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    「朝鮮人民軍最高司令官金正恩同志が板門店を視察された」(2012年3月4日「朝鮮中央TV」)

    労働新聞などでは既に報道されていたが、写真付きの動画が掲載された。

    http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=8683

    「労働新聞」記事:
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-03-04-0001

    いつ視察したかについては触れていない。しかし、北朝鮮側は、先週末ぐらいから李明博「逆徒」に対する非難を強めて、国内的には「一触即発」、「戦争前夜」、「戦闘命令を待つ」などのスローガンを使いながら、李明博「逆徒」との対決雰囲気を高めている。なので、国内向けの宣伝効果としては、こんなに緊張した「戦争前夜」に勇敢にも、南朝鮮と対峙する最前線を視察したというストーリーであろう。

    確かに、報道と写真によれば、板門閣から韓国側を双眼鏡で見ており、韓国側がその気になればスナイパーを使い狙い撃ちすることができる。もちろん韓国はそのような愚行はしないであろうが、そう考えれば「勇敢」であるともいえよう。写真を見ると周囲に数人の目つきの鋭い私服の大柄な男が周囲を見渡しているが、警護要員であろう。通常、軍部隊の視察では、少なくとも掲載される写真には警護要員は映らない。場所が場所だけに、警護を強化したのか。これ、韓国側からの銃撃もさることながら、実弾が装填されている銃を持つ警備兵が軍事境界線付近にたくさんいる場所なので、そちらからの銃撃に対してもという意味もあろう。

    北側の板門店は行ったことがあるので、今回、金正恩さんが訪れた板門閣を含むいくつかの場所は、実際に見学している。板門閣には、中国語を話す観光客もいたが、そのうちの一人が韓国の「愛国歌」の口笛で吹いたのには驚いた。制止もされなかったが、無知もよいところである(「勇敢」なのかもしれないが)。

    誰かが証明しているかもしれないが、私は南北の国家は同源であると考えている。南北分断前の朝鮮の国歌は、「蛍の光」のメロディーに歌詞を付けたものだといわれている。ある日、YouTubeにアップロードされている、北朝鮮の「愛国歌」を聞いていたら、何となく韓国の「愛国歌」と似ているのではないかと思い何回も聞き直した。そのうちに、これは「蛍の光」に韓国とは少し異なるアレンジを加えて作った曲ではないのかと思い、韓国の大衆歌謡について博士論文を書いた音楽にとても強い卒業生に聞き比べてもらった。その人曰く、やはりこれは同じであると。

    とはいえ、その中国語を話す観光客が口笛で吹いたのは、明らかに韓国版のであったのだが。

    ところで、金正日さんは板門店を「4回も」視察したとのことである。北朝鮮メディアには「4回も」と書かれているが、私は「4回しか」来なかったのかと思った。

    それにしても、板門店は金正恩さんには実に不釣り合いな場所である。何が不釣り合いなのかというと、朝鮮戦争も知らない28歳の韓国の若者を金正日さんに投影してしまうからである。私が、接する韓国の若者は、教室にいる留学生だけであるが、彼らをもって平均化するのであれば、朝鮮戦争を知らない。戦争があった事実ぐらいは知っているが、その程度である。北朝鮮では、韓国以上に朝鮮戦争についての教育はやっているであろうが、金正恩さんはどれほど勉強したのであろうか。彼は、どちらかというと恵まれた環境で韓国の若者的な生活をしてきたのではないだろうか。だとすると、やはり朝鮮戦争は韓国の若者並みに知らないはずである。その、若者が板門店を視察して歩いている姿は、「社会見学」に見えて仕方がない。

    例によって、金正恩さんは兵営などを細かく見たとのことだが、今回はタバコと軍靴に注目している。タバコは実際に自分で吸ってみたとのこと。どの記事だったか忘れたが、韓国系のメディアが北朝鮮の写真の中で金正恩さんが手に持つタバコを見つけて、「これ(銘柄は失念)が彼の好きなタバコだ」と書いていた。今回、金正恩さんも喫煙者であることが北朝鮮メディアの中ではっきりと示された。

    軍靴については、金正恩さんが「一番良い革で作った軍靴を提供するように」と指導したそうだが、板門店は南北の見栄の張り合いの場所なので、良い革で作った靴を履いていなければみっともない。それだけではなく、共同警備区域内、特に軍事境界線には背の高い警備兵を立たせている。今、服務中の朝鮮人民軍の若い兵士は「苦難の行軍」時代に生まれた人が多く、幼少期の栄養不足がたたりとても背が低い。実際に、板門店から開城に向かう道路に設置された検問所で目撃したが、中学生が軍服を着たような感じだった。「苦難の行軍」時代に生まれた人は、男性に限らず女性も背が低い。これは、中国にある北朝鮮系レストランの接待員ドンムたちを見れば直ぐに分かる。ヒールの高い靴を履いているが、それでもも皆小さい。彼女たちは、彼女たちは「苦難の行軍」時代も比較的栄養状況が良かったはずの平壌の出身であろうが、それでも背が低いことからすると、北朝鮮にとって「苦難の行軍」時代がいかに苦しかったのかということが想像できる。

    話がずれてしまったが、南北の見栄の張り合いの板門店には、それでも背の高い兵士を配置しているはずである。「労働新聞」の写真でも「朝鮮中央TV」の動画でも背が高いことが分かる。それに加え、金正恩さんが視察している軍靴が厚底に見えるのは気のせいであろうか。

    板門店視察でも金正恩さんは笑顔を振りまいている。特に、調理員の女性たちと握手をしたり彼女たちと腕組みをして写真を撮っている。

    金正恩さんが、写真のように板門閣に立って南側を見たとすれば、南側の施設から髪の毛一本まで識別される写真を何枚も撮られたことであろう。今回、韓国側は、自分たちの機材で金正恩さんをしっかりと撮影したはずである。

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    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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