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    「故意の悪行にしがみつけば、想像できないさらに大きな災いを招くということを知らなければならない-朝鮮民主主義人民共和国国防委員会政策局スポークスマン談話」:オバマ大統領をサル扱い、北朝鮮のメディアに対する攻撃を認める、NCND、「反テロ条約」の解釈 (2014年12月27日 「朝鮮中央通信」)

    「The Interview」が米国の一部の劇場で公開されてから数日過ぎたが、今のところ「9.11を思い出」させるような事態は起こっていない。万が一の場合の賠償額を考えたSPEの経済的判断に対し、米大統領自ら「表現の自由」を理由に横槍を入れて映画を公開させることになったわけだが、現状では大統領の政治的判断が正しかったということであろう。少なくとも、ハッキングというサイバー攻撃と「9.11」のような物理的攻撃を結びつけた今回の事件が「結果的には失敗であった」ということを証明できたわけである。もちろん、サイバー攻撃には成功したわけだが、こちらは決して新しい事態ではないので、やむを得ないという話なのであろう。

    一方、「不純映画の全面配給を諦めた『ソニー・ピクチャーズ』の措置に対しても幸いに考えてい」た北朝鮮にとっては、映画公開にSPEが踏み切ったのはおもしろくない。それを示すかのように、国防委員会政治局が12月27日に「談話」を出している。以下では、その内容をかいつまんで紹介していく。

    「談話」ではSPEが映画公開に踏み切ったことについて「米行政府と悪質保守勢力の執拗な煽りに耐えきれず、今後訪れる悲惨な運命も考えずに映画配給に再び走った」とした上で、そうさせたのは「『ソニー・ピクチャーズ』に『無差別的な配給』を強要し、米国内の映画館を懐柔・恐喝してこの不純反動映画配給を煽るのに先頭に立った張本人は米大統領オバマである」と米大統領を非難している。

    オバマ大統領への非難はエスカレートし「熱帯樹林の中に生息するサル顔そのもの、いつ見ても言っていることと行動が限りなく軽々しいオバマは、無慈悲な報復打撃に仰天した『ソニー・ピクチャーズ』が不純反動映画の配給を中止したという声明を発表するや『ソニーピクチャーズの恥は米国の恥だ』、『なぜ大統領に知らせもせずに白旗を掲げるような声明を出したのか』、『表現の自由に対する蹂躙であり、米国の安保状況に対する危険である』、『ハッキングの背後がはっきりしないが、北朝鮮と断定して相応に対処しなければならない』などと騒ぎ立て、無条件の上映を求めた」としている。「熱帯樹林の中に生息するサル顔そのもの」とは、黒人大統領を意識して使った人種差別性の強い表現である。米国がクリスマス休暇に入り、国務省の定例記者会見が開催されていないので米側の反応は確認できないが、コメディー映画が「最高尊厳」を暗殺するのと、北朝鮮憲法が定める国家最高権力機関が「談話」の中で一国の大統領を「サル顔」呼ばわりするのとは異質である。英語にはどのように翻訳されているのか調べたところ「 Obama always goes reckless in words and deeds like a monkey in a tropical forest. (オバマは、熱帯の森林のサルのように、いつも軽率な言葉を言ったり行動をする)」と訳されていた。

    「サル顔」で煽っておき、「聞きたいのだが、オバマが自分に対するテロをストーリーとした映画をどこかの誰かが作れば、また自分を直接殺害するテロを誰かが煽ろうと画策するなら、今のように『表現の自由』と『現代文明の価値』に対して騒ぎ立て、それら全てを喜んで歓迎することができるのか」と続けている。過去記事で紹介した米国務省定例記者会見での質問に近い内容であるが、「テロをストーリーとした映画」は「喜んで歓迎」しないにしても、「嫌」でも「表現の自由」を尊重とするであろう。しかし、「自分を直接殺害するテロを誰かが煽る」のであれば、これは完全にNoである。この辺り、北朝鮮がコメディ映画とテロを同一扱いしているところなど、「絶対尊厳」と「表現の自由」の扱いが米国と全く異なっていることを示している。

    次に、「我々はこの機会に再び明らかにしておく。『ソニー・ピクチャーズ』に対するハッキング攻撃は我々と何の関係もない」とし、「米連邦捜査局の表現どおり『敏感な情報源保護』のために証拠を公開できないのであれば、我々と非公開で共同調査をしても構わない」としている。FBIと北朝鮮当局が「非公開で共同調査」とは奇抜な提案である。

    そして、「現実的に体のでかい米国が、まるではなたれ小僧が鬼ごっこでもするように、恥も外聞もなく我々共和国の主要報道メディアのインターネット稼働に妨害を与え始めた」と北朝鮮の官営メディアに対して「米国による」サイバー攻撃があったことを認めた。その上で、米国務省定例記者会見のやりとりを持ち出し「米国は、今回も我々の報道メディアにハッキング攻撃を加えながら、世論の反発が高まると、卑劣にも『北朝鮮に聞いてみろ』、「米国は肯定も否定もしない』とすっとぼけている」としている。そして、「これは、既に50年代に南朝鮮に初めて核兵器を持ち込んだ時から今日に至るまであらゆる核戦争殺人装備をいつでも構わず持ち込みながらも、朝鮮半島に対する米国の核政策が『肯定も否定もしない政策』である」と核兵器の有無について米国がずっと使ってきたNeither Confirm Nor Deny(NCND)の方針と結びつけている。確かに、今回の国務省報道官の対応もNCNDの典型である。

    しかし、今回の北朝鮮に対するサイバー攻撃について「米国にある『ソニー・ピクチャーズ』が被った悲惨なハッキング事件を我々と無条件結びつけ、我々の最高尊厳を誹謗するテロを扇動する不純反動映画上映までついに強行した米国の凶悪な腹の内は明らかである」とそれが米国によるものであると断定している。

    そして最後に、『The Interview』上映がなぜ「テロ」になるのかという実におもしろい説明をしている。「それは『The Interview』が、主権尊重と内政不干渉、人権擁護を法的根幹とする国連憲章と国際法にも全面的に反する不法無法の不純反動映画であるからである。1994年に採択された『国際テロ根絶条約に関する宣言』をはじめとした反テロ条約には、民衆が支持する国家元首の生命と健康、名誉に対する侵害を国際テロと明白に規定している。今、米国が『反テロ』を唱えながら特定国家に対するテロを扇動することは、どこにも通じないダブルスタンダードの極致であり、その破廉恥性を再び白日の下にさらしたものである。『The Interview』は、米行政府のクラスの高い政治家が関与して制作されたテロ扇動手段であり、米国の対朝鮮敵対視政策に基づく新たな政治的挑発となるからである」としている。「テロ根絶条約」で確認する必要があるが、「名誉に対する侵害」も書かれているということは知らなかった。本当にそう書かれているならば、「民衆が支持する国家元首」である「元帥様」の「名誉に対する侵害」をするような映画はコメディーであれ何であれ「国際テロ」ということになってしまう。

    そして、締めくくりは例によって「テロは報復の悪循環をもたらすという。オバマは、新年に米国の地が平穏であることを望むのであれば、対朝鮮敵対視政策に基づく不純な全ての悪行を自ら解決するという立場で収拾に奔走することだ。そうすれば、全てのことが無難になるであろう。嵐が過ぎ去れば、静けさが戻るというものである」と警告とも威嚇とも取れる表現で「談話」を結んでいる。

    なお、本「談話」は、12月28日までの『労働新聞』には掲載されていない。

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    川口智彦

    Author:川口智彦
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    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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