「敬愛する金正恩元帥様が我が国と米国バスケットボール選手の競技を観覧された」:金正恩誕生日公式化か、金正恩交流評価、ロッドマンの歌も伝える、米国務省反応、猪木議員再訪朝予定 (2014年1月9日 「労働新聞」)
ロッドマン訪朝は、対内メディアでは伝えないであろうという見立ては見事に外れてしまった。9日の「朝鮮中央通信」が金正恩がバスケットボールの試合を観覧したと伝えていたので、まさかと思って『労働新聞』を確認したところ、早々、1面と2面にロッドマンと談笑しながら試合を観戦する金正恩夫妻の写真などと共に記事が掲載されていた。
金正恩は「米国バスケットボール選手の我が国訪問を歓迎され、今回の競技は両国人民間の理解を図る立派な契機となると仰った」とのこと、「両国人民間の理解」という表現が米朝関係を改善したいというシグナルなのかが注目される。昨夜(日本時間)の米国務省定例記者会見の様子はまだアップロードされていないが、当面は「(対話をしたいのなら、)約束を行動で履行してから」という反応以上は見られないであろう。
北朝鮮がロッドマン訪朝をギリギリまで伝えなかったのは、対内的に公表するかどうか躊躇していたのではないだろうか。ところが、昨日記事にした7日(米国時間)のCNN番組での彼の受け答えを評価して公表に踏み切ったのかもしれない。ロッドマンがケニス・ベが「悪いことをした」というような発言をしたことを受けて、「悪いことをした」ケニス・ベの送還を米国との交渉材料に使う可能性がある。CNNで大々的に放送させて米国内の関心を喚起しておき、ケニス・ベを交渉の交換材料に持ち出せば、米国政府が「人道的」立場からその交渉に応じないのは困難になるはずである。その際、北朝鮮は交渉相手としてキング北朝鮮人権問題特使ではなく、「外交」を扱える人物を交渉相手として要求してくるのではないだろうか。
一方、ロッドマンについては「敬愛する元帥様に再びお目にかかれて本当に嬉しくて涙が出ると言いながら、今回の競技を組織しのは、尊敬する元帥様の誕生日を祝賀するためであると語った」と同新聞は伝えている。これは、ロッドマンの言葉を引用しながらではあるものの、1月8日が金正恩の誕生日であることを北朝鮮が公式的に認めたことになる。誕生日についてはもう1カ所言及している部分があり「競技を前に発言をしたデニス・ロッドマンは、敬愛する元帥様の誕生日に際して朝鮮に来たと語りながら、在留期間、朝鮮人民が元帥様を尊敬しているということを感じた語った」と彼の訪朝目的が金正恩の誕生日を祝うことであると伝えている。
今後、北朝鮮が1月8日をどのように扱っていくのかが注目されるが、「大元帥様たち」の誕生日を盛大に祝っておきながら、「元帥様」の誕生日をこれまで祝わなかったことについて何らかの説明がなされるであろう。その際の説明としては、「金正日が在命中に自分の銅像を建立させなかった」という儒教的謙虚さを強調した逸話と重複させ、「金正恩も在命中は誕生日を国家的行事として祝わない」とするのか、「金正日の3年の喪が明けたから2015年1月8日からは祝う」ということなどを言うのではないだろうか。ただ、誕生日という話になると、どうしても「お母さん問題」が出てくるので、この辺りも今年中に決着を付けようとしているのかもしれない。
昨日の記事で、ロッドマンがHappy Birthdayを歌ったと書いたが、『労働新聞』の記事には「彼は、敬愛する元帥様に対する敬慕の念を込めて歌を歌い観覧者を感動させた」と書いている。「誕生日の歌」とは書かれていないが、いわゆるHappy Birthdayの歌を朝鮮人民も知っているのか、それを韓国でやっているように朝鮮語訳して歌っているのかは分からない。今後、「朝鮮中央TV」がこの様子をどこまで公開するのか、ロッドマンがこの歌を歌っている様子を流すのかが注目される。
競技観覧には、朴奉珠夫妻、崔龍海夫妻、姜錫柱夫妻が同席している。朴奉珠と崔龍海が出席しているのは恒例としても、対米交渉の司令塔である姜錫柱副相も出席しているのが、上記のケニス・ベ問題とも関連し注目される。
試合を観戦しながらロッドマンと談笑する金正恩。今回はコカ・コーラの缶は置かれていない。「資本主義的異色」への配慮かもしれないが、資本主義社会の中でも「異色」のロッドマンだけで十分である。

Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은 원수님께서 우리 나라와 미국롱구선수들의 경기를 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01
<追記>:コカコーラ
北朝鮮におけるコカコーラについて別記事に記した。
金正恩夫妻と共に試合を観戦する朴奉珠夫妻、崔龍海夫妻、姜錫柱夫妻。部下も夫人同伴で出席させているのは、金正恩が「西欧的に洗練されている」ことを訴えるためであろうか。ロッドマンがCNNとのインタビューで「家族を残して」と盛んに言っていたことと何か関連があるのだろうか。

Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은 원수님께서 우리 나라와 미국롱구선수들의 경기를 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01
競技については、Sky Newsを引用しながら昨日の記事に書いたが、『労働新聞』によると2回戦行われ、1回戦が米国NBA元選手チーム対北朝鮮フェップルチーム、2回戦が米朝選手を混合させた試合であったとのことである。結果は、NBA対フェップルが39対47で北朝鮮チームの勝ち、混合試合が63対54であったとのことである。

Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은 원수님께서 우리 나라와 미국롱구선수들의 경기를 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01
金正恩に敬意を示すロッドマン。試合の模様を伝える写真の点数版の時計が試合の経過時間ではなく4時7分という時刻を表示しているのであれば、これは試合前の様子である(時計は3時47分頃)。

Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은 원수님께서 우리 나라와 미국롱구선수들의 경기를 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01
そして記念写真

Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은 원수님께서 우리 나라와 미국롱구선수들의 경기를 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01
<追記>米国務省の反応
8日(米国時間)開かれた国務省定例記者会見では、ロッドマン問題についての質疑応答が行われた。国務省報道官は「彼ら(ロッドマン一行)について分析やコメントをすることで、彼らに威厳を与えるつもりはない」とした上で、「我々は独自のチャンネルを持っており、北朝鮮と話をしている」とケニス・ベ問題解決は国務省が独自の方法で取り組んでいると述べている。
また、昨日の記事に書いた米中関係樹立の契機となった「ピンポン外交」とロッドマンが言う「バスケットボール外交」の違いについて、「70年代に我々が中国との間で展開したピンポン外交では、中国が自発的な(あるいは意思のある)パートナーであったが、現在(北朝鮮との関係における)シナリオはそれと異なる」と性質の違いを述べ、「したがって、我々にはスポーツ外交計画はない」と断じている。
米国の記者は、今回のロッドマン訪朝がケニス・ベ問題に悪影響を与えるのかと質問するが、報道官はそれについて何もコメントしない。上に書いたとおり、ロッドマン訪朝がケニス・ベ問題にどのような影響を及ぼすのかは、今後の北朝鮮の出方を見なければ判断できない。もし、現状で彼の帰国に向けた話し合いがある程度進んでいるのであれば、ロッドマン訪朝は悪影響を及ぼす可能性はあるが、報道官の話しぶりからは何らかの話し合いはあるものの全く進展がみられていないような感触を受ける。
報道官はキング特使にケニス・ベ問題を扱ってもらうとし、北朝鮮が同特使との交渉を受け入れるのを待っていると述べている。
米国政府は、北朝鮮に足下を見られないよう、外面的には「ロッドマンごとき道化が」というスタンスであるが、ロッドマン訪朝に関心を寄せていることは間違いない。昨日の記事に「スミスの方がまとも」と書いたが、北朝鮮の狙いは、まとめではないロッドマンの方が扱いやすかったということなのかもしれない。彼が米国政府にとって、まともではないので非常に扱いにくい人物というところまで計算に入れていた可能性もある。
U.S. Department of State, Daily Press Briefing, http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2014/01/219481.htm#DPRK
一方、猪木議員が13日から再訪朝をすると日本メディアが伝えていた。誰かが国家体育指導委員会委員長に既に指名されているのか、副委員長が代行しているのか、あるいはどう委員会自体が解散させられたのかが注目される。金正恩が党幹部と共に観戦したバスケットボールの試合に『労働新聞』に紹介された人物以外に誰が来ていたのか、これも今公開されている写真だけでは分からない。
金正恩は「米国バスケットボール選手の我が国訪問を歓迎され、今回の競技は両国人民間の理解を図る立派な契機となると仰った」とのこと、「両国人民間の理解」という表現が米朝関係を改善したいというシグナルなのかが注目される。昨夜(日本時間)の米国務省定例記者会見の様子はまだアップロードされていないが、当面は「(対話をしたいのなら、)約束を行動で履行してから」という反応以上は見られないであろう。
北朝鮮がロッドマン訪朝をギリギリまで伝えなかったのは、対内的に公表するかどうか躊躇していたのではないだろうか。ところが、昨日記事にした7日(米国時間)のCNN番組での彼の受け答えを評価して公表に踏み切ったのかもしれない。ロッドマンがケニス・ベが「悪いことをした」というような発言をしたことを受けて、「悪いことをした」ケニス・ベの送還を米国との交渉材料に使う可能性がある。CNNで大々的に放送させて米国内の関心を喚起しておき、ケニス・ベを交渉の交換材料に持ち出せば、米国政府が「人道的」立場からその交渉に応じないのは困難になるはずである。その際、北朝鮮は交渉相手としてキング北朝鮮人権問題特使ではなく、「外交」を扱える人物を交渉相手として要求してくるのではないだろうか。
一方、ロッドマンについては「敬愛する元帥様に再びお目にかかれて本当に嬉しくて涙が出ると言いながら、今回の競技を組織しのは、尊敬する元帥様の誕生日を祝賀するためであると語った」と同新聞は伝えている。これは、ロッドマンの言葉を引用しながらではあるものの、1月8日が金正恩の誕生日であることを北朝鮮が公式的に認めたことになる。誕生日についてはもう1カ所言及している部分があり「競技を前に発言をしたデニス・ロッドマンは、敬愛する元帥様の誕生日に際して朝鮮に来たと語りながら、在留期間、朝鮮人民が元帥様を尊敬しているということを感じた語った」と彼の訪朝目的が金正恩の誕生日を祝うことであると伝えている。
今後、北朝鮮が1月8日をどのように扱っていくのかが注目されるが、「大元帥様たち」の誕生日を盛大に祝っておきながら、「元帥様」の誕生日をこれまで祝わなかったことについて何らかの説明がなされるであろう。その際の説明としては、「金正日が在命中に自分の銅像を建立させなかった」という儒教的謙虚さを強調した逸話と重複させ、「金正恩も在命中は誕生日を国家的行事として祝わない」とするのか、「金正日の3年の喪が明けたから2015年1月8日からは祝う」ということなどを言うのではないだろうか。ただ、誕生日という話になると、どうしても「お母さん問題」が出てくるので、この辺りも今年中に決着を付けようとしているのかもしれない。
昨日の記事で、ロッドマンがHappy Birthdayを歌ったと書いたが、『労働新聞』の記事には「彼は、敬愛する元帥様に対する敬慕の念を込めて歌を歌い観覧者を感動させた」と書いている。「誕生日の歌」とは書かれていないが、いわゆるHappy Birthdayの歌を朝鮮人民も知っているのか、それを韓国でやっているように朝鮮語訳して歌っているのかは分からない。今後、「朝鮮中央TV」がこの様子をどこまで公開するのか、ロッドマンがこの歌を歌っている様子を流すのかが注目される。
競技観覧には、朴奉珠夫妻、崔龍海夫妻、姜錫柱夫妻が同席している。朴奉珠と崔龍海が出席しているのは恒例としても、対米交渉の司令塔である姜錫柱副相も出席しているのが、上記のケニス・ベ問題とも関連し注目される。
試合を観戦しながらロッドマンと談笑する金正恩。今回はコカ・コーラの缶は置かれていない。「資本主義的異色」への配慮かもしれないが、資本主義社会の中でも「異色」のロッドマンだけで十分である。

Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은 원수님께서 우리 나라와 미국롱구선수들의 경기를 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01
<追記>:コカコーラ
北朝鮮におけるコカコーラについて別記事に記した。
金正恩夫妻と共に試合を観戦する朴奉珠夫妻、崔龍海夫妻、姜錫柱夫妻。部下も夫人同伴で出席させているのは、金正恩が「西欧的に洗練されている」ことを訴えるためであろうか。ロッドマンがCNNとのインタビューで「家族を残して」と盛んに言っていたことと何か関連があるのだろうか。

Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은 원수님께서 우리 나라와 미국롱구선수들의 경기를 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01
競技については、Sky Newsを引用しながら昨日の記事に書いたが、『労働新聞』によると2回戦行われ、1回戦が米国NBA元選手チーム対北朝鮮フェップルチーム、2回戦が米朝選手を混合させた試合であったとのことである。結果は、NBA対フェップルが39対47で北朝鮮チームの勝ち、混合試合が63対54であったとのことである。

Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은 원수님께서 우리 나라와 미국롱구선수들의 경기를 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01
金正恩に敬意を示すロッドマン。試合の模様を伝える写真の点数版の時計が試合の経過時間ではなく4時7分という時刻を表示しているのであれば、これは試合前の様子である(時計は3時47分頃)。

Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은 원수님께서 우리 나라와 미국롱구선수들의 경기를 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01
そして記念写真

Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은 원수님께서 우리 나라와 미국롱구선수들의 경기를 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_06_01
<追記>米国務省の反応
8日(米国時間)開かれた国務省定例記者会見では、ロッドマン問題についての質疑応答が行われた。国務省報道官は「彼ら(ロッドマン一行)について分析やコメントをすることで、彼らに威厳を与えるつもりはない」とした上で、「我々は独自のチャンネルを持っており、北朝鮮と話をしている」とケニス・ベ問題解決は国務省が独自の方法で取り組んでいると述べている。
また、昨日の記事に書いた米中関係樹立の契機となった「ピンポン外交」とロッドマンが言う「バスケットボール外交」の違いについて、「70年代に我々が中国との間で展開したピンポン外交では、中国が自発的な(あるいは意思のある)パートナーであったが、現在(北朝鮮との関係における)シナリオはそれと異なる」と性質の違いを述べ、「したがって、我々にはスポーツ外交計画はない」と断じている。
米国の記者は、今回のロッドマン訪朝がケニス・ベ問題に悪影響を与えるのかと質問するが、報道官はそれについて何もコメントしない。上に書いたとおり、ロッドマン訪朝がケニス・ベ問題にどのような影響を及ぼすのかは、今後の北朝鮮の出方を見なければ判断できない。もし、現状で彼の帰国に向けた話し合いがある程度進んでいるのであれば、ロッドマン訪朝は悪影響を及ぼす可能性はあるが、報道官の話しぶりからは何らかの話し合いはあるものの全く進展がみられていないような感触を受ける。
報道官はキング特使にケニス・ベ問題を扱ってもらうとし、北朝鮮が同特使との交渉を受け入れるのを待っていると述べている。
米国政府は、北朝鮮に足下を見られないよう、外面的には「ロッドマンごとき道化が」というスタンスであるが、ロッドマン訪朝に関心を寄せていることは間違いない。昨日の記事に「スミスの方がまとも」と書いたが、北朝鮮の狙いは、まとめではないロッドマンの方が扱いやすかったということなのかもしれない。彼が米国政府にとって、まともではないので非常に扱いにくい人物というところまで計算に入れていた可能性もある。
U.S. Department of State, Daily Press Briefing, http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2014/01/219481.htm#DPRK
一方、猪木議員が13日から再訪朝をすると日本メディアが伝えていた。誰かが国家体育指導委員会委員長に既に指名されているのか、副委員長が代行しているのか、あるいはどう委員会自体が解散させられたのかが注目される。金正恩が党幹部と共に観戦したバスケットボールの試合に『労働新聞』に紹介された人物以外に誰が来ていたのか、これも今公開されている写真だけでは分からない。