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    短編小説「火の約束」4:チャンジャ江と元山のライトアップ、「将軍様」の功績、「強盛大国の大門」を叩く (2014年10月2日 「uriminzokkiri」)

    (第4部)
    雑誌『青年文学』2014年第1号収録
    短編小説「火の約束」 作:金イルス

    火の約束
    火の約束
    Source: uriminzokkiri, http://www.uriminzokkiri.com/index.php?ptype=gisa5&no=87073

     人民軍部隊に対する現地指導を終えて戻ってこられた金正恩同志は、車をムンチャン基礎食品工場へと向かわせた。
     「ヒョンジンドンム、時間がないが、ついでにムンチャン基礎食品工場にもう一度立ち寄ってみましょう。」
     金正恩同志のお言葉にヒョンジンは意気込んで答えた。
     「あの働き者の支配人は、きっと色々なことをしたと思います。」
     何日か前、ヒョンジンは金正恩同志から命を受けて元山と東海岸地区を回ったついでに、時間を作ってムンチャン基礎食品工場にも立ち寄った。支配人が原料基地に出かけていたので、直接会うことはできなかったが、一新された工場の内外のどこからも、支配人のきちんとした仕事ぶりと誠実な汗の果実、またその苦労を感じ取ることができた。
     「江原道の人が答えました。自らの力で元山青年発電所を打ち立てたのもそうだし、電化された新たな村もそうだし・・・元山青年発電所を視察された将軍様も本当に喜ばれました。」
     車窓を流れていく丘陵地帯を見ておられた元帥様が再び続けられた。
     「今、元山はライトアップしようと懸命になっていると思います。」
     「はい、いたるところでライトアップをしようと、元山市全部が動いています。今となっては、工場の名前も変えなければならないと、水自慢しかできなかった『水の江原道』でしたが、これからは電気の光の自慢をする『電気の灯火の江原道』と呼ばれなければならないと大騒ぎしています。」
     ヒョンジンは、まるで自分の自慢をするように肩を張りました。
     「昨日は、慈江道がチャンジャ江の火の夜景を『自慢道』にしていたのに、今日は自分の江原道が『強盛道』になって、肩を張って話しているのを見ると、熱誠がただものではありませんね。」
     金正恩同志の口元に微笑が浮かんだ。
     「将軍様は、電化の万歳を叫ぶそんな日を見通され、何年も前に元山市のライトアップに関する課業を命じられました。幸福の創造者にまずその恵沢を謳歌してもらえるようにしようという深い配慮でした。『電気の灯火の江原道』、『強盛道』・・・とてもロマンが溢れているではありませんか!そこには涙を流さず聞くことができない体験もあり、自分の力を信じ、光明な明日を信じる人々の笑いとロマンがあります。」
     鳥が東の方に向かって飛んでいた。まだ冬は明けていなかったが、地中の深いところで動き出した春の夢を見る自然の力強い息吹と呼吸が、躍動する羽ばたきの中から伝わってくるようであった。
     「数日間この地区を出張で回る中で、電気の灯火の意味についての考えも深まり、新たな感動も感じたのだが、どのようにお話申し上げたらよいものか・・・ともかく電気の灯火、明るく照らされる野山、明るくなる人民の表情、これが私に衝撃的でした。チャンジャ江の火の夜景、平壌の火の夜景に続き、元山の火の夜景が連続して広がり・・・このように全国が明るくなり、人民の表情がさらに明るくなったなあ、そう思うと、胸が張り裂けそうで涙が流れ出ました。」
     真摯に応じて下さる金正恩同志のお言葉に余裕を感じたヒョンジンは、そのまま激情と感じたままを吐露したかった。
     「火、火の意味か・・・何か新しく示唆するものがあるな。よい知らせを伝えてくれてありがとう。」
     金正恩同志は、しばらく間を置いて、明快な語調で続けられた。
     「・・・ヒョンジンドンムが言ったように火は喜びであり、希望の力です。元山だけではありません。将軍様は今後、会寧、南浦、このようにライトアップを拡大していく構想を持っておられます。その火は、単に消えていた灯を再び付けるということではありません。また、皆が豊かになりライトアップをするのでもありません。そこには、自分の国の青い空も、我々の力で切り開き、その空の下の作物も我々の手で育てようという、つまり、人民を幸福の未来へと鼓舞されようとする将軍様の意図が刻み込まれているのです。」
     いつのまにか車は文スキ支配人が働いている基礎食品工場に着いていた。
     ほぼ1年ぶりの嬉しい再会であった。
     「敬愛する大将同志!・・・」
     思いがけなく金正恩同志にお目にかかることができた文スキは、挨拶もきちんとできないまま呆然としていた。目だけパチパチしながら、夢なのか現実なのか分からない様子であった。しかし、金正恩同志はお咎めにならず、工場を見ようと言われ、彼女の手を握って導かれた。
     「いいか、私が来たことは言わずに静かに!」
     それほど広くない工場の構内と生産現場を全て見て回られた金正恩同志は、満足したように微笑を浮かべられた。
     「工場のどこを見ても気が引き締まるのは、やはり支配人がよい仕事をしているからです。」
     そのお言葉を聞いて、支配人は目を潤ませました。
