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    「20時報道」:金正恩元帥称号授与を世界が報道、戦勝節行事、老兵・慶祝大会(2012年7月27日 「朝鮮中央TV」)

    27日の「20時報道」が戦勝節(朝鮮戦争戦勝記念日)関連の報道をした。昨日(26日)の「20時報道」については記事にしなかったが、平壌で開催される慶祝大会に参加するために地元を送り出される老人たちの様子を異例の長さで報道した。

    「20時報道」7月26日:
    http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-07-26-20.flv
    「20時報道」7月27日:
    http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-07-27-26.flv

    「20時報道」は毎日ダウンロードしているが、ファイルの大きさは平均50MBぐらいである。ところが、昨日は180MBにもなった。老人たちは、各地の交通事情に合わせて、バス、鉄道、航空便で平壌入りをした。金正恩さんが特別手配したという航空便が使えたのは、少年団行事をの時と同様に、三池淵空港と羅先空港に隣接する地域の老人だけであったようである。インタビューには82才という高齢者も登場し、しっかりとした口調で話をしているが、一方で車椅子に乗ったり、歩くのも辛そうな老人も映っている。平壌空港には、看護師や救急車も待機するなど、「少年団大会」の際に配備されていたものの、それ以上の体制を整えているようであった。慶祝行事中に老人が倒れたなどという不名誉な事態が発生しないよう万全の体制を整えているのであろう。

    いずれ日本や韓国メディアには「体の弱い老人を猛暑の中、無理矢理動員した」と悪口が書かれるのであろうが、そういう側面が全くないとはいえないものの、前記事にも書いたように一生に何度平壌に行けるかどうかという人々である。それに加えて、最高司令官に招かれるという一族郎党にまで影響を及ぼすような「栄誉」を与えられたのだから、多少無理をしてでも行きたいというのが彼らの心情ではないのだろうか。

    三池淵空港を発つ老兵夫婦(夫婦とは紹介されていないが、そう見える)
    2012-07-26-20flv_001424480.jpg
    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-07-26-20.flv

    平壌革命学院を卒業して騎馬部隊で活躍したという老兵の女性。「馬にはたくさん乗ったけど、飛行機に乗るのは初めてだ」と話している。
    2012-07-26-20flv_001803040.jpg
    Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-07-26-20.flv

    ともかく、この老人たちが健康を害することなく、平壌で良い時を過ごし、良い思い出を故郷と家族に持ち帰ることを願っている。

    27日の「20時報道」では、各地で繰り広げられる金日成銅像参拝や音楽会の様子が伝えられている。それ自体は新しい話ではないが、米帝を非難し金日成将軍を称賛しつつ繰り返し使われる「戦勝」という言葉を聞きながら、北朝鮮がいう「戦勝」とは何なのだろうかということを考えた。北朝鮮、特に平壌は朝鮮戦争中、米軍の爆撃で更地に近い状態まで破壊された。その平壌を今の形までともかくも復興させたのは、「戦勝」といえるだろう。また、社会主義圏崩壊(冷戦終結)後、中国の手を借りながらも北朝鮮という国を何とか維持してきたのもこれも「戦勝」であろう。北朝鮮は「最後の勝利を目指して」という言葉をよく使うが、その課題が金正恩さんの肩にのしかかっているはずである。私は、金正恩さんがその意味を正確に理解していると期待しているが、その呼び方は「主体偉業の達成」でも何でもよいので、経済を立て直し人民生活を向上させて欲しい。

    27日の「20時報道」では、その金正恩さんに元帥称号が授与されたことに「全世界が煮えたぎ」り、「重大報道が伝えられたときから世界中のメディアが先軍朝鮮に集中した」とし、「朝鮮の特大ニュースが全宇宙に発せられると直ぐに、10分もしないうちに世界の報道機関が一斉に報道した」と伝えている。確かに、「重大報道」が出されれば、世界中のメディアだけではなく、政府や情報機関は聞き耳を立てるはずである。今回は、「重大報道予告」が「元帥称号授与」だったので、ネガティブな期待外れというべきか、胸をなで下ろしたというべきか。「重大報道」に注目するのは、核実験や指導者の異変に警戒するためである。北朝鮮は、それを承知の上で「重大報道」を予告したのかもしれないが、世界を注目させ、注目する理由はさておき、その(注目したという)「事実」を朝鮮人民に伝えるというのは実にうまいやり方である。

    2012年2月27日の「TIME」誌の表紙に金正恩さんの顔が「LIL' KIM(little Kim)」として大きく紹介されたが、この状態は今も持続されているのであろう。2.29米朝合意、ロケット発射、夫人公開など、実にタイミング良く注目度を維持する「行事」をしてきたわけだが、さて次は何を出すのか。

    <追記>
    「中央日報」日本語版を見ていたら、よいコラムがあった。「中央日報」は、北朝鮮からは「保守言論」として攻撃の対象とされているが、このコラムはなかなか良いことが書かれている。「保守言論」たる中央日報にこうしたコラムが載るということは、韓国が金正恩さんを見る目も変わってきたのであろうか。

    「中央日報」日本語版:「【コラム】金正恩のイメージ政治(1)」、「【コラム】金正恩のイメージ政治(2)」
    http://japanese.joins.com/article/390/156390.html?servcode=100§code=120
    http://japanese.joins.com/article/391/156391.html?servcode=100§code=120

    韓国語版を見たら、カン・ヨンジン論説委員が書いたコラムであった。
    「中央日報」韓国語版:「[서소문 포럼] 김정은의 이미지 정치」
    http://joongang.joinsmsn.com/article/701/8882701.html?ctg=

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    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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