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    「北朝鮮でインターネット接続不能、完全オフライン-監視会社」:『労働新聞』、「朝鮮中央通信」昨日よりアクセス困難に、攻撃の主体は?、米国は早期に現実的な対応措置を、『労働新聞』、「朝鮮中央通信」への攻撃には反対、米国務省、関与は曖昧に、<追記2> 『The Interview』一部劇超公開へ(2014年12月23日 「Bloomberg」)

    Bloomberg, 「北朝鮮でインターネット接続不能、完全オフライン-監視会社」、http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20141223-00000009-bloom_st-nb

    昨日朝辺りから、『労働新聞』と「朝鮮中央通信」へのアクセスが非常に困難になっている。終日不能というわけではなかったが、かなり繋がりにくい状態になっていることは間違いない。状況は、「アノニマス」により攻撃されていた時と非常に類似している。現在も両サイトには接続できない状態になっている。uriminzokkiriには接続することができているが、そこから接続されている「ネナラ(私の国)」や「朝鮮の声」には接続できない状態になっている。

    これが米国による「報復」なのかは分からない。ハッカー集団程度でもできる攻撃なので、どこかのハッカー集団がメディアで大きく報じられることを見越して、おもしろがって攻撃している可能性もある。もっといえば、SPEに対する攻撃もハッカー集団によるものであったかもしれないし、北朝鮮の関与があったとしても、それがどこまでであったのかは切り分けにくい。特に、過去記事にも書いたように、「最高尊厳」である「元帥様」の顔が溶けるシーンを敢えてリークしていることなど、北朝鮮が『The Interview』公開に反対したことの根本的な理由であることからすれば考えにくい。もちろん、偽装工作まで言い出せば切りがないが、偽装工作に「元帥様」の顔が溶けるシーンを使ってしまうのであれば、そもそも「米国の地のどこかにある」取るに足らない「芸術的価値のかけらもない」ような映画にクレームを付ける必要などなかったはずだ。

    FBIが「北朝鮮の犯行」と結論づけたのがどこまでなのか。SPEに不正アクセスしたことまでなのか、不正取得したデータを流出されたことまでなのか、はたまた「映画館攻撃予告」までしたことなのか明らかにされていない。オバマ大統領まで出てきて「報復」を云々しているのは、「映画館攻撃予告」があり、それにより上映が中止されたからであることは間違いない。米国の基本理念である「言論の自由が侵害」されたからである。また、過去記事にも書いたとおり、この手法が通用することが今回確認されてしまったので、国家組織も非国家組織(テロリスト集団)も有効かつ手軽な攻撃手段としてこれから利用する可能性がある。加えて、ハッカー集団も面白半分に実力誇示のためのイタズラをすることも考えられる。

    では、北朝鮮系インターネットサイトに対する攻撃は誰がやっているのか。これもまた分からない。「アノニマス」でもできてしまう程度のことなので、他のハッカー集団ができないはずはない。もちろん、米国政府であれば朝飯前であろう。ハッカー集団が攻撃しているのであれば、その理由はよく分かる。面白半分に実力誇示ができる絶好の機会であるからだ。しかし、米国政府によるものであるとすれば、「言論の自由」を侵害したから「言論の自由」を侵害することでその報復とするのは本末転倒である。米国のルールは、彼らにとってはグローバルなルールであるはずである。それが、北朝鮮のプロパガンダ官営メディアであるから許されるという論理は通用しない。百歩譲って北朝鮮には通用するにしても、我々のような情報を受け取る側の権利を著しく侵害していることになる。

    それにしても、uriminzokkiriだけ攻撃対象から除外しているのはなぜであろうか。同サイトが中国国内のサーバーを使っているので、中国に対する攻撃と取られることを警戒しているからであろうか。ハッキング集団であれば、そんなことは構わず攻撃をするはずであるが、この辺に対する配慮があるとすれば、米国政府による攻撃の可能性も排除できない。それとも、1つのサイトだけ生かしておき、北朝鮮のリアクションを晒そうという目論見なのだろうか。

