍の火力打撃手段の射程から絶対に逃れることはできない。気球消滅作戦には、前戦軍部隊(複数)が装備している強力な火力打撃手段が投入される。

    2.我々の正々堂々とした物理的対応措置に恐れ多くも挑戦する場合、無慈悲な2次、3次懲罰打撃が続く。ビラ飛ばしに対する我々の物理的対応は、何をもっても否定することができない正々堂々とした自衛的措置である。万一、我々の自衛的措置に「応戦」を口実に「源泉打撃」だの、「支援勢力打撃」だの言いながら挑戦してくるのならば、即時、想像さえできないような2次、3次の連続的な懲罰打撃戦が開始される。

    3.反共和国ビラ飛ばしが強行される場合、近隣地域と軍事分解線一帯の南側住民は、安全上、予め退避することを勧めておく。我々の軍隊の無慈悲な打撃対象は、徹頭徹尾人間のゴミと彼らのビラ飛ばしを黙認、庇護、調整している同族対決狂信者である。
     我々は、対決悪漢の無謀な火遊びで罪のない南側住民がどんなに小さな被害も被ることを望んでいない。南側住民は、反共和国ビラ飛ばし行為により及ぼされる軍事的打撃圏から脱し、安全地帯に退避しなければならない。

    4.ビラ飛ばしにより、もたらされる破局的結果についての責任は、全的に南朝鮮傀儡当局が取ることになる。我々の軍隊は、ビラ飛ばしのような心理戦行為にすがりついている不純敵対勢力の悪巧みを前から粉砕してきた。将来される厳重な結果に対する責任は、全的に不純な凶心を抱き、対決妄動をした南朝鮮傀儡当局が全民族の前に取ることになるであろう。

    ということである。人民軍は、「自主権が行使される」領域に飛んできた飛翔体は打ち落とすつもりであろう。問題は、打ち落とすための銃弾が南側に落ちない所まで待って打ち落とすのか、「自主権が行使される」領域に進入したら直ぐに打ち落とすかと言うことであるが、住民避難を勧告していることからすると、「通告」としては後者を行うということになっている。

    ここまで「通告」された上でも、韓国当局は「法的根拠がない」という理由で風船飛ばしをさせるのかどうか。韓国の政局とも関連し、朴槿恵政権は厳しい選択を迫られている。

    「20時報道」:最高人民会議4月9日に開催、謎のボカシ (2015年3月20日 「朝鮮中央TV」)

    『労働新聞』などの北朝鮮メディアでも報じられているが、4月9日に「最高人民会議第13期第3会会議」が開催されることが「最高人民会議常任委員会」で決定されたと、「20時報道」が報じた。「最高人民会議」は、2014年3月9日に開催されて以来、ほぼ1年ぶり。今年は、昨年と比較すると1ヶ月遅いが、なぜか「9日」は同じ。

    『労働新聞』、「조선민주주의인민공화국 최고인민회의 상임위원회 결정」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2015-03-20-0003&chAction=L

    「平壌建築総合大学で教育情報化を実現するための事業を積極的に推進」に関する報道の中で、理由がよく分からないボカシがあった。

    「平壌建築総合大学」
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    Source: KCTV, 2015/03/21放送

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    Source: KCTV, 2015/03/21放送

    「平壌建築総合大学では、既に電子講義案として作成された全ての科目の講義案を組媒体講義案にすることに力を入れています」とナレーション。「組媒体」の意味がよく分からないが、「任意の単語や任意の画像資料、静止画像、動画像を含んだ画像資料を、学生が分からないことがあれば、十分に理解できるように教授内容を豊富に含んでいます」と「指導教員、チョン・ギョンミン」は説明している。
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    Source: KCTV, 2015/03/21放送

    上の写真をよく見ると、天井部分にぼかしが入れてある。どうやら、天井にある白いものを消したかったようなのだが、普通に考えれば照明器具であろう。白色なので蛍光灯ではないだろうか。天井に取り付けられた蛍光灯など隠す理由はないと思うのだが、なぜ隠しているのだろうか。思いつく理由は、「建築大学」なのに先進的なLED電球を使っていないぐらいしかない。

    しかし、別室の様子を紹介する場面では、天井に取り付けられた同じような形の照明器具を見せている。
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    Source: KCTV, 2015/03/21放送

    1つめの教室では照明は点灯しているように見え、こちらは点灯していないようなので、節電ルールにでも抵触するという話なのだろうか。

    それとも1つめの教室は、照明器具の間に黒い部分が見えるので、天井に穴でも空いているのであろうか。「建築大学」なのに、天井に穴が空いているというのは確かにカッコヨクはない。

    「民族最大の名節 光明星節を慶祝 2015」:総連の慶祝行事を紹介 (2015年3月19日 「朝鮮中央TV」)

    3月19日に放映された「<朝鮮記録映画>民族最大の名節 光明星節慶祝 2015」の中で、朝鮮総連の「慶祝」関連行事が色々と紹介された。

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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「総連中央会館」前に飾られた思われる「共和国旗」
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「将軍様」の肖像画に献花
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    そして、一礼
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「金正日花」も献花
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    若者も献花。スローガンは「栄光なる朝鮮労働党万歳!」(右)、「偉大な首領金日成大元帥万歳!」。肖像画が違うので、別の献花台と思われる。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    このポーズは、北朝鮮の決起大会などでよくやっている。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「偉大な領導者金正日大元帥様誕生70周年慶祝在日本朝鮮人中央大会」。出席者は500人ぐらいだろうか。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「大会で報告者は、総連と在日同胞の慈悲深い父である偉大な将軍様に最も崇高な敬意と永生祈願の挨拶を捧げました」とナレーション。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    拍手をする参席者。本国の「熱情的」な拍手とはだいぶ雰囲気が違う。張成沢的ともいうべきか。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「朝鮮記録映画」の鑑賞会か。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「光明星節慶祝中央写真展示会」
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「光明星節慶祝在日本朝鮮社会科学者の研究討論会」
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「光明星節慶祝総連作家芸術員の忠情の決意集会」
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「日本の各界人士も卓越した思想と洗練された領導で時代と歴史の前に永久不滅の業績を築かれた偉大な将軍様の偉大さを称賛しながら、敬慕の情を禁じ得ませんでした」とナレーション。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    『朝鮮新報』を読む人々。本国で朝鮮人民が集まって『労働新聞』を読む情景と似ている。特に、左から2番目の男性が、「将軍様」の写真を手を開いた状態で指し示しているところなど、本国的である。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    家族そろって「将軍様」の写真集を見ている。「金正日花」が飾られており、バッチを着用しているので、この写真だけを見ると本国とあまり変わりない。唯一、コタツらしきものが違う程度か。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「総連金剛山歌劇団慶祝音楽会 永遠なる太陽の歌」
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    ナレーションも垂れ幕もないので分からないが、朝鮮大学校の学生たちであろうか。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「偉大な領導者金正日大元帥様誕生70周年慶祝 第58回大阪同胞、学生リレー・マラソン大会」
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「光明星節慶祝在日朝鮮学生サッカー選手権大会」
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「光明星節慶祝総連西東京中部支部同胞登山の集い」
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「光明星節慶祝朝青(祖青?)スキーの集い」
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    これまでも北朝鮮の「朝鮮記録映画」の中で朝鮮総連が紹介される場面を見たことがあるが、今回の「朝鮮記録映画」での紹介はとても長かったと思う。「映画」の総時間約48分の内、6分を総連紹介に当てている。今年が総連設立60周年の年であることが大きな理由なのだろうが、総連ビルが当面継続使用可になったこととも無関係ではなさそうだ。

    「<朝鮮記録映画>偉大な同志 4」:おもしろい逸話いろいろ (2015年3月19日 「朝鮮中央TV」)

    昨夜は、楽しみにしていた『旺戴山』第13部の放送はなかった。しかし、「新しく出た朝鮮記録映画」が2本放送され(ただし、1本は3月18日の再放送)、なかなか楽しめた。ストリーミングは相変わらず不安定であるが、幸いにもこれらの番組が放送される時間帯は概ね良好であった。

    放送順序が前後するが、まず、18時頃から放送された『偉大な同志 4』から紹介しておく。この「朝鮮記録映画」は、金正恩の昨年の軍部隊に対する「現地指導」の中で見られた「偉大な」愛のエピソード集である。その中には、拙ブログで話題となり、未決状態のままになっているエピソードもあり、なかなか面白かった。

    『偉大な同志 4』
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「銃口を向け合う最前線オソン山部隊」を訪れた「最高司令官同志」は、「警戒勤務で(自分と)記念写真を撮れなかった軍人がいるという話を聞いて、彼らも連れてこいと言われました」とナレーション。哨所を空けて来たのか、交代してきたのかについての言及はない。以前も紹介したが、下はオソン山から見える「傀儡共の哨所」。「最高司令官同志」の双眼鏡を通して見ているという設定。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「中隊軍人全員と記念写真を撮っても代えられなかった元帥様。今度は中隊の軍人全員を一人ずつ自分の横に立たせて写真を撮られました」とナレーション。この若くい軍人と写真を撮った「元帥様」は、この軍人の頬を触って何かを言う。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    何かありそうだと思って見ていると、オソン山警備隊の軍人を平壌に招いて音楽などの公演をやらせて観覧。ナレーションでは「舞台の上に上げてやられた」と言っているだけなので、平壌ではなく、地方都市のホールなのかもしれないが、ホールの作りからは平壌のように見える。そして、副官がオソン山で「元帥様」が頬を触った軍人を指し示すと、親しげに何か話し始める。「みんな体が良くなり(健康そうになり)、分からないほど変わったと元帥様」とナレーション。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    そして、「敬愛する最高司令官同志の愛がサプリとなり、オソン山の一当百戦士になった」とナレーション。こういうことであった。

    「敬愛する将軍様のお名前が刻まれた時計表彰が新たに制定された」と新しいスタイルの「時計表彰」を紹介。これ以上大写しにならないのだが、デザインが洗練されたような気がする。この時計は、軍部隊で軍人の食生活改善のために活躍した「政治指導員」に贈呈された。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    北朝鮮の映画を見ていてだんだん分かってきたことが、軍隊において「政治指導員」は重要な役割を担っているということである。つい最近も『若い連隊長』という映画が放映されたが、「政治指導員」は、年長者から軽く見られる「若い連隊長」をサポートしている。「政治指導員」も軍服を着ているので「人民軍人」と見た目では区別しにくいが、扱いは明らかに異なっている。中隊であれば中隊長と中隊に配属された「政治指導員」は同格であり、軍事訓練や作戦行動については中隊長、その他の思想・生活などの問題は「政治指導員」が担当し、二人三脚体制で運用されている。この「朝鮮記録映画」でも紹介されているが、中隊長と「政治指導員」をセットにした「中隊長・中隊政治指導員会議」を金正恩が招集した背景にはこのようなことがあるようだ。「政治指導員」は、「人民軍総政治局」に所属しているはずなので、「人民軍総政治局長」の任務と権限がいかに絶大なのかが分かる。経済部門の企業所においても、「支配人(いわゆる社長)」と「党秘書」が二人三脚で企業経営や従業員管理をしているのと同様の関係にある。

