「元帥様」の腕時計:「元帥様」愛用モデルはこれか?、スイス留学時代に買ったのか、「将軍様」「お母様」のご加護? (2018年12月5日)
少し前の『韓国日報』の記事の中に、4月27日の板門店北南首脳会談の際、「第1副部長同志」の腕時計はソウル時間に、「元帥様」の腕時計の時間は平壌時間(当時、ソウルより30分遅かった)になっていたという記事があった。これはこれで、おもしろい話だが、今思えば、平壌時間とソウル時間を一致させる提案は「元帥様」が壁の掛け時計を見て言い出したのではなく、「第1副部長同志」より事前に提案されていたのかも知れない。
そんなことを思いながら記事を読んでいたら、「元帥様」の腕時計が気になった。

Source: 『韓国日報』、「4·27 남북정상회담 [포토뒷담화] 김정은은 북한 시간, 김여정은 한국 시간 」、http://www.hankookilbo.com/News/Read/201804271620585491
本来は、「元帥様」の腕時計と「第1副部長同志」の腕時計の時刻の違いを見せるための写真なのだが、韓国側のカメラで撮影していることもあり、「元帥様」の腕時計がかなり詳細に写っている。しかも、デザインが特徴的なので、この腕時計がMOVADOのMUSEUMというシリーズであるということは直ぐに分かった。
MOVADO社のHPに出ている現行モデルだと形的にはこれに近いと思われる。

Source: MOVADO HP, http://www.movado.com/en/0607204-museum-0607204.html#prefn1=watchSize&prefv1=Small&start=1&cgid=womens-designs
文字盤には高空の月しか描かれていないデザインの原画は1959年にニューヨークの近代美術館に永久保存されることになったとのことである。
MUSEUMシリーズは数多くあり、「元帥様」も複数持っているようで、黒枠ではなく金色枠のMUSEUMを着用している写真もある。「女史」とのペアワッチは金色枠のモデルのようだ。2013年2月18日に撮影されたとされる写真。

Source: Chosun.com, 김정욱 목사한테서 돈 받은 북한 주민 33명 처형될 듯, http://premium.chosun.com/site/data/html_dir/2014/03/04/2014030400987.html?Dep0=twitter
「元帥様」がMOVADO以外の腕時計を着用している写真も確認されているが、少なくとも複数のMOVADOの腕時計を持っていることからして、「元帥様」はMOVADOがお好みようだ。「元帥様」が愛用するような腕時計なので、百万円は軽く超えるモデルのような感じがするが、MUSEUM Classicのクォーツモデルであれば、10万円ぐらいで買える。上のペアウォッチは少し厚みがあるように見えるので、自動巻の可能性があるが、それでも20万ぐらいで買える(特注品の金無垢ケースでなければ)。
今回注目したのは、4月27日に着用していた黒枠のモデルである。写真からも分かるように、「元帥様」の手首がいくら太いにしろ、文字盤がとても小さく見える。しかも、大変薄く、光が反射しているだけかもしないが、周囲のペイントが剥がれているようにも見える。
この辺りの特徴から、「元帥様」のこの時計をebayなど米国のオークションサイトで検索してみた。その結果、これだと思われるものとして見つかったのが、87-40-882Nというモデルである。



時計の直径は竜頭を含めて32mm、厚さは3mmである。男性用の時計としては小型であるが、カテゴリーとしては男女兼用となっているようだ。この色合いで薄いULTRA THINと呼ばれるモデルは他にもあるが、他のモデルではベルトの取り付け部分がこれほど長くないので、「元帥様」の時計とは異なっている。
「元帥様」の太い手首に乗せるとやたらと小さく見えるが、私の手首に乗せるとこんな感じになる。人民の華奢な手首なので、そんなに小さくは見えないが、小さめであることは間違いない。

MOVADOは日本ではあまり人気がないようだが、米国ではかなり人気があり、偽物も相当出回っているようである。偽物か本物かはよほど酷い作りの偽物でなければ、判断は難しいと米国のMOVADO系フォーラムを読んでいると書いてある。文字盤にSWISS MOVADO QUARTZと書かれているのは偽物でSWISS MOVADO MADEと書かれているのが本物という説もあるようだが、どうやら古い時代のMOVADO、つまりまだQUARTZが自動巻より素晴らしいと思われていた時代にはQUARTZと書かれていたというのが正解のようだ。
MOVADOフォーラムを読んでいくと、本物かどうかの判断は裏蓋を開けて、ETAのムーブメントが入っていれば、「まあ本物」ということだったので、早速、裏蓋を開けてみた。

