「<朝鮮芸術映画>雪の中に咲いた花」:北朝鮮の婚姻届、結婚に関する法規定 (2015年1月5日 「朝鮮中央TV」)
この映画の舞台は、慈江道満浦市にある羊毛紡績工場である。「班長」から「支配人」になった若い女性が古い工場を改築し、新たな工場を建設する「闘争」を描くストーリーである。
「雪の中に咲いた花」

Source: KCTV, 2015/01/05放送
時代背景は1998年代末、苦難の行軍のまっただ中である。旧正月のデコレーションをする人々。

Source: KCTV, 2015/01/05放送
工場の会議で「討論」をする女性「支配人」

Source: KCTV, 2015/01/05放送
この「支配人」には、技術者の恋人(下写真)がいるが、工場再建と孤児養育のために結婚を諦める。

Source: KCTV, 2015/01/05放送
技術者は「誰か」との結婚届の書類を受け取るために、「文書所」に行く。
技術者:「結婚登録申請書を下さい。」
係員:「はい、どうぞ。結婚おめでとうございます。お幸せに。」

Source: KCTV, 2015/01/05放送
この技術者は、「支配人」の仕事を手助けするために満浦市に技術者として配属される。工場建設のための資材を調達して工場に運ぶ途中、トラックが故障して坂を下って行ってしまう。それを止めようと木材を担いで突進し重傷、病院に運ばれる。

Source: KCTV, 2015/01/05放送
彼は、手遅れで死んでしまうが、彼の手には「妻に渡して欲しい」という手紙があった。この手紙は、「文書所」で受け取った「結婚登録申請書」であった。「妻」とは「支配人」であった。

Source: KCTV, 2015/01/05放送
ここで、「支配人」が「手紙」を読むのだが、それが北朝鮮の「結婚登録申請書」であった。上が夫の名前、下が妻の名前、夫の名前には拇印が押されている。

Source: KCTV, 2015/01/05放送
手紙部分には「結婚登録申請書、私ユ・ミョンシクと妻チュ・インスンは、殉職者の子供たちが安心して呼べる本当の父親、母親となり、子供たち全てが本当の親の愛を受けられるようにします」と書かれている。