    話を「朝鮮記録映画」に戻す。「意図しない理由で不本意に軍服を脱ぎ、順当ではない生活の道を歩まなければならなかった戦士」とナレーション。「意図しない理由」の説明はないが、引責か健康問題ではないだろうか。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    しかし、この人は「自ら令状がない兵士にな」り、「中隊の近くに根を下ろし、敬愛する最高司令官同志が最も気に掛けられる軍人生活問題を解決するのに少しではあれ役立とうと献身の汗を」流したとナレーション。下は、妻と思われる女性と作業をする男性。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    こうした功績が「元帥様」に評価され、この人は再び軍服を着るようになることができるようになったとのことである。この程度の説明で朝鮮人民は「意図しない理由」を忖度することができ、それに照らして「元帥様」の「慈悲深い恩」を理解することができるのだろうか。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    次の話は、「将軍様」と話をした空軍指揮官に取り立てた話である。「元帥様」は「ドンムは、父なる将軍様の生涯の最後の時期に、将軍様が最後に会われた人民軍隊の師団長だと仰り、将軍様の気持ちまで合わせて事業と生活を温かく見守って下さった」とナレーション。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    それだけではなく「第13期最高人民会議の候補者にして下さり、投票所まで足を運ばれ投票までして下さった敬愛する元帥様」とナレーション。「将軍様」と最後に話をした「師団長」というだけにしては、破格の待遇である。「将軍様」と近くで話をすること自体が特別なことであることは分かるが、「生涯の最後の時期」はその時、予測できなかったはずで、単なる偶然である。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    この「記録映画」見ていて思ったのだが、李雪主のコートは空軍カラーであった。意識的にこの色を選んだかどうかは分からないが、そうだとすれば李雪主同志の服飾コーディネートは凄い。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    だんんだんと「朝鮮記録映画」はクライマックスへと向かい、「飛行戦闘任務遂行中に犠牲となった一人の平凡な飛行士」の話しに入る。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    この飛行士は、「飛行士大会」にも招待され参加した。下は、その招待状。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    過去記事で「サングラスは標準装備なのか」と書いたが、サングラスを着用しながら模型の飛行機でこの飛行士たちが訓練をしている様子が紹介されていた。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「党の飛行先党訓練命令を受け、栄光の太陽が輝く自分の祖国の空を飛び続けたその過程で、最期を迎えた戦士」とナレーション。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「元帥様」は、その報告を聞いて激怒するどころか、「愛国烈士証」等を授与。下は「愛国烈士証」。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「飛行士への思いでお休みになることもできず徹夜をされた最高司令官同志は、飛行士の夫人に送る書簡を一文字一文字書かれました」とナレーション。下は、その「書簡」。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    続けて手紙の内容をナレーションが「元帥様」に成り代わり読み上げ、最後の部分で「同志の夫、チャ・ヨンイル同志が党の飛行戦闘命令を受け、最後に最高司令官の前で祖国の青い空を飛んだ時の写真をお送りします。ご主人の最期の空の道です。」と手紙に写真を貼り付けている。気になるのは、「ご主人の最期の空の道です」という言葉である。これが「最期」だとすると、チャ飛行士は「最高司令官同志」が命令・指導した飛行訓練中に死亡したということになる。さらに、通常の飛行訓練では、いちいち飛行中の戦闘機の写真撮影などしていないだろうから、このような写真が残っていたということは、特別なオケージョンであったのであろう。この辺り、理由は何であるにせよ、「元帥様」は、自分の命令で飛んでいた飛行士が死亡したことについて、高価な国家財産である戦闘機を墜落させたことに憤慨せず、胸を痛めたということなのだろう。北朝鮮映画の中では、装甲車や軍用トラックを過失で壊した場合は、その事故で怪我をしても懲戒処分を受けることになることが多いが、死亡したとはいえ、対照的である。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    それだけではなく、「元帥様」は、「恩情溢れる贈り物を送り、大海のような愛を施して下さった」とナレーション。下は「贈り物」のリストであるが、項目を読み取ることはできない。左上の署名は「金正恩」。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「贈り物」を受け取った飛行士夫人と子供。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    最後は「14人の自爆肉弾飛行士」の話である。この話は、少し前に書いた記事の中でこの飛行士のための石碑を「最高司令官同志」が建立させたとして紹介した。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    石碑には次のように刻まれている。「長く輝け肉弾自爆勇士たちの偉勲よ 2009年4月、人工地球衛星『光明星-2』号の成功裏な発射を確保するための作戦に参加し、英雄的偉勲を立てた金正日・金正恩飛行隊の14名の飛行士が発揮した徹底した首領決死擁護精神、祖国守護精神、肉弾自爆精神は、祖国清史に末永く輝く」
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    2009年4月、「将軍であられる敬愛する最高司令官同志は、空言を言わない我々人民武力の本当の姿を見せてやる重大な任務を14人の決死隊員に」命じたとナレーション。2009年4月といえば、「元帥様」の後継者指名は行われておらず、もちろん「最高司令官」でもない。「将軍」といっているから、軍階級としては「大将」ぐらいであったのだろうか。下は、このナレーションと共に出る写真。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    その「決死隊員」と思われる。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「パルコルム」を歌う「決死隊員」。これが当時の動画だとすると、やはりこの歌は継承準備の段階から広く歌われていたということになる。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「敬愛する最高司令官同志」に書いた「宣誓文」。解像度が悪くて分からないが、「最高司令官同志」の名前が出ていれば確認したいものである。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「決死隊員」が乗った戦闘機とされているが、石碑の戦闘機と機種が違う。
    <追記>コメントでも指摘されているとおり、戦闘機は同型。「最高司令官同志」の前で飛行した垂直尾翼が2枚ある戦闘機と勘違いしていた。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    14人の「決死隊員」。ヘルメットを着用していない人も飛行士なのだろうか。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「元帥様」が「将軍様」と引き合わせた14名の「決死隊員」
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    さて、ここから話がややこしくなる。「元帥様」は、「第1回飛行士大会に参加した14人の肉弾勇士たちを親しく近くに呼んでくださり」とナレーション。「14人を呼んで」と言っている。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    飛行士大会について書いた記事を思いだしていたのだが、確かこの女性は死亡した「飛行士」の奥さんだったはずである。この女性に関するナレーションは、この「朝鮮記録映画」ではない。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「14人の英雄烈士が発揮した精神を高く評価すると言われながら、戦闘任務遂行中に犠牲になった飛行士には共和国英雄称号を、13人には偉大な将軍様のお名前が書かれた時計表彰を親しく授与」したとナレーション。「戦闘任務中に犠牲になった」人は「飛行士大会」に招くことはできないはずだ。代理出席した夫人を数に入れているのかもしれないが、ややこしいナレーションである。しかも、上の「将軍様」と撮影した記念写真には14人写っている。出撃前ではなく、任務遂行後の記念写真だと思うが、そうだとすると、「戦闘任務中に犠牲」というのは、2009年4月の「任務」とは別の任務を指すのであろうか。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    韓国でいわれる「墜落説」を打ち消すためなのか。「将軍様激怒」の話と石碑建立の整合性を示そうとしようとしているのかよく分からない話である。

    「<TV連続劇>旺載山 第12部」:朝鮮の仏陀は金日成、花子は高英姫と同じ済州島出身 (2015年3月18日 「朝鮮中央TV」)

    テレビドラマ『旺載山』の第12部が昨夜放映された。ストーリーはクライマックスに向かいどんどん盛り上がってきている。今回も、ドラマの中で交わされた興味深い会話を紹介しておく。

    高貴な血を引く家系の娘の縁談が破綻し、その娘は家出をしてしまう。そしてたどり着いたのは山寺。「シム・チョルソン」は、娘の縁談相手である友人を助けるために、娘を連れ戻しに山寺に向かう。「シム・チョルソン」は、前夜、「石田」と「花子」に酔って仕組まれた、前出の高貴な家系の先祖の墓の盗掘事件に巻き込まれ、大怪我をしていた。

    高貴な血を引く家系の宗家の人々に袋だたきにされた「シム・チョルソン」(真ん中)。宗家の長の老人(杖を持っている)が「シム・チョルソン」を墓穴に生き埋めにすることを命じている。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「シム・チョルソン」は盗掘とは無関係で、その事実を知らせて宗家間の争いを止めようとしただけなのだが、盗賊と勘違いされる。彼は、袋だたきにされるが、決して手を挙げようとはしない。これぞ民族を愛する真の革命家の姿ということである。「日帝」とは戦うが、朝鮮人には手を出さない。第12部まででは、革命のためには家族も捨て、殺人をもいとわない「共産主義革命、無産革命、マルクスレーニン主義」を掲げる「宗派」も登場しているが、その「宗派」のボスも「石田」の策略で苦境に陥っているものの、死んではいない。「シム・チョルソン」は、あくまでも「宗派」を接収していこうという考えである。

    話を戻して、怪我をした身で山寺までやって来た「シム・チョルソン」は、僧侶に家でした女性を家に帰してくれるよう頼む。この場面での会話である。

    チョルソン:「お坊様、木鐸で民衆の精神を叩いてはどうですか」
    僧侶:「何をいっておられる。人が仏堂で精進できるのは、仏教の世界に仏がおられるからです。朝鮮が独立偉業を成し遂げるためには、二千万の白衣同胞(朝鮮人)を独立に導く朝鮮の仏がいなければなりません」
    チョルソン:「ええ」
    僧侶:「ヨルバルというのは、極楽世界での幸福を意味する言葉だが、朝鮮を独立させ、民族をヨルバルに導く新しい仏がいなければ、皆、自分を捨てて従うのではないだろうか」
    チョルソン:「そのとおりです、お坊様。今、間島には倭敵(日本人の敵)を打ち砕き、数十万の関東軍をあたふたさせている朝鮮の大将軍が現れました」
    僧侶:「そうなのか。私が聞いた噂は嘘ではなかったんだな」
    チョルソン:「はい」
    僧侶:「それで、その人の年はいくつなんだ」
    チョルソン:「倭敵が名前を聞いただけで震え上がる金日成将軍様は、20代の若い将軍です」
    僧侶:「そうなのか。私は君の言葉を信じる。軍事に長け、民衆をヨルバルに導くその方こそが、朝鮮の釈迦であり、仏であられる」と、喜ぶ僧侶(下、写真)。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    まさか、金日成が「朝鮮の釈迦」に繋がるとは思わなかったが、北朝鮮で仏教がキリスト教ほど敵対視されていないということとも関連しているのかも知れない。平壌のキリスト教会は何度か紹介したことはあるが、映画やドラマの中に良いキリスト教の牧師や神父が出てきた記憶はない。見た限りでは、「米帝」の手先として朝鮮人を迫害する役柄ばかりである。

    昨日書いた記事に、「もしかすると、「花子」の出生の秘密がこれから出てくるのかもしれない」と書いたのだが、その予想が当たった。

    「シム・チョルソン」は、彼に一目惚れした「スミエ」に招かれて(「石田」が呼んでいると騙されて)、一緒に食事をすることになった。このドラマの中での「スミエ」の扱いは微妙で、一方では尻軽な「倭女」、もう一方では政略結婚により歌手として生きる自分の夢を壊された可愛そうな女ということになっている。後者は、彼女に同情的に設定されているのではなく、「石田」と「日帝」の極悪非道ぶりを強調するための設定なのであろう。下は、歌手として活躍していた頃の思い出を語る「スミエ」。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    この場面で、またおもしろい会話がある。
    チョルソン:「ご主人様(石田)は本当に幸福な方です」
    スミエ:「なぜですか」
    チョルソン:「草原では花子お嬢様が太陽のように明るい光を放ち、家ではスミエ奥様が月のように暗闇を明るくしてくれますから」
    スミエ:「ええ、このスミエが人の光を反射する月程度の存在というのですか。花子が何だというのですか。私たちが助けなかったら餓死していた、あんな朝鮮クソ女が」
    チョルソン:「では、花子お嬢様はご主人様の本当の妹ではないのですか」
    スミエ:「お嬢様、何がお嬢様ですか。済州島で馬を育てていたようなクソ女が」

