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    「<北朝鮮>短距離ミサイル3発を日本海に発射」 (5月18日 「毎日新聞」)

    韓国・国防部の発表を受け、日本のメディアが「北朝鮮が日本海に向け短距離ミサイル3発を発射したと明らかにした」と伝えている。発射されたミサイルは「地対地ミサイル「KN02」(射程約120キロ)の改良型か、新型の地対艦ミサイルとみられる」とのことである。

    『毎日新聞』、「<北朝鮮>短距離ミサイル3発を日本海に発射」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130518-00000074-mai-kr

    調べてみた限りでは、韓国国防部の発表以外、日本も米国も北朝鮮の短距離ミサイル発射が「あった」という事実確認以上のことは今のところしていないようだ。米国が週明けの国務省定例記者会見で何かコメントを出す可能性はあるので、これに注目する必要がある。日本政府は、どうやら「北朝鮮の領海に落ちたから」ということであまり気にしていないようだし、せっかく飯島訪朝で日朝関係が動き出しているときに不要に騒ぎ立てるのはマイナスという判断が働いている可能性も十分にある(そういうコメントを読んだか聞いたかしたのだが、ソースを見つけることができなかった)。

    飯島訪朝で北朝鮮は既に2ポイント得たと過去記事に書いたが、今回のミサイル発射は3ポイント目になる可能性がある。国際社会は中距離弾道ミサイル「ムスダン」ではなかったので、ホッとしているという雰囲気があるが、今回の北朝鮮による短距離ミサイル発射は明白な安保理決議2094違反である。拙ブログでは何回も書いてきたが、安保理決議が禁止しているのは「launches that use ballistic missile technology(弾道ミサイル技術を使った発射)」であり、その到達距離は問題にしていない。今回発射されたKN02なる短距離ミサイルに「弾道ミサイル技術」が使われているのか否かは私の持ち合わせの知識では正しく判断できないが、米国の研究機関のホームページでは、このミサイルは「弾道ミサイル」のカテゴリーに入っている。

    MISSILE THREAT, "Ballistic Missiles, KN-02", http://missilethreat.com/missiles/kn-02/

    つまり、米国の研究機関のページにあるようにこのミサイルが「弾道ミサイル」であるならば、「弾道ミサイル技術を使った発射」を北朝鮮はした、しかも3発(3回)もしたわけで、このミサイルが北朝鮮の領海に落ちようが日本の領海に落ちようが、安保理決議違反であることには変わりない。この点について、国際社会は北朝鮮を非難しなければ、これまで北朝鮮が主張してきたロジックの正しさを証明してしまうことになる。つまり、「衛星ロケットの発射をミサイル発射だと非難しておきながら、ミサイル発射をミサイル発射だとなぜ非難しないのか」ということである。

    北朝鮮が飯島さんが帰国した翌日にミサイル発射をしたということは、当然このことを意識しているはずである。もっと言えば、日米韓の北朝鮮問題への連携に打ち込んだ楔に、さらにもう一発ハンマーを加えたということである。北朝鮮は、米韓がこの発射を非難し、日本が「飯島訪朝の成果」を意識しながら非難に回らない、少なくとも過去の「衛星ロケット発射」の時のように積極的に動かないであろうと計算しているはずである。これが上に書いた「飯島訪朝」から得た3ポイント目に当たる。

    北朝鮮は既に2ポイント得ているので、日本が北朝鮮のミサイル発射を積極的に非難しても、表面的、つまり対内的・対外的宣伝という意味では失うものはない。過去記事に書いたように「やはり日本には誠実さが欠ける」とでも「朝鮮中央通信」に論評を出しておけばよい。もちろん、日朝関係の好転から得られる「利得」を得られないという損失は大きいはずだが、それは未知数である上、表面には見えてこない。

    翻って日本はどうすべきか。「独自の外交の何が悪いか」と言い切ったその意気込みを最後まで貫徹するのか、ここで折れるのか。北朝鮮に3ポイント目を与えても、逆転を前提に「独自の外交」を推し進めるのか。北朝鮮は、今回の飯島訪朝が安倍政権の参院選へ向けた点数稼ぎであることは見抜いているはずである。安倍政権としては「極秘訪問」にしたかったものを敢えて大々的に報道したのは、日本国民にそういう事実を公表し、「拉致問題」解決への期待を抱かせ、さらにそれに失敗すれば安倍政権の失点、成功すれば得点となることまで計算しているからである。そうであるとすれば、参院選に一番効く「拉致問題」関連の大きな手土産を飯島さんに託した可能性がある。

    米韓が「不快感」を示しているのは、表面的には「協力関係に悪影響を与える」といっているが、いずれの国もそれぞれ異なった思惑から日本が抜け駆けするのを好ましく思っていないからである。つまり、両国とも北朝鮮との対話のチャンスを狙っているわけで、韓国は開城工業団地関連で対話を呼びかけているものの北朝鮮に無視され、米国はハードルを少しずつ下げつつ対話を呼びかけているものの北朝鮮が乗ってこないことに焦燥感を抱いている中、日本が独走したことについて快く思っていないのである。

    走り出した日本はどうするべきか、実に悩ましい問題である。飯島さんがどういう「手土産」を持ち帰ったのかまったく分からないので何とも言えないが、短距離ミサイルの発射に目をつぶっても、慎重に北朝鮮との対話の糸口を活用していくというやり方はあり得る。当然、その際、米韓と水面下で十分な調整を行いながらということになる。実は、内閣官房長官は「色々なルートで米韓とは接触している」というようなことも言っていたので、もしかすると、こちら側が一枚上手で米韓とは十分に調整を行った上で「茶番」を演じている可能性もありそうな気がする。

    いずれにせよ、色々なことが動き出すのは週明けだと思うので、各国政府の動きに注目したい。

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    川口智彦

    Author:川口智彦
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    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
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    「白頭の血統」=金一族
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    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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