転載「すべての日本人に関する包括的かつ全面的な調査のための「特別調査委員会」が設置されたことについて」:「朝鮮中央通信」日本文記事の転載 (2014年7月4日 「朝鮮中央通信」)
「朝鮮中央通信」が「特別調査委員会」の詳細に関する「記事」を掲載した。朝鮮語の他に英語、中国語、スペイン語、日本語で配信している。今回は、同通信が掲載している日本文をとりあえずそのまま転載しておく。朝鮮語版と比較してみたが、正確に翻訳されている。以下、コメントを書き込んでいくことにする。( )内は著者の注釈とコメントである。
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【平壌7月4日発朝鮮中央通信】朝日政府間の合意に従って、共和国は2014年7月4日から「特別調査委員会」を設け(原文:組織し)てすべての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を開始することになる。
1.「特別調査委員会」の権能
「特別調査委員会」は、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会から、すべての機関を調査し、必要に応じて当該機関および関係者をいつでも(原文:任意の時に)調査(原文:調査事業)に動員することのできる特別な権限が付与される。
(日本政府が配付した資料には、「北朝鮮の最高指導機関である国防委員会から」と記されているが、北朝鮮の報道ではこの部分についての記述はない。自明なので省かれただけであろう。「国防委員会第1委員長」は金正恩なので、形式的には金正恩の権限が及ぶ「委員会」と解釈することができる。)
2.「特別調査委員会」の構成体系と主要メンバー
1)「特別調査委員会」の構成体系
「特別調査委員会」は、国家安全保衛部、人民保安部、人民武力部、人民政権機関をはじめ30人程度の当該機関の人員で構成し、中央に次のような4つの分科と各道を中心に必要な市・郡に支部を置く。
―分科構成
○日本人遺骨分科
国土環境保護省、人民政権機関、赤十字会、社会科学院、人民武力部など、当該機関の関係者
(林野に埋葬された遺骨収集に「国土環境保護省」、地方での調査協力を得るための「人民政権機関」、日本との連絡窓口となる「赤十字会」、歴史的な検証が必要な場合「社会科学院」、軍管轄地域の調査や「建設軍人」は件要請をする「人民武力部」、地方の調査協力を要請する「人民政権機関」ということであろう)
○残留日本人および日本人配偶者分科
赤十字会、人民保安部、人民政権機関など、当該機関の関係者
(各機関の上記役割に加え、戸籍等を管理する警察組織としての「人民保安部」)
○拉致被害者分科
国家安全保衛部、人民保安部、最高検察所、保健省、人民政権機関の当該の関係者
(「特別調査委員会」自体に「特別な権限」が付与されているにもかかわらず、それをさらに担保するための「国家安全保衛部」。「国家安全保衛部」は「国防委員会」直属の常設機関である。特に、拉致に関わった「軍部や特務機関」の調査には、張成沢をも処罰した「国家安全保衛部」の田んぼが絶対的に必要となる。「最高検察所」をなぜ含めたのか今ひとつ分からないが、司法警察の最高機関を含めることで司法関係の記録調査を行えるようにしたのか、場合によっては、拉致に関与したり、拉致被害者に対する不法行為を行った者を罰する目的なのかもしれない。「保健省」は、まずは拉致被害者の健康状態チェックが目的であろうが、亡くなっており遺骨として返還される場合にはDNA鑑定などに関与させるつもりなのかもしれない。)
○行方不明者分科
人民保安部、国家安全保衛部、赤十字会、人民政権機関の当該の関係者
―支部構成
安全保衛部、人民政権機関など、当該機関の関係者
<追記>
あまり気にしなかったので書かなかったのだが、日本側資料と北朝鮮側資料で「分科」の順が異なるという指摘がある。この部分のすり合わせがきちんとできていなかったのか、あるいはいずれか一方が順序を入れ替えたのかは不明である。安倍政権とすれば「拉致問題」をトップにした方が国民に対する説得力(同時に、政権の宣伝にも繋がる)があるし、北朝鮮としては、成果を出しやすい(さらにいえば、墓参りという形で現在進行中)の「遺骨収集」をトップにした方が今後の交渉においても説明がしやすくなる。