    「シム・チョルソン」は、その真実を解明するために、その夜、牧場で長く働いているソウルから来た老人に「花子」の素性について質問する。しかし、老人は「そのことに触れて殺された人がいる」と直ぐには話そうとしないが、チョルソンに促されて話し出す。

    老人:「この牧場に済州島から来た馬の世話人がいました。マ・ジノといい、年は私と同じぐらいでした。その年の晩春、花子お嬢様が牧場に初めてきた時、ジノは花子お嬢様を見てとても驚き、『済州島にいた、ウヘじゃないか』と尋ねました。私たちは、意味が分からず2人を見ているだけでした」
    チョルソン:「それで、花子はなんと言ったのですか」
    老人:「驚いた様子で彼をしばらく見ていて、『この人、おかしいんじゃない』と言って行ってしまいました。その夜、ジノは寝言で間違いなく済州島のウヘだと言っていました」
    チョルソン:「しかし、なぜ久しぶりに見た人を花子と断定できたのですか」
    老人:「多分、ジノは済州島にいたウヘのお母さんと錯覚したんだと思います。容姿がそっくりだと言っていました」

    さて、「花子」が済州島出身の朝鮮人だということが暴露されてきた。こう考えると、昨日の記事で紹介した朝鮮人を蔑み、朝鮮人であることを自嘲するような台詞も理解することができる。今後、「花子」がどのように扱われるのか、「日帝」の手先として死んでいくのか、朝鮮人であることを自覚して抗日武装闘争に加わるのか。あるいは、最後まで日本人として生きるも、自分の過去を悔いて、究極の場面で抗日武装闘争を助けて死ぬのか。予想としては、最後のパターンだと思う。

    過去記事の冒頭に、なぜ2007年に放映されて以来、放映がなかったのだろうかと書いた。「花子」の行く末を見なければならないし、済州島出身者はたくさんいるので即断できないが、高英姫との重複部分があるのかもしれない。高英姫の父は済州島出身の在日朝鮮人。高英姫はその子。もし、「花子」の父親が済州島から日本に渡った在日朝鮮人でというような設定なっていると、高英姫の過去と重なる部分が多い。

    もちろん、このドラマはドラマのために書き下ろされたものではなく、金チョンスの長編小説『旺載山』を原作としている。uriminzokkiriでこの原作小説ファイルを「検索」してみたが、出てこなかった。ただし、uriminzokkiriの検索機能は、しばしばきちんと検索してくれないことがあるので、もしかしたらあるのかもしれない。

    北朝鮮でのこの小説の扱いも含め、この辺りが興味深い。

    「民心の判決文-『朴槿恵退陣!』ビラ」:なぜ着物なのか? (2015年3月19日 「uriminzokkiri」)

    uriminzokkiriを眺めていたら、変な絵が掲載されていた。サムネイルが小さかったので、着物を着たような女性程度にしか見えなかったのだが、記事を読んだら、何と着物を着た韓国大統領で、タイトルは「傾國之色」と。

    日韓関係は朴槿恵政権になってからもずっと好転しておらず、朴大統領も慰安婦問題で妥協しないなど、決して「倭女(日本女性を蔑んだ言葉。ドラマ『旺戴山』ではさらに強い「왜년(倭あばずれ)」がしばしば使われる)」呼ばわりされるようなことはしていない。

    uriminzokkiriの解説では、「南朝鮮では傀儡一味を非難嘲笑し、退陣を求めるビラがあちこちで(8000枚)ばらまかれた」としているものの、なぜ「倭女」なのかに関する説明は一切ない。

    韓国メディアを見ると、これに関する報道があるのかもしれないが、いったいなぜ彼女は着物を着せられる羽目になったのであろうか。

    北朝鮮がこれまでしてきた主張からすれば彼女は「米国の娼女」であり、風刺画を描かれるのであれば、チマチョゴリを着て黒人大統領とダンスでも踊っている絵になりそうだが、どうにもよく分からない。

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    Source: uriminzokkiri, http://www.uriminzokkiri.com/index.php?ptype=gisa1&no=202865

    <追記>
    早速、お二人の方から大変貴重なコメントを頂戴した。お一人目の方は、「傾国之色」の本来の意味にかけたブラックユーモアでありながら、描かれた女性が美しすぎるというご指摘。お二人目の方は、ソースをずばり教えて下さった。

    コメントにもあるとおり、この絵は韓国のウェブサイト「民衆の声」の記事、「<アッシラビアギャラリー>傾國之色」(2015年1月16日)に掲載されていた。

    この記事は、朴氏を非難するもではあるが、uriminzokkiriの説明とは違っており、セウォル号事件の時、同氏が「7時間もどこに消えていた」ということと関連しているようだ。こう考えると、「傾國之色」というタイトルは何となく分かる。つまり、国が傾く、もしかするとセウォル号が徐々に傾き沈んでいく様子を表しているのかもしれない、時に、色、つまり男性(チョン・ユンフェ)と何をしていたのか。男関係で国を傾けるのかと揶揄しているのであろう。

    では、なぜ着物なのかというと、同記事には「初めに漢字を書いたのは、漢字文化圏の市民のように汎アジアの名作になりたい気持ちで」と書かれているが、今一つ何がいいたいのかよく分からない。しかし、もしかすると、7時間の謎を記事にして出国禁止処分になっている日本人記者と何かを結びつけようとしているのではないかという気もする。つまり、日本の新聞に韓国の恥を書き立てられ、「汎アジアの名作」になったという意味で。

    민중의소리, [앗싸라비아 갤러리] 경국지색, http://www.vop.co.kr/A00000838318.html

    「平和についての考え」:国防力あってこその平和、ピカソと鳩、ゲレンデヴァーゲン、「将軍様」の武勇伝 (2015年3月15日 「朝鮮中央TV」)

    2月末に「朝鮮中央TV」が「<随筆>平和についての考え」という番組を放送した。北朝鮮が「平和」をどのように考えるのかを分かりやすく説明している。その正否はさておき、「国防力強化こそが平和に繋がる」、「我々の銃槍の上に平和がある」という「先軍の道」こそが「平和を守護する」と説明している。また、「苦難の行軍・強行軍」時期の人民の苦しみの上に、平和が維持されているという認識も示している。社会主義国が次々と崩壊する中、人民を餓死させながらも維持した「平和」。それを「平和」というべきか「体制維持」と言うべきかは別とし、幸いにも戦争は起こっていない。

    この番組は、いつか拙ブログで紹介しようと思っていたのだが、機を逸してしまった。そうしたら、3月17日にその再放送があった。これで3度目の放送である。上に書いた北朝鮮の「平和に対する考え方」のみならず、ピカソと鳩の話し、「将軍様」の「野戦車」が滑り落ちそうになった話など、なかなか面白いので日本語訳を付けてYouTubeにアップロードしておいた。

    特に、「将軍様」の「野戦車」が滑り落ちそうになった話は私には興味深かった。というのは、モランボン楽団の「この地の高嶺、険しい道の上に」という歌のビデオが、まさにそのシーンを見せているからだ。歌を聞いた時は、メルセデスベンツのゲレンデヴァーゲンが、やらせでも、デフロックを効かせながら危機を切り抜けるシーンに感動したのだが、それが実話かどうかは別とし、少なくとも「将軍様」の武勇伝の一つであると知ってまた驚いた。

    ということで、YouTubeには、この歌も日本語訳を付けてアップロードしておいた。

    thought of peace20150318
    Source: YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=Qjn0XMaHJh4
    Origin: KCTV

    kji rough path20130318
    Source: YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=3nPx8RNiVuA
    Origin: KCTV

    「<TV連続劇>旺載山 第11部」:ソウル言葉、特務訓練機関、「スミエ」の不倫、朝鮮蔑視(自嘲?)、朝鮮語 (2015年3月18日 「朝鮮中央TV」)

    過去記事にも少し書いた「旺載山」であるが、昨夜第10部と11部が放映された。非常におもしろいドラマなのに、なぜ2007年に放映されてから、これまで放映されなかったのか分からない(ただし、韓国統一部の情報が正確であれば)。

    「旺載山 第10部」。左から「シム・チョルソン」、「花子」、牧場で働くソウルから来た老人
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    Source: KCTV, 2015/03/17放送

    牧場で働く老人は、ソウルの王宮で馬の世話係として働いていたが、閔妃暗殺と共に日本人に恋人の宮女を殺され宮殿を離れ、朝鮮北部の牧場で働くようになった。下の写真にあるように、この老人は口を押さえて笑うなど「女性っぽい」。それだけではなく、言葉も「요」で終わるソウル方言を使い、非常にソフトな口調である。牧場で働く同僚からは、「宦官じゃないのか」とからかわれる(しかしこの老人は、馬の世話係なので宦官ではないという)。思えば、羅先の「市場」で、アジュミ(おばさん)たちに「요」言葉を使って笑われた。きっと、私が使った「요」言葉が彼女らには女々しく聞こえたのであろう。

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    Source: KCTV, 2015/03/17放送

    第1部では、花子の過去を見せる場面がある。「シム・チョルソン」が「花子はどこで馬について学んだのですか。大卒のように見えるのですが」と質問し次の場面になる。

    特務訓練期間で拳銃の練習をする「花子」。はちまきがカワイイ。
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    Source: KCTV, 2015/03/17放送

    訓練修了書を授与される「花子」。男はなぜか上半身裸である。
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    Source: KCTV, 2015/03/17放送

    「松井君が来る時は料理ができなかったのに、今日は凄いなあ」と「石田」。「スミエ(石田夫人)」は、「シム・チョルソン」に一目惚れしており、この日も「シム・チョルソン」が夕食を食べに来ると思い料理をした。「スミエ」は日本の資本家の娘で、「石田」とは政略結婚させられた。「石田」は、「スミエ」の「シム・チョルソン」に対する好感を全く気にしないどころか、それを特務遂行のために利用しようとする。
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    Source: KCTV, 2015/03/17放送

    「シム・チョルソン」は、村人に牧場の馬を貸してくれと頼まれる。村人は朝鮮人の悪徳地主から高利で金を借りたので、その返済のために馬を使って金を稼ぎ、借金を返したいということだ。「シム・チョルソン」は、「一晩考えさせてくれ」と村人を帰す。
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    Source: KCTV, 2015/03/17放送

    翌日、「シム・チョルソン」は、「花子」に馬を借りたいと頼む。ここからの「花子」と「シム・チョルスン」の会話がおもしろい。
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    Source: KCTV, 2015/03/17放送

    花子:「チョルソンさん、なぜあなたはあんなに惨めな人たちまで心配してやるのですか」
    チョルソン:「花子、彼らも私と同じ朝鮮人です」
    花子:「朝鮮人?ふん、私は朝鮮を軽蔑している女です」
    チョルソン:「なぜ?」
    花子:「朝鮮民族は弱く、創造力がない民族です」
    チョルソン:「決めつけるな」(少し怒った顔で)
    チョルソン:「我々の民族は世界で初めての金属製活字と鉄甲船を作った民族です」
    花子:「それなのに元や日本の奴隷になったのですか?」
    花子:「後ろばかり振り返っている人は前に進めないように、歴史ばかり自慢する民族は、遅れて当然です」
    花子:「歴史は避妊を知りません。生まれることしか知りません。朝鮮を見なさい。精神も肉体も日本に強姦され、李ウァンヨンや朴ソギュンのような私生児を産んだり、文じいさんやソプンのような間抜けを生んだんでしょ。私生児を産む前に、強くて創造することを知っている高等な人間を妊ることができなかったからです」

