「我々民族同士の団結した力で北南関係改善の活路を開こう、南朝鮮当局に送る重大提案」:中傷停止、米韓合同演習中止、核は民族の財宝 (2014年1月17日 「労働新聞」)
北朝鮮の国防委員会が韓国に「造成された事態の重大さに対応するため、原則的な問題を提案した」と17日付の『労働新聞』が報じた。提案の内容は以下の通り。
1.北南関係改善の雰囲気を作ることに関する熱い呼びかけに応え、実践的な措置からとることを提案する。
北南関係を改善し、民族的和解と団結を達成しようというのは、我々の軍隊と人民の変わらぬ立場である。
この考えから、我々は来る1月30日から、旧正月を契機にお互いを刺激し、誹謗中傷するすべての行為から全面中止する実質的措置を取ることを南朝鮮当局に正式に提案する。<中略>
本当に南北関係が改善されることを願うのであれば、当局者がまず発言に気を付け、メディアを関係改善の雰囲気造成に導き朝鮮半島地域に和解と団結の熱風を巻き起こさなければならない。<中略>
2.民族の安全と平和を守護することに対する歴史的な呼びかけに応え、相手に対するすべての軍事的敵対行為を全面中止する実質的な措置を取ることを提案する。
些細な偶発的衝突も、即時全面戦争へと発展してしまうのが今日の朝鮮半島の現実である。
今、この地で勃発する戦争は、大国には漁夫の利を与え、我々民族には民族の滅亡を招くという想像以上の災難をもたらす。
このようなことから我々は、外勢と野合し、同族を標的として展開される全ての軍事的な敵対行為を無条件即時中止することを再び提案する。
当面、南朝鮮当局は「恒例」で「防衛的」であるという美名の下、2月末から強行しようとしている「キーリゾルブ」、「トクスリ」合同軍事演習から中断する政策的決断を下さなければならない。
米軍との「合同」と「協同」をそれほどまでに捨てがたい重要事項であるならば、朝鮮半島の領土と領海、領空から遠く離れた静かな場所か、米国に渡ってやれというのが我々の立場である。
我々についていうのであれば、これまで同様に、今はもちろん、今後も外勢を引き込み民族の安全と平和保障を阻害する軍事的行動を行うことはない。
我々は特に、銃を向けあっている西海5島熱戦地域を含む地上、海上、空中で相手を刺激するすべての行為を全面中止することについて特に強調し提案する。
この提案を実現するために、我々は実践的な行動をまず見せる。
3.この地にもたらされる核による災難を防ぐための現実的な措置も相互に取っていくことを提案する。
朝鮮半島非核化は、民族共同の目標である。
したがって、朝鮮半島非核化を実現しようということは、我々軍隊と人民の変わりない意志である。
我々が保有する核兵力と並進路線について述べれば、それは我々民族すべてに対する米国の核威嚇と恐喝を終息させ、朝鮮半島の非核化はもちろん、世界の非核化まで展望した民族共同の保険であり、もっとも正当な自衛的選択である。
我々の核兵力は、徹頭徹尾、米国の核威嚇を抑制するための手段であり、決して同族を恐喝し、害するための手段ではない。
我々は、この機会に南朝鮮当局がこれ以上米国の危険千万な核打撃手段を南朝鮮とその周辺地域に引き込む無謀な行為にぶら下がることがないようにすることについて丁重に提案する。
同族を害する外勢の核は容認し、全民族を守る同族の核は否認する二重的行為とは断固として決別しなければならないというのが我々の主張である。
<中略>
この重大提案が実現すれば、離散家族・親戚訪問をはじめとした北南関係において提起される大小のすべての問題が解決されるであろう。
我々民族同士の団結した力で北南関係改善の活路を開いていこうというのが、我々軍隊と人民の意を一つにした要求である。
我々は、南朝鮮当局が我々の原則的な重大提案に肯定的に応じてくることに期待を表明する。
2014年1月16日 朝鮮民主主義人民共和国国防委員会
1については、これまで同様、韓国メディアも北朝鮮を非難しないようにするよう韓国政府がリードしていくことを求めている。北朝鮮はこれを、韓国では不可能なことを承知の上で、攻撃材料を温存するために提案しているのであろう。
