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    「<朝鮮記録映画>偉大な同志 4」:おもしろい逸話いろいろ (2015年3月19日 「朝鮮中央TV」)

    昨夜は、楽しみにしていた『旺戴山』第13部の放送はなかった。しかし、「新しく出た朝鮮記録映画」が2本放送され(ただし、1本は3月18日の再放送)、なかなか楽しめた。ストリーミングは相変わらず不安定であるが、幸いにもこれらの番組が放送される時間帯は概ね良好であった。

    放送順序が前後するが、まず、18時頃から放送された『偉大な同志 4』から紹介しておく。この「朝鮮記録映画」は、金正恩の昨年の軍部隊に対する「現地指導」の中で見られた「偉大な」愛のエピソード集である。その中には、拙ブログで話題となり、未決状態のままになっているエピソードもあり、なかなか面白かった。

    『偉大な同志 4』
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「銃口を向け合う最前線オソン山部隊」を訪れた「最高司令官同志」は、「警戒勤務で(自分と)記念写真を撮れなかった軍人がいるという話を聞いて、彼らも連れてこいと言われました」とナレーション。哨所を空けて来たのか、交代してきたのかについての言及はない。以前も紹介したが、下はオソン山から見える「傀儡共の哨所」。「最高司令官同志」の双眼鏡を通して見ているという設定。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「中隊軍人全員と記念写真を撮っても代えられなかった元帥様。今度は中隊の軍人全員を一人ずつ自分の横に立たせて写真を撮られました」とナレーション。この若くい軍人と写真を撮った「元帥様」は、この軍人の頬を触って何かを言う。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    何かありそうだと思って見ていると、オソン山警備隊の軍人を平壌に招いて音楽などの公演をやらせて観覧。ナレーションでは「舞台の上に上げてやられた」と言っているだけなので、平壌ではなく、地方都市のホールなのかもしれないが、ホールの作りからは平壌のように見える。そして、副官がオソン山で「元帥様」が頬を触った軍人を指し示すと、親しげに何か話し始める。「みんな体が良くなり(健康そうになり)、分からないほど変わったと元帥様」とナレーション。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    そして、「敬愛する最高司令官同志の愛がサプリとなり、オソン山の一当百戦士になった」とナレーション。こういうことであった。

    「敬愛する将軍様のお名前が刻まれた時計表彰が新たに制定された」と新しいスタイルの「時計表彰」を紹介。これ以上大写しにならないのだが、デザインが洗練されたような気がする。この時計は、軍部隊で軍人の食生活改善のために活躍した「政治指導員」に贈呈された。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    北朝鮮の映画を見ていてだんだん分かってきたことが、軍隊において「政治指導員」は重要な役割を担っているということである。つい最近も『若い連隊長』という映画が放映されたが、「政治指導員」は、年長者から軽く見られる「若い連隊長」をサポートしている。「政治指導員」も軍服を着ているので「人民軍人」と見た目では区別しにくいが、扱いは明らかに異なっている。中隊であれば中隊長と中隊に配属された「政治指導員」は同格であり、軍事訓練や作戦行動については中隊長、その他の思想・生活などの問題は「政治指導員」が担当し、二人三脚体制で運用されている。この「朝鮮記録映画」でも紹介されているが、中隊長と「政治指導員」をセットにした「中隊長・中隊政治指導員会議」を金正恩が招集した背景にはこのようなことがあるようだ。「政治指導員」は、「人民軍総政治局」に所属しているはずなので、「人民軍総政治局長」の任務と権限がいかに絶大なのかが分かる。経済部門の企業所においても、「支配人(いわゆる社長)」と「党秘書」が二人三脚で企業経営や従業員管理をしているのと同様の関係にある。

