FC2ブログ

    「朝鮮で電子商業奉仕体系『玉流』運営」:北朝鮮のインターネットショッピング、価格改革か? (2015年4月1日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」がネットショッピングを北朝鮮で開始したと報じた。記事は以下のとおり。

    *************
    国家ネットワークを通じて電子決済カードで運営されるこの奉仕体系は、人民奉仕総局が主管している。
    奉仕体系には、国内の商業及び給養奉仕機関と人民消費品生産単位が網羅されており、人民の便宜性と勤労者の生産熱意を高めることに運営の目的がある。
    奉仕ネットワークには、ヘダン会館、チョンジョンヘマジ食堂、謹製食料工場などの商店、食堂などで奉仕する商品と食品、食品生産単位の人気製品目録が掲載されている。
    また、工場、企業所で生産する人民消費品と薬品も紹介されている。
    電子商業奉仕体系に加入した住民は、コンピュータと携帯電話で購入しようとする商品を検索する。
    購入しようとする商品について通報し、電子カードで金額を支払う。そして、商品発送を要求することもできる。
    部員チョン・ソルファによれば、この奉仕体系は、住民が当該単位と連携し、質の良い商品を手軽に安い価格で奉仕できるということである。
    一方、商品を生産する単位では、原価と価格を低下させるための競争も活発になるであろう。
    ************

    日本では普通に行われているインターネットショッピングを北朝鮮で部分的に導入したということのようだ。記事の中で興味深いのは、「原価と価格を低下させる競争も活発になる」と書かれている点である。北朝鮮の価格体系について、きちんと調べてみる必要はあるが、羅先の若いガイドが言ったことが公式的な立場だとすると「我が国の一物一価ですから、どこで買っても値段は同じです」ということになる。このガイド、新人だったので嘘を言う余裕もなかったはずで、学んだこと、つまり公式的な見解をそのまま言ったのだと思う。羅先シリーズにも書いたとおり、「いちば」を目の前にしてである。

    すると、消費者が「生産単位」、つまり生産工場から直接物品を購入できるようになると、この原則がかなり崩れてくることになる。「いちば」は例外的な私的運営がされているわけであるが、こちらは「人民奉仕総局」なる国家機関が運営するサービスなので、例外ではない。電子商取引という限定的な空間ではあるが、北朝鮮の経済システムの変質の一端を表しているのかもしれない。

    「朝鮮芸術映画」でも、「生産単位」はしばしば取り扱われるが、大体は「自力更生」を前提とした、「生産量確保」、「質の向上」である。記憶の中には、販売価格について云々する場面はない。これからは、もしかすると「販売価格」競争を展開する「朝鮮芸術映画」が出てくるのかもしれない。

    「朝鮮民主主義人民共和国 黄金の三角州銀行」の「電子決済カード」。羅先のカードは「電子商業奉仕体系『玉流』」で使用可能なのだろうか。
    FILE0498.jpg

    FILE0499.jpg

    コメントの投稿

    非公開コメント

    No title

    朝鮮新報で、さらに詳しい記事が出ておりますので、ご参考まで。

    전자상업봉사 《옥류》, 구매자들에 대한 송달도 실현
    http://chosonsinbo.com/2015/04/sk42/
    (要ログイン)

    「玉流」のサイト画面らしきものを表示したスマホの写真も掲載されています。

    No title

    お世話になります。

    この国の金融というのがよくわからないのですが、銀行を介さない電子カード決済というのはどういう仕組みになっているのでしょうか?
    給料天引き?
    ただ、かつてのデノミの原因となった不正蓄財をなくし、人民のマネー管理の方法としては、電子カードの活用と普及は良い考えかもしれません。

    通販を実施するうえで、流通とか道路などのインフラ整備の問題がありすぎるほどあるような気もしますが、コスト意識を持つようになるというのは良いことだと思います。

    それにしても、北朝鮮でのスマホの普及率の速さには驚かされます。
    それだけ、普及させる側の情報管理が徹底しているということの表れなのかもしれません。

    朝鮮新報

    『朝鮮新報』報道に関する情報提供ありがとうございます。お返事が遅れてしまい、申し訳ございません。スマホの写真、おもしろいですね。「人気商品」とあり、お店か工場の写真が写っているようですが、その後、どのように手続きをするのでしょうか。最後の方に「宿泊施設のオンライン予約もできるようにする予定」と書かれていますが、外国人もネット予約をして手軽に北朝鮮旅行をできる日は来るのでしょうか。

    > 朝鮮新報で、さらに詳しい記事が出ておりますので、ご参考まで。
    >
    > 전자상업봉사 《옥류》, 구매자들에 대한 송달도 실현
    > http://chosonsinbo.com/2015/04/sk42/
    > (要ログイン)
    >
    > 「玉流」のサイト画面らしきものを表示したスマホの写真も掲載されています。

    電子カード

    コメントありがとうございます。羅先の電子カードの例ですと、まずデポジットのない電子カードを銀行で購入します。朝鮮人民はどうか分かりませんが、外国人は何も登録することなく購入できました。価格ははっきりと記憶していませんが、50中国元だったと思います。その後、デポジットをすれば、電子カード対応の商店でショッピングをしたときに、カード決済ができるということでした。残念ながら、実際に商店で使う機会はありませんでした。イメージとしては、スイカのような感じです。違いといえば、クレジット機能もあるようで、カード番号とパスワードをオンラインで販売者に送ることで、販売者側でデポジットから代金を引き出すことができるようです。ただし、カードを購入したときにパスワードの設定はしませんでした。デポジットをするときにすることになるのかもしれません。

    携帯電話がそうであったように、大規模なインフラ建設工事が不要なネットワークも案外急速に普及していくのかもしれません。特に、スマホと連携させた場合、ハード部分は大方できあがっているので、ソフトを充実するだけで普及するのではないかと思います。

    > お世話になります。
    >
    > この国の金融というのがよくわからないのですが、銀行を介さない電子カード決済というのはどういう仕組みになっているのでしょうか?
    > 給料天引き?
    > ただ、かつてのデノミの原因となった不正蓄財をなくし、人民のマネー管理の方法としては、電子カードの活用と普及は良い考えかもしれません。
    >
    > 通販を実施するうえで、流通とか道路などのインフラ整備の問題がありすぎるほどあるような気もしますが、コスト意識を持つようになるというのは良いことだと思います。
    >
    > それにしても、北朝鮮でのスマホの普及率の速さには驚かされます。
    > それだけ、普及させる側の情報管理が徹底しているということの表れなのかもしれません。
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


    YouTube dprknow

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    Visitors
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    QRコード
    QR