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    「The Interview」上映中止、米映画館攻撃予告、日本のSONY本社からの要請、米国務省の反応、<追記>金正恩の顔が焼けるシーンリーク、<追記2>FBI北朝鮮の犯行と断定、オバマ北朝鮮への報復に言及、「国防委員会政治局スポークスマンの回答」 (2014年12月18日)

    過去記事でも取り上げた「The Interview」の上映が中止された。最大の原因は、映画を制作した米SONY is Entertainmentのコンピュータがハッキングされたことである。ハッキングされた事実が公表されたのは11月末であるが、SONYは金正恩暗殺部分の取り扱いにそれ以前から苦慮していたようである。

    New York Postによると、SONYのCEO平井一夫氏が同社のハリウッドスタジオに「金正恩がミサイルで爆殺される部分のリアルさを下げろ」と指示したという。同社のハリウッド・スタジオはこの指示に従い、「(金正恩)の顔が溶ける部分を削除、髪の毛が燃える部分の炎を減らした、彼の顔の残り火を減らした、焼かれて彼の頭が破裂する部分を曖昧にした、はっきり見えないように場面を暗くした」などの処理を行ったと9月28日に平井氏に報告した。

    しかし、Sony Pictures共同代表のアミ-・パスカルによると、「東京の上司からこうした指示を受けるのは25年間一緒にやって来て初めて」と漏らしたという。

    New York Post, Sony CEO demanded ‘The Interview’ tone down assassination scene, http://nypost.com/2014/12/13/sony-ceo-demanded-execs-tone-down-kim-jong-un-assassination-scene/

    そして、クリスマス上映を前にして「平和の守護者(Guardians of Peace)」が「まもなく、世界はSONY Pictures Entertainmentが制作した恐ろしい映画を目にすることになる。世界は恐怖におののくであろう。2001年9月11日の攻撃を思い出すがよい。我々は、人々にその場所(映画館)に近づかないことを勧めておく」という脅迫文を公開したという。

    Fox News, 'The Interview': Sony Corporation geniuses, what were you thinking?, http://www.foxnews.com/opinion/2014/12/17/interview-sony-corporation-geniuses-what-were-thinking/ (同ページの動画より)

    日本のSONY本社が、このような脅迫文が公開される前から金正恩暗殺部分の修正を求めていた理由は分からないが、日本を含む世界各国に展開するSONY傘下企業への攻撃(サイバーであれ物理的であれ)が行われることを予想したのかもしれない。その意味では、映画上映が未定の日本も攻撃の対象となっているわけで、十分な警戒が必要である。

    加えて、昨日の米国務省定例記者会見では、米国務省がこの映画の扱いについてSONY Pictures Entertainmet側に「指示をした」のではないかという疑惑に関する質疑が行われている。米国務省は報道官は、「(北朝鮮)は米国を継続的に威嚇している(ので)、我々は公開された情報を企業幹部に伝えることはある」としているが、「指示した」ことについては否定している。

    U.S. Department of State, Daily Press Briefing, http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2014/12/235370.htm#DEPARTMENT

    「平和の守護者」が北朝鮮のハッカーなのかは明らかではないが、北朝鮮の警告など無視して上映されるであろうと思われていた映画が大事に発展したようだ。

    DVDのリリースはあるのだろうか?

    <追記:2014年12月19日>
    金正恩が乗った軍用ヘリに砲弾が命中し、彼の顔が焼けるスローモーションのシーンがリークされた。上記の平井氏が変更指示をしたシーンかどうかは分からないが、リアルである。一方、「元帥様」をほぼ毎日見ている者にとっては、役者は元帥様に似ていない。衣服と髪型は意識しているが、顔は「元帥様」ではない。

    SONYをハッキングしたのは北朝鮮ではない可能性が高まった。北朝鮮であるのならば、ハッキングで入手した「最高尊厳」の顔が焼ける場面をリークすることなどしないであろう。もちろん、「次の作戦」に出るための工作の可能性はあるが、「最高尊厳を毀損」してまでの工作はさすがにしないのではないだろうか。