    話を「朝鮮記録映画」に戻す。「意図しない理由で不本意に軍服を脱ぎ、順当ではない生活の道を歩まなければならなかった戦士」とナレーション。「意図しない理由」の説明はないが、引責か健康問題ではないだろうか。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    しかし、この人は「自ら令状がない兵士にな」り、「中隊の近くに根を下ろし、敬愛する最高司令官同志が最も気に掛けられる軍人生活問題を解決するのに少しではあれ役立とうと献身の汗を」流したとナレーション。下は、妻と思われる女性と作業をする男性。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    こうした功績が「元帥様」に評価され、この人は再び軍服を着るようになることができるようになったとのことである。この程度の説明で朝鮮人民は「意図しない理由」を忖度することができ、それに照らして「元帥様」の「慈悲深い恩」を理解することができるのだろうか。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    次の話は、「将軍様」と話をした空軍指揮官に取り立てた話である。「元帥様」は「ドンムは、父なる将軍様の生涯の最後の時期に、将軍様が最後に会われた人民軍隊の師団長だと仰り、将軍様の気持ちまで合わせて事業と生活を温かく見守って下さった」とナレーション。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    それだけではなく「第13期最高人民会議の候補者にして下さり、投票所まで足を運ばれ投票までして下さった敬愛する元帥様」とナレーション。「将軍様」と最後に話をした「師団長」というだけにしては、破格の待遇である。「将軍様」と近くで話をすること自体が特別なことであることは分かるが、「生涯の最後の時期」はその時、予測できなかったはずで、単なる偶然である。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    この「記録映画」見ていて思ったのだが、李雪主のコートは空軍カラーであった。意識的にこの色を選んだかどうかは分からないが、そうだとすれば李雪主同志の服飾コーディネートは凄い。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    だんんだんと「朝鮮記録映画」はクライマックスへと向かい、「飛行戦闘任務遂行中に犠牲となった一人の平凡な飛行士」の話しに入る。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    この飛行士は、「飛行士大会」にも招待され参加した。下は、その招待状。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    過去記事で「サングラスは標準装備なのか」と書いたが、サングラスを着用しながら模型の飛行機でこの飛行士たちが訓練をしている様子が紹介されていた。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「党の飛行先党訓練命令を受け、栄光の太陽が輝く自分の祖国の空を飛び続けたその過程で、最期を迎えた戦士」とナレーション。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「元帥様」は、その報告を聞いて激怒するどころか、「愛国烈士証」等を授与。下は「愛国烈士証」。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「飛行士への思いでお休みになることもできず徹夜をされた最高司令官同志は、飛行士の夫人に送る書簡を一文字一文字書かれました」とナレーション。下は、その「書簡」。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    続けて手紙の内容をナレーションが「元帥様」に成り代わり読み上げ、最後の部分で「同志の夫、チャ・ヨンイル同志が党の飛行戦闘命令を受け、最後に最高司令官の前で祖国の青い空を飛んだ時の写真をお送りします。ご主人の最期の空の道です。」と手紙に写真を貼り付けている。気になるのは、「ご主人の最期の空の道です」という言葉である。これが「最期」だとすると、チャ飛行士は「最高司令官同志」が命令・指導した飛行訓練中に死亡したということになる。さらに、通常の飛行訓練では、いちいち飛行中の戦闘機の写真撮影などしていないだろうから、このような写真が残っていたということは、特別なオケージョンであったのであろう。この辺り、理由は何であるにせよ、「元帥様」は、自分の命令で飛んでいた飛行士が死亡したことについて、高価な国家財産である戦闘機を墜落させたことに憤慨せず、胸を痛めたということなのだろう。北朝鮮映画の中では、装甲車や軍用トラックを過失で壊した場合は、その事故で怪我をしても懲戒処分を受けることになることが多いが、死亡したとはいえ、対照的である。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    それだけではなく、「元帥様」は、「恩情溢れる贈り物を送り、大海のような愛を施して下さった」とナレーション。下は「贈り物」のリストであるが、項目を読み取ることはできない。左上の署名は「金正恩」。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「贈り物」を受け取った飛行士夫人と子供。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    最後は「14人の自爆肉弾飛行士」の話である。この話は、少し前に書いた記事の中でこの飛行士のための石碑を「最高司令官同志」が建立させたとして紹介した。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    石碑には次のように刻まれている。「長く輝け肉弾自爆勇士たちの偉勲よ 2009年4月、人工地球衛星『光明星-2』号の成功裏な発射を確保するための作戦に参加し、英雄的偉勲を立てた金正日・金正恩飛行隊の14名の飛行士が発揮した徹底した首領決死擁護精神、祖国守護精神、肉弾自爆精神は、祖国清史に末永く輝く」
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    2009年4月、「将軍であられる敬愛する最高司令官同志は、空言を言わない我々人民武力の本当の姿を見せてやる重大な任務を14人の決死隊員に」命じたとナレーション。2009年4月といえば、「元帥様」の後継者指名は行われておらず、もちろん「最高司令官」でもない。「将軍」といっているから、軍階級としては「大将」ぐらいであったのだろうか。下は、このナレーションと共に出る写真。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    その「決死隊員」と思われる。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「パルコルム」を歌う「決死隊員」。これが当時の動画だとすると、やはりこの歌は継承準備の段階から広く歌われていたということになる。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「敬愛する最高司令官同志」に書いた「宣誓文」。解像度が悪くて分からないが、「最高司令官同志」の名前が出ていれば確認したいものである。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「決死隊員」が乗った戦闘機とされているが、石碑の戦闘機と機種が違う。
    <追記>コメントでも指摘されているとおり、戦闘機は同型。「最高司令官同志」の前で飛行した垂直尾翼が2枚ある戦闘機と勘違いしていた。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    14人の「決死隊員」。ヘルメットを着用していない人も飛行士なのだろうか。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「元帥様」が「将軍様」と引き合わせた14名の「決死隊員」
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    さて、ここから話がややこしくなる。「元帥様」は、「第1回飛行士大会に参加した14人の肉弾勇士たちを親しく近くに呼んでくださり」とナレーション。「14人を呼んで」と言っている。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    飛行士大会について書いた記事を思いだしていたのだが、確かこの女性は死亡した「飛行士」の奥さんだったはずである。この女性に関するナレーションは、この「朝鮮記録映画」ではない。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    「14人の英雄烈士が発揮した精神を高く評価すると言われながら、戦闘任務遂行中に犠牲になった飛行士には共和国英雄称号を、13人には偉大な将軍様のお名前が書かれた時計表彰を親しく授与」したとナレーション。「戦闘任務中に犠牲になった」人は「飛行士大会」に招くことはできないはずだ。代理出席した夫人を数に入れているのかもしれないが、ややこしいナレーションである。しかも、上の「将軍様」と撮影した記念写真には14人写っている。出撃前ではなく、任務遂行後の記念写真だと思うが、そうだとすると、「戦闘任務中に犠牲」というのは、2009年4月の「任務」とは別の任務を指すのであろうか。
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    Source: KCTV, 2015/03/20放送