    この状態が続けば、北朝鮮は何らかのリアクションに出るであろう。それがどのようなものになるのかは分からないが、このままでは負の連鎖に陥り、非常に危険な状態に至る可能性もある。映画会社や官営メディアに対するサイバー攻撃どころの話ではなく、物理的な衝突に発展する可能性すら否定できない。この事態は、何としてでも避けなければならない。

    米国としては、北朝鮮に懲罰を加えたいのであれば、「テロ支援国」に再登録すればよい(その効果は限定的であるが)。そして「北朝鮮の官営メディアに対するサイバー攻撃は行わない」と宣言すればよい。もちろん、本格的な報復として北朝鮮の軍事ネットを攻撃する手法もあろうが、それでは双方その被害や手の内を公開しないので、今回のようなまさに「劇場犯罪」に対する明示的な対処にはならない。

    誰がやっているにせよ、『労働新聞』や「朝鮮中央通信」サイトへの攻撃には反対である。「言論の自由」はそれを受け取る側にもあるはずだ。黒く墨塗にするのは最高機密が解除されたCIA拷問関連の公式文書だけで十分である。

    <追記>
    米国務省定例記者会見で、報復サイバー攻撃問題に関するやりとりがあった。

    北朝鮮系サイトへのアクセスが困難になっていることへの米国の関与に関する記者からの質問に米国務省報道官は、以下のように答えている。

    「大統領は、様々な報復オプションを考えていると言った。我々は公に(報復)作戦の詳細については語らないし、(北朝鮮のインターネットアクセス障害に関する報道についての)コメントもしない。我々が言えることは、我々(米国)は報復(複数)を実行するということだけである。そうした報復は、可視的であったり不可視的であったりする。私は{北朝鮮系サイトのインターネット接続障害)報道について確認はできないが、一般的にはそれが大統領が述べたことである」

    この発言からすると、米国は北朝鮮系サイトへの攻撃を否定していない。「可視的」な攻撃が北朝鮮系インターネットメディアへの攻撃であり、「不可視的」な攻撃が北朝鮮軍事ネットへの攻撃ということで、同時並行的に行われているということであろうか。

    また、米国は北朝鮮がSPEへの損害賠償をすることも求めている。記者の現在北朝鮮に課されている制裁との関連から、「どのように送金するのか」という質問に対し、報道官は「例外措置があるだろう」と答えている。

    それでは、米国の報復による「損害」への北朝鮮からの賠償請求はどうなるのだろうか。

    U.S. Department of State, Daily Press Briefing, http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2014/12/235472.htm#NORTHKOREA

    <追記2:12月24日>
    SPEが『The Interview』を「当初の計画通り25日に米国の一部劇場で公開すると発表した」と「時事通信」が報じた。しかし、「米大手映画館チェーンの多くは来場者の安全を考慮し、上映見合わせを決めているため、25日から上映するのはごく一部の独立系映画館にとどまる見通し」だという。また、SEPのCEOが「DVDやネット配信など劇場以外での提供を検討する方針」であることも伝えている。

    時事通信、「『金正恩暗殺』映画、一転公開へ=中止に批判相次ぎ―米ソニー・ピクチャーズ」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141224-00000007-jij-n_ame

    大統領に「上映中止は間違いだ」と言われ、判断を翻した形だ。観客の安全性を確保できるDVDでの販売やインターネット配信はあるのではないかと思っていたが、映画館上映まで踏み切るとは思わなかった。しかし、「独立系映画館」ということなので、規模や数も少なく、比較的警備が容易なところで上映し、安全性を確認した上で、大規模映画館にも広げていくのではないだろうか。

    サイバー攻撃をする側にとっては、インターネット配信をすることになれば、攻撃対象としやすいということになる。しかも可視的効果も絶大である。DVD販売についても、amazonなどの大手インターネット通販会社がターゲットとなる可能性はある。

    米政府は、北朝鮮に「損害賠償」を求めているが、小出しに公開していけば、『The Interview』は当初想定した以上の興行収益を上げることができることになるのかもしれない。米国大統領が言及するにまで至った映画なので、そもそも関心がなかった米国人も見るであろうし、さらに世界的にも注目度は高まっているはずである。したがって、予定した「損害賠償」分など、その収益の増加分でカバーして余るのかもしれない。民事的にそうした「計算」はしないのであろうが、この騒ぎがこの映画に対する注目度を格段に高めたことは間違いない。

