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    「米国会、中央情報局の野蛮的な拷問蛮行資料を暴露」:国連の北朝鮮人権決議との関連性、<追記>北朝鮮外務省談話で反応、<追記2>米最高裁判事北朝鮮と同様の見解 (2014年12月10日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が10日、「米国会、中央情報局の野蛮的な拷問蛮行資料を暴露」という短い記事を配信した。記事の内容は以下のとおり。

    **********
    米国で中央情報局が収監者に対して行った野蛮な拷問蛮行資料が暴露され、社会的物議を醸している。

    最近、米国会上院の情報委員会は、報告書を発表し、中央情報局が9.11事件以後、119名のテロ容疑者をヨーロッパとアジアの秘密施設に監禁し、野獣的に拷問したことを暴露した。

    そのうち、26名は法的手続きも経ずに不法監禁されたという。

    報告書は、眠らせないようにし、水拷問を行うことは日常的であり、服を脱がせて鉄の鎖で縛って凍死させたり、著しくは、性拷問などが、17日以上も行われたと明らかにした。

    報告書は、中央情報局が収監者に野獣的で残酷な拷問を行ったが、テロの危機を防ぐ価値ある情報を得ることに失敗したと指摘した。

    **************

    11日の『労働新聞』には、この記事はまだ掲載されていない。

    この「報告書」の全文をダウンロードしてみたところ、499ページの膨大な報告書であった。「極秘」は解除されているが、至る所に墨塗がされている。とても全文は読み切れないので、取り合えず冒頭の「総括」の部分だけ読んでみた。それによると、「朝鮮中央通信」が伝えている内容はほぼ正しいが、収容所が「ヨーロッパとアジア」にあったということは明らかにされていない。もしかすると、後半の詳細部分に記されているのかもしれないが、もしかすると別のソースから情報を得ているのかもしれない。後述の米国務省定例記者会見では、アフガニスタン大統領やポーランド元大統領が自国内に設置されていた収容施設やそこで行われた行為について言及したということなので、この辺りをソースにしているのかもしれない。

    National Post, The CIA torture report: The full text of the Senate investigation, http://news.nationalpost.com/2014/12/09/the-cia-torture-report-the-full-text-of-the-senate-investigation/

    これと関連し、10日の米国務省定例記者会見でもやりとりが行われている。ポイントは、「米国は拷問に関与した者を訴追するのか」、「他国に訴追を求めてきた米国自身が訴追しないでよいのか」という点が中心になっている。米国務省報道官は、「米国がその事実を公表したこと」、「大統領が5年前に(拷問を伴う尋問を)止める決定をしたこと」が重要であるとし、訴追については「その権限は米司法省」にあるとし、「国務省は訴追するか否かについてはコメントしない」としている。しかし、記者は「米司法省に訴追能力があると、国連拷問問題特別調査官に言えるのか」と切り返し、人権侵害や拷問について国際舞台でダブルスタンダードが適用されて良いのかと追求している。

    この日のやりとりの中では、訴追対象国や対象者の名前は挙げられなかったが、記者が北朝鮮や金正恩を意識していたことは間違いない。米国が音頭を取り北朝鮮と金正恩を国際刑事裁判所に提訴するよう国連安保理で働きかける中、その米国が自ら深刻な人権侵害を犯した事実を公表し、それに関与した者を訴追しないのであれば、北朝鮮や金正恩を訴追することは明らかにダブルスタンダードとなる。

    また、「その事実を公表したこと」と「大統領が止めさせた」ことだけで十分であるというならば、性質こそ異なれど、拉致という重大な人権侵害についても、金正日が謝罪をし、拉致を止めさせたことだけで十分ということになってしまい、日本側が求める拉致実行犯の訴追などとてもできないことになってしまう。

    国務省報道官は、「報告書の公開を止めさせようとしたのではないか」との質問に対しては「それは間違いだ」とはっきりと答えているが、「公開のタイミングについては(米上院情報委員会委員長)のフェインステイン上院議員が決めた」としている。同上院議員がこのタイミングで公開したのが米国内政治と関連するのか、それとも国際政治と関連するのかについてはきちんと調べていないが、国際刑事裁判所への金正恩訴追の動きとだけ関連させるのであれば、決して良いタイミングであったとはいえない。

    U.S. Department of State, Daily Press Briefing, http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2014/12/234934.htm#DEPARTMENT2

    北朝鮮はこのところ、白人警官による黒人被疑者に対する過激な対応に抗議するデモが米国で発生していることに言及しながら、米国式「人権」や「民主主義」を攻撃しているが、自らの非人道的な行為が自らの手で「暴露される」システムこそが民主主義なのであろう。

    「我が国に人権問題は存在しない」と言い切れる国などないはずだ。

    <追記:12月13日>
    やはり、北朝鮮はこの問題をさらに大きく取り上げ、13日には『労働新聞』に「朝鮮民主主義人民共和国外務省スポークスマン談話」が掲載された。

    『労働新聞』、「조선민주주의인민공화국 외무성 대변인담화」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-12-13-0015&chAction=S

    同「談話」では、「米中央情報局」が行ったとして「報告書」に掲載された拷問を列挙し、「米中央情報局の広範囲な拷問蛮行を暴露した報告書が6000ページを超えるというが、米国の人権蹂躙の実態に照らしてみるなら、それは氷山の一角に過ぎず、米国の人権蹂躙の実状を全て明らかにするためには6000ページではなく、6万ページでも足りないだろう」と非難している。

    そして、「国連人権高等弁務官と反テロでの人権保護増進に関する特別報告者、国際アムネスティーなどの人権団体と多くの国々は、米中央情報局の極悪な人権侵害犯罪を指示し、執行した全ての責任のある者を速やかに審判台に立たせ、厳しく処罰することを求めている」としている。

    同「談話」の冒頭では、「こうした非人間的な中世的拷問行為が米国大統領の承認と庇護の下で体系的、計画的に広範囲にわたり行われた」としているので、「米国大統領」も「審判台に立たせる」ということなのであろう。

    <追記2:2014年12月14日>
    「Yahoo!ニュース」を読んでいたら、CNNが配信した『「拷問」は状況次第で容認 核テロなどで 米最高裁判事』という記事があった。記事によると、米最高裁のアントニン・スカリア判事は「人権はこうあるべきとする社会の考え方はそれぞれの社会に委ねられるはずだ」と主張したとのことである。この人権の普遍性を否定する主張は、北朝鮮の主張と全く同じであり、後日、米国務省定例記者会見などで問題視される可能性がある。

    Yahoo!ニュース(CNN.co.jp配信)、「『拷問』は状況次第で容認 核テロなどで 米最高裁判事」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141213-35057859-cnn-int

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    Author:川口智彦
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    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
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