それよりも注目すべきは、各「分科」を構成している組織で、「拉致被害者分科」のトップに「国家安全保衛部」を置いていることに意義がある。一つ下の「行方不明者分科」では「国家安全保衛部」と「人民保安部」の順序が逆転していることからも、「拉致被害者分科」に最高の権威付けをしていることは間違いない。
******
2)「特別調査委員会」の主要メンバー
委員長 徐大河 朝鮮民主主義人民共和国国防委員会安全担当参事兼国家安全保衛部副部長
(「参事」という職責は、「大使館参事」という程度でしか北朝鮮報道の中に登場しない職責である。web「朝鮮語大辞典」で調べると「(一部の国家機関で)一定の部門の事業を研究し、当該責任幹部に意見を提出することを基本任務とする職位またはその職位にある者」と書かれている。このことからすると、徐大河は今回の「特別調査委員会」発足と関連し、「参事」を任命され「国防委員会」にコミットされるようにした可能性はある。マ・ウォンチュンが「設計局長」であるように、「国防委員会」にも「局」があるはずであるが、「安全担当」と曖昧な表現を使っているのもそれとの関連なのかもしれない。ともあれ、「国家安全保衛部副部長」が要職であることは間違いない。本名ではない可能性もある。)
副委員長 金明哲 国家安全保衛部参事
(金明哲は、2012年4月に「少将」昇格者のリストの中で紹介されている。単に同姓同名の可能性はある。上記と同じ「参事」という職責である)
副委員長 朴永植 人民保安部局長
日本人遺骨分科責任者 金賢哲 国土環境保護省局長
残留日本人および日本人配偶者分科責任者 李虎林 朝鮮赤十字会中央委員会書記長
拉致被害者分科責任者 姜成男 国家安全保衛部局長
行方不明者分科責任者 朴永植 人民保安部局長 (「特別調査委員会」副委員長兼任)
支部責任者 各道・市・郡の安全保衛部副部長
3.「特別調査委員会」の運営方法
―中央の整然とした指揮体系の下で(原文:中で)運営する。
―各分科責任者が当該の対象別による調査を責任を持って行い、その結果を「特別調査委員会」の担当副委員長に随時報告し、必要な対策を立てる。
―各分科別に調査が深まって日本側の関係者との連携、協同が必要な場合、各分科責任者が調査委員会に提起して日本側の当該関係者の協力を求める。
―調査進行状況と結果に対しては分科別にまとめて「特別調査委員会」の指揮部に提起するようにし、「特別調査委員会」はその状況を日本側に随時通報し、互いに情報を共有しながら対策を立てる。
4.調査形式と方法
―調査は一定の対象分野だけを優先視せず、あらゆる分野にわたって同時並行的に行い、関係者に対する面談および証言聴取、関係場所に対する現地踏査などの方法で行う。
―必要な対象に対する調査を深めるために日本側の関係者との面談、日本側の当該機関が持っている文書と情報に対する共有、日本側の関係場所に対する現地踏査も行う。
(日本側関係者を北朝鮮に入国させて関係者と合わせるという意義は大きい。また、日本側の「文書」、つまり「資料」についてもきちんと調査の対象とするという点も評価できる。「日本側の関係場所に対する現地踏査も行う」と言うことは、日本側の「資料」をそのまま受け入れるのではなく、北朝鮮側も日本に入国してその信憑性についてきちんと確認するという意味であろう。この辺りは、相互主義の観点から尊重し、お互いが納得できる調査結果を出すためにも受け入れていく必要があろう。)
―調査の客観性と透明さを保障するために必要な時点で日本側の関係者をわが国に受け入れる。
(しかしながら、「必要な時点で」というのがどの「時点」なのかも問題である。北朝鮮側は、「受け入れる」に際して、新たな要求を出してくる可能性もあるので、その準備はしておかなければならない。)
5.分科別活動方向
―日本人遺骨分科
現在、共和国の領内に散在している日本人遺骨埋葬地に対する対策を講じながら、現在掌握されている資料、証言などに基づいて現地の踏査と試験発掘を行い、遺骨に対する処理問題を協議し、対策を立てる。
