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    「<朝鮮芸術映画>青春の心臓」:3大革命小組活動の実態 (2015年3月3日 「朝鮮中央TV」)

    『青春の心臓』という「朝鮮芸術映画」が3日、放映された。韓国統一部のデータでは、2005年6月にこの映画は初めて放映されている。

    何回も書いているように、uriminzokkiriの動画データの質が非常によくなっているので、見ても見なくても取りあえず「朝鮮芸術映画」はダウンロードしておくようにしている。この映画をしっかりと見ようと思ったのは、冒頭の次の画面があったからである。

    「この映画を3大革命路線を受け入れ、正面に立って進む党の革命前衛-3大革命小組員に捧げる。」
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    現在進行形の「小組員」活動については、これまでも何回か記事にしたが、日本で出版されている北朝鮮関連の図書には、「3大革命小組」は生産活動にネガティブな影響を与えたと記されている。それでは、北朝鮮は「3大革命小組」をどのように見ているのかということで、この映画は参考になる。

    「青春の心臓」
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    記事を書きながら「今日の『労働新聞』に掲載されたニュース」を聞いていたら、同新聞に「3大革命小組運動の戦闘的威力を高く轟かせ、さらに高く、さらに速く -デアン重機械連合企業所幹部と3大革命小組員」という記事が掲載されているといっていた。調べてみると、確かに3面に掲載されている。記事をきちんと読めば書いてあるのかもしれないが、この時期に「3大革命小組運動」が提起されたのかもしれない。

    話を映画に戻す。映画の舞台は地方都市にある造船所の修理部門である。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    この映画の主役は右の「3大革命小組員」。着用している帽子が「小組員帽子」なのかどうかは分からないが、見た感じでは、この女性が通う大学の制帽のようだ。左の新聞を持った男性は船舶修理部門の「職場長」。「職場長」と「小組員」が協力しながら問題を解決していく。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    修理部門で問題となっているのは、修理に必要なコバルトが不足していることである。コバルトは北朝鮮では製造することができず「全て輸入」に依存しているということになっているのだが、輸入状況が芳しくなく、この工場への供給が滞っている。下の写真は、修理のために工場に来た漁船の機関室で部品を見ながら「機関は廃棄しなければなりません。コバルトが全部飛んでしまいました」と左の「警笛員」が「小組員」に話している。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    修理工場には、漁獲大会で1位になった漁船が修理に来る。この漁船の船長は同大会で1位になったものの、漁船を「酷使」しているということで、「小組員」は「批判しなければならない」という。船長は修理を要求するが、「小組員」は「修理をして欲しいならば、漁船を酷使したことについて担当部署を回って謝罪してください」と謝罪を求める(写真下の左が船長、右が「小組員」)。この辺りの様子からは、「小組員」は技術革新だけではなく「3大革命」という文字通り、思想や風紀についても指導していたことが伺える。船長は機関長との会話の中で「小組員」のことを「処女ドンム(若い女性の意)」と呼び、機関長に「処女ドンムじゃなくて、小組員ドンムだろう」と言われるが、「処女は、処女だろ」と言い返す。党に権威づけられた「小組員」と生意気な若造がという現場の葛藤を表しているようだ。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    「小組員」と船長は言い合いになるが、「小組員」の思想的な話し(過去に漁船を守るために機雷に触れて死んだ人のこと)を聞き反省する。そして、船長と機関長が漁船の修理をしているところに「小組員」が弁当を持ってやって来て和解する。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    しかし、漁船を修理するためには、依然としてコバルトが必要で、修理工場の関係者が他の事業所などに行きコバルトを分けてくれるよう要請するが、国家的にコバルトが不足している状況の中、コバルトを分けてくれる事業所は見つからない。

    実は、この修理工場には若い技術者がおり「自体の原料(北朝鮮で産出する原料)」からコバルトを生成する研究をしていた。しかし、生成過程で有毒ガスが発生する憂慮から研究を中断し、平壌に行ってしまう。「小組員」は、自分の知識で彼の研究を続けようとするが、彼女の能力ではどうにもならないことを自覚し、技術者を連れ戻しに平壌に向かう。

    しかし、若い技術者は次のように工事用に戻ることを断る。

    「小組員ドンム、正直に言いましょう。私も人です。私も人間なのに、自分の生命に全く無関心などというのは、嘘でしょう。命がけでもやりましょうと言うのは簡単でしょう。しかし、自分でやるのは大変でしょう。だから人間じゃないですか。」