    上の「花子」の言葉は、日本人の口を借りて朝鮮人の気持ちを代弁させているとも取れる。「シム・チョルソン」は、雇い人という立場だからと言う理由だけではなく、その言葉にある真実を見いだして反駁することができない。「花子」は馬を貸し出すことは考えておくと言い残して、その場を去ってしまう。

    「花子」は「石田」に相談し、雑馬を貸し出すことにする。しかし、「シム・チョルソン」は、俊馬を貸しだしてしまう。

    その日、牧場から馬が盗まれ、「花子」も消えてしまう。「シム・チョルソン」が「花子」を救出に向かうと、そこには「抗日パルチザン」らしき人々がおり、花子を袋に入れてどこかに拉致しようとしている。「シム・チョルソン」を「ドンム」と呼び、「荷物になるだけだから、この日本女を処刑してしまえ」と「花子」を殺そうとするが、「シム・チョルソン」が機転を利かせて「抗日パルチザン」を撃退、花子を助け出す。実は、この「抗日パルチザン」は偽物で、「石田」が「シム・チョルソン」の正体を暴くための罠であった。
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    Source: KCTV, 2015/03/17放送

    その日の夕方、「花子」が牧場で横になっているところに「シム・チョルソン」がやってくる。ここでまたおもしろい会話がある。
    花子:「(馬に一人で乗ることができないので)助けて下さい」
    チョルソンは花子を馬に乗せてやる。
    花子:「一度、走ってみましょうか」
    チョルソン:「そうだ、花子、ずっと尋ねてみたかったのだが、「花子」はいつからそんなに朝鮮語が上手いんだ。朝鮮人の娘みたいです」
    「花子」はムッとして、
    花子:「この花子が朝鮮女性みたいに見えるって、ありがたいですわ。だけど、私は朝鮮女性として生まれなかったのを幸いだと思っています」
    「花子」は、そういって、馬を走らせて行ってしまう。この場面は、非常にロマンチックな情景で展開されるが、「花子」の最後のリアクションで台無しになるという設定である。それにしても「チョルソン」の「いつからそんなに朝鮮語が上手いんだ」という質問はおもしろい。このドラマでは、「~さん」、「~くん」、「もしもし」、「はあ!」など日本人らしさを表すための日本語句は使われているが、日本人同士の会話も含めて全て朝鮮語である。朝鮮を軽蔑する「花子」がなぜ敢えて朝鮮語を使っていたのであろうか。

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    Source: KCTV, 2015/03/17放送

    もしかすると、「花子」の出生の秘密がこれから出てくるのかもしれない。
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    Source: KCTV, 2015/03/17放送

    ここで第10部は終わる。

    「<音楽紹介編集物>永遠に変わらない忠情の歌-歌謡『告白』-」:『告白』解説 (2015年3月15日『朝鮮中央TV」)

    『告白』の歌詞について解説をする番組が放送された。これをYouTubeにアップロードし、半ばまで日本語字幕を付けておいた。短い番組なのでいずれ全訳するつもりではある。

    「番組」もっともらし解説をしているが、やはりこの歌は過去記事にも書いたとおり、李雪主が金正恩に贈る歌のような気がしてならない。

    <追記>日本語字幕を全て入れておいた
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    Source: YouTube, http://youtu.be/MmFwKwQxY20

    「汚物の山にはえた毒キノコ」:朴ヨンミ脱北者の「嘘」を英語で紹介、北朝鮮の地方裁判所、手書きの公文書、不在の刑法条文? (2015年3月14日 「uriminzokkiri」)

    uriminzokkiriに今度は朴ヨンミ脱北者の「嘘」を暴露する英語版動画が掲載された。動画は、紹介部分が映画字幕、本編からは英語によるナレーションになっている。動画では、朴の脱北経路に関する「嘘」、父親の死亡状況に関する「嘘」、自分の家族に関する「嘘」、そして朴の家族は「全て犯罪者」ばかりであり、「犯罪者の中で育った」つまり「汚物の山の中で育った」から朴も「毒キノコ」だと説明している。例によって、近所の人や親戚が登場して証言している。今回は、「脱北者の親戚といっても、何も変わりのない生活をしている」と「一族郎党収容所送り」という主張も否定している。

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    Source: uriminzokkiri, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=record&st=true&no=26086

    父親の死に関する証言がコロコロ変わるので「???」ということらしい。左下が証言をする朴ヨンミ。
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    Source: uriminzokkiri, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=record&st=true&no=26086

    朴ヨンミの両親は離婚しており、離婚に関する裁判が行われた裁判所の写真も見せている。北朝鮮は、外国人に判決を下す平壌の裁判所の写真は時々公開するが、地方都市の裁判所の写真を出すのは珍しい(本物であればの話だが)。

    「朝鮮民主主義人民共和国両江道恵山市人民裁判所」
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    Source: uriminzokkiri, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=record&st=true&no=26086

    裁判所内部の写真。左手前から弁護士、書記、検事、後ろの中心が裁判長。裁判長の両脇の文字は判読不能。
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    Source: uriminzokkiri, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=record&st=true&no=26086

    裁判記録の謄本
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    Source: uriminzokkiri, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=record&st=true&no=26086

    「判定」と書かれ、「原告」や「被告」の名前が書かれている。この「謄本」は、何十年も前に書かれたものではない。日付を見ると「2006年4月5日」となっており、2000年代に入っても、この種の公文書が手書きで作成されているということを示している(手書きにすべしという規定があるのかどうかは未確認ながら)。
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    Source: uriminzokkiri, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=record&st=true&no=26086

    「上のとおり謄本する」と書かれたスタンプと裁判所の印。
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    Source: uriminzokkiri, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=record&st=true&no=26086

    さて、朴ヨンミの証言と北朝鮮の主張のどちらが真実なのか、これについて確認するすべを持ち合わせていない。しかし、この動画を見ていて1点興味深い点があった。それが、下の写真である。
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    Source: uriminzokkiri, http://www.uriminzokkiri.com/itv/index.php?ppt=record&st=true&no=26086

    これは、「ピョン・チョンシク(1963年5月29日生まれ) 朴ヨンミの母方の叔父」が「プンナム鉱山労働者として仕事をし、17回にわたり国家及び個人財産窃盗と、2名に対する殴打行為で労働教化所に入所後出所」、「その後、コウォン土地建設事業所の労働者として働いていた期間に再び単独あるいは共謀して国家財産と個人財産を盗んだ犯罪で刑法56条2項と155条2項により、1992年7月1日から再び4年の労働教化刑」になったと書かれている。

    ところが、2012年5月14日に改定された北朝鮮の「刑法」には、56条「第2項」は存在しない。「1992年7月から再び4年の労働教化刑」と書かれているので、1990年12月15日に「採択」された当時の「刑法」が適用されているはずである。したがって、もしかすると1990年刑法には「第2項」があったのかもしれないが、少なくとも2012年刑法にはみられず、さらに第56条は「刑法執行を終えた者の法的地位」であり、「刑の執行あるいは特赦・恩赦の対象となった者」は、「犯罪を犯さなかった者と同様の扱いをする」という内容の条文である。

    同様に2012年刑法の第155条にも「第2項」は存在しない。2012年刑法第155条は「計量器具の量目違反罪」となっており、「計量器具の目盛り等を不正に改造する犯罪」に関する条文となっている。

    条文の追加削除で若干のズレが出たのかと前後の条文も調べてみたが、「国家及び個人財産窃盗」に関する条文はなく、刑法の「国家財産を盗んだ罪」は第91条である。

    1990年刑法をどこかで見られるならば、見たいものである。

    「<TV連続劇>旺載山」:「日帝時代」の国境地帯を描く抗日革命ドラマ (2015年3月11日 「朝鮮中央TV」)

    『旺載山』という「TV連続劇」を3月11日から「朝鮮中央TV」で再放送している。韓国統一部のデータによると、初回放送は2007年11月で、その後放送されたことはないので、今回が2回目のシリーズ放送となる。初日には第1・2部、昨日は第3部と放送されている。上記の2007年データからすると第16部まであるようで、しばらく楽しめそうだ。YouTubeにアップロードされているのかもしれないが、この「TV連続劇」をこれまで見るすべがなかったので、私には初めての視聴となる。

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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    このドラマの背景はドラマ冒頭のナレーションで以下のように説明されている。

    「歴史はいつも、今日だけではなく、明日のためにより必要となる。旺載山(ワンジェサン)、この山の峠には、愛で始まり、愛で前進してきた朝鮮革命の血で染まった地に、民族団結の不変のスローガンが色濃く刻み込まれている。しかし、我々の革命の黎明期に偉大な首領様の民族への大きな愛、大団結路線を高く頂き戦った、国内初の党組織メンバーの名前と曲折が多い闘争は、まだ世に知られていない。知っているか人々よ!厳しい抗日決戦の雪嵐の中で、愛の春の日をもたらした首領様と名もない烈士についての不滅の話を。」

    このナレーションからも分かるように、満州にいた金日成が朝鮮に「抗日革命」の「党組織」結成し始めた頃の話ということになっている。

    「去る4月25日、英明なる金日成将軍様が抗日遊撃隊を創建した」というポスター。1932年4月25日、「建軍節」である。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    この人物がこのドラマの主人公「シム・チョルソン」である。「間島(満州)から金を稼ぐためにやって来た」と自称しているが、本当は金日成が朝鮮半島で抗日革命運動を組織化するために送り込んだ密使である。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    中央の人物が「石田君」、まだ第3回までしか見ていないので分からないが、このドラマの悪役の頭目と目される。表向きは朝鮮で馬牧場を経営しているが、抗日革命運動を抹殺するための工作員でもある。左にいるのが「石田君」の妹「花子」である。花子も表向きはお嬢様であるが、兄同様、日本の工作員養成学校を最優秀の成績で卒業した工作員である。右は日本からやって来た朝鮮支配の陰の実力者「松井君」。「松井君」は「花子」を「警備局長」に任命する。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    おもしろいのは、日本人の男同士は相手を君付けで呼んでいるが、女は「花子」と呼び捨てにしている点である。今のところ名前が分かる日本人女性は「花子」しか出てきていない。年下だからということで呼び捨てにされているのかもしれない。朝鮮人は「花子」を「花子アガシ(お嬢様)」と、「石田君」の夫人を「オクサマ(奥様)」と呼んでいる。

    <追記>第3部で「~さん」と呼ぶ場面もあった。

    また、朝鮮人学生同士も「君は(군은)」と呼び合っている場面がある。今の北朝鮮であれば「ドンムは(동무는)」とでも言うべき場面であるが、当時は「君」という言葉が、このように使われていたのかもしれない。日本でも目上の者が目下の者を「君は」と呼ぶことはまだあるが、同輩同士、例えば学生同士で「君は」と呼び合っている場面は見なくなった。

