FC2ブログ

    「成功裏な投資機会を作るであろう 平壌春期国際商品展覧会の参加者のための投資説明会開催」(2012年5月17日 「労働新聞」) 

    第15次平壌春期国際商品展覧会の機会に投資説明会が開催されたと「労働新聞」が伝えている。

    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-05-17-0053

    この記事では、投資説明会で演説した朝鮮民主主義人民共和国合営投資委員会課長の金イルスンさんの演説内容を紹介する形を取りながら、北朝鮮の対外経済政策を紹介している。

    演説ではまず、「我が共和国政府は、協力と交流を基本的特徴としている世界経済発展の要請に合うように、国の社会主義自立経済の土台をたゆまなく強化・発展させる基礎の上で、外国と経済合作と協力を通した対外経済協力を拡大・発展させることにも強い関心を持っており、有利な投資環境を作るために積極的に努力している」とし、北朝鮮は「社会主義自立経済」を基本とした上で、世界的な潮流に合うように外国企業との関係を強化し、対北朝鮮投資がしやすい環境造成に努めているとしている。

    その法的根拠として、共和国社会主義憲法第2章37条の「国家は、我が国の機関、企業、団体と外国の法人あるいは個人との企業合営と合作、特殊経済地帯での様々な企業創設、運営を奨励する」という規定を挙げ、北朝鮮が1984年9月に「合営法」を制定して以来、1990年代の外国投資と関連した基本法である「外国人投資法」、「合作法」など、「20あまりの外国人投資関係法、規定を新たに制定したり、修正・補充することで、外国人の投資及び企業経営のための法的土台」を整備したとしている。最近では、過去記事で紹介した「朝鮮民主主義人民共和国羅先経済貿易地帯法」の補充・修正や新たに制定された「黄金坪、威化島経済地帯法」もその一環でといえよう。

    続いて、合営投資委員会の機能として「投資対象に対する審査承認、外国投資企業の経営活動に関する協力、海外投資管理、特殊経済地帯事業のような共和国の外国投資事業全般を管理」を挙げ、「国家の外国投資戦略を樹立し、それを執行する政府機関である」としている。また、同委員会は「国家の投資環境を改善することにおいて生じる問題を最高人民会議常任委員会と内閣、関連機関に建議」するとしているので、最高人民会議常任委員会や内閣に直属した高位の委員会であるといえる。

    また、今回のような投資説明会を通して外国企業に対北朝鮮投資を呼びかけることも同委員会の仕事で、「投資家に必要な情報を提供し、彼らの求めに応じて国内の会社、団体に対する信用確認をするという投資諮問サービス」も行っているという。

    そして、北朝鮮の海外との経済協力の現状について触れ、「共和国政府は、既に世界の数十カ国と双務的な投資奨励及び保護に関する協定、10カ国あまりと二重課税防止協定などを締結」しているとした上で、さらに多くの国々とこうした協定を締結していきたいという希望を示している。

    金課長は北朝鮮の経済を「独自の資源と技術を土台に、金属、採集(鉱業のことか?)、電力、機械、皮革工業と造船業、農業、水産業をはじめとした多方面な経済構造と大きな発展潜在力を持った自立経済」と評価している。教育が行き渡っており、国家プロジェクトのような部門(例えば、核・ミサイル開発)では北朝鮮の技術水準は決して低くないことは確かであるが、その「潜在力」を動員する資金と、それを「非軍事」に向ける政策が欠如しているのが最大の問題といえよう。皮肉なことにも、現状では北朝鮮は経済を非軍事化させる意向はなく、それが経済発展の潜在力を動員する資金導入の足かせとなっている。

    金課長の演説は、続いて投資企業に対する安全の保障と税制における特恵について説明している。その一つ一つの条項ということではなく、全体的な印象としては、実に90年代初期の中国政府による「開発区」内における外国企業に対する優遇条件と類似しているような観がある(そのころ、私は「中国の産業」に関する研究プロジェクトのメンバーとして、中国各地の企業や政府機関を訪問して聞き取り調査をしていた)。北朝鮮も「合営法」などの制定については、相当に中国の法律・制度をを研究したはずである。金課長は、北朝鮮のインフラについても高く評価しているが、実態をそのまま反映した発言だとは考えにくい。しかし、90年代初期に中国の「開発区」での説明もおしなべてその傾向が強く、現実的には土地・建物と労働者、そして水だけを提供し、その他は外国企業に任せようという考えなのであろう。

    いずれにせよ、上に書いたように「政治・軍事」と「経済」のジレンマを如何に脱却するのかが、北朝鮮の課題であろう。

    コメントの投稿

    非公開コメント

    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


    YouTube dprknow

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    Visitors
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    QRコード
    QR