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    「敬愛する金正恩同志が金策工業総合大学教育者住宅建設場を視察された」:国防委員会設計局新設か、金正恩「安全性」について言及 (2014年5月21日 「労働新聞」)

    21日付けの『労働新聞』に金正恩が「金策工業総合大学教員宿舎工事現場」を視察したことを伝える記事が掲載された。「13日に住宅建設現場で事故が発生」して以来、初めての建設現場視察なので、この事故に関する発言があるのではと思い記事をよく読んでみた。

    すると、国防委員会の中に「設計局」なるものが新設されたようだ。「新設」なのかどうか、過去の『労働新聞』記事をくまなく調べることはしていないが、『労働新聞』HPを「設計局」というキーワードで検索してみると、5月19日報じられた金正恩の「デソンサン総合病院視察」の記事の中で使われているケース1つしか出てこない。いずれもマ・ウォンチュン陸軍中将が「国防委員会設計局長」として同行しているために出てくるのであるが、これまで「設計局」が国防委員会内になかったとすれば、13日の事故を受けて新設されたのであろう。13日の事故の責任は、ソヌ・ヒョンチョル朝鮮人民軍内務軍将領が謝罪していることからも「内務軍」にあることになっているが、北朝鮮の最高権力機関の中に「建設局」を設けることで、事故の再発防止に向けたきちんとした取り組みをしようという意図があるのかもしれない。

    過去記事には、今回の事故報道が朴槿恵の「無策」との対比という意味が強いのではないかと書いたが、「建設局」を新設することまでしているのならば、この事故が民心を動揺させるほど大規模なものであった可能性が高い。

    金正恩は、「金策工業大学教育者宿舎」建設現場で、「千年間責任を持って、保証しようというスローガンを高く掲げ、建設で工法の基準を徹底して守り、建築物の安全性を確固として保障することは、朝鮮人民軍第267軍部隊の軍人建設者の仕事に打ち込む態度」であり、「全ての建設部門で、彼らの闘争気風を見習わなければならない」と述べている。「朝鮮人民軍第267部隊は「馬息嶺速度を創造した軍部隊」とも言っているので、「馬息嶺スキー場」建設に動員された部隊であろう。

    しかし、「建設工法の基準を徹底して守り、建築物の安全性を確固として保障する」ことに関しては、「元帥様」の「お言葉」の中でも重要度は低いようで、『労働新聞』のpdf版で見る限りは、他の部分と分けるためのボールドのゴシック体は使われていない。この辺りをどう読むべきか悩むところだが、事故の責任が「元帥様」に行かないようにという配慮なのかもしれない。

    「元帥様」の「お言葉」は、下の例のようにボールドになっている。
    okotoba1.jpg
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 김책공업종합대학 교육자살림집건설장을 돌아보시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    しかし、安全性に関する言及(黄色いハイライト部分、ハイライトは著者加工)は、ボールドになっていない。
    okotoba2.jpg
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 김책공업종합대학 교육자살림집건설장을 돌아보시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    北朝鮮は、朴槿恵がセウォル号沈没事故が起きた直後にもかかわらずオバマと一緒に艶やかな服を着てチャラチャラしていたと非難しているが、「元帥様」も工事現場視察でうれしそうに笑っている。金正恩の左(軍服着用)がマ・ウオンチュン「設計局長」。
    shisatsukim1.jpg
    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 김책공업종합대학 교육자살림집건설장을 돌아보시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01&iPageType=2

    事故に関連して、「朝鮮赤十字会中央委員会委員長に南朝鮮赤十字社総裁が慰労電文を送ってきた」と20日の「20時報道」で伝えていた。事故に対する韓国の反応を「慰労電文」とはいえ、これほどの迅速に報道するのも「異例」ではないだろうか。

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    北朝鮮には建築基準法がないのでしょうか?

