「<録画実況>敬愛する金正恩元帥様をお迎えし開催された我が国フェップルチームと米国NBA名手チームのバスケットボール試合」:ロッドマンのスピーチと朝鮮語通訳、金正恩の「家族」、体育相 (2014年1月11日 「朝鮮中央TV」)
11日、「朝鮮中央TV」が訪朝中のロッドマンチームと北朝鮮チームのバスケットボール試合の模様をほぼカットすることなく録画放送した。試合開始前のデニス・ロッドマンが行ったスピーチを英語でそのまま流し、それを北朝鮮の通訳が朝鮮語に訳している。この辺りの様子を中心に紹介しておくことにする。
ロッドマンの英語は非常に聞き取りにくいので、分からない部分は「想像」で書いておく。北朝鮮の専門家ではないが、ある米国人と彼のスピーチについて話していたら、その米国人は「ロッドマンは英語もまともに話せない」と言っていた。なにが「まとも」でないのか私は判断できないが、聞き取りにくいことことは確かである。
「競技を前にロッドマン先生が発言します」(朝鮮語アナウンス)
"Before the game, Mr.Rodman would like to say a few words."(英語アナウンス)
会場では、全てのアナウンスを朝鮮語と英語で行った。
ロッドマン:「私は米国から勇気(ガッツ)を持って、そして私を信じて、元帥の誕生日のためにやって来た仲間に感謝します」
北朝鮮通訳:「ここにいる私の同僚たちは、私を信じて、元帥様の誕生日に際して朝鮮に来ました」
北朝鮮通訳は、ノートにメモをしながら話しているので、事前に原稿を渡されていたわけではなく、本当に逐次通訳をしているようだ。
Source: KCTV, 2014/1/11放送
ロッドマン:「たくさんの人が、私や皆さんの指導者である元帥について、色々な見解を表明しています。しかし、私はそれを称賛、世界のための称賛と思っています。彼は偉大な指導者であり、彼はこの国の人々に力を与え、そして幸いにも、この国の人々は元帥を愛しています」
北朝鮮通訳:「世界の異なる人々は、私に対する色々な見解を持っています。私は、彼らが私に対する評価をこのように受け入れています。私はここ朝鮮に来て、朝鮮の人々が敬愛する元帥様を愛しているということを感じています」(朝鮮人民の盛大な拍手)
放送を聞いている限りでは、北朝鮮通訳の部分をカットしたようには聞こえないが、ロッドマンの発言、特に「元帥様について色々な見解」や「それを称賛と思う」、また「偉大な指導者」、「力を与える」の部分が訳されていない。「色々な見解」や「称賛と思う」は訳すとまずいから敢えて言っていないのかもしれないが、「偉大な指導者」や「力を与える」は言った方が宣伝となると思うのだが、聞き取れなかったのだろうか。通訳員も「元帥様」を前に、しかも多くの聴衆がいる中でまずいことは言えないし、事前原稿無しかつロッドマンの聞き取りにくい英語ということで、苦労し緊張したことであろう。さて、留学経験のある「元帥様」は彼の英語をどの程度理解したのであろうか。
「偉大な指導者」の部分で「元帥様」を指すロッドマン
Source: KCTV, 2014/1/11放送
そして、その先にいる「元帥様夫妻」を映し出す
Source: KCTV, 2014/1/11放送
ロッドマン:「北朝鮮の人々のために、私は一つのことを言いたいです。これはこのイベントにかかわった人々にとって歴史的な出来事です。私の同僚と北朝鮮全国チーム、そして私が言いたいことは、私の友人、彼の夫人、そして彼の家族に対してです」
そして、朝鮮語通訳を入れずにバースデー・ソングが始まる。ロッドマンが歌を歌っている間に通訳が何か言おうとしたようであるが、直ぐにやめている。その後、朝鮮語訳があったのかどうかは分からないが、番組では歌の前のロッドマンのスピーチは通訳されていない。ロッドマンは「彼の夫人、彼の家族」と分けて言っている。これは明らかに、夫人以外にも家族がいるということで、兄弟や叔母を除けば、金正恩の子供ということになる。朝鮮人民が彼の英語をどれだけ理解し、この点についてどのように考えているのかが興味深い。もしかすると、金正恩に子供がいることは、公式報道がされていないだけで周知の事実なのかもしれないが。
なお、コメントでも頂いているように、試合終了後にロッドマンと手を繋いでいるのは北朝鮮オリンピック委員会委員長兼体育相の李ジョンムであった。ロッドマンもCNNとのインタビューで「北朝鮮オリンピック委員会から招聘された」と言っているので、委員長が出てくるのは自然である。