結果、MOVADOと印刷されたETAの21001QUARTZが入っており、「まあ本物」だろうと思っている。色々調べてみると、このETA210001は、薄型のQUARTZとしては傑作らしく、RADOなど他社の薄型モデルにも最近まで採用されていたようである。
裏蓋の裏には、97年にバッテリー交換かオーバーホールがされたような記録が書かれている。

調べを進めると、このモデルは80年代末から90年代に後半にかけて生産されていたモデルであることが分かった。
ここからがおもしろいところで、この時期は「元帥様」がスイス留学していた時期と一致する。高価な時計をいくらでも買える「元帥様」がなぜ比較的安いMOVADOのファンなのかは、どうやらこの辺の事情と関連しているのかも知れない。
まず、「強さ」を強調する「元帥様」のスタイルからすれば、小さな時計など選びそうなのに、なぜこんなに小さい時計なのだろうか。
そして、韓国メディアに髪の毛1本から爪の先まで撮影され、世界が見守っている4.27板門店北南首脳会談になぜ小さく、古く、周囲のペイントが剥がれているように見える時計を選んで着用したのであろうか。
やはり何かスイス時代と関係していると思えてならない。この時計を敢えて着用しているのは、もしかするとスイス時代に購入した、場合によっては「将軍様」か高英姫にプレゼントしてもらった時計なのかも知れない。少年時代の「元帥様」の腕であれば、このサイズの時計でちょうど良かったはずである。
もう一つは、この時計が高英姫の形見の可能性もあるが、彼女がどんな時計を着用していたのか、かつて記事にした幹部向け高英姫称賛映画を見直して確認してみる必要がある。
いずれにせよ、4.27北南首脳会談は、「元帥様」にとっては初の外交デビュー(中国への非公式訪問を除いて)、海外のメディアに晒される大勝負であったはずである。そんな時、「将軍様」か「お母様」に守ってもらいたいという気持ちがあり、小さくても、古くてもこの時計を選んで着用していたのかもしれない。もちろん、「金正恩は贅沢者」と言われないために、敢えて古い時計を使った可能性もあるが、私は前者だと思う。
ebayで購入した「元帥様」と同じ時計は正常に動いているので、そのうちに良いバンドを見つけて実用にしようと思っている。
<追記 2018/12/22>
純正ではないが、ベルトを付け替えて完成。「元帥様」のベルトとはとは異なるトカゲ革だが、よしとしておく。

とにかく軽くて薄いので、時計を付けているのを忘れそうな感じがする。
そんなことを思いながら記事を読んでいたら、「元帥様」の腕時計が気になった。

Source: 『韓国日報』、「4·27 남북정상회담 [포토뒷담화] 김정은은 북한 시간, 김여정은 한국 시간 」、http://www.hankookilbo.com/News/Read/201804271620585491
本来は、「元帥様」の腕時計と「第1副部長同志」の腕時計の時刻の違いを見せるための写真なのだが、韓国側のカメラで撮影していることもあり、「元帥様」の腕時計がかなり詳細に写っている。しかも、デザインが特徴的なので、この腕時計がMOVADOのMUSEUMというシリーズであるということは直ぐに分かった。
MOVADO社のHPに出ている現行モデルだと形的にはこれに近いと思われる。

Source: MOVADO HP, http://www.movado.com/en/0607204-museum-0607204.html#prefn1=watchSize&prefv1=Small&start=1&cgid=womens-designs
文字盤には高空の月しか描かれていないデザインの原画は1959年にニューヨークの近代美術館に永久保存されることになったとのことである。
MUSEUMシリーズは数多くあり、「元帥様」も複数持っているようで、黒枠ではなく金色枠のMUSEUMを着用している写真もある。「女史」とのペアワッチは金色枠のモデルのようだ。2013年2月18日に撮影されたとされる写真。