―残留日本人および日本人配偶者分科
人民保安機関と当該の人民委員会が持っている住民登録台帳と関係者の申告および証言聴取を通じて現況を確認し、対策を立てる。
―拉致被害者分科
日本政府が認めた拉致被害者に対して再び調査を行い、各対象別に入国などの具体的な経緯を確認する。
(北朝鮮報道文書「再び(다시금)」、日本政府が配布した文書では「改めて」と若干の違いはあるが、一度は調査したことを日本側も認めた表現となっている。金正日の顔を立てた形だ。)
―行方不明者分科
日本側が提起する資料も参考して人民保安機関が持っている住民登録台帳に基づいて行方不明者の入国いかんおよび身元などを確認する。---
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「朝鮮中央TV」が放送開始直後に下記の「『特別調査委員会』の設置に関する朝鮮中央通信社報道」を報道した。以下も、「朝鮮中央通信」の日本語版からの転載である。
【平壌7月4日発朝鮮中央通信】朝鮮中央通信社が、「特別調査委員会」の設置に関連して4日、次のような報道を発表した。
朝日政府間の合意に従って、日本政府は2014年7月4日、人的往来の規制(朝鮮語文も「規制」。北朝鮮は「米帝とその追従勢力のありとあらうゆる制裁」などという形で「制裁」という表現はしばしば使っているが、敵対性を強調する「制裁」という表現を敢えて避けて、「規制」と言っているところは日本の「敵対勢力」としてのカラーを薄めようとしているのかもしれない。5月には意識しなかったのだが、「合意文書」でも「対北朝鮮措置」という表現を使っている。)、送金および携帯金額に関連して共和国に加えている特別な規制、人道目的の共和国国籍船舶の日本入港禁止を内容とする対朝鮮制裁を解除することを決めて公式に発表した。
朝鮮民主主義人民共和国は、7月4日から「特別調査委員会」を設けてすべての日本人に関する包括的調査を開始することになる。
「特別調査委員会」は、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会から、すべての機関を調査することができ、必要に応じて当該の機関および関係者を調査に動員することのできる特別な権限が付与される。
「特別調査委員会」は、委員長と副委員長、分科責任者をはじめ必要な人員で構成され、当該地域に支部を置く。
「特別調査委員会」の委員長は、徐大河・朝鮮民主主義人民共和国国防委員会安全担当参事兼国家安全保衛部副部長が、副委員長は金明哲・国家安全保衛部参事と朴永植・人民保安部局長が務めることになる。---
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今回も前回の発表同様、日本側と相当にきちんとすりあわせをした内容になっている。
<追記>
7月4日付けの『労働新聞』に「朝鮮中央通信」を引用した日朝会談関連の記事が掲載されていた。
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朝日政府間会談開催
朝日政府間会談が2014年7月1日、中国の北京で開催された。
会談には、我々側からソン・イルホ外務省大使を団長とする代表団が、日本側から井原純一外務省アジア・オセアニア局長を団長とする代表団が参加した。
会談で双方は、去る5月に締結された朝日ストックホルム合意事項を履行するため、これまでの活動状況について言及した。
日本側は、対朝鮮制裁解除の内容と手続き進行状況などについて詳細に通報した。
我々側は「特別調査委員会」の権能と構成体系、運営方法、調査形式と方法などを通報した。
双方は、外交経路を通して連携をしながら、今後、必要な措置を取ることにした。
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『労働新聞』、「조일정부간회담 진행」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-07-04-0021&chAction=L