李ジョンム体育相とロッドマン
Source: KCTV, 2014/1/11放送
<追記>試合の様子
NBA選手紹介。トップで紹介されるのがロッドマン。英語表記が主で括弧を付けて朝鮮語表記をしている。会場でのアナウンスは朝鮮語、英語の順である。
Source: KCTV, 2014/1/11放送
NBA選手紹介、続き
Source: KCTV, 2014/1/11放送
北朝鮮・フェップルチーム選手紹介。トップで紹介されるのが金ウンチョル。北朝鮮の最強選手なのであろう。
Source: KCTV, 2014/1/11放送
フェップルチーム選手紹介、続き
Source: KCTV, 2014/1/11放送
この後、審判紹介があり、試合が始まる。試合の解説は、朝鮮体育大学講座長・副教授マ・ジュチョンが放送員(アナウンサー)と共に行う。
解説では、まずデニス・ロッドマンと米国におけるバスケットボール人気について次のように話す。
放送員:「このデニス・ロッドマンはアメリカでは広く知られているバスケットボール選手ですね」
解説者:「そうです」
放送員:「昨年に続き、今年もやって来てこうして試合をしているのですが、米国ではバスケットボールが最も好まれる種目の扱いですよね」
解説者:「そうです。米国ではバスケットボールといえば、ブラジル人がサッカーを好むように、米国人はバスケットボールを誰もが最も好みます」
放送員:「今、ボールを取ったデニスロッドマンは、現役選手として選手生活をしていた時は、オフェンスラインでもディフェンスラインでもディフェンダーでしたよね」
解説者:「そうです。デニス・ロッドマン選手は、選手生活全期間で一級のディフェンダー選手権保有者でした」
放送員:「今日のNBA選手を見ると、(今は)選手生活をしておらず過去にNBAで活躍した選手たちですよね」
解説者:「そうです。過去には、NBAの職業的選手(プロ選手)と共に選手生活をし、今は選手生活を止め引退した選手たちです。ですから、年齢も比較的、30以上、40代の選手もおり、30代の選手もいます」
放送員:「今、試合に出ているデニス・ロッドマン選手は、今年53歳ですよね」
解説者:「はい、そうです」
その他のスポーツ番組も同じであるが、アナウンスと解説は録画を見ながら入れているはずである。したがって、NBA選手に関する解説は打ち合わせ済みであり、バスケットボールが米国で最も人気があるスポーツであることやロッドマンが一流選手であったということを朝鮮人民に説明する狙いがあったはずだ。このような詳しい説明をしたのは、バスケットボールが米国で最も人気があるスポーツで、その一流選手が北朝鮮にやってきて「元帥様」の誕生日を祝うということを朝鮮人民に伝えたかったのであろう。過去記事に、「異色的資本主義」を見せることになるので紹介しないであろうと書いたが、北朝鮮はそれを逆手にとって「異色的資本主義」の連中ですら、「元帥様」には頭が上がらないという宣伝に出たわけである。ロッドマンは純粋に「スポーツ外交」をやりたいと考えているのだろうが、北朝鮮の方が一枚上手ということになる。本当は、純粋なスポーツ交流ができるとよいのであるが、米朝ではなかなか難しいようだ。過去記事に書いた米国務省報道官の「北朝鮮はwilling partnerではない」という言葉には、そうした含意があるのかもしれない。
観衆の朝鮮人民は、特定チームを応援していない「イギョラ(頑張れ)」という応援はしているが、心の中ではフェップルチームを応援していても、外面的には両チーム等しい扱いである。そのように指示されたのであろう。どちらのチームが得点しても、立ち上がって拍手を送っている。
Source: KCTV, 2014/1/11放送
試合中に北朝鮮選手がNBA選手に脚を絡ませて転倒させてしまった。故意には見えない。転倒したNBA選手に2人の北朝鮮選手が駆け寄り手を引いて立たせると拍手が起きた(写真右下)。
Source: KCTV, 2014/1/11放送
私はバスケットボールに関する知識はほとんどないが、試合の様子からは、やはり過去記事に書いたようにNBAチームが手加減をしながら北朝鮮チームを勝たせたように見える。これも上に書いたことと関連し「元帥様」への誕生日プレゼントであろう。北朝鮮チームと元NBAチームでは、体格や技術の面で全く勝負にならないのではないだろうか。
朝米戦前半ではロッドマンが選手として出場していたが、後半戦では彼は金正恩にバスケットボール解説をしている。
Source: KCTV, 2014/1/11放送
