「<テレビ連続劇>我々の女子サッカーチーム」:2011年に制作された女子サッカーチームを扱ったドラマ、とてもおもしろい (2014年10月13日 「朝鮮中央TV」)
10月13日から「朝鮮中央TV」で「我々の女子サッカーチーム」というドラマを放送している。北朝鮮女子サッカーチームのアジア大会優勝に合わせたタイムリーな放映であるが、優勝してから随分短い期間で制作したものだと思っていた。というのも、このドラマが金正恩時代のドラマと遜色ないほどよく出来ていることに加え、韓国・統一部のサイトで確認しても「第1部」は「再放送」として掲載されていなかったからである。しかし、「第2部」からは「2011.6.20の再放送」と掲載されているので、「第1部」は同月19日の放送であるにもかかわらず、同サイトが「再放送」と記載を付け忘れたということのようだ。
昨日は、「第3部」が放送され、今日は「第4・5部」が放送される予定となっている。過去記事で紹介した、女子サッカー優勝試合録画放送の解説者「教授・博士、李ドンギュ先生」の解説では、2011年、北朝鮮の女子サッカーチームは特段の活躍をしていない。それにもかかわらず、この時期にこうした「テレビ連続劇」が制作されたというのは興味深い。やはり、北朝鮮は継続的に女子サッカー育成に力を入れてきたことの証左であろう。
まず、このドラマを見て思ったのは、登場人物が「FILA」を中心とした海外ブランドのトレーナーなどを着用しているということである。
「第1部」でチームメンバーもFILAのサッカーウェアを着用している。正面で話しているのは、このドラマの主役となる新「責任家督」。この監督は着任したばかりなので人民服を着ているが、その後はFILAのトレーナーを着て登場することが多くなる。

Source: KCTV, 2014/10/13放送
FILAの公式HPには「フィラは、1911年、イタリアのビエラで生まれました」と書かれているが、Wikipediaによると2007年にFILA Koreaに買収されている。
FILA公式HP、http://www.fila.jp/aboutfila/index.html
よって、このドラマが制作された2010~2011年は、経営権が韓国に移転していた時期であるばかりか、南北関係が悪化に転じた李明博政権期でもある。こうした状況で、ドラマに登場する北朝鮮チームがこぞってFILAを着用したのはなぜであろうか。
FILA以外では、「クウォルサン」女子サッカーチームの「責任監督」がナイキのロゴがついた帽子を着用している。

Source: KCTV, 2014/10/15放送
「我々のもの」を着用せず、国際的なブランドを着用させているのは、金正日が北朝鮮のスポーツの世界化を意識していたからなのかもしれない。
ストーリーであるが、大変おもしろい。「第1部」では、アジア大会で銀メダルを取った北朝鮮男子サッカーチームが全く紹介されない理由が何となく分かった。
「第1部」の中で北朝鮮女子サッカーチームが「国際試合で優勝できずに」平壌駅に戻ってきた時の様子。選手は暗い顔で列車から降りてきており、出迎えの人数も少ない。「第1位になれなかったのは残念だったが・・・」と「部長」が言っているので、第2位だったということだろう。

Source: KCTV, 2014/10/13放送
そして「総話」が行われ、「前回は3位、今回は2位、国際試合で順位を上げてくるのには、血と汗がにじんだ努力があったことは良く分かっている」と語っているので、第2位であったことが確認される。やはり北朝鮮では金メダル以外は歓迎されないのであろう。ましてや今回「南朝鮮」に敗れた男子サッカーチームはそういうことなのだろう。

Source: KCTV, 2014/10/13放送
新「責任監督」は、「頭脳サッカー」を標榜し、物理学の座学もする。

Source: KCTV, 2014/10/13放送
居眠りをしていた選手(左)が問題に答えるよう指名されるが、友人(右)が「この子は、そういう問題が嫌いで、サッカー選手になったんです」と言い訳をする。このドラマに登場する女性は一部の試合シーンを除いては、俳優を使っているが、彼女たちの話や演技がとてもおもしろい。

