「<朝鮮記録映画>敬愛する金正恩同志が様々な部門の事業を現地指導、2013.11-12」:馬息嶺スキー場指導が中心、現地指導の成果、スノーマシン、雪嵐の中強調 (2014年1月10日 「朝鮮中央TV」)
10日、「朝鮮中央TV」が表題の「朝鮮記録映画」を放送した。記録映画では、「全国科学者・技術者大会」、「平壌建築総合大学」を現地指導した様子も伝えているが、その中心はやはり「馬息嶺スキー場」での現地指導である。同指導で、これまで公開されていなかった映像などが見られたので紹介しておく。
「記録映画」では3回の現地指導の様子を伝えている。「朝鮮中央通信」が11月2日と報じた現地指導、12月15日付けの『労働新聞』に掲載された「完工を目前にした馬息嶺スキー場現地指導」、そして12月31日の「完工した馬息嶺スキー場の現地指導」であるが、15日と31日の比較がなかなか面白い。
「ムンス・ウォーターパーク」もそうであったが、かなりできあがったところにやって来て「細心の指導」をするのが好きなようだ。そんなことなら初めから言っておけば良いような気もするが、「広大な構想」を提示しておき、後から「細心の指導」をするのが金正恩スタイルのようだ。お父さんはどうだったのであろうか。
「記録映画」が伝えている1つめの「細心の指導」は、「馬息嶺スキー場総合案内図」である。下が12月15日の時点での図であるが、平面的に書かれている。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
これを見て「元帥様」は「立体的に描くように」と指示をした結果、31日には下の写真のように変わっていた。確かにこちらの方が全体の様子がよく分かるし、日本のスキー場のスロープ案内はこのスタイルが多い。木材の色が変わっており、作り直したのであろうか。「総合案内図」という文字が見やすくなり、掲載した写真では比較できないが新たに時計も取り付けられた。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
続けて、「馬息嶺ホテル」の看板について、「両面にホテル名を記し、照明を設置して夜でも見えるようにしなければならない」指導した。こちらは、その結果(31日の様子)は記録映画では見られなかった。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
英語メディアでのスキー場表記が「Ma Sik Ryong」となっており、何か不自然さを感じていたのだが、北朝鮮でもそのように表記しているようだ。どうやら、北朝鮮では朝鮮文字をアルファベットに置き換える際、一つ一つの音をそのまま表記する方法を採用しているようだ。朝鮮語発音ではこのスキー場は「マシンリョン」(に近い音)になるわけだが、朝鮮語を知らない外国人がこのアルファベット表記だけを見ると「マシックリョン」と発音してしまい、とても分かり難くなる。韓国では、発音どおりのアルファベット表記を採用しており、地下鉄の駅名「独立門」は、一文字ずつその音をそのまま表記する「dok rip mun」ではなく「Dongnim mun」と記されている。
Seoul Metro Traffice Center HP, Route Map Station Information, http://dmzap1.seoulmetro.co.kr/station/eng/linemap.action (オレンジラインの中央上辺りの駅)
ソウル方言と平壌方言を比べた場合、平壌方言においての方が鼻音化(乱暴な説明だが、カクカクした音を丸くして発音しやすくすること)されないことが多いからなのかもしれないが、興味深い。日本語でも群馬県をヘボン式の規則に従い「Gunma Ken」と表記するのか音どおりに「Gumma Ken」という問題はあるのだが。この点において群馬県や県民も苦労しているようである。
群馬県HP、「群馬(ぐんま)のローマ字表記について」、http://www.pref.gunma.jp/04/c3610022.html
話がそれたが、金正恩の「細心の指導」を続ける。食堂を視察した彼は、下の写真にある様子を見て「人民が使う食卓や椅子をもっと使いやすく置かなければならない」と指示した。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
その結果が以下である。大きく変わっているのは、テーブルとテーブルの間を遮るようにパーティションが設置され、プライバシーが保たれるようにした点である。「使いやすく」というナレーションの実質的な内容が「プライバシーを保てるように」ということであったのならば、なかなか興味深い。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
食堂の指導ではあまり「細心」ではない様子も見られた。31日の指導で彼は再び「人民が些細な不便さも感じないように」と指摘したとのことであるが、どうやらテーブルとパーティションの間隔が狭すぎることについて指摘したようだ。しかし、彼のように太った朝鮮人民はほとんどいないわけで、設計者は普通の人民のボディーサイズでテーブルの位置決めをしたのではなかろうか。もしかすると「世界的なスキー場」という発想から、体の大きい外国人が来ても対応できるようにという話なのかもしれないが、「人民」にはあまり関係なさそうな「細心」さである。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
テーブルを位置をずらして着席。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
