「咸鏡北道水害被害報告」: UN Office for the Coordination of Humanitarian Affairs’ (OCHA)、被害状況、現地の国連チーム、韓国と日本、「災い転じて福となす」、核実験場との関係 (2016年9月12日 「UN OCHA」)
<追記>
UN OCHAの資料に従い「ヨンサン(Yonsan)郡」と書いたが、昨夜の「20時報道」の字幕を確認したところ、「연사군(ヨンサ郡)」となっていたので、そちらに合わせておく。
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12日、国連人道問題調整事務所 (UN OCHA)が、咸鏡北道一帯の水害被害状況に関するレポートを出した。
UN OCHA, DEMOCRATIC PEOPLE’S REPUBLIC OF KOREA Flooding - Humanitarian Snapshot (as of 05 September 2016), http://kp.one.un.org/content/dam/unct/dprk/docs/unct_kp_DPRK_FloodSnapshot_20160905.pdf
「9月5日現在」として出されたこのレポートによると、死者60、農地の被害1万ヘクタール、被災した学校23、被災した道路112kmとなっている。
破壊された建物が4400、一部壊れた建物が4300であり、破壊された建物の数は、茂山郡の1800、フェリョン市1200、ヨンサ郡950などとなっている。特に、オンソン郡では、280ある建物が全滅している。
家を失った人々は、ヨンサ郡17000、茂山郡13000、フェリョン8000、オンサン郡2400などとなっている。
北朝鮮は、国家非常災害対策委員会(the State Committee for Emergency and Disaster Management (SCEDM) )を通じて、対応に当たっている。また、国連駐在コーディネーターがリードする人道カントリーチーム(The Humanitarian Country Team (HCT))が、災害対応のための万端の準備を整えた状態にある。
北朝鮮赤十字が、2500世帯に被災セット(防水シート、ゼリー缶、浄水器、テーブル、毛布など)を届けた。北朝鮮駐在の国連機関と海外協力チームも参加する北朝鮮政府の合同調査チームが結成され、救援活動を行っている。
北朝鮮当局が、国連機関や国際チームへの協力要請をいち早くしたことは評価される。こんなところで「自力自強」と意地を張っても何の意味もない。「元帥様」も、「核弾頭爆破実験成功」への直接的な賛辞もないまま、人民軍の農場を「現地指導」したという報道が「朝鮮中央通信」に出ている。「元帥様」の直接的なコミットメントを北朝鮮が宣伝しないのは、中国との関係があるからではないかと過去記事に書いたが、今回の水害とも関係しているのかもしれない。準備を進めてきた「核弾頭」を爆発させなければならない中で大洪水が発生してしまい、対応に苦慮したのであろう。大洪水被害が復旧するまで、第5回核実験は延期するという選択肢もあったはずだが、その道は選択しなかった。準備に関わる技術的な理由があったのかもしれないが、強行した理由が今一つ分からない(韓国大統領は「金正恩の精神状態は制御不能」だからと言っているが)。
下の地図を見れば分かるが、今回の被災地と核実験施設は重複している。

Source: UN OCHA, http://kp.one.un.org/content/dam/unct/dprk/docs/unct_kp_DPRK_FloodSnapshot_20160905.pdf
EMSCが発表した震源地(核爆弾が爆発した地点)は、地図上ではオラン郡、UN OHCAのレポートでは「影響を受けた地域」となっている。