Source: KCTV, 2014/10/13放送
「前回の試合では相手チームと体育能力的には互角であったが、知能戦で敗れたんだ。皆さんは、数学や物理学について専門学校生水準の知識は持たなければならない。これから毎日10問ずつといてもらう」という新「責任監督」の言葉に、「はい」と元気よく返事をする選手たち。

Source: KCTV, 2014/10/13放送
「第1部」から「第2部」にかけては、女子サッカーチームが力を発揮するにはスター選手が必要なのではなく、皆が一丸となって戦うことが必要であるということを教えていく。そのため、わざわざ「クウォルサン」チームとの戦いで負けるという状況を作り出し、選手の精神をたたき直す。
その過程で、ちょっとした「恋愛」らしきものも芽吹くが、「悪」として処理されてしまう。女子チームの選手を「自分の誕生日だ」と嘘をついて誘い出した新「責任監督」の息子(この息子もサッカー選手)。実は、「恋愛」ではなく「深い事由」があるのだが、結局、この息子は一度サッカーを中断して「突撃隊員」(第3部までではここは不明)となる。

Source: KCTV, 2014/10/13放送
女子チームの中に、ボールを怖がる選手がいる。農村で暮らしていた時にトラクター事故に遭い、そのトラウマが残っているという設定である。「部長」はこの選手を抜くことを提起するが、新「責任監督」は根性を入れ直す特訓をする。
新「責任監督」の車に乗せて女性選手を連れ出す。シートベルトはしていない。

Source: KCTV, 2014/10/15放送
銅像(当然、大元帥様の銅像ではない)に向かって車を走らせ、急ブレーキを掛けギリギリで止まる。

Source: KCTV, 2014/10/15放送
シートベルトを締めて、この選手に同じことをやらせようとするが、女子選手は「責任監督同志が乗っていては出来ません」と新「責任監督」を降車させる。

Source: KCTV, 2014/10/15放送
車は北朝鮮には珍しいオートマ車であった。トラクター以外の運転経験の女子選手に運転させるという点では現実的だが、新「責任監督」の車がオートマというのは若干非現実的か。

Source: KCTV, 2014/10/15放送
新「責任監督」は自分が目標物となり訓練をする。下の写真は車が停止した地点の車内からの映像。

Source: KCTV, 2014/10/15放送
車外から見るとこうなっている。細かい話ではあるが、随分距離感が違っている。

Source: KCTV, 2014/10/15放送
ともかくも、この特訓で女子選手はトラウマを克服した。
「第4・5部」の展開が楽しみだ。
昨日は、「第3部」が放送され、今日は「第4・5部」が放送される予定となっている。過去記事で紹介した、女子サッカー優勝試合録画放送の解説者「教授・博士、李ドンギュ先生」の解説では、2011年、北朝鮮の女子サッカーチームは特段の活躍をしていない。それにもかかわらず、この時期にこうした「テレビ連続劇」が制作されたというのは興味深い。やはり、北朝鮮は継続的に女子サッカー育成に力を入れてきたことの証左であろう。
まず、このドラマを見て思ったのは、登場人物が「FILA」を中心とした海外ブランドのトレーナーなどを着用しているということである。
「第1部」でチームメンバーもFILAのサッカーウェアを着用している。正面で話しているのは、このドラマの主役となる新「責任家督」。この監督は着任したばかりなので人民服を着ているが、その後はFILAのトレーナーを着て登場することが多くなる。

Source: KCTV, 2014/10/13放送
FILAの公式HPには「フィラは、1911年、イタリアのビエラで生まれました」と書かれているが、Wikipediaによると2007年にFILA Koreaに買収されている。
FILA公式HP、http://www.fila.jp/aboutfila/index.html
よって、このドラマが制作された2010~2011年は、経営権が韓国に移転していた時期であるばかりか、南北関係が悪化に転じた李明博政権期でもある。こうした状況で、ドラマに登場する北朝鮮チームがこぞってFILAを着用したのはなぜであろうか。
FILA以外では、「クウォルサン」女子サッカーチームの「責任監督」がナイキのロゴがついた帽子を着用している。