Source: KCTV, 2015/01/05放送
上の写真の「結婚登録申請書」が実際に使われている様式なのか、また現在も同様な形式なのか、さらには平壌と地方都市で同じなのかは分からない。さらに、技術者は同じ紙を2枚持っているが、提出先が2カ所あるのか、自分用の写しなのかも分からない。しかし、朝鮮人民を対象とした映画の中で、実際に使用されていないような形式の「結婚登録申請書」を見せる必要もないので、名前と拇印だけのシンプルなものが使われているのかもしれない。それにしても、同姓同名、しかも漢字を使わないので同音の人が大量にいるはずなのに、こんなシンプルな「結婚登録申請書」で管理ができるのだろうか。
ということで、北朝鮮の結婚に関する法令を調べてみた。北朝鮮の「社会主義憲法」(2012年4月13日改訂版参照)の第78条に「結婚と家庭は、国家の保護を受ける。国家は社会の基層生活単位である家庭を確固たるものとするために深い関心を傾ける」と書かれている。婚姻年齢等に関する規定は「社会主義憲法」にはない。
次に「民法」を見ると、結婚に関する規定は一切ない。その代わりに「朝鮮民主主義人民共和国家族法」というのが1990年10月24日に制定されており、4回目の最終改定は2009年12月15日となっている。この法律の「第2章 結婚」に婚姻に関する諸規定があるので、全訳しておく。
************
第2章 結婚
第8条(自由結婚と一夫一婦制)
公民は自由結婚の権利を有する。
結婚は必ず一人の男と一人の女の間でだけすることができる。(訳注:つまり、同性婚は禁じている)
第9条(結婚年齢)
朝鮮民主主義人民共和国で結婚は、男子18歳、女子17歳からすることができる。
国家は、青年が祖国と人民のために、社会と集団のためにやりがいのある仕事をした後で結婚する社会的気風を奨励する。(訳注:事実上、一度社会に出てからの結婚することを認める規定のようだ。羅先で案内員に結婚年齢について質問したが、どういう答えだったか忘れてしまった。羅先特集に書いたかもしれないが)
第10条(結婚親等数)
8親等までの血族、4親等までの姻戚や姻戚であった者間では結婚することができない。(訳注:韓国民法をきちんとフォローしていないが、韓国にはある(あるいはあった)「同姓不婚」制度は封建的制度ということで北朝鮮には存在しないようだ)
第11条(結婚登録)
結婚は身分登録機関に登録をすることで法的に認定され、国家の保護を受ける。
結婚登録をせずに夫婦生活をすることはできない。(訳注:ということは、上の写真の紙を「身分登録機関」に提出することで結婚が認定されるということなのだろうか)
第12条(在外公民の結婚登録)
外国に住む共和国公民の結婚登録は、朝鮮民主主義人民共和国領事代表機関にし、領事代表機関がない場合は、当該国の当該機関にすることができる。(訳注:「ない場合は」というのは、主として在日朝鮮人のための規定であろう。在日朝鮮人が実際にどうしているのか分からないが、朝鮮総連が北朝鮮向けに何らかの登録を受け付けているとしても、地方自治体の行政機関に婚姻届を出さないと日本で生活する上で不便極まりないからということであろう)
第13条(結婚の無効)
この法、第8条から第10条に違反する結婚は無効である。
結婚の無効認定は裁判所が行う。
第14条(無効となった結婚における子女教育)
無効と認定された結婚は、はじめからなかったものとする。しかし、子女養育問題は、この法第22条、第23条により解決する。
第3章 家庭 (第22条と23条のみ抜粋)
第22条(離婚時、子女養育当事者の決定)
夫と妻が離婚する場合、子女を養育する当事者は子女の利益の見地から当事者が合意して定める。合意がなされない場合は、裁判所が決める。
第23条(子女養育費)
子女を養育しない当事者は、子女を養育する当事者にその者が労働する年齢に達するまでの養育費を支払わなければならない。しかし、子女を養育する当事者が養育費を受け取らないとする場合は、支払わないことができる。
「雪の中に咲いた花」

Source: KCTV, 2015/01/05放送
時代背景は1998年代末、苦難の行軍のまっただ中である。旧正月のデコレーションをする人々。

Source: KCTV, 2015/01/05放送
工場の会議で「討論」をする女性「支配人」

Source: KCTV, 2015/01/05放送
この「支配人」には、技術者の恋人(下写真)がいるが、工場再建と孤児養育のために結婚を諦める。

Source: KCTV, 2015/01/05放送
技術者は「誰か」との結婚届の書類を受け取るために、「文書所」に行く。
技術者:「結婚登録申請書を下さい。」
係員:「はい、どうぞ。結婚おめでとうございます。お幸せに。」

Source: KCTV, 2015/01/05放送
この技術者は、「支配人」の仕事を手助けするために満浦市に技術者として配属される。工場建設のための資材を調達して工場に運ぶ途中、トラックが故障して坂を下って行ってしまう。それを止めようと木材を担いで突進し重傷、病院に運ばれる。

Source: KCTV, 2015/01/05放送
彼は、手遅れで死んでしまうが、彼の手には「妻に渡して欲しい」という手紙があった。この手紙は、「文書所」で受け取った「結婚登録申請書」であった。「妻」とは「支配人」であった。

Source: KCTV, 2015/01/05放送
ここで、「支配人」が「手紙」を読むのだが、それが北朝鮮の「結婚登録申請書」であった。上が夫の名前、下が妻の名前、夫の名前には拇印が押されている。

Source: KCTV, 2015/01/05放送
手紙部分には「結婚登録申請書、私ユ・ミョンシクと妻チュ・インスンは、殉職者の子供たちが安心して呼べる本当の父親、母親となり、子供たち全てが本当の親の愛を受けられるようにします」と書かれている。

