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    「<TVドキュメンタリー>「人参を訪ねて、開城(第1部)」:「朝鮮中央TV」らしからぬ番組、とても斬新、洗練されており西側と遜色ない、高麗人参ビジネスと開城のプロモーションか、ユネスコ世界遺産登録 (2015年1月2日 「朝鮮中央TV」)

    「新年辞」で盛り上がってしまったため、ずっと記事にできなかったが、1月2日と3日の「ゴールデンタイム」に「朝鮮中央TV」が「人参を訪ねて、開城」というドキュメンタリーの1部と2部を連夜で放送した。正月のゴールデンタイムに放送されたこの番組、何となく「朝鮮中央TV」を見ていたのだが、それこそ西側の番組が電波ジャックされて混入してきたように思うほどのできである。

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    Source: KCTV, 2015.01.02放送

    北朝鮮では「主体芸術」の影響なのか、テレビ番組でも「抽象的(イメージ)」な場面をほとんど使わないが、、今回は自然を映し出すような「抽象的」な場面を多用されている。ナレーションは、韓国のドキュメンタリーに近いスタイルで、雲の流れや月の動き(月についてはCGか)を見せるところなど、西側ドキュメンタリーを彷彿される作りになっている。

    朝鮮語なのに字幕を入れたり、ファースト・モーションを使うという手法も、これまであまり見られなかった。また、カメラワークもこれまでのドキュメンタリー番組では使われなかったクレーンカメラを多用し、なめるような動きのある場面がたくさんある(クレーンカメラの影が映りこんでしまっているところが、今一つではあるが)。

    ナレーションでもう一つ驚いたのは、「カメラが初めて『仏岩』の姿を捉えた」と言っている。北朝鮮では、「大元帥様」が「初めて」何かをやり、それに人民が従うというパターンが多いのだが、「大元帥様」もやらなかった(あるいは、指示しなかった)ことを「初めて」やるというのはとても珍しい。

    ユネスコへの文化遺産登録に力を入れ、さらに「元帥様」から文化遺産保護事業に関する「課業」も出されているので、それらと絡めて制作された番組であろう。詳細調べていないが、高麗人参のユネスコ文化遺産登録を考えているのではないかと思う。また、「後援 朝鮮人参貿易会社」ともなっているので、編集して英語字幕を付ければ、高麗人参の宣伝番組にもなりそうでである。同様に、「後援 開城市人民委員会」ともなっているので、既に登録されている開城市内の遺跡に加
    え、さらなる文化遺産登録を考えているのかもしれない。

    過去記事でも話題になった画質であるが、ストリーミングなので16:9の画面サイズを使っているところまでしか確認できないが、ほぼ間違いなくHDであろう。

    また、進行役として登場している女性は「見ない顔」の「放送員」だと思っていたら、番組の終わりで「平壌演劇映画大学学生」とクレジットに出てきた。さらに、取材班(カメラマン)を番組に登場させたり、第2部の最後では開城の老人とカメラマンに腕相撲をやらせてカメラマンが敗れると「やらせではなく真実である」というような、「朝鮮中央TV」らしからぬナレーションまで入れてある。第1部の終わりでは、第2部の一部を見せる「予告編」まで組まれている。

    「少年大将」もいいが、この「ドキュメンタリー」は「元帥様」が激賛するに値する作りである。これについて、「元帥様」はどう思っているのか、そしてどこかで何かを言うのか、注目したい。

    この番組を紹介すべく、字幕を付けていたのだが、1時間近い番組なので、小手先の作業ではとても終わらない。一応、最初の5分ほど字幕を付けたものをYouTubeにアップロードしておいたので、関心のある方はご覧頂きたい。映像を見ているだけでも、上に書いたことを直接感じていただけると思う。

    <TVドキュメンタリー>人参を尋ねて、開城(第1部)、https://www.youtube.com/watch?v=NNM9y7Z2Sg4

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    非公開コメント

    高麗人参

    お世話になります。

    以前からKCTVや労働新聞では小さくではありますが、高麗人参ネタを扱ってはいました。
    今回の番組はその集大成的なカンジかとは思いますが、珍しく純粋に学術的番組のようです。