Source: KCTV, 2014/10/15放送
「我々のもの」を着用せず、国際的なブランドを着用させているのは、金正日が北朝鮮のスポーツの世界化を意識していたからなのかもしれない。
ストーリーであるが、大変おもしろい。「第1部」では、アジア大会で銀メダルを取った北朝鮮男子サッカーチームが全く紹介されない理由が何となく分かった。
「第1部」の中で北朝鮮女子サッカーチームが「国際試合で優勝できずに」平壌駅に戻ってきた時の様子。選手は暗い顔で列車から降りてきており、出迎えの人数も少ない。「第1位になれなかったのは残念だったが・・・」と「部長」が言っているので、第2位だったということだろう。

Source: KCTV, 2014/10/13放送
そして「総話」が行われ、「前回は3位、今回は2位、国際試合で順位を上げてくるのには、血と汗がにじんだ努力があったことは良く分かっている」と語っているので、第2位であったことが確認される。やはり北朝鮮では金メダル以外は歓迎されないのであろう。ましてや今回「南朝鮮」に敗れた男子サッカーチームはそういうことなのだろう。

Source: KCTV, 2014/10/13放送
新「責任監督」は、「頭脳サッカー」を標榜し、物理学の座学もする。

Source: KCTV, 2014/10/13放送
居眠りをしていた選手(左)が問題に答えるよう指名されるが、友人(右)が「この子は、そういう問題が嫌いで、サッカー選手になったんです」と言い訳をする。このドラマに登場する女性は一部の試合シーンを除いては、俳優を使っているが、彼女たちの話や演技がとてもおもしろい。

Source: KCTV, 2014/10/13放送
「前回の試合では相手チームと体育能力的には互角であったが、知能戦で敗れたんだ。皆さんは、数学や物理学について専門学校生水準の知識は持たなければならない。これから毎日10問ずつといてもらう」という新「責任監督」の言葉に、「はい」と元気よく返事をする選手たち。

Source: KCTV, 2014/10/13放送
「第1部」から「第2部」にかけては、女子サッカーチームが力を発揮するにはスター選手が必要なのではなく、皆が一丸となって戦うことが必要であるということを教えていく。そのため、わざわざ「クウォルサン」チームとの戦いで負けるという状況を作り出し、選手の精神をたたき直す。
その過程で、ちょっとした「恋愛」らしきものも芽吹くが、「悪」として処理されてしまう。女子チームの選手を「自分の誕生日だ」と嘘をついて誘い出した新「責任監督」の息子(この息子もサッカー選手)。実は、「恋愛」ではなく「深い事由」があるのだが、結局、この息子は一度サッカーを中断して「突撃隊員」(第3部までではここは不明)となる。

Source: KCTV, 2014/10/13放送
女子チームの中に、ボールを怖がる選手がいる。農村で暮らしていた時にトラクター事故に遭い、そのトラウマが残っているという設定である。「部長」はこの選手を抜くことを提起するが、新「責任監督」は根性を入れ直す特訓をする。
新「責任監督」の車に乗せて女性選手を連れ出す。シートベルトはしていない。

Source: KCTV, 2014/10/15放送
銅像(当然、大元帥様の銅像ではない)に向かって車を走らせ、急ブレーキを掛けギリギリで止まる。

Source: KCTV, 2014/10/15放送
シートベルトを締めて、この選手に同じことをやらせようとするが、女子選手は「責任監督同志が乗っていては出来ません」と新「責任監督」を降車させる。

Source: KCTV, 2014/10/15放送
車は北朝鮮には珍しいオートマ車であった。トラクター以外の運転経験の女子選手に運転させるという点では現実的だが、新「責任監督」の車がオートマというのは若干非現実的か。

Source: KCTV, 2014/10/15放送
新「責任監督」は自分が目標物となり訓練をする。下の写真は車が停止した地点の車内からの映像。

Source: KCTV, 2014/10/15放送
車外から見るとこうなっている。細かい話ではあるが、随分距離感が違っている。

Source: KCTV, 2014/10/15放送
ともかくも、この特訓で女子選手はトラウマを克服した。
「第4・5部」の展開が楽しみだ。