Source: KCTV, 2015/01/05放送
上の写真の「結婚登録申請書」が実際に使われている様式なのか、また現在も同様な形式なのか、さらには平壌と地方都市で同じなのかは分からない。さらに、技術者は同じ紙を2枚持っているが、提出先が2カ所あるのか、自分用の写しなのかも分からない。しかし、朝鮮人民を対象とした映画の中で、実際に使用されていないような形式の「結婚登録申請書」を見せる必要もないので、名前と拇印だけのシンプルなものが使われているのかもしれない。それにしても、同姓同名、しかも漢字を使わないので同音の人が大量にいるはずなのに、こんなシンプルな「結婚登録申請書」で管理ができるのだろうか。
ということで、北朝鮮の結婚に関する法令を調べてみた。北朝鮮の「社会主義憲法」(2012年4月13日改訂版参照)の第78条に「結婚と家庭は、国家の保護を受ける。国家は社会の基層生活単位である家庭を確固たるものとするために深い関心を傾ける」と書かれている。婚姻年齢等に関する規定は「社会主義憲法」にはない。
次に「民法」を見ると、結婚に関する規定は一切ない。その代わりに「朝鮮民主主義人民共和国家族法」というのが1990年10月24日に制定されており、4回目の最終改定は2009年12月15日となっている。この法律の「第2章 結婚」に婚姻に関する諸規定があるので、全訳しておく。
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第2章 結婚
第8条(自由結婚と一夫一婦制)
公民は自由結婚の権利を有する。
結婚は必ず一人の男と一人の女の間でだけすることができる。(訳注:つまり、同性婚は禁じている)
第9条(結婚年齢)
朝鮮民主主義人民共和国で結婚は、男子18歳、女子17歳からすることができる。
国家は、青年が祖国と人民のために、社会と集団のためにやりがいのある仕事をした後で結婚する社会的気風を奨励する。(訳注:事実上、一度社会に出てからの結婚することを認める規定のようだ。羅先で案内員に結婚年齢について質問したが、どういう答えだったか忘れてしまった。羅先特集に書いたかもしれないが)
第10条(結婚親等数)
8親等までの血族、4親等までの姻戚や姻戚であった者間では結婚することができない。(訳注:韓国民法をきちんとフォローしていないが、韓国にはある(あるいはあった)「同姓不婚」制度は封建的制度ということで北朝鮮には存在しないようだ)
第11条(結婚登録)
結婚は身分登録機関に登録をすることで法的に認定され、国家の保護を受ける。
結婚登録をせずに夫婦生活をすることはできない。(訳注:ということは、上の写真の紙を「身分登録機関」に提出することで結婚が認定されるということなのだろうか)
第12条(在外公民の結婚登録)
外国に住む共和国公民の結婚登録は、朝鮮民主主義人民共和国領事代表機関にし、領事代表機関がない場合は、当該国の当該機関にすることができる。(訳注:「ない場合は」というのは、主として在日朝鮮人のための規定であろう。在日朝鮮人が実際にどうしているのか分からないが、朝鮮総連が北朝鮮向けに何らかの登録を受け付けているとしても、地方自治体の行政機関に婚姻届を出さないと日本で生活する上で不便極まりないからということであろう)
第13条(結婚の無効)
この法、第8条から第10条に違反する結婚は無効である。
結婚の無効認定は裁判所が行う。
第14条(無効となった結婚における子女教育)
無効と認定された結婚は、はじめからなかったものとする。しかし、子女養育問題は、この法第22条、第23条により解決する。
第3章 家庭 (第22条と23条のみ抜粋)
第22条(離婚時、子女養育当事者の決定)
夫と妻が離婚する場合、子女を養育する当事者は子女の利益の見地から当事者が合意して定める。合意がなされない場合は、裁判所が決める。
第23条(子女養育費)
子女を養育しない当事者は、子女を養育する当事者にその者が労働する年齢に達するまでの養育費を支払わなければならない。しかし、子女を養育する当事者が養育費を受け取らないとする場合は、支払わないことができる。