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    「2014年 新年の辞」:宗派打倒が冒頭に (2014年1月1日 「労働新聞」)

    金正恩による2014年「新年の辞」が1日9時から「朝鮮中央TV」で放送された。今日の放送開始は8時からで音楽や詩、「新年の辞」予告に続いて9時から放送があった。

    入退場、演説の初めと終わりの短い時間を除いては、労働党庁舎の静止画が映し出されていた。昨年同様、録音されていたと思われる拍手が挿入されていた。昼から再放送がされている。演説後、『労働新聞』の更新が行われ、「新年の辞」が掲載された。

    以下、重要と思われる部分のみ抄訳しておく。

    「新年の辞」では、まず「大元帥様」に敬意を示し、人民と軍人、そして海外同胞に新年の挨拶をする。

    続けて、「党内に潜んでいた宗派汚物を除去するという断固たる措置を取った」と張成沢事件解決の成果を強調する。加えて、「自衛的国防力を強化し、帝国主義者たちとの激しい対決戦で大きな勝利を達しした」と昨年3、4月に展開された米国との「全面対決戦」での勝利を強調している。

    次に昨年の成果として「困難で複雑な環境の中でも軍隊と人民が力を合わせて経済強国建設と人民生活向上のための闘争で輝かしい成果を達成した」ことを挙げている。また、「元帥様」の「呼びかけ」を受けて人民軍人と建設者が「マシンリョン速度を創造」し、「短期間に労働党時代の創造物を立派に打ち建て」たことを評価している。30日に放送された2013年を振り返るというような内容の番組でも「短期間に」が強調されており、「労働党時代の創造物」の建設について紹介しながら、それらが「何か月」で完成したということを強調していた。

    「セポ台地建設」については、年度内完成はなかったが、「新年の辞」では「難関を勝ち抜き、自然を切り開き党の偉大な構想を前倒しで実現できる突破口を開いた」と評価している。「セポ台地建設」についても、30日に「特集番組」を放送していたが、こちらは広大であるばかりか、厳しい建設条件のように見えた。しかし、管理事務所などいくつかの建物はすでに完成しており、春季に工事が本格的に再開すれば、夏までには完成するのではないだろうか。工事現場には「セポ速度」という看板も建てられていたが、残念ながら「マシンリョン速度」のように全国的なスローガンとしては使われていない。「セポ台地建設」を紹介するこの「特別番組」は、後日記事にしたいと思っている。

    次の項目は「体育強国建設構想」である。「国家体育指導委員会委員長」は処刑されてしまったが、それは「体育強国建設」に影響を与えていないようだ。「新年の辞」でも「体育人は、国際競技で金メダルにより祖国の栄誉を輝かせた」と評価している。「金メダル」についても別の年末「特別番組」の中で選手を登場させながら振り返っていた。

    「全面的12年制義務教育」については、「実施に向けた準備が成功裏に推進され」たとしており、昨年の段階では依然として「全面」には至っていないようである。

    音楽については、「音楽芸術部門で、時代の名曲が多く創作され」と年末に連続して出された金正恩称賛ソングを評価している。

    <追記>
    1月1日に放送された「<朝鮮記録映画>白頭山大国の全盛期」という2013年の金正恩の活躍を紹介する番組の中で、彼が功勲国家合唱団をステージの上で指導している場面が紹介されている。これまで、公演終了後に新たな「課業」を与える場面は紹介されたが、オンステージでの紹介場面は初めてのはずである。

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    Source: KCTV, 2014/1/1放送、「白頭山大国の全盛期」

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    Source: KCTV, 2014/1/1放送、「白頭山大国の全盛期」

    金正恩は「同志たち!」と呼びかけ、「新年、2014年は社会主義強盛国家建設の全ての前線で新たな飛躍の日の嵐を力強く巻き起こし、先軍朝鮮の繁栄期を切り開く荘厳な闘争の年、偉大な変革の年です」と述べている。「闘争」については「人民の美しい理想と夢を前倒しで実現するための誇り高い闘争であり、栄光的な朝鮮労働党創建70周年を輝かしく装飾する大祝典場につながる」としているが、「変革」については具体的な言及はない。


    「革新の烽火」は「農業部門と建設部門、科学技術部門が前面」に立って進むとしており、その中でも農業は「金日成同志が社会主義農村問題に関するテーゼを発表されてから50周年となる意味深い年」ということもあり、「主打撃方向」としている。軽工業に関する言及はあるものの「人民生活向上につながる軽工業に大きな力を傾注しなければならない」とだけ述べており、トーンダウンしているようだ。

    昨年の「新年の辞」にはなかったと思うのだが、今年は「節約闘争」という言葉が出ている。「節約」を人民生活が向上し、その余裕から浪費が増えているので「節約」を求めているのか、それとも逆に供給が逼迫しているので「節約」を求めているのか分からない。もちろん、人民生活レベルの「節約」ではなく、工場などでの資材浪費を戒めるためなのかもしれない。

    経済に対していは「国家の統一的指導を強化する」とする一方で「企業の責任性と創造・発想性を高める」としている。これは中央の統制を強化するとも、企業の自律性を高めるとも読める。張成沢事件の際に、経済運営は「内閣中心」といっているので、それを前提としつつも、つまり宗派が勝手なことをしないようにしつつも、企業の自律性を高めていくということであろうか。

    「国防力強化は、国事中の国事であ」るとしている。国防工業については、「強力化、無人化、知能化、精密化した我々式の現代的武装装備をさらに多く作る」としているが、核兵器については触れていない。中国をこれ以上刺激しないための配慮であろうか。

    思想については「唯一的領導体系を徹底して確立」するとし、張成沢事件以来強く言われている「偉大な金日成同志、金正日同志と我々の党以外、誰も知らないという確固たる信念を持ち、党の思想と意図どおりにだけ思考し、行動しなければならない」としている。そして、「我々の制度を蝕む異色な思想や退廃的な風潮を掃討するための闘争を強力に繰り広げ」るとしている。それと関連して「革命闘争と建設事業のすべての分野で革命的規律と秩序を厳格に打ち立てなければならない」としている。そのために「すべての部門、全ての単位で党の政策と方針、国家の法と決定指示を徹底して執行」しなければならないとしている。

    「祖国統一」については、「南北関係問題を外部に持ち出して『国際共調』を請託することは、民族の運命を外勢に委ねてしまう愚かな事大売国行為である」と朴槿恵がヨーロッパなどを歴訪して核問題解決のための協力を依頼したことを実名をげることなく批判している。

    また、「この地で戦争が再び勃発すれば、それはとてつもない核被害をもたらし、米国も決して無事ではいられない」と暗に「銀河3-2号」発射成功で自信をつけたミサイル能力を誇示している。

    しかし、「南北間の関係改善のための雰囲気を作らなければならない」とし「我々は民族を重視し、統一を願う人であれば、それが誰であれ過去を問わず共に進んでいく」と述べ、朴槿恵政権も態度を改めれば話し合いの対象からは排除しないことを暗示している。

    その上で、朝鮮半島情勢が米国の「敵対視政策」により依然として厳しいという認識を示し、「我々は、決して傍観することはなく、強力な自衛的力で国家の自主権と平和を守護」するとし、「強力な自衛的力」という「核兵器」を指す言葉を使いながら、現状では核は放棄しないという姿勢を明確にしている。

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    『労働新聞』、「신년사 김 정 은」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-01-01-0001&chAction=L

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    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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