    韓国でいわれる「墜落説」を打ち消すためなのか。「将軍様激怒」の話と石碑建立の整合性を示そうとしようとしているのかよく分からない話である。

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    No title

    お世話になります。

    単純に考えると「肉弾自爆勇士」というのは、決死の覚悟で2009年4月の作戦に参加した飛行士14人に贈られた単なる「称号」であり、内1名が死亡したということで、以前の報道にあったような「14人死亡」というのではないようですね。
    というか、「肉弾自爆勇士」という表現が誤解を生んだのだと思います。
    昔の日本では「肉弾三勇士」みたいに戦死した場合に贈られる称号が、死んでなくてもこんな称号を与える感覚は、やはり外世界とは違うと感じます。

    「キル・ヨンジョ飛行隊」とか「自爆決死隊」とかいう称号は北朝鮮では名誉なのかもしれませんが、反面、事故の場合も脱出禁止で死を強要、それに従ったチャ・ヨンイルは「飛行士の鑑」ということなのでしょう。

    ちなみに、パイロットの育成にかかる費用は、おそらく北朝鮮のオンボロ飛行機1機より高額だと思います。
    なので、陸軍のトラック運転手などとは、「兵器」としての財産的価値が全然違うように思います。
    まして、脱出禁止が慣例化されている北朝鮮では「処分」よりも「愛国烈士証」授与の方が他の兵士を引き締める効果があるように思います。

    「石碑の戦闘機と機種が違う。」とされていますが、MiG-23なので、正しいと思います。

    MiG-23は、推定56機保有とされていますが、4部隊あると考えると、1部隊は14機で、内1機は訓練用の複座機のはずなので、作戦機は計13機。
    写真では飛行服を着たパイロットが13人いて、さらに1人は指揮官か何かなので、説明がつくと思います。

    「自爆決死隊」

    いつもコメントありがとうございます。「戦闘機と機種が違う」件は、早速、記事の方に追記をさせて頂きました。追記にも書きましたとおり、「最高司令官同志」が視察した飛行訓練に参加した戦闘機と石碑の戦闘機がゴチャゴチャになっていました。

    「将軍様」と写っている写真は、するとパイロット14人(内1人死亡)、別途に指揮官(ヘルメット未着用)ということになるのでしょうか。ナレーションを聞いている限りでは、死亡した1名をどうカウントしているのか、依然としてよく分かりません。いずれにせよ、過去のコメントでお話しさせて頂いた、「14人全員死亡」ということはないですね。

    お返事が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。

    >お世話になります。
    >
    > 単純に考えると「肉弾自爆勇士」というのは、決死の覚悟で2009年4月の作戦に参加した飛行士14人に贈られた単なる「称号」であり、内1名が死亡したということで、以前の報道にあったような「14人死亡」というのではないようですね。
    > というか、「肉弾自爆勇士」という表現が誤解を生んだのだと思います。
    > 昔の日本では「肉弾三勇士」みたいに戦死した場合に贈られる称号が、死んでなくてもこんな称号を与える感覚は、やはり外世界とは違うと感じます。
    >
    > 「キル・ヨンジョ飛行隊」とか「自爆決死隊」とかいう称号は北朝鮮では名誉なのかもしれませんが、反面、事故の場合も脱出禁止で死を強要、それに従ったチャ・ヨンイルは「飛行士の鑑」ということなのでしょう。
    >
    > ちなみに、パイロットの育成にかかる費用は、おそらく北朝鮮のオンボロ飛行機1機より高額だと思います。
    > なので、陸軍のトラック運転手などとは、「兵器」としての財産的価値が全然違うように思います。
    > まして、脱出禁止が慣例化されている北朝鮮では「処分」よりも「愛国烈士証」授与の方が他の兵士を引き締める効果があるように思います。
    >
    > 「石碑の戦闘機と機種が違う。」とされていますが、MiG-23なので、正しいと思います。
    >
    > MiG-23は、推定56機保有とされていますが、4部隊あると考えると、1部隊は14機で、内1機は訓練用の複座機のはずなので、作戦機は計13機。
    > 写真では飛行服を着たパイロットが13人いて、さらに1人は指揮官か何かなので、説明がつくと思います。
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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