     「大将同志、私共は、ただ将軍様が灯して下さった火を抱いて仕事をしただけです。」
     感情が高まった時にする癖なのか、彼女の言葉は「ええと」で始まり続いた。
     「ええと・・・その日、私が工場に戻ってきて将軍様の綿の手袋の話をすると、従業員が皆泣きました。大将同志が胸を痛められた話まですると、泣き声の海となってしまいました。しかし、その涙が力となったので、設備更新も生産現代化も、ええと、問題ではありませんでした。そして、少しでも将軍様にお喜びいただけるのではないかと思いつつも、再び問題がないか点検をして改善をしていきました。」
     金正恩同志は、明るい目つきで首を縦に振られました。素朴ではあるが、剛毅な女性支配人のその気持ちに何よりも感心されたのです。
     「多くの仕事をしたということが分かります。本当に女性の力で大変なことをしました。そうだよな、ヒョンジンドンム?」
     彼らの成果を労われようとする金正恩同志の方を見ながら、ヒョンジンも共感して微笑を浮かべた。
     「私たちの将軍様でなければ、ええと、私どもに生産正常化の火を灯して下さることはおできにならなかったでしょう。本当に、将軍様が小さな地方産業工場に過ぎない私共の工場に来られ、新しい創造の火を灯して下さったおかげです。」
     続けて彼女は、表彰休暇で家に帰ってきた同じ工場のある女性の息子である兵士の話をした。
     「・・・休暇の荷物を入れたリュックサックを置くと、直ぐにライトアップ研究者たちと寝食を共にしたその兵士は、軍務に戻る日に工場の人々にこんな言葉を残しました。『私は自分の故郷、自分の家を明るくライトアップして軍務に戻ります。この火、偉大な将軍様が抱かせて下さった火が、私の心臓を燃やしている限り、祖国の防衛体制はいつでも鉄壁です。』この言葉を聞くと、ええと、涙が溢れだしてきました。私たちが喜ぶその火が、ええと・・・私たちの将軍様のご苦労の代償のようで・・・」
     「ええと」を連発しながら続けたスキ支配人の言葉が、突然、その流れを断った。将軍様への思いに濡れる彼女の心中を推し量られた金正恩同志も、その手袋にまつわる出来事を思い出されて胸が締め付けられた。
     「本当に私たちの火には、その根底に涙の池があるのです。幸福の火を灯して下さろうと私たちの将軍様がかき分けられた冷たい雪と雨、吹雪の下から今日の祖国繁栄の火が灯り、人民の笑い声が生まれ出たのではありませんか。だから、我々人民は、元山のライトアップのニュースを聞き、皆が将軍様の労苦の上に咲いた火の花だと涙をこらえることができません。」
     ヒョンジンのむせび泣くような重い声であった。
     金正恩同志は、そのとおりだというように首を振られ、文スキに視線を向けられた。
     「将軍様が抱かせて下さった火!本当に意味深い言葉です。敵共が社会主義の最後の火が消える日が来たと『崩壊』のカウントダウンをしていた時、誰がこんな明るい今日を見通すことができたでしょうか。だからこそ我々は、明るくなる祖国の野山、移り変わる新しい姿を見せる今日の社会主義の火をぼんやりと見ることはできないのです。チャンジャ江の火の夜景や元山のライトアップは、朝鮮がどのように赤旗を守ってきたのかを火の言葉として刻み込んだ歴史であり、風雨、吹雪をもものともせず先軍長征千万里を歩んでこられた将軍様の献身により成し遂げられた希望の創造物なのです。」
     文スキとヒョンジンの胸は、その場の雰囲気を一変させ、火について深遠なる世界についてお話になる金正恩同志に魅了された。
     しばらく深い追憶の中で思索をしておられた金正恩同志は、情緒的な語調で続けられた。
     「今は、首領様を失った後、血の涙を流しながら将軍様がタバクソル守備隊に向かわれた時とは違います。試練の暗闇は消え去り、今日、我々は強盛大国の夜明けを迎える山頂に立っているのです。苦難の千里を超え、幸福の万里を目前にした直線走路に入っているのです。幸福は待っていれば来るものではなく、創造で迎えるものです。金亨稷先生が息子の代で出来ないのなら、孫の代で革命を最後まで貫徹しなければならないとおっしゃったように、革命はひ孫の代まで続けなければならないとおっしゃった将軍様のお言葉が毎日、毎時、私の心臓を力強く鼓動させています。強盛大国を目前に眺めながら、我々は走っています。今、その大門を叩く時が来ました。晴れやかな気持ちで力強く叩いてみようではありませんか。これは、将軍様の意志なのです。」
     周囲を見回される金正恩同志の目は、確信と意志の光で力強く満ちていた。
     「今日、支配人ドンムと将軍様にお喜びいただけるようなよい知らせをお伝えしたのですが、僕も答礼として見せたいものがあります。強盛大国の大門に入る入城式の宴会とでも言うか・・・夕方、みんなでその場所に行きましょう。」
     「?!」
     その日の夜、とうとう我々式の新しい祝砲発射プログラムで祝砲の芸術化、造形化、律動化を最高の水準で完璧に実現した最終試験発射が成功裏に行われた。発射課程がプログラム化され、歌まで組み合わされた新スタイルの祝砲であった。

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    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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