    いくつかのサイトがリークシーンを公開しているが、現時点では、下記で見ることができる。YouTubeには釣りが多かった。

    http://www.mediaite.com/tv/the-kim-jong-un-death-scene-from-the-interview-has-leaked/
    または
    http://www.theverge.com/2014/12/16/7400963/sony-hack-leaked-clip-the-interview-kim-jong-un-death-scene
    いつ削除されるか分からないので、見たい方は早めにどうぞ。

    <追記2:2014年12月20日>
    「SONYをハッキングしたのは北朝鮮ではない可能性が高まった」と書いたとたんに米FBIが「我々の調査の結果・・・北朝鮮政府が(SONYハッキング事件)に責任があると結論づけた」と発表した。

    FBI, Update on Sony Investigation, http://www.fbi.gov/news/pressrel/press-releases/update-on-sony-investigation

    それだけではなく、オバマ大統領も19日の記者会見でこの問題について触れ、「SONYの関係者には同情するが、SONY Pictures Entertainmetが上映中止したのは間違いだ」と批判し、北朝鮮は米国のコメディアンが登場する映画を攻撃するとしていることを鼻で笑いながらも、「彼らは我々に大きなダメージを与えた」と映画の上映中止による経済的ダメージだけでなく、「米国の信念である表現の自由が脅迫に屈した」という事実も認めた。その上で「我々は(北朝鮮)に対して適切なタイミングで相応の報復をする」と述べている。大統領は、報復の具体的な方法についての言及は避けたが、北朝鮮をテロ支援国家に再指定するという象徴的な行動に留まるのか、北朝鮮に対するサイバー攻撃で報復をするのかは分からない。

    the White House, President Obama Holds a News Conference(2014. 12.19. 1:30PST), http://www.whitehouse.gov/live/president-obama-holds-news-conference

    関連記事を調べていたら、The New York Timesに興味深い関連記事があった。拙ブログにも書いた時系列的な事件の展開が分かりやすく書かれている他、北朝鮮が行ったとされるハッキングの手法や信憑性に関する分析、さらに米国が北朝鮮に対して行うサイバー攻撃による報復の困難さなどが書かれている。

    The New York Times, U.S. Said to Find North Korea Ordered Cyberattack on Sony, http://www.nytimes.com/2014/12/18/world/asia/us-links-north-korea-to-sony-hacking.html?_r=0

    19日の米国務省定例記者会見でもこの問題について多くの質疑が行われた。その中に「プーチンがFBIがハッキング事件で北朝鮮を名指しした火に金正恩を招待したが」という質問がある。国務省報道官は2つの出来事の関連性への言及はしていないが、「招待」を否定していないので、プーチンが公式に金正恩を招待したという報道が出されたのであろうか。コメントで招待関連の情報を頂いた時調べてみたが、その時点ではロシアの公式メディアにこの情報はまだ見られなかった。

    U.S. Department of State, Dairly Press Briefing, http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2014/12/235448.htm#RUSSIA

    話が前後するが、北朝鮮が報じた「不正義の行為は正義の対応を誘発させるものである - 朝鮮民主主義人民共和国国防委員会政治局スポークスマンが記者の質問に答える-」を聞き直した。この報道が12月7日に出された時点では、ことがこれほど大事になるとは思わなかったので、「また言っているな」という程度で聞き流していたのだが、ここまで発展してくると、やはりきちんと紹介しておく必要がありそうだ。これについては、追って、全訳を別記事に掲載しようと思う。

    KCNA, 「부정의의 행위는 정의의 대응을 유발시키는 법이다 --조선민주주의인민공화국 국방위원회정책국 대변인 기자의 질문에 대답--」 (日本語抄訳は同サイトに出ている)

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    川口智彦

    Author:川口智彦
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    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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