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    「大紅湍郡でモランボン楽団成功裏に公演」:リーダーのソンウ・ヒャンヒ復活、パルチザンの衣装 (2014年4月6日 「朝鮮中央TV」)

    コメントを頂いて気付いたのだが、モランボン楽団のリーダー、ソンウ・ヒャンヒが復活していた。したがって、過去記事に書いた、彼女の粛清説は間違いであったということになる。もしかすると、粛清までは行かずとも、しばらくの期間、取り調べを受けていたり、思想的再教育を受けていた可能性はあるが、ともかくも復活している。

    モランボン楽団は両江道の巡回公演を行っており、4月5日の「朝鮮中央TV」の「20時報道」で三池淵郡文化会館で開催されたモランボン楽団公演に関する報道があった。この中で、背景にソンウ・ヒャンヒらしき人物が見えたのだが、例によって解像度も悪く、フォーカスも歌手に合わさっていたので、彼女であるという確認はできなかった。翌、6日には大紅湍郡文化会館での公演の様子をやはり「20時報道」が報道したのだが、この中で彼女を大写しにするカットが使われた。

    20140406 20si podofflv_000507733
    Source: KCTV, 2014/04/06 放送

    5日の放送で背景に映しておき、6日に大写しにしたのは意図的かどうかは分からないが、彼女がリーダーであるということと、張成沢事件との関連で粛清対象者が拡大しているという韓国報道を否定し、人権問題をかわす目的があるのかもしれない。

    また、演奏会場で聴衆が「モランボン楽団」のパンフレットを見る場面も大写しにされている。

    20140406 20si podofflv_000368142
    Source: KCTV, 2014/04/06 放送

    パンフレットには歌手6人の写真、バイオリンなどを演奏する奏者4人の写真、そしてその他の楽器を演奏する奏者の写真が掲載されている。解像度の関係で誰が出ているのかまでは確認できないが、コメントを下さった方も書いておられるように、歌手の人数は6人構成ということのようだ。パンフレットを入場口で受け取り、それを開いて見ているところを中身が見えるように比較的大きく映しているのは、やはり団員に対する「粛清」の「噂」を打ち消そうとしているのかもしれない。

    モランボン楽団に張成沢がどれほど関与したのかは分からない。仮に関わったとしても、楽団本来の音楽構成や演出に彼が関わったのか、そうではなく単なる女性関係で関わったのかも分からない。しかし、明らかなことは、モランボン楽団が金正恩時代を象徴する楽団であり、朝鮮人民は同楽団と金正恩との深いつながりについては誰も疑いを持っていないということである。さすれば、いくら張成沢を悪人に仕立て上げたとしても、あまりにも楽団を攻撃することは金正恩の指導力のなさを露呈させることになり、ましてやリーダー自らを「思想的に間違った」行いをしたと追放してしまえば、金正恩自身に傷を付けることになるので、ソンウ・ヒャンヒ復活させたのかもしれない。説明のしようによっては、例によって「思想的に間違った」が、「慈悲深い元帥様の恩情」で復活したともいえよう。

    過去記事にモランボン楽団の衣装について書いたが、「20時報道」で見る限りは抗日パルチザンの女性隊員(金正恩のお婆さんの金正淑が肖像画でよく着ている長いスカートの軍服)のような衣装である。パンフレットには白い軍服姿が出ているので、白の軍服が標準的な衣装、今回の地方公演で着ているのはやはり場所柄、パルチザンの女性隊員にちなんだものにしているのかもしれない。

    20140406 20si podofflv_000502981
    Source: KCTV, 2014/04/06 放送

    金正淑のような衣装は、単に戦跡地近くでの公演であり、また「太陽節」(金日成の誕生日)を控えたものであるからかもしれないが、「白頭の血統」と結びつけて高英姫公開を狙っている可能性もある。金ヨジョンをさらっと公開したので、もしかすると明日の最高人民会議か「太陽節」辺りでさらっと高英姫を出してくるのかもしれない。公演後、会場外でインタビューに答える朝鮮人民も「将軍様」の思い出ばかり語っている。もちろん、大紅湍(デホンダン)郡といえば、金正日が「ジャガイモ革命」を推進した場所ではあるのだが。