ロッドマンは、混合試合には出場せず、金正恩と話をしている。彼らの後ろにいる人々は、後ろ向き立っているのが警護員、ネクタイをした男性が通訳、角刈りの男性が警護員、その横の男性が体育相である。
Source: KCTV, 2014/1/11放送
ロッドマンの英語は非常に聞き取りにくいので、分からない部分は「想像」で書いておく。北朝鮮の専門家ではないが、ある米国人と彼のスピーチについて話していたら、その米国人は「ロッドマンは英語もまともに話せない」と言っていた。なにが「まとも」でないのか私は判断できないが、聞き取りにくいことことは確かである。
「競技を前にロッドマン先生が発言します」(朝鮮語アナウンス)
"Before the game, Mr.Rodman would like to say a few words."(英語アナウンス)
会場では、全てのアナウンスを朝鮮語と英語で行った。
ロッドマン:「私は米国から勇気(ガッツ)を持って、そして私を信じて、元帥の誕生日のためにやって来た仲間に感謝します」
北朝鮮通訳:「ここにいる私の同僚たちは、私を信じて、元帥様の誕生日に際して朝鮮に来ました」
北朝鮮通訳は、ノートにメモをしながら話しているので、事前に原稿を渡されていたわけではなく、本当に逐次通訳をしているようだ。
Source: KCTV, 2014/1/11放送
ロッドマン:「たくさんの人が、私や皆さんの指導者である元帥について、色々な見解を表明しています。しかし、私はそれを称賛、世界のための称賛と思っています。彼は偉大な指導者であり、彼はこの国の人々に力を与え、そして幸いにも、この国の人々は元帥を愛しています」
北朝鮮通訳:「世界の異なる人々は、私に対する色々な見解を持っています。私は、彼らが私に対する評価をこのように受け入れています。私はここ朝鮮に来て、朝鮮の人々が敬愛する元帥様を愛しているということを感じています」(朝鮮人民の盛大な拍手)
放送を聞いている限りでは、北朝鮮通訳の部分をカットしたようには聞こえないが、ロッドマンの発言、特に「元帥様について色々な見解」や「それを称賛と思う」、また「偉大な指導者」、「力を与える」の部分が訳されていない。「色々な見解」や「称賛と思う」は訳すとまずいから敢えて言っていないのかもしれないが、「偉大な指導者」や「力を与える」は言った方が宣伝となると思うのだが、聞き取れなかったのだろうか。通訳員も「元帥様」を前に、しかも多くの聴衆がいる中でまずいことは言えないし、事前原稿無しかつロッドマンの聞き取りにくい英語ということで、苦労し緊張したことであろう。さて、留学経験のある「元帥様」は彼の英語をどの程度理解したのであろうか。
「偉大な指導者」の部分で「元帥様」を指すロッドマン
Source: KCTV, 2014/1/11放送
そして、その先にいる「元帥様夫妻」を映し出す
Source: KCTV, 2014/1/11放送
ロッドマン:「北朝鮮の人々のために、私は一つのことを言いたいです。これはこのイベントにかかわった人々にとって歴史的な出来事です。私の同僚と北朝鮮全国チーム、そして私が言いたいことは、私の友人、彼の夫人、そして彼の家族に対してです」
そして、朝鮮語通訳を入れずにバースデー・ソングが始まる。ロッドマンが歌を歌っている間に通訳が何か言おうとしたようであるが、直ぐにやめている。その後、朝鮮語訳があったのかどうかは分からないが、番組では歌の前のロッドマンのスピーチは通訳されていない。ロッドマンは「彼の夫人、彼の家族」と分けて言っている。これは明らかに、夫人以外にも家族がいるということで、兄弟や叔母を除けば、金正恩の子供ということになる。朝鮮人民が彼の英語をどれだけ理解し、この点についてどのように考えているのかが興味深い。もしかすると、金正恩に子供がいることは、公式報道がされていないだけで周知の事実なのかもしれないが。
なお、コメントでも頂いているように、試合終了後にロッドマンと手を繋いでいるのは北朝鮮オリンピック委員会委員長兼体育相の李ジョンムであった。ロッドマンもCNNとのインタビューで「北朝鮮オリンピック委員会から招聘された」と言っているので、委員長が出てくるのは自然である。
李ジョンム体育相とロッドマン
Source: KCTV, 2014/1/11放送
<追記>試合の様子
NBA選手紹介。トップで紹介されるのがロッドマン。英語表記が主で括弧を付けて朝鮮語表記をしている。会場でのアナウンスは朝鮮語、英語の順である。