この提案が「国防委員会」からだされているのは、主として2によるものと思われる。米韓合同演習を中止しろという要求は少し前に「祖国平和統一委員会スポークスマン談話」としても出されており、基本的な主張はそれと同じである。しかし、今回は「西海5島熱戦地帯」と延坪島近海を名指ししているので、米韓が要求を聞き入れず、さらに同島近海で演習を強行した場合は、「我々の警告を無視した」と軍事行動に出る可能性がある。ただ、「この提案を実現するために、我々は実践的行動をまず見せる」とも言っているので、これが何を指すのかは注目する必要がある。北朝鮮の軍事訓練は非公開なので、「見せる」といわれても何をどうするのか分からないが、「提案を実現するために」ということは、韓国側の対応いかんにかかわらず北朝鮮が「まず見せる」のであれば、これは良いことである。
3については、「朝鮮半島の非核化は、民族共同の目標である」としているものの、米国の核威嚇がなくなり、米国との「平和条約」締結が非核化の条件であるという従来通りの主張である。「核打撃手段」を韓国や周辺地域に持ち込むなといっているのは、核兵器自体ではなく昨年の米韓合同軍事演習で動員されたB1B戦略爆撃機を指しているのであろう。
そして、これらの提案が受け入れられれば「離散家族訪問」が実現するであろうとしているが、韓国政府はこの北朝鮮の提案を拒否した。韓国側が受け入れがたい提案を「国防委員会」に格上げして出してきたのは、金正恩「新年の辞」を受け、南北関係改善の姿勢を示しつつ、結果的にそれが受け入れられなかったことを韓国側の責任とするためであろうか。現在は融和的な姿勢を示しているが、金正日の誕生日が終わったあたりからは、対立フェーズに切り替える可能性がある。
『労働新聞』、「우리 민족끼리의 단합된 힘으로 북남관계개선의 활로를 열어나가자 남조선당국에 보내는 중대제안」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-01-17-0005&chAction=S
1.北南関係改善の雰囲気を作ることに関する熱い呼びかけに応え、実践的な措置からとることを提案する。
北南関係を改善し、民族的和解と団結を達成しようというのは、我々の軍隊と人民の変わらぬ立場である。
この考えから、我々は来る1月30日から、旧正月を契機にお互いを刺激し、誹謗中傷するすべての行為から全面中止する実質的措置を取ることを南朝鮮当局に正式に提案する。<中略>
本当に南北関係が改善されることを願うのであれば、当局者がまず発言に気を付け、メディアを関係改善の雰囲気造成に導き朝鮮半島地域に和解と団結の熱風を巻き起こさなければならない。<中略>
2.民族の安全と平和を守護することに対する歴史的な呼びかけに応え、相手に対するすべての軍事的敵対行為を全面中止する実質的な措置を取ることを提案する。
些細な偶発的衝突も、即時全面戦争へと発展してしまうのが今日の朝鮮半島の現実である。
今、この地で勃発する戦争は、大国には漁夫の利を与え、我々民族には民族の滅亡を招くという想像以上の災難をもたらす。
このようなことから我々は、外勢と野合し、同族を標的として展開される全ての軍事的な敵対行為を無条件即時中止することを再び提案する。
当面、南朝鮮当局は「恒例」で「防衛的」であるという美名の下、2月末から強行しようとしている「キーリゾルブ」、「トクスリ」合同軍事演習から中断する政策的決断を下さなければならない。
米軍との「合同」と「協同」をそれほどまでに捨てがたい重要事項であるならば、朝鮮半島の領土と領海、領空から遠く離れた静かな場所か、米国に渡ってやれというのが我々の立場である。
我々についていうのであれば、これまで同様に、今はもちろん、今後も外勢を引き込み民族の安全と平和保障を阻害する軍事的行動を行うことはない。