    漠然としたイメージであるが、記事にするといいながら未だにできていない、「ジャガイモ革命」を扱った「朝鮮記録映画」、今回の大紅湍郡でのモランボン公演、高英姫を幹部向けに紹介するために制作されたという「映画」が繋がってしまう。

    <追記>
    コメントを頂いたのでそちらに返信を書いていたのだが、写真なども合わせて出したかったので、記事に追記することにした。

    9日の「20時報道」でもモランボン楽団の両江道公演の様子を紹介している。この日紹介されたのは恵山市にある両江道芸術劇場での公演の様子である。今回は、巡回公演ということで、ほぼ毎日移動をしながらの公演のようである。

    6日の「20時報道」からキャプチャした写真でも紹介したが、9日の「20時報道」でもモランボン楽団のパンフレットをさらに大きく出している。

    20140409 20si podofflv_000586730
    Source: KCTV, 2014/04/09放送

    また、女性がパンフレットを指さしながら読むのを子供がのぞき込んでいる場面も紹介している。

    20140409 20si podofflv_000591227
    Source: KCTV, 2014/04/09放送

    コメントを下さった方も「リュ・ジナらしき人が出ているよう」だと書かれているので、上の写真にあるようなモランボン楽団のパンフレットの出し方と併せて、やはり粛清説を打ち消そうとしている可能性はある。

    恵山市公演では、抗日パルチザン度がパワーアップされ、雪中戦闘でカモフラージュするためのマントも着用している。左の奏者のマントは照明の関係で黄色く見えるが、白である。

    20140409 20si podofflv_000686149
    Source: KCTV, 2014/04/09放送

    やはり、粛清説を打ち消し、モランボン楽団の「思想的正統性」を強調することに今回の公演の目的があるようだ。

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    No title

    私も昨日の労働新聞写真を見て気づきました。
    やはり彼女がいないとこれからの発展はないと
    思っていたので、個人的にもうれしいところです。

    ソンウ・ヒャンヒ

    コメントありがとうございます。音楽的にソンウ・ヒャンヒがモランボン楽団にどのように貢献しているのかは私には分かりませんが、やはり彼女がいないときの公演は今一つモランボンらしさがないような気がしました。彼女の奏法というか、オーラというか、そういうものがなかったような感じです。

    > 私も昨日の労働新聞写真を見て気づきました。
    > やはり彼女がいないとこれからの発展はないと
    > 思っていたので、個人的にもうれしいところです。

    コメントのお礼

    コメントありがとうございます。水野先生の論稿については、追って拝読することにいたします。お説のとおり、彼女には「クールビューティー」な魅力がありますね。「ツィゴイネルワイゼン」も演奏できるとのこと、機会があれば是非聞いてみたいです。

    彼女の名前の読み方ですが、朝鮮語ではカタカナ書きで「ソヌ」に近い音で発音するということは承知しております。よい機会なので、韓国・朝鮮の人名や地名をカタカナ表記する場合、どのように表記するのが適切なのかについて調べてみようと思います。ご指摘ありがとうございます。