Source: KCTV, 2014/1/11放送
NBA選手紹介、続き
Source: KCTV, 2014/1/11放送
北朝鮮・フェップルチーム選手紹介。トップで紹介されるのが金ウンチョル。北朝鮮の最強選手なのであろう。
Source: KCTV, 2014/1/11放送
フェップルチーム選手紹介、続き
Source: KCTV, 2014/1/11放送
この後、審判紹介があり、試合が始まる。試合の解説は、朝鮮体育大学講座長・副教授マ・ジュチョンが放送員(アナウンサー)と共に行う。
解説では、まずデニス・ロッドマンと米国におけるバスケットボール人気について次のように話す。
放送員:「このデニス・ロッドマンはアメリカでは広く知られているバスケットボール選手ですね」
解説者:「そうです」
放送員:「昨年に続き、今年もやって来てこうして試合をしているのですが、米国ではバスケットボールが最も好まれる種目の扱いですよね」
解説者:「そうです。米国ではバスケットボールといえば、ブラジル人がサッカーを好むように、米国人はバスケットボールを誰もが最も好みます」
放送員:「今、ボールを取ったデニスロッドマンは、現役選手として選手生活をしていた時は、オフェンスラインでもディフェンスラインでもディフェンダーでしたよね」
解説者:「そうです。デニス・ロッドマン選手は、選手生活全期間で一級のディフェンダー選手権保有者でした」
放送員:「今日のNBA選手を見ると、(今は)選手生活をしておらず過去にNBAで活躍した選手たちですよね」
解説者:「そうです。過去には、NBAの職業的選手(プロ選手)と共に選手生活をし、今は選手生活を止め引退した選手たちです。ですから、年齢も比較的、30以上、40代の選手もおり、30代の選手もいます」
放送員:「今、試合に出ているデニス・ロッドマン選手は、今年53歳ですよね」
解説者:「はい、そうです」
その他のスポーツ番組も同じであるが、アナウンスと解説は録画を見ながら入れているはずである。したがって、NBA選手に関する解説は打ち合わせ済みであり、バスケットボールが米国で最も人気があるスポーツであることやロッドマンが一流選手であったということを朝鮮人民に説明する狙いがあったはずだ。このような詳しい説明をしたのは、バスケットボールが米国で最も人気があるスポーツで、その一流選手が北朝鮮にやってきて「元帥様」の誕生日を祝うということを朝鮮人民に伝えたかったのであろう。過去記事に、「異色的資本主義」を見せることになるので紹介しないであろうと書いたが、北朝鮮はそれを逆手にとって「異色的資本主義」の連中ですら、「元帥様」には頭が上がらないという宣伝に出たわけである。ロッドマンは純粋に「スポーツ外交」をやりたいと考えているのだろうが、北朝鮮の方が一枚上手ということになる。本当は、純粋なスポーツ交流ができるとよいのであるが、米朝ではなかなか難しいようだ。過去記事に書いた米国務省報道官の「北朝鮮はwilling partnerではない」という言葉には、そうした含意があるのかもしれない。
観衆の朝鮮人民は、特定チームを応援していない「イギョラ(頑張れ)」という応援はしているが、心の中ではフェップルチームを応援していても、外面的には両チーム等しい扱いである。そのように指示されたのであろう。どちらのチームが得点しても、立ち上がって拍手を送っている。
Source: KCTV, 2014/1/11放送
試合中に北朝鮮選手がNBA選手に脚を絡ませて転倒させてしまった。故意には見えない。転倒したNBA選手に2人の北朝鮮選手が駆け寄り手を引いて立たせると拍手が起きた(写真右下)。
Source: KCTV, 2014/1/11放送
私はバスケットボールに関する知識はほとんどないが、試合の様子からは、やはり過去記事に書いたようにNBAチームが手加減をしながら北朝鮮チームを勝たせたように見える。これも上に書いたことと関連し「元帥様」への誕生日プレゼントであろう。北朝鮮チームと元NBAチームでは、体格や技術の面で全く勝負にならないのではないだろうか。
朝米戦前半ではロッドマンが選手として出場していたが、後半戦では彼は金正恩にバスケットボール解説をしている。
Source: KCTV, 2014/1/11放送
ロッドマンは、混合試合には出場せず、金正恩と話をしている。彼らの後ろにいる人々は、後ろ向き立っているのが警護員、ネクタイをした男性が通訳、角刈りの男性が警護員、その横の男性が体育相である。
Source: KCTV, 2014/1/11放送