我々は特に、銃を向けあっている西海5島熱戦地域を含む地上、海上、空中で相手を刺激するすべての行為を全面中止することについて特に強調し提案する。
この提案を実現するために、我々は実践的な行動をまず見せる。
3.この地にもたらされる核による災難を防ぐための現実的な措置も相互に取っていくことを提案する。
朝鮮半島非核化は、民族共同の目標である。
したがって、朝鮮半島非核化を実現しようということは、我々軍隊と人民の変わりない意志である。
我々が保有する核兵力と並進路線について述べれば、それは我々民族すべてに対する米国の核威嚇と恐喝を終息させ、朝鮮半島の非核化はもちろん、世界の非核化まで展望した民族共同の保険であり、もっとも正当な自衛的選択である。
我々の核兵力は、徹頭徹尾、米国の核威嚇を抑制するための手段であり、決して同族を恐喝し、害するための手段ではない。
我々は、この機会に南朝鮮当局がこれ以上米国の危険千万な核打撃手段を南朝鮮とその周辺地域に引き込む無謀な行為にぶら下がることがないようにすることについて丁重に提案する。
同族を害する外勢の核は容認し、全民族を守る同族の核は否認する二重的行為とは断固として決別しなければならないというのが我々の主張である。
<中略>
この重大提案が実現すれば、離散家族・親戚訪問をはじめとした北南関係において提起される大小のすべての問題が解決されるであろう。
我々民族同士の団結した力で北南関係改善の活路を開いていこうというのが、我々軍隊と人民の意を一つにした要求である。
我々は、南朝鮮当局が我々の原則的な重大提案に肯定的に応じてくることに期待を表明する。
2014年1月16日 朝鮮民主主義人民共和国国防委員会
1については、これまで同様、韓国メディアも北朝鮮を非難しないようにするよう韓国政府がリードしていくことを求めている。北朝鮮はこれを、韓国では不可能なことを承知の上で、攻撃材料を温存するために提案しているのであろう。
この提案が「国防委員会」からだされているのは、主として2によるものと思われる。米韓合同演習を中止しろという要求は少し前に「祖国平和統一委員会スポークスマン談話」としても出されており、基本的な主張はそれと同じである。しかし、今回は「西海5島熱戦地帯」と延坪島近海を名指ししているので、米韓が要求を聞き入れず、さらに同島近海で演習を強行した場合は、「我々の警告を無視した」と軍事行動に出る可能性がある。ただ、「この提案を実現するために、我々は実践的行動をまず見せる」とも言っているので、これが何を指すのかは注目する必要がある。北朝鮮の軍事訓練は非公開なので、「見せる」といわれても何をどうするのか分からないが、「提案を実現するために」ということは、韓国側の対応いかんにかかわらず北朝鮮が「まず見せる」のであれば、これは良いことである。
3については、「朝鮮半島の非核化は、民族共同の目標である」としているものの、米国の核威嚇がなくなり、米国との「平和条約」締結が非核化の条件であるという従来通りの主張である。「核打撃手段」を韓国や周辺地域に持ち込むなといっているのは、核兵器自体ではなく昨年の米韓合同軍事演習で動員されたB1B戦略爆撃機を指しているのであろう。
そして、これらの提案が受け入れられれば「離散家族訪問」が実現するであろうとしているが、韓国政府はこの北朝鮮の提案を拒否した。韓国側が受け入れがたい提案を「国防委員会」に格上げして出してきたのは、金正恩「新年の辞」を受け、南北関係改善の姿勢を示しつつ、結果的にそれが受け入れられなかったことを韓国側の責任とするためであろうか。現在は融和的な姿勢を示しているが、金正日の誕生日が終わったあたりからは、対立フェーズに切り替える可能性がある。
『労働新聞』、「우리 민족끼리의 단합된 힘으로 북남관계개선의 활로를 열어나가자 남조선당국에 보내는 중대제안」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2014-01-17-0005&chAction=S