この記事の中では「対朝鮮制裁解除」という表現を使っている。なお、別記事に書いた3日の「17時報道」は、これをそのまま読み上げたものと思われる(「17時報道」の録画に失敗したので、確認ができない)。
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【平壌7月4日発朝鮮中央通信】朝日政府間の合意に従って、共和国は2014年7月4日から「特別調査委員会」を設け(原文:組織し)てすべての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を開始することになる。
1.「特別調査委員会」の権能
「特別調査委員会」は、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会から、すべての機関を調査し、必要に応じて当該機関および関係者をいつでも(原文:任意の時に)調査(原文:調査事業)に動員することのできる特別な権限が付与される。
(日本政府が配付した資料には、「北朝鮮の最高指導機関である国防委員会から」と記されているが、北朝鮮の報道ではこの部分についての記述はない。自明なので省かれただけであろう。「国防委員会第1委員長」は金正恩なので、形式的には金正恩の権限が及ぶ「委員会」と解釈することができる。)
2.「特別調査委員会」の構成体系と主要メンバー
1)「特別調査委員会」の構成体系
「特別調査委員会」は、国家安全保衛部、人民保安部、人民武力部、人民政権機関をはじめ30人程度の当該機関の人員で構成し、中央に次のような4つの分科と各道を中心に必要な市・郡に支部を置く。
―分科構成
○日本人遺骨分科
国土環境保護省、人民政権機関、赤十字会、社会科学院、人民武力部など、当該機関の関係者
(林野に埋葬された遺骨収集に「国土環境保護省」、地方での調査協力を得るための「人民政権機関」、日本との連絡窓口となる「赤十字会」、歴史的な検証が必要な場合「社会科学院」、軍管轄地域の調査や「建設軍人」は件要請をする「人民武力部」、地方の調査協力を要請する「人民政権機関」ということであろう)
○残留日本人および日本人配偶者分科
赤十字会、人民保安部、人民政権機関など、当該機関の関係者
(各機関の上記役割に加え、戸籍等を管理する警察組織としての「人民保安部」)
○拉致被害者分科
国家安全保衛部、人民保安部、最高検察所、保健省、人民政権機関の当該の関係者
(「特別調査委員会」自体に「特別な権限」が付与されているにもかかわらず、それをさらに担保するための「国家安全保衛部」。「国家安全保衛部」は「国防委員会」直属の常設機関である。特に、拉致に関わった「軍部や特務機関」の調査には、張成沢をも処罰した「国家安全保衛部」の田んぼが絶対的に必要となる。「最高検察所」をなぜ含めたのか今ひとつ分からないが、司法警察の最高機関を含めることで司法関係の記録調査を行えるようにしたのか、場合によっては、拉致に関与したり、拉致被害者に対する不法行為を行った者を罰する目的なのかもしれない。「保健省」は、まずは拉致被害者の健康状態チェックが目的であろうが、亡くなっており遺骨として返還される場合にはDNA鑑定などに関与させるつもりなのかもしれない。)
○行方不明者分科
人民保安部、国家安全保衛部、赤十字会、人民政権機関の当該の関係者
―支部構成
安全保衛部、人民政権機関など、当該機関の関係者
<追記>
あまり気にしなかったので書かなかったのだが、日本側資料と北朝鮮側資料で「分科」の順が異なるという指摘がある。この部分のすり合わせがきちんとできていなかったのか、あるいはいずれか一方が順序を入れ替えたのかは不明である。安倍政権とすれば「拉致問題」をトップにした方が国民に対する説得力(同時に、政権の宣伝にも繋がる)があるし、北朝鮮としては、成果を出しやすい(さらにいえば、墓参りという形で現在進行中)の「遺骨収集」をトップにした方が今後の交渉においても説明がしやすくなる。