    右にいるのが「オクサマ」、真ん中がその子の「セイイチロウ」。「オクサマ」の馬車が暴走していたところを金日成の工作員シム・チョルソンが助けた。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    シム・チョルソンは、鉄道工事現場での仕事を得ようと日本人が経営する建設会社の事務所にやってくる。真ん中にいるのが「主任」。後ろの壁には神棚がある。「主任」は、シム・チョルソンが満州からやってきたという理由で雇おうとしない。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    シム・チョルソンが困っていると、鉄道工事現場で働く朝鮮人労働者が賃金引き上げなど、労働条件向上を「主任」に要求するためにやってくる。右から2場面の2人目の太った男が労働者の親分。「ヒョンニム(兄貴)」と呼ばれている。腕っ節の強さからボスになったようだ。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    彼らはストライキをちらつかせ、「主任」を脅して賃金引き上げを約束させる。また、シム・チョルソンを自分の「くみ(組)」で働かせることも要求し、承認させる。おもしろいのは、多くのシーンで「チョ(組の朝鮮音)」ではなく、「くみ(ぐみ)」と言っている点である。しばらくの間、何を言っているのか分からなかったが、下のシーンを見て理解できた。タンクには「スムンアンぐみ」、「チュンゲぐみ」と書かれている。どうやら、朝鮮人を頭目にした「くみ」がいくつかあり、寝食を共にしながら労働や生活していたようだ。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    <追記>第4部では、このように寝食を共にする場所を「はんば(飯場)」と呼んでいる。朝鮮半島に土木関連の日本語が残っている背景がよく分かる。

    まだまだ、先は長いドラマであるが、フィクションとノンフィクションが入り交じって当時の満州国境北朝鮮地域の様子が見られておもしろいドラマである。さらに何かあれば、追記することにする。

    「敬愛する金正恩元帥様が諸部門事業を現地で指導 2015.2」:銀河水化粧品の香りをチェック、元山の12年制一貫教育施設建設、「8建設局」、「専用機」大公開、傾いた建物?、「科学技術殿堂」建設 (2015年3月11日 「朝鮮中央TV」)

    金正恩の経済部門に対する2015年2月の「現地指導」を紹介する「朝鮮記録映画」が11日公開された。

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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    まず、「平壌化粧品工場」の「現地指導」の様子を紹介している。「将軍様」の「現地指導」の様子が記された「標識碑」の前で「将軍様」の遺訓について教示する「元帥様」。「党中央委員会副部長同志」も真剣にメモを取っている(左端)。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    「化粧品の質をさらに高め、我々の自民が外国製ではなく、銀河水商標の我々の化粧品を選ぶようにし、さらには、銀河水化粧品が世界市場でも評判になるようにしなければならない」と「元帥様」。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    化粧品の香りをチェックする「元帥様」
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    「元帥様」が香りをチェックした化粧品。何とか「クリーム」と書いてある。手前の白い箱が「ひげそりクリーム」。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    工場に付設された労働者用厚生施設「銀河水院」の浴場更衣室に置かれたシャンプーの香りもチェックする「元帥様」。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    「どの工場を訪れても、生産実態を尋ねる前に、勤労者の生活条件に気を遣って下さる敬愛する元帥様」とナレーション。シャンプーの香りも「生活条件」の一つなのであろう。シャンプーの香りなど、「党中央委員会副部長同志」の方が敏感だと思うのだが、その後、兄貴に意見を求められたのだろうか。

    自社製のシャンプーやリンスが置かれている。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    続いて、元山市の「育児院、愛育院、初等学院、中等学院の建設場を現地指導」。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    「育児院、愛育院、初等学院、中等学院が一緒に建築されているが、園児のための保育及び教育施設をこのように建設すれば、何の不自由もなく託児所から中学校全課程を終えることができるだろう」と「元帥様」。「12年制義務教育」に合わせた施設のようだ。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    「敬愛する最高司令官同志が下された戦闘命令執行日までは、あと65日残った!」とスローガン。この「育児院と愛育院」は、「太陽節」までの完成を目指しているという。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    この「現地指導」で興味深いところは、建設に従事する兵士の姿が一切見えないことだ。そう思っていたら、次のようなナレーションがあった。「敬愛する元帥様は、朝鮮人民軍海軍第863軍部隊の戦闘員が新たな命令貫徹のための訓練をしており、会うことができないのはとても残念だと仰り、最高司令官が建設場を視察し、大変喜び、戦闘的挨拶を送ると伝達してくれと依頼された」。「最高司令官同志」が「とても残念」以上に、「戦闘員」たちは記念写真も撮れなかったことに失望したことであろう。「命令貫徹の訓練」と言ってはいるが、何か特別な事情でもあったのだろうか。下で紹介する「未来科学者通り」の建設現場にも兵士はいないが、こちらについては説明がない。

    次は「8建設局」の建設者との記念撮影である。「8建設局」ということは、1~7また9以上の「建設局」もあるのかもしれない。こちらは、しっかりと記念撮影をしている。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    さて、ここからがこの「朝鮮記録映画」のメインシーンである。少し前の報道から「専用機」という用語をくり返し使うようになったが、今回はそのお披露目と言わんばかりに色々な角度から「専用機」を紹介している。やはり、これに乗ってモスクワまで行くつもりなのかもしれない。

    昨日の「朝鮮中央通信」は、「朝鮮とロシア、今年を両国間親善の年と宣布」という記事の中で、「朝鮮民主主義人民共和国とロシア連邦は、双方の合意により、政治、経済をはじめとした様々な分野で両国間の関係を新たな高い段階に発展させるという目的で、朝鮮での祖国解放70周年とロシアでの偉大な祖国戦争勝利70周年を迎える2015年を朝鮮民主主義人民共和国とロシア連邦間の親善の年とすることを決定した」と報じている。「新たな高い段階に発展」は、「元帥様」の訪ロで達成されるということなのだろうか。クリミア問題を発端としたロシアと欧米の対立の機会を失することなく、ロシアへの接近を試み、中ロを天秤に掛けながら米国と対峙するというお爺さんの外交手腕を「元帥様」が再現できるのかどうか。

    「専用機」を待つ「元帥様」
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    タービン音を鳴り響かせながらタクシーする「専用機」
    20150312kju economic guidancemp4_001509978
    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    正面左からのカット
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    「専用機」内部で幹部と打ち合わせ。このシートのテーブルには灰皿が置かれている。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    ゴールドのクッションにも人民軍章が入っているところがシブイ。
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    そして離陸
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    平壌空港を飛び立つ「専用機」
    20150312kju economic guidancemp4_001567639
    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    平壌市上空を飛ぶ「専用機」
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    飛行中の「専用機」アップ
    20150312kju economic guidancemp4_001588914
    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    飛行中のシート。このシートのテーブルには灰皿は置かれていないようだ。
    20150312kju economic guidancemp4_001600246
    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    大同江上空を低空で旋回する「専用機」
    20150312kju economic guidancemp4_001676838
    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    着陸する「専用機」。ここでもタービンの音をしっかりと聞かせている。
    20150312kju economic guidancemp4_001694433
    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    着陸後、タクシー状態の「専用機」。右前方からのカット
    20150312kju economic guidancemp4_001715614
    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    着陸後、幹部と話をする「元帥様」。「専用機」は正面からのカット
    20150312kju economic guidancemp4_001721042
    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    その後、「元帥様」は「未来科学者通り」建設現場に向かい、「77号棟」内部を視察する。ズームレンズの歪みなのかもしれないが、「77号棟」は傾いているように見えて仕方がない。
    20150312kju economic guidancemp4_001992140
    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    最後は、「科学技術殿堂」の建設現場の「現地指導」である。この「記録映画」を見るまで、「科学技術殿堂」なるものが建設中であることは知らなかった。恐らく、どこかで報道はされていたのだろうが、見落としていた。北朝鮮の科学者や技術者が科学技術に関する資料を参照する時、主に「人民大学習堂」の図書館を利用しているようだ。「元帥様」は科学技術を発展させるには同図書館では力不足なので、科学技術専門の資料センターを建設しているのかもしれない。もしかすると、同センターを中心にネットワークを通じて科学技術資料を閲覧できるようなシステム導入も計画されているのかもしれない。ハード面では色々とできるであろうが、ソフト面でどれだけの資料を集めることができるのか。そして、科学技術資料とはいえ、それをどこまで朝鮮人民に公開することができるのか、こうした点が問題となってくるのであろう。

    「科学技術殿堂」の側面図
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    Source: KCTV, 2015/03/11放送

    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が東海岸前方哨所を守るシンド防御中隊を視察された」:金ヨジョン単独同行、いつもニコニコ (2015年3月12日 「労働新聞」)

    金正恩が東海岸の島嶼守備隊を視察したと『労働新聞』等が伝えた。内容的には、米韓合同軍事演習による挑発への即応体制確認ということであるが、興味深いのは妹の金ヨジョンが単独同行している点である。過去記事かコメントにも書いたように、彼女は経済部門の「党中央委員会副部長」だと思われるが、軍部隊視察に単独同行しているところは興味深い。今回の視察は、軍事訓練の指導ではなく、主として「後方事業」や「教養事業」のチェックであったからかもしれないが、中央の軍人が一人も同行していないのはなぜであろうか。

    単独同行であったということとも関係するが、序列が上の同行者がいないため、金ヨジョンは「最高司令官同志」の直ぐ後ろを歩いており、露出度が高い。彼女は、経済部門の指導などで「元帥様」の教示を他の同行者と一緒にメモしていることもあるが、今回の同行では全てニコニコしながら歩いている。「最高司令官同志」も微笑んでいるので、何か面白いことでも言ったのであろう。
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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 동해안전방초소를 지키고있는 신도방어중대를 시찰하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    下の写真は8枚セットで掲載された小さな写真の1枚である。8枚セットのうち3枚に彼女は写っている。いつものボンボンがついた黒いコートを着ている。崔龍海等も黒コートを着用することがあるが、黒はステイタスカラーなのかもしれない。この写真では、腹部に膨らみが見られ、懐妊かとも思えるのだが、他の写真ではそのように見えないので、その可能性はないようである。
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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 동해안전방초소를 지키고있는 신도방어중대를 시찰하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    下は、島を警備する兵士と記念撮影した写真の一部を切り抜いたものである。「最高司令官同志」とは腕組みをする習わしであるが、「副部長同志」と右隣の兵士の間に微妙な隙間があるのがおもしろい。ボンボンが風で舞い上がっている。
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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 동해안전방초소를 지키고있는 신도방어중대를 시찰하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    金ヨジョンには軍の階級はないと思うのだが、「太陽節」あたりで叔母さん(金敬姫)が持っていたように、将官クラスの階級でも与える準備作業なのであろうか。

    「3.8国際婦女節105周年にちなんで国立曲芸団祝賀公演」:北朝鮮のサーカス、モランボン楽曲のサーカスバージョンか?、マジック、着ぐるみのクマ?、三三七拍子 (2015年3月10日 「朝鮮中央TV」)

    拙ブログでは、漫才など、北朝鮮の舞台演芸などについて紹介してきた。しかし、これまでサーカスについては紹介していなかったような気がする。北朝鮮で「曲芸(サーカス)」は珍しいわけではなく、しばしば「朝鮮中央TV」でも放映されている。これまでなぜ紹介しなかったのかと言えば、「ま、サーカスだわな」という程度にしか思わず、さらに言葉がないので見ていてもあまり北朝鮮「らしさ」を感じなかったからである。その上、日本を含めた諸外国のサーカスをしっかりと見たことがないので、その技や技量を比較することもできなかったからである。

    「3.8国際婦女節」を契機に行われたこの公演も見る気は全くなかった。例によって、画面を小さくして隅っこで流しておく程度であったのだが、クマの不思議な動きが目を引いた。それについては後述する。