    以下、金根植・慶南大学教授が『中央日報』に投稿された韓国語の記事を翻訳していただきありがとうございます。金教授が書かれていることには、全く同感です。

    > 京都大学人文科学研究所の水野直樹先生が、モランボン楽団の革新性を、それ以前の楽団との多角的比較によって明らかにされている論稿を出されていますので、参考までに読まれては。
    > 因みに、水野先生もファンだとのこと。あの、クールビューティー振りが良いのでしょうね。彼女、バイオリンで最も難しい曲目の一つとされる、サラサーティの「ツイゴイネルワイゼン」もこなすだけの実力演奏家とのこと。
    >
    > 因みに、ソンウてのは無いです。ソヌです。名の場合、例えば”金哲宇”を、チョルとしてもチュルウとしてもどちらも間違いではないですが、ソヌをソンウなどとは読めないです。リエゾンするのが規則ですから。
    >
    > 後、以下参考までに。昨日は題目間違ってましたね、失礼をば。
    >
    > 【ソウル発】 崔龍海・朝鮮人民軍総政治局長の監禁説と「対北消息筋」/金根植・慶南大学教授(中央日報 3.12)

    『中央日報』(韓国語版)、「[시론] 최용해 감금설과 '대북 소식통'」、http://article.joins.com/news/article/article.asp?total_id=14128105

    連日の中央放送

    いつもお世話になっています。

    まるで何かに憑りつかれたかのように連日巡業しているモランボン楽団ですが、8日20時の放送を見たところ、リュ・ジナらしき人が出ているようです。

    実際、数日前のコンサートにも出ていたという情報もありますが、結局モランボン楽団の粛清説は、一応否定されたことになります。ただ、ボーカルが全員揃っているかどうかは未確認で、まだパク・ソニャン強制収容所送りが否定されたことにはなりませんが、モランボン楽団に限らず、今までいろいろあった悪い噂を必死に否定し、急速に国民の士気を鼓舞するかのような連日の活動ぶりです。

    今回の服装は(雪中カモフラージュ用)白マント付き抗日パルチザンスタイルですが、YOU TUBEなどでも連日、抗日パルチザン映画を配信し始めています。

    金正恩が三池淵を訪問していることに関連付けたものなのかもしれませんが、抗日パルチザン精神と今後の体制をリンクさせようとしているのかとか、いろいろ考えてしまいます。

    自分としては、モランボン楽団のコンサート動画が配信されれば、それでいいんですが、一連のツァーの動画は全く配信されないので、それだけが不満です。

    Re: 連日の中央放送

    コメントありがとうございます。他の方へのお返事にもあるように、昨夜は最高人民会議の「実況録画」報道で盛り上がってしまいました。その「実況録画」を見る前に「20時報道」を見ていたのですが、江界市(だったはず)でのモランボン公演の様子を紹介していましたね。ご指摘の「白マント」ですが、私も気になりました。三池淵と大紅湍公演では着用していなかったので、抗日パルチザン度がアップしたなと思いました。また、リュ・ジナらしき人物も確かに見えました。聴衆に配付されているパンフレットの写真をはっきりと見ることができれば、メンバー構成をきちんと確認できるのではないでしょうか。そのパンフレット、昨夜の「20時報道」でも前日よりは短いカットながら、大きく映し出していましたね。

    と、ここまでいただいたコメントに対する返信を書いたのですが、本件、記事にした方がよいと思いましたので、記事の方に続きを書かせていただきます。

    いつも貴重な情報をありがとうございます。

    > いつもお世話になっています。
    >
    > まるで何かに憑りつかれたかのように連日巡業しているモランボン楽団ですが、8日20時の放送を見たところ、リュ・ジナらしき人が出ているようです。
    >
    > 実際、数日前のコンサートにも出ていたという情報もありますが、結局モランボン楽団の粛清説は、一応否定されたことになります。ただ、ボーカルが全員揃っているかどうかは未確認で、まだパク・ソニャン強制収容所送りが否定されたことにはなりませんが、モランボン楽団に限らず、今までいろいろあった悪い噂を必死に否定し、急速に国民の士気を鼓舞するかのような連日の活動ぶりです。
    >
    > 今回の服装は(雪中カモフラージュ用)白マント付き抗日パルチザンスタイルですが、YOU TUBEなどでも連日、抗日パルチザン映画を配信し始めています。
    >
    > 金正恩が三池淵を訪問していることに関連付けたものなのかもしれませんが、抗日パルチザン精神と今後の体制をリンクさせようとしているのかとか、いろいろ考えてしまいます。
    >
    > 自分としては、モランボン楽団のコンサート動画が配信されれば、それでいいんですが、一連のツァーの動画は全く配信されないので、それだけが不満です。