それよりも注目すべきは、各「分科」を構成している組織で、「拉致被害者分科」のトップに「国家安全保衛部」を置いていることに意義がある。一つ下の「行方不明者分科」では「国家安全保衛部」と「人民保安部」の順序が逆転していることからも、「拉致被害者分科」に最高の権威付けをしていることは間違いない。
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2)「特別調査委員会」の主要メンバー
委員長 徐大河 朝鮮民主主義人民共和国国防委員会安全担当参事兼国家安全保衛部副部長
(「参事」という職責は、「大使館参事」という程度でしか北朝鮮報道の中に登場しない職責である。web「朝鮮語大辞典」で調べると「(一部の国家機関で)一定の部門の事業を研究し、当該責任幹部に意見を提出することを基本任務とする職位またはその職位にある者」と書かれている。このことからすると、徐大河は今回の「特別調査委員会」発足と関連し、「参事」を任命され「国防委員会」にコミットされるようにした可能性はある。マ・ウォンチュンが「設計局長」であるように、「国防委員会」にも「局」があるはずであるが、「安全担当」と曖昧な表現を使っているのもそれとの関連なのかもしれない。ともあれ、「国家安全保衛部副部長」が要職であることは間違いない。本名ではない可能性もある。)
副委員長 金明哲 国家安全保衛部参事
(金明哲は、2012年4月に「少将」昇格者のリストの中で紹介されている。単に同姓同名の可能性はある。上記と同じ「参事」という職責である)
副委員長 朴永植 人民保安部局長
日本人遺骨分科責任者 金賢哲 国土環境保護省局長
残留日本人および日本人配偶者分科責任者 李虎林 朝鮮赤十字会中央委員会書記長
拉致被害者分科責任者 姜成男 国家安全保衛部局長
行方不明者分科責任者 朴永植 人民保安部局長 (「特別調査委員会」副委員長兼任)
支部責任者 各道・市・郡の安全保衛部副部長
3.「特別調査委員会」の運営方法
―中央の整然とした指揮体系の下で(原文:中で)運営する。
―各分科責任者が当該の対象別による調査を責任を持って行い、その結果を「特別調査委員会」の担当副委員長に随時報告し、必要な対策を立てる。
―各分科別に調査が深まって日本側の関係者との連携、協同が必要な場合、各分科責任者が調査委員会に提起して日本側の当該関係者の協力を求める。
―調査進行状況と結果に対しては分科別にまとめて「特別調査委員会」の指揮部に提起するようにし、「特別調査委員会」はその状況を日本側に随時通報し、互いに情報を共有しながら対策を立てる。
4.調査形式と方法
―調査は一定の対象分野だけを優先視せず、あらゆる分野にわたって同時並行的に行い、関係者に対する面談および証言聴取、関係場所に対する現地踏査などの方法で行う。
―必要な対象に対する調査を深めるために日本側の関係者との面談、日本側の当該機関が持っている文書と情報に対する共有、日本側の関係場所に対する現地踏査も行う。
(日本側関係者を北朝鮮に入国させて関係者と合わせるという意義は大きい。また、日本側の「文書」、つまり「資料」についてもきちんと調査の対象とするという点も評価できる。「日本側の関係場所に対する現地踏査も行う」と言うことは、日本側の「資料」をそのまま受け入れるのではなく、北朝鮮側も日本に入国してその信憑性についてきちんと確認するという意味であろう。この辺りは、相互主義の観点から尊重し、お互いが納得できる調査結果を出すためにも受け入れていく必要があろう。)
―調査の客観性と透明さを保障するために必要な時点で日本側の関係者をわが国に受け入れる。
(しかしながら、「必要な時点で」というのがどの「時点」なのかも問題である。北朝鮮側は、「受け入れる」に際して、新たな要求を出してくる可能性もあるので、その準備はしておかなければならない。)
5.分科別活動方向
―日本人遺骨分科
現在、共和国の領内に散在している日本人遺骨埋葬地に対する対策を講じながら、現在掌握されている資料、証言などに基づいて現地の踏査と試験発掘を行い、遺骨に対する処理問題を協議し、対策を立てる。
―残留日本人および日本人配偶者分科
人民保安機関と当該の人民委員会が持っている住民登録台帳と関係者の申告および証言聴取を通じて現況を確認し、対策を立てる。