    いつもお世話になります。

    セウォル号事件であらわになった韓国の国民に対する安全管理のずさんさを利用して、「国民の生活が第一 !」をスローガンに掲げたどこかの国の政党同様、金正恩政権が国民の生活と安全をいかに重視しているかを国民に対し強調したいのでしょうね。

    モランボン楽団の去年までの歌でも、以前は「母なる党」が強調されていたのに、今年に入ってから、「党」の存在があまり強調されていないような気がします。

    馬園春はもともと労働党の人間としての肩書でよく金正恩の視察に同行していたと思いますが、それが国防委員会内に新設された組織へ移行または兼任という形になったのは、労働党と国防委員会の権力構造に変化が起こりつつある、または党よりも国防委員会を自分の子飼い組織化して重視しつつあるということなのでしょうか?
    (もともと平壌のマンション建設は張成沢も副部長を務めたこともある党内の首都建設部の管轄のはず)


    余談ですが、労働新聞の下の写真もそうですが、北朝鮮では「マンション」という名の建物を作る時、同じ建物を2つ対で建てている場合が多いような気がします。

    香港、大連、青島でも「マンション」は多かったですが、46階建てとはいえ、同様にエレベーターなんてないんでしょうね。

    北朝鮮の家庭ではLPGが多いということでしたが、46階建ての建物でどうやってLPGを使用するのかがよくわからないです。(集合配管の場合、この高さまでガス送るのは難しいです。NLGは別として)
    どこかの国では各部屋のベランダにガスボンベ置いてあったりしましたが。

    Re: 北朝鮮には建築基準法がないのでしょうか?

    コメントありがとうございます。モランボン楽団の楽曲で「党」が強調された時期がありましたね。マ・ウォンチュンも人民服を着て金正恩に同行することが多かったですが、「国防委員会設計局長」になってからは軍の階級を付けて呼び、軍服を着て登場していますね。そもそも、国防委員会に「設計局」など必要なのかという感じがします。軍事施設の「設計」をする部署は当然あるでしょうが、極秘中の極秘でしょうから、公表するはずもないですし、やはり民間施設の設計も国防委員会が責任を持つということなのかもしれません。軍部隊の軍人建設者建設を担当しているわけですから、ゼネコン本社に設計統括部門があってもおかしくないですけどね。

    主体塔の反対側に建っている「一心」と「団結」の建物をはじめとして、チャンジョン通りの住宅など対になっている建物は確かに多そうですね。他国にもツインタワーと呼ばれるのものは案外あるようなので、美観上の話なのかもしれません。

    エレベーターですが、チャンジョン通りの住宅にはありました。金正恩はエレベータに乗ってペントハウスまで登ったはずです(彼の体型では、歩いて登るのは不可能に近いと思われます)。

    LPGですが、私が見た映像では、キッチンの横に扉があり、その中にガスボンベが収納されていました。「ドラマ」か「映画」だったような記憶があるのですが、「ガスの配給を待たなければ」云々という台詞が流れていたはずです。その建物にはエレベーターはなかったので、担いで上がるという話だと思います。ただ、その時に出ていたのは、下のurlにある2kgか10kgの容器だったように記憶しています。何とか運べる重さということでしょうか。

    http://www.zenkenkyo.jp/test/propane.html

    「建築基準法」ですが、韓国・統一部の北朝鮮法令リストで見る限りはありません。だから「党が定める工法」という話になるのではないでしょうか。

    > いつもお世話になります。
    >
    > セウォル号事件であらわになった韓国の国民に対する安全管理のずさんさを利用して、「国民の生活が第一 !」をスローガンに掲げたどこかの国の政党同様、金正恩政権が国民の生活と安全をいかに重視しているかを国民に対し強調したいのでしょうね。
    >
    > モランボン楽団の去年までの歌でも、以前は「母なる党」が強調されていたのに、今年に入ってから、「党」の存在があまり強調されていないような気がします。
    >
    > 馬園春はもともと労働党の人間としての肩書でよく金正恩の視察に同行していたと思いますが、それが国防委員会内に新設された組織へ移行または兼任という形になったのは、労働党と国防委員会の権力構造に変化が起こりつつある、または党よりも国防委員会を自分の子飼い組織化して重視しつつあるということなのでしょうか?
    > (もともと平壌のマンション建設は張成沢も副部長を務めたこともある党内の首都建設部の管轄のはず)
    >
    >
    > 余談ですが、労働新聞の下の写真もそうですが、北朝鮮では「マンション」という名の建物を作る時、同じ建物を2つ対で建てている場合が多いような気がします。
    >
    > 香港、大連、青島でも「マンション」は多かったですが、46階建てとはいえ、同様にエレベーターなんてないんでしょうね。
    >
    > 北朝鮮の家庭ではLPGが多いということでしたが、46階建ての建物でどうやってLPGを使用するのかがよくわからないです。(集合配管の場合、この高さまでガス送るのは難しいです。NLGは別として)
    > どこかの国では各部屋のベランダにガスボンベ置いてあったりしましたが。
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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