Source: Chosun.com, 김정욱 목사한테서 돈 받은 북한 주민 33명 처형될 듯, http://premium.chosun.com/site/data/html_dir/2014/03/04/2014030400987.html?Dep0=twitter
「元帥様」がMOVADO以外の腕時計を着用している写真も確認されているが、少なくとも複数のMOVADOの腕時計を持っていることからして、「元帥様」はMOVADOがお好みようだ。「元帥様」が愛用するような腕時計なので、百万円は軽く超えるモデルのような感じがするが、MUSEUM Classicのクォーツモデルであれば、10万円ぐらいで買える。上のペアウォッチは少し厚みがあるように見えるので、自動巻の可能性があるが、それでも20万ぐらいで買える(特注品の金無垢ケースでなければ)。
今回注目したのは、4月27日に着用していた黒枠のモデルである。写真からも分かるように、「元帥様」の手首がいくら太いにしろ、文字盤がとても小さく見える。しかも、大変薄く、光が反射しているだけかもしないが、周囲のペイントが剥がれているようにも見える。
この辺りの特徴から、「元帥様」のこの時計をebayなど米国のオークションサイトで検索してみた。その結果、これだと思われるものとして見つかったのが、87-40-882Nというモデルである。



時計の直径は竜頭を含めて32mm、厚さは3mmである。男性用の時計としては小型であるが、カテゴリーとしては男女兼用となっているようだ。この色合いで薄いULTRA THINと呼ばれるモデルは他にもあるが、他のモデルではベルトの取り付け部分がこれほど長くないので、「元帥様」の時計とは異なっている。
「元帥様」の太い手首に乗せるとやたらと小さく見えるが、私の手首に乗せるとこんな感じになる。人民の華奢な手首なので、そんなに小さくは見えないが、小さめであることは間違いない。

MOVADOは日本ではあまり人気がないようだが、米国ではかなり人気があり、偽物も相当出回っているようである。偽物か本物かはよほど酷い作りの偽物でなければ、判断は難しいと米国のMOVADO系フォーラムを読んでいると書いてある。文字盤にSWISS MOVADO QUARTZと書かれているのは偽物でSWISS MOVADO MADEと書かれているのが本物という説もあるようだが、どうやら古い時代のMOVADO、つまりまだQUARTZが自動巻より素晴らしいと思われていた時代にはQUARTZと書かれていたというのが正解のようだ。
MOVADOフォーラムを読んでいくと、本物かどうかの判断は裏蓋を開けて、ETAのムーブメントが入っていれば、「まあ本物」ということだったので、早速、裏蓋を開けてみた。

結果、MOVADOと印刷されたETAの21001QUARTZが入っており、「まあ本物」だろうと思っている。色々調べてみると、このETA210001は、薄型のQUARTZとしては傑作らしく、RADOなど他社の薄型モデルにも最近まで採用されていたようである。
裏蓋の裏には、97年にバッテリー交換かオーバーホールがされたような記録が書かれている。

調べを進めると、このモデルは80年代末から90年代に後半にかけて生産されていたモデルであることが分かった。
ここからがおもしろいところで、この時期は「元帥様」がスイス留学していた時期と一致する。高価な時計をいくらでも買える「元帥様」がなぜ比較的安いMOVADOのファンなのかは、どうやらこの辺の事情と関連しているのかも知れない。
まず、「強さ」を強調する「元帥様」のスタイルからすれば、小さな時計など選びそうなのに、なぜこんなに小さい時計なのだろうか。
そして、韓国メディアに髪の毛1本から爪の先まで撮影され、世界が見守っている4.27板門店北南首脳会談になぜ小さく、古く、周囲のペイントが剥がれているように見える時計を選んで着用したのであろうか。
やはり何かスイス時代と関係していると思えてならない。この時計を敢えて着用しているのは、もしかするとスイス時代に購入した、場合によっては「将軍様」か高英姫にプレゼントしてもらった時計なのかも知れない。少年時代の「元帥様」の腕であれば、このサイズの時計でちょうど良かったはずである。
もう一つは、この時計が高英姫の形見の可能性もあるが、彼女がどんな時計を着用していたのか、かつて記事にした幹部向け高英姫称賛映画を見直して確認してみる必要がある。
いずれにせよ、4.27北南首脳会談は、「元帥様」にとっては初の外交デビュー(中国への非公式訪問を除いて)、海外のメディアに晒される大勝負であったはずである。そんな時、「将軍様」か「お母様」に守ってもらいたいという気持ちがあり、小さくても、古くてもこの時計を選んで着用していたのかもしれない。もちろん、「金正恩は贅沢者」と言われないために、敢えて古い時計を使った可能性もあるが、私は前者だと思う。
ebayで購入した「元帥様」と同じ時計は正常に動いているので、そのうちに良いバンドを見つけて実用にしようと思っている。
<追記 2018/12/22>
純正ではないが、ベルトを付け替えて完成。「元帥様」のベルトとはとは異なるトカゲ革だが、よしとしておく。

とにかく軽くて薄いので、時計を付けているのを忘れそうな感じがする。