―拉致被害者分科
日本政府が認めた拉致被害者に対して再び調査を行い、各対象別に入国などの具体的な経緯を確認する。
(北朝鮮報道文書「再び(다시금)」、日本政府が配布した文書では「改めて」と若干の違いはあるが、一度は調査したことを日本側も認めた表現となっている。金正日の顔を立てた形だ。)
―行方不明者分科
日本側が提起する資料も参考して人民保安機関が持っている住民登録台帳に基づいて行方不明者の入国いかんおよび身元などを確認する。---
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「朝鮮中央TV」が放送開始直後に下記の「『特別調査委員会』の設置に関する朝鮮中央通信社報道」を報道した。以下も、「朝鮮中央通信」の日本語版からの転載である。
【平壌7月4日発朝鮮中央通信】朝鮮中央通信社が、「特別調査委員会」の設置に関連して4日、次のような報道を発表した。
朝日政府間の合意に従って、日本政府は2014年7月4日、人的往来の規制(朝鮮語文も「規制」。北朝鮮は「米帝とその追従勢力のありとあらうゆる制裁」などという形で「制裁」という表現はしばしば使っているが、敵対性を強調する「制裁」という表現を敢えて避けて、「規制」と言っているところは日本の「敵対勢力」としてのカラーを薄めようとしているのかもしれない。5月には意識しなかったのだが、「合意文書」でも「対北朝鮮措置」という表現を使っている。)、送金および携帯金額に関連して共和国に加えている特別な規制、人道目的の共和国国籍船舶の日本入港禁止を内容とする対朝鮮制裁を解除することを決めて公式に発表した。
朝鮮民主主義人民共和国は、7月4日から「特別調査委員会」を設けてすべての日本人に関する包括的調査を開始することになる。
「特別調査委員会」は、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会から、すべての機関を調査することができ、必要に応じて当該の機関および関係者を調査に動員することのできる特別な権限が付与される。
「特別調査委員会」は、委員長と副委員長、分科責任者をはじめ必要な人員で構成され、当該地域に支部を置く。
「特別調査委員会」の委員長は、徐大河・朝鮮民主主義人民共和国国防委員会安全担当参事兼国家安全保衛部副部長が、副委員長は金明哲・国家安全保衛部参事と朴永植・人民保安部局長が務めることになる。---
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今回も前回の発表同様、日本側と相当にきちんとすりあわせをした内容になっている。
<追記>
7月4日付けの『労働新聞』に「朝鮮中央通信」を引用した日朝会談関連の記事が掲載されていた。
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朝日政府間会談開催
朝日政府間会談が2014年7月1日、中国の北京で開催された。
会談には、我々側からソン・イルホ外務省大使を団長とする代表団が、日本側から井原純一外務省アジア・オセアニア局長を団長とする代表団が参加した。
会談で双方は、去る5月に締結された朝日ストックホルム合意事項を履行するため、これまでの活動状況について言及した。
日本側は、対朝鮮制裁解除の内容と手続き進行状況などについて詳細に通報した。
我々側は「特別調査委員会」の権能と構成体系、運営方法、調査形式と方法などを通報した。
双方は、外交経路を通して連携をしながら、今後、必要な措置を取ることにした。
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『労働新聞』、「조일정부간회담 진행」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-07-04-0021&chAction=L
この記事の中では「対朝鮮制裁解除」という表現を使っている。なお、別記事に書いた3日の「17時報道」は、これをそのまま読み上げたものと思われる(「17時報道」の録画に失敗したので、確認ができない)。