    北朝鮮はそのうちに「米行政府と映画制作配給会社は、我々を装うサイバー攻撃をでっち上げ、『最高尊厳』を中傷する映画の拡散と収益拡大を画策した」とでも言い出すのかもしれない。

    一方、12月23日の米国務省定例記者会見でもこの問題について再び多くの質疑が行われた。まず、北朝鮮でのインターネット障害への米政府の関与が質問されたが、国務省報道官は「確認できない」を繰り返すだけで、インターネット障害については「北朝鮮政府に問い合わせろ」と言っている。

    『労働新聞』や「朝鮮中央通信」HPへの接続は、昨日記事を書いてしばら後から概ね良好になっており、現時点では全く問題ない(『労働新聞』と「朝鮮中央通信」で確認)。これで収まってしまうのであれば、「アノニマス」による攻撃よりもずっと軽いことになる。

    また、「可視的と不可視的報復」についても質問が出されたが、こちらについても何が可視的で何が不可視的なのかということについて報道官は明言しなかった。不可視的報復は明言できないだろうが、可視的報復については何をするのであろうか。

    それとの関連で、「テロ支援国家指定」による「効果」についても質問が出された。報道官は「その効果については金融制裁も含めて検討中」であるとしているが、可視的かつ象徴的な効果以上を期待するのは難しそうである。

    日本との関連では、SPEの本社が日本のSONYであることなどからして、日本の対応について質問されている。日本の官房長官記者会見などについては未確認であるが、日本政府はサイバー攻撃については非難するものの、それが「北朝鮮によるものであると断定することはしていない」と記者は質問している。これに対し報道官は、「とりわけ地域の国が、我々と共に立ち上がり、こうした行動は許されないという声明を出すことを歓迎する」と答えている。この発言は「FBIの調査結果に自信がある」と述べた上での発言なので、日本政府に北朝鮮を名指しで非難することを求めるものとも受け取れる。拉致問題を巡る協議が進行中の日本としては、北朝鮮を「人権」と関係ない部分であまり刺激したくないということなのだろうか。

    また、この問題に対処するための米中両政府の電話協議についても質問が出ている。記者は、米国側から中国に対して「北朝鮮のインターネット回線を中継するサーバーを停止する」、「北朝鮮に誤った行いであると(中国政府)が警告する」、「ハッカー集団を見つけ出し、中国国内にいるのならば北朝鮮に送還する」などを求めたのかと質問したのに対して、校務相報道官は「この問題についての意見の相違はあったが、こうした悪意のサイバー活動は世界の平和と安全にとって危険であるという点で一致した」と述べるにとどまった。結局、中国は今回の攻撃が北朝鮮によるものであると認めず、一般的に「サイバーテロは認めず」とするに留まったのであろう。

    おもしろかったのは、「ロシアのような米国と悪い関係にある国が、オバマ大統領を暗殺映画を制作したらどうするのか」という質問である。報道官は「そのような映画を作られることについては嫌だが、だからといって何をするわけでもない」と「表現の自由」を尊重する立場を取っている。北朝鮮の映画にも「米帝の悪人」は何人も登場するが、さすがに現職大統領のそっくりさんを登場させ、顔を溶かす映画を制作したことはない。まあ、北朝鮮が作るとそれはコメディーでなくなってしまうというところが違いなのだろうが、「芸術的価値がない」などと言っていないで、金正恩時代の新しい「創造物」として「米帝」をオチャラかすコメディー映画を制作すれば、朝鮮人民は楽しめるし、宣伝効果も期待できるというものである。ただ、「米帝」は自らもオチャラかしの対象としているところが「信念のなさ」であり偉大なところなのだが、北朝鮮にそれを期待するのは無理であろう。

    U.S. Department of State, Daily Press Briefing, http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2014/12/235508.htm#NORTHKOREA

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    川口智彦

    Author:川口智彦
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    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

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