Source: Google Earh
どこかの国の「復興政務次官」が、わざわざ被災地に出向いて、消防隊員におんぶしてもらい水たまりを渡るのもみっともない話しであるが、下手に「元帥様」が被災地に出向けば、歓迎準備で復興作業が滞ることは間違いないので、今のところは、人民軍農場でも「現地指導」しながら、物資と「建設軍人」、「突撃隊」を被災地に向けるよう裏で指示している方がよい。「元帥様の恩情」は、ある程度被災地が落ち着いた頃に現地に出向き、宣伝した方がよいはずである。
詳細調べていないが、何か韓国は冷たい。核もミサイルも反対だし、「元帥様」が大嫌いなことは分かるが、同じ民族が被災しているのだから、もう少しレスポンスがあってもよいのではないだろうか。これは日本にも言えることで、北朝鮮が核・ミサイルを開発し、日本に向けて発射し、加えて日本人を拉致するという迷惑千万な国であるにしても、日本が「大国」であるからこそ、「人道(humanitarian)」は貫徹すべきである。
北朝鮮が言う「災い転じて福となす」という言葉は、実は、こうした状況下での国際協力を通じて、北朝鮮を話し合いの場に引き出す契機となり得ることを内包しているのではないだろうか。
UN OCHAの資料に従い「ヨンサン(Yonsan)郡」と書いたが、昨夜の「20時報道」の字幕を確認したところ、「연사군(ヨンサ郡)」となっていたので、そちらに合わせておく。
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12日、国連人道問題調整事務所 (UN OCHA)が、咸鏡北道一帯の水害被害状況に関するレポートを出した。
UN OCHA, DEMOCRATIC PEOPLE’S REPUBLIC OF KOREA Flooding - Humanitarian Snapshot (as of 05 September 2016), http://kp.one.un.org/content/dam/unct/dprk/docs/unct_kp_DPRK_FloodSnapshot_20160905.pdf
「9月5日現在」として出されたこのレポートによると、死者60、農地の被害1万ヘクタール、被災した学校23、被災した道路112kmとなっている。
破壊された建物が4400、一部壊れた建物が4300であり、破壊された建物の数は、茂山郡の1800、フェリョン市1200、ヨンサ郡950などとなっている。特に、オンソン郡では、280ある建物が全滅している。
家を失った人々は、ヨンサ郡17000、茂山郡13000、フェリョン8000、オンサン郡2400などとなっている。
北朝鮮は、国家非常災害対策委員会(the State Committee for Emergency and Disaster Management (SCEDM) )を通じて、対応に当たっている。また、国連駐在コーディネーターがリードする人道カントリーチーム(The Humanitarian Country Team (HCT))が、災害対応のための万端の準備を整えた状態にある。
北朝鮮赤十字が、2500世帯に被災セット(防水シート、ゼリー缶、浄水器、テーブル、毛布など)を届けた。北朝鮮駐在の国連機関と海外協力チームも参加する北朝鮮政府の合同調査チームが結成され、救援活動を行っている。
北朝鮮当局が、国連機関や国際チームへの協力要請をいち早くしたことは評価される。こんなところで「自力自強」と意地を張っても何の意味もない。「元帥様」も、「核弾頭爆破実験成功」への直接的な賛辞もないまま、人民軍の農場を「現地指導」したという報道が「朝鮮中央通信」に出ている。「元帥様」の直接的なコミットメントを北朝鮮が宣伝しないのは、中国との関係があるからではないかと過去記事に書いたが、今回の水害とも関係しているのかもしれない。準備を進めてきた「核弾頭」を爆発させなければならない中で大洪水が発生してしまい、対応に苦慮したのであろう。大洪水被害が復旧するまで、第5回核実験は延期するという選択肢もあったはずだが、その道は選択しなかった。準備に関わる技術的な理由があったのかもしれないが、強行した理由が今一つ分からない(韓国大統領は「金正恩の精神状態は制御不能」だからと言っているが)。
下の地図を見れば分かるが、今回の被災地と核実験施設は重複している。

Source: UN OCHA, http://kp.one.un.org/content/dam/unct/dprk/docs/unct_kp_DPRK_FloodSnapshot_20160905.pdf
EMSCが発表した震源地(核爆弾が爆発した地点)は、地図上ではオラン郡、UN OHCAのレポートでは「影響を受けた地域」となっている。

Source: Google Earh
どこかの国の「復興政務次官」が、わざわざ被災地に出向いて、消防隊員におんぶしてもらい水たまりを渡るのもみっともない話しであるが、下手に「元帥様」が被災地に出向けば、歓迎準備で復興作業が滞ることは間違いないので、今のところは、人民軍農場でも「現地指導」しながら、物資と「建設軍人」、「突撃隊」を被災地に向けるよう裏で指示している方がよい。「元帥様の恩情」は、ある程度被災地が落ち着いた頃に現地に出向き、宣伝した方がよいはずである。
詳細調べていないが、何か韓国は冷たい。核もミサイルも反対だし、「元帥様」が大嫌いなことは分かるが、同じ民族が被災しているのだから、もう少しレスポンスがあってもよいのではないだろうか。これは日本にも言えることで、北朝鮮が核・ミサイルを開発し、日本に向けて発射し、加えて日本人を拉致するという迷惑千万な国であるにしても、日本が「大国」であるからこそ、「人道(humanitarian)」は貫徹すべきである。
北朝鮮が言う「災い転じて福となす」という言葉は、実は、こうした状況下での国際協力を通じて、北朝鮮を話し合いの場に引き出す契機となり得ることを内包しているのではないだろうか。