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    「朝鮮民主主義人民共和国外務省スポークスマンの回答」:朝鮮総連の見解も (2013年3月14日 「朝鮮中央通信」)

    過去記事にも書いた「停戦協定白紙化」の有効性と理由について北朝鮮外務省スポークスマンが中央通信の記者の質問に答える形の記事を「朝鮮中央通信」が配信した。米国は、「協定白紙化は無効」という立場を表明しており、それに対する反発でもある。

    『労働新聞』に掲載された同記事、「조선민주주의인민공화국 외무성 대변인대답」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-03-15-0036&chAction=D

    北朝鮮外務省の解釈では「他の協定と異なり、停戦協定は特性上、双方が合意し破棄する性格の協定ではなく、いずれか一方が協定を遵守しなければ、自動的に白紙化されるものである」としている。そして「いずれか一方が協定を遵守しな」ていないことを米国の責任とし「事実上、朝鮮停戦協定は過去60年間、持続されてきた米国の体系的な破壊行為とそれを庇護した国連安保理の不当な決定により既に白紙化されても余りあるような状態であった」としている。

    一見無謀な論理展開にも見えるが、過去記事にも書いた「敵対行為」の解釈によっては、米国側が「協定を遵守していない」と解釈することもできる。しかし、北朝鮮とてミサイル発射訓練も含めた軍事演習はやってきたわけなので、軍事演習が「敵対行為」であるとすれば、それはお互い様である。この際、どちらが先に始めたのかということは議論する意味はほとんどない。

    「他の協定と異なり」と述べている点も興味深い。依然として、国際法理一般についての解釈をお願いしてある職場の専門家からは回答をいただけていないが、過去の事例も含めて関心がある。

    昨日、某朝鮮半島の南北問題を扱うシンポジウムを見に行ったのだが、なかなかおもしろかった。何がおもしろかったのかというと、総連系の人々もフロアにおり、シンポジウムが韓米系の論調で進んできたのに対して、最後で手を挙げて北朝鮮の主張をそのまま展開していた。一方、南北関係を担当する部署の韓国政府元高官もフロアにおり、熱くなっていた。南北関係というのは、もう少し冷静になったのかと思っていたが、昨日目撃したシーンだけからすれば、基本的には80年代と同じ構図だなと思った。発言者たちが、80年代に活躍した人々だったからかもしれないが、沸騰しかかっていた。

    私としては、総連の人に上に書いた国際法理について尋ねてみたかったのだが、彼らも14日の「朝鮮中央通信報道」については「学習」していなかったであろうし、また北朝鮮外務省のマウスピース以上の役割はできないであろう。ただ思ったのは、総連としての公式見解はさておき、北朝鮮で暮らす朝鮮人民とは異なり、現実を見ているわけなので、それをどう考えているのか、どうしたら良いと思っているのかについて聞いてみたいとも思った。

    また、別の話として朝鮮大学校で経済学を担当しているという人が北朝鮮の経済体制というのは基本的に「金日成時代に打ち立てられた経済建設の目標を実現しようとしているのだから、金正日であれ金正恩であれ、その路線から外れることはない」というような発言もしていた。確かに「社会主義経済建設」という大きな枠組みからいえばそのとおりであるが、我々の関心は「社会主義経済建設」の枠組みの中でどれだけフレキシビリティーを発揮することができるのかということである。中国の「改革・開放」までいかないにしても、旧ソ連でもその経済体制のフレキシビリティーにおいてはある程度の幅で揺れていた。北朝鮮とて、特に金正日時代にはその揺れを経験した。では、金正恩さんはどれだけフレキシブルに経済を運営できるのか、その最大値としての中国式の「改革・開放」にどれだけ近づけることができるのかというのが我々の関心である。朝鮮大学校では資本主義社会の中でどう北朝鮮経済を教えているのか分からないが、上の総連関係者の見解同様、現実、つまり資本主義日本で暮らす現実と社会主義北朝鮮の現実をどう捉えているのかに関心がある。しかし、社会主義北朝鮮の経済社会の現実、特に平壌以外での現実は彼らとてなかなか知ることができないはずなので、平壌経済の話になってしまうのであろう。資本主義日本においても、さらには資本主義韓国においても、経済建設において首都圏が優先されたことは明白である。その系では、北朝鮮の平壌建設優先は別に特異なことではない。しかし問題は、平壌以外の地域がほとんど見えない(見せない)ということである。

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    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
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