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    「米国公民ペ・ジュンホ、病気治療を終え再び教化所へ、『朝鮮政府が受け入れられる特使派遣』を求める」:ペ・ジュンホの体調、治療費問題、カットされた核攻撃目標、日朝関係に配慮か?、米国務省の反応、米朝関係が動くのか? (2014年7月31日 「朝鮮新報」)

    『朝鮮新報』記者が懲役15年の刑を受け北朝鮮に抑留されている韓国系米国人ベ・ジュンホにインタビューをし、彼の発言を伝える記事を同紙に掲載した。

    『朝鮮新報』、「미국공민 배준호 병치료를 마치고 다시 교화소로 《조선정부가 수용할수 있는 특사파견》을 호소」、http://chosonsinbo.com/2014/07/sk73-7/

    ペ・ジュンホは3月29日から病気治療のために「平壌親善病院」に入院していたが、「近日中に特別収容所に収容される」ということである。彼は、「収容所生活」をしている間に「85キロだった体重が2ヶ月間で15キロ減り、現在は75キロ」だという。このように体重が減った一因として「今まで入院治療費を支払えないでいることについて、精神的負担感もある」と語ったとのことだ。北朝鮮は「治療費は無料」のはずなのだが、外国人や受刑者は有料なのかもしれない。

    彼は「(自身の問題が)未だに解決の糸口さえつかめていない状況について残念に思い、自分は米国政府に捨てられたように感じている」と語ったという。しかし、「これまで米国政府が努力をしてきたことについてはありがたく感じており『米国政府が早く朝鮮政府が受け入れられる特使を派遣し、自分の問題を解決してくれることを要請する』」とも語り、北朝鮮政府に対しては、「家族との電話通話や入院治療など、人道主義的な措置を取ってくれたことについてありがたく思い、家族をはじめとした多くの人々の関心と努力があったので今まで教化所生活に耐えることができた」と語っている。

    北朝鮮は、このところ対米攻撃宣伝のレベルを高めている。例えば、7月27日に開催された「朝鮮人民軍陸軍、海軍、航空及び反航空軍、戦略軍将兵たちの決起大会」で黄炳瑞が「もし米帝が核航空母艦や核打撃手段をもって我々の自主権と生存権を威嚇するなら、我々人民軍隊は悪の総本山であるホワイトハウスとペンタゴンに向けて、太平洋上に展開する米帝の軍事基地と米国の大都市に向けて(複数の)核弾頭ロケットを発射することになる」(『労働新聞』、「백두산총대의 위력으로 전승의 7.27을 조국통일대업의 승리로 빛내여가자 조선인민군 륙군,해군,항공 및 반항공군,전략군 장병들의 결의대회 진행」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-07-28-0006&chAction=S)と演説している。しかし、「朝鮮中央TV」で放送された「録画実況」を見ていると「ホワイトハウスに向けて」とだけ言っており、「ペンタゴン」と言ったと思われる部分はカットされている。

    「朝鮮人民軍陸軍、海軍、航空及び反航空軍、戦略軍将兵たちの決起大会」で演説する黄炳瑞
    2014-07-28-13flv_000991764.jpg
    Source: KCTV, 2014/07/28放送

    また、朝鮮人民軍戦略ロケット軍司令官、金ラクギョン上将の演説でも「ホワイトハウスとペンタゴンに向け」と「太平洋上の米軍軍事基地に向け」の間がやはりカットされている。

    演説をする朝鮮人民軍戦力ロケット軍司令官、金ラクギョン上将
    2014-07-28-13lv_001851580.jpg
    Source: KCTV, 2014/07/28放送

    両者の演説原稿に入っていた「核攻撃目標」が共にカットされているのは興味深い。黄炳瑞演説で「ペンタゴン」がカットされ、金ラクギョン演説でカットされていないのは、前者の演説音声をペンタゴンまでカットしないと上手く続けることができなかったからであろう。すると、「ペンタゴン」と「太平洋上に展開する米帝の基地」に何かまずい「語句」が入っていたということになる。可能性としては「南朝鮮にある米帝の基地」と「日本にある米帝の基地」があり得るが、「日本にある米帝の基地をはじめとした、太平洋上に展開する米帝の基地」と言っていた可能性が高い。というのは、昨年、日朝関係に動きが見られなかった時期には「日本にある米帝の基地」も含まれていたからである。もし、この部分が北朝鮮の「報道」でカットされているのならば、明らかに日本に対する配慮である。

    このように米国を軍事的レトリックで刺激する一方で、上記のようにペ・ジュンホを使って米国の世論に揺さぶりを掛ける戦術にも出ているようだ。

    『朝鮮新報』に掲載されたインタビューについては、7月31日の米国務省定例記者会見でも質問として出され、米国務省報道官は30日にペ・ジュンホの家族と国務省担当者が接触をしたと語った。

    また、昨今の日朝交渉の進展について記者が「日本の北朝鮮との二国間人道問題に関する交渉において、進展の可能性が見えているなか、米国は対北朝鮮政策で何の進展もみせていない非難されているが、そろそろ動き出す時期ではないのか」と質問したのに対し、報道官は「確かにそうではあるが、答えるのが難しい質問だ」と答えている。これまでは、「ボールは北朝鮮の側にある」と「戦略的忍耐政策」を続ける意向を繰り返し示してきたが、今回はこの言葉は出さなかった。記者は、「昨日、グリン・デイビスとボブ・キングが米下院で北朝鮮政策で何の成果も上げていないと責められたが」とも質問しているので、オバマ政権が主として国内的な要因により「戦略的忍耐」から「積極政策」への転換を模索しているのかもしれない。いずれにせよ、ロシアと中東で手一杯のオバマ政権は、これ以上のトラブルを好ましくないと考えているはずである。

    U.S. Department of State, Daily Press Briefing, http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2014/07/230071.htm#NORTHKOREA

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    Author:川口智彦
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    2021年1月11日から「総秘書同志」
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