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    「南朝鮮傀儡情報院スパイ、反共和国情報収集謀略行為の犯罪真を自白」:北朝鮮で逮捕 (2015年3月26日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が26日、「南朝鮮傀儡情報院のスパイ」2名の記者会見が行われたと報じた。この記者会見場には、いつもいるロシア人記者以外に、西欧人と思われる記者がたくさん来ており、また、「スパイ」の声を直接拾うための各報道機関のマイクも卓上に設置されている。これまでのこの種の記者会見では、北朝鮮側が卓上に設置したマイクが1本だけあり、会場にアンプを通して流れる音をビデオカメラのマイクで拾っているケースが多い。また、今回の会見場所も、人民文化宮殿と明記しているところから、力を入れた記者会見であったことが伺える。

    記者会見をしている「南朝鮮傀儡情報院」のスパイ、金グッキ」
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    Source: KCNA

    会見会場の様子。これまで行われたこの種の記者会見の時よりも記者が多い。会場には記者だけではなく、駐朝外交使節も来ているという。
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    Source: KCNA

    左に座っている軍服を着た人物に関する紹介は静止画でも動画でもないが、国家安全保衛部関係者かもしれない。また、大きななモニターに調査過程で応酬された証拠品などを映している。頭を下げているのは、「南朝鮮国情院のスパイ」崔チュンギル。
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    Source: KCNA

    彼らの罪状は、北朝鮮紙幣偽造、(中国闇ドル商より)偽造紙幣入手、麻薬密造、最高尊厳冒涜資料作成、北朝鮮当局による逮捕者暴行映像の偽造、金正日訪中情報収集、北朝鮮幹部DNA収拾、人民軍服・軍人証不正入手、中国で働く朝鮮人民の韓国行き示唆及び実行など、実に多い。

    通貨偽造や麻薬密造など、国際的基準に照らしても明らかな犯罪行為も含まれているが、「最高尊厳冒涜資料作成」などは名誉毀損と表現の自由とのグレーゾーンにある。

    犯罪構成要件はさておき、記者会見を見ている限りでは、これらの行為が北朝鮮国内で行われたのではなく、全て中国、丹東と瀋陽で行われたということが問題である。北朝鮮の国家安全保保衛部員は中国で逮捕権を行使できないはずなので、逮捕したのは中国当局のはずである。だとして、通貨偽造や麻薬密造などの重罪を中国の法に照らして彼らを裁くことなく、なぜ北朝鮮に引き渡したのであろうか。この部分の説明が一切ない。

    北朝鮮の刑法では、国家転覆罪などの重罪は、それが国外で計画あるいは実行されたとしても、北朝鮮の刑法で裁けるよう規定されている。

    北朝鮮刑法
    第8条(公民、領域、現実原則)
    (省略)・・・共和国領域外で、共和国に反対したり、共和国公民を侵害した外国人にもこの法は適用する (当然、共和国公民には適用される)

    韓国人が「共和国公民」なのか「外国人」なのかは微妙なところだが、いずれにしても上記規定があるので同じである。北朝鮮が並べている犯罪事実からすれば、彼らは北朝鮮刑法の規定上では死刑になっても余ることになる。

    救われるとすれば・・・

    北朝鮮刑法
    第4条(祖国と民族反逆国威を悔やむ者の処理原則)
    国家は、祖国と民族に反逆行為を行った者でも、祖国統一のために積極的に立ち上がった場合、過去を問わず、刑事責任を取らせないようにする。

    という規定もある。崔チュンギルは「記者の皆様、民族の和合と統一のために二度と私のような奴が出てこないよう、世界の良心と公正な世論に訴えて下さることを痛切に、痛切にお願い申し上げます」と深々と頭を下げている。第4条の規定適用を想定してのコメントだろうか。

    ともかく、この問題について、中国側がどのように報道するのかが見物である。これから、中国の英語メディアを探ってみることにする。

    <追記>
    「中国で逮捕」と書いたが、関連するもう一つの記事を読み忘れていた。それによると「朝鮮民主主義人民共和国国家安全保衛部では、共和国に対するスパイ謀略行為を行う目的で侵入した傀儡情報院のスパイ、金グッキ、崔チュンギル共を現行犯で摘発、逮捕した」と書かれている。よって、北朝鮮領域内での逮捕である。

    『労働新聞』、「남조선괴뢰정보원 간첩들 국내외기자회견에서 반공화국정탐모략행위의 범죄진상 자백」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2015-03-27-0015&chAction=S

    <追記2>
    28日、2人のスパイの逮捕場面を「朝鮮中央TV」が放送。金は北朝鮮の大同江沿いで、崔は北朝鮮に渡る船の中で逮捕された。

    <追記3>
    番組は20時過ぎから22時過ぎまで約2時間放送された。逮捕シーンを隠し撮りしたような動画や安全保衛部が押収した証拠物件、北朝鮮の協力者らの動画証言があった。また、中国に潜伏しているという国情院のスパイの名前、年齢、住所などを具体的に列挙していた。

    金と崔は、これまで行われたこの種の記者会見同様、紙を読み上げていた。不規則発言をさせないためか、横に座った安全保衛部も彼らが読み上げるのと同じと思われる原稿を眺めていた(紙をめくるタイミングが同じだったので同一原稿であろう)。

    また、記者の質問も予め設定されていたようで、それに対する答えも全て原稿に書かれていた。質問した記者は、北朝鮮メディアと総連の朝鮮新報記者のみであった。総連から派遣された女性記者は、紙を見ながら短い質問を読み上げていた。

    見てて観じたのは、金も崔も感情を全く表さずに話をしたことである。金は「申し訳ありません。許して下さい」と何回か立ち上がって深々と頭を下げたが、それすら感情移入は感じられなかった。彼らが本当のスパイだとして、最後の抵抗だったのかもしれないが、感情表現が豊かな朝鮮民族にしては実に不自然であった。

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    川口智彦

    Author:川口智彦
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    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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