    朝鮮中央テレビのライブ放送

    お世話になります。

    今日は太陽節だからか、YOU TUBEで一日朝鮮中央放送をライブで流していますが、これってホントにライブなんでしょうか?
    今、モランボン楽団のコンサート中継っぽいことしていますが。

    Re: 朝鮮中央テレビのライブ放送

    コメントありがとうございます。YouTubeで朝鮮中央TVのストリームを流しているのでしょうか。そうだとすると、大変助かります。よろしければ、urlを教えていただけますでしょうか。uriminaokkiriチャンネルまではたどり着くのですが、どこでストリーミングをやっているのか分かりません。

    14日夜番組終了直前の放送予告を見ると「4月の春、親善芸術祝典」という番組を「録画実況」で放送するとしています。ご覧になったモランボン公演がこれだとすると中央テレビのストリーミングかもしれません。昨日はダウンロードに失敗し、いくつかの番組を今、uriminzokkiriからダウンロード中です。「4月の春」も今ダウンロード中ですが、サイズが大きいので時間がかかりそうです。

    > お世話になります。
    >
    > 今日は太陽節だからか、YOU TUBEで一日朝鮮中央放送をライブで流していますが、これってホントにライブなんでしょうか?
    > 今、モランボン楽団のコンサート中継っぽいことしていますが。

    リュ・ジナ

    コメントありがとうございます。他の方へのお返事にも書いたのですが、昨夜放送されたモランボン公演、まだ見ることができていません。記事の方に書いた方がよいのかもしれませんが、北朝鮮の意図としては、いかに「人間の屑である脱北者共」の北朝鮮情報が当てにならないのかということを示したいのかもしれません。敢えて、粛清説の対象となったバンド・リーダーとリュ・ジナを金正恩観覧公演で外しておき、両江道公演からぼちぼち出すことで粛清説を否定し、脱北者情報の不正確さをアピールしようとしているのかもしれませんね。

    早くダウンロードを完了し、番組が見たいです。

    > 朝鮮中央テレビで牡丹峰楽団の両江道公演(多分)が放送中ですが、女声2重唱「我らの元帥様」でついにリュ・ジナが出ました。粛清説は何だったのでしょうね。

    アドレス

    お世話になります。

    いつも観ているところですが、

    https://www.youtube.com/user/DPRKMusicChannel


    ここはモランボン楽団の新曲やコンサートがいち早く出てくるので、毎日チェックしています。

    昨日は一日ライブ放送で映画などをやっていましたが、モランボンのコンサートは21時過ぎくらいから始まりました。

    23時にすべての放送が終了するあたり北朝鮮らしいです。


    早速今日には、昨日の新曲「白頭の蹄の音 」がUPされています。

    Re: アドレス

    コメントありがとうございます。youtubeの方、見てみましたが、ストリーム放送は見つけることができませんでした。今、elufaのストリーム放送を見ていたら、大紅湍文化会館でのモランボン公演をやっていました。終わりの方しか見られなかったので、録画で見直します。

    新曲の方、なかなか軽快な曲ですね。

    > お世話になります。
    >
    > いつも観ているところですが、
    >
    > https://www.youtube.com/user/DPRKMusicChannel
    >
    >
    > ここはモランボン楽団の新曲やコンサートがいち早く出てくるので、毎日チェックしています。
    >
    > 昨日は一日ライブ放送で映画などをやっていましたが、モランボンのコンサートは21時過ぎくらいから始まりました。
    >
    > 23時にすべての放送が終了するあたり北朝鮮らしいです。
    >
    >
    > 早速今日には、昨日の新曲「白頭の蹄の音 」がUPされています。
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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