    その言葉を聞いた「小組員」は怒り、

    「だから人間ですって。正直に言って下さり、ありがとうございます。」

    と立ち去りながら心の中で自問自答する。

    「『だから人間ですって』。その時々、個人の要求に膝を屈するのが人間だというなら、人間社会はどうなって、誰が革命のために青春を捧げ、祖国のために命を犠牲にするのだろうか。私はそんな卑屈な人間として一生を終えるのではなく、最も清廉な人間として1日を生きていきたい。」

    上の台詞がまさにこの映画の主題である。ここまででは、危険な実験を敢えて実施することを善とし、安全を優先した上で実験をしないことを悪としているように取れる。この点については、後で若干の修正が入る。

    平壌の公園で技術者と話をする「小組員」
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    修理工場で「3大革命小組員」と工場労働者が一緒に働いている場面で興味深い会話がある。「3大革命小組員」が次のようなことを言う。

    小組員A:「私、本当に嫌になっちゃうわ。私たちの組み立て職場長同志は、技術革新をして(船舶修理)15日体系(短期間で仕事をする)をしようとせず、最近、船の修理が遅れているからということで、労力もくれ、資材もくれ、くれ、くれとばかり。」
    小組員B:「だから、スニドンムが、『職場長同志、国家がミルクをくれる乳牛だと思っているのですか。いつでも絞ればミルクが出る乳牛じゃないんですよ』っていったんですよ」(笑い)

    職場長のことを言って笑う小組員B
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    この話を聞いて、主人公の「小組員」が小組員A・Bを叱る。

    「エラニ、スニ、私はあなたたちにいつか言おうと思っていたのですが、あなたたちが言っている組み立て職場長同志は、年齢的にもお父さんの歳だし、私たちが少年団に入団した時、あの方々は社会主義革命のために血と汗を流した先輩よ。それなのにあなたたちは、まるで目下の人を教養するような、そんな生意気な口をきいてもいいの。私たちは、一言言うにも謙虚に礼節を持って、行動一つするにしても首領様の特使らしく、党中央の党衛隊のようにしなければならないんじゃないの。あなた方も知っていると思うけど、栄光的な党中央では3大革命小組を派遣するたびに、小組員を3年間、現実の中で党幹部の品格を養ってこなければならないと強く教えてくれたじゃない。党幹部の資格よ。」

    上にも書いたが、現実的には小組員A・Bのような生意気な若造が多く現場に派遣され、経験豊富な年長者に対して横柄な態度をとるという問題が発生していたのかもしれない。そのため、この映画では主人公の「小組員」にそれを戒めさせているのであろう。このあたり、中国の紅衛兵と「3大革命小組員」の違いで、儒教的価値観と社会主義を巧妙に結びつけた北朝鮮式「社会主義革命」の一端を示しているような気がする。

    小組員A・Bを叱る主人公の「小組員」。「小組員」の中にも先輩後輩のような関係があるようだ。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    しかし、「労力をくれ」と職場長が求めているのも事実であった。興味深いのは、「労力をくれ」という要求は、「小組」と相談した上でするということが規則になっている点である。この辺りからは、事業所に派遣された「小組員」に大きな権限が与えられていたことが分かる。上の発言にもあるように、「首領様」、「党中央」という錦の御旗を利かしていたのであろう。

    職場長:「我々の関係はよかったですよね」
    小組員:「そりゃ、そうですよ」
    職場長:「私、一つ頼みたいことがあるんだが」
    小組員:「小組と相談せずに20人労力要求をしたことでしょ」
    職場長:「ええ、もうしっているの。小組員の目と耳ってのは・・・」
    小組員:「党の目と耳でしょ」
    職場長:「そうだ、そうだ」
    小組員:「職場長同志、内部の予備(労力)でやってみませんか」
    職場長:「もう、ギリギリの状態だ。針が通る隙間もない」
    小組員:「でも、思想が入り込む隙間はあるんじゃないですか」
    職場長:「言い合いで私は勝てないよ。でも、今回のことは、私の決心通りにするから、そう思っていてくれ」
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    「小組員」は、職場長の姪の旋盤作業を観察しに行く。ランプにかかっているように、この姪は「模範」労働者ということになっている。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    「拡大党委員会職場会議」がいつもの場所とは異なる「修理職場現場」で開催される。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    同会議で職場長、「計画課長」などが発言をする。「計画課長」の発言が興味深い。ここでは、職場長の姪が現状のまま増産が可能だと主張し、それを「計画」にしようと言っていることについて議論されている。