続けてホテルのフロントを視察した「元帥様」は、フロントのホール(下の写真)を「馬息嶺ホテルの特色が出るように装飾しなければならない」と指示した。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
その結果が次の写真である。フロント上に掛けられている彫刻のようなものが、馬息嶺を描いたと思われる山から緑色のデザインに変わり、文字が刻まれている。北朝鮮芸術では、「抽象的なものは好ましくない」という話を聞いたことがあるし、彼らが描く絵は皆実に具象絵画的である。この映像からは分からないが、緑のものは何だろうか。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
「記録映画」では、「商店」の様子も映している。商店にはヘルメットやゴーグルなど色々なものが置かれているが、全て輸入品のように見える。スキーは、オーストリアのFischer製であるが、誰が買うのだろうか。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
「商品」の前にはプライスタグが置かれているが、いくらなのか知りたいところだ。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
一方、こちらはレンタル用と思われるブーツである。映像で見る限りは同種のブーツが大量に置かれているので、過去記事で予想したように中古品の購入ではなく、同種の新品をまとめて購入したようだ。この辺りも「世界的スキー場」を考えてのことだろうか。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
ホテルの外では、スノーマシンを映している。過去記事に紹介したのと同種のものがずらっと並んでいる。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
さらに、説明はないが、リフトのゲートのようなものを見ている映像も紹介される。12月末に「朝鮮中央TV」で放送された海外事情を紹介する「世界の常識」という番組でスキー場で使われる非接触型ICタグを紹介していた(はずである。飛ばしながら画だけざっと見た)。馬息嶺スキー場でもリフト乗り場にこのシステムを導入したのかもしれないが、「リフト代」を人民から徴収するのであろうか。外国人からは、観光フルセットでいくらという料金設定にしそうなのだが。だとすると、スキー場にいる人は勝手にリフトに乗れば良いのではないだろうか。もし、外国人と朝鮮人民が使うスロープを分離するならば、このチェック・ゲートは有効かもしれない。

そして「記録映画」は、「12月最後の日の雪嵐をものともせず」現地指導をする「元帥様」の様子を映し出して終わる。天気が急変したのかもしれないが、スノーマシンを見る辺りまでは晴天だったので、「雪嵐」演出で早速スノーマシンが活躍しているのかもしれない。それにしても、帽子も脱いでいるので「元帥様」はさぞかし寒かったことであろう。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
馬息嶺スキー場では、さらに多くの宿舎建設など第2期工事が計画されているという。
「記録映画」では3回の現地指導の様子を伝えている。「朝鮮中央通信」が11月2日と報じた現地指導、12月15日付けの『労働新聞』に掲載された「完工を目前にした馬息嶺スキー場現地指導」、そして12月31日の「完工した馬息嶺スキー場の現地指導」であるが、15日と31日の比較がなかなか面白い。
「ムンス・ウォーターパーク」もそうであったが、かなりできあがったところにやって来て「細心の指導」をするのが好きなようだ。そんなことなら初めから言っておけば良いような気もするが、「広大な構想」を提示しておき、後から「細心の指導」をするのが金正恩スタイルのようだ。お父さんはどうだったのであろうか。
「記録映画」が伝えている1つめの「細心の指導」は、「馬息嶺スキー場総合案内図」である。下が12月15日の時点での図であるが、平面的に書かれている。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
これを見て「元帥様」は「立体的に描くように」と指示をした結果、31日には下の写真のように変わっていた。確かにこちらの方が全体の様子がよく分かるし、日本のスキー場のスロープ案内はこのスタイルが多い。木材の色が変わっており、作り直したのであろうか。「総合案内図」という文字が見やすくなり、掲載した写真では比較できないが新たに時計も取り付けられた。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
続けて、「馬息嶺ホテル」の看板について、「両面にホテル名を記し、照明を設置して夜でも見えるようにしなければならない」指導した。こちらは、その結果(31日の様子)は記録映画では見られなかった。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
英語メディアでのスキー場表記が「Ma Sik Ryong」となっており、何か不自然さを感じていたのだが、北朝鮮でもそのように表記しているようだ。どうやら、北朝鮮では朝鮮文字をアルファベットに置き換える際、一つ一つの音をそのまま表記する方法を採用しているようだ。朝鮮語発音ではこのスキー場は「マシンリョン」(に近い音)になるわけだが、朝鮮語を知らない外国人がこのアルファベット表記だけを見ると「マシックリョン」と発音してしまい、とても分かり難くなる。韓国では、発音どおりのアルファベット表記を採用しており、地下鉄の駅名「独立門」は、一文字ずつその音をそのまま表記する「dok rip mun」ではなく「Dongnim mun」と記されている。