    「3.8国際婦女節105周年にちなんで国立曲芸団祝賀公演」
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    会場は、夫婦同伴の観客で埋め尽くされている。特別席には「党政治局常務委員」の肩書きが消えた崔龍海も夫婦同伴で座っているようだ(画質が悪くて夫婦同伴かは確認できないが、崔龍海が観覧したことは『労働新聞』等で確認済み)。下の写真は一般観覧席。
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    会場は、円形の部分がアイススケートリンクとしても使えるようになっており、公演はスケートリンクから始まる。
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    「国立曲芸団」というだけあって、いくつかの出し物は国際的なコンクールで賞を取っていると字幕で紹介している。前記のとおり、他のサーカス団と比較するための材料を持ち合わせていないのだが、見ている感じでは絶対的に凄いような気がする。

    その動きの凄さは、拙記事では紹介できないので、内容的に興味深いものを紹介していく。

    まずは「宇宙は呼ぶ」という出し物である。「光明星3-2号機」打ち上げ「成功」を受けて作られた新しい作品なのかもしれない。
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    このような宇宙人的なコスチュームを着た団員が登場する。
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    この出し物のBGMで使われるのがモランボン楽団の「タンスメ」である。演奏からして同楽団が「曲芸団」のために特別バージョンを演奏したのかとも思ったのだが、この「曲芸団」には専属(?)の楽団が付いていることが最後に分かった。楽団の構成は分からないが、もしかすると、彼らが演奏をしているのかもしれない。専属楽団があるサーカス団というのは普通なのだろうか。

    公演の終わりで観客に挨拶をする楽団の指揮者。
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    次にマジックを紹介する。「マジシャンの妙技」
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    マジシャンが箱の中に入る。
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    アシスタントの女性が、刀を箱に刺す。
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    次々と刀を刺していき・・・
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    串刺しの状態となる。
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    ところが、箱の蓋を開けるとそこにはマジシャンがいない。
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    マジシャンは刀が置かれていた箱の中に寝そべっていた。
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    ここまで見た時は、なんとチープな、米国のマジック種明かし番組では、もう何回も種明かしされているマジックをやるものだと呆れてしまったのだが、この続きがあった。

    マジシャンは、「今度は裏側からお見せしましょう」と種明かしをするではないか。これには驚いた。さらに言えば、その種はチマチョゴリを実に上手に使った「自力更生的」「ウリ式」の種であったのには、なかなか感動した。上の写真にその種があるので、種はお考えいただきたい。

    そして、同じ演技の別バージョンを演じ、種からは想像できないような人数の女性がたくさん箱から出てくる。
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    次は、「動物曲芸 ゴムとび」である。
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    2匹のクマが出てきて色々な演技をするのであるが、このクマ、四つん這い状態なることはほとんどなくずっと立っている。さらに、一つの演技が終わるたびにご褒美の餌をもらうこともしない。全体の演技の中で餌をもらったのは数回。
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    上記のような動きからすれば、どう考えても本物のクマではなく、着ぐるみである。「動物曲芸」とはいっているが、動物のふりをするという設定の出し物なのか、本当のクマを使っていることにしての出し物なのかは分からない。後者だとすると、かなり工夫の余地がある。
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    最後は、道化師による出し物である。この道化師は、自ら観客席に入っていったり、観客をステージに上げるなどしておもしろい演技をする。
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    この道化でおもしろかったのは、道化師が自分の笛に合わせて「三三七拍子」の拍手をすることを観客に求めている点である。wikipedia等で「三三七拍子」の発祥について軽く調べてみたが、よく分からなかった。「外国のサッカー応援チームが三三七拍子をやっていた」などと書いているブログもあったので、もしかすると「三三七拍子」は日本独自のものではないのかも知れないが、ともかく、北朝鮮にそれがあり、朝鮮人民がその拍子を知っているということはおもしろかった。「日帝時代の遺産」なのかもしれない。下の写真は手拍子を求める道化師。
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    Source: KCTV, 2015/03/10放送

    この番組、uriminzokkiriにもアップロードされており、高画質バージョンで崔龍海夫人などを確認したかったのだが、ダウンロードできるものの、ファイルが壊れており約1時間半の番組が22分のところで終わってしまう。この現象、uriminzokkiriにアップロードされるファイルでこのところ頻出している。ワイドスクリーンの新しい番組ファイルで発生するので、もしかすると、「朝鮮中央TV」の高画質化と関係があるのかもしれない。

    「一篇の日記に記された追憶を振り返り」:金正日の母を思う日記 (2015年3月8日 「朝鮮中央TV」)

    別記事にも書いたとおり、「朝鮮中央TV」を聞いていたら、詩が流れていた。「母を詠った」詩だったのでもしやと思ったが、金正日が金正淑について書いた日記だった。一応紹介しておく。

    「一篇の日記に記された追憶を振り返り」
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    Source: KCTV, 2015/03/08

    1953年2月16日
    追憶が多い日
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    Source: KCTV, 2015/03/08

    今日は私の誕生日だ。
    ・・・
    ・・・ 窓の外を眺めると、懐かしいお母さんの思いが込み上げる。
     お母さんは白頭山で寒風、雪嵐に吹かれながら私を抱いて
    育てて下さろうと大変な苦労もされた。

     今も耳を傾ければ、白頭山密営のかがり火の下で
    私を胸に抱かれお母さんが静かに歌われた子守歌の声が
    耳に響いてくるようだ。

     解放後のある日、私が私の故郷はどこなのかと尋ねると
    お前の故郷は白頭山だと言いながら、大きくなったら
    白頭山に言ってみなさいと仰っていたお母さん。
     
     その時、私はそのお言葉の意味がよく分からなかったが
    だんだん大きくなり、お母さんのお言葉を心に深く刻むようになった。

     特に今日、誕生日を迎えると、年月の雨雪にさらされながら
    私を育てて下さったお母さんの愛を考えさせられ、
    お母さんが願っておられたとおりに父なる将軍様を高く頂いていかなければならないという
    決心を固く誓わせられる。

     ああ、今日は本当に立派な私のお母様のことを思い
    そしてまた思いたいそんな日だ。

     お母さんは、いつでも私にはやく大きくなって
    お父さんを手伝って差し上げなければならないと仰った。

     会いたいお母さん!

     今は子供なのでお父さんのお手伝いができないのが悔やまれます。

     しかし、この息子はいつでもお母さんのお言葉を忘れないでいます。

     お母さん! お母さん! ・・・

     今日は実に追憶が多い日だ。

                                      金正日

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    Source: KCTV, 2015/03/08

    金正恩の高英姫を思う日記はいつ公開されるのか。

    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が呉仲洽7連隊称号を授与された朝鮮人民軍航空及び反航空軍第1016軍部隊を視察された」:専用機のタラップ、荷物用の扉を使ったのか? (2015年3月9日 「労働新聞」)

    金正恩が地方にある空軍部隊を視察した。今回の視察は、戦闘訓練ではなく、風力発電所や野菜農場といった「後方支援」部門の視察であったようだ(きちんと記事は読んでいないが、写真からはそんな感じがする)。

    今回の記事で興味深いのは、「最高司令官同志」が「専用機」から降りる場面の写真である。

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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김정은동지께서 오중흡7련대칭호를 수여받은 조선인민군 항공 및 반항공군 제1016군부대를 시찰하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    上の写真にあるように、「最高司令官同志」は、荷物の出し入れに使われる扉から、段数が少ないポータブルなタラップを使って出てきている。この「専用機」は毎度使われているもので、通常の乗客用扉もあるのだが、敢えて荷物室の扉を使って出てきたというのは、軍部隊訪問などで大型のタラップを準備できない場合でも「専用機」で運んだポータブルタラップを使うということなのかもしれない。

    この「指導」がいつであったのかは記されていないが、昨日であったのならば「最高司令官同志」は、「3.8女性節」に李雪主を労うこともなく、「先軍の道」を歩いていた、いや飛んでいたということなのであろう。昨日、「朝鮮中央TV」を聞いていたら、詩が流れていた。お母さんを詠んだ詩であったので、「いよいよ出たか」と思ったのだが、最後まで聞いていたらお父さん(金正日)が、お婆さん(金正淑)を詠んだ詩であった。

    「<時事座談>今日の世界 米国の人権を究明する」:米国の人権を座談会形式で糾弾、新しいスタイルの座談会番組、朝鮮人民はどう思うのか (2015年3月6日 「朝鮮中央TV」)

    3月6日から「今日の世界-米国の人権を究明する」という新しい座談会番組がシリーズで始まった。これまで第2回まで放送され、今日は第3回が放送されるはずである。

    過去記事で紹介した「独島」に関する座談会番組も比較的新しい形式であったが、今回の「今日の世界」は、透明なテーブルの使用、出演者が同時に発話する、発話者以外の出演者にカメラを向けるなど、これまでにない手法が使われている。加えて、米国等のテレビで放送されたフィルムをたくさん使っており、「人権不毛地帯米国」、「人権生き地獄米国」を朝鮮人民に見せようとしているが、それを見て朝鮮人民がどう思うのかも興味深いところである。以下では、それらについて紹介していくことにする。

    「今日の世界」、シリーズ化して様々な「国際問題」を扱う番組となるのであろうか。
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    「今、この地球上に口を開けば人権について騒ぎ立てる国があります。それは、まさにありとあらゆる人権に関する罪悪に満ちている、最悪の人権生き地獄であり、世界の人権破壊の主犯である米国です。我々は、悪の帝国、米国の醜悪な人権実態を究明することにします」とナレーションが入り、番組は始まる。

    「米国の人権を究明する (1)」
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    全員が正面を向いて座談会をするスタイルはこれまで変わらないが、これまでは背景が木製の壁でその前に、植木鉢が置かれていたりしたが、この「座談会」では裏面前面がスクリーンになり、机も半透明なガラスかアクリル製らしきものが使われている。
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    この「座談会」の出席者は、ほとんどが北朝鮮メディアの関係者であるが、「放送員」まで所属等を紹介するところもこれまでにはあまりなかった。

    「朝鮮中央放送委員会 放送員(アナウンサー) 鄭スンファ」この人は、「声明」や「談話」」など重要報道のアナウンスなどをしばしば担当している。
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    毎度おなじみの「朝鮮中央放送委員会 論評員(論説委員) 李チョンソン」も出演している。
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    このカットもこれまでにはあまりなかった。今、上で紹介した「論評員 李チョンソン」が発話しているのだが、カメラは話を聞く他の出演者を写している。この場面は、黙って聞いているだけであるが、同時に何人かが同時に発話する場面もある。台本にあるのかどうかは別とし、これまで座談会は整然と進行していた。
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    この人も座談会によく出演している。「朝鮮中央放送委員会 論評員 ユン・チルリョン」
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    「社会科学院法律研究所所長 博士 副教授 ホン・チョルファ」この人も解説者としよく出てくる定番出演者だ。
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    「朝鮮中央放送委員会 部長 ファン・ドンチョル」
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    ファン部長は米国でのデモの様子を紹介しながら、「『我々は99%だ。』この意味は、米国の人口の1%にしかならない億万長者と特権層が、99%に達する人々が分け合わなければならない物質的な富を独占し、99%の人々が享受しなければならない権利を奪っているので、99%が絶望と貧困に陥ったということなのです」と説明している。