    計画課長:「(職場長の姪が)学校に通っている時、10点取るといったら絶対に取ったといっています。学校の成績なら取れても取らなくてもどちらでもよいのですが、国家計画は一度上に上げれば法律なのに法律ということを知らないので困ってしまいます」(立っているのが計画課長)
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    すると姪が立ち上がり「知っています」と叫ぶ。参席者の一人が「そりゃ、しっているでしょ。彼女も公民なんだから」とからかう。姪は、議長から発言するよういわれるが、からかわれて泣いてしまう。横に座っている「小組員」は、「(しっかりしなさい)ここは党委員の前なのですよ」と発言を催促され、発言を始める。

    泣いているのが姪
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    姪:「私は、一つ伺いたいことがあります」
    議長:「誰に?」
    姪:「計画課長同志、おじさん、それから支配人同志に。私は学校で先生から人ややると決めればできないことはないと習いました。それなのに、私がやると決心したのに、みんな駄目だというのです。今のように。答えて下さい。やると決めればできないことはないというのは、嘘なのですか。正直に答えて下さい」

    一同、答えることができずに困ってしまうが、一人の労働者が「それは嘘ではない。それは、抗日の血の海の中で乳鳴る首領様が体験の中で見いだした革命の真理です」と答える。

    その答えを受けて「小組員」が立ち上がる。「小組員」は、姪の手帳に記されていることを板書しながら説明を始める。
    小組員:「オッピョリ(姪)は、下半期に24350個のコバルトメタルを生産しました。1つ当たりの生産時間は3分。しかし、オッピョリは、それを1分30秒でやる計画を立てました。その計画には、科学的な根拠があります。私が電子計算機で計算してみたところ、オッピョリが計算した不良品製造率を引き下げれば、3ヶ月で半年分の生産をすることができるという確信を得ました。オピョルドンムの手帳には、週480分の労働時間で計算されています」
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    この話を聞いて、一同「そうすれば、1人で2人分の生産をすることができる」と言い出す。続けて「小組員」は

    小組員:「職場長同志の皆さん、今、480分の労働時間をこの幼い旋盤工のように清廉な良心を持って利用している人が何人いるでしょうか。それなのに、人員不足で生産できないかの如く、労力、労力といっているではありませんか。父なる首領様は、幹部に教示をしておられるのに、首領様の教示を受ける時は感銘を受けながら聞き、自己批判をしているのに、実際の行動ではこのように態度が変わるのですか。だとすると、我々には党が痛がる時に一緒に痛くなる心臓と、問題が提起されると楽な道を選ぶ安易な心臓が別々にあるということなのですか。」

    結局、「労力問題」については保留となる。それはよいのだが、問題の本質は何であったのだろうか。労働が量的にも質的にも低いので「模範労働者」の姪のように働こうということなのだろうか。そして、その改善は「思想」の力でしようということなのだろうか。北朝鮮では「首領様の教示」は相当な重みを持って受け入れられている点は事実である。しかし、「清廉な良心」だけでは人は動かない。何らかのインセンティブが必要なはずだが、映画ではそれは明らかにされていない(ま、明らかにすることはできないのだろうが)。

    しかし、依然としてコバルト供給問題は未解決のままである。「小組員」は「国家科学院」に手紙を書き、コバルト生成に繋がる実験で有害ガスが発生するのかどうか質問する。「科学院」 からの返信には、その実験は諸外国の資料を調べても記載がなく、有毒ガスが発生する可能性がある危険な実験であると記されている。

    前出の漁船の船長が平壌に行き技術者と会う。船長は「小組員」が妹に宛てた「危険な実験を自ら行う最後の決心」について書かれた手紙を技術者に見せる。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    技術者は驚いて工場に戻るが、時既に遅し。「小組員」は命がけの実験を実行してしまう。実験は取りあえず成功するが、やはり有毒ガスが発生して「小組員」は倒れてしまう。病院に搬送され、一命は取り留める。
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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    工場に戻った技術者は、「小組員」の実験データを基に研究を続け、「主体コバルト」の生成に成功する。

    さらに、映画の初めの部分で大げんかをした船長と「小組員」の間に恋愛感情が芽生えたことを予感させる場面で映画は終わる。
    船長:「もう、海には来ないのでしょ。小組が終わったら」
    小組員:「私はこの海辺に永遠に残ります」
    船長:「本当ですか」
    小組員:「海に出たら魚をもっとたくさん捕まえ、父なる首領様に喜びを捧げましょう」
    船長:「分かった、分かった。小組同志」

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    Source: KCTV, 2015/03/03放送

    そして、船長は遠洋漁業に向かう。

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    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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