    北朝鮮製の高麗人参を使った化粧品の品質が国際的に高い評価を得て賞をもらったとかいうようなことが以前労働新聞に書いてあったように思います。
    また、それまで知りませんでしたが、北朝鮮の大学には高麗人参学部なるものがあるらしく、金正日によってかなり本格的に研究や人材の育成に力を入れて国の発展に貢献を期待されていたセクションらしいので、むしろ今までこういう番組がなかった方がおかしいという気もしますが、それだけに「将軍様」とか「元帥様」が出てこないのは確かに珍しいですね。

    Re: 高麗人参

    コメントありがとうございます。高麗人参は、北朝鮮の主力輸出品の一つですからね。その質については、何とも判断できませんが、中朝国境の中国側では「北朝鮮の山で採った」という小さな高麗人参を100元以上で売っていました。本物かどうかは別とし、北朝鮮製の天然高麗人参の評価が高いことの証左ではないかと思います。

    番組は、「学術的」というか「芸術的」、しかも北朝鮮の「主体芸術」ではなく、西側の番組でもしばしば扱う「自然の美」を表現しています。

    翻訳が間に合わなかったのですが、王建の話の次に、「首領様」の話は出てきます。きちんと記憶していませんが、高齢の「首領様」が開城を訪れ、高麗時代の遺跡の保存をきちんとしろ、そして岩に書かれた「誰も解読できなかった」行書を「解釈された」という話があります。「将軍様」も、こちらもきちんと記憶していないのですが、「両班は自分の名前を違和に刻ませた」云々と批判したというナレーションがあります。

    「おいおい、正日峰はなんなんだ」という話なのですが・・・・

    > お世話になります。
    >
    > 以前からKCTVや労働新聞では小さくではありますが、高麗人参ネタを扱ってはいました。
    > 今回の番組はその集大成的なカンジかとは思いますが、珍しく純粋に学術的番組のようです。
    >
    > 北朝鮮製の高麗人参を使った化粧品の品質が国際的に高い評価を得て賞をもらったとかいうようなことが以前労働新聞に書いてあったように思います。
    > また、それまで知りませんでしたが、北朝鮮の大学には高麗人参学部なるものがあるらしく、金正日によってかなり本格的に研究や人材の育成に力を入れて国の発展に貢献を期待されていたセクションらしいので、むしろ今までこういう番組がなかった方がおかしいという気もしますが、それだけに「将軍様」とか「元帥様」が出てこないのは確かに珍しいですね。

    No title

    ユネスコへの文化遺産登録はかなり真剣かつ積極的に
    進めているものとみられます.かなり前に登録された
    民謡「アリラン」について,最近になってから,
    韓国の動きには一切触れずに,取り上げているみたい
    です.
    西側的な映像手法?や効果演出などは金正恩の直接的な
    指導のような気がします.まあ,徐々に様子をみながら
    拡げていくのではないのでしょうか.金正恩は本当は
    もっと大幅に放送自体を変えたいとおもっている,ような
    感じがしてきます.

    アリラン

    コメントありがとうございます。アリランですが、UNESCOに登録されたという記事が出ていましたね。拙ブログの記事として書いたような記憶もあるのですが、よく覚えていません。確かに「南朝鮮」の動きについては一切書いてなかったですが、アリランなどは民族共有の曲なのですから(地方により様々なバージョンがあるにしても)、南北共同でUNESCOに登録していくような動きの方が、「元帥様」の「新年の辞」の趣旨には合うのではないかと思います。もしかすると、南北共同でとりあえず何かを再開するのであれば、その辺の民族遺産保存事業ではないでしょうか。これも「元帥様」の「課業」と一致しています。

    あの映像は、本当に驚きました。記事にも書いたように、それこそストリーミングが突然どこか別の国のものに入れ替わったような感じでした。年末特集番組もそうでしたが、このところ放送機材を何となく見せる番組が増えています。使っている機材も刷新され、自信をつけたのでしょうか。この番組でも、カメラマンが担いでいるカメラを大きく写していましたね。どのぐらいの性能のものなのか、日本の放送局で使っているものと比べてどうなのかなどに関心があります。

    > ユネスコへの文化遺産登録はかなり真剣かつ積極的に
    > 進めているものとみられます.かなり前に登録された
    > 民謡「アリラン」について,最近になってから,
    > 韓国の動きには一切触れずに,取り上げているみたい
    > です.
    > 西側的な映像手法?や効果演出などは金正恩の直接的な
    > 指導のような気がします.まあ,徐々に様子をみながら
    > 拡げていくのではないのでしょうか.金正恩は本当は
    > もっと大幅に放送自体を変えたいとおもっている,ような
    > 感じがしてきます.
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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