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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    ここから「99%の人口がいかに悲惨な生活をしているのか見ていくことにする」といくつかの場面を見せながら解説をする「朝鮮中央通信社 副局長 カン・ヒョンミン」
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    「統一新報 論説員 高ヨンスク」は、「米国ネバダ州の南部にあるラスベガスは、一名、享楽の都市、賭博の坩堝として知られています。ここには、賭博場が250もあるということです。ここには米国各地から億万長者が集まって、一晩で1600万ドルという高額な金を使っています。贅沢と享楽で一晩に巨額な金を浪費している一方で、地上では何メートルも離れていないところで、地下の汚水溝の中で3~4000人にもなる人々が、金がなくて寒さに震え、空腹にさいなまれながら、死ぬこともできず生活をしているのです」と下の映像を見せながら説明している。

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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    溝の中で生活しているという男女。この人たちの衣服や家財道具を見て朝鮮人民は自分たちの生活と比較してどう思うのであろうか。
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    「デトロイト市周辺にあるテント村を紹介している」このように、2画面を同時に見せるやり方もワイドスクリーンならではの技法ではないのだろうか。
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    テントの内部、薪を燃料とするストーブもあるし、棚には食料品らしきものが積まれている。朝鮮人民はどう思うのか。
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    続けて、医療について「病気になったら死ななければならない国が、まさに米国です」と紹介を始める。「米国は医療保険制度があると自慢しているが、加入費が高いので大多数の人が加入できていません」と米国が抱える問題の一面をしっかりと説明している。

    「テネシー州の農村の人々が、慈善団体が治療に来たということで、夜中から列を作って順番を待っている」、「貧乏な人々」と説明。やせこけた貧乏人はいないのを朝鮮人民はどう見るのだろうか。
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    そして、「この男性は、10年前から泌尿器系の病気を患っており、手術をすれば治療できるのだが、手術費用が10万ドルと高額なので、手術もできずにいます。10万ドルというのは、この夫婦が一生働いても稼げない金です」と説明。夫婦は、「病気も苦しいが、絶望感がもっと痛切だと語った」とも。
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    「絶対多数が貧困ライン以下で悲惨な生活を送っている一方、1%の億万長者が贅沢な暮らしをしている」とその様子を紹介する。繰り返すが「貧困ライン以下」でなぜ米国人はあんなに太っているのかと朝鮮人民は考えないのだろうか。「10万ドルの手術」ができない夫婦を見ても然りだ。高GDPの資本主義国では、規則正しい食生活をして、ダイエットに金と時間をつぎ込める層が裕福であるということを知っていれば話は別なのだが。

    まず見せる写真がこれである。「ご覧下さい。このペットの犬の首に掛かっているのは1万5千ドルの首輪です。米国の億万長者は、人ですら使うことができない高価な首輪を競い合って犬の首にかけてやっているだけではなく・・・」
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    「犬ホテルの高級ベッドに金を使っています。さらに、犬の誕生日に立派な食事を準備して、祝杯のためのワインまで注いである高級な食卓で、様々な高価な食べ物を腹がふくれるまで食べされるなど、本当に一部の金持ちだけが、日々増え続ける富の使い道がなくて、愚かなことばかりしているのです」と解説。写真を見る限りでは、特段「高価な食べ物」とは思えないのだが、どうだろうか。少し前、某ホームセンターのペットコーナーを歩いていた。その時、「ほんだしの餌」なるものを見て、目を疑ったが、日本の普通の人が犬に「高価なほんだしの餌」を与えてると知れば、朝鮮人民は仰天するのであろう。
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    「本当に腐って、病を患った米国社会は、犬のような世の中といわざるをえません」と解説者。周知のとおり、朝鮮では「犬」は卑しむべき生き物。

    それだけでは留まらない。「今、米国は犬のような世の中といったのですが、米国では億万長者が犬だけではなく、見ただけで気持ちの悪い蛇をペットとして育てるという変態的な風潮が蔓延し、今、米国社会では蛇産業という言葉が流行し、蛇企業が成長しているといいます」。「蛇産業、蛇企業という言葉を聞いたことがある人はいますか?」というと、一同、「あります」と答えるが、私には初耳だった。「こういう言葉は、世界のどの国の百科事典を調べても、探すのが難しい言葉だと思います」と言っているが、まさにそのとおりだと思う。
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    「米国では、250万匹以上の各種の蛇が億万長者の宮殿のような家で飼われています」と下の動画を見せる。
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    確かに、北朝鮮では蛇は焼酎に漬け込んで「蛇酒」を作る材料であり、ペットにするものではない。

    「米国という国は、絶対多数の人民には地獄である反面、犬の王国、蛇の王国といえますね」と解説者。

    この番組で特徴的なのは、欧米の動画映像を使っているだけではなく、言質を引用したり、世論調査を引用している点である。こんなことも言っている。

    「米国の世論調査機関であるギャロップが、昨年6月に米国人を対象に我々の共和国と米国を比べながら、どちらがよりよいかという質問をした。驚くなかれ、回答者の過半数が我々の共和国がよりよいと回答したという。この衝撃的な結果を受け、米国社会では大きな波紋が生じた」

    本当か嘘かは未確認であるが、本当だとしたら「平等さという点で」という付帯条件がついていたのかもしれない。番組でも解説者が、この「世論調査」に回答した「ミシガン州に住むメリーという女性は、米国の高い失業率を根拠に『私は4年間も仕事がない。しかし、金正恩最高指導者が領導する朝鮮では誰もが職業を持っているという。だから、私は米国よりも金正恩最高指導者が領導する朝鮮がもっいい』と話し、多くの人々を驚かせた」とその理由を説明している。

    続けて、米国の銃器犯罪について解説をする。こういう画面編集も新しい。
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    翌日放送された第2回では、「子供と女性の権利」、「黒人差別」などについて解説している。第2回でも興味深い解説があった。

    「昨年6月、前国務長官のヒラリーが、2016年の大統領候補として誰が出馬しても、米国の政治制度が最も残忍であるということを認めなければならないと言い、米国よりも朝鮮で女性がより大きな人権を享受していると言いましたね」

    と説明している。彼女の発言については未確認であるが、北朝鮮と比較しながら本当にこんなことを言ったのであれば、大統領候補は諦めた方が良い。

    KCTVストリーム

    昨日か一昨日からKCTVストリームの映像が止まったり、音声が途切れる状況が改善された。全くなくなったわけではないが、聞くに堪えられるレベルになった。一方、画質は若干落ちているようなので、妥協的な調整をしたのかもしれない。

    画質が落ちたのは残念だが、音声が途切れるのはバックグランド流しておくにはとても耳障りなので、それがなくなったのは良いことだと思う。

    高画質で見たい番組は、uriminzokkiriから翌日ダウンロードすればよい。

    <追記:3月9日>
    今日は、再び状態が悪い。「No Signal」と出るのは、衛星からの電波が拾えていないということなのであろう。だとすると、ストリーム前の段階での受信設備に問題が発生しているのかもしれない。

    「20時報道」:化粧品の値札にボカシか?、ついでに「対艦ロケット」の話しも (2015年2月6日 「朝鮮中央TV」)

    これまでも「20時報道」等で入れられたボカシはいくつか紹介したが、久しぶりに少し目立つボカシがあった。

    実は、数日前に公開された金正恩による2015年2月の軍事部門指導を紹介する「朝鮮記録映画」の中にもボカシと思われる部分があったが、そうではなかったようだ。

    「島火力打撃及び占領に関する演習」を紹介する部分で背景にあるモニターの画面がよく見えない。島を特定されないようにぼかしを入れているのかと思ったが、単に光が反射してよく見えないだけのようだ。一番左の画面に表示されている地図が「東海」を中心とした日本列島に見えたので、もしや「独島」の話かと思ったのだが、その後よく見えた地図を見るとやはり「西海NLL」周辺を想定した演習だった。参加している軍部隊からしてもそういうことになるであろう。

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    Source: KCTV, 2015/03/05放送

    出た話のついでに書いておけば、今回の「記録映画」では、新型の「対艦ロケット」が紹介された。よく見れば、対艦ロケットは外見的には専用の船舶に設置されており、船舶とセットでの導入ということになるのであろうか。
    kju 201502 military guidance(1)mp4_001040449
    Source: KCTV, 2015/03/05放送

    ロケット砲は4本あり、数えてみたら、少なくても全ての砲門から最低1発は発射しているようだった。また、標的とされた廃船に命中する部分も何回も見せている。弾頭には爆薬が装填されていなかったのか、命中はするものの船体を突き抜けるだけで爆発はしていない。命中すれば爆発するということを前提とした試験発射だったのだろうか。いずれにせよ、「最高司令官同志は、設計された戦術・技術的諸元に到達したという点で満足を示された」ということなので、問題はなかったのであろう。
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    Source: KCTV, 2015/03/05放送

    さて、タイトルにした化粧品の話をする。3月8日の「国際婦女節(国際女性デー)」が近づいているということで、3月6日の「20時報道」では、化粧品工場の様子と売店の様子が紹介された。紹介されたのは「春の香り合作会社」である。「合作会社」ということなので、中国企業との合作なのであろう。「20時報道」では、「優秀な工場」として、このところしばしば「合作会社」を紹介している。少し前には、やはり「合作会社」である温室を完備した「野菜農場」を紹介するドキュメンタリー番組も放送していた。やはり、中国企業を中心とする「合作会社」が増えてきており、「実利」を上げているということなのであろう。

    「春の香り合作会社」
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    モランボン区域にある「開城高麗人参化粧品」などを販売する売店
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    ボカシが入っているのは、「化粧品展示場責任者」がインタビューに答える場面である。マイクの左側のショーケースないにある値札と思われるものにボカシがかけてある。マイクの一部もボケているので、明らかなボカシである。
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    Source: KCTV, 2015/03/06放送

    いったい何が書かれているのだろうか。

    「<朝鮮芸術映画>青春の心臓」:3大革命小組活動の実態 (2015年3月3日 「朝鮮中央TV」)

    『青春の心臓』という「朝鮮芸術映画」が3日、放映された。韓国統一部のデータでは、2005年6月にこの映画は初めて放映されている。

    何回も書いているように、uriminzokkiriの動画データの質が非常によくなっているので、見ても見なくても取りあえず「朝鮮芸術映画」はダウンロードしておくようにしている。この映画をしっかりと見ようと思ったのは、冒頭の次の画面があったからである。

    「この映画を3大革命路線を受け入れ、正面に立って進む党の革命前衛-3大革命小組員に捧げる。」
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    現在進行形の「小組員」活動については、これまでも何回か記事にしたが、日本で出版されている北朝鮮関連の図書には、「3大革命小組」は生産活動にネガティブな影響を与えたと記されている。それでは、北朝鮮は「3大革命小組」をどのように見ているのかということで、この映画は参考になる。

    「青春の心臓」
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    記事を書きながら「今日の『労働新聞』に掲載されたニュース」を聞いていたら、同新聞に「3大革命小組運動の戦闘的威力を高く轟かせ、さらに高く、さらに速く -デアン重機械連合企業所幹部と3大革命小組員」という記事が掲載されているといっていた。調べてみると、確かに3面に掲載されている。記事をきちんと読めば書いてあるのかもしれないが、この時期に「3大革命小組運動」が提起されたのかもしれない。