Seoul Metro Traffice Center HP, Route Map Station Information, http://dmzap1.seoulmetro.co.kr/station/eng/linemap.action (オレンジラインの中央上辺りの駅)
ソウル方言と平壌方言を比べた場合、平壌方言においての方が鼻音化(乱暴な説明だが、カクカクした音を丸くして発音しやすくすること)されないことが多いからなのかもしれないが、興味深い。日本語でも群馬県をヘボン式の規則に従い「Gunma Ken」と表記するのか音どおりに「Gumma Ken」という問題はあるのだが。この点において群馬県や県民も苦労しているようである。
群馬県HP、「群馬(ぐんま)のローマ字表記について」、http://www.pref.gunma.jp/04/c3610022.html
話がそれたが、金正恩の「細心の指導」を続ける。食堂を視察した彼は、下の写真にある様子を見て「人民が使う食卓や椅子をもっと使いやすく置かなければならない」と指示した。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
その結果が以下である。大きく変わっているのは、テーブルとテーブルの間を遮るようにパーティションが設置され、プライバシーが保たれるようにした点である。「使いやすく」というナレーションの実質的な内容が「プライバシーを保てるように」ということであったのならば、なかなか興味深い。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
食堂の指導ではあまり「細心」ではない様子も見られた。31日の指導で彼は再び「人民が些細な不便さも感じないように」と指摘したとのことであるが、どうやらテーブルとパーティションの間隔が狭すぎることについて指摘したようだ。しかし、彼のように太った朝鮮人民はほとんどいないわけで、設計者は普通の人民のボディーサイズでテーブルの位置決めをしたのではなかろうか。もしかすると「世界的なスキー場」という発想から、体の大きい外国人が来ても対応できるようにという話なのかもしれないが、「人民」にはあまり関係なさそうな「細心」さである。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
テーブルを位置をずらして着席。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
続けてホテルのフロントを視察した「元帥様」は、フロントのホール(下の写真)を「馬息嶺ホテルの特色が出るように装飾しなければならない」と指示した。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
その結果が次の写真である。フロント上に掛けられている彫刻のようなものが、馬息嶺を描いたと思われる山から緑色のデザインに変わり、文字が刻まれている。北朝鮮芸術では、「抽象的なものは好ましくない」という話を聞いたことがあるし、彼らが描く絵は皆実に具象絵画的である。この映像からは分からないが、緑のものは何だろうか。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
「記録映画」では、「商店」の様子も映している。商店にはヘルメットやゴーグルなど色々なものが置かれているが、全て輸入品のように見える。スキーは、オーストリアのFischer製であるが、誰が買うのだろうか。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
「商品」の前にはプライスタグが置かれているが、いくらなのか知りたいところだ。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
一方、こちらはレンタル用と思われるブーツである。映像で見る限りは同種のブーツが大量に置かれているので、過去記事で予想したように中古品の購入ではなく、同種の新品をまとめて購入したようだ。この辺りも「世界的スキー場」を考えてのことだろうか。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
ホテルの外では、スノーマシンを映している。過去記事に紹介したのと同種のものがずらっと並んでいる。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
さらに、説明はないが、リフトのゲートのようなものを見ている映像も紹介される。12月末に「朝鮮中央TV」で放送された海外事情を紹介する「世界の常識」という番組でスキー場で使われる非接触型ICタグを紹介していた(はずである。飛ばしながら画だけざっと見た)。馬息嶺スキー場でもリフト乗り場にこのシステムを導入したのかもしれないが、「リフト代」を人民から徴収するのであろうか。外国人からは、観光フルセットでいくらという料金設定にしそうなのだが。だとすると、スキー場にいる人は勝手にリフトに乗れば良いのではないだろうか。もし、外国人と朝鮮人民が使うスロープを分離するならば、このチェック・ゲートは有効かもしれない。

そして「記録映画」は、「12月最後の日の雪嵐をものともせず」現地指導をする「元帥様」の様子を映し出して終わる。天気が急変したのかもしれないが、スノーマシンを見る辺りまでは晴天だったので、「雪嵐」演出で早速スノーマシンが活躍しているのかもしれない。それにしても、帽子も脱いでいるので「元帥様」はさぞかし寒かったことであろう。

Source: KCTV, 2014/1/10放送
馬息嶺スキー場では、さらに多くの宿舎建設など第2期工事が計画されているという。