    話を映画に戻す。映画の舞台は地方都市にある造船所の修理部門である。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    この映画の主役は右の「3大革命小組員」。着用している帽子が「小組員帽子」なのかどうかは分からないが、見た感じでは、この女性が通う大学の制帽のようだ。左の新聞を持った男性は船舶修理部門の「職場長」。「職場長」と「小組員」が協力しながら問題を解決していく。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    修理部門で問題となっているのは、修理に必要なコバルトが不足していることである。コバルトは北朝鮮では製造することができず「全て輸入」に依存しているということになっているのだが、輸入状況が芳しくなく、この工場への供給が滞っている。下の写真は、修理のために工場に来た漁船の機関室で部品を見ながら「機関は廃棄しなければなりません。コバルトが全部飛んでしまいました」と左の「警笛員」が「小組員」に話している。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    修理工場には、漁獲大会で1位になった漁船が修理に来る。この漁船の船長は同大会で1位になったものの、漁船を「酷使」しているということで、「小組員」は「批判しなければならない」という。船長は修理を要求するが、「小組員」は「修理をして欲しいならば、漁船を酷使したことについて担当部署を回って謝罪してください」と謝罪を求める(写真下の左が船長、右が「小組員」)。この辺りの様子からは、「小組員」は技術革新だけではなく「3大革命」という文字通り、思想や風紀についても指導していたことが伺える。船長は機関長との会話の中で「小組員」のことを「処女ドンム(若い女性の意)」と呼び、機関長に「処女ドンムじゃなくて、小組員ドンムだろう」と言われるが、「処女は、処女だろ」と言い返す。党に権威づけられた「小組員」と生意気な若造がという現場の葛藤を表しているようだ。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    「小組員」と船長は言い合いになるが、「小組員」の思想的な話し(過去に漁船を守るために機雷に触れて死んだ人のこと)を聞き反省する。そして、船長と機関長が漁船の修理をしているところに「小組員」が弁当を持ってやって来て和解する。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    しかし、漁船を修理するためには、依然としてコバルトが必要で、修理工場の関係者が他の事業所などに行きコバルトを分けてくれるよう要請するが、国家的にコバルトが不足している状況の中、コバルトを分けてくれる事業所は見つからない。

    実は、この修理工場には若い技術者がおり「自体の原料(北朝鮮で産出する原料)」からコバルトを生成する研究をしていた。しかし、生成過程で有毒ガスが発生する憂慮から研究を中断し、平壌に行ってしまう。「小組員」は、自分の知識で彼の研究を続けようとするが、彼女の能力ではどうにもならないことを自覚し、技術者を連れ戻しに平壌に向かう。

    しかし、若い技術者は次のように工事用に戻ることを断る。

    「小組員ドンム、正直に言いましょう。私も人です。私も人間なのに、自分の生命に全く無関心などというのは、嘘でしょう。命がけでもやりましょうと言うのは簡単でしょう。しかし、自分でやるのは大変でしょう。だから人間じゃないですか。」

    その言葉を聞いた「小組員」は怒り、

    「だから人間ですって。正直に言って下さり、ありがとうございます。」

    と立ち去りながら心の中で自問自答する。

    「『だから人間ですって』。その時々、個人の要求に膝を屈するのが人間だというなら、人間社会はどうなって、誰が革命のために青春を捧げ、祖国のために命を犠牲にするのだろうか。私はそんな卑屈な人間として一生を終えるのではなく、最も清廉な人間として1日を生きていきたい。」

    上の台詞がまさにこの映画の主題である。ここまででは、危険な実験を敢えて実施することを善とし、安全を優先した上で実験をしないことを悪としているように取れる。この点については、後で若干の修正が入る。

    平壌の公園で技術者と話をする「小組員」
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    修理工場で「3大革命小組員」と工場労働者が一緒に働いている場面で興味深い会話がある。「3大革命小組員」が次のようなことを言う。

    小組員A:「私、本当に嫌になっちゃうわ。私たちの組み立て職場長同志は、技術革新をして(船舶修理)15日体系(短期間で仕事をする)をしようとせず、最近、船の修理が遅れているからということで、労力もくれ、資材もくれ、くれ、くれとばかり。」
    小組員B:「だから、スニドンムが、『職場長同志、国家がミルクをくれる乳牛だと思っているのですか。いつでも絞ればミルクが出る乳牛じゃないんですよ』っていったんですよ」(笑い)

    職場長のことを言って笑う小組員B
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    この話を聞いて、主人公の「小組員」が小組員A・Bを叱る。

    「エラニ、スニ、私はあなたたちにいつか言おうと思っていたのですが、あなたたちが言っている組み立て職場長同志は、年齢的にもお父さんの歳だし、私たちが少年団に入団した時、あの方々は社会主義革命のために血と汗を流した先輩よ。それなのにあなたたちは、まるで目下の人を教養するような、そんな生意気な口をきいてもいいの。私たちは、一言言うにも謙虚に礼節を持って、行動一つするにしても首領様の特使らしく、党中央の党衛隊のようにしなければならないんじゃないの。あなた方も知っていると思うけど、栄光的な党中央では3大革命小組を派遣するたびに、小組員を3年間、現実の中で党幹部の品格を養ってこなければならないと強く教えてくれたじゃない。党幹部の資格よ。」

    上にも書いたが、現実的には小組員A・Bのような生意気な若造が多く現場に派遣され、経験豊富な年長者に対して横柄な態度をとるという問題が発生していたのかもしれない。そのため、この映画では主人公の「小組員」にそれを戒めさせているのであろう。このあたり、中国の紅衛兵と「3大革命小組員」の違いで、儒教的価値観と社会主義を巧妙に結びつけた北朝鮮式「社会主義革命」の一端を示しているような気がする。

    小組員A・Bを叱る主人公の「小組員」。「小組員」の中にも先輩後輩のような関係があるようだ。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    しかし、「労力をくれ」と職場長が求めているのも事実であった。興味深いのは、「労力をくれ」という要求は、「小組」と相談した上でするということが規則になっている点である。この辺りからは、事業所に派遣された「小組員」に大きな権限が与えられていたことが分かる。上の発言にもあるように、「首領様」、「党中央」という錦の御旗を利かしていたのであろう。

    職場長:「我々の関係はよかったですよね」
    小組員:「そりゃ、そうですよ」
    職場長:「私、一つ頼みたいことがあるんだが」
    小組員:「小組と相談せずに20人労力要求をしたことでしょ」
    職場長:「ええ、もうしっているの。小組員の目と耳ってのは・・・」
    小組員:「党の目と耳でしょ」
    職場長:「そうだ、そうだ」
    小組員:「職場長同志、内部の予備(労力)でやってみませんか」
    職場長:「もう、ギリギリの状態だ。針が通る隙間もない」
    小組員:「でも、思想が入り込む隙間はあるんじゃないですか」
    職場長:「言い合いで私は勝てないよ。でも、今回のことは、私の決心通りにするから、そう思っていてくれ」
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    「小組員」は、職場長の姪の旋盤作業を観察しに行く。ランプにかかっているように、この姪は「模範」労働者ということになっている。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    「拡大党委員会職場会議」がいつもの場所とは異なる「修理職場現場」で開催される。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    同会議で職場長、「計画課長」などが発言をする。「計画課長」の発言が興味深い。ここでは、職場長の姪が現状のまま増産が可能だと主張し、それを「計画」にしようと言っていることについて議論されている。

    計画課長:「(職場長の姪が)学校に通っている時、10点取るといったら絶対に取ったといっています。学校の成績なら取れても取らなくてもどちらでもよいのですが、国家計画は一度上に上げれば法律なのに法律ということを知らないので困ってしまいます」(立っているのが計画課長)
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    すると姪が立ち上がり「知っています」と叫ぶ。参席者の一人が「そりゃ、しっているでしょ。彼女も公民なんだから」とからかう。姪は、議長から発言するよういわれるが、からかわれて泣いてしまう。横に座っている「小組員」は、「(しっかりしなさい)ここは党委員の前なのですよ」と発言を催促され、発言を始める。

    泣いているのが姪
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    姪:「私は、一つ伺いたいことがあります」
    議長:「誰に?」
    姪:「計画課長同志、おじさん、それから支配人同志に。私は学校で先生から人ややると決めればできないことはないと習いました。それなのに、私がやると決心したのに、みんな駄目だというのです。今のように。答えて下さい。やると決めればできないことはないというのは、嘘なのですか。正直に答えて下さい」

    一同、答えることができずに困ってしまうが、一人の労働者が「それは嘘ではない。それは、抗日の血の海の中で乳鳴る首領様が体験の中で見いだした革命の真理です」と答える。

    その答えを受けて「小組員」が立ち上がる。「小組員」は、姪の手帳に記されていることを板書しながら説明を始める。
    小組員:「オッピョリ(姪)は、下半期に24350個のコバルトメタルを生産しました。1つ当たりの生産時間は3分。しかし、オッピョリは、それを1分30秒でやる計画を立てました。その計画には、科学的な根拠があります。私が電子計算機で計算してみたところ、オッピョリが計算した不良品製造率を引き下げれば、3ヶ月で半年分の生産をすることができるという確信を得ました。オピョルドンムの手帳には、週480分の労働時間で計算されています」
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    この話を聞いて、一同「そうすれば、1人で2人分の生産をすることができる」と言い出す。続けて「小組員」は

    小組員:「職場長同志の皆さん、今、480分の労働時間をこの幼い旋盤工のように清廉な良心を持って利用している人が何人いるでしょうか。それなのに、人員不足で生産できないかの如く、労力、労力といっているではありませんか。父なる首領様は、幹部に教示をしておられるのに、首領様の教示を受ける時は感銘を受けながら聞き、自己批判をしているのに、実際の行動ではこのように態度が変わるのですか。だとすると、我々には党が痛がる時に一緒に痛くなる心臓と、問題が提起されると楽な道を選ぶ安易な心臓が別々にあるということなのですか。」

    結局、「労力問題」については保留となる。それはよいのだが、問題の本質は何であったのだろうか。労働が量的にも質的にも低いので「模範労働者」の姪のように働こうということなのだろうか。そして、その改善は「思想」の力でしようということなのだろうか。北朝鮮では「首領様の教示」は相当な重みを持って受け入れられている点は事実である。しかし、「清廉な良心」だけでは人は動かない。何らかのインセンティブが必要なはずだが、映画ではそれは明らかにされていない(ま、明らかにすることはできないのだろうが)。

    しかし、依然としてコバルト供給問題は未解決のままである。「小組員」は「国家科学院」に手紙を書き、コバルト生成に繋がる実験で有害ガスが発生するのかどうか質問する。「科学院」 からの返信には、その実験は諸外国の資料を調べても記載がなく、有毒ガスが発生する可能性がある危険な実験であると記されている。

    前出の漁船の船長が平壌に行き技術者と会う。船長は「小組員」が妹に宛てた「危険な実験を自ら行う最後の決心」について書かれた手紙を技術者に見せる。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    技術者は驚いて工場に戻るが、時既に遅し。「小組員」は命がけの実験を実行してしまう。実験は取りあえず成功するが、やはり有毒ガスが発生して「小組員」は倒れてしまう。病院に搬送され、一命は取り留める。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    工場に戻った技術者は、「小組員」の実験データを基に研究を続け、「主体コバルト」の生成に成功する。

    さらに、映画の初めの部分で大げんかをした船長と「小組員」の間に恋愛感情が芽生えたことを予感させる場面で映画は終わる。
    船長:「もう、海には来ないのでしょ。小組が終わったら」
    小組員:「私はこの海辺に永遠に残ります」
    船長:「本当ですか」
    小組員:「海に出たら魚をもっとたくさん捕まえ、父なる首領様に喜びを捧げましょう」
    船長:「分かった、分かった。小組同志」

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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    そして、船長は遠洋漁業に向かう。
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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